説明

モータ内蔵自転車用ハブ

【課題】モータ内蔵自転車用ハブにおいて、モータの騒音を軽減する。
【解決手段】モータ内蔵ハブ10は、自転車の車輪のハブを構成する。モータ内蔵用ハブ10は、ハブ軸15と、モータ11と、隔壁部36bと、少なくとも一つの防音部材18と、を備えている。モータ11は、ステータ22を有する。隔壁部36bは、ステータ22を装着可能であり、少なくとも一つの配置開口43aを有する。少なくとも一つの防音部材18は、少なくとも一つの配置開口43aを塞ぐように隔壁部36bに配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用ハブ、特に、自転車の車輪のハブを構成するモータ内蔵自転車用ハブに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車において、人力による駆動力をモータにより補助するアシスト自転車が従来知られている。アシスト自転車には、車輪にモータが設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−335536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の構成では、モータ自身の騒音について全く考慮されていない。
【0005】
本発明の課題は、モータ内蔵自転車用ハブにおいて、モータの騒音を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係るモータ内蔵自転車用ハブは、自転車の車輪のハブを構成する自転車用モータ内蔵ハブである。モータ内蔵自転車用ハブは、ハブ軸と、モータと、隔壁部と、少なくとも一つの防音部材と、を備えている。モータは、ステータを有する。隔壁部は、ステータを装着可能であり、少なくとも一つの開口を有する。少なくとも一つの防音部材は、少なくとも一つの開口を塞ぐように隔壁部に配置される。
【0007】
このモータ内蔵自転車用ハブでは、ステータが隔壁部に装着され、隔壁部の開口が防音部材により塞がれる。このため、隔壁部の内部で発生する騒音が外部に伝わりにくくなり、モータの騒音を軽減することができる。
【0008】
発明2に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明1に係るモータ内蔵自転車用ハブにおいて、開口には電子部品の一部が挿入される。
【0009】
この場合には、開口に電子部品の一部が配置されるため、ハブのハブ軸方向の長さを短くすることができる。
【0010】
発明3に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明2に係るモータ内蔵自転車用ハブにおいて、隔壁部に設けられ、電子部品が実装される回路基板をさらに備える。
【0011】
この場合には、隔壁部によりモータと回路基板とを異なる空間に配置可能になる。このため、モータの発熱による影響を電子部品が受けにくくなる。
【0012】
発明4に係る自転車用モータ内蔵ハブは、発明3に係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、回路基板が収納される第1空間と、モータが収納される第2空間とが隔壁部を挟んで形成される、隔壁部を有するモータケースをさらに備える。
【0013】
この場合には、第1空間と第2空間とを隔壁部により区分けしてモータと回路基板とを配置できる。これにより、音がさらに外部に伝わりにくくなる。
【0014】
発明5に係る自転車用モータ内蔵ハブは、発明3又は4に係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、回路基板は、モータを駆動する。
【0015】
この場合には、モータの駆動回路をモータに近接して配置でき、配線作業が容易になる。
【0016】
発明6に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明4又は5に係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、モータケースは、第1ケース部材と、第2ケース部材と、を有している。第1ケース部材は、隔壁部を有し、ハブ軸に回転不能に連結され、内部に第1空間が形成される。第2ケース部材は、第1ケース部材に第1端が回転自在に支持され、ハブ軸に第2端が回転自在に支持され、内部に第2空間が形成される。
【0017】
この場合には、ハブ軸に対して回転不能な隔壁部を有する第1ケース部材に第1空間を形成し、ハブ軸に対して回転自在な第2ケース部材に第2空間を形成している。このため、2つの空間を確実に区分けでき、騒音がさらに外部に伝わりにくくなる。
【0018】
発明7に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明6に係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、第1ケース部材は、ケース本体と、カバー部材と、を有している。ケース本体は、ハブ軸に回転不能に装着され、隔壁部を有する。カバー部材は、ケース本体に固定され、隔壁部との間に第1空間が形成される。
