モールドコイルの製造方法
【課題】小型且つ製造コストが低く、量産性に優れたモールドコイルの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】
プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末を分散させた磁性体モールド樹脂5で空芯コイル1を封止してなるモールドコイルの製造方法において、複数の金型から形成されるキャビティ4と、位置出しピン2aを有する成形金型を用いる。位置出しピン2aは、キャビティ4内を水平方向に移動可能である。位置出しピン2aによってキャビティ4内の所定の位置へ空芯コイル1をキャビティ4内に配置する。磁性体モールド樹脂をキャビティ4の垂直方向からキャビティ4内に充填し、その充填中に位置出しピン2aを所定の位置まで移動させる。
【解決手段】
プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末を分散させた磁性体モールド樹脂5で空芯コイル1を封止してなるモールドコイルの製造方法において、複数の金型から形成されるキャビティ4と、位置出しピン2aを有する成形金型を用いる。位置出しピン2aは、キャビティ4内を水平方向に移動可能である。位置出しピン2aによってキャビティ4内の所定の位置へ空芯コイル1をキャビティ4内に配置する。磁性体モールド樹脂をキャビティ4の垂直方向からキャビティ4内に充填し、その充填中に位置出しピン2aを所定の位置まで移動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールドコイルの製造方法に関し、特に空芯コイルを磁性体モールド樹脂で封止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイルを磁性体粉末と樹脂とを混練した磁性体モールド樹脂で封止してなるモールドコイルが広く利用されている。従来のモールドコイルの製造方法は、フェライトコアなどの巻芯に巻かれたコイルを金型のキャビティ内に配置し、その後キャビティ内に溶融状態の磁性体モールド樹脂を充填してコイルを封止する。特許文献1と特許文献2には巻芯を用いたモールドコイルの製造方法が開示されている。
【0003】
例えば、巻芯を用いずに空芯コイルをそのまま磁性体モールド樹脂で封止しようとすると、磁性体モールド樹脂の充填圧力によって空芯コイルが変形したり、キャビティ内の片側に寄ったり、または傾いたりして所定の位置からずれてしまうこともあった。これらコイルの変形や位置ずれは、外観的不良を引き起こすだけではなく、インダクタンス値や直流重畳特性などの電気的特性にも影響を与えてしまう。そこで、従来ではコイルの変形や位置ずれを防止するために巻芯やフレームなどを用いることが一般的だった。
【特許文献1】特開平4−338613号公報
【特許文献2】特開2006−32847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年における電子機器の小型化や高機能化の技術革新は著しく、それに伴い、モールドコイルのような電子部品もまた小型化や高性能化、更には低価格化などの要求が高まっている。しかし、従来のモールドコイルで用いられる巻芯やフレームなどはモールドコイルの小型化や低背化の妨げになり、さらにコストの上昇を招く原因となっていた。
【0005】
また、モールドコイルにおいて高いインダクタンス値を得るには透磁率の高い磁性体モールド樹脂でコイルを封止することが望ましい。一般的に、磁性体モールド樹脂の透磁率を高めるには、磁性体モールド樹脂中の磁性体粉末の充填率を高くする方法がある。しかし、磁性体粉末の充填率を高くすると磁性体モールド樹脂の溶融時の粘度や比重が高くなる。具体的に磁性体粉末の充填率が60Vol%以上になると、磁気特性は優れるが溶融時の粘度や比重が非常に高い状態になる。このような磁性体モールド樹脂を成形金型のキャビティ内に充填すると、コイルに高い充填圧力がかかってしまう。
【0006】
さらに、小型で高いインダクタンス値を有するモールドコイルを得ようとするならば、所定のターン数を得るために細い線材を用いてコイルを作成しなくてはならない。細い線材の空芯コイルを磁性体モールド樹脂で封止する場合には、磁性体モールド樹脂からの充填圧力によって空芯コイルがゆがんだり、ばらけたり、最悪の場合には断線するなどの変形や位置ずれなどの問題が生じやすい。
【0007】
そこで出願人は、先に出願した特願2008−4005において、上型と下型に設けられたキャビティ内にそれぞれ磁性体モールド樹脂を充填し、上型と下型のキャビティ内に充填した溶融状態の磁性体モールド樹脂で空芯コイルを挟んで封止する成形方法を提案した。しかし、この方法では空芯コイルの封止位置のばらつきをある程度制御することはできるが、成形物に一定の品質を確保するためには上型と下型に充填した磁性体モールド樹脂の流動も制御する必要があった。また、工程や装置が複雑なこともあり、コスト面や量産性の面で改善する余地があった。
【0008】
本発明は、小型且つ製造コストが低く、量産性に優れたモールドコイルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明は、プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末を分散させた磁性体モールド樹脂で空芯コイルを封止してなるモールドコイルの製造方法において、複数の金型から形成されるキャビティと位置出しピンとを有する成形金型を用いる。位置出しピンは、キャビティ内を水平方向に移動可能である。
【0010】
