説明

モノリシツクマイクロ波集積回路

【目的】 MMICの入出力部を外部回路に接続するためのワイヤーをインピーダンス整合用スタブにボンデイングすることにより、ボンデイングパッドを省略し、ボンデイングパッドの影響のないMMICを構成する。
【構成】 マイクロストリップ線路3の入力部あるいは出力部に設けられたインピーダンス整合用スタブ44に外部回路との接続用ワイヤー36のボンデイングパッドとしての機能を持たせ、上記接続用ワイヤー36を上記スタブ44上の所定の領域45にボンデイングしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、半導体基板上に構成されたモノリシックマイクロ波集積回路(以下、MMICと称す)に関するものであり、特に入出力部のインピーダンス整合用スタブにボンデイングパッドとしての機能を持たせたモノリシックマイクロ波集積回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図6は従来のMMICの一例を示し、図9R>9はその等価回路を示す。図6において、GaAs等の半導体基板2上にはマイクロストリップ線路3が設けられており、その入力部にはインピーダンス整合用のオープンスタブ4が設けられている。スタブ4は通常50Ωあるいは75Ω等の整合回路として作用する。マイクロストリップ線路3の入力端はMIM(金属−絶縁物−金属)キャパシタ5およびマイクロストリップ線路6を介してボンデイングパッド7に接続されている。
【0003】マイクロストリップ線路3の出力側は分岐マイクロストリップ線路21、21を経て電界効果トランジスタ(以下、FETと称す)10、10の各ゲートに接続されている。FET10、10は、例えばソース、ドレインがそれぞれ櫛歯状に形成され、ソースとドレインとの間に上記ゲートが設けられたものである。FET10、10のソースはバイアホール12、13を経て半導体基板2の裏面に設けられた接地導体15(図7R>7、図8)に接続されている。また、FET10、10のドレインはマイクロストリップ線路16によって相互に接続されると共に、それぞれ出力線路17、17に接続されている。
【0004】FET10、10の各ゲートは抵抗18およびMIMキャパシタ19を経てバイアホール14によって接地されており、また他のMIMキャパシタ20を経て上記バイアホール14によって接地されている。33はFET10のベースと上記抵抗18、キャパシタ20とを接続するための導体である。
【0005】図9は図8の等価回路を示し、図6と同等部分には同じ参照番号を付している。なお、23はボンデイングパッド7による容量を示す。抵抗18とMIMキャパシタ19は図6中のイ−イ線断面を示す図7のようにして形成される。すなわち、MIMキャパシタ19は、半導体基板2上に形成された下側導体層24と、誘電体層25と、該誘電体25上に形成された上側導体層26との積層構造によって構成され、下側の導体層24はバイアホール14を経て接地導体15に接続され、上側の導体層26はエアーブリッジ形の導体27を経て半導体基板2中に形成された抵抗18に接続され、該抵抗18は導体33を経てFET10のゲートに接続されている。MIMキャパシタ20も実質的に上記と同様に形成されている。
【0006】マイクロストリップ線路5の入力端のMIMキャパシタ5は、図6のロ−ロ線断面を示す図8のようにして形成される。すなわち、キャパシタ5は半導体基板上に形成された下側導体層28と、誘電体層29と、上側導体層30との積層構造によって構成され、下側導体層28はマイクロストリップ線路3に接続され、上側導体層30はエアーブリッジ形導体31を経てマイクロストリップ線路6に接続されている。
【0007】MMICの入出力部のインピーダンスを例えば50Ωとすると、マイクロストリップ線路3の線路幅は、GaAs半導体基板2の厚みが100μmのときは70μm、GaAs半導体基板2の厚みが150μmのときは100μmである。ボンデイングパッド7の寸法は、マイクロストリップ線路3の長さ方向に平行な側aが150μm、垂直な側bが300μmである。
【0008】通常、上記のようなMMICを設計するには、まず目標性能に対して電気設計を行い、この設計結果を元にしてパターン設計を行って図6の破線8の右側の回路を設計した後、ボンデイングパッド7を付加するという手法が採られている。このため、回路の設計段階でボンデイングパッドの影響が反映されず、ボンデイングパッド7を付加することにより、回路の特性、性能が大きく変化してしまう。
【0009】具体的には、ボンデイングパッド7の幅bとマイクロストリップ線路6の幅との差が、当該MMICを通るマイクロ波の波長に比べて充分小さい場合は、このボンデイングパッド7は図9の等価回路のキャパシタ23で示すように並列容量素子として機能する。しかし、上記の差がMMICを通るマイクロ波の波長に対して無視できない程大きくなると、上記ボンデイングパッド7はマイクロストリップ線路に並列に接続される分布定数線路として機能する。
【0010】
【発明が解決しょうとする課題】上記のように、従来のMMICでは、マイクロストリップ線路6に対するボンデイングパッド7の寸法が変わると、破線9の入力面からMMICを見たとき、設計した回路の入力部に容量素子あるいは分布定数線路が並列に接続された回路となるため、MMIC全体の特性あるいは性能の実測値が設計値と大幅に変わってしまうという欠点がある。また、予めボンデイングパッド7の影響も含めて目標性能に対する電気設計およびパターン設計を行う手法を採用すると、当該MMICに接続される外部回路のMMICあるいはマイクロ波集積回路(以下、MICと称す)基板等で構成されるモジュールの組立条件の変更等に伴ってボンデイングパッドの寸法が変更されると、最初から電気設計をやり直す必要がある。この発明は上記のような従来のMMICに見られたボンデイングパッドの影響を排除して、常に設計値と実測値とが一致したMMICを得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明によるMMICは、マイクロストリップ線路の入力部あるいは出力部に設けられたインピーダンス整合用スタブに、当該MMICをワイヤーにより外部回路に接続するためのボンデイングパッドとしての機能を持たせて、上記スタ上の所定の領域に上記ワイヤーをボンデイングして構成される。
