モールドモーター
【課題】ベアリングに電食が発生しにくく、騒音や振動の少ないモールドモーターを提供すること。
【解決手段】出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との導通が、弾性を有する導通板60によってとられているので、外力に対して切れたりしにくく、経時変化も少なく、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間の導通を遮断されにくくできる。したがって、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間に電位差が生じにくくできるため、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に電食を生じにくくでき、騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。
【解決手段】出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との導通が、弾性を有する導通板60によってとられているので、外力に対して切れたりしにくく、経時変化も少なく、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間の導通を遮断されにくくできる。したがって、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間に電位差が生じにくくできるため、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に電食を生じにくくでき、騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーローター型のモールドモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
インナーローター型のモールドモーターでは、ローターは、モールド樹脂によりモールド成形されて外郭が形成されたステーターの内径側に配置され、ローターの出力回転軸の出力側と反出力側とがベアリングで支持されて回転する。ベアリングは、ステーターの外郭の出力側と反出力側の両側に配置されたブラケットに形成されたベアリングハウスに収められる。
【0003】
ここで、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間に電位差が生じると、ベアリングに電流が流れて、ベアリングに電食が生じると、モーターの振動や騒音が発生する。この電食防止対策としては、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間を、モールドの外部である側面に貼り付けた導電性テープによって導通したモールドモーターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−20348号公報(4頁、段落[0019]、図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電性テープがモールドの外部に貼り付けられているため、モールドモーターの組み立て時、製品への組み込み時、輸送時、メンテナンス時、経時変化等で、導電性テープが剥がれたり、切れたりして、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間の導通が遮断される恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、ベアリングに電食が発生しにくく、騒音や振動の少ないモールドモーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、モールド樹脂によりモールド成形されて有底筒状の外郭が形成されたステーターと、前記ステーターの内径側に回転自在に配置されたローターと、前記ローターの出力回転軸の出力側と反出力側とを支持するベアリングと、前記ベアリングを収めるベアリングハウスが形成され、前記外郭の出力側と反出力側の両方に配置された導電性のブラケットと、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通する導電性の導通板とを備え、前記導通板は、板状の導通帯と該導通帯の両端に設けられる接合端部とを有し、前記導電帯は前記外郭に沿って配置され、前記接合端部の少なくとも一方が、前記ブラケットと前記外郭側面とに挟まれて、前記ブラケットと接合する接合部と、該接合部より先端に位置し、前記外郭端面に係止される係止部と、該係止部より先端に位置し、前記外郭端面から立ち上がるように設けられた先端部とを備えていることを特徴とするモールドモーターである。
【0008】
この構成によれば、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの導通が、導通板によってとられているので、外力に対して切れたりしにくく、経時変化も少なく、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間の導通が遮断されにくい。したがって、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間に電位差が生じにくいため、ベアリングに電食が生じにくく、騒音や振動の少ないモールドモーターが得られる。また、接合端部が外郭側面から外郭端面へ移動する際に、外郭の側面と端面との境目により早く達し、境目をより早く乗り越えることができ、組み立ての行い易いモールドモーターが得られる。さらに、外郭側面を傷つけにくいため、絶縁不良を起こすおそれがないモールドモーターが得られる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記外郭には、前記導通板が収容される溝部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモールドモーターである。
【0010】
この構成によれば、溝部に導通板が収容されることで、外郭の側面に導通板が盛り上がることがなくなり、モールドモーターの取り扱い時に導通板が邪魔になるおそれがない。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記ブラケットに、前記ベアリングを収めるベアリングハウスが形成され、前記接合端部の他方は、出力側または反出力側のうち、どちらか一方の前記ベアリングハウスに圧入されたリング状端部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモールドモーターである。
【0012】
この構成によれば、ベアリングハウスに圧入されたリング状端部によって、導通板の位置が安定して外れにくく、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間の導通がより遮断されにくい。したがって、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間に電位差がより生じにくいため、ベアリングに電食がより生じにくく、騒音や振動のより少ないモールドモーターが得られる。
