説明

モータとエンコーダとのカップリング構造

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、モータとそのモータの回転角度等を検出するロータリエンコーダとを接続するカップリングの構造に関するものである。
[従来の技術]
最近のモータにより作動される機械では、正確な位置決めが重要な制御項目となることが多い。このため、モータの回転子にロータリエンコーダを接続し、回転子の相対あるいは絶対回転角度をこのエンコーダにより検出するようにしている。
このモータとエンコーダとをボルト等で完全に剛結合とすると、次のような問題が生ずる。一つは、エンコーダは精密な機械であるため、モータ作動時の回転子のずれや振動がエンコーダに伝わると誤動作や故障を起こす可能性があることである。第二には、モータとエンコーダとの回転中心が完全に一致するように両者を組み付けることは困難であり、組み付けの際に僅かなズレが残ると、モータあるいはエンコーダに無理な負荷がかかって、いずれかを損傷する可能性があることである。第三の問題として、モータが急激な起動・停止を繰り返した場合には、ボルト等の剛結合では結合部が疲労により破壊する可能性があることである。
このような問題を避けるため、モータとエンコーダとのカップリング構造に関して、従来様々な提案がなされている。実開昭56−166517号公報には、エンコーダ本体とモータ取り付け盤との間の多少の傾きを許容するため、円盤状弾性体を用いた構造が開示されている。また、特開昭59−19809号公報には、モータ回転軸とエンコーダ回転軸とがテーパにより結合され、モータ本体とエンコーダ本体とがリング形板バネにより結合されるというカップリング構造が開示されている。更に、実開昭61−157820号公報には、モータ本体とエンコーダ本体との結合を波形の薄板バネで行った例が示されている。
[発明が解決しようとする課題]
例えば、モータとエンコーダが粉塵等の多い、劣悪な環境で使用される場合には、両者の本体を一体として密閉したケーシングとして、内部への粉塵の侵入を防ぐ必要がある。その他にも、機器への取り付けの問題等から、モータとエンコーダの本体同士の剛結合としたい場合がある。上記従来の技術ではいずれも、既に説明したように、モータ本体とエンコーダ本体との結合を板バネ等により柔結合としたものであるため、このような場合のカップリング構造としては不適当である。
[課題を解決するための手段]
本発明は、モータとエンコーダとの回転軸同士を結合し、なおかつ、両者の位置ずれや振れ等を吸収して、多数回の急激な起動・停止の繰り返しにも耐え得るカップリング機構を実現したものである。このような課題を解決するため、本発明は、一方のシャフトが中空であり、他方のシャフトがその中空シャフトに内挿されている関係にあるモータの回転シャフトとエンコーダの回転シャフトとを結合するカップリング構造について、両方のシャフトの各々に一以上の突出部を設け、全突出部の端面を両シャフトの回転軸に垂直な平面に揃えて1枚の環状板バネにより固定したことを特徴とする。
[作用]
まず、両シャフトの回転軸が一致するように、中空のシャフトに他方のシャフトを内挿する。そして、両シャフトの各々に設けられた突出部の端面を両回転軸に垂直な平面に揃え、それらを1枚の環状板バネにより固定する。
例えば内挿シャフト(モータのシャフトが内挿された場合)が回転すると、その回転は環状板バネにより他方の中空シャフト(エンコーダシャフト)に遅れなく伝達される。したがって、モータの回転角度や回転速度の変化は直ちにエンコーダにより検出することができる。一方、モータシャフトが回転中に軸方向の振動を生じた場合、その振動は環状板バネが吸収し、エンコーダシャフトへは伝達しない。これにより、エンコーダでは回転の正確な検出が可能となり、振動による不具合という問題も生じない。
[実施例]
本発明の実施例を第1、2図により説明する。本実施例では、モータ10本体からシャフト12が突出しており、その突出したモータシャフト12の周囲をロータリエンコーダ14が覆う形で取り付けられている。エンコーダ14のケース16の周囲には段差18が設けられ、この段差18がモータ10のケース20の外周端縁22に嵌合され、両ケース16、20は図示せぬボルトで取り付けられる。嵌合段差部には0リング24が介挿され、両ケース16、20の継目から水・粉塵等がモータ10やエンコーダ14の内部に侵入するのを防止する。
