説明

モータ駆動制御回路

【課題】ロボット駆動用モータへの電力供給を制御するモータ駆動制御回路1において、当該回路中のリレー接点や非常停止スイッチの単一故障(溶着)を的確に検出することで、ロボット制御の安全性を向上させることが可能なモータ駆動制御回路1を提供することにある。
【解決手段】モータ駆動制御回路1において、モータ電源回路20とリレーで接続された非常停止回路10を多重化し(図1では二重化)、その非常停止回路10に、多重化されたリレーのリレーコイルが各々設けられており、各々のリレーコイルの両端の電圧を検出する第2電圧検出器11,12,13,14が、当該各々のリレーコイルと並列に接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット駆動用モータに電力を供給するモータ電源回路と、そのモータ電源回路による電力供給を遮断する非常停止回路と、がリレーで接続されたモータ駆動制御回路に関するものであって、特に、そのモータ駆動制御回路中のリレー接点や非常停止スイッチの溶着検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、産業用ロボットの動力源(モータ)に電力を供給するモータ電源回路と、そのモータ電源回路による電力供給を異常事態発生時などに遮断する非常停止回路と、を有するモータ駆動制御回路がある。このモータ駆動制御回路のうち、非常停止回路は、ロボット操作者(オペレータ)の安全を確保するためのもので、例えば、TP(ティーチペンダント)などに設けられた非常停止スイッチなどを含んでいる。モータ駆動制御回路の具体的な回路動作について、図6の回路図を用いて説明する。図6は、従来の非常停止回路100及びモータ電源回路200の回路図である。
【0003】
図6に示す非常停止回路100では、非常停止スイッチ(非常停止スイッチの接点)SW1x,モータパワースイッチSW2x,及びリレーコイルCRXの直列回路と、非常停止スイッチ(非常停止スイッチの接点)SW1y,モータパワースイッチSW2y,及びリレーコイルCRYの直列回路と、が並列に接続され、非常停止スイッチSW1x及びSW1yが24V電源101に、リレーコイルCRX及びCRYがアースに接続されている。非常停止スイッチSW1x及びSW1yは、異常事態発生時にオペレータによって非常停止ボタン(通常1個)が押下されると共に開状態となるものであって、通常はいずれも閉じた状態となっている。モータパワースイッチSW2x及びSW2yは、モータパワーボタン(通常1個)が押下されると共に閉状態となるものであって、通常はいずれも開いた状態となっている。リレーコイルCRX及びCRYは、モータ電源回路200において、それぞれ常開のリレー接点CRx及びCRyを有している。なお、モータ電源回路200におけるリレー接点CRx及びCRyは、非常停止回路100におけるリレーコイルCRX及びCRYが励磁されることによって閉状態となる。
【0004】
非常停止回路100において、オペレータによってモータパワーボタンが押下されると、モータパワースイッチSW2x及びSW2yの両方のスイッチが同時に閉じた状態となり(2回路構成)、リレーコイルCRX及びCRYが励磁状態となる。その結果、リレー接点CRx及びCRyが閉状態となり、モータ電源回路200によって駆動モータ205に対する電力供給が行われる。より具体的には、200Vの交流電源201から上述のリレー接点CRx及びCRyを介して全波整流回路202に電流が流れ、全波整流回路202の出力となる脈流電圧がリップルを小さくする電解コンデンサ203を介してCPU等の演算手段を含むサーボアンプインバータ204に入力され、サーボアンプインバータ204の三相出力が駆動モータ205に入力される。なお、オペレータが、押下されたモータパワーボタンを放し、モータパワースイッチSW2x及びSW2yの両方のスイッチが開いた状態となった場合であっても、自己保持回路(図示せず)などによって非常停止回路100の通電は保たれる。
【0005】
一方で、非常停止回路100において、オペレータによって非常停止ボタンが押下されると、非常停止スイッチSW1x及びSW1yの両方のスイッチが同時に開いた状態となり(2回路構成)、リレーコイルCRX及びCRYが非例励磁状態となる。その結果、リレー接点CRx及びCRyが開状態となり、モータ電源回路200から駆動モータ205に対する電力供給が遮断されることになる。
【0006】
ここで、非常停止回路100は、上述のとおり「2回路構成」となっているため、非常停止スイッチ又はリレー接点の溶着に起因した単一故障による機能喪失を防ぐことができるものとなっている。
【0007】
