説明

モータ制御回路

【課題】モ―タ制御回路の全体をデジタル回路で構成することができ、構成の簡略化およびゲイン設定と回転数設定を容易に設定できることを目的とする。
【解決手段】モ―タの回転数は回転指令クロックCLKsetの周期により設定し、第3の基準クロックCLK3および第4の基準クロックCLK4の周波数を変えることにより、PWM基準信号PWMrefと速度偏差Sdifと速度判別信号Sjに応じて得られる速度偏差PWM駆動信号PWMsdifと、位相偏差Pdifと位相判別信号Pjに応じて得られる位相偏差PWM駆動信号PWMpdifのデューティを変更して、モータのPWM駆動信号PWMdrvのゲインを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ制御回路に係り、特に回転数制御の速度検出及び位相検出とデジタル式パルス幅変調(PWM)回路にてPWM駆動信号の作成方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モ―タの回転速度を一定とするように制御するモータ制御回路は、モ―タに設けられたパルスエンコ―ダにより発生する、モ―タの回転速度に対応した周波数の速度パルスを入力し、モ―タの基準回転速度に対応した周波数の基準パルスを発生する基準パルス発生回路と、前記速度パルスと基準パルスとの偏差を検出する偏差検出回路と、各パルスの偏差に対応するパルス幅の駆動パルスを発生するパルス幅変調(PWM)回路と、パルス幅変調回路の出力に対応してモ―タへの駆動電力を出力/停止する。
【0003】
上記各回路は構成の小形化および低コスト化のためにほとんどデジタル回路化されているが、前記各回路のうち、パルス幅変調回路はアナログ回路が用いられることが多い。
【0004】
図5に従来のアナログ式パルス幅変調回路を示す。図5において、110はアナログ式パルス幅変調回路で、偏差検出回路107から受け渡される偏差に対応するデジタルデ―タをアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換回路106と、デジタル/アナログ変換回路106からのアナログ信号が入力される比較回路103と、比較回路103のもう一方に入力される、三角波を発生する三角波発生回路104とにより構成されている。
【0005】
そして、デジタル/アナログ変換回路106からのアナログ信号と、三角波発生回路104からの三角波とが比較回路103で比較され、三角波が大きければ比較回路の出力である駆動信号はハイレベルになる。逆に三角波が小さければ比較回路103の駆動信号はロ―レベルになる。これにより、三角波の一周期内で駆動信号のハイレベルまたはローレベルが切換えられ、モ―タをパルス幅変調方式の駆動信号で一定回転速度となるように制御する。
【0006】
モータ制御回路の制御ゲインの設定は、上記偏差検出回路107の出力を抵抗、コンデンサ、オペアンプで構成されるアナログの積分アンプで増幅し、このアナログの積分アンプのゲインを設定することにより行われる。(例えば特許文献1参照)
上記従来のアナログ式パルス幅変調回路は、制御回路全体の構成が大形化し、しかもコストが高いという課題を有している。
【0007】
また、モータ制御回路にマイコン等を用いる場合には、制御ゲインを設定するために乗算等の演算にて処理を行い、デジタル信号からPWMのデューティに変換して出力する構成が一般的に採用されるが、乗算器等の演算器は精度を確保するには回路規模が大きくなり、小規模のゲ―トアレイIC(集積回路)には適用が困難である。
【0008】
そこで、演算器を用いず、カウンタ、コンパレータ等のディタル素子のみを組み合わせてパルス幅変調回路を含むモータの制御回路全体を構成する技術が提案されている。(例えば特許文献2参照)
図6に上記特許文献2に記載されたモータの制御回路のブロック図を示す。図6において、制御回路612は、モ―タ613に設定される基準速度に対応する速度デ―タSsを、10進数形式のデ―タで発生する速度設定部614と、前記速度デ―タSsが入力される基準パルス発生手段であるレ―トマルチプライヤ615とを備える。レ―トマルチプライヤ615には、予め定める周波数fckのクロック信号CK1が供給され、前記入力さ