位置出しピンによってキャビティ内の所定の位置へ空芯コイルをキャビティ内に配置する。磁性体モールド樹脂をキャビティ内に垂直方向から充填し、その充填中に位置出しピンを所定の位置まで移動させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のモールドコイルの製造方法では、複数の金型から形成されるキャビティと、位置出しピンとを有する成形金型を用いる。空芯コイルは、位置出しピンによって容易にキャビティ内の所定の位置に配置できる。また、位置出しピンはキャビティ内を水平方向に移動ができる。本発明の方法では、キャビティ内に空芯コイルを配置し、キャビティ内に磁性体モールド樹脂を充填して空芯コイルを封止する。その充填途中で位置出しピンを所定の位置まで移動させることと、磁性体モールド樹脂をキャビティ内に垂直方向から充填することによって、空芯コイルを適正な位置で段階的に封止することができる。そのため、磁性体粉末の充填率が60Vol%以上の磁性体モールド樹脂を用いても、空芯コイルの変形や位置ずれが生じにくく、容易に所定の位置で空芯コイルを封止することができる。
【0012】
さらに、この方法ならば従来のインジェクション成形やトランスファ成形だけではなく、圧縮成形を用いても成形可能である。圧縮成形を用いてモールドコイルを製造すれば、材料のロスを少なくでき、より製造コストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施例)
図1〜図6を参照しながら、本発明のモールドコイルの製造方法の第1の実施例を説明する。図中の参照符号はそれぞれ、1は空芯コイル、1aは引出部、1bは折曲部、2は上型、2aは位置出しピン、3は下型、4はキャビティ、5は磁性体モールド樹脂、6はパンチ、7は外部電極を示す。
【0014】
まず、本実施例で用いる空芯コイルについて説明する。図1に本実施例で用いる空芯コイルの斜視図を示す。幅が0.25mmで厚さが0.06mmの自己融着性の平角線を芯径1.0mmの芯材を用いて、外外巻きで12ターン巻いた。さらに、図1に示すように平角線の引出部1aを同方向に引き出し、その端部を折り曲げ加工して折曲部1bを有する空芯コイル1を得た。
【0015】
次に、第1の実施例で用いる成形金型について説明する。図2に本発明の第1の実施例で用いる圧縮成形用の成形金型を示し、図2(a)は上面図、図2(b)は正面図を示す。図2に示すように、第1の実施例で用いる成形金型は上型2と下型3を有し、上型2と下型3を組み合わせることによってキャビティ4が形成される。上型2の側面部の一つに位置出しピン2aを設ける。位置出しピン2aはキャビティ4内を水平方向(図2(a)では上下の方向)に移動できるように設けられる。本実施例では、位置出しピン2aに直径0.97mmの円柱状の金属棒を用い、その中心がキャビティ4の底部から1.0mmの位置になるように上型2に設けた。
【0016】
次に、第1の実施例のモールドコイルの製造方法について説明する。図3〜図5に第1の実施例のモールドコイルの製造工程の主要部分を示す。図6に本発明の実施例のモールドコイルの斜視図を示す。なお、図3と図4は、各工程における上面図と正面図を示し、上図が上面図、下図が正面図である。
【0017】
図3(a)に示すように、空芯コイル1をキャビティ4内に配置し、成形金型を180℃で予熱する。このとき、位置出しピン2aを空芯コイル1の中空部分に挿入し、折曲部1bがキャビティ4の底部側になるように空芯コイル1を配置する。位置出しピン2aによって、空芯コイル1はキャビティ4内の適正な位置に位置出しされる。また、予熱温度は磁性体モールド樹脂が軟化できる温度以上(磁性体モールド樹脂中の樹脂の軟化温度以上の温度)に設定すればよく、本実施例では180℃に設定した。
【0018】
図3(b)に示すように、上型2の開口部から空芯コイル1の上に所定量秤量した磁性体モールド樹脂5をキャビティ4内に投入し、成形金型の予熱で磁性体モールド樹脂5を溶融させる。本実施例では磁性体モールド樹脂5として、アモルファス合金粉末とノボラック型エポキシ樹脂とを混練分散し、その混練物を冷却後粉砕したものを用いた。なお、磁性体モールド樹脂中のアモルファス合金粉末の充填率は60Vol%になるように調製した。
【0019】
図4(a)に示すように、上型4の開口部にパンチ6をセットし、パンチ6を用いて5kgfで5秒間加圧する。このとき、空芯コイル1の引出部1aの引き出される方向が磁性体モールド樹脂5の充填される方向(パンチ6からの加圧方向)と同じであるため、折曲部1bが位置ズレしにくい。空芯コイル1は位置出しピン2aのある部分を除いて、適切に磁性体モールド樹脂5に封止される。次に、パンチ6からの加圧をやめてパンチ6をフリー状態とした上で、図4(b)の上面図に示すように、その端部がキャビティ4の側面部の位置になるように位置出しピン2aを移動させる。さらに、図4(b)の正面図に示すように、パンチ6を用いて10kgfで20秒間加圧する。このようにすると、位置出しピン2aのあった部分に磁性体モールド樹脂5が充填される。その後、180℃で10分間加熱放置して磁性体モールド樹脂5を硬化させる。
【0020】
図5に示すように、磁性体モールド樹脂5を硬化させて得た成形体を成形金型から取り出してサンドブラストでバリ取りを行い、成形体の側面に空芯コイル1の端部(折曲部1b)を露出させる。さらに露出した折曲部1bの融着性の被覆を研磨除去する。空芯コイル1と接続するように、導電性樹脂を塗布した後、めっき処理により外部電極7を形成して、図6に示すモールドコイルを得る。
【0021】
(第2の実施例)
図7〜図9を参照しながら、本発明のモールドコイルの製造方法の第2の実施例について説明する。第2の実施例では位置出しピンと支持ピンを有する成形金型を用いる方法を示す。また、第2の実施例では第1の実施例で用いた空芯コイルと磁性体モールド樹脂を用いて、同形状のモールドコイルを作成した。なお、第1の実施例と共通する部分の説明は割愛する。
【0022】