エンコーダ14のシャフト30は中空であり、モータシャフト12のモータ10本体からの突出部分の外側に嵌挿される。エンコーダシャフト30に対向する側のモータシャフト12の表面には2本の環状溝が設けられ、各々0リング32、34がはめ込まれて両シャフト12、30間の気密を保っている。なお、本実施例ではモータシャフト12、エンコーダシャフト30共中空であるが、エンコーダシャフト30の方が本発明で言う中空シャフトに相当し、モータシャフト12は内挿シャフトに相当する。従って、モータシャフト12は中実シャフトであっても構わない。
モータシャフト12の第1図右側の端部には2個の軸方向に突出する突起36が互いに180゜離れて設けられ、その先端の端面にはボルト孔38が各々設けられる。エンコーダシャフト30の同じ側の端部にも2個の内径方向に突出する突起40が互いに180゜離れて設けられ、その右側端面にも同様各々ボルト孔42が設けられる。
次に、モータ、エンコーダの両シャフト12、30の結合方法を説明する。両シャフト12、30を0リング32、34を介して嵌挿した後、エンコーダシャフト30の2個の突起40とモータシャフト12の2個の突起36とが互いに90゜毎に配置されるような角度に調整し(第2図)、また、両突起36、40の端面が同一平面上にくるように軸方向の位置を調整する。この状態で4個の突起36、40の端面に環状板バネ44を当て、4本のボルトで板バネ44を両シャフト12、30に固定する。このとき、全ボルトは同一方向(第1図の右側)から取り付けることができるため取り付け、保守等は容易である。
これにより、モータシャフト12は環状板バネ44を介してエンコータシャフト30と結合され、モータシャフト12の回転は遅滞なくエンコーダシャフト30に伝達される。エンコーダシャフト30には回転子46が取り付けられており、それとエンコーダ14のケース16に取り付けられた固定子48とにより、電気光学的にモータ10の絶対または相対回転角度が検出される。一方、モータシャフト12が軸方向(第1図で左右方向)に振動しても、その振動は板バネ44によって吸収され、エンコーダシャフト30にはダイレクトには伝達されないため、エンコーダ14の正確な作動が保証されるとともに、耐久性も向上する。
[発明の効果]
本発明に係るカップリング構造では、モータシャフトとエンコーダシャフトとの結合を環状板バネにより行っている。従って、モータとエンコーダの本体同士は剛結合とすることができ、防塵構造等が容易となる。また、環状板バネは、モータの回転は正確に伝達する一方、軸方向の振動は吸収してエンコーダに伝えないため、正確な回転の検出が可能となると共に、モータやエンコーダの振動による不具合を防止できる。更に、本発明では環状板バネは両シャフトの突出部が揃った端面に取り付けるものであるため、ボルト等による環状板バネの取り付けを一方向からのみ行うことができ、取り付け、保守が容易となるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
第1図モータ・エンコーダ結合部の断面図、第2図は同結合部の正面図である。
10……モータ、12……モータシャフト、
14……エンコーダ、30……エンコーダシャフト、
36、40……突起、44……環状板バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】一方のシャフトが中空であり、他方のシャフトがその中空シャフトに内挿されている関係にあるモータの回転シャフトとそのモータの回転を検出するエンコーダの回転シャフトとを結合するカップリング構造であって、両方のシャフトの各々に一以上の突出部を設け、全突出部の端面を両シャフトの回転軸に垂直な平面に揃えて1枚の環状板バネにより固定したことを特徴とするモータとエンコーダとのカップリング構造。

【第1図】
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【第2図】
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【特許番号】第2576610号
【登録日】平成8年(1996)11月7日
【発行日】平成9年(1997)1月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−324681
【出願日】昭和63年(1988)12月22日
【公開番号】特開平2−168112
【公開日】平成2年(1990)6月28日
【出願人】(999999999)トヨタ自動車株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭59−19809(JP,A)
【文献】特開 昭62−172263(JP,A)
【文献】実開 昭60−74013(JP,U)