説明

モータ制御装置

【課題】可動部の位置を正確に検出できるようにする。
【解決手段】モータ制御装置1が、モータ2Aと、モータ2Aの電流信号からリプル成分のパルス信号を抽出する抽出回路3Aと、パルス信号を入力する制御部4と、補正マップ及び初期位置データを記憶した記憶部5と、を備える。制御部4が、モータ2Aの回転位置を求める第一処理と、モータ2Aの状況データを取得する第二処理と、状況データを補正マップの入力値に当てはめて、それに対応する出力値を補正値として求める第三処理と、第一処理で求めた回転位置と第三処理で求めた補正値との加算又は減算をする第四処理と、を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シート、電動ドアミラー、パワーウィンドウ等には可動部が設けられ、可動部がモータによって駆動される。可動部の位置や速度を制御装置によって正確に制御するためには、動作中のモータの回転位置を検出する必要がある。モータの回転位置を検出するべく、センサが用いられる。つまり、センサ(例えば、ホール素子、エンコーダ、リードスイッチセンサ)がモータ等に設けられ、動作中のモータの回転に同期した信号がセンサによって出力され、センサの出力信号が抽出回路(例えば、コンパレータやAD変換器)を介して制御装置に入力される。
【0003】
ところが、センサを用いると、コストアップの要因になってしまう。そこで、センサを用いずに、モータの電流信号を利用して、モータの後段回路によってモータの回転位置を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。モータが動作している際には、モータの電流信号には直流成分、低周波成分及び高周波ノイズ等が含まれており、更に、モータの回転に同期した脈動(以下、リプル(ripple)という。)成分も含まれている。特許文献1、特許文献2に記載の技術では、モータの電流信号を後段回路によって処理することによってリプル成分を抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−9585号公報
【特許文献2】特開2008−283762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、モータの起動の直後や停止の直後等において、モータが回転しているにも関わらず、可動部が摩擦、遊び、誤差、慣性力等の原因で動作しなかったり、逆にモータが停止したにも関わらず、可動部が動作し続けたりすることがある。その場合、可動部の位置を正確に検出することできなかった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、可動部の位置を正確に検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1に係る発明によれば、
モータ制御装置が、
駆動されると電流信号に周期的なリプルを発生させるモータと、
前記モータの前記電流信号からリプル成分を抽出して、そのリプル成分をパルス化したパルス信号を出力する抽出回路と、
前記パルス信号を入力するとともに、前記モータを制御する制御部と、
入力値と出力値との関係を表した補正マップと、前記モータの初期位置データとを記憶した記憶部と、を備え、
前記制御部が、
前記パルス信号のパルス数を計数することで前記モータの回転量を求めて、前記初期位置データにその回転量を加算し、又は前記初期位置データからその回転量を減算することで前記モータの回転位置を求める第一処理と、
前記モータの状況データを取得する第二処理と、
前記第二処理で取得した前記状況データを前記補正マップの入力値に当てはめて、それに対応する出力値を補正値として求める第三処理と、
前記第一処理で求めた前記回転位置に前記第三処理で求めた前記補正値を加算し、又は前記第一処理で求めた前記回転位置から前記第三処理で求めた前記補正値を減算する第四処理と、を実行する。
【0007】
請求項2に係る発明によれば、請求項1において、前記制御部が、前記記憶部に記憶された前記初期位置データを前記第四処理で求めた差又は和に書き換える。
【0008】
請求項3に係る発明によれば、
モータ制御装置が、
駆動されると電流信号に周期的なリプルを発生させるモータと、
前記モータの前記電流信号からリプル成分を抽出して、そのリプル成分をパルス化したパルス信号を出力する抽出回路と、
前記パルス信号を入力するとともに、前記モータを制御する制御部と、
入力値と出力値との関係を表した補正マップを記憶した記憶部と、を備え、
前記制御部が、
前記パルス信号のパルス数を計数することで前記モータの回転量を求める第一処理と、
前記モータの状況データを取得する第二処理と、
前記第二処理で取得した前記状況データを前記補正マップの入力値に当てはめて、それに対応する出力値を補正値として求める第三処理と、
前記第一処理で求めた前記回転量に前記第三処理で求めた前記補正値を加算し、又は前記第一処理で求めた前記回転量から前記第三処理で求めた前記補正値を減算する第四処理と、を実行する。
【0009】
請求項4に係る発明によれば、請求項3において、
前記制御部が、前記第四処理で求めた差又は和を前記記憶部に書き込む。
【0010】
請求項5に係る発明によれば、請求項1から4の何れか一項において、
前記モータ制御装置が、前記モータの電流値を検出する電流検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記電流検出部によって検出された前記電流値を前記モータの前記状況データとして取得する。
【0011】
請求項6に係る発明によれば、請求項1から4の何れか一項において、
前記モータ制御装置が、前記モータの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記電圧検出部によって検出された前記電圧を前記モータの前記状況データとして取得する。
【0012】
請求項7に係る発明によれば、請求項1から4の何れか一項において、
前記モータ制御装置が、前記モータの電流値を検出する電流検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記電流検出部によって検出された電流値から換算した負荷を前記モータの前記状況データとして取得する。
【0013】
請求項8に係る発明によれば、請求項1から4の何れか一項において、
前記モータ制御装置が、前記モータの電流値を検出する電流検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記電流検出部によって検出された電流値から換算した温度を前記モータの前記状況データとして取得する。
【0014】
請求項9に係る発明によれば、請求項1から4の何れか一項において、
前記モータ制御装置が、前記モータの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記電圧検出部によって検出された前記電圧から換算した温度を前記モータの前記状況データとして取得する。
【0015】
請求項10に係る発明によれば、請求項1から4の何れか一項において、
前記第二処理において、前記制御部が、前記第一処理で求めた前記回転位置を前記モータの前記状況データとして取得する。
【0016】
請求項11に係る発明によれば、請求項1から4の何れか一項において、
前記モータ制御装置が、前記モータ又はその周辺の温度を検出する温度検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記温度検出部によって検出された前記温度を前記モータの前記状況データとして取得する。
【0017】
請求項12に係る発明によれば、請求項1から11の何れか一項において、
前記制御部が、前記第一処理の前に前記モータの回転向きを決定するとともに、その決定した回転向きに従って、前記第四処理における前記補正値と前記回転位置の演算を加算と減算の中から選択する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、モータによって駆動される可動部とモータとの間でずれが生じた場合でも、可動部の位置やモータの回転位置を正確に検出することができる。また、補正マップを用いたから、モータのあらゆる状況に対しても、可動部の位置やモータの回転位置を正確に検出することができる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、モータを停止させて再び起動させる場合でも、可動部の位置やモータの回転位置を正確に検出することができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、モータによって駆動される可動部とモータとの間でずれが生じた場合でも、可動部の移動量やモータの回転量を正確に検出することができる。また、補正マップを用いたから、モータのあらゆる状況に対しても、可動部の移動量やモータの回転量を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るシート本体を示した側面図である。
