説明

モールド重合用成形型

【課題】シリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を含むモノマー組成物を重合して得られるレンズ材料を、優れた酸素透過性及び機能的物性をもって製造することのできるモールド重合用成形型を提供する。
【解決手段】
シリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を含むモノマー組成物を成形キャビティ内に収容して、重合せしめることにより、目的とする眼用レンズ材料をモールド成形するためのモールド重合用成形型を、少なくとも前記成形キャビティを与える部位が、添加剤の含有率総計を2000ppm以下の範囲とするポリアミドにて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モールド重合用成形型に関し、特にシリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を含むモノマー組成物を用いたコンタクトレンズや眼内レンズ等の眼用レンズ製品の成形に使用するモールド重合用成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、使い捨て(ディスポーザブル)の含水性ソフトコンタクトレンズが登場し、その使い勝手の良さと、汚れたり、破損した場合には、気軽に新品のレンズと交換して装用することができる等の理由により、コンタクトレンズの装用者の人口が増加しつつある。そして、このような使い捨てレンズにあっては、短期間での取替えが前提となっているところから、当然、レンズ消費者に安価に供給され得るものであることが、強く要求されており、それ故、使い捨てレンズの製造には、通常、製造コストを最も低く抑えることができる「モールド重合法」が採用されている。
【0003】
ところで、従来より知られているコンタクトレンズの製造方法は、概ね、3種類に分類することができ、上記したモールド重合法の他に、切削研磨法、スピンキャスト法がある。その中でも、切削研磨法は、板状や棒状等のレンズ材料を、旋盤によって切り出し、切削、研磨工程を経て、所望とするコンタクトレンズを製造する方法である。そして、切削研磨法は、異なる多種類の規格の製品が必要とされるコンタクトレンズを製造するのに適した方法として、特に、そのような多種類の規格品が必要とされる、ハードコンタクトレンズの製造に際して、有利に採用されている。しかしながら、上記方法は、工程数が多く、製造に時間が掛かったり、切削屑として多くのレンズ材料が廃棄されるところから、その製造コストの高騰が免れ得ないといった問題を内在している。
【0004】
これに対して、モールド重合法とスピンキャスト法は、主に、ソフトコンタクトレンズの製造に用いられている。よく知られているように、前者のモールド重合法は、所望とするレンズ形状に対応する成形キャビティを有する成形型内に、重合性のモノマー組成物を充填し、同モノマー組成物を重合して、目的とするコンタクトレンズを製造する方法である。又、後者のスピンキャスト法は、重合性のモノマー組成物を回転する成形型の中に流し込み、その遠心力によってモノマー組成物を拡げて、レンズ形状と成し、それを重合することによって、コンタクトレンズを製造する方法である。
【0005】
これらモールド重合法やスピンキャスト法は、規格の異なる多種類のコンタクトレンズを製造するに際しては、各規格毎に高い面精度を有する成形型が必要となり、以て上記成形型の種類の増加により、製造コストが上昇するところから、多種類の規格品が必要とされるハードコンタクトレンズの製造には不向きではある。しかし、ソフトコンタクトレンズを製造するに際しては、該ソフトコンタクトレンズが、柔軟で、装用者の角膜の形状に応じてフィッティングされ、1〜2種類のベースカーブ規格で、殆どの装用者に対して適用され得るところから、必要とされる成形型の種類が少なく、従って、これらの方法が好適に採用され得る。
【0006】
しかも、これらモールド重合法とスピンキャスト法は、切削研磨法に比して、製造工程が簡略化され得ると共に、モノマー組成物の使用量を必要最小限に抑えることができるところから、低コスト及び大量生産を実現することが可能となるといった利点を有している。従って、これらの方法は、使い捨てソフトコンタクトレンズの如き消費量の多いコンタクトレンズの製造に、特に有利に採用されている。
【0007】
ところで、モールド重合法においては、一般的に、モノマー組成物の重合物たるレンズ材料の離型性やその成形性等を考慮して、射出成形にて製造される樹脂製の成形型が用いられている。該成形型に用いられる樹脂には、通常、添加剤として安定剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、安定剤、老化防止剤等が添加されている。
【0008】
一方、モノマー組成物においては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N−ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド等の親水性モノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーまたはこれら以外にも従来、一般に眼用レンズに用いられるモノマーが用いられている。
