説明

モリブデンおよび鉄を主体とする触媒の存在下で低級アルコールを部分酸化することによりジアルコキシアルカンを製造する方法

本発明は、モリブデンと、Fe、Bi、Al、Cr、In、La、Sbなどの3価の酸化状態をとることができる金属から選択されるその他の金属少なくとも1種と、および/またはNi、Co、Cu、V、W、Ti、Ta、Nb、Mn、Sn、Pから選択される金属とを含有する混合酸化物を主体とする触媒を用いた、低級アルコールの直接部分酸化によるジアルコキシアルカンの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデンおよび鉄を含有する混合酸化物を主体とする触媒を用いた軽質アルコールの直接部分酸化によるジアルコキシアルカンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の方法によるジアルコキシアルカンは、以下の一般式に相当する:
RR’CH−O−CRR’−O−CHRR’、式中、RおよびR’は、HまたはCH−(CH−ラジカルのいずれかであり、nは0から2であるが、ただしRラジカルとR’ラジカルの炭素原子数合計は≦3である。
【0003】
こうした化合物は、軽質アルコール、即ち炭素原子を1から4個含む直鎖アルコールを酸化して得られる。このようなアルコールとして、第一級アルコール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなど)、または第二級アルコール(2−プロパノール(またはイソプロパノール)、または2−ブタノールなど)がある。
【0004】
第一級アルコールで合成反応を行なった場合、ジアルコキシアルカンの一般式は単純化される:RCH−O−CHR−O−CHR。これはまさしく産業上最も求められているジアルコキシアルカン、いわゆるジメトキシメタン(またはメチラール)および1,1−ジエトキシエタン(またはアセタール)の式である。
【0005】
アルコール、特に軽質モノアルコールの酸化方法は、少なくともこの一世紀の間に周知になった。この酸化は、用いる反応機構により区別される2つの経路で起こり得る。第一の経路は、本明細書中以下で開発の対象となる「単純」酸化であり、第二の経路は脱水素化によるものである。
【0006】
この第二の経路は、以下の反応機構:
RCHOH→RCHO+H
による、非酸化的脱水素化、従って水素の生成を伴う(酸素不足により)形で、または水素の酸化による水の生成を伴う酸化的脱水素化(酸化脱水素化)の形で行なうことができる。これらの反応は、例えば、還元銅触媒または金属銀触媒の存在下、通常600から700℃の温度で、気相で行なわれる。この酸化方法についての研究の参照として、以下が挙げられる:Institute Francais du Petrole [French Institute of Oil],「Catalyse de Contact」[Contact Catalysis]published by Editions Technip(1978)pages 385−393、またはCatalyst Handbook by M.V.Twigg published by Wolfe Publishing Ltd(1989)pages 490−503。これらの酸化方法は一般にアルデヒド合成(メタノールからホルモール)または酸またはエステルを合成するのに用いられる。
【0007】
酸素による単純酸化の第一経路に関して、触媒の存在下、低温でメタノールを酸化すると、様々な酸化化合物(詳細には、ホルムアルデヒド、ギ酸メチル、またはメチラール(ジメトキシメタン)など)の混合物となることが周知である。
【0008】
その後メタノールで起こる多様な触媒反応は、以下のスキームで表すことができる:
【0009】
【化1】

同じスキームをエタノールおよび他の軽質アルコールに置き換えることもできる。
【0010】
従って、アルコールの部分酸化によるアルデヒド生成を目的とする従来方法は、第一級アルコールの場合には、以下の反応に相当する:
2RCHOH+O→2RCHO+2H
軽質アルコールを完全に酸化する方法は、以下の反応全体に従って、酸(さらには対応するエステル)を合成することを可能にする:
2RCHOH+2O→2RCOOH+2H
この反応は以下の2工程の結果である:
2RCHOH+O→2RCHO+2H
2RCHO+O→2RCOOH、
続いてエステル化を行なう:
2RCOOH+2RCHOH→2RCOOCHR+2H
第二経路の方法と異なり、軽質アルコールの部分酸化方法は、第一級アルコールの場合には、以下の反応全体に従って、ジアルコキシアルカンを形成することも可能にする:
6RCHOH+O→2RCHORCHOCHR+4H
この反応は連続する2工程の結果である:
2RCHOH+O→2RCHO+2H
2RCHO+4RCHOH→2RCHORCHOCHR+2H
一方では酸またはエステルを形成することが可能な総合酸化または完全酸化と、アルデヒドまたはジアルコキシアルカンの段階で止める部分酸化とを区別することは一般的なことである。
【0011】
こうした多様な反応の混在および媒体中の多様な分子の存在は、例えば、以下の論文に記載されている:N.Pernicone et al.in「On the Mechanism of CHOH Oxidation to CHO over MoO −Fe(MoO Catalyst」,published in Journal of Catalysis 14,293−302(1969)および Haichao Liu and Enrique Iglesia published in J.Phys.Chem.B(2005),109,2155−2163「Selective Oxidation of Methanol and Ethanol on Supported Ruthenium Oxide Clusters at Low Temperatures」。
【0012】
同様な機構が、第二級軽質アルコール(2−プロパノールおよび2−ブタノールなど)の酸化反応に用いられる。
【0013】
最初の第二級アルコールの酸化で、イソプロパノールであれば式CH−CO−CH、2−ブタノールであれば式CH−CO−Cのケトンができる。続くケトンと軽質アルコールの反応工程で、それぞれ式(CHCH−O−C(CH−O−CH(CHおよび(C)(CH)CH−O−C(CH)(C)−O−CH(CH)(C)のジアルコキシアルカンができる。イソプロパノールからジアルコキシアルカン、2,2−ジイソプロポキシプロパンへの酸化の反応全体は、まとめると以下のとおりである。
【0014】
【化2】

【0015】