【図2】同実施形態に係るモータ制御装置を示したブロック図である。
【図3】同実施形態に係るモータ制御装置を示したブロック図である。
【図4】モータの電流信号の波形を示したタイミングチャートである。
【図5】モータの電流信号の波形を示したタイミングチャートである。
【図6】電流電圧変換器、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、フィルタと差動増幅器、増幅器及び波形整形部の入力信号及び出力信号の波形を示した図である。
【図7】フィルタの周波数特性を示したグラフである。
【図8】フィルタと差動増幅器を示した回路図である。
【図9】フィルタと差動増幅器の入力信号及び出力信号の波形を示したタイミングチャートである。
【図10】補正マップの一例を示した図面である。
【図11】補正マップの別の一例を示した図面である。
【図12】補正マップの別の一例を示した図面である。
【図13】モータを起動させる処理の流れを示したフローチャートである。
【図14】モータの動作中にモータの回転量及び回転位置を検出する処理の流れを示したフローチャートである。
【図15】モータを停止させる処理の流れを示したフローチャートである。
【図16】モータの回転量及び回転位置を補正する処理の流れを示したフローチャートである。
【図17】フィルタの周波数特性を示したグラフである。
【図18】フィルタの周波数特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0023】
図1は、車両用シート装置のシート本体90の側面図である。
図1に示すように、この車両用シート装置は、乗員が座るシート本体90を備える。シート本体90は、複数の可動部を有する。シート本体90の可動部としては、バックレスト93、シートボトム92、ヘッドレスト94、アームレスト95及びレッグレスト96がある。シート本体90の可動部について詳細に説明する。
【0024】
シートボトム92がレール91の上に搭載され、シートボトム92がレール91よって前後方向にする。シートボトム92の前部が昇降する。シートボトム92の後部も昇降する。バックレスト93がリクライニング機構によってシートボトム92の後端部に連結され、バックレスト93がリクライニング機構によってその下端部を中心にして前後に回転する。ヘッドレスト94がバックレスト93の上端部に連結され、ヘッドレスト94がバックレスト93に対して相対的に上下動する。また、ヘッドレスト94がバックレスト93に対して相対的に前後に起伏する。アームレスト95がバックレスト93の側面に連結され、アームレスト95がバックレスト93とアームレスト95の連結部を中心にして水平状態から垂直状態に及びその逆に回転する。レッグレスト96がシートボトム92の前端部に連結され、レッグレスト96がシートボトム92とレッグレスト96との連結部を中心にして跳ね上げ状態から垂下状態に及びその逆に移動する。
【0025】
図2は、車両用シート装置のモータ制御装置1のブロック図である。この車両用シート装置は、図2に示すようなモータ制御装置1を備える。モータ制御装置1は、モータ2A〜2H、抽出回路3A〜3H、モータドライバ6A〜6H、A/Dコンバータ7A〜7H、A/Dコンバータ8A〜8H、制御部4及び記憶部5を備える。
【0026】
制御部4は、CPU4a及びRAM4b等を有するコンピュータである。CPU4aは、数値計算、情報処理、機器制御等の各種処理を行う。RAM4bは、一時記憶領域としての作業領域をCPU4aに提供する。
【0027】
記憶部5は、制御部4に接続されている。記憶部5は、不揮発性メモリ、ハードディスクといった読み書き可能な記憶媒体である。記憶部5は、一つの記憶媒体からなるものでもよいし、複数の記憶媒体を組み合わせたものでもよい。
【0028】
記憶部5には、制御部4にとって読み取り可能なプログラム5Zが格納されている。制御部4は、プログラム5Zを読み込んでそのプログラム5Zに従った処理を行ったり、そのプログラム5Zによって各種機能を実現したりする。なお、記憶部5が複数の記憶媒体を組み合わせたものである場合、プログラム5Zが記憶部5のROMに格納されていてもよい。
【0029】
図1に示すように、モータ2A〜2Hはシート本体90に設けられている。モータ2A〜2Hは、シート本体90の複数の可動部をそれぞれ駆動する。
【0030】
モータ2Aは、リクライニング用モータであって、バックレスト93を前後に回転させる。モータ2Bは、前後スライド用モータであって、シートボトム92を前後に移動させる。モータ2Cは、前部昇降用モータであって、シートボトム92の前部を上下動させる。モータ2Dは、後部昇降用モータであって、シートボトム92の後部を上下動させる。モータ2Eは、レッグレスト用モータであって、レッグレスト96を回転させる。モータ2Fは、アームレスト用モータであって、アームレスト95を回転させる。モータ2Gは、ヘッドレスト昇降用モータであって、モータ2Gはヘッドレスト94を上下動させる。モータ2Hは、ヘッドレスト傾動用モータである。モータ2Hはヘッドレスト94を前後に傾動させる。
【0031】
モータ2Aは、直流モータである。電流がモータ2Aに流れると、モータ2Aが回転するとともに、モータ2Aが周期的なリプル(ripple)を電流に発生させる。モータ2Aの電流信号について図4及び図5を参照して説明する。図4は、モータ2Aが駆動される際にモータ2Aに流れる電流のレベルの変化を示したチャートである。図5は、図4に示されたA部における時間及び電流のスケールを大きくして示したチャートである。
【0032】
図4において、時刻T1はモータ2Aが起動したタイミングであり、時刻T2はモータ2Aが安定的に動作し始めるタイミングである。時刻T3は、モータ2Aによって駆動される可動部がストッパ等に当接して、モータ2Aの動力をバックレスト93に伝える伝動機構が拘束され始めるタイミングである。時刻T4は、モータ2Aが停止するタイミングである。
図4及び図5に示すように、モータ2Aの電流信号は直流成分、リプル成分及び一又は複数の周波成分(交流成分)を含み、周波成分及びリプル成分が直流成分に重畳している。モータ2Aの電流信号のうち、電流のレベルが急激に変化した高周波成分はノイズである(例えば、符号n参照)。なお、図5は、高周波ノイズ成分がないものとして図示されている。
【0033】
時刻T1から時刻T2までの期間P1では、リプル成分r1と、リプル成分r1よりも周波数が低い低周波成分とが直流成分に重畳している。期間P1のうちモータ2Aの起動直後では、慣性力の影響により低周波成分の電流レベルが大きく、その後、低周波成分の電流レベルが時間の経過に伴って緩やかに減少する。また、モータ2Aの起動直後では、低周波成分よりも周波数が高いリプル成分r1の振幅が大きく、その後、リプル成分r1の周波数が時間の経過に伴って漸増するとともに、リプル成分r1の振幅が時間の経過に伴って漸減する。
時刻T2から時刻T3までの期間P2では、リプル成分r2と、リプル成分r2よりも周波数が低い低周波成分とが直流成分に重畳し、直流成分がほぼ一定で安定し、低周波成分の周波数及び振幅が安定し、リプル成分r2の周波数及び振幅が安定している。リプル成分r2の周波数が低周波成分の周波数よりも高くなるのは、モータ2Aに内蔵された複数のコイルが巻き線抵抗に差を有するためである。
時刻T3から時刻T4までの期間P3では、モータの電流信号のうち低周波成分の周波数が低くなり、低周波成分の電流レベルが時間の経過とともに漸増する。期間P3では、モータの電流信号のうちリプル成分r3の周波数が時間の経過に伴って漸減し、リプル成分r3の振幅が時間の経過に伴って漸増する。
【0034】
モータ2Aの電流信号のうち低周波成分及びリプル成分の周波数及び振幅は、様々な環境(例えば、モータ2Aに対する負荷、環境温度、モータ2Aの電源電圧等)の影響を受ける。そのため、環境が変化すれば、低周波成分及びリプル成分の周波数及び振幅が変化する。
【0035】
抽出回路3Aは、以上のようなモータ2Aの電流信号からリプル成分を抽出して、リプル成分をパルス化し、リプル成分がパルス化されてなるパルス信号を制御部4に出力する。抽出回路3Aについて具体的に説明する。
【0036】