まず、第2の実施例で用いる成形金型について説明する。図7は本発明の第2の実施例で用いる成形金型を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図を示す。第1の実施例と同様に、第2の実施例で用いる成形金型は上型2と下型3を有し、上型2と下型3を組み合わせることによってキャビティ4が形成される。また、第1の実施例と同様に、キャビティ4の側面部の1つには同様な構成で位置出しピン2aを設ける。さらに、上型2には、支持ピン2bを設ける。本実施例では、支持ピン2bとして直径0.4mmの円柱状の金属棒を4本用い、支持ピン2bをキャビティ4の対向する側面部の両側に2本ずつ設けた。支持ピン2bは、キャビティ4の水平方向(図7(a)では上下の方向)に移動できるようにした。
【0023】
次に、第2の実施例のモールドコイルの製造方法について説明する。図8と図9に本発明の第2の実施例のモールドコイルの製造工程の主要部分を示す。なお、図8と図9は、各工程における上面図と正面図を示し、上図が上面図、下図が正面図である。
【0024】
図8(a)に示すように、空芯コイル1をキャビティ4内に配置し、成形金型を180℃で予熱する。このとき、位置出しピン2aを空芯コイル1の中空部分に挿入し、支持ピン2bによって空芯コイル1を挟持して配置する。支持ピン2bを用いることによって、モールドコイルにおける空芯コイル1の厚み方向の位置精度を高めることができる。
【0025】
図8(b)に示すように、上型2の開口部から空芯コイル1の上に所定量秤量した磁性体モールド樹脂5をキャビティ4内に投入し、成形金型の予熱で磁性体モールド樹脂5を溶融させる。
【0026】
図9(a)に示すように、上型4の開口部にパンチ6をセットし、パンチ6を用いて3kgfで5秒間加圧する。次に、パンチ6からの加圧をやめてパンチ6をフリー状態とした上で、図9(b)の上面図に示すように、その端部がキャビティ4の側面部の位置になるように位置出しピン2aを移動させる。続いて図4(b)の正面図に示すように、パンチ6を用いて5kgfで5秒間加圧する。このようにすると、位置出しピン2aのあった部分に磁性体モールド樹脂5が充填される。次に、パンチ6からの加圧をやめてパンチ6をフリー状態とした上で、図9(c)の上面図に示すように支持ピン2bをその端部がキャビティ4の側面部の位置になるように支持ピン2bを移動させる。続いて図4(c)の正面図に示すように、再びパンチ6を用いて10kgfで20秒間加圧する。このようにすると、支持ピン2bのあった部分に磁性体モールド樹脂5が充填される。その後、180℃で10分間加熱放置して磁性体モールド樹脂5を硬化させる。
【0027】
磁性体モールド樹脂5を硬化させて得た成形体を成形金型から取り出してサンドブラストでバリ取りを行い、成形体の側面に空芯コイル1の端部を露出させる。さらに露出した端部の融着性の被覆を研磨除去する。空芯コイル1と接続するように、導電性樹脂を塗布した後、めっき処理により外部電極を形成してモールドコイルを得る。
【0028】
(第3の実施例)
図10と図11を参照しながら、本発明のモールドコイルの製造方法の第3の実施例について説明する。第3の実施例では第1の実施例で用いた空芯コイルと磁性体モールド樹脂を用い、トランスファ成形で第1の実施例と同形状のモールドコイルを成形する。なお、第1の実施例と共通する部分の説明は割愛する。また、図中の参照符号はそれぞれ、8は上型、8aはピンゲート、9は中型、9aは位置出しピン、10は下型、11はキャビティを示す。
【0029】
まず、第3の実施例で用いるトランスファ成形用の成形金型について説明する。図10に本発明の第3の実施例で用いる成形金型を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図を示す。図10に示すように、本発明のモールドコイルのトランスファ成形用の成形金型は、上型8と中型9と下型10を有し、上型8と中型9と下型10を組み合わせることによってキャビティ11が形成される。
【0030】
上型8にはピンゲート8aが設けられ、チャンバーポッド(図示せず)で溶融状態になった磁性体モールド樹脂はピンゲート8aを通過してキャビティ11へ充填される。中型9の側面部の一つに、キャビティ11内に突出する位置出しピン9aを設ける。第1の実施例と同様に、位置出しピン9aはキャビティ11の水平方向(図10(a)では上下の方向)に移動できるよう形成される。
【0031】
次に、第3の実施例のモールドコイルの製造方法について説明する。図11に本発明の第3の実施例のモールドコイルの製造方法の主要部分を示す。なお、図11は、各工程における上面図と正面図を示し、上図が上面図、下図が正面図である。
【0032】
図11(a)に示すように、キャビティ11内に空芯コイル1を配置し、上型8と中型9と下型10を固定して成形金型を180℃で予熱する。第1の実施例と同様に、位置出しピン9aを空芯コイル1の中空部分に挿入し、折曲部1bがキャビティ4の底部側になるように空芯コイル1を配置する。次に、図11(b)に示すように、ピンゲート8aより磁性体モールド樹脂5を100kgfの圧力でキャビティ11へ注入して5秒間保持する。
【0033】
図11(c)の上面図に示すように、その端部がキャビティ11の側面部の位置になるように位置出しピン9aを移動させる。続いて図11(c)の正面図に示すように、再び200kgfで加圧して位置出しピン9aのあった部分に磁性体モールド樹脂5を充填させて、8分間保持して磁性体モールド樹脂5を硬化させる。
【0034】
磁性体モールド樹脂5を硬化させて得た成形体を成形金型から取り出してサンドブラストでバリ取りを行い、成形体の側面に空芯コイル1の端部を露出させる。さらに露出した端部の融着性の被覆を研磨除去する。空芯コイル1と接続するように、導電性樹脂を塗布した後、めっき処理により外部電極を形成してモールドコイルを得る。