れる速度デ―タSsの値で前記クロック信号CK1を分周して、周波数fiの基準パルスである基準クロック信号CK2を出力する。
【0009】
一方、回転数が制御されるモ―タ613に関連して設けられ、モ―タ613の回転速度N(rpm)に対応して、モ―タ613の1回転当りB個のパルスの割合で周波数fFGfFG=N*B/60
の速度パルスP1を発生する速度パルス発生回路617が備えられる。発生された速度パルスfFGは周波数増幅器618において、別途接続されるゲイン設定部619で設定されるゲインGにより、周波数f0
f0=G*fFG
=G*N*B/60
の速度パルスP2に変換される。
【0010】
前記基準クロック信号CK2および速度パルスP2は、速度偏差アップダウンカウンタ616の端子UP、DNにそれぞれ入力される。速度偏差アップダウンカウンタ616は、前記基準クロック信号CK2が端子UPに入力されている期間はアップカウント動作を行い、速度パルスP2が端子DNに入力されている期間はダウンカウント動作を行う。速度偏差アップダウンカウンタ616は、基準クロック信号CK2と速度パルスP2の周波数の偏差に対応したアップカウントあるいはダウンカウントのカウント動作を行い、前記偏差が零になると一定値のカウント値を出力する。このカウント結果は、例として2進数形式のカウント値Aとして、PWM回路611に入力される。
【0011】
PWM回路611は前記カウント値Aを他のデジタル値と比較し、その大小関係に従ってハイレベルあるいはロ―レベルの制御信号Swを出力する。この制御信号Swはモ―タ駆動回路620に入力され、制御信号Swがハイレベルの期間はモ―タ613に駆動電力が供給され、制御信号Swがロ―レベルの期間はモ―タ613への駆動電力の供給が停止される。
【0012】
以上のような閉ル―プを構成するモ―タ制御回路612において、fi=f0が成立する場合には、モ―タ613の回転数は一定になり、ゲイン設定部619で適切なゲインGを設定することにより、モ―タ613の制御を安定して行うことができる。
【特許文献1】特公昭63−10668号公報
【特許文献2】特開平5−236780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の構成では、モ―タ613の回転数N[rpm]は、以下の式から、
N=60*f0/(G*B)
となり、ゲインGを変えることによってモータの回転数も同時に変化してしまうので、同時に基準クロックfi(=fo)も変更しなければならないという課題があった。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡単な構成でゲインと回転数を独立して容易に設定できるモータ制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明は、モ―タの回転速度に対応した周波数の速度パルスと第1の基準クロックとモータの回転速度を設定する回転指令クロックとを入力し、前記速度パルスの周期を前記第1の基準クロックにてカウントする第1のカウンタと、この第1のカウンタのカウント値を保持する第1のレジスタと、前記回転指令クロックの周期を
前記第1の基準クロックにてカウントする第2のカウンタと、この第2のカウンタのカウント値を保持する第2のレジスタとを備え、前記第1のレジスタと前記第2のレジスタの値を比較し、前記モータが前記回転指令クロックにより設定された回転数より速いか遅いかを判別して速度判別信号を出力する比較器と、前記第1のレジスタと前記第2のレジスタの値を減算して速度偏差として出力する減算器とにより構成される速度偏差検出回路と、
