説明

モノエチレン性不飽和ジカルボン酸誘導体を含有するコポリマー

【課題】改良された腐食防止剤を提供する。
【解決手段】−SR、−CSNR2及び/又は−CN単位で修飾されたジカルボン酸単位と、少なくとも一種の他のコモノマーからなるコポリマー。ポリマー類似反応により前記コポリマーを製造する方法、及び前記コポリマーを腐食防止剤としての使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の修飾ジカルボン酸単位と少なくとも一種の他のコモノマーからなるコポリマーに関する。本発明はまた、ポリマー類似反応によるこれらのコポリマーの製造方法、及びこれらの腐食防止剤としての利用に関する。
【背景技術】
【0002】
修飾マレイン酸単位と他のコモノマーからなるコポリマーは、基本的には公知である。
【0003】
特許文献1には、修飾マレイン酸単位、スチレン又はスルホン化スチレン、アルキルビニルエーテル、C2〜C6オレフィン、及び(メタ)アクリルアミドからなるコポリマーが開示されている。この修飾マレイン酸単位は、スペーサでもって結合した官能基を有し、その官能基の例としては、−OHや−PO32、−OPO32、−COOHが挙げられ、好ましくは、−SO3Hである。
【0004】
特許文献2及び3には、修飾マレイン酸単位と、アクリレート、ビニルエーテル又はオレフィンなどの他のモノマーとからなるコポリマーが開示されている。この修飾マレイン酸単位は、N−置換マレアミド及び/又はマレイミドである。このN−置換基は、スペーサでもって結合した複素環式化合物である。
【0005】
特許文献4には、N−置換マレイミド単位とスチレン又は1−オクテンからなるコポリマーが開示されている。このマレイミド単位は、スペーサでもって結合したピペラジン単位で置換されている。
【0006】
一般的に、従来の腐食防止方法では、複数の異なる塗膜が金属表面に塗布されていた。コイル被覆の場合、通常、前処理、例えばリン酸塩処理を前もって行った後に、表面に下塗剤を塗布する。この下塗剤上に、一層以上の中間塗膜又は上塗塗膜が塗布される。腐食防止塗料により大気中での腐食防止を図る場合、通常、一層の下塗塗膜、一層の中間塗膜、及び一層の上塗塗膜を塗布する。
【0007】
最近の腐食防止では、クロムフリー腐食防止システムがより多く採用されるようになってきている。また、上記の塗装システムの単純化が求められている。このためには、例えば、コイル被覆の場合には少なくとも前処理と下塗剤の性状を併合して、大気腐食防止の場合には少なくとも下塗剤と中間体塗布材料の性状を併合して、二層ではなく一層のみの塗布ですむ一体化した腐食防止塗膜を用いることができる。
【0008】
【特許文献1】EP−A244584
【特許文献2】EP−A1288232
【特許文献3】EP−A1288228
【特許文献4】WO99/29790
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、改良された腐食防止剤、特に上記の用途に使用する腐食防止剤を提供することである。これらの防止剤は、特に一体化腐食防止塗膜の製造に使用することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明者等は、以下の構造単位を持つコポリマーを見出した:
(I)下記構造単位(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、
1は、非隣接C原子がO及び/又はNで置換されていてもよい、1〜40個のC原子を有する(n+1)価の炭化水素基を示し、
2、R3は、それぞれ独立して、H、メチル、又はC2〜C6アルキルを示し、又はR2とR3が一緒になって1,3−プロピレン又は1,4−ブチレンを示し、
4は、H、C1〜C10炭化水素基、又は−(R1−X1n)を示し、
Mは、H又はカチオンを示し、
ここで、X1は、−SR5、−CSNR52及び−CNからなる群より選択される官能基を示し、R5は、H又は1〜6個のC原子を有する炭化水素基を示し、nは1、2、又は3である)
からなる群より選択されるモノエチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体からなる1〜99mol%の少なくとも一種の構造単位(I)、
(II)(I)とは異なる、モノエチレン性不飽和モノマーからなる99〜1mol%の少なくとも一種の他の構造単位(II)、及び
(III)必要に応じて、(I)及び(II)とは異なる、エチレン性不飽和モノマーからなる0〜30mol%の少なくとも一種の他の構造単位(III)
(ただし、モノマー量は、それぞれコポリマー中の全モノマー単位の総量に基づく)。
【0013】
本発明の第二の態様は、このようなコポリマーをポリマー類似反応により製造する方法である。
【0014】
本発明の第三の態様は、このコポリマーの腐食防止剤として利用する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のコポリマーは、1〜99mol%の少なくとも一種の構造単位(I)、99〜1mol%の少なくとも一種の構造単位(II)、及び、必要に応じて、0〜30mol%の構造単位(III)からなる。なお、これらの量は、いずれの場合も、共重合によりコポリマー中に導入される全構造単位の総量に対する量である。(I)、(II)、(III)の構造単位以外に、他の構造単位は含まれない。
【0016】
構造単位(I)
構造単位(I)は、下記構造単位(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、及び(If)
【0017】
【化2】

からなる群より選択されるモノエチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体である。これらの構造単位において、X1は、−SR5、−CSNR52及び−CNからなる群より選択される官能基である。式中、R5は、1〜6個のC原子を有する炭化水素基、特に1〜6個のC原子を有する直鎖状または分岐状アルキル基である。その例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基が挙げられる。R5は、好ましくはH又はメチル基、さらに好ましくはHである。好ましくは−CSNR2又は−CN、さらに好ましくは−CSNH2である。ある構造単位が二個以上の官能基X1を持つ場合、これらの官能基X1は同一であっても異なっていてもよい。官能基X1の数nは、一般的に1、2又は3、好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