【0019】
この場合には、第1空間がケース本体と別のカバー部材により覆われるので、回路基板を装着しやすくなる。また、第1空間がカバー部材により覆われるため、騒音がさらに外部に伝わりにくくなる。
【0020】
発明8に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明1から7のいずれかに係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、開口は、隔壁部に複数形成される。防音部材は、複数の開口を一括して塞ぐ。
【0021】
この場合には、複数の開口が一括して防音部材により塞がれるので、防音部材の装着が容易である。
【0022】
発明9に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明1から8のいずれかに係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、防音部材は、円環状に形成される。
【0023】
この場合には、防音部材を回転するモータに合わせた形状にすることができるので、防音部材を配置してもモータ内蔵自転車用ハブの大きさに影響を与えない。
【0024】
発明10に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明1から9のいずれかに係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、防音部材は、弾性部材である。
【0025】
この場合には、防音部材が弾性を有しているので、騒音を外部に伝わりにくくするとともに、振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ステータが隔壁部に装着され、隔壁部の開口が防音部材により塞がれる。このため、隔壁部の内部で発生する騒音が外部に伝わりにくくなり、モータの騒音を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態によるモータ内蔵ハブの斜視図。
【図2】モータ内蔵ハブの断面図。
【図3】モータ内蔵ハブの右分解斜視図。
【図4】防音部材とモータとケース本体との右分解斜視図。
【図5】防音部材とモータとケース本体との右分解斜視図。
【図6】回路基板の第1実装面を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<自転車の全体構成>
図1において、本発明の一実施形態によるモータ内蔵ハブ10は、人力による駆動をモータにより補助するアシスト自転車に用いられる。
【0029】
<モータ内蔵ハブ>
モータ内蔵ハブ10は、自転車の前輪のハブを構成するものである。モータ内蔵ハブ10は、自転車のフロントフォークの先端の前爪部103aに装着され、人力による駆動を補助するためのものである。モータ内蔵ハブ10は、図2に示すように、ハブ軸15と、隔壁部36bを有し、ハブ軸15に装着されるモータケース17と、防音部材18と、を有している。また、モータ内蔵ハブ10は、図2に示すように、モータケース17内に収納されたモータ11と、モータ制御回路19と、回転伝達機構25と、を有している。モータ11は、たとえば3相のブラシレスDCモータである。モータ制御回路19は、モータ制御部の一例である。
【0030】
<ハブ軸>
ハブ軸15は、たとえば、焼き入れが行われていない鋼鉄等の鉄系金属製であり、前爪部103aに両端部が回転不能に装着可能である。ハブ軸15の両端外周面には、前爪部103aに固定するためのナット部材50が螺合する左右1対の第1雄ねじ部15a及び第2雄ねじ部15bが形成されている。また、第1雄ねじ部15a及び第2雄ねじ部15bの外周面には、互いに平行な二面を有する第1係止部15c及び第2係止部15dが形成されている。第2係止部15dのハブ軸方向内方には、モータケース17の後述する第1ケース部材32を回転不能に連結するための回転係止部15eが形成されている。第1雄ねじ部15aには、ナット部材50と、第1ロックナット51と、が螺合している。第2雄ねじ部15bには、ナット部材50と、第1ケース部材32をハブ軸15に固定する第2ロックナット52と、が螺合している。ナット部材50の軸方向内方には、第1係止部15c及び第2係止部15dに各別に回転不能に係合し、かつフロントフォークの装着溝に係合してハブ軸15を回り止めするための回り止めワッシャ54がそれぞれ装着されている。
【0031】
また、第1雄ねじ部15aのハブ軸方向内方には、モータケース17の後述する第2ケース部材34の第2端を回転自在に支持する第2軸受31が螺合する第3雄ねじ部15fが形成されている。ハブ軸15の中間部分は、第1雄ねじ部15a及び第2雄ねじ部15bより大径である。
【0032】
<モータケース>