従って、工業上の目的を有する調査研究は、「目的」酸化化合物、アルデヒド、酸および/またはエステル、またはジアルコキシアルカンを得ることを可能にする方法の、操作条件、温度、液相または気相、および特に触媒の研究に向けられている。解決すべき課題は、アルコール原料の直接酸化により、所望の「目的」生成物を、高変換率および高選択性で得ることである。
【0016】
従来の酸化によりアルデヒドを生成する(第一経路)従来の工業的方法は、以下の反応に相当する:
2RCHOH+O→2RCHO+2H
この酸化は、気相中、混合酸化物型触媒の存在下、約200から400℃の温度で行なわれる。この場合、反応媒体内に存在する酸素は、過剰ではあるが、希釈された形で用いられるので、Oとアルコールが実質的に等しい部分圧で数%程度となり、従ってO/アルコールモル比>1となり、燃焼条件にならないように反応媒体の大部分は不活性化合物で構成される。比較的高温で化学量論的にかなり過剰な酸素を用いると、事前の注意がなされなかった場合に、完全酸化、従ってアルデヒドの酸化によりアルコールから均一な酸をもたらし、反応は、さらに進んで酸の「燃焼」までもたらし、二酸化炭素と水を生成する可能性がある。
【0017】
ホルモールまたはホルムアルデヒドの製造は、過去も、および現在も、特に魅力的な部門であり、この製造に関して膨大な文献で記載がなされているが、基本的な方法の登場は、脱水素経路については前世紀の初期に、酸化経路については1931年に遡る。
【0018】
上記のN.Pernicone et al.の論文は、ホルムアルデヒドの工業合成法、モリブデンおよび鉄を主体とする混合酸化物で触媒するMontedison方法についてのものであり、付随する二次反応を含むこの種の反応の反応機構の研究について記述するものである。
【0019】
特許US7,468,341も挙げることができる。この特許は、メタノールをホルムアルデヒドに酸化するための、混合Fe−Mo酸化物とともにセリウムを含有する混合酸化物を含む触媒を記載する。または、出願WO99/52630を挙げることができる。この出願は、メタノールをホルムアルデヒドに酸化する方法において、モリブデン酸鉄触媒のin situ再生を目的とする。上記は全て、この種の触媒がホルムアルデヒドの製造において工業規模で作用する本質的な役割を示す。
【0020】
アルコールからの特異的(目的)酸化化合物の合成について行なわれた研究は、主に、このような特異的酸化の実現に適した触媒の種類についての研究に関連してきた。従来のアルデヒド合成に関して、以下の研究を挙げることができる。
【0021】
ギ酸またはこのエステルであるギ酸メチルをもたらす完全酸化については、特許出願US2005/0059839A1を挙げることができる。この出願は、担体に沈着させた白金族金属(ルテニウム)で構成されるメタノール酸化用触媒を記載する。この特許出願は、上記の出版物で目的とされるH.Liu and E.Iglesiaの研究に相当する。
【0022】
アルコールの部分酸化方法、即ちメチラールの合成法、および関連して、特に、この種の方法で用いられる触媒について、特別な研究が行なわれてきた。
【0023】
以下の文書を挙げることができる。
【0024】
特許US−A−2663742は、触媒およびハロゲンまたはハロゲン化水素の存在下、メタノールを気相で酸化することによるメチラールの製造方法を記載する。
【0025】
複数の研究が、レニウム系触媒の使用に焦点を合わせている。特許US6,403,841は、レニウム/アンチモン系触媒(SbRe)を用いたメタノールの酸化によるメチラール製造方法を記載する。この反応は、大量の不活性ガスの存在下、過剰な酸素を用いて行なわれる(体積基準で:メタノール5%、酸素10%、およびヘリウム85%、O/メタノール比=2)。Y.Yuan,et al.によるこれらの研究は、複数の文献の主題となっている:Chem.Comm.,2000,1421−1422(担持された、またはされていないレニウムを主体とする触媒について記載):J.Phys.Chem.B,2002,106,4441;Topics in Catalysis,Vol 22,No 1/2,january 2003;Chemistry Letters 2000,674 and J.Catal.195(2000)51−61など。
【0026】
他にもモリブデン系触媒の使用について研究が行なわれている。
【0027】
US出願第2005/0154226A1号は、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの酸化によるメチラールの製造方法を記載する。この反応は、式H3+nXVMo12−n40(式中、Xはリンまたはケイ素を表し、nは0から4の値である。)のヘテロポリ酸触媒を用いて行なわれる。最良の結果は、シリカに担持させたHPVMo1040触媒で得られるようである。これらの研究は、J.Phys.Chem.B 2003,107,10840−10847にも発表されている。
【0028】
M.Fournier,C.Rocchicciolo−Deltcheff,et al.は、メタノールからメチラールへの酸化について式HPMo1240/シリカの触媒の評価を記載している(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1994,307−308)。同じ研究者グループは、同じ反応における、式HSiMo1240/シリカの触媒の使用について記載している(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1998,1260−1261)。
【0029】
出願人は、特許出願WO2007/034264も出願しているが、この出願は、この種の軽質アルコール部分酸化方法における、モリブデンとバナジウムの組合せ、および適切ならば他の金属元素も組み合わせて、これらを主体とする混合酸化物からなる触媒の使用を記載する。好適な触媒は、式Mo121.2Cu1.2Sb0.5(xはその他の元素の酸化度によって決まる数値である。)に対応する。この種の触媒は、特に、広範囲のメタノール分圧および広範囲のO/メタノール比にわたって、アセタールを高収率で得ることを可能にする。
【0030】
そのうえさらに、出願人は、特許出願WO2007/128941も出願しているが、この出願は、反応媒体を希釈するための不活性ガスとして軽質アルカンを用いる、軽質アルコールの触媒的部分酸化方法を記載する。この種の方法は、特許出願WO2007/034264の触媒を用いてメチラールを合成するのに用いることができる。
【0031】