図3に示すように、抽出回路3Aは、電流電圧変換器10、ハイパスフィルタ(High-pass Filter)20、バンドパスフィルタ(Band-pass Filter)30、フィルタ40、差動増幅器50、増幅器60及び波形整形部70を備える。図6は、電流電圧変換器10、ハイパスフィルタ20、バンドパスフィルタ30、フィルタ40と差動増幅器50、増幅器60及び波形整形部70の入力信号及び出力信号を説明するための図である。図6において、電流電圧変換器10、ハイパスフィルタ20及びバンドパスフィルタ30の入力信号と出力信号が示されている期間は、図4における時刻T1から期間P2の初期にかけてである。フィルタ40と差動増幅器50、増幅器60及び波形整形部70の入力信号及び出力信号が示されている期間は、図4における期間P2の一部である。
【0037】
電流電圧変換器10は、モータ2Aの電流信号を入力する。電流電圧変換器10は、入力したモータ2Aの電流信号を電圧信号に変換する。具体的には、電流電圧変換器10が抵抗器11を有し、抵抗器11がグランドとモータ2Aの間に接続され、モータ2Aの電流信号が抵抗器11とモータ2Aの間における電圧信号に変換される。電流電圧変換器10は、変換した電圧信号をハイパスフィルタ20及びバンドパスフィルタ30を介してフィルタ40及び差動増幅器50に出力する。なお、電流電圧変換器10は、オペアンプを用いたもの(例えば、負帰還型電流電圧変換器)でもよい。
【0038】
ハイパスフィルタ20は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(電流電圧変換器10の出力信号)を入力する。ハイパスフィルタ20は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(電流電圧変換器10の出力信号)のうち高周波成分を通過させ、低周波成分を減衰させる。つまり、ハイパスフィルタ20は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号のうち直流成分を除去する。ハイパスフィルタ20は、バンドパスフィルタ30を介して、低周波成分が減衰した信号をフィルタ40及び差動増幅器50に出力する。
ハイパスフィルタ20は、オペアンプを用いたもの(例えば、負帰還型ハイパスフィルタ、正帰還型ハイパスフィルタ)又は抵抗器・キャパシタを用いたもの(例えば、CRハイパスフィルタ)である。
【0039】
バンドパスフィルタ30は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号をハイパスフィルタ20を介して入力する。バンドパスフィルタ30は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(ハイパスフィルタ20の出力信号)のうち所定周波数帯域の成分を通過させ、その所定周波数帯域外の成分を減衰させる。つまり、バンドパスフィルタ30は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(ハイパスフィルタ20の出力信号)のうち高周波ノイズ成分を除去するとともに、ハイパスフィルタ20によって除去しきれなかった低周波成分を除去する。バンドパスフィルタ30は、所定周波数帯域外の成分を減衰させた信号をフィルタ40及び差動増幅器50に出力する。
バンドパスフィルタ30は、オペアンプを用いたもの(例えば、多重負帰還型バンドパスフィルタ、多重正帰還型バンドパスフィルタ)又は抵抗器・キャパシタを用いたものである。
【0040】
フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号をハイパスフィルタ20及びバンドパスフィルタ30を介して入力し、その信号を濾波する。フィルタ40は、濾波した信号を差動増幅器50に出力する。
【0041】
図7は、フィルタ40の周波数特性を示したグラフである。
図7に示すように、フィルタ40は、バンドパスフィルタである。フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)のうち、低カットオフ周波数fc1から高カットオフ周波数fc2までの間の中間周波数帯域の成分を通過させる。低カットオフ周波数fc1<高カットオフ周波数fc2である。なお、カットオフ周波数とは、出力電力が入力電力の1/2となる周波数を指す。つまり、ゲインGが−3dbとなる周波数がカットオフ周波数である。
また、フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)のうち、低カットオフ周波数fc1を下回る低周波域の成分を減衰させる。具体的には、低カットオフ周波数fc1を下回る低周波域において、フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)に含まれる成分の周波数が低いほど減衰率がより高くなるように、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)の低周波域成分を減衰させる。
また、フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)のうち、高カットオフ周波数fc2を超える高周波域の成分を減衰させる。具体的には、高カットオフ周波数fc2を超える高周波域において、フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)に含まれる成分の周波数が低いほど減衰率がより低くなるように、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)の高周波域成分を減衰させる。
【0042】
図4及び図5に示したように、モータ2Aの電流信号は、リプル成分と、そのリプル成分よりも周波数が低い低周波成分とを重畳したものである。リプル成分の周波数は実験・測定等によって予め調べられ、フィルタ40の回路設計において、温度変化によるリプル成分の周波数の変動も考慮しつつ、フィルタ40の高カットオフ周波数fc2がリプル成分の周波数(例えば、常温時の周波数)よりも低く設定されている。従って、フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)のうちリプル成分を低周波成分(低周波成分はリプル成分よりも周波数が低い。)よりも高い減衰率で減衰させる。つまり、フィルタ40は、リプル成分を低周波成分よりも効率的に除去する。従って、フィルタ40は、リプル成分を除去した信号を差動増幅器50に出力する。
【0043】
差動増幅器50は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号をハイパスフィルタ20及びバンドパスフィルタ30を介して入力するとともに、フィルタ40の出力信号を入力する。差動増幅器50は、入力したフィルタ40の出力信号と、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)の差分を取って、その差分を増幅する。差動増幅器50は、その差分を表す差分信号を増幅器60に出力する。
【0044】
図8は、フィルタ40と差動増幅器50の一例を示した回路図である。図9(a)は図8に示されたA部における電圧信号の波形を示したタイミングチャートであり、図9(b)は図8に示されたB部における電圧信号の波形を示したタイミングチャートであり、図9(c)は図8に示されたC部における電圧信号の波形を示したタイミングチャートである。
【0045】
図8に示すように、フィルタ40は、ハイパスフィルタ41、ローパスフィルタ42及びハイパスフィルタ43を有する。バンドパスフィルタ30の出力がハイパスフィルタ41の入力に接続され、ハイパスフィルタ41の出力がローパスフィルタ42の入力に接続され、ローパスフィルタ42の出力がハイパスフィルタ43の出力に接続される。
【0046】
ハイパスフィルタ41は、二次のCRハイパスフィルタである。つまり、ハイパスフィルタ41は、キャパシタ41a、抵抗器41b、キャパシタ41c及び抵抗器41dを有する。なお、ハイパスフィルタ41が一つのキャパシタ及び抵抗器からなる一次のCRハイパスフィルタであってもよい。また、ハイパスフィルタ41が三次以上のCRハイパスフィルタでもよい。
ローパスフィルタ42は、二次のRCローパスフィルタである。つまり、ローパスフィルタ42は、抵抗器42a、キャパシタ42b、抵抗器42c及びキャパシタ42dを有する。なお、ローパスフィルタ42が一つの抵抗器及びキャパシタからなる一次のRCローパスフィルタであってもよい。また、ローパスフィルタ42が三次以上のRCローパスフィルタでもよい。
ハイパスフィルタ43は、キャパシタ43aからなる。
【0047】