また、リング状端部をベアリングハウスに圧入して位置を決めながら、他方の接合端部をブラケットと外郭側面とに挟み込むことができ、組み立ての行い易いモールドモーターが得られる。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記リング状端部から前記外郭側面までの導電帯の長さは、前記接合部から前記先端部までの長さよりも長いことを特徴とする請求項3に記載のモールドモーターである。
【0014】
この構成によれば、リング状端部を圧入していくとき、リング状端部から外郭側面までの部分と、前記外郭側面に沿って配置される部分とのなす角度を90°以上に開く必要がある。このとき、リング状端部には、外郭側面側への引っ張り力が働く。リング状端部から外郭側面までの導電帯の長さが長いと引っ張り力は小さくなり、導通板が塑性変形を起こす恐れがなくなる。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記外郭端面には、前記導電板の先端部を保護する突起部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のモールドモーターである。
【0016】
この構成によれば、導電板の先端部を保護する突起部が形成されているので、溝に収められた先端部の一部が突起部に保護されて、外れにくい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベアリングに電食が生じにくく、騒音や振動の少ない、モールドモーターが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るモールドモーターの概略斜視図。(a)は出力側から見た概略斜視図、(b)は反出力側から見た概略斜視図。
【図2】モールドモーターの概略分解斜視図。
【図3】モールドモーターの図1(a)におけるA−A概略断面図。
【図4】(a)は導通板の平面図、(b)は(a)におけるB−B断面図。
【図5】(a)は、出力側のブラケットに接合された接合端部付近を表す図、(b)は、接合端部の拡大斜視図。
【図6】(a)は接合端部が溝に収められる前の状態を示す図、(b)は、比較例の接合端部が溝に収められる前の状態を示す図。
【図7】変形例1における接合端部の拡大斜視図。
【図8】変形例2における接合端部の拡大斜視図。
【図9】(a)変形例2の接合端部が溝に収められる前の状態を示す図、(b)は、実施形態の接合端部が溝に収められる前の状態を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。
【0020】
図1は、実施形態に係るモールドモーター100の概略斜視図である。(a)は出力側から見た概略斜視図、(b)は反出力側から見た概略斜視図である。図2は、モールドモーター100の概略分解斜視図、図3はモールドモーター100の図1(a)におけるA−A概略断面図である。
図1、図2および図3において、モールドモーター100は、ステーターコア10と、モールド樹脂20と、ローター30と、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42と、出力側のブラケット51および反出力側のブラケット52と、導通板60とを備えている。
【0021】
ステーターコア10は、鋼板を積層して構成され、円環状のヨーク部と、ヨーク部から内径側に延びる複数のティース部11とを備えている。このステーターコア10にプレモールドを施すことによってインシュレーターを形成し、このインシュレーターを介してティース部11に巻線12が巻回されている。巻線12が巻回されたステーターコア10を、内周面を除いてモールド樹脂20でモールド成形して外郭を形成する。この外郭は、円筒状であり、また反出力側面には、金属製のブラケット52が一体に埋設されている。この反出力側のブラケット52は、ベアリング42が収められるベアリングハウス520が外郭から露出した状態となっている。
【0022】
ローター30は、出力回転軸31と複数の永久磁石32とを備えている。永久磁石32は、等間隔で、かつ、隣接同士がN、S交互に逆磁極となるようにして出力回転軸31の周りに配置され、出力回転軸31と一体化されている。永久磁石32は、樹脂材にフェライト磁性体を混入させて成形後、着磁してフェライトボンド磁石として形成することができる。ローター30は、ステーターコア10の内周より内側に、所定の空隙(ギャップ)をもって、対向して収められている。
なお、本発明のローターはこれらに限られず、適宜変更可能である。例えば、フェライト磁石の代わりに希土類磁石を用いても良い。また、ボンド磁石の代わりに焼結磁石を用いても良い。
【0023】
出力回転軸31は、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に通されて、回転可能に軸支されている。出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42は、例えば、ボールベアリングを用いることができ、実施形態では、転動体としてのボール400と内輪401と外輪402とを備えている。
【0024】
図1、図2および図3において、出力側のベアリング41は、出力側の金属製のブラケット51に形成された出力側のベアリングハウス510に収められている。出力側のブラケット51は、外郭の出力側端面に嵌合している。
【0025】
図1において、反出力側のベアリングハウス520には、導通板60の一端が圧入され、他端が出力側のブラケット51に接合されている。以下に詳しく導通板60について説明する。
図4(a)に導通板60の平面図を、図4(b)に導通板60の図4(a)におけるB−B断面図を示した。
【0026】
図4(a)において、導通板60は、導電性を有する金属板からなり、接合端部としてのリング状端部61と、リング状端部61のリング外周610の一部から延びる板状の導通帯62とを備えている。図1、図3および図4(b)に示すように、導通帯62は、途中で折り曲げられ、断面図において全体として略L字型の形状を有している。具体的には、外郭の反出力側端面と外郭の側面に沿うように折り曲げられている。外郭の反出力側端面と外郭の側面には、導通板60が収容される溝部22が設けられている。
【0027】
また、導通帯62のリング状端部61とは反対側の端部には接合端部63が設けられている。導通板60は、導通帯62と両端にリング状端部61と接合端部63とを有し、それぞれ導通帯62から同じ方向に直角に折り曲げられている。導通板60の厚みは、例えば、0.4mm程度とすることができる。なお、導電板60は、金属板に限られず、導電性を有する板状の部材であれば良い。
ここで、リング状端部61から外郭側面までの導電帯62の長さL1は、後述する接合端部63の接合部630から先端部631までの長さL2よりも長いのが好ましい。
【0028】
図1および図3において、反出力側のベアリングハウス520には、リング状端部61が圧入されている。
ベアリングハウス520は、例えばプレスによって有底円筒状に形成されている。ベアリングハウス520の内側にはベアリング42が収容され、外側には、リング状端部61が圧入される。ベアリングハウス520の底面と側面とをつなぐ角部521は、所定の曲率で形成されたR形状となっている。
一方、接合端部63は、外郭側面と出力側のブラケット51とに挟み込まれて、出力側のブラケット51に接合されている。