【0018】
1基は、官能基X1と構造単位(I)の他の部分とを結合させるスペーサである。この場合、R1はC原子数が1〜40個の(n+1)価の炭化水素基であり、その非隣接C原子はO及び/又はNで置換されていてもよい。この基は、好ましくはC原子数が1〜20個の炭化水素基、さらに好ましくは原子数が2〜10個の炭化水素基、特に好ましくはC原子数が2〜6個の炭化水素基である。この炭化水素基は、分岐状でもよいが、好ましくは直鎖状である。この基は、好ましくは1,ω−官能基である。
【0019】
2価の連結基R1の場合、この基は、好ましくは直鎖状のC原子数が1〜20個の、好ましくは2〜6個の1,ω−アルキレン基である。さらに好ましくは、この基は、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、又は1,6−ヘキシレン基である。さらに好ましくは、O原子を含有する基で、例えば、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−又は一般式−CH2−CH2−[−O−CH2−CH2−]m−で表されるポリアルコキシ基が挙げられる。mは、2〜13の自然数である。
【0020】
この基R1が二個以上の官能基と結合する場合、原理的には、その末端C原子が二個以上の官能基と結合することが可能である。しかしこの場合、R1がその炭素骨格中に一個以上の分岐点を有し、各官能基X1がそのそれぞれの分枝の末端に結合することが好ましい。この分岐点は、C原子でもよいが、好ましくはN原子である。この種の連結基R1の例としては、−CH2−CH2−N(CH2−)−2が挙げられる。
2とR3は、それぞれ独立して、H、メチル又はC2〜C6アルキル基を表し、特に直鎖状のアルキル鎖、例えばエチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、又は1−ヘキシル基を表す。また、R2とR3とは互いに結合してもよい。この場合、形成される基が特に1,3−プロピレン基又は1,4−ブチレン基であってもよい。好ましくは、R2とR3は、それぞれ独立してHかメチル基を表し、さらに好ましくは、R2とR3がともにHである。
【0021】
4は、H又はC1〜C6アルキル基、又は上述の基−R1−X1nであり、R1とX1nは上述の通りである。R4は、好ましくはH、メチル基又はエチル基から選択される基、さらに好ましくはH又はメチル基、特に好ましくはHである。
【0022】
Mは、H又はカチオン、好ましくは一価のカチオンである。この種のカチオンの例としては、特に、Li+、Na+、K+などのアルカリ金属カチオンが挙げられる。また、特に、NH4+や有機アンモニウム塩であってもよい。
【0023】
有機アンモニウム塩は、第一級、第二級又は第三級アミンのいずれの塩でもよい。これらのアミン中の有機基は、アルキル基、アラルキル基、アリール基又はアルキルアリール基のいずれでもよい。好ましくは、直鎖状または分岐状のアルキル基である。これらの基は、さらに官能基を有していてもよい。このような官能基としては、OH基及び/又はエーテル基が挙げられる。これらのアミンは、またエトキシ化されていてもよい。好ましいアミンの例としては、直鎖状、環状及び/又は分岐状のC1〜C8モノ−、ジ−、及びトリ−アルキルアミン類及び直鎖状または分岐状C1〜C8モノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミン類、特に、モノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミン類、直鎖状または分岐状C1〜C8モノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミン類の直鎖状または分岐状C1〜C8アルキルエーテル、ジエチレントリアミンなどのオリゴアミン類やポリアミン類が挙げられる。これらのアミンは、複素環式アミン、例えばモルフォリン、ピペラジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピペリジンであってもよい。腐食防止性を有する複素環を使用することが特に好ましい。その例としては、ベンゾトリアゾール及び/又はトリルトリアゾールが挙げられる。
【0024】
二個以上の異なる構造単位(Ia)〜(If)が、同一のコポリマー中に存在してもよい。アミド基及び/又はイミド基を含む構造単位(Ia)、(Ib)、及び(Ic)、あるいはエステル基を含む構造単位(Id)及び(Ie)が存在することが好ましい。
【0025】
いずれの構造単位(Ia)〜(If)も、同じ官能基X1を有していてもよく、あるいは、これらの基X1が相互に異なっていてもよい。特に、CSNH2基とCN基とを組合わせて用いてもよい。
【0026】
すべての構造単位(I)の総量は、共重合によりコポリマー中に導入される全構造単位の総量に対して、好ましくは10〜90mol%、さらに好ましくは20〜80mol%、特に好ましくは30〜70mol%、例えば40〜60mol%である。
【0027】
構造単位(II)
構造単位(II)は、(I)とは異なる、モノエチレン性不飽和モノマーからなる一種以上の構造単位(II)である。
【0028】
これらは、構造単位(I)のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸及び/又は誘導体と共重合可能なら、いかなるモノエチレン性不飽和モノマーであってもよい。当業者であれば、所望のポリマー物性にあわせて適切な選択を行うことができる。このモノエチレン性不飽和モノマー(II)は、少なくとも一種のモノエチレン性不飽和炭化水素(IIa)及び/又は官能基X2で修飾されたモノエチレン性不飽和炭化水素(IIb)であってよい。
【0029】
(IIa)
基本的には、(IIa)としては、エチレン性不飽和基を有する全ての炭化水素が挙げられる。例えば、直鎖状または分岐状脂肪族炭化水素(アルケン類)及び/又は脂環式炭化水素(シクロアルケン類)である。また、この構造単位は、エチレン性不飽和基とともに芳香族基を有する炭化水素、特にビニル芳香族化合物であってもよい。好ましくは、二重結合をα位に有するエチレン性不飽和炭化水素である。一般的に、使用するモノマー(IIa)の少なくとも80%がα位に二重結合を有している。
【0030】