差動増幅器50は抵抗器51,52、オペアンプ53、カップリングコンデンサ54及びバイアス回路55等を有する。オペアンプ53の出力端子が抵抗器52を介してオペアンプ53の反転入力端子に接続され、負帰還がオペアンプ53にかけられている。フィルタ40の出力信号(ハイパスフィルタ43の出力信号)が抵抗器51を介してオペアンプ53の反転入力端子に入力され、バンドパスフィルタ30の出力信号がカップリングコンデンサ54及びバイアス回路55を介してオペアンプ53の非反転入力端子に入力される。カップリングコンデンサ54は、バンドパスフィルタ30の出力信号の直流成分を除去する。バイアス回路55は、電源電圧とグランドの間に直列された抵抗器56,57を有する。バイアス回路55は、カップリングコンデンサ54によって直流成分を除去されたバンドパスフィルタ30の出力信号にバイアス電圧をかけて、バンドパスフィルタ30の出力信号の基準レベルを引き上げる。なお、カップリングコンデンサ54及びバイアス回路55を省略してもよい。
【0048】
差動増幅器50によって出力された差分信号は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号のうちリプル成分である。差動増幅器50によって出力された差分信号が、バンドパスフィルタ30の出力信号とフィルタ40の出力信号との差分を表すからこそ、モータ2Aの電流信号の各成分の周波数が環境変化によって変化しても、モータ2Aの電流信号に含まれるリプルを高精度に検出することができる。
【0049】
図3、図8に示すように、増幅器60は、差動増幅器50によって出力された差分信号(オペアンプ53の出力信号)を入力する。増幅器60は、差動増幅器50によって出力された差分信号を増幅して、それを波形整形部70に出力する。増幅器60は、例えば負帰還型増幅器である。
【0050】
波形整形部70は、差動増幅器50によって出力された差分信号(オペアンプ53の出力信号)を増幅器60を介して入力する。波形整形部70は、差動増幅器50によって出力された差分信号(増幅器60の出力信号)の波形を矩形波に整形する。具体的には、波形整形部70がコンパレータを有し、該コンパレータが、差動増幅器50によって出力された差分信号(増幅器60の出力信号)を基準電圧と比較することによって、差動増幅器50によって出力された差分信号(増幅器60の出力信号)をパルス信号に変換する。波形整形部70は、矩形波に整形されたパルス信号を制御部4に出力する。
【0051】
モータ2Aの動作中では、モータ2Aの電流信号のリプル成分が周期的であるから、制御部4に入力されるパルス信号も周期的な信号である。制御部4に入力されたパルス信号のパルス数が、モータ2Aの回転量に換算されるとともに、モータ2Aによって駆動されるバックレスト93の移動量に換算される。具体的には、一パルス当たりのモータ2Aの回転量にパルス信号のパルス数を乗じて得られた値が、モータ2Aの回転量であり、一パルス当たりのバックレスト93の単位移動量にパルス信号のパルス数を乗じて得られた値が、バックレスト93の移動量である。
【0052】
制御部4は、抽出回路3Aの波形整形部70によって出力されたパルス信号を入力する。制御部4は、入力したパルス信号のパルス数を計数することによって、モータ2Aの回転量及びバックレスト93の移動量を計数する。
【0053】
制御部4は、起動指令、回転向き指令及び停止指令をモータドライバ6Aに出力する。例えば、図2に示すように、一又は複数の押しボタンスイッチ等を有した入力部9cが操作された場合に、入力部9cが操作内容に応じた信号を制御部4に入力し、制御部4がその信号に応じた指令をモータドライバ6Aに出力する。また、制御部4が各種処理(例えば、シーケンス処理)を行って所定の条件を充足した場合に、制御部4がその条件に応じた指令をモータドライバ6Aに出力する。
【0054】
モータドライバ6Aは、制御部4からの指令に従ってモータ2Aを駆動する。つまり、モータドライバ6Aは、制御部4から起動指令及び回転向き指令を受けたら、モータ2Aをその回転向きに起動させる。モータドライバ6は、制御部4から停止指令を受けたら、モータ2Aを停止する。
【0055】
A/Dコンバータ7Aは、電圧検出部である。つまり、A/Dコンバータ7Aは、モータ2Aの電圧を検出して、その電圧信号をデジタル信号に変換して、デジタル化した電圧データを制御部4に出力する。A/Dコンバータ7Aによって出力される電圧データは、モータ2Aの状況データの一種である。制御部4は、A/Dコンバータ7Aによって出力される電圧データを入力する。
【0056】
A/Dコンバータ8Aは、電流検出部である。つまり、A/Dコンバータ8Aは、モータ2Aの電流値を検出して、その電流信号をデジタル信号に変換して、デジタル化した電流データを制御部4に出力する。ここで、電流電圧変換器10の出力信号がモータ2Aの電流を表すので、A/Dコンバータ8Aは電流電圧変換器10の出力信号をデジタル信号に変換して、それを制御部4に出力する。A/Dコンバータ8Aによって出力される電流データは、モータ2Aの状況データの一種である。制御部4は、A/Dコンバータ7Aによって出力される電流データを入力する。
【0057】
モータ2Aの負荷は、モータ2Aの電流に依存する。例えば、モータ2Aの負荷が高くにつれて、モータ2Aの電流が高くなる。そのため、モータ2Aの負荷は、モータ2Aの電流から換算される。従って、A/Dコンバータ8Aによって出力される電流データは、モータ2Aの負荷データでもあって、モータ2Aの状況データの一種である。
【0058】
モータ制御装置1の周辺の環境温度は、モータ2Aの電流若しくは電圧又はこれらの両方に依存する。そのため、モータ制御装置1の環境温度は、モータ2Aの電流若しくは電圧又は電流・電圧から換算される。従って、A/Dコンバータ7Aによって出力される電圧データ若しくはA/Dコンバータ8Aによって出力される電流データ又はこれらの組み合わせは、周辺の環境温度データでもあって、モータ2Aの状況データの一種である。
【0059】
以上にモータ2A、抽出回路3A、モータドライバ6A、A/Dコンバータ7A及びA/Dコンバータ8Aについて説明した。モータ2B〜2Hはモータ2Aと同様であり、抽出回路3B〜3Hは抽出回路3Aと同様であり、モータドライバ6B〜6Hはモータドライバ6Aと同様であり、A/Dコンバータ7B〜7HはA/Dコンバータ7Aと同様であり、A/Dコンバータ8B〜8HはA/Dコンバータ8Aと同様である。なお、抽出回路3B〜3H、モータドライバ6B〜6H及びA/Dコンバータ7B〜7Hを省略し、抽出回路3A、モータドライバ6A及びA/Dコンバータ7Aをモータ2A〜2Hに共用してもよい。この場合、リレー回路が設けられ、そのリレー回路が制御部4からの指令に従ってモータ2A〜2Hの何れかを選択する。そのリレー回路は、モータ2A〜2Hの中から選択したものを抽出回路3A、モータドライバ6A、A/Dコンバータ7A及びA/Dコンバータ8Aに接続し、他を抽出回路3A、モータドライバ6A、A/Dコンバータ7A及びA/Dコンバータ8Aから遮断する。
【0060】
図1に示すように、温度センサ9bがインターフェース9aを介して制御部4に接続されている。温度センサ9bは、温度を検出して、インターフェース9aを通じて温度データを制御部4に出力する。制御部4は、温度センサ9bによって出力された温度データを入力する。温度センサ9bから制御部4に出力される温度データは、モータ2Aの状況データの一種である。
【0061】
温度センサ9bについて具体的に説明する。温度センサ9bの数が複数であり、温度センサ9bがモータ2A〜2Hにそれぞれ取り付けられ、モータ2A〜2Hの温度をそれぞれ検出する。或いは、温度センサ9bはモータ制御装置1の周辺に設けられ、温度センサ9bがモータ制御装置1の周辺の環境温度を検出する。或いは、温度センサ9bはシート本体90が取り付けられる車室内に配置され、温度センサ9bが車室の温度を検出する。或いは、温度センサ9bはシート本体90が取り付けられる車室のカーエアコンに内蔵された温度センサであり、その温度センサ9bが車室の温度を検出する。
【0062】
記憶部5には、初期位置データ5A〜5Hが格納されている。
初期位置データ5Aは、モータ2Aが動作する前のモータ2Aの初期の回転位置及びバックレスト93の初期位置を表す。具体的には、図1に示すように、初期位置データ5Aは、所定の原点位置Oから初期位置Iまでの距離を換算したパルス信号のパルス数によって表されている。初期位置データ5Aは、予め設定されたデフォルト値であるか、又は以前にモータ2Aが動作した際に書き込まれた値である。仮にバックレスト93の初期位置Iが原点位置Oであれば、初期位置データ5Aを表すパルス数はゼロである。
【0063】
初期位置データ5Bは、モータ2Bが動作する前のモータ2Bの初期の回転位置及びシートボトム92の初期の前後位置を表す。初期位置データ5Cは、モータ2Cが動作する前のモータ2Cの初期の回転位置及びシートボトム92の前部の上下位置を表す。初期位置データ5Dは、モータ2Dが動作する前のモータ2Dの初期の回転位置及びシートボトム92の前部の上下位置を表す。初期位置データ5Eは、モータ2Eが動作する前のモータ2Eの初期の回転位置及びシートボトム92の後部の上下位置を表す。初期位置データ5Fは、モータ2Fが動作する前のモータ2Fの初期の回転位置及びアームレスト95の初期位置を表す。初期位置データ5Gは、モータ2Gが動作する前のモータ2Gの初期の回転位置及びヘッドレスト94の初期の上下位置を表す。初期位置データ5Hは、モータ2Hが動作する前のモータ2Hの初期の回転位置及びヘッドレスト94の初期の傾きを表す。