そのうえさらに、J.Sambeth,L.Gambaro and H.Thomas,Adsorption Science Technology(1995)page 171では、メタノールの酸化に五酸化バナジウムが用いられており、メチラールは反応に由来する生成物の1つである。
【0032】
軽質アルコールの部分酸化によるジアルコキシアルカンの形での生成物の調製(例えば、メタノールの直接酸化によるメチラールなど)について、既知の触媒で、完全に満足のいくものは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】米国特許第7468341号明細書
【特許文献2】国際公開第99/52630号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0059839号明細書
【特許文献4】米国特許第2663742号明細書
【特許文献5】米国特許第6403841号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0154226号明細書
【特許文献7】国際公開第2007/034264号
【特許文献8】国際公開第2007/128941号
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】Institute Francais du Petrole [French Institute of Oil],「Catalyse de Contact」[Contact Catalysis]published by Editions Technip(1978)pages 385−393
【非特許文献2】Catalyst Handbook by M.V.Twigg published by Wolfe Publishing Ltd(1989)pages 490−503
【非特許文献3】N.Pernicone et al.in「On the Mechanism of CH3OH Oxidation to CH2O over MoO3 −Fe2(MoO4)3 Catalyst」,published in Journal of Catalysis 14,293−302(1969)
【非特許文献4】Haichao Liu and Enrique Iglesia published in J.Phys.Chem.B(2005),109,2155−2163「Selective Oxidation of Methanol and Ethanol on Supported Ruthenium Oxide Clusters at Low Temperatures」
【非特許文献5】Chem.Comm.,2000,1421−1422
【非特許文献6】J.Phys.Chem.B,2002,106,4441
【非特許文献7】Topics in Catalysis,Vol 22,No 1/2,january 2003
【非特許文献8】Chemistry Letters 2000,674 and J.Catal.195(2000)51−61
【非特許文献9】J.Phys.Chem.B 2003,107,10840−10847
【非特許文献10】J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1994,307−308
【非特許文献11】J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1998,1260−1261
【非特許文献12】J.Sambeth,L.Gambaro and H.Thomas,Adsorption Science Technology(1995)page 171
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明の目的は、これらの欠点を克服することであり、軽質アルコールの直接部分酸化によりジアルコキシアルカンを合成する方法を提供することである。本発明の方法は、ジアルコキシアルカンについて、収率、生産性、および選択性を同時に高めることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
従って、本発明の対象物は、軽質アルコールの部分酸化の生成物の、ジアルコキシアルカンの形での生成物の製造方法である。この方法では、炭素原子を1から4個含む軽質アルコールを、気相中、以下の組成:
Mo12Fe
(式中、Mo=モリブデン;O=酸素;Fe=鉄;X=クロム、ニッケル、コバルト、マンガン、スズ、および銅から選択される少なくとも1種の元素;X=ビスマス、アンチモン、テルル、インジウム、アルミニウム、およびケイ素から選択される少なくとも1種の元素;X=リン、タングステン、チタン、バナジウム、タンタル、およびニオブから選択される少なくとも1種の元素;X=アルカリ土類金属、ランタン、およびセリウムから選択される少なくとも1種の元素;Xは、アルカリ金属から選択される少なくとも1種の元素であり;ならびに、a、b、c、d、およびeは指数であり、これらの値は、1.5≦a≦8、0≦b≦4、0≦c≦5、0≦d≦2、0≦e≦2、0≦f≦2であり;および、xはその他の元素の酸化度によって決まる数値である。)
に相当する触媒の存在下、酸素または酸素分子含有ガスと接触させることにより酸化させる。この方法は、反応媒体中、アルコール分圧が15から80%、好ましくは20から50%であり、酸素分圧が2から20%であり、O分圧/アルコール分圧の比が1以下、好ましくは0.5/6から1の間であり、反応媒体のその他の部分は反応に対して不活性なガスで構成されることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の方法において、軽質アルコールは、炭素原子を1から4個有する直鎖アルコール、即ちメタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールを示し、最後の2者についてアルコール官能基は1位または2位にある。
【0038】
触媒において、Mo/Fe原子比は、1.5から8、好ましくは2.5から4.5であることで、工業用触媒の耐用年数および安定性をより良いものにする。
【0039】
本発明の方法において、モリブデンと鉄の混合酸化物を用いることができ、この混合酸化物は、酸化度3をとることができる金属(ビスマス、アルミニウム、クロム、インジウム、アンチモン、およびテルルなど)少なくとも1種、および/またはリン、タングステン、バナジウム、ニッケル、コバルト、銅、チタン、タンタル、ニオブ、マンガン、スズ、およびケイ素から選択される金属少なくとも1種(これは一般に、触媒の活性相成分としてよりも結合剤としての役割を果たす。)を伴うことができる。