【0009】
なお、本件発明の背景技術と関連する特許文献1では、窒素含有不飽和モノマーを少なくとも含むモノマー組成物をモールド重合するための成形型として、少なくとも成形キャビティを与える部位が、長鎖炭化水素変性ポリアミド樹脂にて構成されていることを特徴とするモールド重合用成形型が開示されている。
【0010】
特許文献2では、眼用レンズ用モールド型及び眼用レンズの製造方法に関するものであり、モールド材料としてポリプロピレン及びポリアミドを使用することが開示されている。
【0011】
特許文献3では、コンタクトレンズの製造における使用のための半金型を製造するための高分子材料であって、前記材料が、熱可塑性ポリマー及び前記熱可塑性材料中に0.1~20%の範囲の量で内部添加剤を含むことが開示されている。又、特許文献3では、前記熱可塑性材料がポリスチレン又はポリプロピレンであり、前記添加剤が5,000~200,000 の分子量を有するポリエチレン若しくはポリプロピレンワックス等であることが開示されている。
【0012】
特許文献4では、炭素数6〜18の脂肪族ジアミンから誘導される構造単位及び炭素数8〜18の脂肪族ジカルボン酸から誘導される構造単位からなるポリアミドよりなるコンタクトレンズ製造用樹脂型が開示されている。特にここではナイロン612を用いることにより離型時に破損のない高品質なコンタクトレンズを安価に大量生産し得ることが開示されている。
【特許文献1】特開2003−291158号公報
【特許文献2】特開2000−185325号公報
【特許文献3】特許第3764778号
【特許文献4】特開2002−006269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、従来、モールド重合法において製造されてきたソフトコンタクトレンズの酸素透過性は、含水率に依存していたため、低いものであり、酸素透過性ハードコンタクトレンズに比べて劣っていた。
【0014】
しかし、近年、ソフトコンタクトレンズでも長時間の連続装用に耐えられるよう酸素透過性の向上したシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズのように、シリコーン含有不飽和モノマーを含むモノマー組成物からなる眼用レンズ材料(以下、単にレンズ材料という)が提案されている。
【0015】
そして、そのようなシリコーン含有不飽和モノマーを含むモノマー組成物を、従来と同様の樹脂製の成形型にてモールド重合して、コンタクトレンズを得ようとすると、樹脂型との親和性が悪く、得られるレンズ材料に気泡が生じたり、重合歪みに起因すると推察される、含水した状態のレンズ材料にカールが惹起されてしまう等の問題が生ずる。
【0016】
更には、レンズ材料における表面と内部との組成が異なり易くなり、これにより、離型後においてレンズ材料に変形が生じたり、強度の低下が招来される虞れがあることが、本発明者により明らかとなった。ここで、シリコーンは本来、疎水性及び親油性の性質があることからシリコーン含有不飽和モノマーが、樹脂製の成形型に含まれる添加剤の溶出を惹起したと考えられた。
【0017】
なお、特許文献1〜4には、シリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を用いて、コンタクトレンズや眼内レンズ等の眼用レンズ製品乃至はレンズブランクを好適に得るためのモールド重合用成形型において、同モールド重合用成形型に含まれる添加剤の含有率総計をどのようにするかについては開示も示唆もされていない。
【0018】
本発明は、上記事情を背景にしてなされたものであって、シリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を含むモノマー組成物を重合して得られるレンズ材料を、優れた酸素透過性及び機能的物性をもって製造することのできるモールド重合用成形型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願の請求項1の発明は、シリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を含むモノマー組成物を成形キャビティ内に収容して、重合せしめることにより、目的とする眼用レンズ材料をモールド成形するための成形型にして、少なくとも前記成形キャビティを与える部位が、添加剤の含有率総計を2000ppm以下とするポリアミドにて構成されていることを特徴とするモールド重合用成形型を要旨とするものである。
【0020】
又、請求項2の発明は、請求項1において、酸化防止剤、安定剤、又は造核剤の1つ又は2つ以上の組み合わせが前記ポリアミドに含有される添加剤であることを特徴とする。
