説明

モノマーのアニオン重合に硫黄含有開始剤を使用する方法

ポリマー上に官能性の先端の基を与えるために、モノマーをアニオン重合するための開始剤を提示する。硫黄含有アニオン性開始剤由来の官能性の先端の基と、任意に、官能性の終結剤、カップリング剤、又は結合剤を使用することによりもたらされた官能基を更に有するポリマーも提供する。モノマーを、硫黄含有アニオン性開始剤と重合して、ポリマー上に官能性の先端の基を与える工程を有する、モノマーをアニオン重合する方法を提示する。官能性ポリマー及び充填材を含むエラストマー配合物も述べる。加硫可能なエラストマー配合物を含有するタイヤ構成部材からもたらされる減少した転がり抵抗を有するタイヤも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年10月30日に出願された米国仮出願第60/422,461号、及び2003年3月18日に出願された米国仮出願第60/455,508号の利益を得るものである。
【0002】
本発明は、官能性ポリマー、及び該官能性ポリマーから製造されたゴム加硫物に関する。
【背景技術】
【0003】
タイヤ製造の技術においては、ヒステリシスロスが低い、すなわち、熱に対する力学的エネルギーの損失が少ないゴム加硫物を使用するのが望ましい。ヒステリシスロスは、多くの場合、架橋結合したゴムのネットワーク内のポリマーの遊離端に加えて、充填材の凝集体の分離に帰因する。
【0004】
官能性ポリマーは、ヒステリシスロスを減少させ、バウンドラバーを増大させるために使用されている。官能性ポリマーの官能基が、ポリマーの遊離端の数を減らすと考えられている。また、官能基と充填材粒子との相互作用によって、充填材の凝集が抑えられ、それによって、充填材の凝集体の分離を原因とするヒステリシスロス(すなわち、ペイン(Payne)効果)が減少する。
【0005】
特定の官能性アニオン重合開始剤を選択することによって、ポリマー鎖の先端に官能性を有するポリマー生成物が得られる。また、官能性化合物でリビング・ポリマーを停止することによって、アニオン重合したポリマーの末端に官能基を付けることもできる。
【0006】
多くの場合、有機金属化合物を開始剤として用いることによって、共役ジエンモノマーをアニオン重合する。モノビニル芳香族モノマーを有する、及び有さない、ジエンモノマーのアニオン重合開始剤として既知である有機金属化合物の中には、例えば、アルキルリチウム化合物、トリアルキルスズリチウム化合物、及び特定のアミノリチウム化合物がある。リチオジチアン試薬の合成は、共役ケトンを増やすとして知られている。しかしながら、硫黄含有開始剤、特にリチウム・チオ・アセタールを基にした化合物を、ジエン、トリエン、モノビニル芳香族化合物、又はそれらを組み合わせたもののアニオン重合に使用することは全く知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
官能性ポリマーは、特にタイヤ構成部材の製造に好都合であるので、更なる官能性ポリマーが必要とされている。また、沈降シリカを、補強粒子充填剤としてタイヤに使用することが増加しているので、カーボンブラックとシリカの両方に対し親和性を有する官能性エラストマーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概して、本発明は、ジエンモノマー、トリエンモノマー、又はモノビニル芳香族モノマー、及びそれらを組み合わせたものを重合するための、新規有機金属アニオン重合開始剤を提供することによって、技術を進歩させるものである。
【0009】
本発明は、また、モノマーと、硫黄含有アニオン開始剤とを重合して、ポリマー上に官能性の先端の基を与える工程を有する、モノマーをアニオン重合する方法も提供する。
【0010】
本発明は、また、硫黄を含有する官能性の先端の基を有するポリマーも提供する。
【0011】
本発明は、また、硫黄含有官能性ポリマーを有するゴム組成物も提供する。
【0012】
本発明の方法は、更に、硫黄含有アニオン開始剤由来の先端の基を有するポリマーを含有するゴム配合物を含む少なくとも1種の構成部材を有する空気入りタイヤを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の官能性ポリマーは、ヒステリシスロスが減少した、カーボンブラック充填ゴム加硫物、及びカーボンブラック/シリカ充填ゴム加硫物、及びシリカ充填ゴム加硫物を提供するのに好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ジエン、トリエン、モノビニル芳香族化合物、及びそれらを組み合わせたものをアニオン重合するための開始剤として、リチオ・アルキル・チオ・アセタール及びリチオ・アリール・チオ・アセタールを含む、硫黄含有リチオ化合物を提供する。適した硫黄含有リチオ化合物は、下記一般式:
【化1】


[式中、Rは、炭素数1〜6のトリアルキル−シリル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、チエニル基、フリル基、及びピリジル基から選択され、Rには、任意に、以下の官能基:炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10の非末端アルキニル基、エーテル、tert−アミン、オキサゾリン、チアゾリン、ホスフィン、スルフィド、シリル、及びそれらの混合物のいずれかが付着していても良く、式中、Rは、炭素数2〜8のアルキレン基から成る群より選択され、Xは、硫黄、酸素、及びNR(Rは、上記で定義した通りであり、Rには、任意に、上述した官能基のいずれかが付着していても良い)から成る群より選択される]
で表される。
【0015】
本発明のtert−アミン官能基を有する硫黄含有リチオ化合物は、下記一般式:
【化2】


(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数3〜12のシクロアルキレン基、及び炭素数6〜18のアリーレン基から成る群より選択され、mは0〜約8までであり、R、R及びXは、上記に定義したとおりである)
を有する。
【0016】
好ましいリチオ・アルキル・チオ・アセタール開始剤は、下記式:
【化3】


で表される2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンである。
【0017】
好ましいリチオ・アリール・チオ・アセタール開始剤は、2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアン(PDT-Li)である。その構造は、下記式;
【化4】


で表される。
【0018】
本発明の他の開始剤の例としては:
【化5】


が挙げられる。
【0019】
本発明の開始剤を、開始剤前駆体化合物と、n−ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物とを反応させることによって製造しても良い。これらの開始剤前駆体は、下記一般式:
【化6】


(式中、R、R及びXは、上記に定義した通りである)
で表される。
【0020】
上記の硫黄含有リチオ化合物と同様に、開始剤前駆体も、以下の官能基:炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10の非末端アルキニル基、エーテル、tert−アミン、オキサゾリン、チアゾリン、ホスフィン、スルフィド、シリル、及びそれらの混合物のいずれかをR基に付着させていても良い。次に、これらの官能性前駆体化合物を有機リチウム化合物と反応させて、官能性硫黄含有リチオ開始剤を形成することができる。
【0021】
いくつかの代表的な種類の官能性前駆体は、以下の通りである。
【化7】