【0040】
本発明の方法に好適な触媒は、混合酸化物の形で、モリブデンと鉄、またはモリブデン、鉄、およびビスマスを組み合わせたものである。例として、以下の式の混合酸化物を挙げることができる:MoO−Fe(MoO、Mo12BiFe3.7Co4.7Ni2.60.09SbSi7.9、またはMo12BiFe3.7Co4.7Ni2.60.09Ti0.5Si19
【0041】
軽質アルコールの酸化を行なう目的で、気体の酸化される予定の軽質アルコール、酸素分子または酸素分子含有ガス(空気など)、ならびに場合により、希釈ガス(空気由来の窒素以外)の混合物で構成される気体の出発投入物を、触媒の入った反応器に導入する。組成物を上記に定義した範囲にするために、ただし触媒の分解を防ぐために酸素が反応の化学量論に対して過剰に存在することを確実にしながら、好ましくは希釈した空気またはアルコール/空気混合物が用いられる。
【0042】
気体の投入物は、通常、不活性ガス(通常は空気由来の窒素)の存在下で、軽質アルコールと酸素の混合物で構成され、反応媒体中のアルコール分圧が15%より高く80%以下であり好ましくは20から50%であり、酸素分圧が2から20%であるような、高いアルコール含量を有する。
【0043】
ガス流中の軽質アルコール濃度は、分圧で表して、有利には25から40%、好ましくは30から37%である。反応の同時生成物であるCO、CO、Nの再利用をできるだけ回避しながらも操作条件を簡潔化および最適化する目的で、好ましくは、空気と酸化される予定のアルコールとの混合物が用いられる。
【0044】
酸素(Oとして計算)対軽質アルコールのモル比は、1未満、好ましくは0.5/6から1/1である。酸素およびアルコールそれぞれの量の選択は、本方法の実施の仕方に依存し、完全変換を達成しようとする場合は反応の化学量論を超える必要があり、部分変換の場合は化学量論的に十分な量に関して酸素不足である。好ましくは、1.2/6から0.9/1の比が用いられる。酸素分子含有ガスは、空気であっても、富酸素空気であってもよい。好ましくは、空気は、酸化される予定のアルコールとの混合物として用いられる。
【0045】
気相で行なわれる反応は、一般に、10から400℃の温度で、50から1000kPaの圧力下、反応混合物の導入が特に2000から100000h−1となるような空間速度で行なわれる。
【0046】
酸化は、気相中、特に10から400℃、好ましくは100から350℃、より好ましくは200から300℃の温度で、接触により行なわれる。
【0047】
酸化は、気相中、通常は50から1000kPa、好ましくは100から500kPaの圧力で、接触により行なわれる。
【0048】
反応混合物を導入する空間速度は、通常は2000から100000h−1、好ましくは11000から44000h−1である。
【0049】
本発明の方法により得ることができる好適なジアルコキシアルカンは、ジメトキシメタン(メチラールとしても既知)またはホルムアルデヒドジメチルアセタールおよび1,1−ジエトキシエタンまたはアセタールである。
【0050】
本発明は、より特に、メタノール(またはエタノール)および酸素または酸素含有ガスから開始する直接(一工程での)部分酸化によるこれらのアルコキシアルカン2種、および特にメチラールの調製に関し、反応全体の化学量論は以下のとおりである:
6CHOH+O→2CHOCHOCH+4H
この反応を、アセタールまたは1,1−ジエトキシエタンを得るエタノール酸化に当てはめると、以下のとおりである:
6CHCHOH+O→2CHCHOCH(CH)OCHCH+4H
これは、モリブデンと鉄の混合酸化物を主体とする触媒は、メタノールから出発してホルムアルデヒドを合成するのに広く用いられているが、この触媒によりメタノールを直接酸化して高収率(変換率および選択性)でメチラールを得ることが可能になり、エタノールから1,1−ジエトキシエタンを合成することも可能になるということを、本出願人が思いがけず発見したことによる。
【0051】
これは、アルデヒド合成専用の触媒に関して、上記に定義される一般式で定義されるとおりの触媒の存在下、15%を超える高いアルコール含量、好ましくは30から40%のアルコールを含有する空気/アルコール混合物を用いることで、アセタールを高い収率で得ることが可能になることを、本出願人が思いがけず発見したことによる。例えば、アルコールを35%含む空気/アルコール混合物、またはO/N/アルコール組成が13/52/35に近く、従ってO/アルコール比が13/35に近いO/N/アルコール三元混合物が用いられる。
【0052】
先行技術と比較すると、利点として、収率および選択性という性能の他に、生産性の向上とエネルギー消費の低下がある。反応混合物をアルコール/酸素/不活性ガス混合物の燃焼範囲外に維持するために希釈用不活性ガスを高流速または高濃度で用いる必要がないからである。燃焼限界外に維持するのに十分な量で不活性ガスを用いる場合、不活性ガスは有利なことに以下から選択される:窒素、CO、HO、およびCH。ハロメタンの形成を防ぐ目的で、反応はハロゲンまたはハロゲン化水素の不在下で行なわれる。
【0053】
こうした条件がUS−A−2663742に記載されるものと大きく異なることに留意されてもよい。US−A−2663742では、MeOH/Oモル比は12より大きいが、反応は塩素の存在下で行なわれる。本発明の反応条件は、詳細には、MeOH/Oモル比が12未満、好ましくは6未満である。なぜなら、一方では燃焼範囲外にあることが望ましく、もう一方では高変換率で作業する場合に反応器の出口で十分なOが存在し触媒の安定性を維持することが望ましいからである。
【0054】
本方法は、反応熱を効果的に除去できる、固体触媒を用いる任意の反応器技法で行なうことができる。例えば、多管式固定床、循環流動床、またはその他の流動床などが挙げられる。次いで、触媒を、選択した反応器技法に従って、当業者に周知の技法により成形する;例えば、固定床の場合は、ペレット状、リング状(中空円筒形)、固形押し出し成形物、または不活性材料(例えば、ステアタイトビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、シリカ/アルミナビーズ、またはシリコンカーバイドビーズなど)に支持させた触媒など。流動床または循環流動床の場合、例えば、触媒に必要な機械強度を与えるために結合剤(シリカなど)の存在下で噴射することにより、触媒を成形することができる。
【0055】