請求項3の発明は、シリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を含むモノマー組成物を成形キャビティ内に収容して、重合せしめることにより、目的とする眼用レンズ材料をモールド成形するための成形型にして、少なくとも前記成形キャビティを与える部位が添加剤が無添加のポリアミドにて構成されていることを特徴とするモールド重合用成形型を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の成形型を使用することにより、シリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を含むモノマー組成物からなる眼用レンズ材料の成形性、重合性、脱離性及び規格を好適なものにすることができ、この結果、同眼用レンズ材料を優れた酸素透過性及び機能的物性をもって製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態のモールド重合用成形型は、シリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を含む、複数の不飽和モノマーからなるモノマー組成物を重合するための成形型である。成形型は、たとえば、雄型と雌型とから構成される。そして、それら二つの雄型と雌型とが組み合わされることにより、それらの型の間に、所望とするレンズ材料(例えば、コンタクトレンズ半完成品であるレンズブランク)を与える形状の成形キャビティが形成される。
【0023】
そして、成形型は、全体をポリアミドから構成してもよく、或いは、成形キャビティを与える部位のみをポリアミドから形成してもよい。例えば、2色成形によって成形キャビティを与える部位のみをポリアミドから形成することができる。なお、ポリアミドは、特別なものではなく市販のものでよい。
【0024】
ポリアミドとしては、PA6(ポリアミド6),PA11(ポリアミド11),PA12(ポリアミド12),PA610(ポリアミド610)、PA66(ポリアミド66)、PA46(ポリアミド46),PAMCXT(ポリアミドMCXT),PAMXD6(ポリアミドMXD6)等を挙げることができる。
【0025】
さらに、成形型を得るために、添加剤として、酸化防止剤、安定剤、又は造核剤の1つ又は2つ以上の組み合わせが、それぞれ適量において添加してもよい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤や或いはヒドロキシルアミン系酸化防止剤がある。この酸化防止剤はラジカル捕捉剤であって、酸素、熱、紫外線といった外因により樹脂内に発生したラジカルによる分解劣化が連鎖反応的に成長するのを防止するためのものである。
【0026】
フェノール系酸化防止剤としては、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、n-オクタデシル-β-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2-ビス[4-[2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)エトキシ]フェニル]プロパン、ビス[2-(3'-t-ブチル-2'-ヒドロキシ-5'-メチルベンジル)-6-t-ブチル-4-メチルフェニル]テレフタレート、ビス[3,3-ビス(4'-ヒドロキシ-3'-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]エチレングリコールエステル等を挙げることができ、これらのものが適宜に選択されて、単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
又、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤としては、N,N-ジラウリルヒドロキシアミン、N,N-ジミリスチルヒドロキシアミン、N,N-ジパルミチルヒドロキシルアミン、N-パルミチル-N-ステアリルヒドロキシルアミン、N,N-ジステアリルヒドロキシルアミン、N,N-ジココヒドロキシルアミン、N,N-ビスヒドロキシルアミン等を挙げることができ、これらのものが適宜に選択されて、単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
(安定剤)
安定剤は、前記酸化防止剤を樹脂中に分散させるため、或いは滑剤機能、重合反応触媒の安定機能を得るためのものである。
【0029】
安定剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ステアリル乳酸カルシウム、リン酸2,2-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェニル)、マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイト・カーボネート・ハイドレート等を挙げることができ、これらのものが適宜に選択されて、単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
(造核剤)
造核剤としては、リン酸ビス(4-t-ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ナトリウム、アルミニウム=ビス(4,4’,6,6’-テトラ-t-ブチル-2,2’-メチレンジフェニル=ホスファート)=ヒドロキシドが挙げられる。
【0031】