例えば、非常停止スイッチSW1x及びSW1yのいずれか一方が溶着し、オペレータが非常停止ボタンを押下しても開状態とならなくなった場合であっても、他方のスイッチは開状態となるので、その他方のスイッチ系統におけるリレーコイルを非励磁状態とすることができ、ひいては駆動モータ205に対する電力供給を適切に遮断することができる。また、リレー接点CRx及びCRyのいずれか一方が溶着して開状態とならなくなった場合であっても、他方のリレー接点は開状態となるので、モータ電源回路200を非通電とすることができ、ひいては駆動モータ205に対する電力供給を適切に遮断することができる。
【0008】
このように、従来の非常停止回路100では、同期して作動する回路を2系統設ける「2回路構成」によって、単一故障による機能損失を防ぎ、ロボット制御の安全性を高めることとしている。
【0009】
また、特許文献1には、仮に単一故障(接点溶着)した場合において、その故障を検出する技術が開示されている。特許文献1に記載された発明によれば、制御回路29は、電源回路中に設けられた接点23及び接点24を駆動する駆動信号S1及び駆動信号S2の出力タイミングを制御して、電流検出回路28からの電流検出出力がハイレベルとなるタイミングを検出することで、接点23又は接点24の接点溶着を検知することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2000−173382号公報(段落番号[0024],図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の非常停止回路100によれば、上述のとおり単一故障による機能損失を防ぐことは可能であるが、単一故障した場合にその故障を検出することができない、といった問題がある。
【0012】
すなわち、例えば非常停止回路100の非常停止スイッチSW1xが溶着した場合であっても、2回路構成により駆動モータ205に対する電力供給を適切に遮断することができることから、オペレータは、非常停止スイッチSW1yが溶着するまで非常停止スイッチSW1xの溶着事実に気付くことができない、といった問題がある。かかる問題は、モータ電源回路200をOFFできなくなって初めて非常停止スイッチSW1xの溶着事実に気付くことを意味し、ロボット制御の安全性の観点からみても非常に危険である。また、例えば非常停止回路100のリレー接点CRxが溶着した場合であっても、2回路構成により駆動モータ205に対する電力供給を適切に遮断することができることから、オペレータは、リレー接点CRyが溶着して、駆動モータ205に対する電力供給を適切に遮断できなくなるまでリレー接点CRxの溶着事実に気付くことができず、上述同様、非常に危険である。
【0013】
一方で、溶着の検出を行う特許文献1に記載された発明は、先に出力された駆動信号によって駆動される接点の溶着を検知することができないため、単一故障(溶着)の「的確な」検出ができないという問題を包含する。すなわち、この発明は、例えば、駆動信号の出力タイミングが「駆動信号S1→駆動信号S2」という順序の場合には、遅れて出力された駆動信号S2によって駆動される接点24の溶着検知はできるものの、先に出力された駆動信号S1によって駆動される接点23の溶着検知はできない(同号公報図3参照)。同様に、駆動信号の出力タイミングが「駆動信号S2→駆動信号S1」という順序の場合には、遅れて出力された駆動信号S1によって駆動される接点23の溶着検知はできるものの、先に出力された駆動信号S2によって駆動される接点24の溶着検知はできない。その結果、場合によっては片方の接点が溶着したまま循環ポンプ15を動作させることになってしまい、単一故障の「的確な」検出ができないことになる。仮に、この発明を、ロボット駆動用サーボ電源をON/OFFする非常停止回路に適用した場合、ON/OFFを制御する非常停止スイッチやリレー接点が溶着したまま産業用ロボットを動作させることになってしまい、非常に危険である。
【0014】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボット駆動用モータへの電力供給を制御するモータ駆動制御回路において、当該モータ駆動制御回路中のリレー接点や非常停止スイッチの単一故障(溶着)を的確に検出することで、ロボット制御の安全性を向上させることが可能なモータ駆動制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上のような課題を解決するために、本発明は、モータ駆動制御回路において、モータ電源回路とリレーで接続された非常停止回路を多重化し、その非常停止回路に、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を個別に制御する励磁制御手段が接続されていることを特徴とする。
