説明

モールドモータ

【課題】 従来、リードタイプのパワーICでは、素子が大きいものであったため、モータの薄型化において不利であった。また、電子部品をモールド樹脂で覆う際、素子の大きさが大きいものであると、樹脂圧により電子部品の位置がずれたり、リード端子が破損したりする問題があった。
【解決手段】 電子部品を配置した回路基板5を樹脂で覆ったモールドモータ1において、パワーIC11aを面実装型のものとすることで、モータフレームの軸方向厚さを薄くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子及び回路基板をモールド樹脂で覆って、モータフレームを形成したモールドモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータの固定子や回路基板をモールド樹脂で覆って、モータフレームと一体に形成することは従来から知られている。そして、モータを駆動するための電子部品としてパワーICを用いて、このパワーICをモールド樹脂で覆うことが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、ブラシレスモータの回転がロックした際の過電流を検知してモータを保護したり、巻線の発熱温度を検知してモータを保護したりするためのヒューズを、モールド樹脂で覆うことは従来から知られている(特許文献2参照)。
【0004】
金属製フレームでモータ部品を覆うモータでは、モータに水滴がかかることでモータフレームの隙間から水滴が浸入して電子部品に影響を与えたり、電気的な絶縁性を考慮して絶縁距離を広くする必要があるが、上記モールドモータであれば、電子部品が樹脂で一体に覆われているため防水性に優れ、また絶縁性の樹脂で覆われているため絶縁性にも優れたモータを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3652455号
【特許文献2】特許3697589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のパワーICは、スイッチング素子や駆動用IC、タイミング制御ICなど各種制御用の回路を一体に備えたものであるため素子の大きさが大きいものであった。しかし、上記特許文献に記載のモールドモータのフレームの厚さは、電子部品の大きさに比べて遥かに厚いため、電子部品の大きさはあまり考慮する必要はなかった。
【0007】
しかし、モータの小型化やモールド樹脂の材料使用料の低減に対する要求に応えるために、上記特許文献の構造よりも小型化、特に軸方向長さを小さくしたモータが各種工夫により開発されている。しかし、モータを小型化することで、上記パワーICのような電子部品の大きさを無視することができず、上記モールド樹脂にて覆ってモータフレームを形成すると、素子の大きさの分、モータフレームに厚みが増すことになる。このような状況において、より薄型のモータが望まれており、上記素子の大きさが問題となっていた。
【0008】
特許文献1の構成のように、パワーICを回路基板の固定子側の面に配置することで、回路基板からモータフレームの表面までの厚さを薄くすることができるが、実際には、固定子巻線との絶縁距離の確保や、固定子巻線からの発熱に対して距離を確保する必要があり、モータ全体の厚さとしては効果的に薄くはならなかった。
【0009】
さらに、電子部品を回路基板のモータフレーム表面側の面に配置して、モータフレーム表面側と回路基板の間の厚さを薄くすると、外部からの衝撃に対しても考慮する必要がある。そのため、特許文献1のようにパワーIC以外の電子部品は、回路基板の固定子側の面に配置するという方法を取っていたが、その方法では回路基板に実装する際に、両面に対して電子部品を配置し半田付けする工程が必要となっていたため、全ての電子部品を片面で半田付けする工程の方が望ましい。
【0010】
また、樹脂成型する際、樹脂の流入速度が速いと大きい素子では固定が弱いと素子が流されて位置がずれてしまう問題がある。また、従来の電子部品ではリード端子が浮いた形で設けられているため、樹脂圧力によりリード端子が曲がったり、折れたりする可能性がある。
【0011】
本発明は、上記問題を鑑みて、より薄型のモールドモータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、鉄心に設けられたスロットに絶縁部材を施してコイルを巻装して形成した固定子と、モータを制御するための電子部品を備え、前記絶縁部材に設けられた固定部にて固定した回路基板と、を備えたモータにおいて、前記回路基板に搭載する電子部品が面実装型の電子部品であり、前記固定子と回路基板とをモールド樹脂にて覆い、モータフレームを形成したことを特徴とするモールドモータである。
【0013】
請求項2の発明は、前記面実装部品は、回路基板の固定子側の面に配置したことを特徴とする請求項1記載のモールドモータである。
【0014】
請求項3の発明は、前記面実装部品は、回路基板の反固定子側の面に配置したことを特徴とする請求項1記載のモールドモータである。
【0015】
請求項4の発明は、前記面実装部品は、モータの駆動電流を制御するパワーICであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のモールドモータである。
【0016】
請求項5の発明は、前記面実装部品は、過電流保護用のヒューズであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のモールドモータである。
【0017】
請求項6の発明は、前記面実装のパワーIC及び前記面実装のヒューズを同時に搭載したことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のモールドモータである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のモールドモータであると、面実装型の電子部品としたことで、電子部品の大きさが小さくなったため、より薄型のモータを提供することができる。また、回路基板の固定子側の面に電子部品を配置する構成においても、従来よりも薄型のモータを提供することができる。さらに、モールド樹脂の使用量を減らすことができるため、安価なモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施例のモールドモータの断面図である。
【図2】(a)表面実装用パワーICの概略図である。(b)従来のパワーICの概略図である。
【図3】本発明の第2の実施例のモールドモータの断面図である。
【図4】(a)表面実装用ヒューズの概略図である。(b)従来のヒューズの概略図である。