【0035】
上記実施例では、位置出しピンに1つの円柱状の突出を用いたが、角柱や断面が楕円状などの形状または複数用いても良い。また、第2の実施例においてキャビティの対向する側面部の両側に2本ずつ支持ピンを設けたが、これに限らず全ての側面部や底面部に設けても良い。また、その形状や数も用途に合わせて適宜選択することができる。
【0036】
また、位置出しピンや支持ピンを移動させる際には、加圧を低くするか、加圧しない状態で移動させることが望ましい。また、位置出しピンと支持ピンは同時に移動させても良いが、磁性体モールド樹脂の移動量が大きくなり、空芯コイルの位置ずれや変形が生じることもあるため、位置出しピンを移動させてから支持ピンを移動させる方が望ましい。
【0037】
本実施例では、磁性体モールド樹脂中の樹脂に熱硬化性樹脂のノボラック型エポキシ樹脂を用いたが、これに限らずポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いても実施可能である。
【0038】
第3の実施例において、トランスファ成形を用いたモールドコイルの製造方法を挙げたが、インジェクション成形を用いても実施可能である。但し、トランスファ成形やインジェクション成形では、材料のロスが多くなるため、圧縮成形を用いた方が低コスト化には有利である。
【0039】
以上より、本発明のモールドコイルの製造方法は、磁性体粉末の充填率が60Vol%以上の高粘度な磁性体モールド樹脂を用いても、位置ずれや変形がなく所定の位置に空芯コイルを容易に封止できる。また、プラスチック成形法を用いるため、圧粉成形法と比較して成形精度の高いコイル部品が得られる。これより、本発明のモールドコイルの製造方法を用いれば小型で電気的特性の高いモールドコイルを低コスト且つ高い量産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例で用いる空芯コイルの斜視図である。
【図2】第1の実施例で用いる成形金型を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図3】第1の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図4】第1の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図5】第1の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図6】本実施例のモールドコイルの斜視図である。
【図7】第2の実施例で用いる成形金型を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図8】第2の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図9】第2の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図10】第3の実施例で用いる成形金型を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図11】第3の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1:空芯コイル、1a:引出部、1b:折曲部、2:上型、2a:位置出しピン、2b:支持ピン、3:下型、4:キャビティ、5:磁性体モールド樹脂、6:パンチ、7:外部電極、8:上型、8a:ピンゲート、9:中型、9a:位置出しピン、10:下型、11:キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールドコイルの製造方法に関し、特に空芯コイルを磁性体モールド樹脂で封止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイルを磁性体粉末と樹脂とを混練した磁性体モールド樹脂で封止してなるモールドコイルが広く利用されている。従来のモールドコイルの製造方法は、フェライトコアなどの巻芯に巻かれたコイルを金型のキャビティ内に配置し、その後キャビティ内に溶融状態の磁性体モールド樹脂を充填してコイルを封止する。特許文献1と特許文献2には巻芯を用いたモールドコイルの製造方法が開示されている。
【0003】
例えば、巻芯を用いずに空芯コイルをそのまま磁性体モールド樹脂で封止しようとすると、磁性体モールド樹脂の充填圧力によって空芯コイルが変形したり、キャビティ内の片側に寄ったり、または傾いたりして所定の位置からずれてしまうこともあった。これらコイルの変形や位置ずれは、外観的不良を引き起こすだけではなく、インダクタンス値や直流重畳特性などの電気的特性にも影響を与えてしまう。そこで、従来ではコイルの変形や位置ずれを防止するために巻芯やフレームなどを用いることが一般的だった。
【特許文献1】特開平4−338613号公報
【特許文献2】特開2006−32847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年における電子機器の小型化や高機能化の技術革新は著しく、それに伴い、モールドコイルのような電子部品もまた小型化や高性能化、更には低価格化などの要求が高まっている。しかし、従来のモールドコイルで用いられる巻芯やフレームなどはモールドコイルの小型化や低背化の妨げになり、さらにコストの上昇を招く原因となっていた。
【0005】
また、モールドコイルにおいて高いインダクタンス値を得るには透磁率の高い磁性体モールド樹脂でコイルを封止することが望ましい。一般的に、磁性体モールド樹脂の透磁率を高めるには、磁性体モールド樹脂中の磁性体粉末の充填率を高くする方法がある。しかし、磁性体粉末の充填率を高くすると磁性体モールド樹脂の溶融時の粘度や比重が高くなる。具体的に磁性体粉末の充填率が60Vol%以上になると、磁気特性は優れるが溶融時の粘度や比重が非常に高い状態になる。このような磁性体モールド樹脂を成形金型のキャビティ内に充填すると、コイルに高い充填圧力がかかってしまう。