「炭化水素」という用語は、プロペンのオリゴマー、又はエチレン性不飽和基を有する非分岐状、又は好ましくは分岐状のC4〜C10オレフィンのオリゴマーを含んでいる。一般的に、このオリゴマーの数平均分子量Mnは、2300g/mol以上である。Mnは、好ましくは300〜1300g/mol、さらに好ましくは400〜1200g/molである。必要に応じて、さらに、C3〜C10オレフィンコモノマーを含むイソブテンオリゴマーが好ましい。この種のイソブテン系のオリゴマーを、以下「ポリイソブテン」と称す。これらのポリイソブテンのα−二重結合含有量は、好ましくは少なくとも70%であり、さらに好ましくは少なくとも80%である。このようなポリイソブテン(反応性ポリイソブテンともいう)は、当業者には公知であり、市販されている。
【0031】
上述のオリゴマーとは別に、C原子数が6〜30個のモノエチレン性不飽和炭化水素が、特に本発明の実施のために適している。このような炭化水素の例としては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン、エイコサン、ドコサン(いずれの場合も、好ましくは1−アルケン)、及びスチレンが挙げられる。
【0032】
好ましくは、C原子数が9〜27個の、さらに好ましくはC原子が12〜24個、例えばC原子数が18〜24個のモノエチレン性不飽和炭化水素である。異なる炭化水素の混合物を使用してもよい。これらは、異なる炭化水素からなる工業的混合物、例えば工業的なC20-24混合物であってもよい。
【0033】
使用するモノエチレン性不飽和炭化水素は、好ましくは直鎖状のあるいは少なくとも実質的に直鎖状の化合物である。「実質的に直鎖状」とは、側基があったとしても、これらの基がメチル基又はエチル基、好ましくはメチル基のみであることを意味する。
【0034】
さらに特に好ましいのは、上述のオリゴマー、好ましくはポリイソブテン類である。このような手段で、驚くべきことに、具体的には水溶液系での加工性を向上させることができる。しかし、これらのオリゴマーは、単一のモノマーとして使用されるのでなく、他のモノマー(IIa)とともに混合物として使用されることが好ましい。全モノマーの総量(II)に対するオリゴマーの含有量が、60mol%を超えないようにすることが好ましいことが判明した。含まれるとしても、そのオリゴマーの量は、一般的に1〜60mol%、好ましくは10〜55、さらに好ましくは20〜50mol%である。
【0035】
(IIb)
上記炭化水素(IIb)、即ち官能基X2で修飾されたモノエチレン性不飽和炭化水素は、エチレン性不飽和基を有し、その炭化水素の一個以上のH原子が官能基X2で置換されていれば、原則としていかなる炭化水素であってもよい。
【0036】
例えば、アルケン類、シクロアルケン類、芳香族基を有するアルケン類である。好ましくは、α位に二重結合を有するエチレン性不飽和炭化水素である。一般的に、上記のモノマー(IIb)は、3〜30個のC原子、好ましくは6〜24個のC原子、さらに好ましくは8〜18個のC原子を有する。これらは、通常、一個の官能基X2を有する。これらのモノマー(IIb)は、好ましくは、C原子数が3〜30個の直鎖状の又は実質的に直鎖状のα−不飽和共官能化アルケン類及び/又は4−置換スチレンである。
【0037】
この官能基X2を用いて、コポリマーの性状、例えば特定調合物中での溶解度や特定表面への接着性などを調整することができる。官能基X2は、好ましくは、−OR7、−SR7、−NR72、−NH(C=O)R7、COOR7、−(C=O)R7、−COCH2COOR7、−(C=NR7)R7、−(C=N−NR72)R7、−(C=N−NR7−(C=O)−NR72)R7、−(C=N−OR7)R7、−O−(C=O)NR7、−NR7(C=O)NR72、−NR7(C=NR7)NR7、−CSNR72、−CN、−PO272、−PO372、−OPO372、−SO37又は−Si(OR83からなる群より選択される少なくとも一種の基である。ただし、R7は、いずれの場合も、H、カチオン、好ましくは一価のカチオン、又はC原子数が1〜10個の炭化水素基、好ましくはC1〜C6アルキル基を表す。R8は、C1〜C6アルキル基である。さらに好ましくは、X2は−COOHである。
【0038】
好ましいモノマー(IIb)の例としては、ビニル酢酸や10−ウンデセンカルボン酸などのC4〜C20(α,ω)−エテニルカルボン酸;ビニルホスホン酸などのC2〜C20(α,ω)−エテニルホスホン酸、およびそのモノエステル又はジエステル又は塩など;アクリロニトリル、アリルニトリル、1−ブテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリル、1−、2−、3−又は4−ペンテンニトリルや1−ヘキセンニトリルなどのC3〜C20エテニルカルボニトリル;4−ヒドロキシスチレンや4−カルボキシスチレンなどの4−置換スチレン類などが挙げられる。二個以上の異なるモノマー(c1b')の混合物を用いてもよいであろう。好ましくは、(c1b')は10−ウンデセンカルボン酸である。
【0039】
(IIc)
上記のモノマー(IIa)とモノマー(IIb)に加えてあるいは代えて、他のモノエチレン性不飽和モノマー(IIc)を、構造単位(II)として用いてもよい。
【0040】
好ましいモノマー(IIc)としては、(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル化合物、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類があげられ、特に好ましくは、C1〜C20、好ましくはC2〜C10の直鎖状又は分岐状アルキル基の(メタ)アクリル酸エステル類、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。これらは、さらに官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよく、特に(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル又は(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどのOH官能性モノマーであってもよい。このモノマー(IIc)の他の例としては、1,4−ジメチロールシクロヘキサンモノビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテルや、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられる。