これらの添加剤は、それぞれ成形型に必要とされる特性に応じて適量使用されるが、これらの添加剤の含有率総計が、2000ppm以下の範囲であると、成形型の成形性、重合性、脱離性、及び規格のいずれにおいても良好の結果を得ることができて好ましい。特に1000以下ppmの範囲であれば、成形型の成形性、重合性、脱離性、及び規格のいずれにおいてもより好ましい結果を得ることができる。 添加剤の含有率総計が、2000ppmを越えると、重合後にレンズ材料を成形型から離型した際に、レンズ表面に剥離や破損が生じてしまい、離型性が悪くなる。上記した酸化防止剤、安定剤、造核剤は、1つ、又は2つ以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0032】
なお、添加剤が無添加のポリアミドの場合、すなわち、添加剤の含有率総計が、0ppmの場合においても、成形型の成形性、重合性、脱離性、及び規格のいずれにおいても良好な結果を得ることができる。
【0033】
この成形型は、従来周知の方法で成形することができ、例えばポリアミドを溶融させて前記添加剤を適量混合させ、射出成形機を介して成形型製造用の金型内に作られた成形キャビティに注入することにより、目的の形状を備えた成形型が成形される。
【0034】
(レンズ材料)
前記成形型の成形キャビティ内に充填されるモノマー組成物としては、高い酸素透過率(高い酸素透過性)を確保したコンタクトレンズ等のレンズ材料が得られるように、少なくともシリコーン含有不飽和モノマーを含んでいる必要がある。
【0035】
シリコーン含有不飽和モノマーとしては、例えば、ポリシロキサンマクロモノマーや、シリコン含有アルキル(メタ)アクリレート、シリコン含有スチレン誘導体を挙げることができる。
【0036】
より具体的には、ポリシロキサンマクロモノマーは、下記一般式(I)にて示される、重合性基が1個以上のウレタン結合を介してシロキサン主鎖に結合している重合性不飽和モノマーである。
【0037】
1−U1−(−S1−U2−)n−S2−U3−A2 ……(I)
なお、上記一般式(I)において、A1は、下記の一般式(II)にて表わされる基である。
【0038】
21−Z21−R31−……(II)
[一般式(II)中、Y21は、アクリロイル基、ビニル基、又はアリル基を表わす一方、Z21は、酸素原子又は直接結合を表わし、又、R31は、直接結合又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖若しくは芳香環を有するアルキレン基を表わす。]
又、上記一般式(I)において、A2は、下記の一般式(III)にて表わされる基である。
【0039】
−R34−Z22−Y22……(III)
[一般式(III)中、Y22は、アクリロイル基、ビニル基、又はアリル基を表わす一方、Z22は、酸素原子又は直接結合を表わし、又、R34は、直接結合又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖若しくは芳香環を有するアルキレン基を表わす。(但し、一般式(II)のY21及び一般式(III)のY22は、同一であっても、異なっていてもよい。)]
さらに、前記した一般式(I)において、U1は、下記一般式(IV)にて表わされる基である。
【0040】
−X21−E21−X25−R32−……(IV)
[一般式(IV)中、X21及びX25は、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子又はアルキレングリコール基を表わし、E21は、−NHCO−基(但し、この場合、X21は、直接結合である。又、X25は、酸素原子又はアルキレングリコール基であり、E21は、X25とウレタン結合を形成している。)、−CONH−基(但し、この場合、X21は、酸素原子又はアルキレングリコール基である一方、X25は直接結合である。E21はX21とウレタン結合を形成している。)、又は飽和若しくは不飽和脂肪族系、脂環式系及び芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基(但し、この場合、X21及びX25は、それぞれ独立して、酸素原子又はアルキレングリコール基であり、E21は、X21及びX25の間で2つのウレタン結合を形成している)を表わす。又、R32は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖を有するアルキレン基を示す。]
又、上記一般式(I)において、S1及びS2は、それぞれ独立して、下記一般式(V)にて表わされる基である。
【0041】
【化1】

[一般式(V)中、R23、R24、R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、フッ素置換されたアルキル基又はフェニル基であり、Kは1〜1500の整数、Lは0又は1〜1499の整数であり、K+Lは1〜1500の整数である。]
さらに、前記した一般式(I)において、U2は、下記一般式(VI)にて表わされる基である。
【0042】
−R37−X27−E24−X28−R38−……(VI)