【0006】
さらに、小型で高いインダクタンス値を有するモールドコイルを得ようとするならば、所定のターン数を得るために細い線材を用いてコイルを作成しなくてはならない。細い線材の空芯コイルを磁性体モールド樹脂で封止する場合には、磁性体モールド樹脂からの充填圧力によって空芯コイルがゆがんだり、ばらけたり、最悪の場合には断線するなどの変形や位置ずれなどの問題が生じやすい。
【0007】
そこで出願人は、先に出願した特願2008−4005において、上型と下型に設けられたキャビティ内にそれぞれ磁性体モールド樹脂を充填し、上型と下型のキャビティ内に充填した溶融状態の磁性体モールド樹脂で空芯コイルを挟んで封止する成形方法を提案した。しかし、この方法では空芯コイルの封止位置のばらつきをある程度制御することはできるが、成形物に一定の品質を確保するためには上型と下型に充填した磁性体モールド樹脂の流動も制御する必要があった。また、工程や装置が複雑なこともあり、コスト面や量産性の面で改善する余地があった。
【0008】
本発明は、小型且つ製造コストが低く、量産性に優れたモールドコイルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明は、プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末を分散させた磁性体モールド樹脂で空芯コイルを封止してなるモールドコイルの製造方法において、複数の金型から形成されるキャビティと位置出しピンとを有する成形金型を用いる。位置出しピンは、キャビティ内を水平方向に移動可能である。
【0010】
位置出しピンによってキャビティ内の所定の位置へ空芯コイルをキャビティ内に配置する。磁性体モールド樹脂をキャビティ内に垂直方向から充填し、その充填中に位置出しピンを所定の位置まで移動させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のモールドコイルの製造方法では、複数の金型から形成されるキャビティと、位置出しピンとを有する成形金型を用いる。空芯コイルは、位置出しピンによって容易にキャビティ内の所定の位置に配置できる。また、位置出しピンはキャビティ内を水平方向に移動ができる。本発明の方法では、キャビティ内に空芯コイルを配置し、キャビティ内に磁性体モールド樹脂を充填して空芯コイルを封止する。その充填途中で位置出しピンを所定の位置まで移動させることと、磁性体モールド樹脂をキャビティ内に垂直方向から充填することによって、空芯コイルを適正な位置で段階的に封止することができる。そのため、磁性体粉末の充填率が60Vol%以上の磁性体モールド樹脂を用いても、空芯コイルの変形や位置ずれが生じにくく、容易に所定の位置で空芯コイルを封止することができる。
【0012】
さらに、この方法ならば従来のインジェクション成形やトランスファ成形だけではなく、圧縮成形を用いても成形可能である。圧縮成形を用いてモールドコイルを製造すれば、材料のロスを少なくでき、より製造コストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施例)
図1〜図6を参照しながら、本発明のモールドコイルの製造方法の第1の実施例を説明する。図中の参照符号はそれぞれ、1は空芯コイル、1aは引出部、1bは折曲部、2は上型、2aは位置出しピン、3は下型、4はキャビティ、5は磁性体モールド樹脂、6はパンチ、7は外部電極を示す。
【0014】
まず、本実施例で用いる空芯コイルについて説明する。図1に本実施例で用いる空芯コイルの斜視図を示す。幅が0.25mmで厚さが0.06mmの自己融着性の平角線を芯径1.0mmの芯材を用いて、外外巻きで12ターン巻いた。さらに、図1に示すように平角線の引出部1aを同方向に引き出し、その端部を折り曲げ加工して折曲部1bを有する空芯コイル1を得た。
【0015】
次に、第1の実施例で用いる成形金型について説明する。図2に本発明の第1の実施例で用いる圧縮成形用の成形金型を示し、図2(a)は上面図、図2(b)は正面図を示す。図2に示すように、第1の実施例で用いる成形金型は上型2と下型3を有し、上型2と下型3を組み合わせることによってキャビティ4が形成される。上型2の側面部の一つに位置出しピン2aを設ける。位置出しピン2aはキャビティ4内を水平方向(図2(a)では上下の方向)に移動できるように設けられる。本実施例では、位置出しピン2aに直径0.97mmの円柱状の金属棒を用い、その中心がキャビティ4の底部から1.0mmの位置になるように上型2に設けた。
【0016】
次に、第1の実施例のモールドコイルの製造方法について説明する。図3〜図5に第1の実施例のモールドコイルの製造工程の主要部分を示す。図6に本発明の実施例のモールドコイルの斜視図を示す。なお、図3と図4は、各工程における上面図と正面図を示し、上図が上面図、下図が正面図である。
【0017】
図3(a)に示すように、空芯コイル1をキャビティ4内に配置し、成形金型を180℃で予熱する。このとき、位置出しピン2aを空芯コイル1の中空部分に挿入し、折曲部1bがキャビティ4の底部側になるように空芯コイル1を配置する。位置出しピン2aによって、空芯コイル1はキャビティ4内の適正な位置に位置出しされる。また、予熱温度は磁性体モールド樹脂が軟化できる温度以上(磁性体モールド樹脂中の樹脂の軟化温度以上の温度)に設定すればよく、本実施例では180℃に設定した。
【0018】