前記速度パルスと前記回転指令クロックと第2の基準クロックとを入力し、前記速度パルスと前記回転指令クロックとの位相を比較して位相差を出力するとともに位相判別信号を出力する位相比較器と、この位相比較器の位相差出力のパルス幅を前記第2の基準クロックにてカウントする第3のカウンタと前記第3のカウンタのカウント値を保持し位相偏差として出力する第3のレジスタとにより構成される位相偏差検出回路と、モータのPWM駆動用のPWM基準信号と前記速度偏差と前記速度判別信号とを入力し、この速度判別信号が遅い状態を示す時は前記PWM基準信号に前記速度偏差出力を付加し、前記速度判別信号が早い状態を示す時は前記PWM基準信号から前記速度偏差出力を減じることにより速度偏差PWM駆動信号を生成する速度偏差PWM出力回路と、この速度偏差PWM出力回路の出力と前記位相偏差と前記位相判別信号とを入力し、前記位相判別信号が遅れた状態を示す時は前記速度偏差PWM駆動信号に前記位相偏差出力を付加し、前記位相判別信号が進んだ状態を示す時は前記速度偏差PWM駆動信号から前記位相偏差出力を減じて位相偏差PWM駆動信号を出力する位相偏差PWM出力回路とにより構成されるパルス幅変調回路とを備え、このパルス幅変調回路の前記速度偏差PWM出力回路は、前記PWM基準信号と前記速度判別信号を入力する第1のエクスクルーシブORゲートと、前記速度偏差を入力し、第3の基準クロックにてカウントする第4のカウンタと、この第4のカウンタのカウント出力と前記PWM基準信号とを入力し、速度偏差PWM駆動信号を出力する第2のエクスクルーシブORゲートとを備え、前記第4のカウンタは、前記第1のエクスクルーシブORゲート出力の立下りエッジにて前記速度偏差をプリセットしてダウンカウントを開始し、カウント中はハイレベルを出力し、カウント値がゼロの時にカウントを停止する様に構成され、前記パルス幅変調回路の前記位相偏差PWM出力回路は、前記速度偏差PWM駆動信号と前記位相判別信号を入力する第3のエクスクルーシブORゲートと、前記位相偏差を入力し第4の基準クロックにてカウントする第5のカウンタと、前記速度偏差PWM駆動信号と前記第5のカウンタのカウント出力を入力し、位相偏差PWM駆動信号を出力する第4のエクスクルーシブORゲートとを備え、前記第5のカウンタは、前記第3のエクスクルーシブORゲート出力の立下りエッジにて前記速度偏差をプリセットしてダウンカウントを開始し、カウント中はハイレベルを出力し、カウント値がゼロの時カウントを停止する様に構成され、前記第3の基準クロックおよび第4の基準クロックの周波数をそれぞれ変更して前記パルス幅変調回路から出力される前記速度偏差PWM駆動信号または前記位相偏差PWM駆動信号のデュ−ティを変更することにより、モータのPWM駆動ゲインを調整可能としたモータ制御回路である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、モ―タの回転数は回転指令クロックの周期により設定可能であり、ゲインはパルス幅変調回路のPWM駆動信号を生成する第4のカウンタおよび第5のカウンタの第3の基準クロックおよび第4の基準クロックの周波数をそれぞれ変更して、PWM駆動信号のデュ−ティを変更することにより、モータのPWM駆動ゲインを設定することが可能であるので、回転数とゲイン設定を個別に設定することができるという効果を有する。
また、基準クロックの周波数を変更するだけでゲイン設定ができるという効果を有する。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、モータの回転数が設定偏差幅以上のズレがある場合は、速度偏差のみで、モータの回転数を設定範囲内に追い込むことにより、応答性を速くすることが可能である。また設定範囲内に納まると、位相偏差を合成することにより制御の
安定性が確保できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1によるモータ制御回路のブロック図である。図1においてモ―タに設けられてモ―タの回転速度に対応した周波数の速度パルスPが第1のカウンタ1に入力され、この速度パルスPの周期を第1の基準クロックCLK1にてカウントする。この第1のカウンタ1のカウント値は第1のレジスタ2に受け渡されて保持される。モ―タの回転数を設定する回転指令クロックCLKsetが第2のカウンタ3に入力され、この回転指令クロックCLKsetの周期を第1の基準クロックCLK1にてカウントする。この第2のカウンタ3のカウント値は第2のレジスタ4に受け渡されて保持される。そして、第1のレジスタ2と第2のレジスタ4の出力は比較器8および減算器9に入力される。比較器8により第1のレジスタ2と第2のレジスタ4の値を比較して、モータが回転指令クロックCLKsetにより設定された回転数より速いか、遅いかを示す速度判別信号Sjを出力する。減算器9により第1のレジスタ2と第2のレジスタ4の値を減算し速度偏差Sdifを出力する。以上により速度偏差検出回路40が構成されている。
