説明

モード合分波器、光送受信装置及び光通信システム

【課題】本発明は、モードの合波の精度を良くし、合波時の損失を低減する。
【解決手段】本発明は、複数のモードを有する光信号xを生成するモード合波器3であって、各モードを有する光信号x、x、x、・・・、xを入力する入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−Nと、複数のモードを有する光信号xを出力する出力部32と、各モードを有する光信号x、x、x、・・・、xを反射するFBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nを利用して、各モードを有する光信号x、x、x、・・・、xを入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−Nからの入射方向から出力部32への出射方向へ反射させ、複数のモードを有する光信号xを生成する合波部と、を備えることを特徴とするモード合波器3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチモード光ファイバを利用する光通信システムにおいて、複数のモードを有する光信号の生成又は分波を行なう技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光ファイバネットワークにおけるトラフィックは増大しており、伝送高速度化や多値変調技術や波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)など、様々な手法を用いて伝送容量の拡大を図ってきた。しかしながら、既設の伝送路や従来の伝送方式を用いた伝送容量の拡大が将来的に困難になると予想されるため、波長領域の拡大や新たな伝送方式が検討されている。
【0003】
波長領域を拡大する方法として、現在利用されていない波長帯を利用して、広波長域のWDMを実現して、伝送容量を拡大する検討もなされている。しかしながら、伝送損失が波長帯により異なるため、使用できる波長帯は限定されると考えられる。さらに、広波長域にわたり増幅が可能な光増幅器も実現が困難であるため、広波長域のWDMを実現するためには多くの課題がある。そこで、WDMに加えて、マルチモード光ファイバを伝送路として利用して、複数のモードを利用したモード多重方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1及び非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−288911号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】C.P.Tsekrekos and A.M.J.Koonen,“Mode−selective spatial filtering for increased robustness in a mode group diversity multiplexing link,” Opt.Lett.32,1041−1043 (2007).
【非特許文献2】S.Savin,M.J.F.Digonnet,G.S.Kino and H.J.Shaw,“Tunable mechanically induced long−period fiber gratings,” Opt.Lett.25,710−712 (2000).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び非特許文献2においては、所望の高次モードを励振する方法が提案されていない。また、非特許文献1においても、光ファイバでの励振位置をモードごとに異ならせることによりモード結合を行ない、光ファイバでの受信位置をモードごとに異ならせることによりモード分離を行なう。つまり、精度の良いモードの合分波方法及び多数のモードの多重・分離方法が提案されていないため、多重信号間の損失やクロストークが存在することから、長距離大容量伝送の実現が困難という課題がある。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、モードの合波や分波の精度を良くし、合波時の損失や分波時のクロストークを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、モードの合波時には、各モードを有する光信号を反射するファイバブラッググレーティングを利用して、各モードごとの入力部からの入射方向から、各モードに共通の出力部への出射方向へ、各モードを有する光信号を反射させることとした。そして、モードの分波時には、各モードを有する光信号を反射するファイバブラッググレーティングを利用して、各モードに共通の入力部からの入射方向から、各モードごとの出力部への出射方向へ、各モードを有する光信号を反射させることとした。
【0009】
具体的には、本発明は、複数のモードを有する光信号を生成するモード合波器であって、各モードを有する光信号を入力する入力部と、前記複数のモードを有する光信号を出力する出力部と、前記各モードを有する光信号を反射するファイバブラッググレーティングを利用して、前記各モードを有する光信号を前記入力部からの入射方向から前記出力部への出射方向へ反射させ、前記複数のモードを有する光信号を生成する合波部と、を備えることを特徴とするモード合波器である。