【0012】
【作用】この発明によれば、インピーダンス整合用スタブに外部回路との接続用ワイヤーが接続されるボンデイングパッドとしての機能を兼ねさせたので、ボンデイングパッドの影響が排除され、MMICの設計値と実測値とがよく整合する。
【0013】
【実施例】図1は本発明のMMICの第1の実施例を示す。図1中の素子で図6に示す従来のMMICと同等部分には同じ参照番号を付してその説明を省略する。図1に示す本発明のMMICでは、マイクロ波ストリップ線3はMIMキャパシタ34を経て例えば50Ω入力インピーダンス整合用入力オープンスタブ44に接続されている。本発明のMMICでは、スタブ44の領域45にボンデイングされたワイヤー36によって外部回路であるMIC37のマイクロストリップ線路38に接続されている。図1のMMICは図9と実質的に同じ等価回路をもっている。なお、オープンスタブ44はキャパシタンスとして作用する。
【0014】マイクロストリップ線路3とスタブ44とを接続するMIMキャパシタ34は例えば図1のハ−ハ線断面図である図2のようにして構成されている。すなわち、MIMキャパシタ34は半導体基板2上に設けられた下側導体層39と、誘電体層40と、上側導体層41の積層構造になっている。下側の導体層39はスタブ44に接続され、上側の導体層41はエアーブリッジ形の導体42によってマイクロストリップ線路3に接続されている。スタブ44はワイヤー36に介してMIC37のマイクロストリップ線路38に接続されている。
【0015】図1のMMICでは、外部回路との接続用ワイヤー36が接続されるスタブ44上の領域45が当該MMICの入力端子となる。このMMICでは図6に示す従来のMMICのようなボンデイングパッドは存在しないから、設計値通りの実測値をもったMMICが得られる。
【0016】図3は本発明のMMICの第2の実施例で、MMICの入力インピーダンス整合の微調整、インピーダンスのバランスをとるため等の目的でワイヤー36をスタブ44の中心からずらした領域に接続したものである。ワイヤー36は必要に応じてスタブ44上の任意の点に接続することができる。
【0017】図4は本発明のMMICの第3の実施例で、マイクロストリップ線路3の入力端にボンデイングパッド兼用のインピーダンス整合用ショートスタブ47を接続したものである。スタブ47の各端部はバイアホール48によって半導体基板2の裏面の接地導体15に接続されている。この実施例においても、必要に応じてワイヤー36を中心の領域45以外の任意の点に接続することができる。なお、ショートスタブ47はインダクタンスとして作用する。
【0018】図5は本発明のMMICの第4の実施例で、マイクロストリップ線路3の入力に接続されるインピーダンス整合用スタブとして、一方がオープンスタブ、他方がバイアホール48を経て半導体基板2の裏面の接地導体15に接続されたショートスタブであるハイブリッドスタブ51を使用したものである。この実施例でも、必要に応じて中心の領域45以外の任意の領域にワイヤー36をボンデイングすることができる。
【0019】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、インピーダンス整合用スタブにMMICを外部回路に接続するためのワイヤー接続用パッドとしての機能を持たせるようにしたので、専用のボンデイングパッドが不要になり、従来のMMICのようなボンデイングパッドによる影響がなくなり、特性あるいは性能に関して設計値に一致した実測値をもったMMICが得られ、また、ボンデイングパッドを省略したことによりMMICのチップサイズを縮小することができるという効果が得られる。さらに、スタブにボンデイングパッドとしての機能を兼ねさせたことにより、ワイヤーをスタブの任意の点にボンデイングすることができ、インピーダンス整合の微調整、あるいはインピーダンスのバランスの調整を容易に行うことができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のMMICの第1の実施例の主要部の概略平面図である。
【図2】図1のハ−ハ線に沿う拡大断面図である。
【図3】本発明のMMICの第2の実施例の主要部の概略平面図である。
【図4】本発明のMMICの第3の実施例の主要部の概略平面図である。
【図5】本発明のMMICの第4の実施例の主要部の概略平面図である。
【図6】従来のMMICの一例を示す主要部の概略平面図である。
【図7】図6のイ−イ線に沿う拡大断面図である。
【図8】図6のロ−ロ線に沿う拡大断面図である。
【図9】図6のMMICの等価回路を示す図である。
【符号の説明】
2 半導体基板
3 マイクロストリップ線路
36 ワイヤー
37 マイクロ波IC
38 マイクロストリップ線路
44 スタブ
45 ワイヤーボンデイング領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一端がマイクロ波集積回路を構成する回路素子に接続されたマイクロストリップ線路と、該マイクロストリップ線路の入力部あるいは出力部の少なくとも一方に設けられたインピーダンス整合用スタブとを具えたモノリシックマイクロ波集積回路であって、これを外部回路に接続するための接続用ワイヤーを上記スタブ上の所定の領域にボンデイングしたことを特徴とするモノリシックマイクロ波集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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