【0022】
既知の官能性フェニルの包括的な概要については、論文“Recent advance in living anionic polymerization of functionalized styrene derivatives”(Hiraoら、Prog. Polym. Sci. (2002) 1399-1471, Elsevior)を参照されたく、その内容を参照によって本願に援用する。
【0023】
重合前の、開始前駆体と有機リチウム化合物からの硫黄官能性開始剤、特に、2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアン及び2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアンの合成の例は、以下の通りであるが、これに限定されない。すなわち、市販の2−メチル−1,3−ジチアン又は2−フェニル−1,3−ジチアンの溶液を乾燥テトラヒドロフランに添加し、約−78℃に冷却する。次に、ブチルリチウムとヘキサンを含む溶液をそれに添加する。次いで、生じた溶液を約3時間攪拌し、約10℃より低い温度下に一晩置く。その後、生じた溶液を用いて、アニオン重合を開始する。このタイプの開始剤の製造は、モノマー溶液を添加する前に、重合反応器を備える適切な反応槽で行っても良い。
【0024】
開始剤前駆体の安定性に応じて、前記前駆体を製造し、保管するのではなく、開始剤をインサイチュで製造するのが望ましい。本発明のジチアン開始剤を、重合するモノマーを含む溶液内で、インサイチュで合成することができる。一般に、重合溶媒及び重合されるモノマー溶液を作製することによって、アニオン開始剤のインサイチュでの製造を行う。この最初の溶液を、一般には約−80℃〜約100℃、より好ましくは約−40℃〜約50℃、最も好ましくは約0℃〜約25℃に加熱し、リチウム化されていない開始剤前駆体と有機リチウム化合物をそれに添加する。次に、溶液を、約−80℃〜約150℃の範囲内の温度、より好ましくは約25℃〜約120℃の温度、最も好ましくは約50℃〜約100℃の温度に加熱し、約0.02時間〜約168時間、より好ましくは約0.08時間〜約48時間、最も好ましくは約0.16時間〜約2時間、又は望ましい官能性ポリマーを含む溶液(セメント)が形成するのに充分な期間反応させる。反応時間及び温度は、前駆体と有機リチウムを反応させ、その後、モノマー溶液を重合する必要に応じて変動しても良い。
【0025】
インサイチュでの開始剤の合成の例として、ヘキサン、スチレン・モノマー及びブタジエンを含む溶液を作製することを伴うものがあるが、これに限定されない。この第1の溶液を、約24℃に加熱し、2−メチル−1,3−ジチアンとブチルリチウムをそれに添加する。次に、溶液を、約54℃に加熱し、約40分間反応させる。
【0026】
本発明の開始剤は、アニオン重合したリビング・ポリマーに官能性を持たせるのに有用である。これらの官能性ポリマーは、官能性アニオン開始剤と特定の不飽和モノマーとを反応させて、高分子構造を増殖させることによって形成される。ポリマーの形成及び増殖の間中、高分子構造はアニオン性で、かつ“生きている(living)”。続いて反応に添加したモノマーの新しいバッチを既存の鎖のリビング末端に加え、重合度を増加させることができる。したがって、リビング・ポリマーは、リビング末端又は反応末端を有するポリマー断片である。アニオン重合については、「Principles of Polymerization,ch. 5(3rdEd. 1991)」(George Odian)又は「J. Am. Chem. Soc.,94 8768(1972)」(Panek)にさらに記載されており、その内容を参照によって本願に援用する。
【0027】
硫黄含有リチオ・アルキル・チオ・アセタール及び硫黄含有リチオ・アリール・チオ・アセタールを、アニオン重合開始剤として、望ましいポリマー特性に応じて大きく異なる量で用いることができる。一実施態様において、100gのモノマー当たり約0.1〜約100mmolのリチウム使用することが好ましく、100gのモノマー当たり約0.33〜10mmolのリチウムを使用することがより好ましい。
【0028】
アニオン重合したリビング・ポリマーを製造するのに使用することができるモノマーとして、アニオン重合の技術に従い重合することが可能ないずれのモノマーも挙げられる。これらのモノマーとして、エラストマーの単独重合体又は共重合体の形成をもたらすものが挙げられる。適したモノマーとしては、炭素数4〜12の共役ジエン、炭素数4〜18のモノビニル芳香族モノマー、及び炭素数6〜20のトリエンが挙げられるがこれらに限定されない。共役ジエンモノマーの例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、及び1,3−ヘキサジエンが挙げられるがこれらに限定されない。トリエンの例として、ミルセンが挙げられるがこれに限定されない。芳香族ビニルモノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、及びビニルナフタレンが挙げられるがこれらに限定されない。共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを含有するエラストマーの共重合体などの共重合体を製造する場合、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーは、95:5〜50:50、好ましくは95:5〜65:35の比率で通常使用される。
【0029】
典型的には、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran,THF)などの極性溶媒、又は種々の環状及び非環式のヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタン、それらのアルキル化誘導体、及びそれらの混合物、並びにベンゼンなどの非極性炭化水素内でアニオン重合を行う。
【0030】
共重合においてランダム化を促進し、ビニル含量を調整するために、極性コーディネーター(polar coordinator)を重合材料に添加しても良い。量は、リチウムの当量当たり0〜90又はそれ以上の当量の範囲内である。量は、望ましいビニル量、使用されるスチレンのレベル、及び重合温度に加えて、使用される具体的な極性コーディネーター(polar coordinator)(調整剤)の性質によって決まる。適した重合調整剤として、例えば、望ましい微細構造及び共重合体単位のランダム化をもたらすエーテル又はアミンが挙げられる。
【0031】
極性コーディネーター(polar coordinator)として有用な化合物には、酸素又は窒素のヘテロ原子及び非結合電子対を有するものが挙げられる。例として、モノアルキレングリコール及びオリゴアルキレングリコールのジアルキルエーテル、“クラウン”エーテル、テトラメチルエチレンジアミン(tetramethylethylene diamine,TEMEDA)などの第3級アミン、直線状のTHFオリゴマーなどが挙げられる。極性コーディネーター(polar coordinator)として有用な化合物の具体的な例としては、テトラヒドロフラン(THF)、2,2−ビス(2’−テトラヒドロフリル)プロパンなどの直線状及び環状のオリゴマーのオキソラニルアルカン、ジピペリジルエタン、ジピペリジルメタン、ヘキサメチルホスホラミド、N−N’−ジメチルピペラジン、ジアザビシクロオクタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、トリブチルアミンなどが挙げられる。直線状及び環状のオリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤は、米国特許第4,429,091号に記載されており、その内容を本願に参照によって援用する。
【0032】
重合を終結させ、更にポリマーの分子量を調整するために、終結剤(terminating agent)、カップリング剤、又は連結剤を使用しても良く、本明細書において、これらの物質総てを“終結試薬(terminating reagent)”とまとめて呼ぶ。有用な、終結剤(terminating agent)、カップリング剤、又は連結剤としては、水又はアルコールなどの活性水素化合物が挙げられる。これらの試薬のいくつかは、生じたポリマーに多官能性を与えるものである。すなわち、本発明により開始されたポリマーは、上記の官能性を有する先端の基を持ち、終結試薬(terminating reagent)、カップリング剤、及び連結剤をポリマー合成に使用した結果として第2の官能基も持っていても良い。
【0033】
有用な官能性の終結試薬(terminating reagent)は、米国特許第5,502,131号、米国特許第5,496,940号、及び4,616,069号に開示されており、その内容を本願に参照により援用し、該官能性の終結試薬(terminating reagent)としては、四塩化スズ、(R)SnCl、(R)SnCl、RSnCl、カルボジイミド、N−環状アミド、N,N’−二置換環状尿素、環状アミド、環状尿素、イソシアネート、シッフ塩基、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アルキルチオチアゾリン、二酸化炭素などが挙げられる。他の物質としては、アルコキシシランであるSi(OR)、RSi(OR)、RSi(OR)、環状シロキサン、及びそれらの混合物が挙げられる。有機部分のRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、約3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基、約6〜約20の炭素原子を有するアリール基、約7〜約20の炭素原子を有するアラルキル基から成る群より選択される。典型的なアルキル基としては、n−ブチル基、s−ブチル基、メチル基、エチル基、イソプロピル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、メンチル基などが挙げられる。アリール基及びアラルキル基としては、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。好ましいエンドキャッピング剤(endcapping agent)は、四塩化スズ、塩化トリブチルスズ、二塩化ジブチルスズ、オルト珪酸テトラエチル、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)である。以上、終結試薬(terminating reagent)を列挙したが、これらは可能なものを示すものであって、本発明を限定するものではない。終結試薬(terminating reagent)を用いることができるが、本発明の実施は、当該化合物の特定の試薬又は種類に限定されるものではない。
【0034】
終結させて、ポリマーの末端に官能基を付与することが好ましいが、例えば、四塩化スズ、又は四塩化珪素(SiCl)、エステルなどの他のカップリング剤を用いてカップリング反応によって終結させることが更に好ましい。
【0035】
アニオン重合したリビング・ポリマーは、バッチ法、セミバッチ(semi-batch)法又は連続法のいずれかによって製造することができる。バッチ重合は、モノマーと通常のアルカン溶媒の混合物を適した反応容器に装入し、次いで、極性コーディネーター(polar coordinator)(使用する場合)と開始剤化合物を添加することによって開始される。反応物を、約20℃〜約130℃の温度に加熱し、約0.1〜約24時間、重合を進行させる。この反応によって、反応末端又はリビング末端を有する反応性ポリマーが得られる。好ましくは、少なくとも約30%のポリマー分子がリビング末端を含有する。より好ましくは、少なくとも約50%のポリマー分子がリビング末端を含有する。さらにより好ましくは、少なくとも約80%のポリマー分子がリビング末端を含有する。
【0036】
連続重合は、モノマー、開始剤及び溶媒を適した反応容器に同時に装入することによって開始される。その後、適切な滞留時間経過後に生成物を取り出し、反応物を補充する連続手順が続く。
【0037】
セミ−バッチ(semi-batch)重合では、反応溶剤及び開始剤を反応容器に添加し、引き続き、モノマーを、温度、モノマー/開始剤/調整剤の濃度などに応じた割合で、時間をかけて添加する。連続重合とは異なり、生成物を反応器から連続して取り出さない。
【0038】
本発明の開始剤を用いて製造したポリマーの分子量は、数平均分子量(M)及び重量平均分子量(M)によって決定することができる。ポリブタジエンポリマーにおいては、Mの値は、約0.5kg/mol〜約500kg/molである。SBRなどの共重合体においては、Mの値は、約0.5kg/mol〜約500kg/molである。
【0039】
官能性ポリマーの形成後、加工助剤、及びオイルなどのその他の任意の添加剤をポリマー・セメントに添加することができる。その後、官能性ポリマーと他の任意の成分を溶媒から分離し、好ましくは乾燥する。脱溶媒(desolventization)及び乾燥に関する従来の方法を使用してもよい。一実施態様において、官能性ポリマーを、溶媒の蒸気脱溶媒(steam desolventization)又は溶媒の熱水凝固に続いて濾過することによって溶媒から分離してもよい。残留溶媒は、オーブン乾燥又はドラム乾燥などの従来の乾燥技術を用いて除去してもよい。別の方法として、セメントを直接ドラム乾燥しても良い。
【0040】
本発明の官能性ポリマー、及び本発明の当該官能性ポリマーを含むゴム組成物は、タイヤ構成部材を製造するのに特に有用である。これらのタイヤ構成部材は、本発明の官能性ポリマーを単独で使用することによって、又は他のゴム状ポリマーと共に使用することによって製造することができる。使用可能な他のゴム状エラストマーとしては、天然エラストマー及び合成エラストマーが挙げられる。合成エラストマーは、典型的には、共役ジエンモノマーの重合により得られる。これらの共役ジエンモノマーを、芳香族ビニルモノマーなどの他のモノマーと共重合させてもよい。他のゴム状エラストマーは、エチレンと、1種又は複数種のα−オレフィン、及び任意に1種又は複数種のジエンモノマーとを重合することにより得ても良い。
【0041】
有用なゴム状エラストマーとしては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、イソブチレン−イソプレン共重合体、ネオプレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、イソプレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、及びそれらの混合物が挙げられる。これらのエラストマーは、直線状、分岐状、及び星型を含めた無数の高分子構造を有する。好ましいエラストマーとしては、タイヤ産業に多く使用されることから、天然ゴム、イソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、及びブタジエンゴムが挙げられる。
【0042】
ゴム組成物は、無機充填材及び有機充填材などの充填材を含んでも良い。有機充填材としては、カーボンブラック及びスターチが挙げられる。無機充填材としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレイ(水和した珪酸アルミニウム)及びそれらの混合物が挙げられる。好ましい充填剤は、カーボンブラック、シリカ及びそれらの混合物である。
【0043】
エラストマーを、カーボンブラック単独、又はカーボンブラックとシリカとの混合物のあらゆる形と配合することができる。カーボンブラックを、約0〜約100phrの範囲内、好ましくは約5〜約80phrの範囲内の量で含むことができる。カーボンブラックとシリカの両方を補強充填材として組み合わせて用いる場合、多くの場合、カーボンブラックとシリカとの比率が約10:1〜約1:4となるようにそれらを用いる。
