説明

モータの回転速度制御回路

【課題】 積分回路を用いることなくモータの回転速度を安定させる。
【解決手段】 モータの回転速度に応じた周波数を有する速度パルス信号と前記モータの目標回転速度に応じた周波数を有する基準パルス信号との周期差を第1のクロックでカウントした第1のカウント値を出力する第1の周期差検出回路と、前記速度パルス信号と前記基準パルス信号との周期差を前記第1のカウント値に応じた周波数の第2のクロックでカウントした第2のカウント値を出力する第2の周期差検出回路と、前記第2のカウント値に応じたデューティ比のパルス幅変調信号を生成し、前記モータの駆動電流を出力する出力回路に供給するパルス幅変調回路と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転速度制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの回転速度を制御する方式として、回転速度に応じた周波数を有する速度パルス信号と目標回転速度に応じた周波数を有する基準パルス信号との周期差を利用する速度ディスクリミネータ(弁別器)方式が知られている。
ここで、速度ディスクリミネータ方式で回転速度を制御する、一般的なモータ駆動回路の構成の一例を図5に示す。図5に示されているモータ駆動回路1bにおいて、速度ディスクリミネータに相当する周期差検出回路15には、速度パルス信号FGおよび基準パルス信号PLrefが入力されている。
【0003】
速度パルス信号FGの周波数が基準パルス信号PLrefの周波数より高い場合、すなわち、モータの回転速度が目標回転速度より速い場合には、周期差検出回路15は、減速用の誤差パルス信号PLdecを出力する。
一方、速度パルス信号FGの周波数が基準パルス信号PLrefの周波数より低い場合、すなわち、モータの回転速度が目標回転速度より遅い場合には、周期差検出回路15は、加速用の誤差パルス信号PLaccを出力する。
【0004】
例えば、特許文献1の図11では、誤差パルス信号PLdecおよびPLaccにそれぞれ相当する出力パルス信号Po1およびPo2を出力する速度ディスクリミネータが開示されている。また、周期差検出回路15は、それぞれの場合の周期差を基準クロックCLKでカウントし、デジタル値である誤差カウント値CNdecまたはCNaccを出力する構成とすることもできる。例えば、特許文献2の図1、図5、および図6では、周期差(偏差)に対応するデジタル値を出力する偏差検出回路を備えたモータ制御回路が開示されている。
【0005】
このようにして、モータの回転速度と目標回転速度との速度差を、速度パルス信号と基準パルス信号との周期差として検出することによって、モータの回転速度を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−100597号公報
【特許文献2】特開2008−259321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に示したモータ駆動回路1bにおいて、誤差信号生成回路16は、上記の誤差パルス信号や誤差カウント値に応じて誤差信号ERRを出力する。そして、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)回路18は、誤差信号ERRに応じたデューティ比のPWM信号を出力回路19に供給する。
しかしながら、速度パルス信号と基準パルス信号との周期差をPWM信号のデューティ比に直接反映させた場合には、目標回転速度付近においてモータの回転速度が安定しない場合がある。そのため、誤差信号ERRを積分したうえでPWM回路18に入力する積分回路17が必要となる。積分回路17は、回路規模が大きく、また部品点数を増大させる要因となるため、モータ駆動回路1bの回路面積を大きくする要因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する主たる本発明は、モータの回転速度に応じた周波数を有する速度パルス信号と前記モータの目標回転速度に応じた周波数を有する基準パルス信号との周期差を第1のクロックでカウントした第1のカウント値を出力する第1の周期差検出回路と、前記速度パルス信号と前記基準パルス信号との周期差を前記第1のカウント値に応じた周波数の第2のクロックでカウントした第2のカウント値を出力する第2の周期差検出回路と、前記第2のカウント値に応じたデューティ比のパルス幅変調信号を生成し、前記モータの駆動電流を出力する出力回路に供給するパルス幅変調回路と、を有することを特徴とするモータの回転速度制御回路である。
【0009】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、積分回路を用いることなくモータの回転速度を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態におけるモータ駆動回路全体の構成を示すブロック図である。
