説明

モータ内蔵ローラの製造方法、並びに、モータ内蔵ローラ

【課題】モータ内蔵ローラのローラ本体内部に充填材を装填する際の作業性の向上を課題とするものである。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明は、ローラ本体内にモータやその他の部品が組み込まれているモータ内蔵ローラの製造方法において、開口部を備えた袋体の中にスポンジ状に形成された復元性を有する弾性体を収容する工程、袋体の内部から空気を抜く工程、当該袋体及び弾性体をローラ本体の空洞部内に挿入する工程、袋体の中に空気を取り込むことにより弾性体を膨張させてローラ本体の空洞部内に当該袋体及び弾性体を装填する工程、を採用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラ本体の内部にモータやその他の部品が組み込まれ、ローラ本体自身が回転するモータ内蔵ローラ並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベア装置等に使用されるモータ内蔵ローラは、従来から様々な場所で使用されている。特に温度差が大きい所(冷凍庫内の出入口付近等)で使用される場合には、相当量の水がローラ本体の空洞部内で結露する。また、ローラ本体部分が長くなるとそれだけ空洞部も大きくなり、空洞部内で結露する水の量も増える。そして、この空洞部内での結露は、ローラ本体内のモータやその他の部品に悪影響を及ぼし、故障及び錆の原因となる。
【0003】
また、ローラ本体内部の空洞部は、コンベア装置で搬送物を搬送するとき、搬送物とローラの衝突による反響音を増大させる。そして、この騒音が労働環境悪化の原因となる。
【0004】
これらの結露及び騒音は、ローラ本体内部の空洞部の体積を小さくすることにより防止することができる。そこで、従来、モータ内蔵ローラは、ローラ本体内部の空洞部を少しでも減らして結露の発生を防止するため、ローラ本体内部に発泡ウレタンを充填材として装填していた。また、発泡ウレタンは、断熱性があるため、急激な温度変化を防ぐことができ、この点でもローラ本体内部の結露の防止に役立っていた。そして、充填材をローラ本体に装填するに際し、従来は、ローラ本体の内径と略同一の外径の充填材を圧入していた。
【0005】
特許文献1には、搬送用ローラコンベアのローラ内の結露防止構造が開示されており、特許文献2及び特許文献3には、搬送用ローラコンベアの騒音防止構造が開示されている。
【特許文献1】特開2003−054732号公報
【特許文献2】実開昭61−32113号公報
【特許文献3】実開昭51−163282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7は、本発明にかかる製造方法によらないで、弾性体3をモータ内蔵ローラAのローラ本体5の内側に圧入する工程の要部を拡大した斜視図である。発泡ウレタン製充填材は、充填材の圧入時に、ローラ本体の端部で変形が生じやすく、当該変形部がローラ本体の端部にひっかかり易い。また、ローラ本体の内周面と充填材の外周面が接するため、充填材の圧入方向とは逆方向に摩擦力が働く。さらに、複数の充填材を圧入しようとする場合には、充填材間でも摩擦力が働く。このため、充填材をそのまま、ローラ本体に圧入して装填していたのでは作業性が悪いという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、モータ内蔵ローラのローラ本体内部に充填材を装填する際の作業性の向上を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、ローラ本体内にモータやその他の部品が組み込まれているモータ内蔵ローラの製造方法において、開口部を備えた袋体の中に復元性を有する弾性体を収容する工程、袋体の内部から空気を抜く工程、当該袋体及び弾性体をローラ本体の空洞部内に挿入する工程、袋体の中に空気を取り込むことにより弾性体を膨張させてローラ本体の空洞部内に当該袋体及び弾性体を装填する工程、を採用している。
【0009】
弾性体を収容した袋体の内部から空気を抜くことにより、弾性体が圧縮され、充填材の外径がローラ本体の内径よりも小さくなる。そのため、袋体及び弾性体をローラ本体内部に装填する際、袋体の外周面がローラ本体の内周面と接しないので、袋体には摩擦力が働かず、袋体及び弾性体をローラ本体内部に圧入する必要がない。また、袋体としては、ビニル樹脂を使用することが想定されるが、ビニル樹脂は発泡ウレタンと比べ外周面の摩擦力が小さい。このため、充填材を挿入する際にローラ本体の内周面と接した場合であっても、充填材に大きな摩擦力が働くことはない。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、袋体の開口部の遮断を遮断手段により行い、袋体の一部の破壊又は遮断手段の解除により袋体の中に空気を取り込むことを特徴とするモータ内蔵ローラの製造方法である。これにより、作業の確実性を向上させることができる。