【0041】
構造単位(II)の含有量は、いずれの場合も、共重合によりコポリマー中に導入されるすべての構造単位の総量に対して、好ましくは10〜90mol%、さらに好ましくは20〜80mol%、特に好ましくは30〜70mol%、例えば40〜60mol%である。
【0042】
(IId)
構造単位(II)は、一般式(I'g)及び/又は(I'h)で表される非修飾モノエチレン性不飽和ジカルボン酸及び/又はその無水物からなる構造単位(IID)であってもよい。なお、R2、R3、及びMは、上述のとおりである。
【0043】
【化3】

【0044】
(IIe)
構造単位(II)は、さらに、構造単位(Ia)〜(If)に定義される構造単位(IIe)であってよい。ただし、その官能基は、官能基X1ではなく、X1とは異なる官能基X3である。官能基X3は、−OR7、−NR72、−NH(C=O)R7、COOR7、−(C=O)R7、−COCH2COOR7、−(C=NR7)R7、−(C=N−NR72)R7、−(C=N−NR7−(C=O)−NR72)R7、−(C=N−OR7)R7、−O−(C=O)NR7、−NR7(C=O)NR72、−NR7(C=NR7)NR7、−PO272、−PO372、−OPO372、−SO37、及び−Si(OR83からなる群より選択される一種であってよい。なお、R7とR8は、上述の定義どおりである。好ましい官能基は、OH、SO3H、又はPO3Hである。
【0045】
この構造単位(II)は、好ましくはモノマー(IIa)及び/又はモノマー(IIb)、さらに好ましくはモノマー(IIa)又はモノマー(IIa)と他のモノマー(II)との混合物である。好ましくは、複数のモノマー(IIb)の混合物である。混合物の場合、そのモノマー(IIa)の含有量は、好ましくは、全モノマー(II)の総量に対して、少なくとも40mol%である。ポリマーの合成法によっては、(IId)型のモノマーが通常、共存する。
【0046】
構造単位(III)
本発明のコポリマーは、その構成単位として、(I)及び(II)とは異なるが、(I)及び(II)と共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーを、0〜30mol%、好ましくは0〜10mol%、さらに好ましくは0〜5mol%、特に好ましくは0〜3mol%の量で含む。このようなモノマーは、必要に応じて、コポリマーの性状を厳密にコントロールするのに使用される。モノマー(III)を使用しないことが特に好ましい。
【0047】
このモノマー(III)の例として、二個以上の二重結合を有する化合物が挙げられる。具体的には、共役二重結合を有する炭化水素、例えばブタジエンやイソプレンが挙げられる。また、二個以上の非共役エチレン性不飽和二重結合を有する架橋性モノマーであってもよい。しかし、本発明のコポリマーを過剰に架橋させてはならない。もし架橋性モノマーを使用する場合、その量は、一般的に全モノマーの総量に対して、5mol%を超えるべきではなく、好ましくは3mol%、さらに好ましくは2mol%を超えるべきでない。
【0048】
コポリマーの調整
本発明のコポリマーは、好ましくはポリマー類似反応により調整される。
【0049】
このプロセスの場合、第一の工程において、未修飾のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸及び/又はその塩、上述のモノマー(II)及び、必要に応じてモノマー(III)からなるコポリマーが合成される。ジカルボン酸に代えてジカルボン酸の反応性誘導体を使用することも可能であり、その例としては、相当するジカルボン酸ハロゲン化物、又は特にジカルボン酸無水物が挙げられる。好ましくは、cis−ジカルボン酸の無水物、特に好ましくは無水マレイン酸を使用することができる。出発物質として使用するコポリマーは、下記の構造単位(IId1)及び/又は好ましくは構造単位(IId2)を有する。このようなコポリマーはまた、市場で入手可能である。
【0050】
【化4】

【0051】
出発材料としての未修飾ポリマーを、フリーラジカル付加重合で調製してもよい。フリーラジカル付加重合は、基本的には当業者には公知である。この重合は、好ましくは熱分解性重合開始剤を用いて実施されるが、もちろん光化学的に実施してもよい。
【0052】
トルエン、キシレン、脂肪族炭化水素、アルカン、ベンジン、又はケトン類などの非プロトン性溶媒を、重合溶媒として使用することが好ましい。比較的沸点の高い長分子鎖モノエチレン性不飽和炭化水素モノマーを、特に約150℃を超える沸点を持つものを用いる場合、溶媒を使用せずに実施することも可能である。その場合、その不飽和炭化水素自体が溶媒として作用する。
【0053】
熱開始剤を用いるフリーラジカル重合は、60〜250℃、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは100〜180℃、特に好ましくは130〜170℃で実施される。開始剤の量は、モノマー量に対して、0.1%〜10質量%、好ましくは0.2%〜5%、さらに好ましくは0.5%〜2質量%である。一般的に、約1質量%の量が好ましい。重合時間は、普通1〜12時間、好ましくは2〜10時間、より好ましくは4〜8時間である。このコポリマーは、当業者には公知の方法により溶媒から分離される。あるいは、無溶媒で直接製造される。
【0054】
未修飾コポリマー出発材料の調製後、ポリマー類似反応により、共重合ジカルボン酸単位、好ましくは相当するジカルボン酸無水物単位、さらに好ましくは無水マレイン酸単位を、一般式HO−R1−X1n(1)で表される機能性アルコール及び/又は一般式HR4N−R1−X1n(2)で表される機能性アミンと反応させる。ただし、R1、R4、n、及びX1は、上述の定義どおりである。これらは、好ましくは1,ω−官能性化合物であり、nは1である。化合物(1)と化合物(2)の例としては、一般式H2N−(−CH2−)k−CNで表される直鎖状の1−アミノ−コ−ニトリロアルカン(式中、kは1〜20、好ましくは2〜6)が挙げられ、その例としてはH2N−(−CH2−)6−CNやH2N−(−CH2−)4−CNが挙げられる。その他の例としては、HO−(−CH2−)k−CN、H2N−(−CH2−)k−CSNH2、HO−(−CH2−)k−CSNH2(例えばHO−CH2−CH2−CSNH2)やHO−(−CH2−)k−SH(例えば、HO−CH2−CH2−SHやH2N−(−CH2−)k−SH)が挙げられる。