【図2】クロック出力回路12およびクロック選択回路13の具体的な構成の一例を示す回路ブロック図である。
【図3】モータの回転速度が目標回転速度より速い場合の周期差検出回路の動作を説明する図である。
【図4】モータの回転速度が目標回転速度より遅い場合の周期差検出回路の動作を説明する図である。
【図5】誤差信号を積分する積分回路を備えた一般的なモータ駆動回路全体の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
===モータ駆動回路全体の構成===
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態におけるモータ駆動回路全体の構成について説明する。
図1に示されているモータ駆動回路1aは、モータ9を駆動するための回路であり、端子31および32を備えた集積回路として構成されている。また、モータ駆動回路1aは、周期差検出回路11、クロック出力回路12、クロック選択回路13、カウンタ回路14、誤差信号生成回路16、PWM回路18、および出力回路19を含んで構成されている。
【0014】
周期差検出回路11には、基準クロックCLK、速度パルス信号FG、および基準パルス信号PLrefが入力されている。また、周期差検出回路11から出力される誤差カウント値CNdifおよびカウント終了信号CNEは、クロック選択回路13に入力されている。さらに、周期差検出回路11から出力される誤差パルス信号PLdecおよびPLaccは、カウンタ回路14に入力されている。
【0015】
クロック出力回路12には、基準クロックCLKが入力され、クロック出力回路12から出力されるクロックCK0ないしCK3は、クロック選択回路13に入力されている。また、クロック選択回路13から出力される選択クロックCKselは、カウンタ回路14に入力されている。さらに、カウンタ回路14から出力される誤差カウント値CNdecおよびCNaccは、誤差信号生成回路16に入力されている。
【0016】
誤差信号生成回路16からPWM回路18には、誤差信号ERRが入力されている。また、PWM回路18から出力回路19には、PWM信号が入力されている。そして、出力回路19には、端子31および32を介してモータ9が接続されている。
【0017】
===クロック出力回路およびクロック選択回路の構成===
以下、図2を参照して、クロック出力回路12およびクロック選択回路13のさらに具体的な構成について説明する。
クロック出力回路12は、例えば分周回路120ないし122を含んで構成されている。また、分周回路122には、基準クロックCLKが入力されている。さらに、分周回路122、121、および120は、それぞれの出力信号が次段の分周回路に入力されるように、当該順序で直列に接続されている。そして、クロック出力回路12からは、分周回路120ないし122の出力信号がそれぞれクロックCK0ないしCK2として出力されるとともに、基準クロックCLKがクロックCK3として出力されている。
【0018】
クロック選択回路13は、例えばラッチ回路131および選択回路132を含んで構成されている。また、ラッチ回路131のD入力(データ入力)には、誤差カウント値CNdifの上位2ビット(最上位ビットから2ビット)が入力され、CK入力(クロック入力)には、カウント終了信号CNEが入力されている。さらに、選択回路132は、4入力1出力のマルチプレクサとして構成されており、選択制御入力には、ラッチ回路131の出力信号Qが入力され、Q=0ないし3に対応するデータ入力には、それぞれクロックCK0ないしCK3が入力されている。そして、クロック選択回路13からは、選択回路132の出力信号が選択クロックCKselとして出力されている。
【0019】
===モータ駆動回路の動作===
次に、図1ないし図4を適宜参照して、本実施形態におけるモータ駆動回路の動作について説明する。
速度パルス信号FGは、例えば、ホール素子などの位置検出素子を用いてロータ(回転子)の位置を検出することによって生成することができ、その周波数がモータ9の回転速度を示している。また、センサレス方式のモータ駆動回路においては、駆動コイルに発生する逆起電圧を利用してロータの位置を検出し、速度パルス信号FGを生成することができる。一方、基準パルス信号PLrefは、その周波数がモータ9の目標回転速度を示し、例えば、外部から直接入力される。さらに、分周回路やカウンタ回路などを用いて、基準パルス信号PLrefを生成することもできる。
【0020】
周期差検出回路11(第1の周期差検出回路)は、速度パルス信号FGの周期Tfgと基準パルス信号PLrefの周期Trefとの差を基準クロックCLK(第1のクロック)でカウントし、誤差カウント値CNdif(第1のカウント値)を出力する。例えば、速度パルス信号FGおよび基準パルス信号PLrefをそれぞれ2分周したFG2信号およびPLref2信号がハイ・レベルとなる期間の差をカウントすることによって、誤差カウント値CNdifを出力することができる。また、周期差検出回路11は、誤差カウント値CNdifのカウントを終了する度に、当該タイミングを示すカウント終了信号CNEを出力する。
