説明

モバイル装置のモビリティ管理層を管理する方法

【課題】システムの効率を改善するように、モバイル装置内のモビリティ管理層を管理する方法を提供する。
【解決手段】モバイル装置のモビリティ管理層が待ち状態に移行した後に、タイマーT3240が起動される(220)。モバイル装置は、タイマーT3240が時間切れとなる前は、ネットワーク・システムからの更なる指令を待ち続け、タイマーT3240が時間切れとなった場合(230)には、モビリティ管理層を制御して、待ち状態から抜け出させる(260)ように構成され、それによって、システムの効率が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモバイル装置のモビリティ管理層を管理する方法に関し、より具体的には、本願の請求項1の特徴的構成に従って、システムの効率を改善するように、モバイル装置のモビリティ管理層を管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP(3rd Generation Partnership Project))が提唱するモバイル通信構造に従うならば、モバイル装置の無線インターフェース・プロトコル構造は、物理層、データリンク層、ネットワーク層の3つの層を含んでいる。データリンク層は、パケット・データ・コンバージェンス・プロトコル(PDCP(Packet Data Convergence Protocol))層、無線リンク制御(RLC(Radio Link Control))層、媒体アクセス制御(MAC(Media Access Control))層を含んでいる。ネットワーク層は、無線リソース制御(RRC(Radio Resource Control))層、モビリティ管理(MM(Mobility Management))層およびコネクション管理(CM(Connection Management))層を含んでいる。
【0003】
RLC層は、以下を含むサービスを提供するように構成される。例えば、PDU(Protocol Data Unit)の伝送、自動再送要求(ARQ(Automatic Retransmission Request))の訂正、結合、SDU(Service Data Unit)のセグメンテーション/再組み立て/削除、逐次的なPDUの伝送、重複した削除、プロトコル・エラーの検出およびプロトコルの再確立などを含む。
【0004】
MAC層は、ハイブリッド自動再送要求(HARQ(Hybrid Automatic Repeat Request))誤り訂正、および伝送時間区間(TTI(Transmission Time Interval))集約伝送を含むサービスを提供するように構成される。
【0005】
CM層は、以下の機能を提供するように構成される。例えば、コネクションの確立動作、コネクションのタイプ(音声か、またはファクシミリか)の選択動作およびコネクションの解放動作を含む呼制御、補充的サービスを管理する機能、およびショート・メッセージ・サービス(SMS(Short Message Service))機能などである。
【0006】
RRC層は、コネクションの維持管理、通信チャネルの確立/解放、および電力制御の管理を実行するように構成される。
【0007】
MM層は、ユーザの検証、信号の符号化、およびモバイル装置の現在位置をネットワークに対して通知可能とするようなモビリティに関係するあらゆる機能を扱う。
【0008】
現在の3GPP標準仕様書によれば、「状態9」に移行した後は、MM層はネットワーク内の通信相手エンティティとの間に無線リソース・コネクションを有するが、MMコネクションは確立されていない。モバイル装置は、ネットワークからの更なるコマンドを待って受け身のままでいる。従来技術においては、ネットワークが何らかの理由により、応答することに失敗した場合、モバイル装置のMM層は、「状態9」に滞留し続け、その結果、その他のサービスを提供することが不可能になってしまう。
【発明の概要】
【0009】
以上を考慮した上で、本発明は、システムの効率を改善するように、モバイル装置内のモビリティ管理層を管理する方法を提供することを目的とする。
【0010】
これは、請求項1で規定されるようなモバイル装置内でのモビリティ管理層の管理方法によって実現される。従属請求項記載の発明は、更なる追加の拡張機能と改良機能に関係する。
【0011】
以下の「発明を実施するための形態」の欄における説明からより明確に理解されるとおり、モバイル装置内でのモビリティ管理層の管理方法に関して本願において特許請求される方法は、モビリティ管理層が持ち状態に移行した後に、モバイル装置のタイマーを起動する動作と、タイマーが時間切れになる前にネットワークから受信したコマンドに従って上記モビリティ管理層は上記待ち状態を抜け出るか、または、タイマーが時間切れになった後に、上記モビリティ管理層は上記待ち状態を抜け出る動作とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従い、モバイル装置内でのMM層の動作を図示する状態遷移図
【図2】本発明に従い、モバイル装置内でのMM層の動作の方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に添付された図面を参照しながら、本発明の内容は、具体例を示す方法により、以下においてさらに詳細に後述される。
【0014】
