説明

モータのブラシ装置及びモータ

【課題】工数の削減に寄与することが可能なモータのブラシ装置及びモータを提供する。
【解決手段】同極のブラシ16a,16c,16e(又はブラシ16b,16d,16f)からそれぞれ延びるピッグテール33a,33c,33e(又はピッグテール33b,33d,33f)は、ベース部材13の反ブラシ側で取り回されるとともに、一纏めにされて同極の給電端子31(又は給電端子32)に一括接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータのブラシ装置及びモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータのブラシ装置は、モータハウジングに支持されるベース部材と、ベース部材上に配置され、正負極でそれぞれ2つ以上設けられるブラシと、ベース部材の反ブラシ側の面に設けられた正負極の給電端子と、各ブラシから延出され、該各ブラシと給電端子とを電気的に接続するためのピッグテールとを備えている(例えば特許文献1参照)。同極のブラシからそれぞれ延びるピッグテールは、ベース部材に設けられた円弧状のターミナル部材にて互いに電気的に接続されている。各ピッグテールは、接続されたブラシの近傍でターミナル部材と溶接等により接続されており、ターミナル部材及びピッグテールを介してブラシに電力が供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−288143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなブラシ装置では、ターミナル部材に対して各ピッグテールが個別に溶接等により接続しなければならないことから、組み付け工数が増加してしまうため、この点における改善が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、工数の削減に寄与することが可能なモータのブラシ装置及びモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、モータハウジングに支持されるベース部材と、前記ベース部材上に配置され、正負極でそれぞれ2つ以上設けられるブラシと、前記ベース部材の反ブラシ側の面に設けられた正負極の給電端子と、前記各ブラシから延出され、該各ブラシと前記給電端子とを電気的に接続するためのピッグテールとを備えたモータのブラシ装置であって、同極の前記ブラシからそれぞれ延びる前記ピッグテールは、前記ベース部材の反ブラシ側で取り回されるとともに、一纏めにされて該ブラシと同極の前記給電端子に一括接続されたことを特徴とする。
【0007】
この発明では、同極の各ピッグテールが一纏めにされてそれと同極の給電端子に一括接続されるため、ピッグテールをそれぞれ個別に給電端子に接続する場合に比べて、工数の削減に寄与することが可能となる。また、各ピッグテールがベース部材の反ブラシ側で取り回されるため、給電端子を複雑な形状としなくても各ピッグテールと接続可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータのブラシ装置において、前記ピッグテールと前記給電端子とは、前記ベース部材に対しネジにより締結固定されたことを特徴とする。
【0009】
この発明では、ピッグテールと給電端子とをベース部材に対して容易に固定することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のモータのブラシ装置において、前記ピッグテール及び前記給電端子は、積層され、その積層方向に前記ネジが挿通されるネジ挿通部をそれぞれ有することを特徴とする。
【0010】
この発明では、ピッグテール及び給電端子は、それらの積層方向に挿通されるネジにて締結固定されるため、ピッグテール及び給電端子をベース部材に強固に固定することが可能となる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のモータのブラシ装置において、同極の前記ピッグテール及び前記給電端子が1つの前記ネジで固定されるものであって、前記ベース部材には、前記給電端子の前記ネジを中心とする回転を防止するための回転防止壁が形成されたことを特徴とする。
【0012】
この発明では、給電端子のネジを中心とする回転を防止することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のブラシ装置を備えたモータである。
【0013】
この発明では、工数の削減に寄与することが可能なモータを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