【0044】
カーボンブラックとしては、よく用いられ、工業的に製造されているカーボンブラックのいずれも挙げられるが、少なくとも20m/g、より好ましくは少なくとも35m/g、最大で、200m/g又はそれ以上の表面積(EMSA)を有するものが好ましい。本願で使用される表面積の値は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(cetyltrimethyl-ammonium bromide,CTAB)技術を用いて、ASTM D-1765によって決定される。有用なカーボンブラックの中には、ファーネス・ブラック、チャンネル・ブラック、及びランプ・ブラックがある。より具体的には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、良押出性ファーネス(FEF)ブラック、微粒性ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、中補強性ファーネス(SRF)ブラック、中加工(medium processing)チャンネル・ブラック、硬加工(hard processing)チャンネル・ブラック、及び導電(conducting)チャンネル・ブラックが挙げられる。利用可能なその他のカーボンブラックとしてはアセチレン・ブラックがある。上記のブラックの2種又は3種以上の混合物を、本発明のカーボンブラック生成物を製造するのに用いることができる。本発明の加硫可能なエラストマー組成物の製造に使用されるカーボンブラックは、造粒した形状又は造粒されていない綿状の塊であっても良い。好ましくは、より均一に混合するために、造粒されていないカーボンブラックが好ましい。
【0045】
適したシリカ補強充填材の例としては、沈降非晶質シリカ、湿潤シリカ(水和した珪酸)、乾燥シリカ(無水珪酸)、ヒュームド・シリカ、珪酸カルシウムなどが挙げられるがこれらに限定されない。他の適した充填材としては、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウムなどがある。これらのうち、沈降、非晶質、湿潤処理(wet-process)の水和したシリカが好ましい。これらのシリカは、水中で化学反応によって製造され、それにより、超微細な球状粒子として沈降しているので、よく言われるように沈降している。これらの主要な粒子は強く凝集し、凝集体となり、言い換えると、比較的弱く結合し、集塊となる。BET方法で測定した表面積によって、様々なシリカの補強特性の最も良い指標が得られる。本発明のための所定のシリカにおいては、表面積は、約32m/g〜約400m/gであるべきであり、約100m/g〜約250m/gの範囲が好ましく、約150m/g〜約220m/gの範囲が最も好ましい。シリカ充填材のpHは、概して、約5.5〜約7又はそれを少し超えたものであり、好ましくは約5.5〜約6.8である。
【0046】
シリカは、約0〜約100phrの量で、好ましくは約5〜約80phrの量で、より好ましくは約30〜約80phrの量で使用することができる。有用な上限値の範囲は、このタイプの充填材によって与えられる高い粘性によって制限される。使用することができる市販のシリカのいくつかには、PPG Industries(Pittsburgh,PA)製のHi-Sil(登録商標)190、Hi-Sil(登録商標)210、Hi-Sil(登録商標)215、Hi-Sil(登録商標)233、Hi-Sil(登録商標)243などあるがこれらに限定されない。多くの有用な商用銘柄の種々のシリカは、Degussa Corporation(例えば、VN2、VN3)、Rhone Poulenc(例えば、Zeosil(登録商標)1165MP)、及びJ.M. Huber Corporationから入手可能である。
【0047】
本発明のエラストマー配合物は、任意に、メルカプトシラン、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィド、3−チオシアナトプロピルトリメトキシシラン、若しくはその種の他のもの、又はゴム配合技術において当業者に既知であるいずれのシリカカップリング剤などのシリカカップリング剤を更に含むことができるが、シリカカップリング剤はこれらに限定されない。メルカプトシランの例としては、1−メルカプトメチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチル−ジエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロキシシラン、18−メルカプトオクタデシルジエトキシクロロシランなどが挙げられるがこれらに限定されない。ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィド・シリカカップリング剤の例としては、Degussa Inc.(New York,NY)により商標名Si69の下市販されているビス(3−トリエトキシシリル−プロピル)テトラスルフィド(bis(3-triethoxysilyl-propyl)tetrasulfide、TESPT)、Desussaから入手可能であるビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(bis(3-triethoxysilylpropyl)disulfide、TESPD)もしくはSi75、又はCromptonから入手可能であるSilquest(登録商標)A1589が挙げられるがこれらに限定されない。ポリスルフィドオルガノシラン・シリカカップリング剤を、シリカの重量を基準として、約0.01重量%〜約20重量%、好ましくは約0.1重量%〜約15重量%、特に好ましくは約1重量%〜約10重量%の量で含むことができる。
【0048】
シリカ充填材を含む配合は、米国特許第6,221,943号、第6,342,552号、第6,348,531号、第5,916,961号、第6,252,007号、第6,369,138号、第5,872,176号、第6,180,710号、第5,866,650号、第6,228,908号、及び第6,313,210号にも開示されており、それらの内容を本願に参照によって援用する。
【0049】
エラストマー組成物を、種々の加硫可能なポリマーと、補強充填材、及び加硫剤(適した加硫剤の一般的な開示内容について、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3rd ed.,Wiley Interscience,N.Y. 1982,Vol. 20,pp.365-468、特に、“Vulcanization Agents and Auxiliary Materials”pp.390-402を参照することができる)、活性剤、凝固遅延剤、及び促進剤、オイルなどの加工添加剤、粘着付与樹脂を含む樹脂、可塑剤、顔料、別の充填材、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、素練り促進剤などの一般に使用される添加材料とを混合するような、本技術分野で従来用いられている混合装置及び手法を用いることによって配合するか、又は混合するが、添加材料はこれらに限定されない。当業者に既知であるように、上記の添加剤は、従来の量で選択され、一般に使用される。例えば、タイヤ構成部材の配合物は、典型的には、エラストマー、充填材、加工オイル/加工助剤、劣化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、硫黄、促進剤、及びカップリング剤を含むが、これに限定されない。当該配合物は、そのような更なる材料を、下記の量:
充填材:約0〜約150phr、好ましくは約30〜約80phr;
加工オイル/加工助剤:約0〜約75phr、好ましくは約0〜約40phr;
劣化防止剤:約0〜約10phr、好ましくは約0〜約5phr;
ステアリン酸:約0〜約5phr、好ましくは約0〜約3phr;
酸化亜鉛:約0〜約10phr、好ましくは約0〜約5phr;
硫黄:約0〜約10phr、好ましくは約0〜約4phr;
促進剤:約0〜約10phr、好ましくは約0〜約5phr;
カップリング剤:約0〜約30phr、好ましくは約5〜約15phr、
で有することができる。
【0050】
好ましくは、ゴム成分及び補強充填材のみならず、加工オイル、酸化防止剤などの他の任意の加硫しない添加剤を含む最初のマスターバッチを製造する。マスターバッチを製造した後、続いて、配合物の粘性を減少させ、補強充填材の分散を向上させるために、材料を第1の混合物に全く添加しないか、又は加硫しない材料の残りを添加する1又は複数の任意の再混練(remill)段階を行うことができる。混合プロセスの最終ステップでは、加硫剤を混合物に添加する。
【0051】
従来のゴム加硫条件を用いて加硫した場合に生じたエラストマー配合物では、ヒステリシス特性が減少し、該エラストマー配合物は、転がり抵抗が減少したタイヤのためのトレッドゴムとして使用するのに特に適している。
【0052】
本発明の更なる実施態様を以下の実施例において説明する。
【0053】
(一般的な実験手順)
分子量の決定: 分子量を、Model 2414 リフラクトメーター、及びModel 996 フォトダイオード・アレイ・ディテクター(UV)を備えたWaters Model 150-C機器を使用して、ゲル透過クロマトグラフィー(gel permeation chromatography,GPC)によって決定した。分子量を、ポリスチレン・スタンダードに基づいた汎用校正曲線から計算し、以下のSBRについてのMark-Houwink定数:k=0.000269、α=0.73を用いて補正した。
【0054】
スチレン及びビニルの含量、並びに小分子構造の確認: スチレン及びビニルの含量、並びに小分子構造の確認を、300MHzのGemini 300 NMRスペクトロメーターシステム(Varian)による1H-NMR(CDCl3)及び13C NMRの測定結果を用いて決定した。
【0055】
ガラス転移温度(T): ガラス転移温度を、DSC 2910 示差走査熱量計(TA Instruments)を用いて決定した。Tを、熱容量(C)の変化において変曲点が生じた温度として決定した。
【0056】
動的機械特性: 動的機械特性を、2つの技術を用いて測定した。パラレル・プレート・モード(parallel plate mode)のレオメトリクス・ダイナミック・アナライザー(Rheometrics Dynamic Analyzer)RDAII(Reometric Scientific)を、厚さ15mm、直径9.27mmのボタンに対して使用した。損失弾性率、G”、貯蔵弾性率、G’、及びtanδを、0.25〜14.5%の変形に渡って、1Hz及び50℃で測定した。ペイン効果を、G’(0.25%E)−G’(14.0%E)の差を計算することによって測定した。また、ねじれ直角モード(torsion rectangular mode)のRDA700(Rheometric Scientific)を、31.7mm x 12.7mm x 2.0mmの寸法を有するサンプルに対して使用した。温度は、5℃/分の割合で、−80℃から100℃まで上昇させた。モジュラス(G’及びG”)を、5Hzの周波数、及び−80℃から−10℃までは0.5%、−10℃から100℃までは2%の変形を用いて得た。
【0057】
ムーニー粘度: ムーニー粘度の測定は、ASTM−D 1646−89に従って行った。
【0058】
引張り: 引張りの機械的特性を、ASTM−D 412(1998)Method Bに従って、25℃で測定した。引張試験の試験片は、幅1.27mm、厚さ1.90mmの寸法を有するリングである。25.4mmの規定のゲージ長さを引張試験に用いる。
【0059】
加硫: 本発明では、加硫を、ムービング・ダイ・レオメーター(moving die rheometer、MDR)を用いて、ASTM D2084(1995)に従って測定した。
【0060】
バウンドラバー: いくつかの相互作用を介して充填材に結合したゴムのパーセンテージの測定値であるバウンドラバーを、室温でトルエンを用いて溶媒抽出することによって決定した。より詳細には、各未加硫ゴム処方物の試験片を3日間トルエンの中に静置した。溶媒を除去し、残留物を乾燥し、その重量を測定した。次に、バウンドラバーのパーセンテージを、下記式:
%バウンドラバー=[100(w−F)]/R
(式中、wは、乾燥した残留物の重量であり、Fは、オリジナル・サンプル中の充填材及びその他の溶媒不溶物の重量であり、Rは、オリジナル・サンプル中のゴムの重量である。)に従って決定した。
【0061】
薄層クロマトグラフィー(Thin Layer Chromatography、TLC): TLCを、Sigma-Aldrich TLCプレート、アルミニウム上のシリカゲル上で行った。
【0062】
カラムクロマトグラフィー: カラムクロマトグラフィーを、シリカゲル吸着剤(200〜425メッシュ、Fisher Scientific)を用いて行った。
【0063】
(実験全般)
本発明の実施を示すために、以下の実施例を製造し、試験した。
【0064】
正の窒素パージ下で、抜き取った隔壁ライナー(extracted septum liner)と穴のあいたクラウンキャップ(perforated crown cap)で予め密封した、乾燥した28オンス(0.8L)又は7オンス(0.2L)のガラス瓶を総ての製造に使用した。
【0065】
乾燥したブタジエン・ヘキサン溶液(21〜23重量%のブタジエン)、乾燥したスチレン・ヘキサン溶液(スチレン混合物、33重量%のスチレン)、乾燥ヘキサン、n−ブチルリチウム(1・68Mのヘキサン溶液)、環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤のヘキサン溶液(1.6Mのヘキサン溶液、水素化カルシウムで保管)、及びブチル化したヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)のヘキサン溶液を用いた。テトラヒドロフラン(THF)を、カリウム・ベンゾフェノンケチルより蒸留した。
【0066】
市販の試薬及び開始材料(Aldrich Chem. Co.及びFisher Scientific)としては、以下のもの:2−メチル−1,3−ジチアン;2−トリメチルシリル−1,3−ジチアン、2−メチルチオ−2−チアゾリン、オルト珪酸テトラエチル、1−ブロモ−3−クロロプロパン、2−フェニル−1,3−ジチアン、ベンズアルデヒド・ジメチル・アセタール、4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−(ジブチルアミノ)ベンズアルデヒド、1,3−プロパンジチオール、3−メルカプト−1−プロパノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(1,3-dimethyl-2-imidazolidinone、DMI)、塩化トリブチルスズ、及び塩化スズ(IV)があり、これらを、さらに精製することなく購入した状態で用いた。
【0067】
以下の実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。本発明は、特許請求の範囲によって定められる。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンの合成
セラムキャップを備えた0.8Lの窒素パージした瓶に、乾燥テトラヒドロフラン350mL、及び2−メチル−1,3−ジチアン10mL(83.5mmol)を添加した。瓶を−78℃に冷却し、1.510Mのブチルリチウム(84.3mmol)ヘキサン溶液55.83mLを瓶に添加した。反応物を−78℃で3時間攪拌し、その後、−25℃で一晩保存した。生じた溶液の滴定によって、溶液が0.234Mの活性リチウム化合物を含むことが示された。この化合物の構造を解明するために、溶液を、8.26mLの1−ブロモ−3−クロロプロパン(83.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液90mLの乾燥した溶液に−78℃下で添加した。3時間後、生成物を、GC/MSによって調べ、生成物が、95%を超える2−(3−クロロプロピル)−2−メチル−1,3−ジチアンを含むことが分かった。1−クロロヘプタンは全く観察されず、これによって、ブチルリチウムが2−メチル−1,3−ジチアンと完全に反応したことが示された。