図1は、本発明に従い、モバイル装置内でのMM層の動作を図示する状態遷移図である。図1は、「状態3“位置更新動作の開始”」、「状態6“MMコネクションがアクティブ化された状態”」、「状態7“国際移動加入者局識別子(IMSI(International Mobile Subscriber Identity))の切り離し動作がアクティブ化された状態”」、「状態9“ネットワーク・コマンドを待っている状態”」、「状態19“MMのアイドル状態”」および「状態25“RRコネクションの解放が不許可とされた状態”」を示している。本発明は、「状態9」に関する動作と関係するので、図1においては、関わりの有る状態だけを図示している。MM層におけるその他の発生し得る状態は、3GPPの関連する標準仕様書(例えば、TS 24.008など)において記述され、説明されている。
【0015】
図2は、本発明に従い、モバイル装置内でのMM層の動作の方法を示すフローチャートである。この方法は、以下の動作ステップを含む。
ステップ210: MM層が待ち状態にあるか否かを判定し、もしもYESなら、ステップ220に進み、NOであれば210に留まる。
ステップ220: モバイル装置のタイマーT3240を起動し、ステップ230に進む。
ステップ230: タイマーT3240が時間切れになったか否かを判定し、もしもYESなら、ステップ260に進み、NOであれば、ステップ240に進む。
ステップ240: 待ち状態から抜け出る契機となる特定のコマンドがネットワークから受信されたか否かを判定し、もしもYESなら、ステップ250に進み、NOであれば、ステップ230に戻る。
ステップ250: 待ち状態から抜け出て、上記特定のコマンドに対応する第1の処理動作を実行し、ステップ270に進む。
ステップ260: 待ち状態から抜け出て、第2の処理動作を実行する。
ステップ270: タイマーT3240をリセットしてステップ210に戻る。
【0016】
ステップ210においては、待ち状態は、3GPPの関連する標準仕様書(例えば、TS 24.008など)において定義される「状態9」とすることが可能である。「状態9」においては、MM層は、ネットワーク内でのその通信相手のエンティティとの間にRRコネクションを有しているが、MMコネクションは全く確立されていない。モバイル装置は、ネットワークからの更なるコマンドの到着を待って、受け身のままでいる。図1に示した実施形態においては、図中のA1〜A4で示す処理動作をモバイル装置が実行した後に、MM層は「状態9」に移行することが可能である。処理動作A1は、ページング動作に応答して「RRコネクションが確立される」動作である。処理動作A2は、「最後に残ったコネクションが解放される」動作である。処理動作A3は「システム情報を記憶する」動作である。処理動作A4は、「RRコネクションの解放を不許可とする」動作である。ステップ210において、MM層が待ち状態(例えば「状態9」など)に移行したと判定された場合、モバイル装置のタイマーT3240を起動するために、ステップ220が実行され、続いて、タイマーT3240が時間切れとなったか否かを判定するために、ステップ230が実行される。
【0017】
本発明のステップ220においては、モバイル装置が以下の何れかの事象を契機として待ち状態に移行した後に、タイマーT3240が開始される。
(1) モバイル装置がロケーション更新受諾メッセージを受信し、ロケーション更新手順が完結した時。
(2) モバイル装置がロケーション更新拒絶メッセージを受信した時。
(3) モバイル装置がCMサービス・アボート・メッセージを送信した時。
(4) モバイル装置が全てのMMコネクションを解放もしくはアボートした時。
(5) ネットワークからページング・メッセージを受信した後に、モバイル装置が待ち状態に移行した時。
【0018】
ステップ230において、タイマーT3240が時間切れになっていないと判定された場合、待ち状態から抜け出る契機となる特定のコマンドがネットワークから受信されたか否かを判定するために、ステップ240が実行される。上記特定のコマンドを受信した際、待ち状態から抜け出して、上記特定のコマンドに対応する第1の処理動作を実行するために、ステップ250が実行される。図1に示す実施形態においては、上記第1の処理動作は、図中のB1〜B4で示される処理動作とすることが可能である。処理動作B1は、ネットワーク・コマンドに従って「RRコネクションを解放する」動作である。処理動作B2は、第1のメッセージを受信した後に、「MMコネクションを指示する」動作である。処理動作B3は、「移動局(MS)が非アクティブ化され、アタッチが許可される」動作である。処理動作B4は、「RRコネクションの解放を不許可とする」動作である。
【0019】
ステップ230において、タイマーT3240が時間切れになったと判定された場合、待ち状態から抜け出て、第2の処理動作を実行するために、ステップ260が実行される。図1に示す実施形態においては、上記第2の処理動作は、図中のB5で示され、タイマーT3240が時間切れになった際の「RRコネクションの解放」動作とすることが可能である。上記第2の処理動作を実行した後は、モバイル装置は、「状態19“MMアイドル状態”」に移行することが可能である。
【0020】