従って、上記記載の発明によれば、工数の削減に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のモータのブラシ装置を説明するための概略平面図。
【図2】ブラシ装置を反ブラシ側から見た平面図。
【図3】ピッグテールと給電端子との接続部分を模式的に示す断面図。
【図4】別例におけるピッグテールと給電端子との接続部分を模式的に示す断面図。
【図5】別例におけるピッグテールと給電端子との接続部分を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のモータ10のブラシ装置11は、モータハウジング12に支持されるベース部材13と、そのベース部材13に固定された6個のブラシボックス14と、各ブラシボックス14に収容され、モータ10の整流子(図示略)に摺接するブラシ16a〜16fとを備えている。尚、6つのブラシ16a〜16fは周方向等間隔に配置されており、図1において右上に配置されたものを第1のブラシ16aとし、その第1のブラシ16aから時計回りに順次第2のブラシ16b〜第6のブラシ16fとして説明する。
【0017】
ベース部材13は、絶縁材(樹脂等)にて形成され、3つの支持部21a〜21cによってモータハウジング12にフローティング支持されている。ベース部材13の中心部には、モータ軸方向に貫通する貫通孔13aが形成されており、該貫通孔13aにはモータ10の回転軸(図示略)が挿通されており、この回転軸と一体回転する前記整流子が各ブラシ16a〜16fの内周側端部が接触するように構成される。
【0018】
支持部21a〜21cは、第1のブラシ16a及び第6のブラシ16f間、第2のブラシ16b及び第3のブラシ16c間、及び第4のブラシ16d及び第5のブラシ16e間にそれぞれ設けられている。尚、支持部21a〜21cは、周方向等間隔に配置されている。各支持部21a〜21cは、防振ゴム22とネジ23とからなり、ベース部材13はモータハウジング12に対し防振ゴム22を介してネジ止め固定される構成となっている。また、各支持部21a〜21cは、ベース部材13に対して径方向外側から組み付けられるようになっている。
【0019】
ベース部材13の側方には、各ブラシ16a〜16fに給電するための正極側の給電端子31及び負極側の給電端子32がそれぞれ設けられている。正極側の給電端子31は、第1のブラシ16aの近傍(図1及び図2において第1のブラシ16aの側方)に設けられ、負極側の給電端子32は、第6のブラシ16fの近傍(図1及び図2において第6のブラシ16fの側方)に設けられている。各給電端子31,32は、矩形平板状をなしており、ベース部材13にモータ軸方向に突出するように形成された回転防止壁13b間に配置されている。尚、回転防止壁13bは、正極側の給電端子31及び負極側の給電端子32をそれぞれ挟むように一対ずつ設けられている。
【0020】
第1〜第6のブラシ16a〜16fの上面には、ピッグテール33a〜33fの基端部がそれぞれ接続されている。尚、ピッグテール33a〜33fは、銅よりなる多数の細線を撚り線にしたものである。ブラシ16a〜16fからそれぞれ延出されたピッグテール33a〜33fは、ベース部材13に複数形成された切り欠き溝34にそれぞれ挿通されて、ベース部材13の裏面側(反ブラシ側)に延びている。そして、ピッグテール33a〜33fは、図2に示すように、ベース部材13の裏面側で取り回されて、その各先端部が前記給電端子31,32に電気的に接続されている。尚、図2は、ブラシ装置11を裏面側(反ブラシ側)から見た平面図であり、図1とは表裏が反対となっている。また、第1及び第2のブラシ16a,16bのピッグテール33a,33bをそれぞれ保持する切り欠き溝34は、第1及び第2のブラシ16a,16b間に形成されている。第3及び第4のブラシ16c,16dのピッグテール33c,33dをそれぞれ保持する切り欠き溝34は、第3及び第4のブラシ16c,16d間に形成されている。そして、第5及び第6のブラシ16e,16fのピッグテール33e,33fをそれぞれ保持する切り欠き溝34は、第5及び第6のブラシ16e,16f間に形成されている。
【0021】
第1、第3及び第5のブラシ16a,16c,16eからそれぞれ延びるピッグテール33a,33c,33eは、正極側の給電端子31に一括接続され、第2、第4及び第6のブラシ16b,16d,16fからそれぞれ延びるピッグテール33b,33d,33fは、負極側の給電端子32と一括接続されている。これにより、正極側の給電端子31からの電力が第1、第3及び第5のブラシ16a,16c,16eに、負極側の給電端子32の電力が第2、第4及び第6のブラシ16b,16d,16fにそれぞれ供給可能となっており、各ブラシ16a〜16fの極性は周方向に交互に構成されるようになっている。
【0022】