【0020】
また、速度パルスPと回転指令クロックCLKsetは位相比較器5にも入力されており、速度パルスPと回転指令クロックCLKsetとの位相差と、この位相差に基づきモータの位相が進んでいるか遅れているかを示す位相判別信号Pjとを出力する。そして、この位相差は第3のカウンタ6に入力され、その出力パルス幅を第2の基準クロックCLK2にてカウントする。この第3のカウンタ6のカウント値は第3のレジスタ7に受け渡されて保持されて、その出力を位相偏差Pdifとして出力する。以上により位相偏差検出回路41が構成されている。
【0021】
そして、デュ−ティが50%のPWM基準信号PWMrefと、速度偏差検出回路40からの速度偏差Sdifと速度判別信号Sjとが速度偏差PWM出力回路10に入力され、速度判別信号Sjが遅い回転を示す時はPWM基準信号PWMrefに速度偏差Sdifを付加し、速度判別信号Sjが早い回転を示す時はPWM基準信号PWMrefから速度偏差Sdifを減じることにより速度偏差PWM駆動信号PWMsdifを生成する。この速度偏差PWM駆動信号PWMsdifと位相偏差検出回路41からの位相偏差Pdifと前記位相判別信号Pjとが位相偏差PWM出力回路11に入力され、位相判別信号Pjが遅れた状態を示す時は速度偏差PWM駆動信号PWMsdifに位相偏差Pdifを付加し、位相判別信号Pjが進んだ状態を示す時は速度偏差PWM駆動信号PWMsdifから位相偏差Pjを減じることにより位相偏差PWM駆動信号PWMpdifを生成する。以上の速度偏差PWM出力回路10と位相偏差PWM出力回路11によりパルス幅変調回路12が構成されている。
【0022】
上記の速度偏差検出回路40と、位相偏差検出回路41とパルス幅変調回路12とにより、モータの制御回路が構成されている。
【0023】
図2は、より詳細な本発明の実施の形態1におけるモータ制御回路のブロック図である。
【0024】
以下に上記構成によるモータ制御回路の動作の詳細を説明する。
【0025】
モ―タの回転速度に対応した周波数の速度パルスPを1/2分周器50により1/2分周して第1のカウンタ1のCLR端子に入力し、Lレベルで第1のカウンタ1の出力をク
リヤする。第1のカウンタ1は、1/2分周器50の出力がHレベルの区間は第1の基準クロックCLK1をアップカウントし、第1のカウンタ1がフルカウントするとCARY端子よりLレベルを出力してカウント動作を停止する。
【0026】
第1のカウンタ1の出力データは第1のレジスタ2に受け渡されて、1/2分周器50の出力と第1のカウンタ1のCARY出力が入力されるAND52の出力(論理積)の立下りエッジのタイミングで保持される。
【0027】
同様に回転数指令クロックCLKsetを1/2分周器51にて1/2分周して第2のカウンタ3のCLR端子に入力し、Lレベルで第2のカウンタ3の出力をクリヤする。第2のカウンタ3は、1/2分周51器の出力がHレベルの区間は第1の基準クロックをアップカウントし、第2のカウンタ3がフルカウントするとCARY端子よりLレベルを出力してカウント動作を停止する。
【0028】
第2のカウンタ3の出力データは第2のレジスタ4に受け渡されて、1/2分周器51の出力と第2のカウンタ3のCARY出力が入力されるAND53の出力(論理積)の立下りエッジのタイミングで保持される。
【0029】