【0029】
図1、図2、図3および図4において、リング状端部61のリング内周611には、凸部64が等間隔に10か所に形成されている。そのうちの1か所の凸部64は、導通帯62が引き出された方向とは反対方向に配置されている。
【0030】
図5(a)に、出力側のブラケット51に接合された接合端部63付近を表す図を示した。図5(b)には、接合端部63の拡大斜視図を示した。図では、出力側のブラケット51を取り外した状態で示した。
図5(a)において、モールド樹脂20には、図5では図示しない出力側のブラケット51が取り付けられる側には、段差23が設けられ、段差23に出力側のブラケット51がはめ込まれる。
導通板60の導通帯62は、モールド樹脂20の外郭の側面21に形成された溝部22に収められ配置されている。溝部22は、段差23からモールド樹脂20の外郭端面24にかけて形成され、外郭端面24では、側面21に対し直行する方向に溝25が形成されている。ここで、段差23に形成された溝部22の底面のうち、モールド樹脂20の側面21と平行な面も側面21と呼ぶ。
【0031】
図5(b)において、接合端部63は、出力側のブラケット51と接合面で接合する接合部630と、接合部630より先端が外郭端面24に沿うように折り曲げられ、外郭端面24から立ち上がるように設けられた導通帯62とのなす先端角度θ1が90°より大きく、180°以下である先端部631とを備えている。また、接合部630と先端部631との間には、外郭端面24に係止される係止部632を備えている。
図5(a)において、接合端部63は、段差23からモールド樹脂20の外郭端面24にかけて形成された溝部22に収められている。また、接合端部63の接合部630の一部である係止部632および先端部631は、外郭端面24において、側面21に対し直交する方向に形成された溝25に収められている。
【0032】
モールド樹脂20の外郭端面24には、側面21から離れた側の溝25の両側の側らに先端部631を保護する突起部26が形成されている。突起部26は、溝25の片側に一つ形成されていてもよいし、側面21に近い側に形成されていてもよい。溝25の側らに突起部26が形成されているので、溝25に収められた接合端部63の先端部631が外郭端面から立ち上がるように形成されても、先端部631が保護される。すなわち、例えば作業者の指などが先端部631に近づいても、先端部631は突起部26により保護されるため、指と先端部631とが接触せず、先端部631が溝25から外れにくくできる。
ここで、突起部26の側面の一面と溝25の側面とは連続して形成されているのが好ましい。
【0033】
図6(a)に、接合端部63の一部が溝25に収められる前の状態を示す図を、(b)に、比較例の接合端部65の一部が溝25に収められる前の状態を示す図を示した。
以下に、比較例について説明する。
(比較例)
比較例は、実施形態と接合端部63の形状が異なる以外は、その他の構成要素等は実施形態と同様である。
図6(b)において、比較例の接合端部65は接合部650および係止部652のみを供え、実施形態における先端部631が形成されていない。
【0034】
図6(a)において、実施形態では、溝部22の側面21に沿う方向に対し、先端部631は傾いている。
一方、図6(b)において、比較例では、溝部22の側面21に沿う方向に対し、接合端部65はほぼ直角に当たっている。
【0035】
(変形例1)
図7に、変形例1における接合端部66の拡大斜視図を示した。変形例1は、実施形態と接合端部63の先端部の形状が異なる以外は、その他の構成要素等は実施形態と同様である。
図7において、接合端部66は、出力側のブラケット51と接合面で接合する接合部660と、接合部660より先端に位置し、R形状で折り曲げられ、外郭端面24から立ち上がるように設けられた導通帯62とのなす先端角度θ1がほぼ180°である先端部661とを備えている。また、接合部660と先端部661との間には、外郭端面24に係止される係止部662を備えている。
この変形例によれば、図6(b)の比較例と異なり、溝部22の側面21と先端部661は面で当接するため、導通板60の先端で、外郭を傷つけるおそれがない。
【0036】
このように構成されたモールドモーター100は、図示しない位置検出センサにより検出されるローター30の回転位置に応じて、電流を巻線12に流し、ステーター10に回転磁界を発生させることにより、ローター30を出力回転軸31と共に回転させることができる。
【0037】
以上に述べた実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との導通が、弾性を有する導通板60によってとられているので、外力に対して切れたりしにくく、経時変化も少なく、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間の導通を遮断されにくくできる。したがって、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間に電位差が生じにくくできるため、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に電食を生じにくくでき、騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。また、接合端部63が外郭の側面21から外郭の端面24へ移動する際に、側面21と端面24との境目により早く達し、境目をより早く乗り越えることができ、組み立ての行い易いモールドモーター100が得られる。さらに、外郭側面21を傷つけにくいため、絶縁不良を起こすおそれがないモールドモーター100が得られる。
【0038】
(2)溝部21に導通板60が収容されることで、外郭端面24と側面21に導通板60が盛り上がることがなくなり、モーターの取り扱い時に導通板60が邪魔になるおそれがない。
【0039】
(3)反出力側のベアリングハウス520に圧入されたリング状端部61によって、導通板60の位置が安定して外れにくく、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間の導通をより遮断されにくくできる。したがって、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間に電位差をより生じにくくでき、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に電食を生じにくくでき、騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。
また、リング状端部61を反出力側のベアリングハウス520に圧入して位置を決めながら、他方の接合端部63を出力側のブラケット51とモールド樹脂20の外郭の側面21とに挟み込むことができ、組み立ての行い易いモールドモーター100を得ることができる。
【0040】
(4)リング状端部61を圧入していくとき、リング状端部61から外郭の側面21までの部分と、外郭の側面21に沿って配置される部分とのなす角度θ(図4参照)を90°以上に開く必要がある。このとき、リング状端部61には、外郭の側面21側への引っ張り力が働く。リング状端部61から外郭の側面21までの導電帯60の長さL1が長いと、リング状端部61にかかる引っ張り力は小さくなる。また、接合部630から先端部631までの長さL2が短いほど、圧入時に開く角度θが小さくて済むため、塑性変形を起こす恐れがなくなる。