図2及び図3に示すように、モータケース17は、ハブ軸15に回転不能に連結される第1ケース部材32と、第1ケース部材32に第1端(図2右端)が回転自在に支持され、ハブ軸15に第2端(図2左端)が回転自在に支持される第2ケース部材34と、を有している。第2ケース部材34は、たとえばアルミニウム合金によって形成される。第1ケース部材32は、外側面に形成されフロントフォークの先端部を受け入れ可能な凹部32aを有している。また、第1ケース部材32は、凹部32aを形成し、ハブ軸方向外方に膨出する膨出部32bを有している。膨出部32bの内部には第1空間32cが形成されている。第2ケース部材34と第1ケース部材32とで内部に第2空間34aが形成される。
【0033】
第1ケース部材32は、ハブ軸15に回転不能に装着されるケース本体36と、ケース本体36の外側面に複数本(たとえば、5本)の取付ボルト37により固定されるカバー部材38と、有している。カバー部材38とケース本体36との間には、第1空間32cが形成される。ケース本体36およびカバー部材38は、たとえばアルミニウム合金によって形成される。
【0034】
ケース本体36は、ハブ軸15に回転不能に連結される第1ボス部36aと、第1ボス部36aと一体形成される円形の隔壁部36bと、隔壁部36bの外周部から第2ケース部材34に向かって延びる筒状の第1円筒部36cと、を有している。第1ボス部36aの内周面には、ハブ軸15の回転係止部15eに回転不能に連結される非円形の連結孔36dが形成されている。
【0035】
隔壁部36bの外側面(図2において左側の面)は概ね平坦面である。この外側面に、図3に示すように、ハブ軸15方向外方に突出して形成された複数の取付ボス36eが形成される。取付ボス36eに取付ボルト53によってモータ制御回路19が固定されている。
【0036】
隔壁部36bは、図4に示すように、モータ制御回路19に実装された後述する第1電気素子47の少なくとも一部分を配置可能な複数(たとえば4つ)の開口43aと、複数の(たとえば2つ)凹部43cと、を有している。開口43aは、隔壁部36bを貫通している。凹部43cは、隔壁部36bを貫通していない。また、隔壁部36bには、モータ11の端子26を第1空間32cに露出させるための複数(たとえば3つ)の開口43bが形成されている。開口43bは、隔壁部36bを貫通している。
【0037】
第1円筒部36cの外周面には、第2ケース部材34の第1端を回転自在に支持する、たとえば玉軸受の形態の第1軸受30の内輪30aが装着されている。第1軸受30の外側には、第1円筒部36cと外輪30bとの間をシールするシール部材30cが配置されている。また、外輪30bと第2ケース部材34との間には、シール用のOリング60が配置されている。さらに第1ボス部36aの内周部とハブ軸15との間には、シール用のOリング61が配置されている。これにより、第1ケース部材32の外側から第2ケース部材34内の第2空間34aに異物が侵入しにくくなる。また、モータ11で発生する音が外部に伝わりにくくなる。
【0038】
隔壁部36bの内側面(図2において右側の面)には、図5に示すように、モータ11の後述するステータ22の位置を調整するための筒部43dが形成されている。筒部43dの径方向外方で、隔壁部36bの内側面には、モータ11のステータ22をボルト部材39により固定するための複数(たとえば3つ)のネジ穴43eが周方向に間隔を隔てて形成されている。隔壁部36bの第1円筒部36cと筒部43dの間には、周方向に間隔を隔てて配置された複数(たとえば3つ)の取付部43fが形成されている。
【0039】
第1円筒部36cの先端部外周面には、第1円筒部36cに回転不能に連結される筒状のギア取付部35がロータ21と同軸となるように位置決めして嵌合している。ギア取付部35は、第1円筒部36cの外周面に嵌合する一端(図2右端)に、円筒部分35aと、円筒部分35aの内周面に一体形成される円環形状の取付部分35bと、を有している。円筒部分35aの他端(図2左端)35の内周面には、後述する内歯ギア48bが回転不能に連結されるセレーション部35cを有している。ギア取付部35は、取付部43fにボルト部材45により固定されている。
【0040】
カバー部材38は、図1及び図3に示すように、外側面に前述した凹部32a及び膨出部32bを有している。カバー部材38の内側面において、カバー部材38とケース本体36との間には、モータ制御回路19が配置される空間への液体の浸入を抑制するシール部材62が配置されている。シール部材62は、カバー部材38の内側面において、凹部32aの外側及び膨出部32bの外周部に配置されている。シール部材62は、防水性および弾発性を有するゴムなどによって形成される。シール部材62は、図3に示すように、ケース本体36の隔壁部36bの外側面に形成されたシール溝36fに装着されている。このシール部材62は、モータ11の音を外部に伝わりにくくする機能も有している。
【0041】
凹部32aは、図2及び図4に示すように、様々な形状のフロントフォークを挿入可能にするために、通常のフロントフォークの先端の形状より僅かに幅広に形成されている。
【0042】