第3のブラシ16cのピッグテール33c及び第4のブラシ16dのピッグテール33dはそれぞれ、前記支持部21b,21cの内周側を通るように取り回されている。そして、第3のブラシ16cのピッグテール33cは、第2のブラシ16bのピッグテール33cの外周側を通って正極側の給電端子31まで延びている。また、略同様に、第4のブラシ16dのピッグテール33dは、第5のブラシ16eのピッグテール33eの外周側を通って負極側の給電端子32まで延びている。
【0023】
第5のブラシ16eのピッグテール33eは、支持部21aの内周側を通って正極側の給電端子31まで延び、第2のブラシ16bのピッグテール33bは、支持部21aの内周側を通って負極側の給電端子32まで延びている。このピッグテール33b,33eは、支持部21aの内周側の位置でクロスしており、この部分は電気的に絶縁される構成となっている。本実施形態の取り回しの態様では、異極のピッグテール33a〜33fがクロスする部分が上記の1箇所のみであるため、異極間の電気的絶縁の信頼性が向上するようになっている。
【0024】
[給電端子とピッグテールとの接続部分の構成]
正極側の給電端子31とピッグテール33a,33c,33eの先端部との接続部分と、負極側の給電端子32とピッグテール33b,33d,33fの先端部との接続部分とは、同様の構成となっている。そのため、接続部分の構成は正極側(図3参照)を例にとって説明し、負極側についての詳細な説明は省略する。
【0025】
図3に示すように、ピッグテール33a,33c,33eの先端部は、ベース部材13上においてモータ軸方向(図3における上下方向)に積層されている。給電端子31は、積層されたピッグテール33a,33c,33e上に配置されている。この給電端子31及びピッグテール33a,33c,33eの積層部分には、モータ軸方向に貫通するネジ挿通孔35(ネジ挿通部)がそれぞれ形成されており、該ネジ挿通孔35に挿通される端子固定ネジ36は、ベース部材13に締結固定されている。これにより、給電端子31及びピッグテール33a,33c,33eの先端部は、ネジ36のヘッド部36aとベース部材13とでモータ軸方向に挟まれて固定されている。尚、各ピッグテール33a〜33fは、ネジ挿通孔35の部分で二股に分かれているが、先端では1つにまとめられており、端子固定ネジ36からの抜け止めとなっている。
【0026】
本実施形態では、上記のように各ピッグテール33a〜33fが同極で一纏めされて給電端子31,32に接続されるため、従来技術のようにピッグテールをそれぞれ個別に給電端子に接続する場合に比べて、工数の削減に寄与することが可能となっている。また、図2に示すように、各給電端子31,32の幅方向(図2における左右方向)の両側には、前記回転防止壁13bがそれぞれ設けられているため、各給電端子31,32の端子固定ネジ36を中心とする回転が防止されるようになっている。
【0027】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態では、同極のブラシ16a,16c,16e(又はブラシ16b,16d,16f)からそれぞれ延びるピッグテール33a,33c,33e(又はピッグテール33b,33d,33f)は、ベース部材13の反ブラシ側で取り回されるとともに、一纏めにされて同極の給電端子31(又は給電端子32)に一括接続される。このため、従来技術のようにピッグテールをそれぞれ個別に給電端子31,32に接続する場合に比べて、工数の削減に寄与することが可能となる。また、各ピッグテール33a〜33fがベース部材13の反ブラシ側で取り回されるため、給電端子31,32を複雑な形状としなくても各ピッグテール33a〜33fと接続可能となる。
【0028】
(2)本実施形態では、ピッグテール33a〜33fと給電端子31,32とは、ベース部材13に対しネジにより締結固定されるため、ピッグテール33a〜33fと給電端子31,32とをベース部材13に対して容易に固定することが可能となる。
【0029】
(3)本実施形態では、ピッグテール33a〜33f及び給電端子31,32は、モータ軸方向に積層され、その積層方向に端子固定ネジ36が挿通されるネジ挿通孔35をそれぞれ有する。これにより、ピッグテール33a〜33f及び給電端子31,32は、その積層方向に挿通されるネジ36にて締結固定されるため、ピッグテール33a〜33f及び給電端子31,32をベース部材13に強固に固定することが可能となる。また、ピッグテール33a〜33f及び給電端子31,32がモータ軸方向に積層されるため、これらの接続部分の径方向スペースを小さく抑えることが可能となる。
【0030】
(4)本実施形態では、同極のピッグテール33a〜33f及び給電端子31,32がそれぞれ1つの端子固定ネジ36で固定されるものであって、ベース部材13には回転防止壁13bが形成されるため、給電端子31,32の端子固定ネジ36を中心とする回転を防止することができる。