【0041】
(5)接合端部63をモールド樹脂20の外郭の側面21に沿ってずらしながら溝25に収める際に、先端部631の導通帯62とのなす先端角度が90°より大きく、180°以下であるので、先端部631に加わる力を外郭の側面21に沿う方向に逃がすことができ、接合端部63を外郭の側面21に沿って動かしやすくできる。したがって、先端部631によってモールド樹脂20を傷つけにくくでき、接合端部63の一部を溝25に収め易くでき、組み立てのより行い易いモールドモーター100を得ることができる。
【0042】
(6)溝25の側らに突起部26が形成されているので、溝25に収められた接合端部63の先端部631が外郭端面から立ち上がるように形成されても、先端部631が保護される。すなわち、例えば作業者の指などが先端部631に近づいても、指と先端部631との接触が突起部26により防止されるため、先端部631が溝25から外れにくくできる。したがって、組み立てのより行い易いモールドモーター100を得ることができる。また、突起部26が溝25の両側に形成されているので、溝25に収められた接合端部63の先端部631が両側の突起部26で保護されて、溝25からより外れにくくできる。
【0043】
(7)また、突起部26が、外郭の側面21から離れた溝25の端に形成されているので、必要に応じて、外郭の側面21と溝25との境界付近に力を加えて接合端部63の一部を溝25から外すことができる。したがって、組み立て直しの容易なモールドモーター100を得ることができる。
【0044】
(変形例2)
図8に、変形例2における接合端部67の拡大斜視図を示した。変形例2は、実施形態と接合端部67の先端部の形状が異なる以外は、その構成要素等は実施形態と同様である。
図8において、接合端部67は、接合部670および係止部672と先端部671との間に、導通帯62とのなす中間角度θ2が90°より大きく、180°より小さい中間部673を備えている。
【0045】
図9(a)に、変形例2の接合端部67の一部が溝25に収められる前の状態を示す図を、図9(b)に、実施形態の接合端部63の一部が溝25に収められる前の状態を示す図を示した。
図9(a)において、変形例2では、モールド樹脂には、溝25の内周側に突起部261が1つ形成されている。また、導通帯62とのなす中間角度θ2が90°より大きく、180°より小さい中間部673を備えているため、図9(b)の実施形態の先端部631と比較して、溝部22(側面21)と溝25との境界に早く達し、導通板60の取り付けが容易になる。また、中間角度θ2を調整してθ1をほぼ180°にすれば、溝部22の側面21と先端部671を面で当接することができるため、モールド樹脂20の外郭の側面21を傷つけるおそれをさらに低減できる。
【0046】
以上に述べた変形例2によれば、以下の効果が得られる。
(7)先端部671と接合部670との間に、中間角度が、90°より大きく、180°より小さい中間部672を設けることにより、接合端部67をモールド樹脂20の外郭の側面21から、外郭の側面21に対し直行する方向に形成された外郭端面24上の溝25に移動する際に、接合端部67が外郭の側面21と溝25との境目により早く達し、境目をより早く乗り越えることができる。したがって、接合端部67によってモールド樹脂20の外郭の側面21をより傷つけにくくでき、接合端部67を溝25により収め易くでき、組み立てのより行い易いモールドモーター100を得ることができる。
【0047】
なお、実施形態でのモールドモーター100は、例えば、家庭用ルームエアコンで送風ファンを駆動するモーターとして使用することができる。室内機での使用では出力回転軸31にクロスフローファンが取り付けられ、室外機での使用では出力回転軸31にプロペラファンが取り付けられる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0049】
例えば、導通板60の両端が接合端部63を有し、それぞれが出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52とにモールド樹脂20に挟み込まれて接合されていてもよい。
【0050】
また、リング状端部61を圧入するのは、出力側のベアリングハウス510であってもよい。
【0051】
また、出力側のベアリング41と反出力側のベアリング42とは、異なる大きさ、形状であっても導電性を有する限り前述の効果を達成できる。
【0052】
さらに、モールド樹脂20のもっとも外側の側面21の溝部22(段差23に形成された溝部22以外の溝部22)は形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…ステーター、11…ティース、12…巻線、20…モールド樹脂、21…側面、22…溝部、25…溝、26,261…突起部、30…ローター、31…出力回転軸、32…永久磁石、41…出力側のベアリング、42…反出力側のベアリング、51…出力側のブラケット、52…反出力側のブラケット、60…導通板、61…リング状端部、62…導通帯、63,66,67…接合端部、64…凸部、100…モールドモーター、401…内輪、402…外輪、510…出力側のベアリングハウス、520…反出力側のベアリングハウス、521…圧入側の外周、610…リング外周、611…リング内周、630,660,670…接合部、631,661,671…先端部、632,662,672…掛止部、640…基部、673…中間部、θ1…先端角度、θ2…中間角度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーローター型のモールドモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
インナーローター型のモールドモーターでは、ローターは、モールド樹脂によりモールド成形されて外郭が形成されたステーターの内径側に配置され、ローターの出力回転軸の出力側と反出力側とがベアリングで支持されて回転する。ベアリングは、ステーターの外郭の出力側と反出力側の両側に配置されたブラケットに形成されたベアリングハウスに収められる。
【0003】