【0021】
また、例えば、FG2信号がハイ・レベルとなる期間を基準クロックCLKでカウントしたカウント値と、周期Trefに基準クロックCLKの周波数frefを乗じた値(Tref×fref)との差を誤差カウント値CNdifとして出力することもできる。なお、この場合には、基準パルス信号PLrefの周期Trefを用いるものの、実際に基準パルス信号PLrefが周期差検出回路11に入力される必要はない。
【0022】
さらに、例えば、図3および図4に示したように、FG2信号の立ち上がりエッジから周期Trefの期間だけハイ・レベルとなるPLref2信号を生成し、FG2信号およびPLref2信号から誤差パルス信号PLdecおよびPLaccを生成してもよい。この場合、このようなPLref2信号を生成する回路は、論理回路で構成することができる。また、誤差パルス信号PLdecおよびPLaccの立ち下がりエッジを検出することによって、当該タイミングを示すカウント終了信号CNEを出力することができる。そして、誤差パルス信号PLdecおよびPLaccを基準クロックCLKでカウントすることによって、誤差カウント値CNdifを出力することができる。
【0023】
クロック出力回路12は、直列に接続された分周回路120ないし122を用いて、基準クロックCLKからクロックCK0ないしCK3(複数の第3のクロック)を生成して出力する。一例として、分周回路120ないし122の分周比をいずれも2とすると、クロックCK0ないしCK3の周波数は、それぞれfref/8、fref/4、fref/2、frefとなる。
【0024】
クロック選択回路13のラッチ回路131は、カウント終了信号CNEのタイミングごとに、誤差カウント値CNdifの上位2ビットをラッチする。したがって、ラッチ回路131の出力信号Qは、次に周期差検出回路11が誤差カウント値CNdifのカウントを終了するまでの間保持され、変化しない。また、選択回路132は、ラッチ回路131の2ビットの出力信号Qに応じて、クロックCK0ないしCK3から1つを選択して、選択クロックCKsel(第2のクロック)として出力する。したがって、選択クロックCKselの周波数は、誤差カウント値CNdifが小さいほど低くなる。
【0025】
カウンタ回路14は、速度パルス信号FGの周期Tfgと基準パルス信号PLrefの周期Trefとの差を選択クロックCKselでカウントし、誤差カウント値CNdecまたはCNacc(第2のカウント値)を出力する。なお、本実施形態では、カウンタ回路14は、周期差検出回路11から入力される誤差パルス信号PLdecまたはPLaccをそれぞれカウントすることによって、誤差カウント値CNdecまたはCNaccを出力するものとする。したがって、周期差検出回路11の一部およびカウンタ回路14が第2の周期差検出回路に相当する。
【0026】
誤差信号生成回路16は、誤差カウント値CNdecおよびCNaccに応じて誤差信号ERRを出力する。また、PWM回路18は、誤差信号ERRに応じたデューティ比のPWM信号を生成し、出力回路19に供給する。そして、出力回路19は、PWM信号に応じてモータ9の駆動コイルに駆動電流を供給する。
【0027】
例えば、特許文献2の図5と同様に、誤差信号ERRを電圧信号として出力し、三角波と比較することによってPWM信号を生成することができる。また、例えば、特許文献2の図6と同様に、誤差信号ERRをアップダウンカウンタのカウント値として出力し、所定のデジタル値と比較することによってPWM信号を生成することもできる。
【0028】
このようにして、モータ駆動回路1aは、速度パルス信号FGと基準パルス信号PLrefとの周期差を選択クロックCKselでカウントし、誤差カウント値CNdecおよびCNaccに応じたデューティ比のPWM信号を生成する。ここで、選択クロックCKselは、当該周期差を基準クロックCLKでカウントした誤差カウント値CNdifが小さいほど、周波数が低くなるように選択されている。したがって、積分回路17を備えたモータ駆動回路1bと同様に、モータ9の回転速度と目標回転速度との速度差が小さいほど、誤差カウント値CNdecおよびCNaccが小さくなるため、PWM信号のデューティ比の変動は小さくなる。
【0029】
前述したように、モータ駆動回路1aにおいて、速度パルス信号FGと基準パルス信号PLrefとの周期差を、誤差カウント値CNdifが小さいほど周波数が低くなるように選択された選択クロックCKselでカウントし、誤差カウント値CNdecおよびCNaccに応じたデューティ比のPWM信号を生成することによって、積分回路を用いることなくモータ9の回転速度を安定させることができる。
【0030】