第1のレジスタ2と第2のレジスタ4の出力データは比較器8に入力されて比較され、速度判別信号Sjとして出力される。同時に、第1のレジスタ2と第2のレジスタ4の出力データは減算器9に入力されて、絶対値を減算処理されて、速度偏差Sdifが出力される。速度判別信号Sjは、第1のレジスタ2の出力データが第2のレジスタ4の出力データより大きい時にHレベルとなる。この時は速度パルスPの周波数が回転指令クロックCLKsetより低いことを意味しており、モータの回転数が遅い時に速度判別信号SjはHレベルを出力する。逆に第1のレジスタ2の出力データが第2のレジスタ4の出力データが小さい時にLレベルを出力する。即ちモータの回転数が高い時に速度判別信号SjはLレベルを出力する。以上により速度偏差検出回路40が構成されている。
【0030】
速度パルスPと回転指令クロックCLKsetはさらに位相比較器5にも入力されて位相差を検出され、位相差のパルスを出力する。同時に速度パルスPが回転指令クロックCLKsetより遅れている時にはHレベルの、逆に進んでいる時にはLレベルの位相判別信号Pjを出力する。
【0031】
そして、位相比較器5の位相差のパルス出力は第3のカウンタ6に入力され、第3のカウンタ6は第2の基準クロックをカウントし、フルカウントするとCARY端子よりLレベルを出力してカウント動作を停止する。
【0032】
第3のカウンタ6の出力データは第3のレジスタ7に入力され、位相比較器5のパルス出力と第3のカウンタ6のCARY出力が入力されるAND54の出力(論理積)の立下りエッジのタイミングで保持される。そして第3のレジスタ7の出力データが位相偏差データPdifとして出力される。以上により位相偏差検出回路41が構成されている。
【0033】
次にパルス幅変調回路12の構成について説明する。
PWM基準信号PWMrefと速度偏差検出回路40から出力される速度判別信号Sjは第1のエクスクルーシブORゲート57に入力される。そして、速度偏差検出回路40から出力される速度偏差Sdifは、第4のカウンタ55に入力され、第3の基準クロックCLK3によりカウントされる。第4のカウンタ55は、第1のエクスクルーシブORゲート57の出力の立下りエッジで速度偏差Sdifをプリセットするとともにダウンカウントを開始し、カウント中はハイレベルを出力して、ゼロにてカウントを停止する。
【0034】
PWM基準信号PWMrefと第4のカウンタ55のカウント出力は第2のエクスクルーシブORゲート58に入力され、この第2のエクスクルーシブORゲート58から速度偏差PWM駆動信号PWMsdifを出力する。
【0035】
この速度偏差PWM駆動信号PWMsdifと位相判別信号Pjは第3のエクスクルーシブORゲート59に入力される。
【0036】
そして、位相偏差検出回路41から出力される位相偏差Pdifは、第5のカウンタ56に入力され、第4の基準クロックCLK4によりカウントされる。第5のカウンタ56は、第3のエクスクルーシブORゲート59出力の立下りエッジで、位相偏差Pdifをプリセットするとともに、ダウンカウントを開始し、カウント中はハイレベルを出力して、ゼロにてカウントを停止する。
【0037】
速度偏差PWM駆動信号PWMsdifと第5のカウンタ56のカウント出力は第4のエクスクルーシブORゲート60に入力され、この第4のエクスクルーシブORゲート60から位相偏差PWM駆動信号PWMpdifを出力する。
【0038】
以上によりパルス幅変調回路12が構成されている。
【0039】
図3(a)はモータの回転速度が遅い時、そして、図3(b)はモータの回転速度が速い時の本方式における速度制御回路の速度偏差PWM駆動信号PWMsdifに関連する信号のタイミング図である。
【0040】
速度パルスPおよび回転指令信号CLKsetをそれぞれ1/2分周し、その分周された出力のハイレベル区間をそれぞれ第1カウンタおよび第2カウンタによりカウントする。
そして第1カウンタのカウント値a1と第2カウンタのカウント値a2の絶対値減算することにより速度偏差Sdifとして(a1−a2)を得る。図3(a)に示すように、モータの回転速度が遅い時はa1>a2となるので速度判別信号SjとしてH(ハイレベル)を出力する。即ちSjがHの時はモータ回転速度が遅い(Slow状態)であることを示す。
【0041】