ここで、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間に電位差が生じると、ベアリングに電流が流れて、ベアリングに電食が生じると、モーターの振動や騒音が発生する。この電食防止対策としては、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間を、モールドの外部である側面に貼り付けた導電性テープによって導通したモールドモーターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−20348号公報(4頁、段落[0019]、図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電性テープがモールドの外部に貼り付けられているため、モールドモーターの組み立て時、製品への組み込み時、輸送時、メンテナンス時、経時変化等で、導電性テープが剥がれたり、切れたりして、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間の導通が遮断される恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、ベアリングに電食が発生しにくく、騒音や振動の少ないモールドモーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、モールド樹脂によりモールド成形されて有底筒状の外郭が形成されたステーターと、前記ステーターの内径側に回転自在に配置されたローターと、前記ローターの出力回転軸の出力側と反出力側とを支持するベアリングと、前記ベアリングを収めるベアリングハウスが形成され、前記外郭の出力側と反出力側の両方に配置された導電性のブラケットと、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通する導電性の導通板とを備え、前記導通板は、板状の導通帯と該導通帯の両端に設けられる接合端部とを有し、前記導電帯は前記外郭に沿って配置され、前記接合端部の少なくとも一方が、前記ブラケットと前記外郭側面とに挟まれて、前記ブラケットと接合する接合部と、該接合部より先端に位置し、前記外郭端面に係止される係止部と、該係止部より先端に位置し、前記外郭端面から立ち上がるように設けられた先端部とを備えていることを特徴とするモールドモーターである。
【0008】
この構成によれば、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの導通が、導通板によってとられているので、外力に対して切れたりしにくく、経時変化も少なく、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間の導通が遮断されにくい。したがって、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間に電位差が生じにくいため、ベアリングに電食が生じにくく、騒音や振動の少ないモールドモーターが得られる。また、接合端部が外郭側面から外郭端面へ移動する際に、外郭の側面と端面との境目により早く達し、境目をより早く乗り越えることができ、組み立ての行い易いモールドモーターが得られる。さらに、外郭側面を傷つけにくいため、絶縁不良を起こすおそれがないモールドモーターが得られる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記外郭には、前記導通板が収容される溝部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモールドモーターである。
【0010】
この構成によれば、溝部に導通板が収容されることで、外郭の側面に導通板が盛り上がることがなくなり、モールドモーターの取り扱い時に導通板が邪魔になるおそれがない。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記ブラケットに、前記ベアリングを収めるベアリングハウスが形成され、前記接合端部の他方は、出力側または反出力側のうち、どちらか一方の前記ベアリングハウスに圧入されたリング状端部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモールドモーターである。
【0012】
この構成によれば、ベアリングハウスに圧入されたリング状端部によって、導通板の位置が安定して外れにくく、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間の導通がより遮断されにくい。したがって、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間に電位差がより生じにくいため、ベアリングに電食がより生じにくく、騒音や振動のより少ないモールドモーターが得られる。
また、リング状端部をベアリングハウスに圧入して位置を決めながら、他方の接合端部をブラケットと外郭側面とに挟み込むことができ、組み立ての行い易いモールドモーターが得られる。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記リング状端部から前記外郭側面までの導電帯の長さは、前記接合部から前記先端部までの長さよりも長いことを特徴とする請求項3に記載のモールドモーターである。
【0014】
この構成によれば、リング状端部を圧入していくとき、リング状端部から外郭側面までの部分と、前記外郭側面に沿って配置される部分とのなす角度を90°以上に開く必要がある。このとき、リング状端部には、外郭側面側への引っ張り力が働く。リング状端部から外郭側面までの導電帯の長さが長いと引っ張り力は小さくなり、導通板が塑性変形を起こす恐れがなくなる。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記外郭端面には、前記導電板の先端部を保護する突起部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のモールドモーターである。
【0016】
この構成によれば、導電板の先端部を保護する突起部が形成されているので、溝に収められた先端部の一部が突起部に保護されて、外れにくい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベアリングに電食が生じにくく、騒音や振動の少ない、モールドモーターが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るモールドモーターの概略斜視図。(a)は出力側から見た概略斜視図、(b)は反出力側から見た概略斜視図。
【図2】モールドモーターの概略分解斜視図。
【図3】モールドモーターの図1(a)におけるA−A概略断面図。
【図4】(a)は導通板の平面図、(b)は(a)におけるB−B断面図。
【図5】(a)は、出力側のブラケットに接合された接合端部付近を表す図、(b)は、接合端部の拡大斜視図。
【図6】(a)は接合端部が溝に収められる前の状態を示す図、(b)は、比較例の接合端部が溝に収められる前の状態を示す図。
【図7】変形例1における接合端部の拡大斜視図。
【図8】変形例2における接合端部の拡大斜視図。
【図9】(a)変形例2の接合端部が溝に収められる前の状態を示す図、(b)は、実施形態の接合端部が溝に収められる前の状態を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。
【0020】
図1は、実施形態に係るモールドモーター100の概略斜視図である。(a)は出力側から見た概略斜視図、(b)は反出力側から見た概略斜視図である。図2は、モールドモーター100の概略分解斜視図、図3はモールドモーター100の図1(a)におけるA−A概略断面図である。
図1、図2および図3において、モールドモーター100は、ステーターコア10と、モールド樹脂20と、ローター30と、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42と、出力側のブラケット51および反出力側のブラケット52と、導通板60とを備えている。
【0021】