【0016】
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0017】
(1) ロボット駆動用モータに電力を供給するモータ電源回路と、前記モータ電源回路による電力供給を遮断する非常停止回路と、を有し、前記モータ電源回路と前記非常停止回路とがリレーで接続されたモータ駆動制御回路において、前記非常停止回路は多重化されており、少なくとも一方のリレー制御によって前記モータ電源回路による電力供給を遮断するモータ駆動制御回路であって、前記非常停止回路には、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を個別に制御する励磁制御手段が接続されていることを特徴とするモータ駆動制御回路。
【0018】
本発明によれば、モータ電源回路と非常停止回路とがリレーで接続されたモータ駆動制御回路において、その非常停止回路は多重化されており、少なくとも一方のリレー制御によってモータ電源回路による電力供給を遮断するモータ駆動制御回路であって、非常停止回路には、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を個別に制御する励磁制御手段を接続することとしたから、多重化されたリレーへの励磁電流の供給タイミングを任意とすることができる。
【0019】
従って、励磁制御手段によって、例えば一のリレーへ励磁電流を供給した場合において、モータ電源回路によってロボット駆動用モータに電力が供給されたとき(例えば、ロボット駆動用モータの動作を確認することで、電力が供給されたか否かを確認できる)には、他のいずれかのリレーが有するリレー接点が、溶着していることを検知することができる。
【0020】
同様にして、励磁制御手段によって多重化されたリレーへの励磁電流の供給を切り替えることで、多重化されたリレーのうち、どのリレーのリレー接点が溶着しているかを的確に検知することが可能である。その結果、ロボット制御の安全性を向上させることができる。
【0021】
ここで、非常停止回路には、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を個別に制御する励磁制御手段が「接続されている」こととしたが、これは、励磁制御手段が非常停止回路中に含まれていない場合をも包含する意味である。すなわち、非常停止回路の外部に励磁制御手段が設けられ、非常停止回路の外部から、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を個別に制御するような回路構成としても構わない。
【0022】
(2) 前記モータ電源回路には、多重化されたリレーのリレー接点が各々設けられており、前記各々のリレー接点間の電圧を検出する第1電圧検出器が、当該各々のリレー接点と並列に接続されていることを特徴とする(1)記載のモータ駆動制御回路。
【0023】
本発明によれば、上述したモータ電源回路には、多重化されたリレーのリレー接点が各々設けられており、それら各々のリレー接点間の電圧を検出する第1電圧検出器が、それら各々のリレー接点と並列に接続されていることとしたから、上述した励磁制御手段によって、例えば一のリレーへ励磁電流を供給した場合において、ロボット駆動用モータの動作を確認しなくても、この第1電圧検出器によって所定の電圧信号が検出されたときには、他のいずれかのリレーが有するリレー接点が、溶着していることを検知することができる
【0024】
従って、ロボット駆動用モータがモータ電源回路に接続されていない場合であっても、多重化されたリレーが有するリレー接点のうち、どのリレー接点が溶着しているかを的確に検知することができ、ひいては、ロボット制御の安全性を向上させることができる。
【0025】
(3) 前記励磁制御手段は、前記リレーのリレーコイルと直列に接続されていることを特徴とする(1)又は(2)記載のモータ駆動制御回路。
【0026】
本発明によれば、上述した励磁制御手段が、上述したリレーのリレーコイルと直列に接続されることとしたから、非常停止回路中に設けられた励磁制御手段によって、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を切り替えることで、多重化されたリレーのうち、どのリレーのリレー接点が溶着しているかを的確に検知することができ、ひいてはロボット制御の安全性を向上させることができる。
【0027】
(4) 前記励磁制御手段は、多重化されたリレーを交互に励磁することを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載のモータ駆動制御回路。