好ましくは、触媒含有固定床を備えた反応器が用いられる。
【0056】
次いで、有利なことに、触媒を含有する固定床酸化反応器中、メタノール(またはエタノールまたは別の軽質アルコール)の酸化を行ない、排出物を得て、これを分離工程にかけることが可能である。この工程では、一方では反応器の頂部から、適切ならば、希釈用ガス、CO、CO、空気を酸素分子含有ガスとして用いた場合の空気由来窒素(N)、および残留Oを含む軽いガスが排出され、もう一方では底部からメチラール(アセタールまたはジアルコキシアルカン)および水が排出され、底部からの排出物は、蒸留工程にかけられて、上部の所望のジアルコキシアルカンと下部の水に分離される。軽いガスの前記排出物の少なくとも一部は、ボイラーで用いることができる。
【0057】
酸素分子または富酸素空気を酸化剤として、およびメタンを追加の希釈剤として用いることが可能である。そうすると、CH、CO、CO、N、および残留Oを含む軽いガスの排出物が得られ、この排出物は、適切ならば、酸化反応器の導入物に再利用する、および/または、精製工程にかけてCOおよび/またはCOおよび/またはO排出物を分離してから酸化反応器の導入物に再利用することができる。
【0058】
何回か示してきたとおり、アルコールの酸化方法、ひいては燃料の酸化方法は全て、三元混合物の組成の選択に依存して、アルコール/酸素混合物の燃焼条件下で行なうことができる。こうした条件は、産業開発を無効にするような障壁ではないが、操作上の注意を必要とし、そのためコストがかかるので、できるだけ回避すべきである。従って、完全に安全な条件下で操作すること、即ち、アルコール/酸素混合物の燃焼範囲で作業しないことを確実にすることが好ましい。
【0059】
こうする目的で、混合物の要素、操作温度、および圧力を考慮して、様々な場合でのこの範囲を決定するのに参照することができる。図1のダイアグラムは、メタノール/酸素/不活性ガスの三元混合物について、25℃、大気圧でのこの燃焼範囲を示す。
【0060】
燃焼範囲外の最適反応条件を決定するために、これに関する様々な出版物を参照することができる。すでに記載した、「Catalyst Hanbook」498頁、および研究「Catalyse de Contact [Contact Catalysis]」400頁の他に、Michael G.Zabetakis「Flammability Characteristics of Combustible Gases and Vapors」,Bureau of Mines Bulletin 627,pages 66 to 68の論文、および Technical report ISA−TR12.13.01−1999「Flammability Characteristics of Combustible Gases and Vapors」図75および図76および表13を挙げることができる。
【0061】
添付の図1は、25℃および1atmの標準温度圧条件下で、本発明の目的である方法の、燃焼範囲外にある操作条件をより良く示すものである。
【0062】
図1中、太線1および太線2は、それぞれ燃焼限界の下限(1)および上限(2)である濃度を定める。これらの線は、メタノール−O軸と合わせて、混合物の燃焼範囲を規定し、燃焼範囲は実質的に三角形(ゾーン0)となり、この頂点は最大酸素濃度(MOC)である。LFL(Air)およびUFL(Air)と記された点は、空気を酸化剤として用いる場合の、これらの下限および上限に対応する。これらの太線(1)と(2)の間にあるとき、混合物は燃焼ゾーン0にある。これらの線の外の部分は非燃焼性混合物を示す。右側にある部分、ゾーン3は、アルコール濃度が低くて酸素濃度は高い低いに関らず常に燃焼閾値より低い状態を示し、一方、左側にある部分、ゾーン1およびゾーン2は、酸素含有量が低い(燃焼閾値より高い)状態に対応する。実線3、実線4、および実線5は、アルコール(この場合はメタノール)の主酸化反応の化学量論に対応する。エタノールへの置き換えは、適した燃焼ダイアグラムを用いて容易に行なうことができる。実線3はメタノール燃焼(CHOH+3/2O→CO+2HO)に対応し、実線4はホルモールへの酸化(CHOH+1/2O→CHO+HO)に対応し、実線5はメチラール合成(3CHOH+1/2O→CHOCHOCH+HO)に対応し、最後に実線6は空気に相当する、即ち直線がメタノールといっしょになった頂点が80/20のN(不活性)/O混合物である。
【0063】
ゾーン1は、空気よりも酸素含有量が低い混合物が用いられることに相当する(希釈空気の使用)。ゾーン1は、完全に実線6より上にある。
【0064】
ゾーン2は、空気よりも酸素含有量が多い混合物が用いられることに相当する。ゾーン2は、完全に実線6より下にある。
【0065】
これらの2つのゾーンの内側では、メチラール形成反応に特異的なある情報を提供することが可能である(実線5)。具体的には、左側の軸に平行な直線が燃焼性ゾーン(ゾーン0)の頂点を通過してプロットされているならば(実線7)、ゾーン1は、2つの部分に区切られ、一方は1dと1gであり他方は1’である。ゾーン1d/1gにおいて、酸素含有量は依然としてMOCより低く、従って燃焼範囲外にあることが保証されている。ゾーン1’においては、MOCよりも酸素が多いが、それでも依然として燃焼範囲外にある。実線5のどちら側でも、ゾーン1gおよびゾーン1dがある。ゾーン1gでは、酸素は化学量論よりも少なく、メチラールを収率100%で得ることを数学的に不可能にしている。ゾーン1dでは、メチラール合成について化学量論よりも多い酸素が存在する。従って、変換率および収率が高いことが期待できる。ゾーン1およびゾーン2のそれぞれにおいて、ゾーン1d、ゾーン1g、ゾーン1’、およびゾーン2d、ゾーン2g、ゾーン2’を区別することができる。
【0066】
ゾーン1では、空気を酸化剤として反応を行なうことができる。
【0067】
ゾーン2d、ゾーン2g、およびゾーン2’では、酸素分子を加えて反応を行なわなければならない。ゾーン3は、燃焼下限で区切られたゾーンである。
【0068】
ゾーン1d、ゾーン1g、およびゾーン2gは、最大酸素濃度(MOC)で区切られている。この酸素含有量より少ないと、燃焼限界外にあることが保証される。従って、安全上の理由からこのゾーンで作業することが好ましい。
【0069】
ゾーン1’、ゾーン1d、ゾーン1g、およびゾーン2g、ゾーン2d、ゾーン2’は、メタノール→メチラール反応(6CHOH/O)についての化学量論線で区切られている。この線の右側では、メタノールを選択性100%でメチラールに完全に変換するのに十分な酸素が存在する。左側では、十分な酸素が存在せず、変換も部分的にしかならない。従って、ゾーン1’、ゾーン1d、およびゾーン2’で作業することが好ましい。