図3(b)に示すように、上型2の開口部から空芯コイル1の上に所定量秤量した磁性体モールド樹脂5をキャビティ4内に投入し、成形金型の予熱で磁性体モールド樹脂5を溶融させる。本実施例では磁性体モールド樹脂5として、アモルファス合金粉末とノボラック型エポキシ樹脂とを混練分散し、その混練物を冷却後粉砕したものを用いた。なお、磁性体モールド樹脂中のアモルファス合金粉末の充填率は60Vol%になるように調製した。
【0019】
図4(a)に示すように、上型4の開口部にパンチ6をセットし、パンチ6を用いて5kgfで5秒間加圧する。このとき、空芯コイル1の引出部1aの引き出される方向が磁性体モールド樹脂5の充填される方向(パンチ6からの加圧方向)と同じであるため、折曲部1bが位置ズレしにくい。空芯コイル1は位置出しピン2aのある部分を除いて、適切に磁性体モールド樹脂5に封止される。次に、パンチ6からの加圧をやめてパンチ6をフリー状態とした上で、図4(b)の上面図に示すように、その端部がキャビティ4の側面部の位置になるように位置出しピン2aを移動させる。さらに、図4(b)の正面図に示すように、パンチ6を用いて10kgfで20秒間加圧する。このようにすると、位置出しピン2aのあった部分に磁性体モールド樹脂5が充填される。その後、180℃で10分間加熱放置して磁性体モールド樹脂5を硬化させる。
【0020】
図5に示すように、磁性体モールド樹脂5を硬化させて得た成形体を成形金型から取り出してサンドブラストでバリ取りを行い、成形体の側面に空芯コイル1の端部(折曲部1b)を露出させる。さらに露出した折曲部1bの融着性の被覆を研磨除去する。空芯コイル1と接続するように、導電性樹脂を塗布した後、めっき処理により外部電極7を形成して、図6に示すモールドコイルを得る。
【0021】
(第2の実施例)
図7〜図9を参照しながら、本発明のモールドコイルの製造方法の第2の実施例について説明する。第2の実施例では位置出しピンと支持ピンを有する成形金型を用いる方法を示す。また、第2の実施例では第1の実施例で用いた空芯コイルと磁性体モールド樹脂を用いて、同形状のモールドコイルを作成した。なお、第1の実施例と共通する部分の説明は割愛する。
【0022】
まず、第2の実施例で用いる成形金型について説明する。図7は本発明の第2の実施例で用いる成形金型を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図を示す。第1の実施例と同様に、第2の実施例で用いる成形金型は上型2と下型3を有し、上型2と下型3を組み合わせることによってキャビティ4が形成される。また、第1の実施例と同様に、キャビティ4の側面部の1つには同様な構成で位置出しピン2aを設ける。さらに、上型2には、支持ピン2bを設ける。本実施例では、支持ピン2bとして直径0.4mmの円柱状の金属棒を4本用い、支持ピン2bをキャビティ4の対向する側面部の両側に2本ずつ設けた。支持ピン2bは、キャビティ4の水平方向(図7(a)では上下の方向)に移動できるようにした。
【0023】
次に、第2の実施例のモールドコイルの製造方法について説明する。図8と図9に本発明の第2の実施例のモールドコイルの製造工程の主要部分を示す。なお、図8と図9は、各工程における上面図と正面図を示し、上図が上面図、下図が正面図である。
【0024】
図8(a)に示すように、空芯コイル1をキャビティ4内に配置し、成形金型を180℃で予熱する。このとき、位置出しピン2aを空芯コイル1の中空部分に挿入し、支持ピン2bによって空芯コイル1を挟持して配置する。支持ピン2bを用いることによって、モールドコイルにおける空芯コイル1の厚み方向の位置精度を高めることができる。
【0025】
図8(b)に示すように、上型2の開口部から空芯コイル1の上に所定量秤量した磁性体モールド樹脂5をキャビティ4内に投入し、成形金型の予熱で磁性体モールド樹脂5を溶融させる。
【0026】
図9(a)に示すように、上型4の開口部にパンチ6をセットし、パンチ6を用いて3kgfで5秒間加圧する。次に、パンチ6からの加圧をやめてパンチ6をフリー状態とした上で、図9(b)の上面図に示すように、その端部がキャビティ4の側面部の位置になるように位置出しピン2aを移動させる。続いて図4(b)の正面図に示すように、パンチ6を用いて5kgfで5秒間加圧する。このようにすると、位置出しピン2aのあった部分に磁性体モールド樹脂5が充填される。次に、パンチ6からの加圧をやめてパンチ6をフリー状態とした上で、図9(c)の上面図に示すように支持ピン2bをその端部がキャビティ4の側面部の位置になるように支持ピン2bを移動させる。続いて図4(c)の正面図に示すように、再びパンチ6を用いて10kgfで20秒間加圧する。このようにすると、支持ピン2bのあった部分に磁性体モールド樹脂5が充填される。その後、180℃で10分間加熱放置して磁性体モールド樹脂5を硬化させる。
【0027】
磁性体モールド樹脂5を硬化させて得た成形体を成形金型から取り出してサンドブラストでバリ取りを行い、成形体の側面に空芯コイル1の端部を露出させる。さらに露出した端部の融着性の被覆を研磨除去する。空芯コイル1と接続するように、導電性樹脂を塗布した後、めっき処理により外部電極を形成してモールドコイルを得る。
【0028】
(第3の実施例)
図10と図11を参照しながら、本発明のモールドコイルの製造方法の第3の実施例について説明する。第3の実施例では第1の実施例で用いた空芯コイルと磁性体モールド樹脂を用い、トランスファ成形で第1の実施例と同形状のモールドコイルを成形する。なお、第1の実施例と共通する部分の説明は割愛する。また、図中の参照符号はそれぞれ、8は上型、8aはピンゲート、9は中型、9aは位置出しピン、10は下型、11はキャビティを示す。
【0029】