【0028】
本発明によれば、上述した励磁制御手段によって、多重化されたリレーが交互に励磁されることとしたから、多重化されたリレーのうち、どのリレーのリレー接点が溶着しているかを1の励磁制御信号で的確に検知することができ、ひいてはロボット制御の安全性を向上させることができる。
【0029】
(5) ロボット駆動用モータに電力を供給するモータ電源回路と、前記モータ電源回路による電力供給を遮断する非常停止回路と、を有し、前記モータ電源回路と前記非常停止回路とがリレーで接続されたモータ駆動制御回路において、前記非常停止回路は多重化されており、少なくとも一方のリレー制御によって前記モータ電源回路による電力供給を遮断するモータ駆動制御回路であって、前記非常停止回路には、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を同期して停止させる非常停止スイッチが接続されるとともに、多重化されたリレーのリレーコイルが各々設けられており、前記各々のリレーコイルの両端の電圧を検出する第2電圧検出器が、当該各々のリレーコイルと並列に接続されていることを特徴とするモータ駆動制御回路。
【0030】
本発明によれば、モータ電源回路と非常停止回路とがリレーで接続されたモータ駆動制御回路において、その非常停止回路は多重化されており、少なくとも一方のリレー制御によってモータ電源回路による電力供給を遮断するモータ駆動制御回路であって、非常停止回路には、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を同期して停止させる非常停止スイッチが接続されるとともに、多重化されたリレーのリレーコイルが各々設けられており、これら各々のリレーコイルの両端の電圧を検出する第2電圧検出器が、これら各々のリレーコイルと並列に接続されていることとしたから、例えば、非常停止スイッチを動作させる非常停止ボタンを押下した場合において、本来ならば、多重化されたリレーへの励磁電流の供給が同期して停止され、リレーコイルと並列に接続された第2電圧検出器から電圧信号は検出されないはずであるが、仮に、この第2電圧検出器から所定の電圧信号が検出されたときには、非常停止スイッチのうち、どのリレーへの励磁電流の供給を停止させる接点が溶着しているかを検知することができる。
【0031】
すなわち、例えば、非常停止スイッチを動作させる非常停止ボタンを押下した場合に、どのリレーへの励磁電流の供給が停止されていないか、を第2電圧検出器からの所定の電圧信号に基づき検出することによって、非常停止スイッチのうち、どのリレーへの励磁電流の供給を停止させる接点が溶着しているかを検知することができ、ひいては、ロボット制御の安全性を向上させることができる。
【0032】
(6) (1)から(4)のいずれか記載のモータ駆動制御回路を用いて前記リレーの接点溶着を検知する接点溶着検知方法。
【0033】
本発明によれば、(1)から(4)のいずれか記載のモータ駆動制御回路を用いて、上述したリレーの接点溶着を的確に検知することができるので、ロボット制御の安全性を向上させることができる。
【0034】
(7) (5)記載のモータ駆動制御回路を用いて前記非常停止スイッチの接点溶着を検知する接点溶着検知方法。
【0035】
本発明によれば、(5)記載のモータ駆動制御回路を用いて、上述した非常停止スイッチの接点溶着を的確に検知することができるので、ロボット制御の安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係るモータ駆動制御回路は、以上説明したように、モータ駆動制御回路中の非常停止回路を多重化し、その非常停止回路に、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を個別に制御する励磁制御手段を接続するものなので、多重化されたリレーのうち、どのリレーのリレー接点が溶着しているかを的確に検知することができ、ひいてはロボット制御の安全性を向上させることができる。
【0037】
また、本発明に係るモータ駆動制御回路は、モータ駆動制御回路中の非常停止回路を多重化し、その非常停止回路に、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を同期して停止させる非常停止スイッチを接続し、多重化されたリレーの各々のリレーコイルと並列に第2電圧検出器を接続するものなので、非常停止スイッチのうち、どのリレーへの励磁電流の供給を停止させる接点が溶着しているかを検知することができ、ひいては、ロボット制御の安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0039】