そして速度判別信号SjがHの時は、第4カウンタにより第3の基準クロックCLK3を速度偏差Sdifの値(a1−a2)になる迄カウントした時間を、デューティ50%のPWM基準信号PWMrefのHレベル区間に足し合わせて速度偏差PWM駆動信号PWMsdifが出力される。従って、モータ回転速度が遅い時は速度偏差PWM駆動信号PWMsdifのデューティは50%を超える値となる。
【0042】
逆にモータ回転速度が速い時には、図3(b)に示すように第1カウンタのカウント値b1が第2カウンタのカウント値b2より小さいので速度偏差Sdifは(b2−b1)となり、速度判別信号SjとしてL(ロウレベル)を出力する。即ちSjがLの時はモータ回転速度が早い(Fast状態)であることを示す。
【0043】
そして速度判別信号SjがLの時は、第4カウンタにより第3の基準クロックCLK3を速度偏差Sdifの値(b2−b1)になる迄カウントした時間を、デューティ50%のPWM基準信号PWMrefのHレベル区間から減じて速度偏差PWM駆動信号PWMsdifが出力される。従って、モータ回転速度が速い時は速度偏差PWM駆動信号PWMsdifのデューティは50%未満となる。
【0044】
本実施の形態においては、さらに、速度偏差検出回路40の第2のレジスタ4の出力デ
ータをシフトレジスタ62により右にシフトして得られる設定回転数の許容範囲のデータと、速度パルスPと、速度偏差検出回路40の減算器9から得られた速度偏差Sdifを比較器63に入力して、速度偏差Sdifの値が、モータが設定回転数の設定偏差幅(本実施例ではシフトレジスタ62で右に5bitシフトして6.25%としている)以内に納まったどうかを示す回転数ロック信号Dlockを出力する。そして速度偏差PWM駆動信号PWMsdifと位相偏差PWM駆動信号PWMpdifが入力されるセレクタ61を回転数ロック信号Dlockにより切換えて、PWM駆動信号PWMdrvを出力する構成となっている。
【0045】
即ち、回転数ロック信号Dlockにより、PWM駆動信号PWMdrvとして、速度偏差PWM駆動信号PWMsdifのみを出力するか、位相偏差Pdifを合成した位相偏差PWM駆動信号PWMpdifを出力するかを切換える構成を備えている。
【0046】
この構成により、モータの回転数が設定偏差幅以上のズレがある場合は、速度偏差Sdifのみで、モータの回転数を設定範囲内に追い込むことにより、応答性を速くすることが可能である、また設定範囲内に納まると、位相偏差Pdifを合成することにより制御の安定性が確保できるという効果を有する。
【0047】
図4は本発明の速度偏差SdifとPWM駆動信号PWMdrv(速度偏差PWM駆動信号PWMsdifが出力されている)のデュ−ティの関係を示すグラフである。
【0048】
X軸は速度偏差Sdif、Y軸はPWM駆動信号PWMdrvのデューティである。
X軸は、モータの回転速度が遅くなる方向を速度偏差Sdifが正方向に増加する方向としている。X軸とY軸の交点のX軸の値は速度偏差Sdif=0、即ち回転速度が設定回転数に一致した状態であり、Y軸の値はデューティ=50%である。X−Y座標上に描かれた直線の傾斜がPWM駆動のゲインを表し、傾斜が大きい程小さな速度偏差Sdifに対し、大きなデューティのPWM駆動信号PWMdrv(速度偏差PWM駆動信号PWMsdif)が得られる。即ちゲインが大きくなる。
【0049】
図2に示すパルス幅変調回路12は、上記したように速度偏差Sdifを第4のカウンタ55により第3の基準クロックCLK3をカウントし、カウント中の期間を速度判別信号Sjに応じて、PWM基準信号PWMrefに付加あるいは減算することによりデュ−ティが変化する速度偏差PWM駆動信号PWMsdifを生成している。
【0050】
従って、この時、第3の基準クロックCLK3の周波数を下げると、PWM基準信号PWMrefに付加される第4のカウンタ55のカウント中の時間が長くなるので、速度偏差PWM駆動信号PWMsdifのデュ−ティが増大し、逆に第3の基準クロックCLK3の周波数を上げると第4のカウンタ55のカウント中の時間が短くなるのでデュ−ティが減少する特性を示す。
【0051】