【0055】
反応は、バルクで行ってもよいが、好ましくは適当な非プロトン性溶媒中で実施する。好ましい非プロトン性溶媒の例としては、特に、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジオキサン、THFなどの非プロトン性極性溶媒や、適当であれば、トルエンや脂肪族炭化水素などの非極性炭化水素が挙げられる。
反応にあたり、この未修飾コポリマーを例えば溶媒に溶解し、次いで、所望の機能性アルコールHO−R1−X1n(1)及び/又は所望の機能性アミンHR2N−R1−X1n(2)を所望量添加する。これらの官能化剤を、適宜、適当な溶媒に前もって溶解しておいてもよい。官能化は、好ましくは加熱下で実施する。適切な温度は、30〜150℃、好ましくは40〜130℃、さらに好ましくは60〜120℃である。適切な反応時間は2〜25時間である。第一級アミンを用いると、100℃までの温度では相当するアミドが優先的に得られるが、温度がさらに上昇すると、イミドも形成される。130〜140℃では、イミドの形成がすでに趨勢となっている。イミド構造の形成は、好ましくは避けるべきである。
【0056】
官能化剤(1)及び(2)の使用量は、望ましい官能化の程度により決まる。好ましい量は、ジカルボン酸単位に対して0.5〜1.5当量、好ましくは0.6〜1.2当量、さらに好ましくは0.8〜1.1当量、特に好ましくは約1当量である。
【0057】
修飾コポリマーが未反応の酸無水物基を保持している場合、第二の工程において、これらの基を加水分解させ開環させる。これは、通常、その有機溶液中に水と塩基を加え、激しく攪拌することで行われる。このためには、100℃以下の温度が適当であり、例えば80〜100℃が好ましい。
【0058】
もちろん、二個以上の機能性アルコール類HO−R1−X1n(1)及び/又はアンモニア及び/又は機能性アミンHR2N−R1−X1n(2)の混合物を用いてもよい。また、反応を逐次に、すなわち、まず機能性アルコール又はアミンとの反応を行い、次いで残りの機能性アミン又はアルコールを添加して反応を行ってもよい。
【0059】
得られる修飾コポリマーの有機溶液を、有機架橋性調合物の調整に直接用いてもよい。しかしもちろん、このポリマーを、当業者には公知の方法によりこれらの溶液から分離してもよい。
【0060】
水溶液系とするには、溶液に適当に水を加え、有機溶媒を当業者には公知の方法、例えば蒸留によって分離するができる。
【0061】
コポリマーを、完全にあるいは部分的に中和してもよい。水中への溶解度又は分散度を確保するためには、コポリマー溶液のpHは、一般的に少なくとも6、好ましくは少なくとも7であることが好ましい。中和のための好ましい塩基の例としては、アンモニア、アルカリ金属及びアルカリ金属の水酸化物、酸化亜鉛、直鎖状、環状及び/又は分岐状のC1〜C8モノ−、ジ−、及びトリ−アルキルアミン類、直鎖状または分岐状C1〜C8モノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミン類、特に、モノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミン類、直鎖状または分岐状C1〜C8モノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミンの直鎖状または分岐状C1〜C8アルキルエーテル類、オリゴアミン類、及びジエチレンやトリアミンなどのポリアミン類等が挙げられる。この塩基は、酸無水物基の加水分解の後に用いてもよいが、この加水分解の間に実際使用されることが好ましい。
【0062】
コポリマーの分子量Mwは、当業者により、所望の最終用途に応じて選ばれる。妥当と判断されるMwは、1000〜100000g/molであり、好ましくは1500〜50000g/mol、さらに好ましくは2000〜20000g/mol、特に好ましくは3000〜15000g/mol、例えば8000〜14000g/molである。
【0063】
このポリマー類似反応で官能化された塩基ポリマーは、一般的に二個以上の構造単位(Ia)〜(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)と、適当なら、官能化されていない基(I'g)と(I'h)を共に有する。この構造単位の比率は、用いる二官能性化合物(1)及び/又は(2)の性質、選択したポリマーと二官能性化合物の比率や反応条件により決まる。R4がHの場合、もちろんイミド単位が形成され、高い反応温度は一般的にイミド基の形成に有利に作用する。
【0064】
別の合成ルートにおいては、まず別合成工程で、エチレン性不飽和未修飾ジカルボン酸又はそのジカルボン酸誘導体、好ましくはジカルボン酸無水物、さらに好ましくはcis−ジカルボン酸無水物と、機能性アルコール類HO−R1−X1n(1)及び/又は機能性アミンHR4N−R1−X1n(2)とを反応させ、誘導体化されたジカルボン酸モノマーを形成する。次いで、上述のように、これらのモノマー誘導体を他のモノマーと共に重合させる。チオアミド基を含むコポリマーは、まずニトリル基を含むポリマーを合成し、重合後、基本的には公知の方法で、ニトリル基とH2Sを反応させてチオアミド基とすることで、合成することができる。H2Sとの反応は、塩基の存在下で行うことが有利である。例えば、ある圧力装置中でメタノールを溶媒として用いて実施する。変換の程度は、例えば13C−NMRでCNとCSNH2のシグナル強度を比較することで決定することができる。
【0065】
ポリマーの用途
本発明のポリマーは、広範囲の目的のいずれにも使用可能で、例えば腐食防止剤、被膜形成防止剤、接着促進剤又は分散助剤として使用可能である。
【0066】
特に、腐食防止剤としての使用が好ましい。この点で、構造単位(I)と(II)及び適当なら構造単位(III)の種類と量を調節して、ポリマーの特性を使用用途に応じて最適化することができる。例えば、有機溶媒に溶解するポリマーあるいは水及び/又は水性溶媒に溶解するポリマーを合成することができる。水溶液系で利用するには、構造単位(I)の比率が40mol%以上であることが好ましい。またこの目的のために、ヒドロキシスチレンやスチレンスルホン酸などの親水性修飾モノマーをモノマー(IIb)として使用してもよい。
【0067】
