説明

モバイルデバイスの位置の決定方法

【課題】衛星信号から週番号を抽出する必要なく、モバイルデバイスの位置を決定する。
【解決手段】前記システム時刻に依存する前記衛星の軌道を仮定して、衛星から受信する信号からモバイルデバイスの位置を規定する一連のデバイスパラメータを決定する方法であって、複数の週番号候補の1つを有するシステム時刻によって、それぞれ実行され、正当な週番号を複数の週番号候補の中から選択し、決定された一連のデバイスパラメータとして指定される正当な週番号に基づいて前記システムの式を解き、ここで、正当な週番号の選択は、解法アルゴリズムのアプリケーションが解を生じなかった少なくともいくつかの週番号を削除することによって、実行され、残りのいずれかの週番号に偏差値を割り当てて、偏差値に従って、残りの週番号の中から正当な週番号を選択する、ことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る方法は、全地球的航法衛星システム(GNSS)の衛星からの信号に基づいて、モバイルデバイスの位置を決定することを可能とする。具体的には、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)の衛星からの信号に基づいて、モバイルデバイスの位置を決定することを可能とする。
【背景技術】
【0002】
従来の方法では、週の時刻(time of week)と同様に、モバイルデバイスの位置を決定するために既知でなければならない週番号(week number)は、連続するサブフレームで構成される連続するフレームとして体系化されるデータを含む衛星信号から抽出される。フレームを構成する5つのサブフレームごとにエンコードされる週の時刻とは異なり、週番号は、第1のサブフレームにのみ含まれるので、完全なフレームの伝送に必要な時間に、約30秒掛かる可能性がある。正当な衛星軌道データによるコールドスタート(cold start)が、週の時刻を受信するまで待機しなければならないために、初期位置算出時間(first fix)が同様な期間まで増加する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、週番号の情報を先に有することなく初期位置を得ることにより、事前に衛星信号から週番号を抽出する必要なく、モバイルデバイスの位置を決定する方法を提供することである。しかしながら、衛星軌道がモバイルデバイスに記憶される軌道データ(orbit data)から引き出すことができるコールドスタートの場合は、6秒ごとに伝送される週の時刻のみを、衛星信号から抽出するので、初期測位時間を、最大30秒、平均で約12秒程度にまで削減する。
【0004】
以下、添付図面を参照して、発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】GPS衛星のいずれかから伝送される一連のデータの構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
グローバル・ポジショニング・システム(GPS)に関連する衛星はいずれも、送信に1ミリ秒かかる1023ビットの特有の2進数列の反復を送信する。データビットは、送信される特有の数列の連続する20個の複製に付加される。データビットは、反転する場合は、データビットの−1を示し、反転しない場合は、データビットの+1値を示す。したがって、データビットの伝送は、20msかかり、データのビットレートは、毎秒50ビットである。
【0007】
全てのGPS衛星の軌道を時間の関数として規定する暦データ(almanac data)と、暦データなどよりも高い精度で非常に短い時間間隔で衛星の軌道を規定する伝送衛星の天体暦データ(ephemeris data)とを有する完全な一連のデータを衛星から伝送するためには、12.5秒掛かる。一連のデータは、それぞれ30秒の25個のフレームからなる。全てのフレームは、300のビットのワードで構成され、それぞれ6秒かかる5個のサブフレームからなる。全てのサブフレームの第2のワードは、ハンドオーバワード(hand-over word)であり、最初の17ビットは、週の時刻TOW、すなわち続くサブフレームの伝送開始時間である。第3のワードの初めに、それぞれのフレームの第1のフレームのみに、週番号WNが10ビットの番号、すなわちGPSモジュール1024の開始からの週番号を有する。
【0008】
位置が決定されるモバイルデバイス、すなわち受信機は、通常は少なくとも4つ、一般的には4つより多い視野内の全ての衛星の信号を受信し、その信号から必要なデータを抽出することになるであろう。これと同時にデバイスは、発振器により測定するデバイス自身の時間に応答して、衛星信号のコード位相(code phases)を決定することになるであろう。モバイルデバイスの位置は、抽出されたデータと、コード位相とから抽出される衛星の位置から、先行技術により信号のミリ秒の整数アンビギュイティを解くことにより決定する。これにより、「測定された」擬似距離を規定した後に、解法アルゴリズムを使用するモバイルデバイスの位置の3つの要素と、時計バイアスとを含むデバイスパラメータのセットのための測定された擬似距離を含むシステムの式を解く。
【0009】
衛星の位置は、暦データ、軌道データ、又は好適には精度がより良好な長期データ(long term data)、又は衛星の軌道を規定する天体暦データから抽出できる。そして、衛星の位置は、週の時刻TOWと、週番号WNを含むGPSシステム時間が識別されると、モバイルデバイスに記憶される。伝送時のそれぞれの衛星の位置は、GPS時間とともに、衛星の軌道を時間の関数として規定する軌道データを評価することによって、抽出できる。
【0010】
1つの週の時間シフトは、衛星速度が約3000m/秒で、ほぼ5000kmのGPS衛星の位置におけるシフトの作用において、27分32秒の時間シフトに本質的に等しい。この結果として、週番号が誤っている場合は、モバイルデバイス、すなわち受信機の決定した位置に大きなエラーが起きる。多くの場合、解法アルゴリズムは、全く解法を生み出さない。
【0011】
時間バイアスが未知であると仮定すると、解法は、過度に決定される(over-determined)ことになるであろう。ここで、5つ以上の衛星が視野に入る。その結果として、擬似距離ρSをパラメータのセットに関連させる基本的な式から開始して、最小二乗法、又は類似する方法によって、一般的には規定される。すなわち、ベクトルxR=(x0R,x1R,x2R,x3R)は、通常、時計バイアスx0Rと、ユークリッド座標システム(Euclidean coordinate system)における信号を受信する時点でのデバイスの空間位置の構成要素x1R、x2R、x3Rと有する。
【数1】