まず、第3の実施例で用いるトランスファ成形用の成形金型について説明する。図10に本発明の第3の実施例で用いる成形金型を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図を示す。図10に示すように、本発明のモールドコイルのトランスファ成形用の成形金型は、上型8と中型9と下型10を有し、上型8と中型9と下型10を組み合わせることによってキャビティ11が形成される。
【0030】
上型8にはピンゲート8aが設けられ、チャンバーポッド(図示せず)で溶融状態になった磁性体モールド樹脂はピンゲート8aを通過してキャビティ11へ充填される。中型9の側面部の一つに、キャビティ11内に突出する位置出しピン9aを設ける。第1の実施例と同様に、位置出しピン9aはキャビティ11の水平方向(図10(a)では上下の方向)に移動できるよう形成される。
【0031】
次に、第3の実施例のモールドコイルの製造方法について説明する。図11に本発明の第3の実施例のモールドコイルの製造方法の主要部分を示す。なお、図11は、各工程における上面図と正面図を示し、上図が上面図、下図が正面図である。
【0032】
図11(a)に示すように、キャビティ11内に空芯コイル1を配置し、上型8と中型9と下型10を固定して成形金型を180℃で予熱する。第1の実施例と同様に、位置出しピン9aを空芯コイル1の中空部分に挿入し、折曲部1bがキャビティ4の底部側になるように空芯コイル1を配置する。次に、図11(b)に示すように、ピンゲート8aより磁性体モールド樹脂5を100kgfの圧力でキャビティ11へ注入して5秒間保持する。
【0033】
図11(c)の上面図に示すように、その端部がキャビティ11の側面部の位置になるように位置出しピン9aを移動させる。続いて図11(c)の正面図に示すように、再び200kgfで加圧して位置出しピン9aのあった部分に磁性体モールド樹脂5を充填させて、8分間保持して磁性体モールド樹脂5を硬化させる。
【0034】
磁性体モールド樹脂5を硬化させて得た成形体を成形金型から取り出してサンドブラストでバリ取りを行い、成形体の側面に空芯コイル1の端部を露出させる。さらに露出した端部の融着性の被覆を研磨除去する。空芯コイル1と接続するように、導電性樹脂を塗布した後、めっき処理により外部電極を形成してモールドコイルを得る。
【0035】
上記実施例では、位置出しピンに1つの円柱状の突出を用いたが、角柱や断面が楕円状などの形状または複数用いても良い。また、第2の実施例においてキャビティの対向する側面部の両側に2本ずつ支持ピンを設けたが、これに限らず全ての側面部や底面部に設けても良い。また、その形状や数も用途に合わせて適宜選択することができる。
【0036】
また、位置出しピンや支持ピンを移動させる際には、加圧を低くするか、加圧しない状態で移動させることが望ましい。また、位置出しピンと支持ピンは同時に移動させても良いが、磁性体モールド樹脂の移動量が大きくなり、空芯コイルの位置ずれや変形が生じることもあるため、位置出しピンを移動させてから支持ピンを移動させる方が望ましい。
【0037】
本実施例では、磁性体モールド樹脂中の樹脂に熱硬化性樹脂のノボラック型エポキシ樹脂を用いたが、これに限らずポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いても実施可能である。
【0038】
第3の実施例において、トランスファ成形を用いたモールドコイルの製造方法を挙げたが、インジェクション成形を用いても実施可能である。但し、トランスファ成形やインジェクション成形では、材料のロスが多くなるため、圧縮成形を用いた方が低コスト化には有利である。
【0039】
以上より、本発明のモールドコイルの製造方法は、磁性体粉末の充填率が60Vol%以上の高粘度な磁性体モールド樹脂を用いても、位置ずれや変形がなく所定の位置に空芯コイルを容易に封止できる。また、プラスチック成形法を用いるため、圧粉成形法と比較して成形精度の高いコイル部品が得られる。これより、本発明のモールドコイルの製造方法を用いれば小型で電気的特性の高いモールドコイルを低コスト且つ高い量産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例で用いる空芯コイルの斜視図である。
【図2】第1の実施例で用いる成形金型を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図3】第1の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図4】第1の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図5】第1の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図6】本実施例のモールドコイルの斜視図である。
【図7】第2の実施例で用いる成形金型を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図8】第2の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図9】第2の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図10】第3の実施例で用いる成形金型を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図11】第3の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1:空芯コイル、1a:引出部、1b:折曲部、2:上型、2a:位置出しピン、2b:支持ピン、3:下型、4:キャビティ、5:磁性体モールド樹脂、6:パンチ、7:外部電極、8:上型、8a:ピンゲート、9:中型、9a:位置出しピン、10:下型、11:キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末と樹脂とを混練させた磁性体モールド樹脂で空芯コイルを封止してなるモールドコイルの製造方法において、