本発明のコポリマーは、例えば冷却水回路などの水溶液系における腐食防止剤あるいは被膜形成防止剤として使用することができる。
【0068】
特にコポリマーは、腐食防止塗料や被覆剤用の組成物を調製するのに適している。前記組成物は、大気腐食防止用の組成物又はコイル被覆用の組成物であってもよい。これらの目的のため、適当なバインダー化合物、顔料及び/又は充填剤、及び必要に応じ溶媒や他の添加物と混合される。この状況で、組成物の全成分の総量に対し、それぞれ0.1%〜40%、好ましくは0.2%〜20%、さらに好ましくは0.5%〜10質量%の量で使用することが好ましい。
【0069】
上述の組成物は、いかなる所望の金属の表面にも塗布可能で、特に、鉄、鋼、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム又はアルミ合金の保護に適している。
【0070】
コイル被覆用として適当なバインダー化合物の例としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン、及びアクリレート分散物系の熱硬化性化合物で通常100℃を超える温度で硬化するものが挙げられる。また、光化学的架橋性化合物を用いることもできる。前記組成物は、例えば浸漬又はロールにより金属コイルに塗布され、次いで加熱又は光照射で硬化させられる。
【0071】
大気腐食防止用に好ましいバインダー化合物の例としては、ポリアクリレート、スチレン−アクリレートコポリマー、スチレン−アルカジエンポリマー、ポリウレタン、又はアルキド樹脂からなる大気条件下で硬化するバインダー化合物が挙げられる。
【0072】
前記組成物は、例えば、はけ塗りや噴霧により金属の表面や鋼構造物の表面に塗布することができる。次いで、塗布された被膜を大気と接触して硬化させる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0074】
第A部:使用のコポリマーの調整
I部:出発材料の酸無水物含有コポリマーの調製
コポリマーA
MAn/C12オレフィン/C20-24オレフィン(モル比:1/0.6/0.4)のコポリマー
アンカー型スターラー、温度制御器、及び窒素導入口を備えた1500lの圧力反応器に、36.96kgのC20-24オレフィンを60℃で圧送し、さらに31.48kgのn−ドデ−1−センを吸引下で導入した。この初期投入物を150℃まで加熱した。次いで、1.03kgのジ−tert−ブチルパーオキシドからなる供給液1と30.57kgの溶融無水マレイン酸からなる供給液2とを、6時間かけで投入した。供給液1及び供給液2の投入後、混合物を150℃で2時間攪拌した。次いで、150〜200mbarで、アセトンとtert−ブタノールを蒸留除去した。
【0075】
コポリマーB
MAn/C12オレフィン/ポリイソブテン1000(モル比:1/0.8/0.2)のコポリマー
アンカー型スターラーと内部温度計を備えた2lのパイロット攪拌器中で、600.0g(0.6mol)のMnが1000g/molである高反応性ポリイソブテン(グリソパール(登録商標)1000、BASF社製、α−オレフィン含有量>80%)と322.5g(1.92mol)のC12オレフィンとを、窒素気流下で攪拌しながら150℃まで加熱した。次いで、294.0gの無水マレイン酸(80℃、3.0mol)からなる供給液1と13.0gのジ−tert−ブチルパーオキシド(モノマーに対して1%)と80.6g(0.48 mol)のC12オレフィンからなる供給液2を、6時間かけて投入した。供給液1及び供給液2の投入後、混合物を150℃で2時間攪拌した。この結果、やや黄色の固形ポリマーを得た。
【0076】
第II部:コポリマーの機能化
一般的な実験方法II−1
アンカー型スターラーと内部温度計を備えた2lのパイロット攪拌器に、有機溶媒に溶解した所定の無水マレイン酸−オレフィンコポリマーA又はBを投入し、この初期投入物を窒素雰囲気下においた。次いで、1当量の上記所望のヒドロキシル−又はアミノ−官能性化合物(1)又は(2)をy℃でx時間かけて滴下した。
【0077】
溶媒交換:
誘導体化の後、使用した有機溶媒を水で置換できる。このために、得られた混合物に水と塩基を加えてpHを所望のレベルとする。その後、有機溶媒を減圧下で蒸留して除去する。
【0078】
一般的な実験方法II−2:
アンカー型スターラーと内部温度計を備えた2lのパイロット攪拌器に、上記の特定の無水マレイン酸−オレフィンコポリマーA又はB、及び1当量の上記特定のヒドロキシル−又はアミノ−官能性化合物(1)又は(2)を投入する。この初期投入物を窒素雰囲気下に置き、y℃でx時間攪拌する。次いで、生成物を適当な有機溶媒で抽出する。
【0079】
誘導体化の後、上述のように、使用有機溶媒を水で置換できる。
【0080】
使用した特定のポリマー、使用したヒドロキシル−又はアミノ−官能性化合物(I)又は(II)、及び得られたコポリマー誘導体の性質の詳細を表2に示す。
【0081】
得られた誘導体はそれぞれNMRで分析した。NMRスペクトルの結果、いずれの場合も、OH基及び/又はNH2基がカルボキシル基と反応していることが分かった。
【0082】
【表1】

【0083】
第B部:性能試験
得られた未修飾及び修飾マレイン酸−オレフィンコポリマーを用いて性能試験を行った。
【0084】
試験は、三種の異なるコイル被覆材料(エポキシド、アクリレート、及びポリウレタン系材料)を用いて行った。
【0085】
エポキシバインダー系コイル被覆材料(有機)の基本組成
一体化前処理皮膜の製造に用いた調合剤の成分は、つぎのとおりである。
【0086】
【表2】

【0087】
これらの成分を上述の順で適当な攪拌容器中で攪拌し、さらに溶解機で10分間、予備分散させた。得られた混合物を、冷却ジャケット付のビーズ粉砕機に移し、その中で1.8〜2.2mmのSAZガラスビーズを用いて混合した。この混合物を、1時間半粉砕した。次いで、この粉砕物をガラスビーズから分離した。
【0088】
5.9質量部のブロックヘキサメチレンジイソシアネート(デスモジュール(登録商標)VP LS 2253、Bayer社製)及び0.4質量部の市販のスズ非含有架橋触媒(ボルチ(登録商標)VP 0245、ボルチャーズ社製)を、上述の順で、撹拌しながらこの粉砕物に添加した。
【0089】
アクリレートバインダー系コイル被覆材料(水溶液)の基本組成
使用した架橋性バインダーは、次の主要:n−ブチルアクリレート、スチレン、アクリル酸、及びヒドロキシプロピルメタクリレートからなる、アニオン的にアミンが安定化されたアクリレート水分散液(固形分含有量:30質量%)であった。