【0064】
モータ2Aが動作すれば、制御部4が、抽出回路3Aによって出力されたパルス信号のパルス数を計数することによって、モータ2Aの回転量及びバックレスト93の移動量を計数する。制御部4が計数値(モータ2Aの回転量、バックレスト93の移動量、パルス信号のパルス数)を初期位置データ5Aに加算するか、又は計数値を初期位置データ5Aから減算する。その差又は和が、移動後のモータ2Aの回転位置やバックレスト93の位置であり、モータ2Aの状況データの一種である。以下、その差又は和を“移動後位置データ”という。モータ2B〜2Hの回転位置やモータ2B〜2Hによって移動される部材の位置についても同様である。
【0065】
記憶部5には、入力値と出力値との関係を表した補正マップ105A〜105Hが格納されている。
【0066】
補正マップ105A〜105Hは、補正ルックアップテーブル又は補正関数である。補正ルックアップテーブルは、入力値のデータ列と出力値のデータ列を対応づけたデータテーブルである。補正関数は、入力値と出力値の関係を数式で表したものである。
【0067】
補正マップ105A〜105Hは、入力値の数が複数となる複入力補正マップ(複入力ルックアップテーブル又は複入力関数)であってもよいし、入力値の数が単数となる単入力補正マップ(単入力ルックアップテーブル又は単入力関数)であってもよい。
【0068】
補正マップ105Aはモータ2A用の補正マップであり、モータ2Aの状況データが補正マップ105Aの入力値に当てはめられる。つまり、A/Dコンバータ7Aから制御部4に入力される電圧データ(その電圧データから換算された環境温度データ)、A/Dコンバータ8Aから制御部4に入力される電流データ(その電流データから換算されたモータ2Aの負荷データや環境温度データ)、温度センサ9bから制御部4に入力される温度データ又は“移動後位置データ”が、補正マップ105の入力値に当てはめられる。
【0069】
補正マップ105Aが単入力補正マップである場合、A/Dコンバータ7Aから制御部4に入力される電圧データと、A/Dコンバータ8Aから制御部4に入力される電流データと、温度センサ9bから制御部4に入力される温度データと、“移動後位置データ”とのうち何れか一つが、補正マップ105の入力値に当てはめられる。
【0070】
補正マップ105Aが複入力補正マップである場合、A/Dコンバータ7Aから制御部4に入力される電圧データ(その電圧データから換算された環境温度データ)と、A/Dコンバータ8Aから制御部4に入力される電流データ(その電流データから換算されたモータ2Aの負荷データや環境温度データ)と、温度センサ9bから制御部4に入力される温度データと、“移動後位置データ”とのうち何れか二つ、三つ又は全てが、補正マップ105の入力値に当てはめられる。
【0071】
補正マップ105Aの出力値は、補正値である。
【0072】
図10には、補正マップ105Aが単入力補正マップである場合の補正マップ105Aの一例が示されている。図10に示すように、補正マップ105Aは、入力値としての負荷と、出力値としての補正値との関係を表した補正関数又は補正ルックアップテーブルである。入力値には、A/Dコンバータ8Aによって出力される電流データがモータ2Aの負荷データに換算されて当てはめられる。
【0073】
図11には、補正マップ105Aが単入力補正マップである場合の補正マップ105Aの別の例が示されている。図11に示すように、補正マップ105Aは、入力値としての温度と、出力値としての補正値との関係を表した補正関数又は補正ルックアップテーブルである。入力値には、温度センサ9bから制御部4に入力される温度データが当てはめられるか、又はA/Dコンバータ7Aによって出力される電圧データが換算されて当てはめられるか、又はA/Dコンバータ8Aによって出力される電流データが換算されて当てはめられるか、A/Dコンバータ7A,8Aによって出力される電圧データ・電流データが換算されて当てはめられる。
【0074】
図12には、補正マップ105Aが単入力補正マップである場合の補正マップ105Aの別の例が示されている。図12に示すように、補正マップ105Aは、入力値としての移動後位置と、出力値としての補正値との関係を表した補正関数又は補正ルックアップテーブルである。入力値には、制御部4によって計数されたパルス信号のパルス数と初期位置データ5Aの差又は和(“移動後位置データ”)が当てはめられる。
【0075】
補正マップ105B〜105Hはそれぞれモータ2B〜2H用の補正マップである。補正マップ105B〜105Hは補正マップ105Aと同様なので、補正マップ105B〜105Hの詳細な説明を省略する。
【0076】
プログラム5Zに基づく制御部4の処理の流れについて説明するとともに、制御部4の処理に伴うモータ制御装置1及び車両用シート装置の動作について説明する。
【0077】
まず、図13に示すように、制御部4がモータ2A〜2Hの中から起動するモータを選択し、その起動するモータをRAM又は記憶部5に書き込む(ステップS11)。例えば、ユーザが入力部9cを操作した場合、制御部4が入力部9cの入力信号に従ってモータ2A〜2Hの中から起動するモータを選択する。又は、制御部4によって実行された処理(例えば、シーケンス処理)で所定の条件が満たされた場合に、制御部4はその条件に従ってモータ2A〜2Hの中から起動するモータを選択する。以下では、制御部4がモータ2Aを選択したとして説明する。
【0078】
次に、制御部4は、モータ2Aの回転の向き(正回転か逆回転)を決定し、その回転の向きをRAM又は記憶部5に書き込む(ステップS12)。
【0079】
次に、制御部4は、ステップS12で決定した向きにモータ2Aを起動させる(ステップS13)。つまり、制御部4は、ステップS12で決定した向きに従った回転向き指令をステップS11で選択したモータ2Aのモータドライバ6Aに出力するとともに、起動指令をそのモータドライバに出力する。これにより、モータ2Aが起動し、モータ2Aによってバックレスト93が移動する。例えば、ステップS12で決定された回転向きが正回転である場合には、図1の側面図でバックレスト93が時計回りに回転し、ステップS13で決定された回転向きが正回転である場合には、図1の側面図でバックレスト93が反時計回りに回転する。
【0080】
モータ2Aの動作中は、抽出回路3Aがモータ2Aの電流信号からリプル成分を抽出(検出)して、リプル成分をパルス化する。そして、抽出回路3Aは、リプル成分がパルス化されてなるパルス信号を制御部4に出力する。
【0081】
モータ2Aが起動すると、制御部4は、抽出回路3Aから入力したパルス信号に基づいて、モータ2Aの回転量、モータ2Aの回転位置、バックレスト93の移動量及びバックレスト93の位置を算出する。より具体的には、制御部4が図14に示す処理を実行することによってモータ2Aの回転量、モータ2Aの回転位置、バックレスト93の移動量及びバックレスト93の位置を算出する。
【0082】
図14に示す処理について具体的に説明する。
制御部4は、A/Dコンバータ7Aから入力した電圧データと、A/Dコンバータ8Aから入力した電流データとのうち一方又は両方を所定の閾値と比較する(ステップS21)。上述のように制御部4がモータ2Aを起動させると(ステップS13)、モータ2Aに電流が通電するから、制御部4は電圧データと電流データとのうち一方又は両方が所定の閾値を上回った判定して、モータ2Aの通電・起動を検出する(ステップS21:Yes)。そして、制御部4が記憶部5から初期位置データ5Aを読み込んで、制御部4の処理がステップS22に移行する。
【0083】
電流がモータ2Aに通電すると、制御部4は抽出回路3Aから入力したパルス信号のパルス数を計数するとともに、そのパルス数及び初期位置データ5Aからモータ2Aの回転位置やバックレスト93の位置を求める(ステップS22,S23,S24、S25)。具体的には、まず、制御部4は、計数値Nをゼロにリセットする(ステップS22)。その後、制御部4は、抽出回路3Aによって出力されたパルス信号のパルスを入力するごとに(ステップS23:Yes)、計数値Nに1を加算することで計数値Nを更新するとともに(ステップS24)、読み込んだ初期位置データ5Aに更新後の計数値Nを加算するか、又は読み込んだ初期位置データ5Aから更新後の計数値Nを減算する(ステップS25)。制御部4は、ステップS25の演算をステップS12で決定した向きに従って決定する。例えば、ステップS12で決定した回転の向きが正回転である場合には、制御部4がステップS25で加算を行い、ステップS12で決定した回転の向きが逆回転である場合には、制御部4がステップS25で減算を行う。勿論、回転の向きと演算の関係が逆であってもよい。