【0069】
(実施例2)
2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
攪拌器を備えた1.75Lの窒素パージした反応器に、ヘキサン1.12kg、33重量%のスチレン・ヘキサン溶液0.48kg、及び22.0重量%のブタジエン・ヘキサン溶液2.89kgを添加した。次に、反応器を24℃に加熱し、1.6Mの環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤・ヘキサン溶液0.5mL、0.234Mの2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアン・テトラヒドロフラン溶液22.63mLを反応器に装入した。その後、反応器のジャケットを54℃に加熱した。15分後、バッチの温度は76.5℃に達した。さらに25分経過した後、セメントを反応器から取り出し、ブチル化したヒドロキシトルエン(butylated hydroxy toluene、BHT)を含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、下記の特性を有するポリマーを得た。M=153kg/mol、M=167kg/mol、T=−44.4℃、21.7%スチレン、1.3%ブロック・スチレン、32.1%ビニル、及び46.2%1,4−ブタジエンの結合(incorporation)。
【0070】
(実施例3)
2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
攪拌器を備えた1.75Lの窒素パージした反応器に、ヘキサン1.12kg、33重量%のスチレン・ヘキサン溶液0.48kg、及び22.0重量%のブタジエン・ヘキサン溶液2.89kgを添加した。次に、反応器を24℃に加熱し、1.6Mの環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤・ヘキサン溶液0.5mL、0.234Mの2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアン・テトラヒドロフラン溶液16.96mLを反応器に装入した。その後、反応器のジャケットを54℃に加熱した。17分後、バッチの温度は75.7℃に達した。さらに10分経過した後、セメントを反応器から取り出し、ブチル化したヒドロキシトルエン(butylated hydroxy toluene、BHT)を含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、下記の特性を有するポリマーを得た。M=208kg/mol、M=240kg/mol、T=−43.8℃、22.2%スチレン、1.6%ブロック・スチレン、31.2%ビニル、及び46.5%1,4−ブタジエンの結合(incorporation)。
【0071】
(実施例4)
2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンを用いたスチレン−ブタジエン共重合体のインサイチュでの合成
攪拌器を備えた1.75Lの窒素パージした反応器に、ヘキサン1.07kg、33重量%のスチレン・ヘキサン溶液0.48kg、及び21.6重量%のブタジエン・ヘキサン溶液2.95kgを添加した。次に、反応器を24℃に加熱し、1.6Mの環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤・ヘキサン溶液0.5mL、0.5Mの2−メチル−1,3−ジチアン・ヘキサン溶液8.47mL、1.55Mのブチルリチウム・ヘキサン溶液3.42mLを反応器に装入した。その後、反応器のジャケットを54℃に加熱した。28分後、バッチの温度は68.6℃に達した。さらに10分経過した後、セメントを反応器から取り出し、ブチル化したヒドロキシトルエン(butylated hydroxy toluene、BHT)を含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、下記の特性を有するポリマーを得た。M=135kg/mol、M=142kg/mol、T=−56.6℃。
【0072】
(比較例5)
ブチルリチウムを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
攪拌器を備えた1.75Lの窒素パージした反応器に、ヘキサン1.07kg、33重量%のスチレン・ヘキサン溶液0.48kg、及び21.6重量%のブタジエン・ヘキサン溶液2.95kgを添加した。次に、反応器を24℃に加熱し、1.6Mの環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤・ヘキサン溶液0.5mL、テトラヒドロフラン22.6mL、1.55Mのブチルリチウム・ヘキサン溶液3.42mLを反応器に装入した。その後、反応器のジャケットを54℃に加熱した。15分後、バッチの温度は71.2℃に達した。さらに10分経過した後、セメントを反応器から取り出し、ブチル化したヒドロキシトルエン(butylated hydroxy toluene、BHT)を含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、下記の特性を有するポリマーを得た。M=157kg/mol、M=168kg/mol、T=−42.5℃、21.3%スチレン、1.1%ブロック・スチレン、33.8%ビニル、及び45.0%1,4−ブタジエンの結合(incorporation)。
【0073】
(比較例6)
ブチルリチウムを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
攪拌器を備えた1.75Lの窒素パージした反応器に、ヘキサン1.07kg、33重量%のスチレン・ヘキサン溶液0.48kg、及び21.6重量%のブタジエン・ヘキサン溶液2.95kgを添加した。次に、反応器を24℃に加熱し、1.6Mの環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤・ヘキサン溶液0.5mL、テトラヒドロフラン16.96mL、1.55Mのブチルリチウム・ヘキサン溶液2.56mLを反応器に装入した。その後、反応器のジャケットを54℃に加熱した。17分後、バッチの温度は75.5℃に達した。さらに10分経過した後、セメントを反応器から取り出し、ブチル化したヒドロキシトルエン(butylated hydroxy toluene、BHT)を含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、下記の特性を有するポリマーを得た。M=190kg/mol、M=207kg/mol、T=−44.0℃、22.1%スチレン、1.3%ブロック・スチレン、32.1%ビニル、及び45.9%1,4−ブタジエンの結合(incorporation)。
【0074】
次に、3種のポリブタジエンの実施例又は比較例であるNo.7〜9を、ブチルリチウム(コントロール)開始剤、2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアン開始剤、及び2−リチオ−2−トリメチルシリル−1,3−ジチアン開始剤を用いて製造した。ジチアンは両方ともインサイチュで製造した。
【0075】
(比較例7)
ブチルリチウムで開始したコントロールのポリブタジエンの合成
セラムキャップを備えた0.8Lの窒素パージした瓶に、1.6Mのブチルリチウム・ヘキサン溶液0.47mLを添加した。次に、ヘキサン27.3g、22.0%のブタジエン・ヘキサン溶液272.7gを添加した。反応物を50℃に4時間加熱した。生じたポリマー溶液を、ブチル化したヒドロキシトルエン(butylated hydroxy toluene、BHT)を含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、下記の特性を有するポリマーを得た。M=88.2kg/mol、M=104.5kg/mol、M/M=1.18、T=−94.2℃。
【0076】
(実施例8)
インサイチュで生成した2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンで開始したポリブタジエンの合成
セラムキャップを備えた0.8Lの窒素パージした瓶に、0.5Mの2−メチル−1,3−ジチアン0.59mL、1.6Mのブチルリチウム・ヘキサン溶液0.47mLを添加した。次に、ヘキサン27.3g、22.0%のブタジエン・ヘキサン溶液272.7gを添加した。反応物を50℃に4時間加熱した。生じたポリマー溶液を、BHTを含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、下記の特性を有するポリマーを得た。M=101.6kg/mol、M=127.5kg/mol、M/M=1.26、T=−94.6℃。
【0077】
(実施例9)
インサイチュで生成した2−リチオ−2−トリメチルシリル−1,3−ジチアンで開始したポリブタジエンの合成
セラムキャップを備えた0.8Lの窒素パージした瓶に、1.0Mの2−トリメチルシリル−1,3−ジチアン0.29mL、1.6Mのブチルリチウム・ヘキサン溶液0.47mLを添加した。次に、ヘキサン27.3g、22.0%のブタジエン・ヘキサン溶液272.7gを添加した。反応物を50℃に4時間加熱した。生じたポリマー溶液を、BHTを含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、下記の特性を有するポリマーを得た。M=81.9kg/mol、M=125.9kg/mol、M/M=1.54、T=−93.9℃。
【0078】
続いて、3種のポリブタジエンポリマーを他の材料と配合して、加硫可能なエラストマー配合物を製造した。ゴム100質量部当たりの成分の質量部(phr)を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
マスターバッチを、300gのブラベンダー・ミキサー(Brabender・mixer)で、60rpm、133℃で操作して最初の配合物を混合することによって製造した。最初に、ポリマー(それぞれ比較例7、実施例8、9)をミキサー内に入れ、0.5分後、ステアリン酸以外の残りの材料を添加した。3分後、ステアリン酸を添加した。最初の成分を5〜6分間混合した。混合の終わりには、温度は約165℃であった。各サンプルをミルに移し、ミルを60℃の温度で操作し、シートに成型し、続いて室温に冷却した。
【0081】
マスターバッチと加硫材料をミキサーに同時に添加することによって最終の成分を混合した。最初のミキサー温度は65℃であり、ミキサーを60回転で操作した。材料の温度が100〜105℃となる2.25分後に、最終の材料をミキサーから取り出した。最終の材料を、Dynastatボタンのシート及び6x6x0.075インチ(15x15x0.1875cm)のシートに成型した。ホットプレス内に置いた標準モールド内で、サンプルを171℃で15分間加硫した。
【0082】
次に、実施例10〜12の得られたエラストマー配合物の物理試験を行った。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
表2のデータから、比較例7のポリマーを含むコントロールの配合物(比較例10)と比較して、開始剤由来の官能性の先端の基を有するポリマーを含むエラストマー配合物(配合実施例11及び12)ではtanδが減少した(ヒステリシスが改善された)ことが分かる。ここで留意すべきことは、tanδとΔG’の両方がコントロールの比較例10よりも低く、ジチアンの官能性を有するポリマーが充填材と相互作用することを示していることである。tanδとΔG’の値が低いことは、また、当該ゴムで製造したタイヤが低い転がり抵抗特性を有することも示す。次の一連の実施例は、リチオ・アリール・チオ・アセタールの開始剤としての使用を示す。
【0085】
(実施例13)
2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアンの合成
2−フェニル−1,3−ジチアン(2.1g,10.69mmol)のTHF(5mL)とシクロヘキサン(10mL)の溶液に、n−ブチルリチウム(6.37mL,1.68Mのヘキサン溶液)をシリンジによって一滴ずつ−78℃下で添加した。溶液を0℃で更に3時間攪拌した。生じた0.5Mの2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアン(PDT-Liと略す)を、ブタジエン及び/又はブタジエン/スチレンを重合するためのアニオン性開始剤に使用し、冷凍庫内にて、窒素の不活性雰囲気内で保存した。
【0086】
(実施例14)
2−フェニル−1,3−オキサチアンの合成
磁気攪拌子と還流冷却器を取り付けた、オーブンで乾燥した250mLフラスコに、0.4gのモンモリロナイト KSF、1.65g(10.8mmol)のベンズアルデヒド・ジメチル・アセタールのTHF溶液35mLを導入し、続いて1.0g(10.8mmol)の3−メルカプト−1−プロパノールのTHF溶液5mLを導入した。混合物を窒素下で12時間還流した。室温に冷却後、濾過し、濾液を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2x20mL)、飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム(無水)上で乾燥した。溶媒を濃縮し、シリカゲルを用いたクロマトグラフ[ヘキサン/ジエチルエーテル(70/30)で溶出]を残留物について得、1.9g(97%)の2−フェニル−1,3−オキサチオランを得た。1H-NMR(CDCl3):δ 1.74(m,1H)、2.11(m,1H)、2.82(m,1H)、3.22(m,1H)、3.81(m,1H)、4.35(m,1H)、5.80(s,1H)、7.36(m,3H)、7.49(m,2H)。13C-NMR(CDCl3):δ 25.73、29.26、70.74、126.19、128.46、128.53、139.52。
【0087】
(実施例15)
2−リチオ−2−フェニル−1,3−オキサチアンの合成
実施例14の2−フェニル−1,3−オキサチアン(1.0g、5.5mmol)のTHF(5.8mL)とヘキサン(5mL)との溶液に、n−ブチルリチウム(3.3mL、1.68Mのヘキサン溶液)をシリンジによって一滴ずつ−78℃下で添加した。溶液を、更に3時間、−5℃下で攪拌した。生じた0.39Mの2−リチオ−2−フェニル−1,3−オキサチアン(POT-Liと略す)を、アニオン性開始剤として、ブタジエン、及び/又はブタジエン/スチレンを重合するのに用いた。
【0088】
(実施例16)
2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアンを用いたポリブタジエンの合成
2個の0.8Lの瓶に、ヘキサン163.6gと、ブタジエン混合物136.4g(22重量%ヘキサン溶液)を装入した。この後、1.2mL(実施例16A)及び0.55mL(実施例16B)のPDT-Li(実施例13)をシリンジによって別個の瓶に添加した。瓶を50℃に加熱し、1.5時間攪拌した。ポリマーのセメントを、少量の2−プロパノールで終結させ、4mLのBHT溶液で処理し、2−プロパノールで仕上げ、真空下で12時間乾燥した。実施例16A及び16Bに用いた開始剤の量が異なるために、生じたポリマーが、表3に示すように異なる分子量を有することに留意されたい。
【0089】
【表3】