ステーターコア10は、鋼板を積層して構成され、円環状のヨーク部と、ヨーク部から内径側に延びる複数のティース部11とを備えている。このステーターコア10にプレモールドを施すことによってインシュレーターを形成し、このインシュレーターを介してティース部11に巻線12が巻回されている。巻線12が巻回されたステーターコア10を、内周面を除いてモールド樹脂20でモールド成形して外郭を形成する。この外郭は、円筒状であり、また反出力側面には、金属製のブラケット52が一体に埋設されている。この反出力側のブラケット52は、ベアリング42が収められるベアリングハウス520が外郭から露出した状態となっている。
【0022】
ローター30は、出力回転軸31と複数の永久磁石32とを備えている。永久磁石32は、等間隔で、かつ、隣接同士がN、S交互に逆磁極となるようにして出力回転軸31の周りに配置され、出力回転軸31と一体化されている。永久磁石32は、樹脂材にフェライト磁性体を混入させて成形後、着磁してフェライトボンド磁石として形成することができる。ローター30は、ステーターコア10の内周より内側に、所定の空隙(ギャップ)をもって、対向して収められている。
なお、本発明のローターはこれらに限られず、適宜変更可能である。例えば、フェライト磁石の代わりに希土類磁石を用いても良い。また、ボンド磁石の代わりに焼結磁石を用いても良い。
【0023】
出力回転軸31は、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に通されて、回転可能に軸支されている。出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42は、例えば、ボールベアリングを用いることができ、実施形態では、転動体としてのボール400と内輪401と外輪402とを備えている。
【0024】
図1、図2および図3において、出力側のベアリング41は、出力側の金属製のブラケット51に形成された出力側のベアリングハウス510に収められている。出力側のブラケット51は、外郭の出力側端面に嵌合している。
【0025】
図1において、反出力側のベアリングハウス520には、導通板60の一端が圧入され、他端が出力側のブラケット51に接合されている。以下に詳しく導通板60について説明する。
図4(a)に導通板60の平面図を、図4(b)に導通板60の図4(a)におけるB−B断面図を示した。
【0026】
図4(a)において、導通板60は、導電性を有する金属板からなり、接合端部としてのリング状端部61と、リング状端部61のリング外周610の一部から延びる板状の導通帯62とを備えている。図1、図3および図4(b)に示すように、導通帯62は、途中で折り曲げられ、断面図において全体として略L字型の形状を有している。具体的には、外郭の反出力側端面と外郭の側面に沿うように折り曲げられている。外郭の反出力側端面と外郭の側面には、導通板60が収容される溝部22が設けられている。
【0027】
また、導通帯62のリング状端部61とは反対側の端部には接合端部63が設けられている。導通板60は、導通帯62と両端にリング状端部61と接合端部63とを有し、それぞれ導通帯62から同じ方向に直角に折り曲げられている。導通板60の厚みは、例えば、0.4mm程度とすることができる。なお、導電板60は、金属板に限られず、導電性を有する板状の部材であれば良い。
ここで、リング状端部61から外郭側面までの導電帯62の長さL1は、後述する接合端部63の接合部630から先端部631までの長さL2よりも長いのが好ましい。
【0028】
図1および図3において、反出力側のベアリングハウス520には、リング状端部61が圧入されている。
ベアリングハウス520は、例えばプレスによって有底円筒状に形成されている。ベアリングハウス520の内側にはベアリング42が収容され、外側には、リング状端部61が圧入される。ベアリングハウス520の底面と側面とをつなぐ角部521は、所定の曲率で形成されたR形状となっている。
一方、接合端部63は、外郭側面と出力側のブラケット51とに挟み込まれて、出力側のブラケット51に接合されている。
【0029】
図1、図2、図3および図4において、リング状端部61のリング内周611には、凸部64が等間隔に10か所に形成されている。そのうちの1か所の凸部64は、導通帯62が引き出された方向とは反対方向に配置されている。
【0030】
図5(a)に、出力側のブラケット51に接合された接合端部63付近を表す図を示した。図5(b)には、接合端部63の拡大斜視図を示した。図では、出力側のブラケット51を取り外した状態で示した。
図5(a)において、モールド樹脂20には、図5では図示しない出力側のブラケット51が取り付けられる側には、段差23が設けられ、段差23に出力側のブラケット51がはめ込まれる。
導通板60の導通帯62は、モールド樹脂20の外郭の側面21に形成された溝部22に収められ配置されている。溝部22は、段差23からモールド樹脂20の外郭端面24にかけて形成され、外郭端面24では、側面21に対し直行する方向に溝25が形成されている。ここで、段差23に形成された溝部22の底面のうち、モールド樹脂20の側面21と平行な面も側面21と呼ぶ。
【0031】
図5(b)において、接合端部63は、出力側のブラケット51と接合面で接合する接合部630と、接合部630より先端が外郭端面24に沿うように折り曲げられ、外郭端面24から立ち上がるように設けられた導通帯62とのなす先端角度θ1が90°より大きく、180°以下である先端部631とを備えている。また、接合部630と先端部631との間には、外郭端面24に係止される係止部632を備えている。
図5(a)において、接合端部63は、段差23からモールド樹脂20の外郭端面24にかけて形成された溝部22に収められている。また、接合端部63の接合部630の一部である係止部632および先端部631は、外郭端面24において、側面21に対し直交する方向に形成された溝25に収められている。
【0032】
モールド樹脂20の外郭端面24には、側面21から離れた側の溝25の両側の側らに先端部631を保護する突起部26が形成されている。突起部26は、溝25の片側に一つ形成されていてもよいし、側面21に近い側に形成されていてもよい。溝25の側らに突起部26が形成されているので、溝25に収められた接合端部63の先端部631が外郭端面から立ち上がるように形成されても、先端部631が保護される。すなわち、例えば作業者の指などが先端部631に近づいても、先端部631は突起部26により保護されるため、指と先端部631とが接触せず、先端部631が溝25から外れにくくできる。
ここで、突起部26の側面の一面と溝25の側面とは連続して形成されているのが好ましい。
【0033】
図6(a)に、接合端部63の一部が溝25に収められる前の状態を示す図を、(b)に、比較例の接合端部65の一部が溝25に収められる前の状態を示す図を示した。
以下に、比較例について説明する。
(比較例)
比較例は、実施形態と接合端部63の形状が異なる以外は、その他の構成要素等は実施形態と同様である。
図6(b)において、比較例の接合端部65は接合部650および係止部652のみを供え、実施形態における先端部631が形成されていない。
【0034】
図6(a)において、実施形態では、溝部22の側面21に沿う方向に対し、先端部631は傾いている。