【0010】
また、本発明は、複数のモードを有する光信号を生成するモード合波器であって、各モードを有する光信号を入力する入力部と、前記複数のモードを有する光信号を出力する出力部と、前記複数のモードのうち単一のモード以外の前記各モードを有する光信号を反射するファイバブラッググレーティングを利用して、前記複数のモードのうち前記単一のモード以外の前記各モードを有する光信号を、前記入力部からの入射方向から前記出力部への出射方向へ反射させるとともに、前記複数のモードのうち前記単一のモードを有する光信号を、前記ファイバブラッググレーティングによって反射させることなく、前記入力部から前記出力部へ導波することにより、前記複数のモードを有する光信号を生成する合波部と、を備えることを特徴とするモード合波器である。
【0011】
この構成によれば、モードの合波の精度を良くし、合波時の損失を低減し、伝送距離を拡大するモード合波器を提供することができる。
【0012】
また、本発明は、複数のモードを有する光信号を分波するモード分波器であって、前記複数のモードを有する光信号を入力する入力部と、各モードを有する光信号を出力する出力部と、前記各モードを有する光信号を反射するファイバブラッググレーティングを利用して、前記各モードを有する光信号を前記入力部からの入射方向から前記出力部への出射方向へ反射させ、前記複数のモードを有する光信号を分波する分波部と、を備えることを特徴とするモード分波器である。
【0013】
また、本発明は、複数のモードを有する光信号を分波するモード分波器であって、前記複数のモードを有する光信号を入力する入力部と、各モードを有する光信号を出力する出力部と、前記複数のモードのうち単一のモード以外の前記各モードを有する光信号を反射するファイバブラッググレーティングを利用して、前記複数のモードのうち前記単一のモード以外の前記各モードを有する光信号を、前記入力部からの入射方向から前記出力部への出射方向へ反射させるとともに、前記複数のモードのうち前記単一のモードを有する光信号を、前記ファイバブラッググレーティングによって反射させることなく、前記入力部から前記出力部へ導波することにより、前記複数のモードを有する光信号を分波する分波部と、を備えることを特徴とするモード分波器である。
【0014】
この構成によれば、モードの分波の精度を良くし、分波時のクロストークを低減し、伝送距離を拡大するモード分波器を提供することができる。
【0015】
また、本発明は、異なるモードを有する光信号の各々を生成する生成部と、前記複数のモードを有する光信号を生成するモード合波器と、合波された前記複数のモードを有する光信号を送信する送信部と、を備えることを特徴とする光送信装置である。
【0016】
この構成によれば、モードの合波の精度を良くし、合波時の損失を低減し、伝送距離を拡大する光送信装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明は、合波された複数のモードを有する光信号を受信する受信部と、前記複数のモードを有する光信号を分波するモード分波器と、異なるモードを有する光信号の各々を処理する処理部と、を備えることを特徴とする光受信装置である。
【0018】
この構成によれば、モードの分波の精度を良くし、分波時のクロストークを低減し、伝送距離を拡大する光受信装置を提供することができる。
【0019】
また、本発明は、光送信装置と、光受信装置と、前記光送信装置及び前記光受信装置を接続し、合波された複数のモードを有する光信号を伝送するマルチモード光ファイバと、を備えることを特徴とする光通信システムである。
【0020】
この構成によれば、モードの合波や分波の精度を良くし、合波時の損失や分波時のクロストークを低減し、伝送距離を拡大する光通信システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、モードの合波や分波の精度を良くし、合波時の損失や分波時のクロストークを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】光通信システムの構成を示す図である。
【図2】モード合波器の第1の構成を示す図である。
【図3】モード合波器の第2の構成を示す図である。
【図4】モード合波器の第3の構成を示す図である。
【図5】モード合波器の第4の構成を示す図である。
【図6】モード分波器の第1の構成を示す図である。
【図7】モード分波器の第2の構成を示す図である。
【図8】モード分波器の第3の構成を示す図である。
【図9】モード分波器の第4の構成を示す図である。
【図10】各モードにおける使用波長及び実効屈折率の関係を示す図である。
【図11】各モードにおけるFBG周期及び使用波長の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0024】
(光通信システムの構成)