ここで、
【数2】

は、信号を放射するときの衛星sと、信号を受信するときのモバイルデバイスとの間の距離である。空間位置の構成要素のように、時間バイアスは、メートルである。すなわち、秒の時間における光の速度m/sである。衛星の時間バイアスは、無視してよいと考えられる。
【0012】
コード位相の測定から決定される衛星の測定された擬似距離RSとともに、微分項
【数3】

を、変数と考えられるデバイスパラメータのセットの関数として規定できる。
【0013】
(1)及び(2)から
【数4】

と、
【数5】

が分かる。
【0014】
ここで当業者に周知の方法によって、重み関数を形成できる。
【数6】

この式は、特定の重みを一連のデバイスパラメータの値に割り当てる。ここでデバイスパラメータは、微分項d)、すなわち測定された擬似距離利RSと、先の値から計算される擬似距離ρS)との間の差異に依存する。解Rは、一連のデバイスパラメータとして規定される。ここで、W()は、最小である。PS1S2は重み行列である。ここで、S1とS2とは、視界内のm個の衛星によって変化する。すなわち、擬似距離の測定の共分散行列の逆数である。
【0015】
通常は、測定間に相互相関はなく、重み行列は、対角であると仮定される。この場合、
【数7】

が、分かる。ここで、σは、衛星ヘルスデータ(satellite health data)、高度、及び他のパラメータに依存するか、又は定数であるかのいずれかである衛星sの微分項dS)の標準偏差である。次いで、(6)は、
【数8】

に変換される。
【0016】
このW()は最小値であり、すなわちRにおいて、
【数9】

を示唆する。
【0017】
第1の中間解として一連のデバイスパラメータ0の見積もりから開始し、新たな中間解を第1の相互作用ステップにおいて、抽出できる。このために、パラメータの組における擬似距離の依存性は、線形化される。
【数10】

ここで、ρS0=ρS0)、
【数11】

、及びΔi=xi−xi0である。
【0018】
S0=RS−ρS0とともに、これから
【数12】

が導かれる。そして(8)と(10)とから
【数13】

を生じるとともに、
【数14】

を、補正Δjについて解くことができる
【数15】

と表すことができる。
【0019】
擬似距離測定間の相互相関がない場合は、(6´)を使用して、式(13)を
【数16】

に変換できる。
【0020】
いずれの場合においても、新たな中間解は、
【数17】

によって規定される。次いでこれは、次の相関ステップにおいて先の中間解として使用される。このように、式(8)のシステムは、インタラクティブに解くことができる。ここで、相関ステップにおいて、先の中間解の全ての構成要素は、先の中間解の対応する構成要素と、対応する補正の和に置き換えられる。
【数18】