[回路構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御回路1の回路図である。
【0040】
図1において、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御回路1は、非常停止回路10と、モータ電源回路20と、マイコン40と、から構成される。なお、モータ電源回路20のサーボアンプインバータ25は、駆動モータ30に接続されている。
【0041】
非常停止回路10は、非常停止スイッチ(非常停止スイッチの接点)SW1a,モータパワースイッチSW2,励磁スイッチSW3a,及びリレーコイルCRAの直列回路と、非常停止スイッチ(非常停止スイッチの接点)SW1b,リレー接点CRc,励磁スイッチSW3b,リレーコイルCRBの直列回路と、が並列構成となっており、非常停止スイッチSW1a及びリレーコイルCRBが24V電源(+24V)に、リレーコイルCRA及び非常停止スイッチSW1bがアースに接続されている(2回路構成)。なお、非常停止スイッチSW1aを24V電源(+24V)に接続するにあたって、両スイッチがショートした場合を考慮してヒューズ(FUSE)を介するようにしている。
【0042】
また、モータパワースイッチSW2,励磁スイッチSW3a,及びリレーコイルCRAの直列回路は、リレー接点CRc及びリレーコイルCRCの直列回路と並列に接続され、モータパワースイッチSW2と励磁スイッチSW3aの接続点と、リレー接点CRcとリレーコイルCRCの接続点とが接続されている。さらに、リレーコイルCRCの両端には電圧検出器11が接続され、リレー接点CRc及びリレーコイルCRCの直列回路の両端には電圧検出器13が接続されている。
【0043】
なお、非常停止スイッチSW1a及び非常停止スイッチSW1bは、異常事態発生時にオペレータによって非常停止ボタン(通常1個)が押下されると共に開状態となるものであって、通常はいずれも閉じた状態となっている。また、励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bは、マイコン40から受信する開閉制御信号に基づき開閉動作を行うことが可能である。また、本実施形態では、リレーコイルCRA及びリレーコイルCRBへの励磁電流の供給を制御する手段として、それぞれ機械的接点を有する励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bを用いたが、本発明はこれに限られず、光に応動する光スイッチやトランジスタ等から構成される半導体スイッチなど、如何なるものを用いてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bを非常停止回路10に組み込むこととしたが、本発明はこれに限られず、非常停止回路10の外部に設けることとしてもよい。
【0045】
一方で、励磁スイッチSW3b及びリレーコイルCRBの直列回路の両端には電圧検出器12が接続され、リレー接点CRc,励磁スイッチSW3b,及びリレーコイルCRBの直列回路の両端には電圧検出器14が接続されている。
【0046】
モータ電源回路20は、200Vの交流電源21と、リレー接点CRa及びリレー接点CRbを介して交流電源21と並列に接続され、交流電源21による電力供給の状態を検出する電圧検出器22と、全波整流回路23と、電解コンデンサ24と、サーボアンプインバータ25と、から構成される。
【0047】
ここで、上述した電圧検出器11,12,13,14,22において検出された電圧信号は、上述したマイコン40に対して送信される。すなわち、マイコン40は、電圧検出器11からモニタAに係る電圧信号を受信し、電圧検出器12からモニタBに係る電圧信号を受信し、電圧検出器13からモニタDに係る電圧信号を受信し、電圧検出器14からモニタEに係る電圧信号を受信し、電圧検出器22からモニタCに係る電圧信号を受信する。
【0048】
また、上述した電圧検出器22は、請求項記載の第1電圧検出器の一例に相当するものであって、上述した電圧検出器11,12,13,14は、請求項記載の第2電圧検出器に相当するものである。さらに、電圧検出器として、例えば、電気信号を光信号に変換する発光ダイオードと、その光信号を受光して電気信号に変換し、検出信号として出力するフォトトランジスタとが一体になったフォトカップラなどを挙げることができる。
【0049】
[動作シーケンス]
図2は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御回路1の第1の動作シーケンスを示すフローチャートである。
【0050】