【0070】
本発明の方法において、好適なゾーンはゾーン1d、ゾーン1’、およびゾーン1gである。これらのゾーンにおいて、酸素源として空気を用いつつ作業しながらも不活性ガス源を大量に用いることなく、アルコール(30から40体積%、さらには50から60体積%までも)および酸素(約15%)の両方を高含有量で用いて作業することが可能である。Oの最大含有量がアルコールに依存しアルコールの炭素数とともに増加することに留意されたい。
【0071】
ガス圧縮機の電力消費を減らすために、空気中に酸化ガスが豊富にあるものを用いることが好ましい。この配置において、反応の空気の酸素を希釈するために、反応の酸素が枯渇したガスを再利用する必要はなく、従って、この方法は簡潔になる。
【0072】
この三元ダイアグラムは、一方では同じ構成要素で異なる温度および圧力条件に置き換えることができ、他方では上記の出版物、特にZebetakisの出版物を参照して、他のアルコールに置き換えることができる。この出版物の67頁に表が記載されており、この表から使用するアルコールに従って最大酸素濃度を推定することができる。
【0073】
メチラールは、この際立った性質(並外れた溶解力、両親媒性、メチラールは親水性でもあり親油性でもある、低い粘度、低い表面張力、および特に高い蒸発速度)から様々な分野で多くの用途が見出されている。
【0074】
メチラールの利用分野は、特に以下のものである:化粧用または技術用途のエーロゾル;メチラールを溶媒として用いる塗料およびワニス;塗料除去剤;洗浄溶媒および脱脂溶媒;メチラールを支持体または試薬として用いる薬学的製品;樹脂合成におけるもの;速乾性接着剤;香味料抽出におけるもの;芳香製品および香料;ディーゼル燃料用添加物;殺虫剤;燃料電池で燃料として用いられるポリオキシメチレンジメチルエーテルの生成においてメチラールが反応体である電気化学電池。
【0075】
ジエチルアセタールまたはアセトアルデヒドアセタールは、1,1−ジエトキシエタンとしても既知であるが、香料産業および医薬製品の重要な原材料である。香料に加えると、この化合物は香料の酸化耐性を高めるので、従ってこの寿命を延ばし、一方でスピリットの香味向上剤として作用する。この化合物は化学および医薬産業においても多くの用途があり、こうした産業において、この化合物は溶媒としてだけでなく、合成化学においてケトンおよびアルデヒドのカルボニル基を保護するための中間体としても用いられる。そのうえさらに、この化合物は、アルコールビニルエーテル(香料および合成樹脂において、および接着剤において、セルロースおよびこの誘導体の有機溶媒として使用される。)またはN−ビニルカルボン酸アミド(電子部品、テレビ、自動車設備、およびプリンターで使用される親水性重合体の原材料)など、様々な化合物の化学合成における重要分子でもある。
【0076】
1,1−ジエトキシエタンは、ガソリンの形成およびディーゼル燃料の形成の両方において燃料添加物として多くの利点を提供する。
【0077】
この化合物は、ディーゼル燃料用酸化添加物としても用いることができる。なぜなら、この化合物は粒子およびNOの排出を劇的に減らしながらもセタン価を維持し、または上げることさえもあり、従って発火性を下げることなく最終製品の燃焼を促進するからである。セタン価の高さはディーゼルエンジンの燃焼シリンダーに導入されてからの燃料の発火性を示すことに留意されたい。そのうえさらに、1,1−ジエトキシエタンは、燃料で用いられるグリセロールアセタールを形成する中間体としても用いることができる。
【0078】
以下の実施例はさらに本発明を例示するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0079】
触媒の評価
固定床反応器で触媒の評価を行なった。ヘリウム流および酸素流は、マスフローメーターで制御した。ガス流を、メタノールの入った蒸発器/飽和器に導入した。蒸発器は、周辺温度であるか加熱テープで加熱した。飽和器の温度を調節することでメタノールの部分圧を制御した。ガス混合物の温度は、飽和器の頂部で熱電対により制御した。
【0080】
次いで、ガス混合物を、オーブンに入れた反応器に送った。反応温度は、触媒床に入れた熱電対で測定した。
【0081】
2本のカラム(モレキュラーシーブおよびPlot U)を備えたmicroGCを用いて、気体の排出物をインラインガスクロマトグラフィーで分析した。
【0082】
触媒を粉砕し、粒子の大きさが250ミクロンの画分を同じ大きさの粒子の炭化ケイ素2倍量と混合してガラス反応器に入れた。
【0083】
MicroGCの較正は参照ガス混合物で行ない、凝縮性生成物(ジメトキシメタン、メタノール、ギ酸メチル)の較正は蒸発器/飽和器で行なった。
【実施例2】
【0084】
メタノールの酸化反応
Mo/Fe原子比が2.5のモリブデン酸鉄触媒MFM3−MS(MAPCO製)151mgを炭化ケイ素300mgと混合して反応器に投入した。MFM3−MS触媒:外径=3.9mm、内径=1.85mm、高さ=4.04mm。
【0085】
最初に、触媒を、ヘリウム/酸素流(48Sml/分−12Sml/分)下、340℃で15時間30分、活性化した。次いで、温度を250℃にして、データ収集を開始した。安定してから、触媒性能を記録した。次いで、触媒温度を段階的に上げ、各段階(260℃、271℃、および281℃)でデータを記録した。
【0086】
22000ml.h−1.g−1のHSVについて、酸素とヘリウムの流速はそれぞれ、6.7Sml/分および26.4Sml/分であり、メタノール濃度は37%に調節した。(条件:メタノール/O/不活性ガス:37/13/50)。
【0087】
メタノールの触媒酸化の間に得られた変換率および選択性の結果を表1に示す(DMM=メチラール;F=ホルモール;DME=ジメチルエーテル;MF=ギ酸メチル;CO=一酸化炭素;CO=二酸化炭素)。
【0088】
【表1】

【実施例3】
【0089】
メタノールの酸化反応
Nippon Shokubai製の市販の触媒:ACF−4S(モリブデン酸ビスマス鉄型)で反応を行なった。上記の市販の触媒150mgを炭化ケイ素300mgと混合して反応器に投入した。
【0090】
最初に、触媒を、ヘリウム/酸素流(48Sml/分−12Sml/分)下、340℃で15時間30分、活性化した。次いで、温度を236℃にして、データ収集を開始した。安定してから、触媒性能を記録した。次いで、触媒温度を段階的に上げ、各段階でデータを記録した。
【0091】