【0031】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、各ピッグテール33a〜33fには、端子固定ネジ36が挿通されるネジ挿通孔35が形成され、同極のピッグテール33a,33c,33f(又はピッグテール33b,33d,33f)と正極側の給電端子31(又は負極側の給電端子32)とが積層されてベース部材13と端子固定ネジ36のヘッド部36aとに挟持されたが、これ以外に例えば、図4に示すようなピッグテール33a〜33fがネジ挿通孔35を有しない構成としてもよい。尚、図4は、図3と同様に、正極側の給電端子31及びピッグテール33a,33c,33fを示す図であるが、負極側も同構成であるためその詳しい説明は省略する。図4に示す構成では、ピッグテール33a,33c,33eの先端部は、一纏めにされてベース部材13と給電端子31に形成された屈曲部31aとの間に介在されている。ピッグテール33a,33c,33eの先端部は、給電端子31の弾性力によりベース部材13に対して押圧されており、これにより、該給電端子31とベース部材13との間で安定保持されている。尚、給電端子31は、端子固定ネジ36にてベース部材13に対して締結固定されている。このような構成によっても、上記実施形態と同様に工数の削減に寄与することが可能となる。
【0032】
上記実施形態において、例えば図5に示すように、ピッグテール33a,33c,33eの先端部と係合する突出部13cをベース部材13に形成し、該ピッグテール33a,33c,33eの抜け止めとしてもよい。尚、この突出部13cは、図4に示すような構成にも適用可能である。
【0033】
・上記実施形態では、各ピッグテール33a〜33fは、ネジ挿通孔35の部分で二股に分かれ、先端では1つにまとめられているが、特にこれに限定されるものではなく、先端が1つにまとめられていない構成としてもよい。
【0034】
・上記実施形態では、端子固定ネジ36によりピッグテール33a〜33fが正負極でそれぞれ一纏めに接続されたが、これ以外に例えば、溶接にて一纏めに接続してもよい。
・上記実施形態では、ブラシ6つだが、特にこれに限定されるものではなく、ブラシの数を構成に応じて適宜変更してもよい。
【0035】
・上記実施形態では、各給電端子31,32は矩形状をなしたが、特にこれに限定されるものではなく、構成に応じて形状を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…モータ、11…ブラシ装置、12…モータハウジング、13…ベース部材、13b…回転防止壁、16a〜16f…第1〜第6のブラシ、31…正極側の給電端子,32…負極側の給電端子、33a〜33f…ピッグテール、35…ネジ挿通部としてのネジ挿通孔、36…端子固定ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジングに支持されるベース部材と、
前記ベース部材上に配置され、正負極でそれぞれ2つ以上設けられるブラシと、
前記ベース部材の反ブラシ側の面に設けられた正負極の給電端子と、
前記各ブラシから延出され、該各ブラシと前記給電端子とを電気的に接続するためのピッグテールとを備えたモータのブラシ装置であって、
同極の前記ブラシからそれぞれ延びる前記ピッグテールは、前記ベース部材の反ブラシ側で取り回されるとともに、一纏めにされて該ブラシと同極の前記給電端子に一括接続されたことを特徴とするモータのブラシ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータのブラシ装置において、
前記ピッグテールと前記給電端子とは、前記ベース部材に対しネジにより締結固定されたことを特徴とするモータのブラシ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータのブラシ装置において、
前記ピッグテール及び前記給電端子は、積層され、その積層方向に前記ネジが挿通されるネジ挿通部をそれぞれ有することを特徴とするモータのブラシ装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のモータのブラシ装置において、
同極の前記ピッグテール及び前記給電端子が1つの前記ネジで固定されるものであって、
前記ベース部材には、前記給電端子の前記ネジを中心とする回転を防止するための回転防止壁が形成されたことを特徴とするモータのブラシ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のブラシ装置を備えたモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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