【0090】
適当な攪拌容器中で、上記の順で、18.8質量部の上記のアクリレート分散液、4.5質量部の分散添加物、1.5質量部の脱泡作用を有する流動性調整剤、5.5質量部のメラミン樹脂架橋剤(ルウィパル(登録商標)072、BASF社製)、0.2質量部の親水性熱分解法シリカ(アエロジ(登録商標)200V、デグサ社製)、3.5質量部のフィンタルクM5タルク、12.9質量部のチタニウムルチル2310白色顔料、8.0質量部の上記アクリレート分散液、3.5質量部のカルシウムイオン修飾二酸化珪素(シールデックス(登録商標)、グレースディビジョン社製)、4.9質量部のリン酸亜鉛(シコール(登録商標)ZP−BS−M、バールダルスケミスケファブリケン社製)、1.2質量部の黒色顔料(シコミックス(登録商標)シュワルツ、BASF社製)を混合し、さらに溶解機で10分間予備分散した。得られた混合物を冷却ジャケット付のビーズ粉砕機に移し、1.8〜2.2mmのSAZガラスビーズを用いて混合した。この混合物を、45分間粉砕した。次いで、この粉砕物をガラスビーズから分離した。
【0091】
この粉砕物を、撹拌下に、上述の順で、27質量部の上記アクリレート分散液、1.0質量部の脱泡剤、3.2パーセントのブロックスルホン酸、1.5質量部の脱泡剤、及び1.0質量部の流動性調整助剤と混合した。
【0092】
ポリウレタンバインダー系コイル被覆材料(水溶液)の基本組成:
使用した架橋性のバインダーは、軟質セグメントであるポリエステルジオール(Mn:約2000g/mol)、4,4'−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、酸性基含有モノマー、及び連鎖延長剤からなるポリウレタン水分散液(固形分含有量:44質量%、酸価:25、Mn:約8000g/mol、Mw:約21000g/mol)であった。
【0093】
適当な攪拌容器内で、上述の順で、18.8質量部の上記ポリウレタン分散液、4.5質量部の分散添加物、1.5質量部の脱泡作用を有する流動性調整剤、5.5質量部のメラミン樹脂架橋剤(ルウィパル(登録商標)072、BASF社製)、0.2質量部の親水性熱分解法シリカ(アエロジル(登録商標)200V、デグサ社製)、3.5質量部のフィンタルクM5タルク、12.9質量部のチタニウムルチル2310白色顔料、8.0質量部の上記ポリウレタン分散液、3.5質量部のカルシウムイオン修飾の二酸化珪素(シールデックス(登録商標)、グレースディビジョン社製)、4.9質量部のリン酸亜鉛(シコール(登録商標)ZP−BS−M、バールダルスケミスケファブリケン社製)、及び1.2質量部の黒色顔料(シコミックス(登録商標)シュワルツ、BASF社製)を混合し、溶解機で10分間分散させた。得られた混合物を冷却ジャケット付のビーズ粉砕機に移し、1.8から2.2mmのSAZガラスビーズを用いて混合した。この混合物を45分間、破砕した。次いで、この粉砕物をガラスビーズから分離した。
【0094】
この粉砕物を、撹拌下で、上述の順で、27質量部の上記ポリウレタン分散、1.0質量部の脱泡剤、3.2パーセントの酸性触媒(ブロックされたp−トルエンスルホン酸、ナキュール(登録商標)2500)、1.5質量部の脱泡剤、及び1.0質量部の流動性調整助剤と混合した。
【0095】
本発明のコポリマーの添加
上記のコポリマー誘導体を、それぞれ5質量%(組成物の固体成分当たりの固体コポリマーとして)の量で、上記のコイル被覆材料に添加した。このために、エポキシド系の有機塗布材料には、ブチルグリコールに上記のコポリマーを溶かした溶液を使用し、アクリレート系又はエポキシド系の塗布材料水溶液には、上記の水溶液又は乳濁液を使用した。
【0096】
鋼及びアルミニウムパネルへの塗布
Z型亜鉛めっき鋼板(OEHDG 2、ケメタル)及びアルミニウムシートAlMgSi(AA6016、ケメタル)を用いて、塗布試験を行った。これらの材料は、事前に既知の方法で洗浄した。
【0097】
上述のコイル被覆材料をコーティング棒を用いて、循環エア温度が185℃、基板温度が171℃の条件で、貫通型乾燥機において乾燥した場合に6μmの乾燥フィルムを与えるように塗布して、湿潤膜を形成した。
【0098】
比較のために、コポリマーを含まない塗布膜も調整した。
【0099】
本発明の被覆物の腐食防止効果を試験するため、これらの亜鉛めっき鋼板を、10週間、VDA [ドイツ自動車産業協会]環境サイクル試験(VDA試験方法No.621−415、1982年2月)にかけた。
【0100】
この試験では(下図を参照)、試料をまず1日間、塩水噴霧試験にかけ(5%NaCl溶液、35℃)、次いで交互に3回、湿条件(40℃、100%相対湿度)と乾条件(22℃、60%相対湿度)に暴露する。1サイクルは、2日間の乾条件相で終了する。1サイクルは、概略、次のように表される。
【0101】
【表3】

【0102】
合計10回の暴露サイクルを、次々と実施した。
【0103】
腐食暴露の終了後、鋼シートの腐食を、腐食標準試料と比較して、肉眼で評価した。無傷のフィルム表面上への腐食物の形成と掻き傷跡や縁でのフィルム下のクリープ腐食性とを評価した。
【0104】
試料を、腐食防止性のコポリマーを含まない比較試料と比較して、評価した。
【0105】
鋼シートの腐食防止効果は、DIN50021の塩水噴霧試験ででも評価した。
【0106】
アルミニウムシートでは、酢酸塩噴霧試験ESS(DIN50021、1988年6月)を行った。腐食暴露の終了後、得られたパネルを目視で評価した。本試験で評価される損傷は、フィルム全面における円形層剥離の頻度である。
【0107】
すべての試験において、塗布フィルムに引掻き傷をつけた。鋼板の場合、亜鉛皮膜を通して鋼の表面を引掻いた。
【0108】
試料は、次の基準で判定した。
0:コントロールと同等の腐食性損傷
+:コントロールと比べ腐食性損傷が少ない
++:コントロールと比べ大幅に腐食性損傷が少ない
−:コントロールより腐食性損傷が多い
試験結果の概要を表3〜表5に示した。
【0109】
【表4】

【0110】
この実施例より、この新たな誘導体化されたジカルボン酸単位を含むポリマーを用いると、コイル被覆材料の腐食防止性を向上できることが分かる。アルミニウム又は鋼のいずれの基板でも向上し、また通常、両方の基板で向上する。
【0111】