【0011】
請求項3の発明は、筒状の弾性体又は丸めたシート状の弾性体を袋体に収容することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータ内蔵ローラの製造方法である。
【0012】
これにより、弾性体の素材が独立気泡ポリエチレン発泡体等であっても、弾性体に外部と通じる空間ができるため、圧縮が可能であり、また、適度の復元性を期待することができる。
【0013】
請求項4の発明は、ローラ本体内にモータやその他の部品が組み込まれているモータ内蔵ローラにおいて、ローラ本体の空洞部内に、弾性体が収容された袋体を装填したことを特徴とするモータ内蔵ローラである。
【0014】
これにより、充填材の袋体がローラ本体内部で仕切りの役割を果たす。仮に、袋体の内部で結露が生じたとしても、その水は袋体の内部でせき止められ、モータ内蔵ローラに組み込まれているモータやその他の部品に水が流れ込まない。袋体の開口部をモータやその他の部品と逆方向にすれば、弾性体が袋体をしっかり固定しているため、開口部側で結露により発生した水が袋体を通過して、開口部と逆方向にあるモータやその他の部品に流れ込むこともない。これにより、部品の故障を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法は、モータ内蔵ローラのローラ本体内部に充填材を装填する際の作業性を向上させることができる。また、本発明のモータ内蔵ローラは、結露及び騒音の防止を容易に行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、モータ内蔵ローラAのローラ本体5の空洞部D内に、袋体2とこの袋体2の中に収容された弾性体3を装填したモータ内蔵ローラAの断面図である。図1に示すように、モータ内蔵ローラAは、ローラ本体5の内部にモータB及び減速機C等の部品を内蔵し、支軸8と閉塞部材10とを具備している。ローラ本体5は、両端が開口した金属製の筒体であり、両端が閉塞部材10によって閉塞されている。モータBは、アウターローターモーターを使用し、減速機Cは、遊星歯車列からなる減速機である。モータBの回転動力は、減速機Cにおいて減速され、出力部7を介してローラ本体5に伝播され、ローラ本体5を回転駆動させる。ローラ本体5内部の空間のうち、モータB及び減速機C等の部品及び閉塞部材10を除いた部分が空洞部Dとなる。この空洞部Dに充填材1を装填する。
【0017】
図2は、モータ内蔵ローラAの製造方法の発明のうち、袋体2の中に弾性体3を収容する第一工程の斜視図である。図2に示すように、充填材1は、袋体2と弾性体3を具備しており、この第一工程において、袋体2の中に弾性体3が収容される。袋体2の素材としては、ビニル樹脂が想定されるが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの気密性がある柔軟な性質を有する材質が好適に採用できる。
【0018】
図6は、袋体2に収容される弾性体3の形状を例示した斜視図である。弾性体3は、ローラ本体5内の空洞部Dの体積を少しでも減らすため、自然状態ではその体積が空洞部Dの体積よりも大きい方が好ましい。そして、圧縮時にその外径がローラ本体5の内径よりも小さくかつその体積が空洞部Dの体積よりも小さくなる必要がある。これらの条件が満たされる限り、弾性体3の大きさ、形状、数については特に制限はない。例えば、ローラ本体5内部の空洞部Dと同じ円筒形の弾性体3であってもよいし(図6(a))、ブロック状小片の弾性体3であってもよい(図6(b))。また、袋体2に収容する弾性体3は複数であってもよい(図6(b),(c))。
【0019】
弾性体3の素材としては、スポンジ等の連続気泡ポリウレタン発泡体が想定されるが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば、連続気泡ポリエチレン発泡体などのように、空気を抜いて圧縮することができ、復元性を有するものが好適である。しかし、独立気泡ポリエチレン発泡体であっても、例えば、筒状の弾性体3(図6(c))や丸めたシート状の弾性体3を(図6(d))を使用すれば、弾性体3に外部と通じる空間ができるため、圧縮が可能であり、また、適度の復元性を期待することができる。
【0020】
図3は、モータ内蔵ローラAの製造方法の発明うち、袋体2の内部から空気を抜く第二工程の斜視図である。図3に示すように、この第二工程において、袋体6の中から空気を抜く。空気を抜く手段としては、電気掃除機などの排気装置4が想定される。空気は、弾性体3が圧縮されて、充填材1の外径がローラ本体5の内径よりも小さくなるまで抜く。袋体2の中を真空にすると、袋体2が気密であるため、開口部の内周面同士が密着して開口部からの空気の流入を遮断することができる。これにより、弾性体3の圧縮状態を保つことができる。しかし、弾性体3の復元力が強い場合や、袋体2の中から空気を抜いて一定時間経過した場合には、袋体2の開口部から空気が流入して、弾性体3の圧縮状態を保てない場合がある。そのような場合には、開口部を熱溶着又はファスナー若しくは留め具等の遮断手段6により遮断し、圧縮状態を保つことができる(請求項2)。