【0090】
(実施例17)
2−リチオ−2−フェニル−1,3−オキサチアンを用いたポリブタジエンの合成
POT-Li(実施例15で製造したもの)を開始剤として用いて、実施例16Aと16Bに用いた準備及び手順を繰り返した。ポリマーの分子量を以下の表に示す。実施例17A及び17Bに用いた開始剤の量が異なるために、生じたポリマーが、表4に示すように異なる分子量を有することに留意されたい。
【0091】
【表4】

【0092】
(実施例18)
2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアンを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
0.8Lの瓶に、ヘキサン190g、スチレン混合物20g、及びブタジエン混合物(22重量%ヘキサン溶液)120gを装入し、次いで、PDT-Li(実施例13)0.61mLをシリンジによって装入した。瓶を50℃に加熱し、1.5時間攪拌した。ポリマーのセメントを、少量の2−プロパノールで終結させ、4mLのBHT溶液で処理し、2−プロパノールで仕上げ、ドラム乾燥した。M=135.8kg/mol、M/M=1.1、Tg=−69℃。
【0093】
(実施例19)
インサイチュでの2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアンを用いたポリブタジエンの合成
0.8Lの瓶に、ヘキサン162.4g、ブタジエン混合物(21.8重量%ヘキサン溶液)137.6g、及び2−フェニル−1,3−ジチアン0.075gを装入し、次いで、n−ブチルリチウム(1.68Mのヘキサン溶液)0.23mLをシリンジによって装入した。瓶を50℃に加熱し、1.5時間攪拌した。ポリマーのセメントを、少量の2−プロパノールで終結させ、4mLのBHT溶液で処理し、2−プロパノールで仕上げ、真空下で12時間乾燥した。2−フェニル−1,3−ジチアンの先端の基の存在を、254nmにセットし、GPCについて使用したUVトレース・ディテクターによって確認した。M=94.4kg/mol、M/M=1.22、Tg=−72.7℃。
【0094】
(比較例20)
n−ブチルリチウムを用いたポリブタジエンの合成
2−フェニル−1,3−ジチアンを添加しなかったこと以外は実施例19で使用した準備及び手順を繰り返した。生成物は従来のポリブタジエンであった。M=80.2kg/mol、M/M=1.06、Tg=−94℃。
【0095】
(実施例21)
2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンの合成
磁気攪拌子と還流冷却器を取り付けた、オーブンで乾燥した500mLフラスコに、4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド6.89g(46.2mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物8.8g(46.2mmol)、及びTHF 180mLを導入した。混合物を10分間攪拌し、次いで2.5gのモンモリロナイト KSFを添加し、続いて、5g(46.2mmol)の1,3−プロパンジオールのTHF溶液30mLを添加した。混合物を窒素下で12時間還流した。室温に冷却した後、濾過し、濾液を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2x100mL)、飽和塩化ナトリウム溶液(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム(無水)上で乾燥した。溶媒を濃縮し、シリカゲルを用いたクロマトグラフ[ヘキサン/ジエチルエーテル(85/15)で溶出]を残留物について得、10.5g(95%)の2−[4−(ジメチルアミノ)]−フェニル−1,3−ジチアンを得た。1H-NMR(CDCl3):δ 1.90(m,1H)、2.14(m,1H)、2.93(s,6H)、2.97(m,4H)、5.11(s,1H)、6.67(m,2H)、7.33(m,2H)。13C-NMR(CDCl3):δ 25.12、32.28、40.46、50.89、112.28、126.62、128.46、150.43。
【0096】
(実施例22)
2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンの合成
2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンの溶液(実施例21で製造したもの、1.25g、5.22mmolのTHF(8mL)とトリエチルアミン(1mL)との溶液)に、n−ブチルリチウム(3.1mL、1.68Mのヘキサン溶液)を一滴ずつ、−78℃下でシリンジによって添加した。溶液を、更に4時間、0℃下で攪拌した。生じた0.43Mの2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアン(DAPDT-Liと略す)を、アニオン性開始剤として、ブタジエン、及び/又はブタジエン/スチレンを重合するのに用い、窒素の不活性雰囲気内で、冷凍庫内にて保存した。
【0097】
(実施例23)
2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンを用いたポリブタジエンの合成
0.8Lの瓶に、ヘキサン180g、ブタジエン混合物(21.7重量%ヘキサン溶液)152gを装入し、次いで、1.6mLのDAPDT-Li(実施例22で製造したもの)をシリンジによって添加した。瓶を50℃に加熱し、1.5時間攪拌した。ポリマーのセメントを、少量の2−プロパノールで終結させ、5mLのBHT溶液で処理し、2−プロパノールで仕上げ、真空下で12時間乾燥した。
【0098】
(実施例24)
2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンを用いたポリブタジエンの合成
1.0mLのDAPDT-Li(実施例22で製造したもの)を使用した以外は実施例23で使用した準備及び手順を繰り返した。総てのポリマーを、スチレンをスタンダードとして用いるGPCによって、THF溶液内で分析した。ポリマーの分子量を下表に示す。
【0099】
【表5】