図2において、まず、モータ電源の投入が行われる(ステップS11)。より具体的には、オペレータによって、モータパワースイッチSW2がオンされると、このモータパワースイッチSW2は閉状態となる。従って、励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bは初期状態でオープンなので、リレーコイルCRCが励磁され、2個のリレー接点CRcが閉状態となり、モータパワースイッチSW2を放しても通電を自己保持することができる(ステップS12)。このとき、リレーコイルCRCが自己保持となったことにより、電圧検出器11及び電圧検出器12がON状態になる。そして、マイコン40において、電圧検出器11からモニタAに係る(ON状態の)電圧信号を受信し、電圧検出器12からモニタBに係る(ON状態の)電圧信号を受信する。
【0051】
次いで、励磁スイッチの動作が行われる(ステップS13)。より具体的には、マイコン40が、上述したモニタAに係る電圧信号と上述したモニタBに係る電圧信号の受信を確認した後、励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bに対して開閉制御信号を送信することによって、励磁スイッチの動作が行われる。
【0052】
次いで、リレー接点の溶着検知が行われる(ステップS14)。より具体的には、励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bは、ステップS13におけるマイコン40からの開閉制御信号を受信して、オン・オフ動作を交互に行う。これにより、リレーコイルCRAとリレーコイルCRBとは、交互に励磁される。このとき、マイコン40において、電圧検出器22からモニタCに係る電圧信号を受信することによって、リレー接点CRa又はリレー接点CRbが溶着しているか否かを判断する。
【0053】
なお、本実施形態においては、励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bを交互にオン・オフ動作させることとしたが、例えば、励磁スイッチSW3a又は励磁スイッチSW3bのいずれか一方のみを動作させることで、リレー接点CRa又はリレー接点CRbが溶着しているか否かを判断することも可能である。
【0054】
図3は、リレー接点の溶着検知を説明するための説明図である。
【0055】
図3において、マイコン40は、励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bに対して、励磁スイッチSW3a,励磁スイッチSW3b,励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bの順で閉制御信号を送信する(図3の上から1段目,2段目)。
【0056】
このとき、電圧検出器22において検出されるモニタCに係る電圧信号は、リレー接点CRa及びリレー接点CRbがともに溶着していなければ、励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bがオンになるタイミングでHiからLoになる(図3の上から3段目)。しかし、リレー接点CR3bが溶着していれば、電圧検出器22において検出されるモニタCに係る電圧信号は、励磁スイッチSW3aのみがオンになるタイミングで一旦HiからLoになり、励磁スイッチSW3bのみがオンになるタイミングでLoからHiに戻り、その後、励磁スイッチSW3a及び励磁スイッチSW3bがオンになるタイミングで再びHiからLoになる(図3の上から4段目)。一方で、リレー接点SW3aが溶着していれば、電圧検出器22において検出されるモニタCに係る電圧信号は、励磁スイッチSW3bのみがオンになるタイミングでHiからLoになる(図3の上から5段目)。
【0057】
このように、励磁スイッチSW3aと励磁スイッチSW3bとを時系列でオン・オフ動作させた場合に、電圧検出器22において検出されるモニタCに係る電圧信号がHiからLoになるタイミングを確認することで、どのリレー接点が溶着したかを検知することができる。
【0058】
図4は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御回路1の第2の動作シーケンスを示すフローチャートである。
【0059】
図4において、まず、モータ電源の投入及び自己保持が行われる(ステップS21,ステップS22)。詳細については上述同様である。
【0060】
次いで、非常停止スイッチの動作が行われる(ステップS23)。より具体的には、オペレータによって非常停止ボタンが押下されると、非常停止スイッチSW1a及び非常停止スイッチSW1bが同期して共に開いた状態となる。