隔壁部36bの外側に、ケース本体36とカバー部材38とによって形成される第1空間32cは、概ねU字形状となっている。第1空間32cには、隔壁部36bに固定されるモータ制御回路19が配置されている。
【0043】
凹部32aの一方の縁部には、図1に示すように、配線接続部38aが径方向外方に突出して形成されている。配線接続部38aは、モータ制御回路19と外部機器とを接続する電力線70を外部に取り出すために設けられている。配線接続部38aは、電力線70を接続可能なコネクタ41を有している。なお、この実施形態では、電力線70は、PLC(電力線通信Power Line Communications)により、電源の供給と信号の通信とを行えるように構成されている。配線接続部38aの先端に、前記コネクタ41が設けられている。電力線70は、たとえば2芯であり、コネクタ41は、たとえば、2芯の雌コネクタである。
【0044】
第2ケース部材34は、通常の自転車用ハブのハブシェルに類似する構造であり、有底筒状部の部材である。第2ケース部材34は、第2軸受31に支持される第2ボス部34bと、第2ボス部34bと一体形成された円板部34cと、円板部34cの外周部から第1ケース部材32側に延びる円筒状の第2円筒部34dと、を有している。
【0045】
第2ボス部34bの内周面には、ハブ軸15との間に第2軸受31が装着されている。第2軸受31は、内輪31aがハブ軸15に形成された第3雄ねじ部15fに螺合して軸方向位置を調整可能である。調整後の内輪31aは、第1ロックナット51により回り止めされる。外輪31bは、第2ボス部34bの内周面に装着されている。第2軸受31の外側には、第2ボス部34bと内輪31aとの間をシールするシール部材31cが配置されている。また、内輪31aの内周面とハブ軸15の外周面との間にはOリング65が配置されている。これにより、第2ケース部材34の第2端側から第2空間34aに異物が侵入しにくくなる。
【0046】
第2円筒部34dは、第1円筒部36cの外周側に配置されている。第2円筒部34dの第1端側の内周面には、第1軸受30の外輪30bが装着されている。第2円筒部34dの外周面には、前輪のリムとモータ内蔵ハブ10とをスポークにより連結するための第1ハブフランジ40a及び第2ハブフランジ40bがハブ軸方向の両端部に間隔を隔て形成されている。
【0047】
第1空間32cと第2空間34aとの間に隔壁部36bが設けられているので、ステータ22が備えるコイル部の熱を隔壁部36bに伝導させて、回路基板への伝導を低減させることができ、制御部によってモータの制御を安定して行うことができる。
【0048】
<防音部材>
防音部材18は、図2、図4及び図5に示すように、円環状の部材である。防音部材18は、たとえば弾性体によって形成される。防音部材18は、隔壁部36bの第1円筒部36cの内周面と、後述するステータ22の筒状の取付部49の外周面と、の間に配置されている。防音部材18は、たとえばニトリルブタジエンゴムによって形成される。防音部材18は、開口43aを塞ぐように隔壁部36bの内側面にその一部が接触して配置されている。防音部材18は、隔壁部36bの内側面のうち少なくとも開口43aの周囲の部分に接触する。ここでは、防音部材18は、開口43aの位置に応じて、第1円筒部36cと円筒部43dとの間に配置されている。防音部材18は、開口43aから隔壁部36bの外に第2空間34aで発生する音、すなわちモータの動作音および回転伝達機構25の動作音が伝わらないようにするために設けられている。
【0049】
防音部材18の外周部には、取付部43fを避けるために、取付部43fに対応する位置に凹部18aが形成されている。取付部43fは凹部18aに配置され、凹部18aに接触する。また、防音部材18には、モータ11を固定するボルト部材39の頭部39aを避けるように形成され、頭部39aが配置される凹部18bが形成されている。防音部材18はギア取付部35の取付部分35bにより抜け止めされている。
【0050】
防音部材18の取り付ける前の径方向の長さは、第1円筒部36cの内周面とステータ22の取付部49の外周面との径方向の距離より長い。これにより、防音部材18は、径方向において僅かに圧縮した状態で隔壁部36bに装着され、隔壁部36bの開口43aが防音部材18により塞がれる。このため、隔壁部36bの内部で発生する騒音が外部に伝わりにくくなり、モータ11の騒音を軽減することができる。
【0051】
<モータ制御回路>
モータ制御回路19は、図3及び図6に示すように、回路基板42を有している。この回路基板42が取付ボス36eに固定されている。回路基板42は、図2に示すように、ハブ軸15の軸線方向でモータ11と並んで設けられている。すなわち、回路基板42は、ハブ軸15に平行な方向でモータ11と並んで設けられている。回路基板42は、隔壁部36bに臨ませて配置される第1実装面42a(図6)と、カバー部材38に臨ませて配置される第2実装面42b(図3)と、を有している。第1実装面42aには、複数の第1電気素子47が実装されている。第1電気素子47は、たとえば、平滑用およびノイズ除去用の複数(たとえば5つ)のコンデンサ47a(電子部品の一例)、およびトランス47bなどを含んでいる。第1実装面42aには、第1電気素子47の他にも他の電気素子が実装されていてもよい。第1電気素子47は、図3に示すように、開口43a及び凹部43cにその一部分が挿入され、隔壁部36bに空隙を設けて配置されている。第1電気素子47は、たとえばコンデンサである。