【0100】
総てのポリマーを、254nmにセットし、GPCについて使用したUVトレース・ディテクターによって確認した。
【0101】
(実施例25)
2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
0.8Lの瓶に、ヘキサン188g、スチレン混合物(32.7%)20.18g、及びブタジエン混合物(22重量%ヘキサン溶液)122gを装入し、次いで、DAPDT-Li(実施例22で製造したもの)0.7mL、及び環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤(1.6Mのヘキサン溶液)0.05mLをシリンジによって添加した。瓶を50℃に加熱し、1.5時間攪拌した。ポリマーのセメントを、少量の2−プロパノールで終結させ、5mLのBHT溶液で処理し、2−プロパノールで仕上げ、ドラム乾燥した。M=107.4kg/mol、M/M=1.11、Tg=−37.39℃。
【0102】
(比較例26)
ブチルリチウムを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
等しいモル量のn−ブチルリチウムを開始剤として使用して、実施例25の手順を繰り返した。M=101.6kg/mol、M/M=1.05、Tg=−41.2℃。
【0103】
(実施例27)
2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
0.8Lの瓶に、ヘキサン188g、スチレン混合物(32.7%)20.18g、及びブタジエン混合物(22重量%ヘキサン溶液)122gを装入し、次いで、DAPDT-Li(実施例22で製造)1.0mLをシリンジによって添加したが、調整剤は添加しなかった。瓶を50℃に加熱し、1.5時間攪拌した。ポリマーのセメントを、少量の2−プロパノールで終結させ、5mLのBHT溶液で処理し、2−プロパノールで仕上げ、ドラム乾燥した。M=115.2kg/mol、M/M=1.1、Tg=−51.08℃。
【0104】
(実施例28)
2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
攪拌機を備え付けた、2ガロン(7.6L)の窒素パージした反応器に、
ヘキサン1.619kg、33重量%スチレン・ヘキサン溶液0.414kg、及び22.2重量%ブタジエン・ヘキサン溶液2.451kgを添加した。反応器に、0.3Mの2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアン(DAPDT-Liと略す)21mL、及び環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤(1.6Mのヘキサン溶液)1.05mLを装入し、次に、24℃に加熱した。その後、反応器のジャケットを50℃に加熱した。16分後、バッチの温度は、66.7℃に達した。さらに25分経った後、セメントのサンプルを、反応器から、乾燥した28オンス(0.8L)のガラス瓶に移し、塩化トリブチルスズ(3.68M、DAPDT-SBR-SnBu3と略す)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI、9.14M、DAPDT-SBR-DMIと略す)、及びイソプロパノール(DAPDT-SBR-Hと略す)のうち一つを用いて、それぞれ50℃の浴槽で30分間終結させ、ブチル化したヒドロキシトルエン(BHT)を含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、以下の表6に示す特性を有するポリマーを得た。
【0105】
【表6】