光通信システムの構成を図1に示す。光通信システムは、N個(Nは2以上の自然数)のモードを利用しモード多重方法を適用し、送信機1−1、1−2、・・・、1−N、モード変換器2−1、2−2、・・・、2−N、モード合波器3、マルチモード光ファイバ4、モード分波器5及び受信機6−1、6−2、・・・、6−Nから構成される。
【0025】
送信機1−1、1−2、・・・、1−N、モード変換器2−1、2−2、・・・、2−N及びモード合波器3は、光送信装置を構成している。送信機1−1、1−2、・・・、1−N及びモード変換器2−1、2−2、・・・、2−Nは、生成部に対応しており、異なるモードを有する光信号の各々x、x、・・・、xを生成する。モード合波器3は、複数のモードを有する光信号xを生成する。
【0026】
モード分波器5及び受信機6−1、6−2、・・・、6−Nは、光受信装置を構成している。モード分波器5は、複数のモードを有する光信号yを分波する。受信機6−1、6−2、・・・、6−Nは、処理部に対応しており、異なるモードを有する光信号の各々y、y、・・・、yを処理する。
【0027】
マルチモード光ファイバ4は、送信側及び受信側を接続し、合波された複数のモードを有する光信号x又はyを伝送する。送信機1−1、1−2、・・・、1−Nは、同一波長及び基本モードを有する光信号を生成する。モード変換器2−1、2−2、・・・、2−Nは、基本モードを有する光信号をそれぞれ異なるモードを有する光信号に変換する。
【0028】
モード変換器2−1、2−2、・・・、2−Nは、長周期ファイバブラッググレーティング(Fiber Bragg Grating:FBG)を用いることで実現できる。非特許文献2に示されるように、使用波長λにおいて基本モードを高次モードに変換するためには、FBGの周期的な屈折率変化の間隔Λを数式1のように設定する。
【数1】

ここで、nは、使用波長λにおける基本モードの実効屈折率を示しており、nは、使用波長λにおけるm番目の高次モードの実効屈折率を示している。
【0029】
FBGの周期的な屈折率変化の間隔Λは、使用する光ファイバの構造パラメータ、使用する波長λ、変換するモード次数mによって決定される。使用する波長λを決定後、光ファイバの構造パラメータから数値解析を行ない、基本モードの実効屈折率n及び所望の高次モードの実効屈折率nを算出し、計算により得られたn及びnを数式1に代入し、必要なFBGの周期的な屈折率変化の間隔Λを決定する。後述する1.550μmの使用波長において、基本モードを第1高次モードに変換するためには、FBGの周期的な屈折率変化の間隔ΛをΛ=711.1μmに設定する。
【0030】
(モード合波器の構成)
モード合波器の第1の構成を図2に示す。第1のモード合波器3は、図1のモード合波器3として適用され、入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−N、出力部32、光サーキュレータ33−1、33−2、33−3、・・・、33−N、及びFBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nから構成される。
【0031】
入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−Nはそれぞれ、各モードを有する光信号x、x、x、・・・、xを入力する。出力部32は、複数のモードを有する光信号xを出力する。FBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nはそれぞれ、各モードを有する光信号x、x、x、・・・、xを、入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−Nからの入射方向から出力部32への出射方向へ反射させる。光サーキュレータ33−1、33−2、33−3、・・・、33−Nはそれぞれ、各モードを有する光信号x、x、x、・・・、xを、FBG34での反射前は入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−NからFBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nへ導波し、FBG34での反射後はFBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nから出力部32へ導波する。
【0032】
モード合波器の第2の構成を図3に示す。第2のモード合波器3は、図1のモード合波器3として適用され、入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−N、出力部32、光カプラ35−1、35−2、35−3、・・・、35−N、及びFBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nから構成される。つまり、光サーキュレータ33−1、33−2、33−3、・・・、33−Nに代えて、光カプラ35−1、35−2、35−3、・・・、35−Nを配列することもできる。
【0033】