[一般式(VI)中、R37及びR38は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖を有するアルキレン基を表わし、X27及びX28は、それぞれ独立して、酸素原子又はアルキレングリコール基を表わす。又、E24は、飽和若しくは不飽和脂肪族系、脂環式系及び芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基(但し、この場合、E24は、X27及びX28の間で2つのウレタン結合を形成している)を表わす。]
又、上記の一般式(I)において、U3は、下記一般式(VII)にて表わされる基である。
【0043】
−R33−X26−E22−X22− ……(VII)
[一般式(VII)中、R33は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖を有するアルキレン基を表わし、X22及びX26は、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子又はアルキレングリコール基を表わす。E22は、−NHCO−基(但し、この場合、X22は、酸素原子又はアルキレングリコール基である一方、X26は、直接結合であり、E22は、X26とウレタン結合を形成している)、−CONH−基(但し、この場合、X22は、直接結合である一方、X26は、酸素原子又はアルキレングリコール基であり、E22は、X26とウレタン結合を形成している)、又は飽和若しくは不飽和脂肪族系、脂環式系及び芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基(但し、この場合、X22及びX26は、それぞれ独立して、酸素原子又はアルキレングリコール基であり、E22はX22及びX26の間で2つのウレタン結合を形成している)を表わす。]
加えて、前記一般式(I)において、nは0又は1〜10の整数を示す。
【0044】
一方、シリコーン含有不飽和モノマーの一つであるシリコン含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチルシロキシジメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキシプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキシメチル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート等を例示することができる。なお、本明細書において、「・・(メタ)アクリレート」は、「・・アクリレート」又は「・・メタクリレート」を示す。
【0045】
他方、シリコーン含有不飽和モノマーの別の一つであるシリコン含有スチレン誘導体としては、例えば、下記の一般式(VIII)にて表わされるものを例示することができる。
【0046】
【化2】

[式中、pは1〜15の整数、qは0又は1、rは1〜15の整数を示す。]
なお、上記の一般式(VIII)にて表わされるシリコン含有スチレン誘導体において、p又はrが、16以上の整数である場合には、その精製や合成が困難となると共に、得られるレンズ材料の硬度が低下するようになる。又、qが、2以上の整数である場合には、シリコン含有スチレン誘導体の合成が困難となる傾向がある。
【0047】
又、前記一般式(VIII)にて表わされるシリコン含有スチレン誘導体の具体例としては、例えば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルスチレン、(トリメチルシロキシ)ジメチルシリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシジメチルシリルスチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシロキシ]ジメチルシリルスチレン、ヘプタメチルトリシロキサニルスチレン、ノナメチルテトラシロキサニルスチレン、ペンタデカメチルヘプタシロキサニルスチレン、ヘンエイコサメチルデカシロキサニルスチレン、ヘプタコサメチルトリデカシロキサニルスチレン、ヘントリアコンタメチルペンタデカシロキサニルスチレン、トリメチルシロキシペンタメチルジシロキシメチルシリルスチレン、トリス(ペンタメチルジシロキシ)シリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(ヘプタメチルトリシロキシ)メチルシリルスチレン、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、トリメチルシロキシビス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、ヘプタキス(トリメチルシロキシ)トリシリルスチレン、ノナメチルテトラシロキシウンデシルメチルペンタシロキシメチルシリルスチレン、トリス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、(トリストリメチルシロキシヘキサメチル)テトラシロキシ[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]トリメチルシロキシシリルスチレン、ノナキス(トリメチルシロキシ)テトラシリルスチレン、ビス(トリデカメチルヘキサシロキシ)メチルシリルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキサニルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、トリプロピルテトラメチルシクロテトラシロキサニルスチレン、トリメチルシリルスチレン等が挙げられる。