【0021】
この解法アルゴリズムが収束する場合は、最新の新たな中間解は、式(8)のシステムの解Rと考えられる。
【0022】
週番号が事前に既知でないときは、この式のシステムの解の解明は、複数の週番号候補を用いて、試みられる。この場合、通常は連続する週番号のシーケンスを形成することになるであろう。すなわち、見積もった週番号に集中する、又は見積もった週番号から広がる間隔は埋められることになるであろう。
【0023】
ともにGPS時間を規定する週番号候補、及び週の時刻のいずれかにより、相互作用は、nmax=10など、先に規定されるステップの最大数nmaxまで行うことができる。すなわち、最大ノルム(maximum norm)、又はユークリッドのノルムなどの先に規定されたいくつかのノルムに従って、先の中間解のパラメータベクトルnと、これから抽出される新たな中間解のパラメータベクトルn+1との間の差異が所定のしきい値
【数19】

よりも小さくなるまで行われる。条件(17)が実現されることなくステップの最大数に達する場合は、解法アルゴリズムは、解を生じず、週番号候補は削除されることになる。
【0024】
解法アルゴリズムは、複数の週番号のそれぞれについて解Rを生じている場合は、単一の適当な週番号を選択しなければならない。これは、一連のデバイスパラメータから計算される擬似距離と、測定された擬似距離との差異を反映する偏差の関数を使用して、偏差値を抽出するために解Rを評価して、実行できる。そして、偏差値Dが、最小となる週番号を選択する。好適な偏差の関数は、偏差値が(6)、又は(6´)から
【数20】

として抽出される重み関数W()である。
【0025】
可能な他の選択は、微分項dSR)の平均値dである。この双方を考慮できることは当然である。
【0026】
いずれの場合においても、チェックの結果によって、正当な週番号を確認する妥当性のチェック、又は正当な週番号を確認しない妥当性のチェックをさらに実行することは、望ましい。例えば、正当な週番号と関連付けられる最小の偏差値は、しきい値と比較して、偏差値がしきい値よりも小さい場合に、偏差値に基づく正当な週番号、及び解であると確認できる。また、最小の偏差値を次に小さい偏差値と比較して、前者を後者で除した余りがしきい値よりも小さい場合のみ、週番号であることを確認できる。2番目に小さい偏差値の代わりに、残りの偏差値の平均を使用できる。しきい値は、固定でき、又は視界内の衛星数、及び信号強度などのパラメータによることができる。
【0027】
モバイルデバイスの位置を先験的に限定できない場合は、解による位置は、妥当に見積もられた位置に特に先験的に十分に近接した規定する妥当な範囲内にあるか否かをチェックして、見積もられた位置からの距離が特定のしきい値を下回る場合にのみ、週番号、及び解が正当であると確認することが可能である。いくつかのチェックを組み合わせることができることは当然である。
【0028】
正当な週番号が確認された場合に、デバイスパラメータの対応する組は、表示など、デバイスで使用する。正当な週番号が確認されなかった場合は、対応する解のデバイスパラメータは破棄される。次いで、週番号候補の異なる組による新たな検索を実行できる。全ての試みが失敗した場合は結局、週番号は、衛星の信号から抽出しなければならないだろう。
【0029】
一連のデバイスパラメータの決定のシミュレーションを行った。ここで、モバイルデバイスは、経度8.56度、緯度47.28度、及び海抜550mに位置した。位置の最初の見積もり、すなわち第1の中間解は、経度0度、緯度0度、及び海抜0mとした。比較的強い8つの衛星信号があると仮定した。デバイスに記憶される長期の信号を使用して、衛星の位置を計算した。週番号候補は、GPS時間の開始から週1525、1526、及び1527にそれぞれ対応する501、502、及び503であった。
【0030】
以下の表において、最初の5つの相互作用ステップによって到達した補正は、週番号候補501のリストである。
【表1】

【0031】
5つの相互作用ステップの後に、空間座標は、収束するが、時間バイアスx0の補正Δ0は、まだ大きく、ステップに基づく週番号、及び解の補正Δ0が正当であるゼロに近い値に近づいていくことが示されない。解法アルゴリズムは、一見して収束しない。したがって、週番号501は、削除される。
【0032】
週番号の候補502による補正は、同様に示される。
【表2】