同様に、位相偏差Pdifは、第5のカウンタ56により第4の基準クロックCLK4をカウントし、カウント中の期間を位相判別信号Pjに応じて、速度偏差PWM駆動信号PWMsdifに付加あるいは減算することによりデュ−ティが変化する位相偏差PWM駆動信号PWMpdifを生成している。
【0052】
従って、第4のカウンタ55および第5のカウンタ56の第3の基準クロックCLK3および第4の基準クロックCLK4の周波数をそれぞれ変更することにより、速度偏差PWM駆動信号PWMsdifまたは位相偏差PWM駆動信号PWMpdifを選択して出力されるPWM駆動信号PWMdrvのデュ−ティのゲインを調整することができる。
これにより、速度偏差SdifによるPWMデュ−ティのゲインと位相偏差Pdifによ
るPWMデュ−ティのゲインを個別に設定することが可能であり、またゲイン設定を基準クロックの周波数により設定することができる。
【0053】
なお、以上の説明では、PWM基準信号PWMrefのデューティを50%としたが、モータの回転制御の安定点が50%で構成した例で説明したが、PWM基準信号PWMrefのデューティは、モータの回転制御安定点に応じて、任意の値に設定しても同様に実施可能である。
【0054】
また、図2においては、速度パルスP及び回転指令クロックCLKsetを1/2分周して立ち上がりまたは立下りの片側エッジを検出し、第1のカウンタ1および第2のカウンタのスタートおよびリセットを行っているが、1/2分周を省略してそれぞれの両側エッジを検出して前記各カウンタのスタート、リセットを行い、毎回周期をカウントしレジスタにより保持することも同様に実施可能である。
【0055】
また、以上の説明では、回転数ロック検出回路64の回転数ロック範囲をシフトレジスタ62を用いて右5bitシフトすることにより、6.25%としたが、任意の回転数ロック範囲を指定することも同様に実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るモータ制御回路は、回転数とゲイン設定を個別に設定が可能なデジタル方式のPWM駆動回転数制御方式として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1によるモータ制御回路を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1によるモータ制御回路を示す詳細図
【図3】(a)本発明の実施の形態1におけるモータの回転速度が遅い場合のモータ制御回路動作説明のためのタイミングチャート、(b)本発明の実施の形態1におけるモータの回転速度が早い場合のモータ制御回路動作説明のためのタイミングチャート
【図4】本発明の速度偏差とPWM駆動信号のデュ−ティの関係を示すグラフ
【図5】従来のアナログ式のパルス幅検出回路のブロック図
【図6】従来のデジタル式の制御回路のブロック図
【符号の説明】
【0058】
1 第1のカウンタ
2 第1のレジスタ
3 第2のカウンタ
4 第2のレジスタ
5 位相比較器
6 第3のカウンタ
7 第3のレジスタ
8、63 比較器
9 減算器
10 速度偏差PWM出力回路
11 位相偏差PWM出力回路
12、110 パルス幅変調回路
40 速度偏差検出回路
41 位相偏差検出回路
50、51 1/2分周器
52、53、54 AND
55 第4のカウンタ
56 第5のカウンタ
57、58、59、60 エクスクルーシブORゲート
61 セレクタ
62 シフトレジスタ
64 回転数ロック検出回路
103 比較回路
104 三角波発生回路
106 デジタル/アナログ変換回路
107 偏差検出回路
611 PWM回路
612 モータ制御回路
613 モータ
615 レートマルチプライヤ
616 速度偏差アップダウンカウンタ
617 速度パルス発生回路
618 周波数増幅器
619 ゲイン設定部