【図5】従来のモールドモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1より、本発明のモータ1はブラシレスモータであり、鋼板を積層して形成した鉄心2に絶縁部材3を施して巻線4を巻装して形成した固定子と、駆動素子を備えた回路基板5をモールド樹脂で一体にして円筒状のモータフレーム6を形成している。この円筒状のモータフレーム6の内側には、マグネット樹脂よりなる回転子7が配される。回転子7には回転軸8が取り付けられ、この回転軸8の両端には軸受9が取り付けられている。
【0021】
回路基板5は絶縁部材3に設けられたピン13によって固定され、固定子鉄心2と回路基板5は軸線方向に並ぶ位置に配置される。巻線4の巻線端末はピン13によって絡めて半田付けで固定され、回路基板5に電気的に接続される。
【0022】
軸受9は円環状の軸受ブラケット10に収納され、軸受ブラケット10はモータフレーム6に固定される。この両側に設けられた軸受ブラケット10のうち、一方の軸受ブラケット10aはモータフレーム6に埋め込まれ、もう一方の軸受ブラケット10bは、軸受ブラケットの端部がモータフレーム6に嵌合される。軸受ブラケット10aの端部と軸受ブラケット10bの湾曲部分とを、回転子7のくびれ部に収めるように配置することで、軸受ブラケット10がモータの中心部にできるだけ収められるため、モータ全体の軸方向長さを短くすることができる。
【0023】
(実施例1)
本発明のモータは、パワーICに表面実装型のものを用いている。図2で示すように、従来のリードタイプのパワーIC11bは4mm程度の厚さであるが、表面実装型のパワーIC11aでは1mm程度の厚さのものである。そのため、図5の従来のモールドモータと比べて、本願発明のモールドモータは、パワーICの厚さの分だけモータフレーム6の厚さを薄くすることができる。さらに、樹脂成形の際に樹脂と当たる面積が狭くなるため、パワーICが流されて位置ずれを起こすことが無い。さらに、表面実装型のパワーIC11aの方がリード端子12aの浮きが非常に小さいため、樹脂圧による端子の破損が少なくなる。
【0024】
さらに、表面実装型のパワーIC11aを回路基板5の固定子側の面に配置することで、回路基板5とモータフレーム6の表面の距離を薄くすることができ、さらに、固定子巻線4との距離を取ることができるため、固定子巻線4と回路基板5との距離も薄くすることができ、軸方向の厚さが効果的に薄くすることができる。さらに、パワーICを含めて全ての電子部品を回路基板5の一方の面に実装することができるため、半田付け等の工程が簡易なものとなる。
【0025】
(実施例2)
例として、センサレスの回路基板の場合、図3のように回路基板5から回転子7へと回路基板5と固定子側との距離はより短くなる。この場合、上記の構成のように、固定子側にパワーIC11aを配置しても良いが、固定子側とは反対の面に配置しても薄型の目的は達成できる。この構成とすることで、発熱体である固定子巻線から距離を取ることができる。
【0026】
また、回路基板5を固定するためのピン13に固定子の巻線端末を巻き付けて半田付けしているが、この巻線端末は回路基板5の反固定子側にあるピンの先端に設けられているため、回路の配置上、回路基板5の反固定子側に回路パターンや電子部品を配置する方が望ましい。この場合においても、表面実装型のパワーIC11aを搭載することによるモータフレーム6の厚さの薄さを低減するという効果を得ることができる。
【0027】
(実施例3)
モータの駆動中に過負荷によって回転子がロックすることでモータに過電流が流れて巻線が過熱したり、電子部品が破壊されたりすることになる。この過電流保護のためにヒューズを用いられるが、従来のリードタイプではモータの薄型化のためには上記パワーICと同じ問題があった。本実施例においては、リードタイプのヒューズ13bを面実装型のヒューズ13aに用いることで、上記効果が得られることになる。
【0028】
図4に示すように、上記リードタイプのヒューズ13bの基板からの高さは5mm程度であるが、面実装型のヒューズ13aでは、0.4mm程度と大幅に大きさが異なり、モータフレーム6の厚さも薄いものになる。
【0029】
(他の実施例)
本発明は、上記構成に限定されるものではなく、面実装の電子部品をモールド樹脂で覆う電動機であれば、各種構成に応用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のモータはエアコン、空気洗浄機、除湿機、加湿器といった家庭で用いられる機器を駆動するためのモータに用いられ、モータの大きさを薄型とすることで、機器全体の大きさを小さいものとすることができる。さらに、電子部品を樹脂で覆う際の不良が少ないため、良質なモールドモータを提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
1a,1b モータ
2 固定子鉄心
3 絶縁部材
4 固定子巻線
5 回路基板
6 モータフレーム
7 回転子
8 回転軸
9 軸受
10a,10b 軸受ブラケット
11a,11b パワーIC
12a,12b リード端子
13 ピン
14a,14b ヒューズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心に設けられたスロットに絶縁部材を施してコイルを巻装して形成した固定子と、
モータを制御するための電子部品を備え、前記絶縁部材に設けられた固定部にて固定した回路基板と、
を備えたモータにおいて、
前記回路基板に搭載する電子部品が面実装型の電子部品であり、
前記固定子と回路基板とをモールド樹脂にて覆い、モータフレームを形成したことを特徴とするモールドモータ。
【請求項2】
前記面実装部品は、回路基板の固定子側の面に配置したことを特徴とする請求項1記載のモールドモータ。
【請求項3】
前記面実装部品は、回路基板の反固定子側の面に配置したことを特徴とする請求項1記載のモールドモータ。
【請求項4】
前記面実装部品は、モータの駆動電流を制御するパワーICであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のモールドモータ。
【請求項5】
前記面実装部品は、過電流保護用のヒューズであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のモールドモータ。
【請求項6】
前記面実装のパワーIC及び前記面実装のヒューズを同時に搭載したことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のモールドモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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