比較試験のホスホン酸基で修飾されたポリマー(ジカルボン酸単位あたり2つ)を塗布すると、亜鉛めっき鋼では向上するが、アルミニウムでは悪影響が生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造単位からなることを特徴とするコポリマー:
(I)構造単位(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)及び(If)
【化1】

(式中、
1は、非隣接C原子がO及び/又はNで置換されていてもよい、1〜40個のC原子を有する(n+1)価の炭化水素基を示し、
2、R3は、それぞれ独立して、H、メチル、又はC2〜C6アルキルを示し、又はR2とR3が一緒になって1,3−プロピレン又は1,4−ブチレンを示し、
4は、H、C1〜C10炭化水素基、又は−(R1−X1n)を示し、
Mは、H又はカチオンを示し、
ここで、X1は、−SR5、−CSNR52及び−CNからなる群より選択される官能基を示し、R5は、H又は1〜6個のC原子を有する炭化水素基を示し、nは1、2、又は3である)
からなる群より選択されるモノエチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体からなる1〜99mol%の少なくとも一種の構造単位(I)、
(II)(I)とは異なる、モノエチレン性不飽和モノマーからなる99〜1mol%の少なくとも一種の他の構造単位(II)、及び
(III)必要に応じて、(I)及び(II)とは異なる、エチレン性不飽和モノマーからなる0〜30mol%の少なくとも一種の他の構造単位(III)
(ただし、モノマー量は、それぞれコポリマー中の全モノマー単位の総量に基づく)。
【請求項2】
2とR3がHを示す請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
1が−CSNH2を示す請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
1が−CNを示す請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項5】
1が−SHを示す請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項6】
モノマー(II)として、少なくとも一種のモノエチレン性不飽和炭化水素(IIa)及び/又は官能基X2で修飾されたモノエチレン性不飽和炭化水素(IIb)を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項7】
モノエチレン性不飽和炭化水素(IIa)及び/又は(IIb)が6〜30個のC原子を有する請求項6に記載のコポリマー。
【請求項8】
さらに、少なくとも一種の反応性ポリイソブテンを、全モノマー(II)の総量に対して1〜60mol%含む請求項6又は7に記載のコポリマー。
【請求項9】
構造単位(I)の量が30〜70mol%であり、構造単位(II)の量が70〜30mol%である請求項1〜8のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項10】
未修飾モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、その塩又は酸無水物からなる1〜99mol%の構造単位(IId1)及び/又は(IId2)
【化2】

(式中、
2、R3は、それぞれ独立して、H、メチル、C2〜C6アルキルを示し、又はR2とR3が一緒になって1,3−プロピレン又は1,4−ブチレンを示し、
Mは、H又はカチオンを示す)、
(I)とは異なる、モノエチレン性不飽和モノマーからなる99〜1mol%の少なくとも一種の他の構造単位(II)、及び
必要に応じて、(I)及び(II)とは異なる、エチレン性不飽和モノマーからなる0〜30mol%の少なくとも一種の他の構造単位(III)、
(ただし、モノマー量は、それぞれコポリマー中の全モノマー単位の総量に基づく)
からなる未修飾コポリマーを出発原料として用い、
未修飾コポリマーを、二官能性アルコールHO−R1−X1n(1)及び/又は二官能性アミンHR4N−R1−X1n(2)(式中、R1は、非隣接C原子がO及び/又はNで置換されていてもよい、1〜40個のC原子を有する(n+1)価の炭化水素基を示し、R4は、H、C1〜C10炭化水素基、又は−(R1−X1n)を示し、X1は、−SR5、−CSNR52又は−CNからなる群から選択される官能基を示し、R5は、H又は1〜6個のC原子を有する炭化水素基を示し、nは1、2、又は3である)と反応させて、修飾コポリマーを得ることを特徴とするコポリマーの製造方法。
【請求項11】
ジカルボン酸単位が実質的に酸無水物単位(IId2)として存在する未修飾コポリマーを使用する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
2とR3がHを示す請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
二官能性化合物(1)及び/又は(2)とジカルボン酸単位及び/又はジカルボン酸無水物単位との数比が、0.5〜1.5である請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法により得られたコポリマー。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれか1項に記載のコポリマーを腐食防止剤として使用する方法。
【請求項16】
前記腐食防止剤をコイル被覆材料の添加剤として使用する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記腐食防止剤を塗料又は空気腐食防止用塗料組成物の添加剤として使用する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜9及び14のいずれか1項に記載のコポリマーを水溶液系への添加剤として使用する方法。

【公表番号】特表2008−528747(P2008−528747A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552636(P2007−552636)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050418
【国際公開番号】WO2006/079630
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】