【0106】
(実施例29)
インサイチュでの2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
前述のポリマーを、以下の通りにインサイチュで製造した。攪拌機を備え付けた、2ガロン(7.6L)の窒素パージした反応器に、ヘキサン1.610kg、33重量%スチレン・ヘキサン溶液0.412kg、及び22.1重量%ブタジエン・ヘキサン溶液2.462kgを添加した。次に、反応器に、1.36gの2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンのTHF 10mLとトリエチルアミン1mLの溶液と、n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液(1.68M)3.37mLとの混合物を装入し、24℃で5〜10分間攪拌し、その後、環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤(1.6Mのヘキサン溶液)1.5mLを装入し、次に、反応器のジャケットを50℃に加熱した。16分後、バッチの温度は62.9℃に達した。さらに15分経過した後、セメントを、反応器から乾燥した28オンス(0.8L)のガラス瓶に移し、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI、9.14M、DAPDT-SBR-DMIと略す)、及びイソプロパノール(DAPDT-SBR-Hと略す)を用いてそれぞれ50℃の浴槽で30分間終結させ、ブチル化したヒドロキシトルエン(BHT)を含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、以下の表7に示す特性を有するポリマーを得た。
【0107】
【表7】

【0108】
実施例25に従って製造したSBRポリマーを用いて加硫可能なエラストマーを製造し、これを、実施例30と称す。比較のために、比較例26の、n−ブチルリチウムを開始剤として用いて製造したコントロール・ポリマーを用いて同様に加硫可能なエラストマーを製造し、これを、比較例31と称す(コントロール)。両ストックは、カーボンブラックを補強充填材として含み、処方を表8に示す。表に記載した量は、ゴムを100とした質量部(parts per hundred rubber、phr)で示されている。
【0109】
【表8】

【0110】
次に、表8の2つの配合物、実施例30及び比較例31を加硫し、以下の表9に記載されている物理試験を行った。
【0111】
【表9】

【0112】
次に、実施例25に従って製造したSBRポリマーを用いて、カーボンブラックと、シリカを充填材として組み合わせた加硫可能なエラストマーを製造し、これを、実施例32と称す。比較のために、n−ブチルリチウムを開始剤として用いて製造したコントロール・ポリマーである実施例26も、同じカーボンブラックとシリカを含有する配合物に使用した(比較例33と称す)。全部の処方を表10に示す。表に記載した量は、ゴムを100とした質量部(parts per hundred rubber、phr)で示されている。
【0113】
【表10】

【0114】
次に、得られた配合物、実施例32及び比較例33を加硫し、次いで、以下の表11に記載されている物理試験を行った。
【0115】
【表11】

【0116】
表11中のデータによって、コントロール・ポリマーを含む配合物(比較例33)と比較して、DAPDT-Li開始剤を用いたSBRポリマーを含む、シリカとカーボンブラックで補強した配合物(実施例32)では、tanδが13.5%減少したことが示された。
【0117】
更なる実施例を実施し、以下に述べる。
【0118】
(実施例34)
2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
以下の表12は、約110kg/molのMを有するブタジエンとスチレンとの共重合体の重合を2ガロン(7.6L)の反応器内で開始する3つの異なる方法から得られたポリマーを特徴付けるデータを示す。開始番号1は、2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンを直接添加することを伴い、開始番号2は、n−ブチルリチウムと2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンを共に添加することを伴い、開始番号3は、2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンとn−ブチルリチウムを別々に添加することを伴う。
【0119】
【表12】

【0120】
(実施例35)
インサイチュで、2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンを用い、DMIで終結させたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
攪拌機を備え付けた、2ガロン(7.6L)の窒素パージした反応器に、ヘキサン1.610kg、33重量%スチレン・ヘキサン溶液0.412kg、及び22.5重量%ブタジエン・ヘキサン溶液2.419kgを添加した。次に、反応器に、1.36gの2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンのTHF 10mLとトリエチルアミン1mLの溶液と、n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液(1.68M)3.37mLとの混合物を装入し、24℃で5〜10分間攪拌し、その後、1.6Mの環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤のヘキサン溶液1.5mLを装入し、次に、反応器のジャケットを50℃に加熱した。16分後、バッチの温度は62.7℃に達した。さらに15分経過した後、セメントを反応器から取り出し、乾燥した28オンス(0.8L)のガラス瓶に入れ、その後、イソプロパノール(DAPDT-SBR-Hと略す)、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI、9.14M、DAPDT-SBR-DMIと略す)を用いて、50℃の浴槽で30分間終結させ、次いで、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含むイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、下記の特性を有するポリマーを得た。
【0121】
【表13】

【0122】
(比較例36)
n−ブチルリチウムを用いたスチレン−ブタジエン共重合体の合成
実施例35で使用した準備及び手順を繰り返し、n−ブチルリチウム(1.68Mヘキサン溶液)をアニオン重合開始剤として使用した。以下の特性を有するポリマーをコントロールとして用いた。
【0123】
【表14】

【0124】
ゴム配合物への適用
実施例35、比較例36に従って製造したSBRポリマーを用いて、カーボンブラックを補強充填材として含む加硫可能なエラストマー配合物を製造した。使用した配合物の処方は、上記表8に示す一般的な処方であった。物理試験の結果を表15に示す。
【0125】
【表15】

【0126】
表15に示すように、開始剤であるDAPDT-Liを用いてインサイチュで製造したSBRポリマーとカーボンブラックとの配合物(配合例39)では、n−ブチルリチウム開始剤を用いて製造したコントロール・ポリマーを含む配合物(配合例37)と比較して、50℃におけるtanδが17.2%減少した。同様に、DAPDT-SBR-DMIを含有する配合物(配合例40)では、コントロールであるn-Bu-SBR-DMIポリマーを含有する配合物(配合例38)と比較して、50℃におけるtanδが20.9%減少した。
【0127】
ゴム配合物への適用
実施例35に従って製造したSBRポリマー(実施例35A及び35B)を用いて、カーボンブラックとシリカを充填材として組み合わせた加硫可能なエラストマー配合物を製造し、これを、配合例41及び42と称す。比較のために、コントロール・ポリマー(比較例36A及び36B)を含有する配合物を、カーボンブラックとシリカとを組み合わせた処方を用いて製造し、これを、配合例43及び44と称す。配合例41〜44に使用したカーボンブラックとシリカとの処方は、上記の表10に示す一般的な処方であった。
【0128】
【表16】