【0061】
このとき、非常停止スイッチの溶着検知が行われる(ステップS24)。より具体的には、マイコン40において、ステップS23の動作前後で、電圧検出器13からモニタDに係る電圧信号を受信し、電圧検出器14からモニタEに係る電圧信号を受信することによって、非常停止スイッチSW1a又は非常停止スイッチSW1bが溶着しているか否かを判断する。
【0062】
図5は、非常停止スイッチの溶着検知を説明するための説明図である。
【0063】
図5において、ステップS23の動作後、すなわち非常停止スイッチSW1a及び非常停止スイッチSW1bが開いた状態において、非常停止スイッチの溶着が全くなければ、電圧検出器13において検出されるモニタDに係る電圧信号はHiであり、かつ、電圧検出器14において検出されるモニタEに係る電圧信号もHiである(図5の上から5段目)。また、ステップS23の動作前、すなわち非常停止スイッチSW1a及び非常停止スイッチSW1bが閉じた状態において、非常停止スイッチの溶着が全くなければ、電圧検出器13において検出されるモニタDに係る電圧信号はHiであり、かつ、電圧検出器14において検出されるモニタEに係る電圧信号もHiである(図5の上から5段目)。
【0064】
しかし、非常停止スイッチSW1aが溶着していれば、ステップS23の動作後、電圧検出器13において検出されるモニタDに係る電圧信号はLoのままで、電圧検出器14において検出されるモニタEに係る電圧信号はHiとなる。また、非常停止スイッチSW1bが溶着していれば、ステップS23の動作後、電圧検出器13において検出されるモニタDに係る電圧信号はHiとなり、電圧検出器14において検出されるモニタEに係る電圧信号はLoのままである。
【0065】
このように、モニタDに係る電圧信号とモニタEに係る電圧信号の出力論理が異なるか否かを確認する。そして、これが異なる場合には、HiからLoとなる電圧信号はどちらか、を確認することで、どの非常停止スイッチが溶着したかを検知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係るモータ駆動制御回路1は、モータ駆動制御回路1中のリレー接点や非常停止スイッチの単一故障(溶着)を的確に検出することで、ロボット制御の安全性を向上させることが可能なものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御回路1の回路図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御回路1の第1の動作シーケンスを示すフローチャートである。
【図3】リレー接点の溶着検知を説明するための説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御回路1の第2の動作シーケンスを示すフローチャートである。
【図5】非常停止スイッチの溶着検知を説明するための説明図である。
【図6】従来の非常停止回路及びモータ電源回路の回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット駆動用モータに電力を供給するモータ電源回路と、
前記モータ電源回路による電力供給を遮断する非常停止回路と、を有し、
前記モータ電源回路と前記非常停止回路とがリレーで接続されたモータ駆動制御回路において、
前記非常停止回路は多重化されており、少なくとも一方のリレー制御によって前記モータ電源回路による電力供給を遮断するモータ駆動制御回路であって、
前記非常停止回路には、多重化されたリレーへの励磁電流の供給を同期して停止させる非常停止スイッチが接続されるとともに、多重化されたリレーのリレーコイルが各々設けられており、
前記各々のリレーコイルの両端の電圧を検出する第2電圧検出器が、当該各々のリレーコイルと並列に接続されていることを特徴とするモータ駆動制御回路。
【請求項2】
請求項1記載のモータ駆動制御回路を用いて前記非常停止スイッチの接点溶着を検知する接点溶着検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−217848(P2009−217848A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153610(P2009−153610)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【分割の表示】特願2004−308464(P2004−308464)の分割
【原出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】