【0033】
解法アルゴリズムは、収束せず、週番号候補502もまた、削除される。
【0034】
一方、週番号の候補502による解法アルゴリズムは、3つの相互作用ステップの後に正当な解に到達して、相互作用は停止する。
【表3】

【0035】
解は、正当であると考えられ、503は、正当な週番号として選択される。
【0036】
モバイルデバイスの位置は、上述の例と同一であると仮定した第2のシミュレーションでは、以下の結果を得た。
【0037】
〔GPS時間の開始から週1526に対応する週番号の候補502〕
10個の相互作用ステップの後に収束しない。週番号は削除される。
【0038】
〔GPS時間の開始から週1527に対応する週番号の候補503〕
7つのステップの後に収束。(6´)に従う重み関数により計算した偏差値Dは、254´808.6であった。微分項dSR)の平均dは、482´148.2である。
【0039】
〔GPS時間の開始から週1527に対応する週番号の候補503〕
4つの相互作用ステップの後に収束。D=0.12、d=841.6である。週番号504は、残りの週番号503と504とから正当な週番号として選択された。
【符号の説明】
【0040】
TOW 週の時刻
WN 週番号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全地球的航法衛星システムに関連する衛星から受信する信号のコード位相を算定し、モバイルデバイスの位置は、週番号(WN)と、週の時刻(TOW)とを含む全地球的航法衛星システムのシステム時刻と前記コード位相とから抽出されるとともに、解法アルゴリズムを使用するシステムの式を解くことによって、前記システム時刻に依存する前記衛星の軌道を仮定する、前記全地球的航法衛星システムに関連する前記衛星から受信する前記信号から前記モバイルデバイスの位置を規定する一連のデバイスパラメータを決定する方法であって、
複数の週番号候補の1つを有するシステム時刻によって、それぞれ実行され、正当な週番号を前記複数の週番号候補の中から選択し、前記決定された一連のデバイスパラメータとして指定される前記正当な週番号に基づいて前記システムの式を解き、
ここで、前記正当な週番号の選択は、前記解法アルゴリズムのアプリケーションが解を生じなかった少なくともいくつかの週番号を削除することによって、実行され、残りのいずれかの週番号に偏差値を割り当てて、前記偏差値に従って、前記残りの週番号の中から正当な週番号を選択する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記偏差値の絶対値が最も小さい前記週番号候補を、前記正当な週番号として選択する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記システムの式は、前記衛星のそれぞれ1つと、一連のデバイスパラメータにおける前記モバイルデバイスとの間の擬似距離への依存を規定する基本式に基づく請求項1、又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記システムの式の前記解法は、いずれの場合でも、一連のデバイスパラメータであって、前記一連のデバイスパラメータに依存する偏差の関数の絶対値は、最小値を有し、前記偏差値は、前記一連のデバイスパラメータにおける前記偏差の関数の値を反映する一連のデバイスパラメータである請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記偏差の関数は、前記算定されたコード位相から抽出されたときの前記衛星の1つ、及び前記モバイルデバイスの間の擬似距離の値と、前記モバイルデバイスの前記一連のデバイスパラメータから前記基本式を介して抽出される前記擬似距離の値との差にそれぞれ対応する微分項を含む請求項3、又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記偏差の関数は、前記微分項の加重二乗の和に比例する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記解法アルゴリズムは、前記偏差の関数の勾配がゼロである位置を解くことによる前記偏差の関数の極値の探索を含む請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記解法アルゴリズムは、先の中間解を補正して、前記補正を包含する新しい中間解に先の中間解を置き換えられるために、システムの式の線形バージョンを解く少なくとも1つの相互作用ステップを有する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記週番号候補は、連続する週番号の間隔を埋める請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記正当な週番号は、少なくとも1つのさらなるチェックを受け、対応する解は、前記少なくとも1つのチェックが前記正当な週番号を確認した場合にのみ、使用される請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのチェックは、
前記対応する偏差値をしきい値と比較するステップ、
前記対応する偏差値と、残りの週番号候補に対応する少なくとも1つの偏差値から抽出される項との間の関係と、しきい値とを比較するステップ、及び
前記対応する解による前記デバイスの前記位置は、先験的に規定された妥当な範囲内にあるか否かをチェックするステップ
の1つ、又は2つ以上を含む請求項10に記載の方法。

【図1】
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