モード合波器の第3の構成を図4に示す。第3のモード合波器3は、図1のモード合波器3として適用され、入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−N、31−(N+1)、出力部32、光サーキュレータ33−1、33−2、33−3、・・・、33−N、及びFBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nから構成される。
【0034】
入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−N、31−(N+1)はそれぞれ、各モードを有する光信号x、x、x、・・・、x、xN+1を入力する。出力部32は、複数のモードを有する光信号xを出力する。FBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nはそれぞれ、複数のモードのうち単一のモード以外の各モードを有する光信号x、x、x、・・・、xを、入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−Nからの入射方向から出力部32への出射方向へ反射させる。複数のモードのうち単一のモードを有する光信号xN+1は、FBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nによって反射されることなく、入力部31−(N+1)から出力部32へ導波される。光サーキュレータ33−1、33−2、33−3、・・・、33−Nはそれぞれ、複数のモードのうち単一のモード以外の各モードを有する光信号x、x、x、・・・、xを、FBG34での反射前は入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−NからFBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nへ導波し、FBG34での反射後はFBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nから出力部32へ導波する。
【0035】
モード合波器の第4の構成を図5に示す。第4のモード合波器3は、図1のモード合波器3として適用され、入力部31−1、31−2、31−3、・・・、31−N、31−(N+1)、出力部32、光カプラ35−1、35−2、35−3、・・・、35−N、及びFBG34−1、34−2、34−3、・・・、34−Nから構成される。つまり、光サーキュレータ33−1、33−2、33−3、・・・、33−Nに代えて、光カプラ35−1、35−2、35−3、・・・、35−Nを配列することもできる。
【0036】
このように、本発明では、非特許文献1と異なり、光ファイバでの励振位置をモードごとに異ならせてモード結合を行なうことはなく、FBG34及び(光サーキュレータ33又は光カプラ35)を利用してモード合波を行なう。よって、モードの合波の精度を良くし、合波時の損失を低減し、伝送距離を拡大するモード合波器を提供することができる。
【0037】
(モード分波器の構成)
モード分波器の第1の構成を図6に示す。第1のモード分波器5は、図1のモード分波器5として適用され、入力部51、出力部52−1、52−2、52−3、・・・、52−N、光サーキュレータ53−1、53−2、53−3、・・・、53−N、及びFBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nから構成される。
【0038】
入力部51は、複数のモードを有する光信号yを入力する。出力部52−1、52−2、52−3、・・・、52−Nはそれぞれ、各モードを有する光信号y、y、y、・・・、yを出力する。FBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nはそれぞれ、各モードを有する光信号y、y、y、・・・、yを、入力部51からの入射方向から出力部52−1、52−2、52−3、・・・、52−Nへの出射方向へ反射させる。光サーキュレータ53−1、53−2、53−3、・・・、53−Nはそれぞれ、各モードを有する光信号y、y、y、・・・、yを、FBG54での反射前は入力部51からFBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nへ導波し、FBG54での反射後はFBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nから出力部52−1、52−2、52−3、・・・、52−Nへ導波する。
【0039】
モード分波器の第2の構成を図7に示す。第2のモード分波器5は、図1のモード分波器5として適用され、入力部51、出力部52−1、52−2、52−3、・・・、52−N、光カプラ55−1、55−2、55−3、・・・、55−N、及びFBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nから構成される。つまり、光サーキュレータ53−1、53−2、53−3、・・・、53−Nに代えて、光カプラ55−1、55−2、55−3、・・・、55−Nを配列することもできる。
【0040】