【0048】
又、前記シリコーン含有不飽和モノマーに併せて窒素含有不飽和モノマーを含んでいることが好ましい。
窒素含有不飽和モノマーとしては、非イオン性であり、且つ、得られるコンタクトレンズの含水率を向上せしめることができる、N−ビニルラクタム類やN−モノ若しくはN,N−ジ置換(メタ)アクリルアミドが好適に採用され得ることとなる。なお、本明細書において、「・・(メタ)アクリルアミド」なる表記は、「・・アクリルアミド」及び「・・メタクリルアミド」を含む総称として用いられている。
【0049】
より具体的に、N−ビニルラクタム類としては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−5−エチル−2−ピロリドン等のピロリドン;N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4,4−ジメチル−2−ピペリドン等のピペリドン;N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4,6−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5,7−トリメチル−2−カプロラクタム等のカプロラクタム;メタクリロイルモルホリン等が挙げられる一方、N−モノ若しくはN,N−ジ置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN−モノアルキル(メタ)アクリルアミド等のN−モノ置換(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチル(エチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−メチル(プロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N−エチル(プロピル)(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドや、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジ置換(メタ)アクリルアミドが挙げられ、これらの窒素含有不飽和モノマーが適宜に選択されて、単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0050】
そして、前記窒素含有不飽和モノマーは、重合させられるモノマー組成物を構成する重合性の不飽和モノマー成分の総量に対して、2重量%以上、好ましくは4重量%以上の割合となるように含有せしめられることが望ましい。
【0051】
又、モノマー組成物には、レンズ材料(例えばコンタクトレンズ)に必要とされる特性等に応じて、更に、上記シリコーン含有不飽和モノマーととともに別の重合性の不飽和モノマーが併せて適宜に選択されて適量において含有してもよい。或いは、上記シリコーン含有不飽和モノマーを使用する代わりに別の重合性の不飽和モノマーが適宜に選択されて適量を使用してもよい。
【0052】
そのような重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、フェノキシエチルアクリレートや、前述したシリコーン含有不飽和モノマー等の、従来からレンズ材料の原料として用いられている重合性不飽和モノマーの他、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジヒドロキシエチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、ブタンジオールジアクリレート等の、従来から架橋剤として用いられている多官能モノマーを例示することができる。
【0053】
さらに、シリコーン含有不飽和モノマーを含むモノマー組成物には、上記重合性不飽和モノマーの他にも、従来から公知の各種の重合開始剤、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤等が、それぞれ適量において添加される。
【0054】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロバーオキサイド等のラジカル重合開始剤や、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルフォルメート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、N,N−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノン等のフェノン系光重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム;2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;ジベンゾスバロン;2−エチルアンスラキノン;ベンゾフェノンアクリレート;ベンゾフェノン;ベンジル等の光重合剤を例示することができ、これらは、重合方法等に応じて適宜に選択されて、単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0055】