【0129】
表16に示すように、開始剤であるDAPDT-Liを用いてインサイチュで製造したSBRポリマーと、シリカとカーボンブラックとの配合物を処方することによって、n−ブチルリチウム開始剤を用いて製造したポリマーを含むコントロールの配合物と比較して、50℃におけるtanδが13%減少した(配合例41及び43)。DAPDT-SBR-DMIを含有するシリカとカーボンブラックとの配合物でも、n-Bu-SBR-DMIを含有するシリカとカーボンブラックとの配合物と比較して、50℃におけるtanδが24.4%減少した(配合例42及び44)。
【0130】
更なる実施例では、先端と末端の官能性を有する本発明に従う、終結させたポリマーの特性を調べた。
【0131】
(実施例45)
2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンで開始したポリマーの合成
19Lの反応器に、ヘキサン4.75kg、33%スチレン・ヘキサン溶液1.25kg、及び21.7重量%ブタジエン・ヘキサン溶液7.55kgを添加した。次に、0.5Mの2−メチル−1,3−ジチアン・ヘキサン溶液37.1mL、1.68Mのブチルリチウム・ヘキサン溶液11.04mL、及び1.6Mの環状オリゴマーのオキソラニルアルカン調整剤のヘキサン溶液3.83mLを添加した。その後、バッチを48.9℃に加熱した。22分後、反応器のジャケットを冷水に浸した。更に41分経過した後、3.08kgのポリマー・セメントを反応器から取り出し、ブチル化したヒドロキシトルエン(BHT)を含むイソプロパノール内に入れた。ポリマーを凝固させ、ドラム乾燥した。ポリマーは、以下の特性を有する。M=93.7kg/mol、M=98.3kg/mol、Tg=−31.3℃、%スチレン=20.2%、%ブロック・スチレン=2.2%、%1,2−ブタジエン=44.9%。
【0132】
(実施例46)
2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンで開始し、オルト珪酸テトラエチル(tetraethylorthosilicate、TEOS)で終結させたポリマーの合成
実施例45で製造したセメント2.36kgを更に反応器から窒素下で取り出した。これを、ブチルリチウム当たり1当量のTEOSで終結させた。生じたポリマーをイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、以下の特性を有するポリマーを得た。M=219kg/mol、M=385kg/mol、Tg=−31.5℃、%スチレン=20.6%、%ブロック・スチレン=2.0%、%1,2−ブタジエン=45.6%。
【0133】
(実施例47)
2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンで開始し、2−メチルチオ−2−チアゾリンで終結させたポリマーの合成
実施例45で製造したセメント2.21kgを更に反応器から窒素下で取り出した。これを、ブチルリチウム当たり1当量の2−メチルチオ−2−チアゾリンで終結させた。生じたポリマーをイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、以下の特性を有するポリマーを得た。M=111kg/mol、M=126kg/mol、Tg=−30.9℃、%スチレン=20.7%、%ブロック・スチレン=1.9%、%1,2−ブタジエン=45.5%。
【0134】
(実施例48)
2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンで開始し、塩化トリブチルスズで終結させたポリマーの合成
実施例45で製造したセメント2.36kgを更に反応器から窒素下で取り出した。これを、ブチルリチウム当たり1当量の塩化トリブチルスズで終結させた。生じたポリマーをイソプロパノール内で凝固させ、ドラム乾燥して、以下の特性を有するポリマーを得た。M=106kg/mol、M=113kg/mol、Tg=−31.3℃、%スチレン=21.0%、%ブロック・スチレン=2.0%、%1,2−ブタジエン=45.6%。
【0135】
前述のポリマーを、上記表8に記載した一般的な処方に従ってカーボンブラックと配合し(配合例49〜52)、上記表10に記載した一般的な処方に従ってシリカとカーボンブラックとの混合物と配合した(配合例53〜57)。次に、生じた配合物を加硫し、以下の表17及び表18に記載した物理試験を行った。
【0136】
【表17】

【0137】
【表18】

【0138】
表17及び18に示すように、開始剤である2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンを用いて製造した、カーボンブラックで補強したSBRポリマー、及びシリカとカーボンブラックで補強したSBRポリマーを処方し、末端に官能性を付与することによって(配合例50〜52、54〜56)、開始剤を用いて製造したが、官能性を有するように終結させなかったポリマー(配合例49及び53)と比較して、tanδが減少した。
【0139】
前述した開示により、本明細書に記載したアニオン重合開始剤を使用することによって、ジエンモノマー及びモノビニル芳香族モノマーを重合するのに有用な方法が提供される。表に記載されているデータから明らかであるように、本発明により、加硫可能なエラストマー組成物が製造できるポリマー上に官能基が存在することによって、これらの官能基を有さない同様のポリマーと比較して、タイヤなどの種々の物の物理特性を改善することができる。
【0140】
従って、特許請求の範囲に記載されている発明の範囲内での変更、及び具体的な構成要素の選択を、本発明の精神から逸脱することなく行うことができる。詳細には、本発明に従うアニオン重合開始剤は、本明細書にて例示したジチアンに必ずしも限定されない。
【0141】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく種々の変更及び修正を行うことができることは当業者に自明である。本発明は、先に例示した実施態様に限定されない。本発明の範囲には、添付した特許請求の範囲内でのあらゆる修正及び変更が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】


(式中、Rは、炭素数1〜6のトリアルキル−シリル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、チエニル基、フリル基、及びピリジル基から選択され、Rには、任意に、以下の官能基:炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10の非末端アルキニル基、エーテル、tert−アミン、オキサゾリン、チアゾリン、ホスフィン、スルフィド、シリル、及びそれらの混合物のいずれかが付着していても良く、式中、Rは、炭素数2〜8のアルキレン基から選択され、Xは硫黄であり、πはポリマー鎖である)
で定められる官能性ポリマー。
【請求項2】
官能性ポリマーの製造方法であって、該方法は、
共役ジエンを含むモノマーを硫黄含有開始剤と接触させて、リビング・ポリマーを形成することを有し、前記開始剤は、下記式:


【化2】


(式中、Rは、炭素数1〜6のトリアルキル−シリル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、チエニル基、フリル基、及びピリジル基から選択され、Rには、任意に、以下の官能基:炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10のアルキニル基、エーテル、tert−アミン、オキサゾリン、チアゾリン、ホスフィン、スルフィド、シリル、及びそれらの混合物のいずれかが付着していても良く、式中、Rは、炭素数2〜8のアルキレン基から選択され、Xは、硫黄である)
で定められることを特徴とする官能性ポリマーの製造方法。
【請求項3】
官能性ポリマーの加硫生成物を含む加硫ゴム組成物であって、該官能性ポリマーは、下記式:
【化3】


(式中、Rは、炭素数1〜6のトリアルキル−シリル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、チエニル基、フリル基、及びピリジル基から選択され、Rには、任意に、以下の官能基:炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10の非末端アルキニル基、エーテル、tert−アミン、オキサゾリン、チアゾリン、ホスフィン、スルフィド、シリル、及びそれらの混合物のいずれかが付着していても良く、式中、Rは、炭素数2〜8のアルキレン基から選択され、Xは硫黄であり、πはポリマー鎖である)
で定められることを特徴とする加硫されたゴム組成物。
【請求項4】
カーボンブラック、シリカ、スターチ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレイ(水和した珪酸アルミニウム)、及びそれらの混合物から成る群より選択される充填材を更に含む請求項3記載の組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のゴム組成物を含むタイヤ構成部材。
【請求項6】
前記開始剤が、2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアン、2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアン、2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアン、2−リチオ−2−トリメチルシリル−1,3−ジチアン、並びに2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアン、2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ジチアン、及び2−リチオ−2−(4−ジブチルアミノフェニル)−1,3−ジチアンから成る群より選択された開始剤から成る群より選択される請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記硫黄含有開始剤が、下記式:
【化4】


式中、Rは、炭素数1〜6のトリアルキル−シリル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、チエニル基、フリル基、及びピリジル基から成る群より選択され、Rは、炭素数2〜8のアルキレン基から成る群より選択され、Rは、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数3〜12のシクロアルキレン基、及び炭素数6〜18のアリーレン基から成る群より選択され、mは0〜約8までであり、Xは、硫黄である)
で定められることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー鎖は、共役ジエンと任意にビニル芳香族を含むモノマーのアニオン重合から得られることを特徴とする請求項1記載のポリマー、又は請求項3記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマー鎖は、四塩化スズ、塩化トリブチルスズ、塩化ジブチルスズ、オルト珪酸テトラエチル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びそれらの混合物から成る群より選択される試薬を用いた前記ポリマー鎖の終結から生じた末端の基を含むことを特徴とする請求項1記載のポリマー、又は請求項3記載の組成物。
【請求項10】
前記リビング・ポリマーを、終結剤、カップリング剤、又は結合剤と接触させることを更に有し、前記終結剤は、四塩化スズ、塩化トリブチルスズ、塩化ジブチルスズ、オルト珪酸テトラエチル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びそれらの混合物から成る群より選択される請求項2記載の方法。

【公表番号】特表2006−504866(P2006−504866A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502231(P2005−502231)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/034597
【国際公開番号】WO2004/041870
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】