22000ml.h−1.g−1のHSVについて、酸素とヘリウムの流速はそれぞれ、6.7Sml/分および26.4Sml/分であり、メタノール濃度は37%に調節した。(条件:メタノール/O/不活性ガス:37/13/50)(DMM=メチラール;F=ホルモール;DME=ジメチルエーテル;MF=ギ酸メチル;CO=一酸化炭素;CO=二酸化炭素)。
【0092】
得られた変換率および選択性の結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【実施例4】
【0094】
(比較例):
先行技術の方法に従って、市販のモリブデン酸鉄触媒MFM3−MS(MAPCO製)150mgを用いて、メタノールの酸化を行なった。この触媒を炭化ケイ素300mgと混合して反応器に投入した。
【0095】
最初に、触媒を、ヘリウム/酸素流(48Sml/分−12Sml/分)下、340℃で15時間30分、活性化した。次いで、温度を236℃にして、データ収集を開始した。安定してから、触媒性能を記録した。次いで、触媒温度を段階的に上げ、各段階(255℃および265℃)でデータを記録した。
【0096】
酸素とヘリウムの流速はそれぞれ、4.7Sml/分および47.6Sml/分であり、メタノール濃度は反応媒体の5%に調節した。(メタノール/O/不活性ガス:5/8.5/86.5)。
【0097】
結果を以下の表3に示す。
【0098】
【表3】

表1と表3の比較からわかるとおり、メタノール分圧が低いと高い分圧のときよりも大幅にジメトキシメタンの選択性および収率が低下する結果となった。変換率を高いレベルに保つことができるというこれらの結果はまったくの予想外である。
【実施例5】
【0099】
エタノールの選択的酸化の操作条件
触媒を固定床反応器で試験した。ヘリウムガスと酸素ガスの流速はマスフローコントローラーで制御した。ガス混合物を、エタノールの入った蒸発器/飽和器に通した。蒸発器は、周辺温度であるか加熱テープで加熱することができた。飽和器の温度を調節することでエタノールを所望の部分圧に制御した。温度は、飽和器の出口で熱電対を用いて測定した。
【0100】
反応混合物を、オーブンに入れた反応器に送った。反応温度は、触媒床に入れた熱電対で測定した。
【0101】
3本のカラム(モレキュラーシーブ、Plot UおよびOV−1)を備えたmicro−GCにより、気体の排出物をインラインで分析した。
【0102】
ヘリウムと酸素の流れを、エタノール/酸素/ヘリウムの組成を望みどおりにできる適切な温度に調整された蒸発器/飽和器に通した。触媒を炭化ケイ素4倍量と混合してガラス反応器に入れた。
【0103】
Micro−GCの較正は参照ガス混合物で行ない、凝縮性生成物の較正は蒸発器/飽和器で行なった。
【実施例6】
【0104】
(比較例)
MFM3−MS触媒(MAPCO製)151mgを炭化ケイ素600mgと混合して反応器に投入した。
【0105】
触媒を、ヘリウム/酸素混合物(48Sml/分/12Sml/分)下、340℃で12時間、活性化した。次いで、温度を200℃に下げて、データを記録した。安定してから、触媒効率を試験した。データ収集後、触媒温度を次の温度に上げ(228℃、次いで260℃)、各段階でデータを記録した。
【0106】
酸素とヘリウムの流速はそれぞれ、12.7Sml/分および51Sml/分であった。飽和器の温度は、エタノールのモル分率が2%(エタノール/O/不活性ガス=2/19.5/78.5)となるように調整した。
【0107】
エタノールの触媒酸化の間に得られた結果を変換率および選択性に関して表4に示す。表記は以下のとおり:A=アセトアルデヒド;DEE=1,1−ジエトキシエタン;EE=エチルエーテル;EA=酢酸エチル;AA=酢酸;E=エチレン;CO=一酸化炭素;CO=二酸化炭素。
【0108】
【表4】

これらの操作条件下、触媒は高い選択性でアセトアルデヒドをもたらした。
【実施例7】
【0109】
MFM3−MS触媒(MAPCO製)150mgを炭化ケイ素600mgと混合して反応器に投入した。
【0110】
触媒を、ヘリウム/酸素混合物(48Sml/分/12Sml/分)下、340℃で12時間、活性化した。次いで、温度を200℃に下げて、データを記録した。安定してから、触媒効率を試験した。データ収集後、触媒温度を次の温度に上げ(228℃、次いで260℃)、各段階でデータを記録した。
【0111】
酸素とヘリウムの流速はそれぞれ、0.3Sml/分および63.4Sml/分であった。飽和器の温度は、エタノールのモル分率が2%(EtOH/O/不活性ガス=2/0.5/97.5)となるように調整した。
【0112】
エタノールの触媒酸化の間に得られた結果を変換率および選択性に関して表5に示す。
【0113】
【表5】

先の実施例の場合よりも酸素が少ないガス流とともに触媒を供給したものの、この触媒はアセトアルデヒドの生成について高い選択性が保たれていた。
【実施例8】
【0114】
MFM3−MS触媒(MAPCO製)150mgを炭化ケイ素600mgと混合して反応器に投入した。
【0115】
触媒を、ヘリウム/酸素混合物(48Sml/分/12Sml/分)下、340℃で12時間、活性化した。次いで、温度を201℃に下げて、データを記録した。安定してから、触媒効率を試験した。データ収集後、触媒温度を次の温度に上げ(231℃、次いで260℃)、各段階でデータを記録した。
【0116】
酸素とヘリウムの流速はそれぞれ、4.6Sml/分および41Sml/分であった。飽和器の温度は、エタノールのモル分率が30%(エタノール/O/HE=30/7/63)となるように調整した。
【0117】
エタノールの触媒酸化の間に得られた変換率および選択性の結果を表6に示す。
【0118】
【表6】

これらの操作条件下では、触媒はジエトキシエタンを生成したが、エタノールの分圧が低い条件下ではジエトキシエタンは検出されなかった。
【実施例9】
【0119】
MFM3−MS触媒(MAPCO製)75mgを炭化ケイ素300mgと混合して反応器に投入した。
【0120】
触媒を、ヘリウム/酸素混合物(48Sml/分/12Sml/分)下、340℃で12時間、活性化した。次いで、温度を199℃に下げて、データを記録した。安定してから、触媒効率を試験した。データ収集後、触媒温度を次の温度に上げ(230℃、次いで260℃)、各段階でデータを記録した。
【0121】
酸素とヘリウムの流速はそれぞれ、4.6Sml/分および41Sml/分であった。飽和器の温度は、エタノールのモル分率が30%(エタノール/O/HE=30/7/63)となるように調整した。
【0122】