620 モータ駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モ―タの回転速度に対応した周波数の速度パルスと第1の基準クロックとモータの回転速度を設定する回転指令クロックとを入力し、前記速度パルスの周期を前記第1の基準クロックにてカウントする第1のカウンタと、この第1のカウンタのカウント値を保持する第1のレジスタと、前記回転指令クロックの周期を前記第1の基準クロックにてカウントする第2のカウンタと、この第2のカウンタのカウント値を保持する第2のレジスタとを備え、前記第1のレジスタと前記第2のレジスタの値を比較し、前記モータが前記回転指令クロックにより設定された回転数より速いか遅いかを判別して速度判別信号を出力する比較器と、前記第1のレジスタと前記第2のレジスタの値を減算して速度偏差として出力する減算器とにより構成される速度偏差検出回路と、前記速度パルスと前記回転指令クロックと第2の基準クロックとを入力し、前記速度パルスと前記回転指令クロックとの位相を比較して位相差を出力するとともに位相判別信号を出力する位相比較器と、この位相比較器の位相差出力のパルス幅を前記第2の基準クロックにてカウントする第3のカウンタと前記第3のカウンタのカウント値を保持し位相偏差として出力する第3のレジスタとにより構成される位相偏差検出回路と、モータのPWM駆動用のPWM基準信号と前記速度偏差と前記速度判別信号とを入力し、この速度判別信号が遅い状態を示す時は前記PWM基準信号に前記速度偏差出力を付加し、前記速度判別信号が早い状態を示す時は前記PWM基準信号から前記速度偏差出力を減じることにより速度偏差PWM駆動信号を生成する速度偏差PWM出力回路と、この速度偏差PWM出力回路の出力と前記位相偏差と前記位相判別信号とを入力し、前記位相判別信号が遅れた状態を示す時は前記速度偏差PWM駆動信号に前記位相偏差出力を付加し、前記位相判別信号が進んだ状態を示す時は前記速度偏差PWM駆動信号から前記位相偏差出力を減じて位相偏差PWM駆動信号を出力する位相偏差PWM出力回路とにより構成されるパルス幅変調回路とを備え、このパルス幅変調回路の前記速度偏差PWM出力回路は、前記PWM基準信号と前記速度判別信号を入力する第1のエクスクルーシブORゲートと、前記速度偏差を入力し、第3の基準クロックにてカウントする第4のカウンタと、この第4のカウンタのカウント出力と前記PWM基準信号とを入力し、速度偏差PWM駆動信号を出力する第2のエクスクルーシブORゲートとを備え、前記第4のカウンタは、前記第1のエクスクルーシブORゲート出力の立下りエッジにて前記速度偏差をプリセットしてダウンカウントを開始し、カウント中はハイレベルを出力し、カウント値がゼロの時にカウントを停止する様に構成され、前記パルス幅変調回路の前記位相偏差PWM出力回路は、前記速度偏差PWM駆動信号と前記位相判別信号を入力する第3のエクスクルーシブORゲートと、前記位相偏差を入力し第4の基準クロックにてカウントする第5のカウンタと、前記速度偏差PWM駆動信号と前記第5のカウンタのカウント出力を入力し、位相偏差PWM駆動信号を出力する第4のエクスクルーシブORゲートとを備え、前記第5のカウンタは、前記第3のエクスクルーシブORゲート出力の立下りエッジにて前記速度偏差をプリセットしてダウンカウントを開始し、カウント中はハイレベルを出力し、カウント値がゼロの時カウントを停止する様に構成され、前記第3の基準クロックおよび第4の基準クロックの周波数をそれぞれ変更して前記パルス幅変調回路から出力される前記速度偏差PWM駆動信号または前記位相偏差PWM駆動信号のデュ−ティを変更することにより、モータのPWM駆動ゲインを調整可能としたモータ制御回路。
【請求項2】
予め設定されたモータの設定回転数からの許容偏差幅と速度偏差とを比較して、許容偏差幅以内である時に回転数ロック信号を出力する回転数ロック検出回路を備える請求項1記載のモータ制御回路。
【請求項3】
速度偏差PWM駆動信号と位相偏差PWM駆動信号を入力し、回転数ロック信号に応じて、速度偏差PWM駆動信号と位相偏差PWM駆動信号のいずれかを選択してモータのPWM駆動信号として出力するセレクタを備える請求項2記載のモータ制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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