モード分波器の第3の構成を図8に示す。第3のモード分波器5は、図1のモード分波器5として適用され、入力部51、出力部52−1、52−2、52−3、・・・、52−N、52−(N+1)、光サーキュレータ53−1、53−2、53−3、・・・、53−N、及びFBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nから構成される。
【0041】
入力部51は、複数のモードを有する光信号yを入力する。出力部52−1、52−2、52−3、・・・、52−N、52−(N+1)はそれぞれ、各モードを有する光信号y、y、y、・・・、y、yN+1を出力する。FBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nはそれぞれ、複数のモードのうち単一のモード以外の各モードを有する光信号y、y、y、・・・、yを、入力部51からの入射方向から出力部52−1、52−2、52−3、・・・、52−Nへの出射方向へ反射させる。複数のモードのうち単一のモードを有する光信号yN+1は、FBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nによって反射されることなく、入力部51から出力部52−(N+1)へ導波される。光サーキュレータ53−1、53−2、53−3、・・・、53−Nはそれぞれ、複数のモードのうち単一のモード以外の各モードを有する光信号y、y、y、・・・、yを、FBG54での反射前は入力部51からFBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nへ導波し、FBG54での反射後はFBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nから出力部52−1、52−2、52−3、・・・、52−Nへ導波する。
【0042】
モード分波器の第4の構成を図9に示す。第4のモード分波器5は、図1のモード分波器5として適用され、入力部51、出力部52−1、52−2、52−3、・・・、52−N、52−(N+1)、光カプラ55−1、55−2、55−3、・・・、55−N、及びFBG54−1、54−2、54−3、・・・、54−Nから構成される。つまり、光サーキュレータ53−1、53−2、53−3、・・・、53−Nに代えて、光カプラ55−1、55−2、55−3、・・・、55−Nを配列することもできる。
【0043】
このように、本発明では、非特許文献1と異なり、光ファイバでの受信位置をモードごとに異ならせてモード分離を行なうことはなく、FBG54及び(光サーキュレータ53又は光カプラ55)を利用してモード分波を行なう。よって、モードの分波の精度を良くし、分波時の損失をクロストークを低減し、伝送距離を拡大するモード分波器を提供することができる。
【0044】
(FBGのパラメータ)
モード合波器3又はモード分波器5を実現するように、FBG34又は54のパラメータを設定する。以下の説明では、基本モード及び第1高次モードという2個のモードが存在する場合を例に挙げて、FBG34又は54のパラメータの設定を説明する。
【0045】
各モードにおける使用波長及び実効屈折率の関係を図10に示す。コア半径a=7μmであり、コアのクラッドに対する比屈折率差Δ=0.4%であり、波長1.53〜1.56μmにおいて、LP01モード及びLP11モードという2個のモードが存在する。FBG34又は54での反射条件は、数式2のように表される。
【数2】

ここで、λは、使用波長を示しており、neffは、実効屈折率を示しており、Λは、FBG34又は54の周期的な屈折率変化の間隔を示している。
【0046】
図10及び数式2をともに参照する。Λが0.5353μmであるとき、LP01モードの反射波長は1.550μmとなり、LP11モードの反射波長は1.548μmとなる。Λが0.536μmであるとき、LP01モードの反射波長は1.552μmとなり、LP11モードの反射波長は1.550μmとなる。そこで、使用波長をλ=1.550μmとして、FBG34又は54の周期的な屈折率変化の間隔をΛ=0.536μm、0.5353μmとする。すると、Λ=0.536μmであるFBG34又は54では、LP11モードを有する光信号は反射されるが、LP01モードを有する光信号は反射されない。そして、Λ=0.5353μmであるFBG34又は54では、LP01モードを有する光信号は反射されるが、LP11モードを有する光信号は反射されない。
【0047】
各モードにおけるFBG周期及び使用波長の関係を図11に示す。図11の上段は、上述したλ=1.550μmから近い波長領域に関するデータであり、図11の下段は、上述したλ=1.550μmから遠い波長領域に関するデータである。λ=1.550μmの使用波長のみならず、λ=1.550μmから遠い使用波長においても、LP01モード及びLP11モードに対応するΛは異なっている。
【0048】
FBG34又は54の反射帯域Δλは、FBG34又は54の屈折率のグレーティングの変化についての、振幅Δn及び領域lにより、数式3のように表される。
【数3】

つまり、図10に挙げた例において、各FBG34又は54において各モードを反射させるときには、Δλが2nm以下となるようにΔn及びlを適切に設定する。一般には、FBG34又は54の反射帯域を数nmの帯域とすることができるため、各モードを個別に反射する各FBG34又は54は、現状の技術で実現可能であることが分かる。