エタノールの触媒酸化の間に得られた変換率および選択性の結果を表7に示す。
【0123】
【表7】

実施例8の2倍にあたる高いHSV(短い接触時間)の条件下では、触媒はジエトキシエタン選択性があることを示した。
【実施例10】
【0124】
MFM3−HS触媒(MAPCO製)150mgを炭化ケイ素600mgと混合して反応器に投入した。
【0125】
MAPCO製のMFM3−HSは、上記のMFM3−MSと、特にこの大きさだけでなく活性においても異なっている:外径=4.35mm、内径=1.85mm、高さ=4.44mm。
【0126】
触媒を、ヘリウム/酸素混合物(48Sml/分/12Sml/分)下、340℃で12時間、活性化した。次いで、温度を198℃に下げて、データを記録した。安定してから、触媒効率を試験した。データ収集後、触媒温度を次の温度に上げ(230℃、次いで260℃)、各段階でデータを記録した。
【0127】
酸素とヘリウムの流速はそれぞれ、4.6Sml/分および41Sml/分であった。飽和器の温度は、エタノールのモル分率が30%(エタノール/O/HE=30/7/63)となるように調整した。エタノールの触媒酸化の間に得られた変換率および選択性の結果を表8に示す。
【0128】
【表8】

ここでも、触媒はジエトキシエタン選択性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽質アルコールの部分酸化生成物をジアルコキシアルカンの形で製造する方法であって、炭素原子を1から4個含む軽質アルコールが気相において、以下の組成:
Mo12Fe
(Mo=モリブデン;O=酸素;Fe=鉄;X=クロム、ニッケル、コバルト、マンガン、スズ、および銅から選択される少なくとも1種の元素;X=ビスマス、アンチモン、テルル、インジウム、アルミニウム、およびケイ素から選択される少なくとも1種の元素;X=リン、タングステン、チタン、バナジウム、タンタル、およびニオブから選択される少なくとも1種の元素;X=アルカリ土類金属、ランタン、およびセリウムから選択される少なくとも1種の元素;Xは、アルカリ金属から選択される少なくとも1種の元素であり;ならびに、a、b、c、d、およびeは指数であり、これらの値は、1.5≦a≦8、0≦b≦4、0≦c≦5、0≦d≦2、0≦e≦2、0≦f≦2であり;および、xはその他の元素の酸化度によって決まる数値である。)
に相当する触媒の存在下、酸素または酸素分子含有ガスと接触することにより酸化され、ならびに反応媒体中、アルコール分圧が15から80%、好ましくは20から50%であり、酸素分圧が2から20%であり、O分圧/アルコール分圧の比が1以下、好ましくは0.5/6から1の間であり、反応媒体のその他の部分は反応に対して不活性なガスで構成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
軽質アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、および2−ブタノールから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
として計算した酸素と軽質アルコールのモル比は、0.5/6から1/1、好ましくは1.2/6から0.9/1であることを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
反応は、概して10から400℃の温度で、50から1000kPaの圧力下、反応混合物の導入が特に2000から100000h−1となるような空間速度で行なわれることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の方法。
【請求項5】
軽質アルコールはメタノールまたはエタノールであり、部分酸化の生成物はメチラールまたはアセタールであること、および酸化は、気相で、10から400℃、好ましくは100から350℃、より好ましくは200から300℃の温度および50から1000kPa、好ましくは100から500kPaの圧力で、接触により行なわれることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の方法。
【請求項6】
ガス流中の軽質アルコールの濃度は、25から40%、好ましくは30から37%であり、および酸素濃度は、O/アルコールの比が1/6を超え、好ましくは1.2/6から0.9/1であるような濃度であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
はビスマスであることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
以下の式の混合酸化物:Mo12BiFe3.7Co4.7Ni2.60.09SbSi7.9、Mo12BiFe3.7Co4.7Ni2.60.09Ti0.5Si19、またはMoO−Fe(MoOから選択される触媒を用いることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の方法。
【請求項9】
ガス混合物を導入する空間速度は、2000から100000h−1、好ましくは11000から44000h−1であることを特徴とする、請求項5から8の一項に記載の方法。
【請求項10】
軽質アルコールの酸化は、触媒を含有する固定床酸化反応器で行なわれることを特徴とする、請求項1から9の一項に記載の方法。
【請求項11】
反応器の出口で排出物を得て、前記排出物を分離工程にかけて、一方では反応器の頂部から、希釈用ガス、CO、CO、空気を酸素分子含有ガスとして用いた場合の空気由来窒素(N)、および残留Oを含む軽いガスの排出物が得られ、底部からはジアルコキシアルカンおよび水の排出物が得られ、底部からの排出物は、蒸留工程にかけられて、ジアルコキシアルカンと水に分離され、軽いガスの前記排出物の少なくとも一部は、適切ならば、ボイラーで用いることができることを特徴とする、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2011−528703(P2011−528703A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519215(P2011−519215)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051456
【国際公開番号】WO2010/010287
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】