また、互いに周波数が異なるクロックCK0ないしCK3から、誤差カウント値CNdifに応じて選択クロックCKselを選択することによって、誤差カウント値CNdifが小さいほど選択クロックCKselの周波数を低くすることができる。
【0031】
また、誤差カウント値CNdifのカウントが終了する度に、誤差カウント値CNdifの上位2ビットをラッチすることによって、当該ラッチされた上位2ビットに応じて、次に誤差カウント値CNdecまたはCNaccのカウントに用いる選択クロックCKselを選択することができる。
【0032】
また、直列に接続された分周回路120ないし122を用いて、基準クロックCLKから順次周波数が低くなるクロックCK0ないしCK3を生成することができる。
【0033】
また、誤差カウント値CNdecおよびCNaccに応じたデューティ比のPWM信号を出力回路19に供給することによって、当該PWM信号に応じてモータ9に供給される駆動電流を制御し、モータ9の回転速度を安定して制御することができる。
【0034】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0035】
上記実施形態では、第1のカウント値の上位2ビットに応じて、周波数が順次1/2となる4つの第3のクロックから第2のクロックを選択しているが、これに限定されるものではない。例えば、モータ駆動回路1aにおいて、分周回路120ないし122の各分周比や、ラッチ回路131がラッチする誤差カウント値CNdifの上位ビット数、選択回路132の選択制御入力とデータ入力との対応関係などを適宜変更してもよい。これらを変更することによって、図5に示したモータ駆動回路1bにおいて、積分回路17の時定数を変更した場合と同様に、モータ9の回転速度の安定性や目標回転速度への収束速度を調整することができる。
【0036】
上記実施形態では、速度パルス信号FGと基準パルス信号PLrefとの周期差が大きいほど、誤差カウント値CNdifが大きくなる関係となっているが、これに限定されるものではない。例えば、誤差パルス信号PLdecまたはPLaccがハイ・レベルの間、所定の値から基準クロックCLKでカウントダウンすることによって、周期差が大きいほど小さくなる誤差カウント値CNdifを出力することもできる。なお、この場合には、上記実施形態とは反対に、誤差カウント値CNdifが小さいほど周波数が高くなるように選択クロックCKselを選択する必要がある。
【符号の説明】
【0037】
1a、1b モータ駆動回路
9 モータ
11、15 周期差検出回路
12 クロック出力回路
13 クロック選択回路
14 カウンタ回路
16 誤差信号生成回路
17 積分回路
18 PWM(パルス幅変調)回路
19 出力回路
31、32 端子
120〜122 分周回路
131 ラッチ回路
132 選択回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転速度に応じた周波数を有する速度パルス信号と前記モータの目標回転速度に応じた周波数を有する基準パルス信号との周期差を第1のクロックでカウントした第1のカウント値を出力する第1の周期差検出回路と、
前記速度パルス信号と前記基準パルス信号との周期差を前記第1のカウント値に応じた周波数の第2のクロックでカウントした第2のカウント値を出力する第2の周期差検出回路と、
前記第2のカウント値に応じたデューティ比のパルス幅変調信号を生成し、前記モータの駆動電流を出力する出力回路に供給するパルス幅変調回路と、
を有することを特徴とするモータの回転速度制御回路。
【請求項2】
互いに周波数が異なる複数の第3のクロックを出力するクロック出力回路と、
前記第1のカウント値に応じて前記複数の第3のクロックから1つを選択して前記第2のクロックとして出力するクロック選択回路と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のモータの回転速度制御回路。
【請求項3】
前記クロック選択回路は、
前記第1の周期差検出回路が前記第1のカウント値のカウントを終了する度に、当該第1のカウント値の最上位ビットから所定のビット数の上位ビットを保持するラッチ回路と、
前記ラッチ回路に保持されている前記上位ビットに応じて前記複数の第3のクロックから1つを選択する選択回路と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載のモータの回転速度制御回路。
【請求項4】
前記クロック出力回路は、前記第1のクロックを分周して前記複数の第3のクロックを出力する分周回路を含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のモータの回転速度制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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