【0084】
ステップS24において更新された計数値Nが、制御部4によって計数されたパルス数である。制御部4によって計数されたパルス数(計数値N)は、モータ2Aの回転量やバックレスト93の移動量を表す。また、ステップS25において求められた差や和が、モータ2Aの回転位置やバックレスト93の位置であって、“移動後位置データ”である。
【0085】
制御部4は、モータ2Aの電流の遮断を検出するまでステップS23〜ステップS26の処理を繰り返す(ステップS26:No)。つまり、制御部4は、ステップS25の処理の後に、A/Dコンバータ7Aから入力した電圧データと、A/Dコンバータ8Aから入力した電流データとのうち一方又は両方を所定の閾値と比較する(ステップS26)。そして、電圧データと電流データとのうち一方又は両方が所定の閾値を上回っている場合には(ステップS26:No)、制御部4の処理がステップS23に戻り、電圧データと電流データとのうち一方又は両方が所定の閾値を下回っている場合には(ステップS26:yes)、制御部4は図14に示す処理を終了する。
【0086】
制御部4が動作中のモータ2Aを停止させる処理について図15を参照して説明する。
所定の条件が満たされた場合に、制御部4が図15に示す処理を実行する。例えば、ユーザが入力部9cを操作した場合、制御部4が入力部9cから停止信号を入力すると、制御部4が図15に示す処理を実行する。又は、制御部4によって実行された処理(例えば、シーケンス処理)で所定の条件が満たされた場合に、制御部4が図15に示す処理を実行する。又は、上述のステップS25において求めた“移動後位置データ”が所定の値になったら、制御部4が図15に示す処理を実行する。又は、上述のステップS24において更新した計数値Nが所定の値になったら、制御部4が図15に示す処理を実行する。
【0087】
まず、制御部4は、モータ2Aの状況データを取得する(ステップS31)。以下、モータ2Aの状況データの〔例A〕〜〔例G〕について説明する。
〔例A〕 制御部4は、A/Dコンバータ8Aから入力されたモータ2Aの電流データをRAM又は記憶部5に一時的に記憶する。
〔例B〕 制御部4は、A/Dコンバータ8Aから入力されたモータ2Aの電流データを負荷データに換算し、換算した負荷データをRAM又は記憶部5に一時的に記憶する。
〔例C〕 制御部4は、A/Dコンバータ7Aから入力されたモータ2Aの電圧データをRAM又は記憶部5に一時的に記憶する。
〔例D〕 制御部4は、A/Dコンバータ8Aから入力されたモータ2Aの電流データを温度データに換算し、換算した温度データをRAM又は記憶部5に一時的に記憶する。
〔例E〕 制御部4は、A/Dコンバータ7Aから入力されたモータ2Aの電圧データから温度データを換算し、換算した温度データをRAM又は記憶部5に一時的に記憶する。
〔例F〕 制御部4は、A/Dコンバータ8Aから入力されたモータ2Aの電流データと、A/Dコンバータ7Aから入力されたモータ2Aの電圧データとから温度データを換算し、換算した温度データをRAM又は記憶部5に一時的に記憶する。
〔例G〕 制御部4は、温度センサ9bから入力された温度データをRAM又は記憶部5に一時的に記憶する。
【0088】
モータ2Aの状況データの取得後、制御部4は、モータドライバ6Aに停止指令を出力して、モータ2Aを停止させる(ステップS32)。
【0089】
制御部4がモータ2Aを停止させると、モータ2Aの電流が遮断されるので、図14に示すように、制御部4がモータ2Aの電流の遮断を検出し(ステップS26:Yes)、制御部4は図14に示す処理を終了する。なお、制御部4は、図14に示すステップS23〜ステップS26の処理を繰り返している際に最後のステップS25において求めた“移動後位置データ”をモータ2Aの状況データとしてRAM又は記憶部5に一時的に記憶する(以下、この状況データを例Hとする)。
【0090】
補正処理について図16を参照して説明する。
制御部4は、モータドライバ6Aに停止指令に停止指令を出力したら(ステップS32)、図16に示す補正処理を実行する。
制御部4は、モータ2Aの電流の遮断を検出したら(ステップS41)、モータ2Aの状況データを入力値として補正マップ105Aに当てはめる(ステップS42)。補正マップ105Aが単入力補正マップである場合、制御部4によって当てはめられる状況データは、〔例A〕に記載の電流データ、〔例B〕に記載の負荷データ、〔例C〕に記載の電圧データ、〔例D〕に記載の温度データ、〔例E〕に記載の温度データ、〔例F〕に記載の温度データ、〔例G〕に記載の温度データ又〔例H〕に記載の“移動後位置データ”である。補正マップ105Aが複入力補正マップである場合には、制御部4によって当てはめられる状況データは、これらの群より選択される2以上の状況データである。なお、補正マップ105Aの入力値に当てはめる状況データが〔例H〕に記載の“移動後位置データ”のみである場合には、上述のステップS31の処理を省略してもよい。
【0091】
制御部4は、モータ2Aの状況データを補正マップ105Aの入力値に当てはめることによって、それに対応する出力値を補正値として求める(ステップS42)。
【0092】
次に、制御部4は、最後のステップS25で求めた値(“移動後位置データ”)に補正値を加算するか、又は最後のステップS25で求めた値(“移動後位置データ”)から補正値を減算する(ステップS43)。制御部4は、ステップS43の演算をステップS12で決定した向きに従って決定する。例えば、ステップS12で決定した回転の向きが正回転である場合には、制御部4がステップS43で加算を行い、ステップS12で決定した回転の向きが逆回転である場合には、制御部4がステップS43で減算を行う。勿論、回転の向きと演算の関係が逆であってもよい。
【0093】
制御部4がステップS43で求めた差や和は、モータ2Aの補正後の回転位置及びバックレスト93の補正後の位置を表す。
【0094】
次に、制御部4は、ステップS43で求めた和や差を記憶部5に書き込む(ステップS44)。具体的には、制御部4は、初期位置データ5AをステップS43で求めた和や差に書き換える。そして、制御部4の処理が終了する。
【0095】
更新された初期位置データ5Aは、再びモータ2Aが起動された際に利用される。
【0096】
以上の動作説明では、モータ2Aが駆動されるものとしたが、モータ2B〜2Hが駆動される際も同様である。モータ2B〜2Hが駆動される際には、補正マップ105B〜105Hがそれぞれ利用されるとともに、初期位置データ5B〜5Hがそれぞれ利用される。
【0097】
本発明の実施の形態は、以下のような効果を奏する。
(1) モータ2Aが回転し始めたにも関わらず、バックレスト93が移動しなかった場合や、モータ2Aが停止したにも関わらず、バックレスト93が移動し続けた場合でも、バックレスト93の位置及びモータ2Aの回転位置を正確に検出することができる。
(2) 補正値が定数ではなく、補正マップ105Aを利用してモータ2Aの状況データから求められたものであるから、モータ2Aのあらゆる状況に対しても、バックレスト93の位置及びモータ2Aの回転位置を正確に検出することができる。
(3) 例えば、バックレスト93の傾きによって負荷の大きさが異なる。つまり、バックレスト93が伏した場合と、バックレスト93が立った場合とでは、負荷の大きさが異なる。そこで、ステップS42の処理において“移動後位置データ”を補正マップ105Aの入力値に当てはめれば、その位置に応じた補正値が求められる。そのため、バックレスト93の位置及びモータ2Aの回転位置を正確に検出することができる。
(4) 補正マップ105A〜105Hがモータ2A〜2Hごとに準備されているから、何れのモータ2A〜2Hが駆動されても、位置を正確に検出することができる。
(5) モータ2A〜2Hの回転量や回転位置を検出するためのロータリーエンコーダ等を利用していないから、コスト削減を図ることができる。
(6) 抽出回路3A〜3Hは、モータ2A〜2Hの電流信号に含まれるリプル成分を利用して、パルス信号を生成するものである。一方、モータ2A〜2Hの通電・遮断に対してモータ2A〜2Hの動作の応答が僅かに遅れるから、実際のモータ2A〜2Hの回転位置・移動量等と、抽出回路3A〜3Hのパルス信号に基づき算出された回転位置・移動量等との間には僅かな誤差が生じやすい。そのような場合でも、補正マップ105A〜105Hを利用して、抽出回路3A〜3Hのパルス信号に基づき算出された回転位置・移動量等が補正されるから、そのような誤差を解消することができる。