図1に示す実施形態においては、モバイル装置のMM層は、待ち状態から抜け出た後に、上記特定の処理動作に対応する特定の状態に移行することが可能である。例えば、「状態9」を抜け出た後に、モバイル装置は、処理動作B1を実行して状態19に移行することが可能であり、同様に、処理動作B2を実行して「状態6」に移行する、処理動作B3を実行して「状態7」に移行する、処理動作B4を実行して「状態25」に移行する、あるいは、処理動作B5を実行して「状態19」に移行することが可能である。ステップ250またはステップ260においてMM層が待ち状態から抜け出た後に、ループ処理の開始点であるステップ210へと戻る前に、タイマーT3240をリセットするために、ステップ270が続いて実行される。
【0021】
本発明の一実施形態においては、ネットワークからページング・メッセージを受信した後に、モバイル装置が「状態9“ネットワーク・コマンドを待っている状態”」に移行した場合、タイマーT3240が開始される。タイマーT3240が時間切れになった場合、モバイル装置は、RRコネクションをアボートして「状態19“MMのアイドル状態”」に移行するように構成される。
【0022】
本発明においては、待ち状態に移行した後のモビリティ管理層の待ち期間が時間切れとなる前においては、モバイル装置は、ネットワークからの更なる指令を受け身的に待ち続けるように構成される。待ち状態に移行した後のモビリティ管理層の待ち期間が時間切れとなった後は、モバイル装置は、MM層を制御して待ち状態から抜け出すように構成される。もしも、ネットワークが何らかの理由で応答することに失敗した場合、モバイル装置のMM層は、他のサービス機能を提供するために待ち状態から抜け出ることが可能であり、それによって、システムの効率を改善する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル装置におけるモビリティ管理層を管理する方法であって、
前記モビリティ管理層が待ち状態に移行した後に、タイマーを起動するステップ;および、
前記タイマーが時間切れになる前にネットワークから受信したコマンドに従って前記モビリティ管理層は前記待ち状態を抜け出るか、または、前記タイマーが時間切れになった後に、前記モビリティ管理層は前記待ち状態を抜け出るステップ、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記タイマーが時間切れとなっていないならば、前記待ち状態から抜け出る契機となる前記コマンドが前記ネットワークから受信されたか否かを判定するステップ;および、
前記コマンドが受信されたならば、前記モビリティ管理層が、前記待ち状態を抜け出て、前記コマンドに対応した特定の処理動作を実行するステップ、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記特定の処理動作は、RRコネクションの解放動作、MMコネクションの指示動作、MS非アクティブ化およびアタッチ許可動作、またはRRコネクション解放不許可動作を含むことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
待ち期間が所定の長さを超えていなければ、前記コマンドを受信した場合に、前記モバイル装置は、前記特定の処理動作を実行し、
前記モビリティ管理層は、3GPPの標準仕様書において定義される状態であって、“ロケーション更新動作が開始された状態”である状態3、“MMコネクションがアクティブ化された状態”である状態6、“国際移動加入者局識別子(IMSI(International Mobile Subscriber Identity))の切り離し動作がアクティブ化された状態”である状態7、“ネットワーク・コマンドを待っている状態”である状態9、“MMのアイドル状態”である状態19、および“RRコネクションの解放が不許可とされる状態”である状態に移行する、
ことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記タイマーは3GPPの標準仕様書において定義される、タイマーT3240であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記待ち状態は、3GPPの標準仕様書において定義される“ネットワーク・コマンドを待っている状態”である状態9であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記タイマーが時間切れとなった時に、前記モビリティ管理層が前記待ち状態を抜け出し、RRコネクションを解放するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記RRコネクションを前記解放した後に、前記モビリティ管理層が3GPPの標準仕様書で定義される“MMアイドル状態”である状態19および“RRコネクションの解放が不許可とされる状態”である状態25に移行するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−85243(P2013−85243A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222000(P2012−222000)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【出願人】(509352749)宏碁股▲分▼有限公司 (16)
【氏名又は名称原語表記】ACER INCORPORATED
【Fターム(参考)】