【0052】
このように開口43a及び凹部43cに電子部品の一部が配置されるため、モータ内蔵ハブ10のハブ軸方向の長さを短くすることができる。また、隔壁部36bによりモータ11と回路基板42とを異なる空間に配置可能になるので、モータ11の発熱による影響を電子部品が受けにくくなる。
【0053】
第2実装面42bには、複数の第2電気素子44が実装される。複数の第2電気素子44は、図3に示すように、インバータ回路19aと電力線通信回路19bとを構成している。インバータ回路19aは、電源から供給された直流をスイッチングして交流に変換する。インバータ回路19aは、デューティ比を変化させてモータ内蔵ハブ10の駆動力を変化させるともに、モータ内蔵ハブ10を発電機として使用するときの回生制動力を変化させる。インバータ回路19aは、モータ11の後述する端子26に接続されている。これにより、回路基板42をモータ11に近接して配置でき、配線作業が容易になる。
【0054】
インバータ回路19aは、複数(たとえば6つ)の電界効果トランジスタ(FET)44a及びその他の電気素子を含んでいる。
【0055】
<モータ>
モータ11は、図3に示すように、ロータ21と、ロータ21の外周側にロータ21と対向して配置されるステータ22と、複数(たとえば3つ)の端子26と、を有している。
【0056】
ロータ21は、第2空間34a内に配置され、ハブ軸15に回転自在に支持されている。ロータ21は、たとえば周方向に複数の磁極を有する磁石21aと、磁石21aを保持する磁石保持部21bとを有している。磁石保持部21bは、ハブ軸方向に間隔を隔てて配置される第1軸受66a及び第2軸受66bによりハブ軸15に回転自在に支持されている。
【0057】
ステータ22は、第2空間34a内でロータ21の外周側に配置されている。ステータ22は、ケース本体36の隔壁部36bに固定され、周方向に間隔を隔てて配置される複数(たとえば12つ)のコイル部46を有している。また、ステータ22は、コイル部46を固定するための取付部49を有している。取付部49は、ヨークとして機能する。取付部49は、金属製の筒状部材であり、ハブ軸15方向の一端外周面に固定用の凸部49aを有している。取付部49は、筒部43dの外周面に装着され、内周面が筒部43dによって位置決めされる。この実施形態では、凸部49aを貫通してネジ穴43eに螺合する3本のボルト部材39により、取付部49は、隔壁部36bに固定されている。複数のコイル部46は、モータ制御回路19のインバータ回路19aの電界効果トランジスタ44aによりスイッチングされた交流により順次励磁され、ロータ21を自転車の進行方向に回転させる。
【0058】
ステータ22のコイル部46は、端子26の基端部とともに、絶縁性を有する樹脂部材によってモールドされている。端子26は、コイル部46に接続されており、開口43bに設けられる。開口43bは樹脂部材により概ね塞がれている。端子26はハブ軸15に平行に延びている。端子26の先端部は、第1空間32c内に配置されている。端子26の先端部は、回路基板42に設けられる端子接続孔42cに挿入され、ハンダ付け等の適宜の接続手段によって回路基板42に形成される配線に電気的に直接接続されている。
【0059】
<回転伝達機構>
回転伝達機構25は、ロータ21の回転を第2ケース部材34に伝達し、第2ケース部材34の回転をロータ21に伝達する。回転伝達機構25は、遊星歯車機構48を有している。遊星歯車機構48は、太陽ギア48aと、太陽ギア48aの外周側に配置された内歯ギア48bと、太陽ギア48aと内歯ギア48bとに噛み合う複数(たとえば3つ)の遊星ギア48cと、を有している。太陽ギア48aは、ロータ21に固定されている。内歯ギア48bはケース本体36に設けられている。複数の遊星ギア48cは、キャリア48dによって回転可能に支持されている。各遊星ギア48cは、歯数の異なる第1および第2のギア部を有する。第1のギア部は、太陽ギア48aに噛み合い、第2のギア部は、内歯ギア48bに噛み合っている。キャリア48dは、第2ケース部材34の円板部34cの内側面に固定されている。この遊星歯車機構48では、ケース本体36に設けられた内歯ギア48bがハブ軸15に回転不能に固定されるため、ロータ21が連結された太陽ギア48aの回転が減速して第2ケース部材34に伝達される。
【0060】
<防音部材の組み込み手順>
防音部材18を隔壁部36bに組み込む際には、最初に隔壁部36bにモータ11のステータ22をボルト部材39により固定する。続いて、防音部材18を筒部43dの外周側に装着する。このとき、取付部43fに凹部18を合わせて装着する。これにより、隔壁部36bで区画された第1空間32cと第2空間34aとを連通する複数の開口43aが塞がれる。防音部材18aを装着した後に、ギア取付部35をボルト部材45により取付部43fに固定する。これにより、防音部材18は、ギア取付部35の環状の取付部分35bにより抜け止めされる。