【0021】
図4は、モータ内蔵ローラAの製造方法の発明のうち、袋体2及び弾性体3をローラ本体1の空洞部D内に挿入する第三工程の斜視図である。図4に示すように、この第三工程において、袋体2内部の空気を抜いて弾性体3を圧縮した充填材1が、ローラ本体5内の空洞部Dに挿入される。このとき、充填材1の外径は、ローラ本体5の内径よりも小さく、挿入時に充填材1に摩擦力が働くことはないため、充填材1をローラ本体5内部に圧入する必要はない。そのため、充填材1を容易にローラ本体5の内部に挿入することができる。
【0022】
図5は、モータ内蔵ローラAの製造方法の発明のうち、袋体2の中に空気を取り込むことにより弾性体3を膨張させてローラ本体5の空洞部D内に当該袋体2及び弾性体3を装填する第四工程の要部を拡大した断面図である。そして、図5に示すように、この第四工程において、ローラ本体5内部の所定の位置まで充填材1を挿入してから、袋体2の中に空気を取り込み、復元性を有する弾性体3を膨張させることにより充填材1を装填する。袋体2の中に空気を取り込む手段としては、袋体2の開口部を解放してもよいし、請求項2に記載するように袋体2の一部の破壊又はファスナー若しくは留め具等の遮断手段6の解除により、袋体2の中に空気を取り込んでもよい。袋体2の一部を破壊する方法としては、釘等の先端の尖ったもので突き刺して穴を開けたり、刃物等で切り裂いたりすることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】モータ内蔵ローラのローラ本体の空洞部内に、袋体とこの袋体の中に収容された弾性体を装填したモータ内蔵ローラの断面図である。
【図2】モータ内蔵ローラの製造方法の発明のうち、袋体の中に弾性体を収容する第一工程の斜視図である。
【図3】モータ内蔵ローラの製造方法の発明のうち、袋体の内部から空気を抜く第二工程の斜視図である。
【図4】モータ内蔵ローラの製造方法の発明のうち、袋体及び弾性体をローラ本体の空洞内に挿入する第三工程の斜視図である。
【図5】モータ内蔵ローラの製造方法の発明のうち、袋体の中に空気を取り込むことにより弾性体を膨張させてローラ本体の空洞部内に当該袋体及び弾性体を装填する第四工程の要部を拡大した断面図である。
【図6】袋体に収容される弾性体の形状を例示した斜視図である。
【図7】本発明にかかる製造方法によらないで、充填材をモータ内蔵ローラのローラ本体の内側に圧入する工程の要部を拡大した斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 充填材
2 袋体
3 弾性体
4 排気装置
5 ローラ本体
6 遮断手段
7 出力部
8 支軸
9 軸受
10 閉塞部材
A モータ内蔵ローラ
B モータ
C 減速機
D 空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ本体内にモータやその他の部品が組み込まれているモータ内蔵ローラの製造方法において、開口部を備えた袋体の中に復元性を有する弾性体を収容する工程、袋体の内部から空気を抜く工程、当該袋体及び弾性体をローラ本体の空洞部内に挿入する工程、袋体の中に空気を取り込むことにより弾性体を膨張させてローラ本体の空洞部内に当該袋体及び弾性体を装填する工程、を具備することを特徴とするモータ内蔵ローラの製造方法。
【請求項2】
袋体の開口部の遮断を遮断手段により行い、袋体の一部の破壊又は遮断手段の解除により袋体の中に空気を取り込むことを特徴とする請求項1に記載のモータ内蔵ローラの製造方法。
【請求項3】
丸めたシート状の弾性体又は筒状の弾性体を袋体に収容することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータ内蔵ローラの製造方法。
【請求項4】
ローラ本体内にモータやその他の部品が組み込まれているモータ内蔵ローラにおいて、ローラ本体の空洞部内に、弾性体が収容された袋体を装填したことを特徴とするモータ内蔵ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−119155(P2007−119155A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312325(P2005−312325)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(592026819)伊東電機株式会社 (71)
【Fターム(参考)】