複数の金型から形成されるキャビティと、
該キャビティ内を水平方向に移動可能な位置出しピンとを有する成形金型を用い、
該位置出しピンによって該キャビティ内の所定の位置へ該空芯コイルを配置し、
該磁性体モールド樹脂を該キャビティ内に充填し、その充填中に該位置出しピンを所定の位置まで移動させることを特徴とするモールドコイルの製造方法。
【請求項2】
前記磁性体モールド樹脂を前記キャビティ内に充填する際に、
該磁性体モールド樹脂を該キャビティ内に垂直方向から充填することを特徴とする請求項1に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項3】
前記磁性体モールド樹脂が、
前記磁性体粉末が該磁性体モールド樹脂中に60Vol%以上充填されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項4】
前記成形金型において、
前記キャビティ内を水平方向もしくは垂直方向に移動可能な複数の支持ピンをさらに有する前記成形金型を用い、
前記位置出しピンと該支持ピンによって該キャビティ内の所定の位置へ前記空芯コイルを配置し、
該キャビティ内に該磁性体モールド樹脂を該キャビティ内に充填し、その充填中に該位置出しピンと該支持ピンを所定の位置まで移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項5】
前記磁性体モールド樹脂を前記キャビティ内に充填する際に、
前記位置出しピンと前記支持ピン以外の部分に該磁性体モールド樹脂を充填させた後に該位置出しピンを所定の位置まで移動させ、
該キャビティ内の該位置出しピンの初期位置の部分に該磁性体モールド樹脂を充填させた後に前記支持ピンを所定の位置まで移動させることを特徴とする請求項4に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項6】
前記磁性体モールド樹脂を前記キャビティ内に充填する際に、
その直前の加圧よりも低い加圧若しくは加圧のない状態で前記支持ピンを所定の位置まで移動させ、該支持ピンの移動後に再び加圧することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項7】
圧縮成形法、トランスファ成形法またはインジェクション成形法の何れかを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項1】
プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末と樹脂とを混練させた磁性体モールド樹脂で空芯コイルを封止してなるモールドコイルの製造方法において、
複数の金型から形成されるキャビティと、
該キャビティ内を水平方向に移動可能な位置出しピンとを有する成形金型を用い、
該位置出しピンによって該キャビティ内の所定の位置へ該空芯コイルを配置し、
該磁性体モールド樹脂を該キャビティ内に充填し、その充填中に該位置出しピンを所定の位置まで移動させることを特徴とするモールドコイルの製造方法。
【請求項2】
前記磁性体モールド樹脂を前記キャビティ内に充填する際に、
該磁性体モールド樹脂を該キャビティ内に垂直方向から充填することを特徴とする請求項1に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項3】
前記磁性体モールド樹脂が、
前記磁性体粉末が該磁性体モールド樹脂中に60Vol%以上充填されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項4】
前記成形金型において、
前記キャビティ内を水平方向もしくは垂直方向に移動可能な複数の支持ピンをさらに有する前記成形金型を用い、
前記位置出しピンと該支持ピンによって該キャビティ内の所定の位置へ前記空芯コイルを配置し、
該キャビティ内に該磁性体モールド樹脂を該キャビティ内に充填し、その充填中に該位置出しピンと該支持ピンを所定の位置まで移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項5】
前記磁性体モールド樹脂を前記キャビティ内に充填する際に、
前記位置出しピンと前記支持ピン以外の部分に該磁性体モールド樹脂を充填させた後に該位置出しピンを所定の位置まで移動させ、
該キャビティ内の該位置出しピンの初期位置の部分に該磁性体モールド樹脂を充填させた後に前記支持ピンを所定の位置まで移動させることを特徴とする請求項4に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項6】
前記磁性体モールド樹脂を前記キャビティ内に充填する際に、
その直前の加圧よりも低い加圧若しくは加圧のない状態で前記支持ピンを所定の位置まで移動させ、該支持ピンの移動後に再び加圧することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項7】
圧縮成形法、トランスファ成形法またはインジェクション成形法の何れかを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載のモールドコイルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−147271(P2010−147271A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323400(P2008−323400)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]