上記のように構成されたモールド重合用成形型の特徴について説明する。
(1) 本実施形態のモールド重合用成形型によれば、成形キャビティを与える部位が、添加剤の含有率総計を0〜2000ppmの範囲とするポリアミドにて構成されていることにより、モールド重合用成形型を使用して成形されたレンズ材料は、成形性に優れるとともに、重合性、脱離性及び規格を好適なものにすることができる。
【0056】
(2) 特に添加剤が酸化防止剤、安定剤又は造核剤である場合、モールド重合用成形型を使用して成形されたレンズ材料は、成形性に優れるとともに、重合性、脱離性及び規格を好適なものにすることができる。
【実施例】
【0057】
次に、実施例1〜10及び比較例1〜9を表1〜表5を参照して説明する。
実施例1〜10及び比較例1〜9のモールド重合用成形型(すなわち、雄型、及び雌型)は、添加剤(すなわち、酸化防止剤、安定剤、造核剤)の添加割合を変えた溶融ポリアミド、或いは添加剤が無添加の溶融ポリアミドをそれぞれ用い、これを射出成形機によって成形型製造用の金型内に作られた成形キャビティに注入することにより形成した。
【0058】
表1は実施例及び比較例に使用したレンズ材料1〜4の化合物、UV吸収剤、重合開始剤を示し、表1中の数値は重量部である。レンズ材料1〜3はコンタクトレンズの材料となるものであり、材料4は眼内レンズの材料となる。
【0059】
【表1】

表2〜5において、酸化防止剤のA,Bと安定剤C,Dは下記の通りである。
【0060】
(酸化防止剤)
A:テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
B:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト
(安定剤)
C:ステアリン酸
D:ステアリン酸カルシウム
表2〜5において、A+B及びC+Dは、それぞれの添加剤を合計した値を示している。
【0061】
【表2】

表2は、材料1のレンズ材料に対してポリアミドからなる成形型の成形性を示している。成形型に使用したポリアミドは、表2に示すように、実施例1,2ではPA6、実施例3ではPA610、実施例4ではPA12を使用した。又、表2に示すように成形型に使用したポリアミドは、比較例1ではPA6、比較例2,3ではPA12を使用した。
【0062】
実施例1、4では、酸化防止剤及び安定剤を無添加としている。実施例2では、添加剤Aを500ppm、CとDを併せて250ppmを使用した。実施例3では、添加剤Aを1000ppm、CとDを併せて1000ppmを使用した。比較例1,2では、添加剤AとBを併せて2000ppm、CとDを併せて800ppmを使用した。比較例3では、添加剤AとBを併せて10000ppm、CとDを併せて800ppmを使用した。
【0063】
【表3】

表3は、材料2のレンズ材料に対してポリアミドからなる成形型の成形性を示している。成形型に使用したポリアミドは、表3に示すように、実施例5ではPA6、実施例6ではPA610、実施例7ではPA12を使用した。又、表3に示すように成形型に使用したポリアミドは、比較例4ではPA6、比較例5,6ではPA12を使用した。実施例5、7では、酸化防止剤及び安定剤を無添加としている。実施例6では、添加剤Aを1000ppm、CとDを併せて1000ppmを使用した。比較例4,5では、添加剤AとBを併せて2000ppm、CとDを併せて800ppmを使用した。比較例6では、添加剤AとBを併せて10000ppm、CとDを併せて800ppmを使用した。
【0064】
【表4】

表4は、材料4のレンズ材料に対してポリアミドからなる成形型の成形性を示している。成形型に使用したポリアミドは、表4に示すように、実施例8、比較例7,8ではPA12を使用した。実施例8では、酸化防止剤及び安定剤を無添加としている。比較例7では、添加剤AとBを併せて2000ppm、CとDを併せて800ppmを使用した。比較例8では、添加剤AとBを併せて10000ppm、CとDを併せて800ppmを使用した。
【0065】
【表5】

表5は、材料3のレンズ材料に対してポリアミドからなる成形型の成形性を示している。成形型に使用したポリアミドは、表5に示すように、実施例9,10,及び比較例9ではPA6を使用した。実施例9では、酸化防止剤、安定剤及び造核剤を無添加としている。実施例10では、添加剤及び安定剤を0ppm、造核剤を1000ppm使用した。比較例9では、添加剤AとBを併せて2000ppm、CとDを併せて800ppmを使用し、造核剤を無添加とした。
【0066】
実施例10の造核剤は、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ナトリウムを使用した。