(7) フィルタ40の回路設計においてフィルタ40の高カットオフ周波数fc2がリプル成分の周波数よりも低く設定されているから、フィルタ40によってリプル成分を除去することができる。
(8) 差動増幅器50が、バンドパスフィルタ30の出力信号(電流電圧変換器10によって変換された電圧信号のうち直流成分及び高周波ノイズ成分等が除去されたもの)と、フィルタ40の出力信号(電流電圧変換器10によって変換された電圧信号のうち直流成分、高周波ノイズ成分及びリプル成分等が除去されたもの)の差分を取って、それを差分信号として出力する。そのため、差動増幅器50の出力信号は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号のうちリプル成分である。差動増幅器50の出力信号が差分信号であるからこそ、モータ2Aの電流信号の各成分の周波数が環境変化によって変動しても、リプル成分が正確に抽出されて、モータ2Aの電流信号中のリプルを高精度に検出することができる。
(9) 図7に示す周波数特性のうち、高カットオフ周波数fc2よりも高い領域の傾斜部分を利用したからこそ、リプル成分の周波数が温度変化により変動したものとしても、差動増幅器50の出力信号がリプル成分として正確に抽出される。
(10) フィルタ40の周波数特性を利用して、フィルタ40と差動増幅器50によってリプル成分を抽出したから、フィルタ40にカットオフ周波数可変型フィルタを用いなくても済む。そのため、フィルタ40のコストを削減することができる。
(11) 抽出回路3A〜3Hがフィードバック制御回路のような閉ループ回路でないから、モータ2の電流信号の各成分の周波数が過渡的に又は急激に変化したものとしても、リプルを正確に検出することができる。
(12) フィルタ40が抵抗器41b,41d,41a,41c及びキャパシタ41a,41c,41b,41d,43aからなるフィルタであるから、フィルタ40の構成がシンプルであり、フィルタ40のコストアップを抑えることができる。
(13) フィルタ40の周波数特性を利用して、フィルタ40と差動増幅器50によってリプル成分を抽出したから、ハイパスフィルタ20やバンドパスフィルタ30にカットオフ周波数可変型フィルタを用いなくても済む。そのため、ハイパスフィルタ20やバンドパスフィルタ30のコストアップを抑えることができる。
(14) 電流電圧変換器10によって変換された電圧信号のうち直流成分がハイパスフィルタ20によって除去されるから、そのハイパスフィルタ20の後段のバンドパスフィルタ30、フィルタ40及び差動増幅器50の処理が正確に行われる。
(15) 電流電圧変換器10によって変換された電圧信号のうち所定周波数帯域外の成分がバンドパスフィルタ30によって減衰するから、そのバンドパスフィルタ30の後段のフィルタ40や差動増幅器50の処理が正確に行われる。
【0098】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
【0099】
〔変形例1〕
上述のステップS22において、制御部4は、計数値Nをゼロにリセットするのではなく、計数値Nを初期位置データ105Aに設定してもよい。この場合、ステップS25における処理が省略される。更に、ステップS24においては、制御部4が、抽出回路3Aによって出力されたパルス信号のパルスを入力するごとに、計数値Nに1を加算し又は減算することで計数値Nを更新する。制御部4は、ステップS24の演算をステップS12で決定した向きに従って決定する。従って、ステップS24で更新した計数値Nが、“移動後位置データ”を表す。
【0100】
この場合、ステップS43において、制御部4が、最後のステップS24で更新した計数値N(“移動後位置データ”)に補正値を加算するか、又は最後のステップS24で更新した計数値N(“移動後位置データ”)から補正値を減算する。この際、制御部4は、演算を加算とするかそれとも減算とするかを、ステップS12で決定した向きに従って決定する。制御部4が求めた差や和は、モータ2Aの補正後の回転位置及びバックレスト93の補正後の位置を表す。
【0101】
〔変形例2〕
ステップS42の処理の後であって図16に示す処理が終了する前に、制御部4が、最後のステップS24で更新した計数値Nに補正値を加算するか、又は最後のステップS24で更新した計数値Nから補正値を減算する。制御部4が求めた差や和は、計数したパルス数を補正したものであって、モータ2Aの補正後の移動量及びバックレスト93の補正後の移動量を表す。
その後、制御部4は、求めた差や和を記憶部5に新たに書き込む。
【0102】
変形例2では、バックレスト93の位置及びモータ2Aの回転位置に加えて、バックレスト93の移動量およびモータ2Aの回転量を正確に検出することができる。
【0103】
〔変形例3〕
検出回路3A〜3Hは一例であり、上述の実施形態の回路に限るものではない。例えば、フィルタ40及び差動増幅器50を省略してもよい。その場合、リプル成分の周波数が変化しても、リプル成分を正確に抽出できるようにするために、スイッチト・キャパシタ・フィルタをバンドパスフィルタ30の後段であって増幅器60の前段に設けることが好ましい。スイッチト・キャパシタ・フィルタのカットオフ周波数が可変であり、リプル成分や低周波成分の周波数が変化した場合でも、スイッチト・キャパシタ・フィルタは、低周波成分を減衰させ、リプル成分を通過させる。
【0104】
〔変形例4〕
フィルタ40の回路設計において、温度変化によるリプル成分の周波数の変動も考慮しつつ、図7に示すフィルタ40の低カットオフ周波数fc1がリプル成分の周波数(例えば、常温時の周波数)よりも高く設定されている。従って、フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)のうちリプル成分を高周波成分(高周波成分はリプル成分よりも周波数が高い。)よりも高い減衰率で減衰させる。つまり、フィルタ40は、リプル成分を高周波成分よりも効率的に除去する。従って、フィルタ40は、リプル成分を除去した信号を差動増幅器50に出力する。
【0105】
この場合、モータ2Aの電流信号やフィルタ40及び差動増幅器50の入力信号は、リプル成分と、そのリプル成分よりも周波数が高い高周波成分とを重畳したものである。
【0106】
〔変形例5〕
フィルタ40がバンドパスフィルタではなく、図17に示すような周波数特性を有したローパスフィルタであってもよい。フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)のうちカットオフ周波数fc3以下の成分を通過させ、カットオフ周波数fc3を超える成分を減衰させる。具体的には、カットオフ周波数fc3を超える高周波域において、フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)に含まれる成分の周波数が低いほど減衰率がより低くなるように、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)を減衰させる。
【0107】
フィルタ40の回路設計において、温度変化によるリプル成分の周波数の変動も考慮しつつ、図17に示すフィルタ40のカットオフ周波数fc3がリプル成分の周波数(例えば、常温時の周波数)よりも低く設定されている。従って、フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)のうちリプル成分を低周波成分(低周波成分はリプル成分よりも周波数が低い。)よりも高い減衰率で減衰させる。つまり、フィルタ40は、リプル成分を低周波成分よりも効率的に除去する。従って、フィルタ40は、リプル成分を除去した信号を差動増幅器50に出力する。
【0108】
この場合、モータ2Aの電流信号やフィルタ40及び差動増幅器50の入力信号は、リプル成分と、そのリプル成分よりも周波数が低い低周波成分とを重畳したものである。
【0109】
フィルタ40がローパスフィルタである場合、図8に示すハイパスフィルタ41,43が省略され、バンドパスフィルタ30の出力がローパスフィルタ42の入力に接続され、ローパスフィルタ42の出力が抵抗器51を介してオペアンプ53の反転入力端子に接続される。
【0110】
〔変形例6〕
フィルタ40がバンドパスフィルタではなく、図18に示すような周波数特性を有したハイパスフィルタであってもよい。フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)のうちカットオフ周波数fc4以上の成分を通過させ、カットオフ周波数fc4を下回る成分を減衰させる。具体的には、カットオフ周波数fc4を下回る低周波域において、フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)に含まれる成分の周波数が低いほど減衰率がより高くなるように、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)を減衰させる。