一方、図6(b)において、比較例では、溝部22の側面21に沿う方向に対し、接合端部65はほぼ直角に当たっている。
【0035】
(変形例1)
図7に、変形例1における接合端部66の拡大斜視図を示した。変形例1は、実施形態と接合端部63の先端部の形状が異なる以外は、その他の構成要素等は実施形態と同様である。
図7において、接合端部66は、出力側のブラケット51と接合面で接合する接合部660と、接合部660より先端に位置し、R形状で折り曲げられ、外郭端面24から立ち上がるように設けられた導通帯62とのなす先端角度θ1がほぼ180°である先端部661とを備えている。また、接合部660と先端部661との間には、外郭端面24に係止される係止部662を備えている。
この変形例によれば、図6(b)の比較例と異なり、溝部22の側面21と先端部661は面で当接するため、導通板60の先端で、外郭を傷つけるおそれがない。
【0036】
このように構成されたモールドモーター100は、図示しない位置検出センサにより検出されるローター30の回転位置に応じて、電流を巻線12に流し、ステーター10に回転磁界を発生させることにより、ローター30を出力回転軸31と共に回転させることができる。
【0037】
以上に述べた実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との導通が、弾性を有する導通板60によってとられているので、外力に対して切れたりしにくく、経時変化も少なく、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間の導通を遮断されにくくできる。したがって、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間に電位差が生じにくくできるため、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に電食を生じにくくでき、騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。また、接合端部63が外郭の側面21から外郭の端面24へ移動する際に、側面21と端面24との境目により早く達し、境目をより早く乗り越えることができ、組み立ての行い易いモールドモーター100が得られる。さらに、外郭側面21を傷つけにくいため、絶縁不良を起こすおそれがないモールドモーター100が得られる。
【0038】
(2)溝部21に導通板60が収容されることで、外郭端面24と側面21に導通板60が盛り上がることがなくなり、モーターの取り扱い時に導通板60が邪魔になるおそれがない。
【0039】
(3)反出力側のベアリングハウス520に圧入されたリング状端部61によって、導通板60の位置が安定して外れにくく、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間の導通をより遮断されにくくできる。したがって、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間に電位差をより生じにくくでき、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に電食を生じにくくでき、騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。
また、リング状端部61を反出力側のベアリングハウス520に圧入して位置を決めながら、他方の接合端部63を出力側のブラケット51とモールド樹脂20の外郭の側面21とに挟み込むことができ、組み立ての行い易いモールドモーター100を得ることができる。
【0040】
(4)リング状端部61を圧入していくとき、リング状端部61から外郭の側面21までの部分と、外郭の側面21に沿って配置される部分とのなす角度θ(図4参照)を90°以上に開く必要がある。このとき、リング状端部61には、外郭の側面21側への引っ張り力が働く。リング状端部61から外郭の側面21までの導電帯60の長さL1が長いと、リング状端部61にかかる引っ張り力は小さくなる。また、接合部630から先端部631までの長さL2が短いほど、圧入時に開く角度θが小さくて済むため、塑性変形を起こす恐れがなくなる。
【0041】
(5)接合端部63をモールド樹脂20の外郭の側面21に沿ってずらしながら溝25に収める際に、先端部631の導通帯62とのなす先端角度が90°より大きく、180°以下であるので、先端部631に加わる力を外郭の側面21に沿う方向に逃がすことができ、接合端部63を外郭の側面21に沿って動かしやすくできる。したがって、先端部631によってモールド樹脂20を傷つけにくくでき、接合端部63の一部を溝25に収め易くでき、組み立てのより行い易いモールドモーター100を得ることができる。
【0042】
(6)溝25の側らに突起部26が形成されているので、溝25に収められた接合端部63の先端部631が外郭端面から立ち上がるように形成されても、先端部631が保護される。すなわち、例えば作業者の指などが先端部631に近づいても、指と先端部631との接触が突起部26により防止されるため、先端部631が溝25から外れにくくできる。したがって、組み立てのより行い易いモールドモーター100を得ることができる。また、突起部26が溝25の両側に形成されているので、溝25に収められた接合端部63の先端部631が両側の突起部26で保護されて、溝25からより外れにくくできる。
【0043】
(7)また、突起部26が、外郭の側面21から離れた溝25の端に形成されているので、必要に応じて、外郭の側面21と溝25との境界付近に力を加えて接合端部63の一部を溝25から外すことができる。したがって、組み立て直しの容易なモールドモーター100を得ることができる。
【0044】
(変形例2)
図8に、変形例2における接合端部67の拡大斜視図を示した。変形例2は、実施形態と接合端部67の先端部の形状が異なる以外は、その構成要素等は実施形態と同様である。
図8において、接合端部67は、接合部670および係止部672と先端部671との間に、導通帯62とのなす中間角度θ2が90°より大きく、180°より小さい中間部673を備えている。
【0045】
図9(a)に、変形例2の接合端部67の一部が溝25に収められる前の状態を示す図を、図9(b)に、実施形態の接合端部63の一部が溝25に収められる前の状態を示す図を示した。
図9(a)において、変形例2では、モールド樹脂には、溝25の内周側に突起部261が1つ形成されている。また、導通帯62とのなす中間角度θ2が90°より大きく、180°より小さい中間部673を備えているため、図9(b)の実施形態の先端部631と比較して、溝部22(側面21)と溝25との境界に早く達し、導通板60の取り付けが容易になる。また、中間角度θ2を調整してθ1をほぼ180°にすれば、溝部22の側面21と先端部671を面で当接することができるため、モールド樹脂20の外郭の側面21を傷つけるおそれをさらに低減できる。
【0046】
以上に述べた変形例2によれば、以下の効果が得られる。
(7)先端部671と接合部670との間に、中間角度が、90°より大きく、180°より小さい中間部672を設けることにより、接合端部67をモールド樹脂20の外郭の側面21から、外郭の側面21に対し直行する方向に形成された外郭端面24上の溝25に移動する際に、接合端部67が外郭の側面21と溝25との境目により早く達し、境目をより早く乗り越えることができる。したがって、接合端部67によってモールド樹脂20の外郭の側面21をより傷つけにくくでき、接合端部67を溝25により収め易くでき、組み立てのより行い易いモールドモーター100を得ることができる。