実施例1〜10及び比較例1〜9のモールド重合用成形型を使用して、材料1〜材料4からなるレンズ材料(本実施例及び比較例では、コンタクトレンズ)を、UVランプを用いたUV重合法により重合せしめて成形した。
【0067】
そして、実施例1〜10及び比較例1〜9のそれぞれの成形型を使用して、レンズ材料を成形した際の成形性、重合性、脱離性及び規格についてそれぞれ評価した。
評価項目については以下の通りである。
1.成形性
成形品のレンズ形成光学面の干渉縞測定を行い、良否を判断した。
【0068】
<評価基準>
○:干渉縞の真円度が0.02mm未満。
△:干渉縞の真円度が0.03mm未満。
【0069】
×:干渉縞の真円度が0.03mm以上。
2.重合性
成形性の項目に適格であったモールド重合用成形型を用い、重合を行い、重合性(表面特性・残留モノマー)を評価した。
【0070】
<評価基準>
○:レンズ表面、残留モノマーに異常なし。
×:表面(脱型、未重合)、残留モノマーに異常あり。
3.脱離性
成形性の項目に適格であったモールド重合用成形型を用い、重合後のレンズポリマーの型からの離型性を評価した。
【0071】
<評価基準>
○:レンズ表面に異常なし。
×:レンズ表面に剥離、破損あり。
4.規 格
成形性の項目に適格であったモールド重合用成形型を用い、重合後のレンズポリマーを型から離型し、得られたレンズの規格(B.C.、Power.、コロナ)評価を行った。
【0072】
<評価基準>
○:コロナ状態が良好(乱視、環状を含まない)。
×:コロナ不良(乱視、環状不良)。
【0073】
−:レンズが得られなかったため実施せず。
表2に示すように、レンズ材料を材料1とした場合、実施例1,4においては、添加剤を無添加とし、実施例2,3においては、酸化防止剤の含有率総計が750〜2000ppmであるため、成形性、重合性、脱離性及び規格のいずれの項目も○の評価を得ることができた。それに対して、添加剤2800ppmの比較例1,2の場合及び添加剤が10800ppmの場合には、成形性の評価が△となり、脱離性が×となって製品として規格評価ができなかった。
【0074】
表3に示すようにレンズ材料を材料2とした場合、実施例5,7においては、添加剤を無添加とし、実施例6においては、酸化防止剤の総計が2000ppmであるため、成形性、重合性、脱離性及び規格のいずれの項目も○の評価を得ることができた。それに対して、添加剤2800ppmの比較例4,5の場合及び添加剤が10800ppmの場合には、成形性の評価が△となり、脱離性が×となって製品として規格評価ができなかった。
【0075】
表4に示すようにレンズ材料を材料4とした場合、実施例8においては、添加剤を無添加としているため、成形性、重合性、脱離性及び規格のいずれの項目も○の評価を得ることができた。それに対して、添加剤2800ppmの比較例7の場合及び添加剤が10800ppmの場合には、成形性の評価が△となり、脱離性が×となって製品として規格評価ができなかった。
【0076】
表5に示すようにレンズ材料を材料3とした場合、実施例9においては、添加剤を無添加とし、実施例10においては、造核剤が1000ppmであるため、成形性、重合性、脱離性及び規格のいずれの項目も○の評価を得ることができた。それに対して、添加剤2800ppmの比較例9の場合には、成形性の評価が△となり、脱離性が×となって製品として規格評価ができなかった。
【0077】
なお、本発明の実施形態は、前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように構成を変更してもよい。
○ 前記実施形態では、コンタクトレンズ及び眼内レンズを例として挙げているが、他の眼用レンズを形成するモールド重合用成形型に具体化してもよいことは勿論のことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を含むモノマー組成物を成形キャビティ内に収容して、重合せしめることにより、目的とする眼用レンズ材料をモールド成形するための成形型にして、少なくとも前記成形キャビティを与える部位が、添加剤の含有率総計を2000ppm以下とするポリアミドにて構成されていることを特徴とするモールド重合用成形型。
【請求項2】
酸化防止剤、安定剤、又は造核剤の1つ又は2つ以上の組み合わせが前記ポリアミドに含有される添加剤であることを特徴とする請求項1に記載のモールド重合用成形型。
【請求項3】
シリコーン含有不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸含有モノマーの少なくともいずれか一方を含むモノマー組成物を成形キャビティ内に収容して、重合せしめることにより、目的とする眼用レンズ材料をモールド成形するための成形型にして、少なくとも前記成形キャビティを与える部位が添加剤が無添加のポリアミドにて構成されていることを特徴とするモールド重合用成形型。

【公開番号】特開2009−154389(P2009−154389A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335032(P2007−335032)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】