【0111】
フィルタ40の回路設計において、温度変化によるリプル成分の周波数の変動も考慮しつつ、図18に示すフィルタ40のカットオフ周波数fc4がリプル成分の周波数(例えば、常温時の周波数)よりも高く設定されている。従って、フィルタ40は、電流電圧変換器10によって変換された電圧信号(バンドパスフィルタ30の出力信号)のうちリプル成分を高周波成分(高周波成分はリプル成分よりも周波数が高い。)よりも高い減衰率で減衰させる。つまり、フィルタ40は、リプル成分を高周波成分よりも効率的に除去する。従って、フィルタ40は、リプル成分を除去した信号を差動増幅器50に出力する。
【0112】
フィルタ40がハイパスフィルタである場合、図8に示すローパスフィルタ42が省略され、バンドパスフィルタ30の出力がハイパスフィルタ41の入力に接続されている。
【0113】
〔変形例7〕
フィルタ40がバンドパスフィルタではなく、バンドストップフィルタであってもよい。
【0114】
〔変形例8〕
ハイパスフィルタ20とバンドパスフィルタ30の一方又は両方を省略してもよい。ハイパスフィルタ20を省略した場合には、電流電圧変換器10の出力がバンドパスフィルタ30の入力に接続される。バンドパスフィルタ30を省略した場合には、ハイパスフィルタ20の出力がフィルタ40の入力及び差動増幅器50の入力に接続される。ハイパスフィルタ20とバンドパスフィルタ30の両方が省略されている場合には、電流電圧変換器10の出力がフィルタ40の入力及び差動増幅器50の入力に接続される。
【0115】
〔変形例9〕
モータ制御装置1が電動ドアミラー装置に組み込まれ、電動ドアミラー装置の可動部(例えば、ドアに対してミラーハウジングの格納及び展開をする格納機構、ミラーハウジングに対してミラーを上下に振るチルト機構、ミラーハウジングに対してミラーを左右に振るパン機構)がモータ制御装置1のモータ2Aによって駆動されてもよい。モータ制御装置1がパワーウィンドウ装置に組み込まれ、パワーウィンドウ装置の可動部(例えば、ウィンドウレギュレター)がモータ2Aによって駆動されてもよい。
【0116】
〔変形例10〕
フィルタ40がオペアンプを用いたもの(例えば、負帰還型ローパスフィルタ、正帰還型ローパスフィルタ、多重負帰還型バンドパスフィルタ、多重正帰還型バンドパスフィルタ)でもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 モータ制御装置
2A〜2H モータ
3 抽出装置
4 制御部
5 記憶部
5A〜5H 初期位置データ
7A〜7H A/Dコンバータ(電圧検出部)
8A〜8H A/Dコンバータ(電流検出部)
105A〜105H 補正マップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動されると電流信号に周期的なリプルを発生させるモータと、
前記モータの前記電流信号からリプル成分を抽出して、そのリプル成分をパルス化したパルス信号を出力する抽出回路と、
前記パルス信号を入力するとともに、前記モータを制御する制御部と、
入力値と出力値との関係を表した補正マップと、前記モータの初期位置データとを記憶した記憶部と、を備え、
前記制御部が、
前記パルス信号のパルス数を計数することで前記モータの回転量を求めて、前記初期位置データにその回転量を加算し、又は前記初期位置データからその回転量を減算することで前記モータの回転位置を求める第一処理と、
前記モータの状況データを取得する第二処理と、
前記第二処理で取得した前記状況データを前記補正マップの入力値に当てはめて、それに対応する出力値を補正値として求める第三処理と、
前記第一処理で求めた前記回転位置に前記第三処理で求めた前記補正値を加算し、又は前記第一処理で求めた前記回転位置から前記第三処理で求めた前記補正値を減算する第四処理と、を実行する、モータ制御装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記記憶部に記憶された前記初期位置データを前記第四処理で求めた差又は和に書き換える、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
駆動されると電流信号に周期的なリプルを発生させるモータと、
前記モータの前記電流信号からリプル成分を抽出して、そのリプル成分をパルス化したパルス信号を出力する抽出回路と、
前記パルス信号を入力するとともに、前記モータを制御する制御部と、
入力値と出力値との関係を表した補正マップを記憶した記憶部と、を備え、
前記制御部が、
前記パルス信号のパルス数を計数することで前記モータの回転量を求める第一処理と、
前記モータの状況データを取得する第二処理と、
前記第二処理で取得した前記状況データを前記補正マップの入力値に当てはめて、それに対応する出力値を補正値として求める第三処理と、
前記第一処理で求めた前記回転量に前記第三処理で求めた前記補正値を加算し、又は前記第一処理で求めた前記回転量から前記第三処理で求めた前記補正値を減算する第四処理と、を実行する、モータ制御装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記第四処理で求めた差又は和を前記記憶部に書き込む、請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記モータの電流値を検出する電流検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記電流検出部によって検出された前記電流値を前記モータの前記状況データとして取得する、請求項1から4の何れか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記モータの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記電圧検出部によって検出された前記電圧を前記モータの前記状況データとして取得する、請求項1から4の何れか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記モータの電流値を検出する電流検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記電流検出部によって検出された電流値から換算した負荷を前記モータの前記状況データとして取得する、請求項1から4の何れか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
前記モータの電流値を検出する電流検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記電流検出部によって検出された電流値から換算した温度を前記モータの前記状況データとして取得する、請求項1から4の何れか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項9】
前記モータの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記電圧検出部によって検出された前記電圧から換算した温度を前記モータの前記状況データとして取得する、請求項1から4の何れか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項10】
前記第二処理において、前記制御部が、前記第一処理で求めた前記回転位置を前記モータの前記状況データとして取得する、請求項1から4の何れか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項11】
前記モータ又はその周辺の温度を検出する温度検出部を更に備え、
前記第二処理において、前記制御部が、前記温度検出部によって検出された前記温度を前記モータの前記状況データとして取得する、請求項1から4の何れか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項12】
前記制御部が、前記第一処理の前に前記モータの回転向きを決定するとともに、その決定した回転向きに従って、前記第四処理における前記補正値と前記回転位置の演算を加算と減算の中から選択する、請求項1から11の何れか一項に記載のモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−195994(P2012−195994A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56055(P2011−56055)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】