【0047】
なお、実施形態でのモールドモーター100は、例えば、家庭用ルームエアコンで送風ファンを駆動するモーターとして使用することができる。室内機での使用では出力回転軸31にクロスフローファンが取り付けられ、室外機での使用では出力回転軸31にプロペラファンが取り付けられる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0049】
例えば、導通板60の両端が接合端部63を有し、それぞれが出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52とにモールド樹脂20に挟み込まれて接合されていてもよい。
【0050】
また、リング状端部61を圧入するのは、出力側のベアリングハウス510であってもよい。
【0051】
また、出力側のベアリング41と反出力側のベアリング42とは、異なる大きさ、形状であっても導電性を有する限り前述の効果を達成できる。
【0052】
さらに、モールド樹脂20のもっとも外側の側面21の溝部22(段差23に形成された溝部22以外の溝部22)は形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…ステーター、11…ティース、12…巻線、20…モールド樹脂、21…側面、22…溝部、25…溝、26,261…突起部、30…ローター、31…出力回転軸、32…永久磁石、41…出力側のベアリング、42…反出力側のベアリング、51…出力側のブラケット、52…反出力側のブラケット、60…導通板、61…リング状端部、62…導通帯、63,66,67…接合端部、64…凸部、100…モールドモーター、401…内輪、402…外輪、510…出力側のベアリングハウス、520…反出力側のベアリングハウス、521…圧入側の外周、610…リング外周、611…リング内周、630,660,670…接合部、631,661,671…先端部、632,662,672…掛止部、640…基部、673…中間部、θ1…先端角度、θ2…中間角度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド樹脂によりモールド成形されて有底筒状の外郭が形成されたステーターと、
前記ステーターの内径側に回転自在に配置されたローターと、
前記ローターの出力回転軸の出力側と反出力側とを支持するベアリングと、
前記ベアリングを収めるベアリングハウスが形成され、前記外郭の出力側と反出力側の両方に配置された導電性のブラケットと、
出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通する導電性の導通板とを備え、
前記導通板は、板状の導通帯と該導通帯の両端に設けられる接合端部とを有し、前記導電帯は前記外郭に沿って配置され、前記接合端部の少なくとも一方が、前記ブラケットと前記外郭側面とに挟まれて、前記ブラケットと接合する接合部と、該接合部より先端に位置し、前記外郭端面に係止される係止部と、該係止部より先端に位置し、前記外郭端面から立ち上がるように設けられた先端部とを備えている
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項2】
請求項1に記載のモールドモーターにおいて、
前記外郭には、前記導通板が収容される溝部が設けられている
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモールドモーターにおいて、
前記ブラケットに、前記ベアリングを収めるベアリングハウスが形成され、
前記接合端部の他方は、出力側または反出力側のうち、どちらか一方の前記ベアリングハウスに圧入されたリング状端部である
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項4】
請求項3に記載のモールドモーターにおいて、
前記リング状端部から前記外郭側面までの導電帯の長さは、前記接合部から前記先端部までの長さよりも長い
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のモールドモーターにおいて、
前記外郭端面には、前記導電板の先端部を保護する突起部が形成されている
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項1】
モールド樹脂によりモールド成形されて有底筒状の外郭が形成されたステーターと、
前記ステーターの内径側に回転自在に配置されたローターと、
前記ローターの出力回転軸の出力側と反出力側とを支持するベアリングと、
前記ベアリングを収めるベアリングハウスが形成され、前記外郭の出力側と反出力側の両方に配置された導電性のブラケットと、
出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通する導電性の導通板とを備え、
前記導通板は、板状の導通帯と該導通帯の両端に設けられる接合端部とを有し、前記導電帯は前記外郭に沿って配置され、前記接合端部の少なくとも一方が、前記ブラケットと前記外郭側面とに挟まれて、前記ブラケットと接合する接合部と、該接合部より先端に位置し、前記外郭端面に係止される係止部と、該係止部より先端に位置し、前記外郭端面から立ち上がるように設けられた先端部とを備えている
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項2】
請求項1に記載のモールドモーターにおいて、
前記外郭には、前記導通板が収容される溝部が設けられている
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモールドモーターにおいて、
前記ブラケットに、前記ベアリングを収めるベアリングハウスが形成され、
前記接合端部の他方は、出力側または反出力側のうち、どちらか一方の前記ベアリングハウスに圧入されたリング状端部である
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項4】
請求項3に記載のモールドモーターにおいて、
前記リング状端部から前記外郭側面までの導電帯の長さは、前記接合部から前記先端部までの長さよりも長い
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のモールドモーターにおいて、
前記外郭端面には、前記導電板の先端部を保護する突起部が形成されている
ことを特徴とするモールドモーター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−210065(P2012−210065A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73774(P2011−73774)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】
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