【0061】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
(a)前記実施形態では、防音部材の材質としてニトリルブタジエンゴムを例示したが、防音部材は、弾性体であればどのような材質でもよい。
【0063】
(b)前記実施形態では、防音部材で複数の配置開口を一括して閉塞したが、個別に閉塞してもよい。
【0064】
(c)前記実施形態では、防音部材は開口43aには挿入されていないが、防音部材は開口43aにその一部が挿入されてもよい。この場合、防音部材のうち開口43aに挿入される部分は、開口43aよりもわずかに大きく形成しておき、押し込むことによって開口43aを完全に塞ぐことができる。
【0065】
(c)他の実施形態では、防音部材は接着剤、またはねじ部材によって隔壁部36に固定されてもよい。この場合、接着剤は、耐熱性を有するものが好ましい。
【0066】
(d)モータ11の機械的な構成は、上記構成に限定されない。たとえば前記実施形態では、インナーロータのモータであるが、アウターロータのモータであってもよい。
【0067】
(e)防音部材18を径方向ではなくハブ軸方向に圧縮して装着してもよい。たとえば、ギア取付部35の取付部分35bと隔壁部36bの内側面との距離よりも防音部材18の取り付け前におけるハブ軸方向の長さを長くしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 モータ内蔵ハブ
11 モータ
15 ハブ軸
17 モータケース
18 防音部材
19 モータ制御回路
19a インバータ回路
22 ステータ
32 第1ケース部材
32c 第1空間
34a 第2空間
36b 隔壁部
47a コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の車輪のハブを構成するモータ内蔵自転車用ハブであって、
ハブ軸と、
ステータを有するモータと、
前記ステータを装着可能であり、少なくとも一つの開口を有する隔壁部と、
少なくとも一つの前記開口を塞ぐように前記隔壁部に配置される少なくとも一つの防音部材と、
を備えるモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項2】
前記開口には電子部品の一部が挿入される、請求項1に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項3】
前記隔壁部に設けられ、前記電子部品が実装される回路基板をさらに備える、請求項2に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項4】
前記回路基板が収納される第1空間と、前記モータが収納される第2空間とが前記隔壁部を挟んで形成される、前記隔壁部を有するモータケースをさらに備える、請求項3に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項5】
前記回路基板は、モータを駆動する、請求項3又は4に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項6】
前記モータケースは、
前記隔壁部を有し、前記ハブ軸に回転不能に連結され、内部に前記第1空間が形成される第1ケース部材と、
前記第1ケース部材に第1端が回転自在に支持され、前記ハブ軸に第2端が回転自在に支持され、内部に前記第2空間が形成される第2ケース部材と、を有している、請求項4又は5に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項7】
前記第1ケース部材は、
前記ハブ軸に回転不能に装着され、前記隔壁部を有するケース本体と、
前記ケース本体に固定され、前記隔壁部との間に前記第1空間が形成されるカバー部材と、有している、請求項6に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項8】
前記開口は、前記隔壁部に複数形成され、
前記防音部材は、前記複数の開口を一括して塞ぐ、請求項1から7のいずれか1項に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項9】
前記防音部材は、円環状に形成される、請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項10】
前記防音部材は、弾性部材である、請求項1から9のいずれか1項に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136079(P2012−136079A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288201(P2010−288201)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)