【0049】
(モード多重方法及びWDMの併用)
以上の実施形態では、単一の波長を使用して、モード多重方法を適用しているが、以下の変形例として、複数の波長を使用して、モード多重方法及びWDMを併用してもよい。このときには、各波長及び各モードを有する光信号を個別に反射する各FBG34又は54を、モード合波器3又はモード分波器5に適用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るモード合分波器、光送受信装置及び光通信システムは、モード多重方法に適用することができるのみならず、モード多重方法及び他の多重方法(WDM及び偏波多重など)を併用する方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:送信機
2:モード変換器
3:モード合波器
4:マルチモード光ファイバ
5:モード分波器
6:受信機
31:入力部
32:出力部
33:光サーキュレータ
34:FBG
35:光カプラ
51:入力部
52:出力部
53:光サーキュレータ
54:FBG
55:光カプラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモードを有する光信号を生成するモード合波器であって、
各モードを有する光信号を入力する入力部と、
前記複数のモードを有する光信号を出力する出力部と、
前記各モードを有する光信号を反射するファイバブラッググレーティングを利用して、前記各モードを有する光信号を前記入力部からの入射方向から前記出力部への出射方向へ反射させ、前記複数のモードを有する光信号を生成する合波部と、
を備えることを特徴とするモード合波器。
【請求項2】
複数のモードを有する光信号を生成するモード合波器であって、
各モードを有する光信号を入力する入力部と、
前記複数のモードを有する光信号を出力する出力部と、
前記複数のモードのうち単一のモード以外の前記各モードを有する光信号を反射するファイバブラッググレーティングを利用して、前記複数のモードのうち前記単一のモード以外の前記各モードを有する光信号を、前記入力部からの入射方向から前記出力部への出射方向へ反射させるとともに、前記複数のモードのうち前記単一のモードを有する光信号を、前記ファイバブラッググレーティングによって反射させることなく、前記入力部から前記出力部へ導波することにより、前記複数のモードを有する光信号を生成する合波部と、
を備えることを特徴とするモード合波器。
【請求項3】
複数のモードを有する光信号を分波するモード分波器であって、
前記複数のモードを有する光信号を入力する入力部と、
各モードを有する光信号を出力する出力部と、
前記各モードを有する光信号を反射するファイバブラッググレーティングを利用して、前記各モードを有する光信号を前記入力部からの入射方向から前記出力部への出射方向へ反射させ、前記複数のモードを有する光信号を分波する分波部と、
を備えることを特徴とするモード分波器。
【請求項4】
複数のモードを有する光信号を分波するモード分波器であって、
前記複数のモードを有する光信号を入力する入力部と、
各モードを有する光信号を出力する出力部と、
前記複数のモードのうち単一のモード以外の前記各モードを有する光信号を反射するファイバブラッググレーティングを利用して、前記複数のモードのうち前記単一のモード以外の前記各モードを有する光信号を、前記入力部からの入射方向から前記出力部への出射方向へ反射させるとともに、前記複数のモードのうち前記単一のモードを有する光信号を、前記ファイバブラッググレーティングによって反射させることなく、前記入力部から前記出力部へ導波することにより、前記複数のモードを有する光信号を分波する分波部と、
を備えることを特徴とするモード分波器。
【請求項5】
異なるモードを有する光信号の各々を生成する生成部と、
前記複数のモードを有する光信号を生成する請求項1又は2に記載のモード合波器と、
合波された前記複数のモードを有する光信号を送信する送信部と、
を備えることを特徴とする光送信装置。
【請求項6】
合波された複数のモードを有する光信号を受信する受信部と、
前記複数のモードを有する光信号を分波する請求項3又は4に記載のモード分波器と、
異なるモードを有する光信号の各々を処理する処理部と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【請求項7】
請求項5に記載の光送信装置と、
請求項6に記載の光受信装置と、
前記光送信装置及び前記光受信装置を接続し、合波された複数のモードを有する光信号を伝送するマルチモード光ファイバと、
を備えることを特徴とする光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−37016(P2013−37016A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170139(P2011−170139)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】