説明

ユニバーサル塩基を含むPNAシントンおよびPNAオリゴマーに関連する、組成物および方法

本発明は、ユニバーサル塩基を含むPNAシントンに関連する組成物、ユニバーサル塩基を含むPNAオリゴマーに関連する組成物、および/またはユニバーサル塩基を含むPNA/DNAキメラに関連する組成物に関する。本発明はまた、ユニバーサル塩基を含むPNAシントンに関連する方法、ユニバーサル塩基を含むPNAオリゴマーに関連する方法、および/またはユニバーサル塩基を含むPNA/DNAキメラに関連する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の援用)
本願は、2005年6月15日に出願された米国特許仮出願第60/690,569号および2006年6月14日に出願された米国特許出願(番号付与待ち)に対する優先権を主張する。
【0002】
本明細書で使用される各節の見出しは、構成上のためだけのものであり、如何なる意味においても、記載された内容を制限するものと解してはならない。
【0003】
1.技術分野
本発明は、核酸塩基を有機合成し、それらをシントンおよびオリゴマーに取り込むという技術分野に関係する。
【背景技術】
【0004】
2.緒言
ペプチド核酸は、核酸およびその他のポリ核酸塩基鎖に配列特異的にハイブリダイズすることができるオリゴマーを含む合成核酸塩基の仲間である。ポリ核酸塩基鎖の核酸塩基間でのハイブリダイゼーションは、一般的に、水素結合について十分に確立したルールに従う。Watson−Crick塩基対合では、一般的に、アデニンがチミンと対合し、シトシンがグアニンと対合する。
【0005】
核酸塩基8−アザ−7−デアザアデニンを含むヌクレオシドが研究されており、ユニバーサル塩基の性質を示すことが分かっている(非特許文献1)。ユニバーサル塩基という用語は、4種類の標準的なDNA核酸塩基(すなわち、アデニン、チミン、シトシン、およびグアニン)に対して特異的水素結合を形成するヌクレオシドを意味する。8−アザ−7−デアザアデニンなどのユニバーサル塩基を含むPNAシントンおよびPNAオリゴマーを調製する方法があれば有用であろう。
【非特許文献1】Seelaら、Nucl.Acids Res.,(2000)28(17):3224−3232
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
特許文献、特許出願文書、記事、書籍、論文、およびインターネット上のウェッブページなど、本出願で引用されたすべての文献および同様の資料は、それら文献および同様の資料がどのような形式のものであっても、その全文が、あらゆる目的で参照されて本明細書に明示して組み込まれる。
【0007】
4.定義
本明細書を解釈するために、以下の定義が適用され、適当であれば、単数形で使用されている用語は複数形を含み、また逆の場合も然りである。以下に示す定義が、参照されて本明細書に組み込まれる文書など、他の文書におけるその用語の用法と食い違う場合には、以下に示す定義が優先されるべきである。
【0008】
a.本明細書において、「核酸塩基」は、核酸技術を利用して、またはペプチド核酸技術を利用して、核酸およびその他のポリ核酸塩基の鎖に配列特異的に結合することができるポリ核酸塩基鎖を作製する人々に広く知られている天然または非天然の複素環部分を意味する。適当な核酸塩基の非限定的な例には以下のものが含まれる。すなわち、アデニン、システイン、グアニン、チミン、ウラシル、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、5−メチルシトシン、シュードイソシトシン、2−チオウラシル、2−チオチミン、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、N9−(2,6−ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)、N9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)、およびN8−(8−アザ−7−デアザアデニン)。適当な核酸塩基の別の非限定的な例には、図1Aおよび1Bに図示した核酸塩基が含まれる(米国特許第6,357,163号の図2Aおよび2B参照)。
【0009】
b.本明細書において、「核酸塩基配列」は、ポリ核酸塩基鎖の分節、または2つ以上の分節を集合させたもの(すなわち、結合ポリマー)を意味する。適当なポリ核酸塩基鎖の非限定的な例は、オリゴデオキシヌクレオチド(例えば、DNA)、オリゴリボヌクレオチド(例えば、RNA)、ペプチド核酸(PNA)、PNA/DNAキメラ、核酸アナログ、および/または核酸模倣体などである。
【0010】
c.本明細書において、「サブユニットを含む核酸塩基」という語句は、核酸塩基を含むポリ核酸塩基鎖のサブユニットを意味する。オリゴヌクレオチドでは、サブユニットを含む核酸塩基はヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドについて、当業者は、別種のポリ核酸塩基鎖と結合したサブユニットの形態を理解しているはずである。
【0011】
d.本明細書において、「ポリ核酸塩基鎖」は、核酸塩基を含むサブユニットを含む完全な単一ポリマー鎖を意味する。
【0012】
e.本明細書において、「核酸」は、ヌクレオチドまたはその類似化合物から形成された骨格をもつポリ核酸塩基鎖を意味する。好適な核酸は、DNA、RNA、L−DNA、ロックド核酸(LNA)である。疑義を避けるために言うと、PNAは核酸模倣体であって、核酸または核酸アナログではない。PNAは、ヌクレオチドから生成されるものではないため核酸ではない。
【0013】
f.本明細書において、「ペプチド核酸」ないし「PNA」は、米国特許第5,539,082号、第5,527,675号、第5,623,049号、第5,714,331号、第5,718,262号、第5,736,336号、第5,773,571号、第5,766,855号、第5,786,461号、第5,837,459号、第5,891,625号、第5,972,610号、第5,986,053号、第6,107,470号、および第6,357,163号においてペプチド核酸と呼ばれるか主張されている何れかのポリ核酸塩基鎖またはポリ核酸塩基鎖のセグメントなど、2個またはそれ以上のPNAサブユニットを含む任意のポリ核酸塩基鎖またはポリ核酸塩基鎖のセグメントを意味する。
【0014】
「ペプチド核酸」ないし「PNA」という用語は、以下の刊行物に記載された核酸模倣体の2つ以上のサブユニットを含む任意のポリ核酸塩基鎖またはポリ核酸塩基鎖のセグメントにも適用されるべきである:Lagriffoul ら,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,4:1081−1082(1994);Petersen ら,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,6:793−796(1996);Diderichsen ら,Tett.Lett.37:475−478(1996);Fujii ら,Bioorg.Med.Chem.Lett.7:637−627(1997);Jordan ら,Bioorg.Med.Chem.Lett.7:687−690(1997);Krotz ら,Tett.Lett.36:6941−6944(1995);Lagriffoul ら,Bioorg.Med.Chem.Lett.4:1081−1082(1994);Diederichsen,U.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,7:1743−1746(1997);Lowe ら,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,(1997) 1:539−546;Lowe ら,J.Chem.Soc.Perkin Trans.11:547−554(1997);Lowe ら,J.Chem.Soc.Perkin Trans.11:555−560(1997);Howarth ら,J.Org.Chem.62:5441−5450(1997);Altmann,K−H ら,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,7:1119−1122(1997);Diederichsen,U.,Bioorganic & Med.Chem.Lett.,8:165−168(1998);Diederichsen ら,Angew.Chem.Int.Ed.,37:302−305(1998);Cantin ら,Tett.Lett.,38:4211−4214(1997);Ciapetti ら,Tetrahedron,53:1167−1176(1997);Lagriffoule ら,Chem.Eur.J.,3:912−919(1997);Kumar ら,Organic Letters 3(9):1269−1272(2001);およびWO96/04000に開示されているShah らの「the Peptide−Based Nucleic Acid Mimics (PENAMs)」。
【0015】
いくつかの実施形態においては、「ペプチド核酸」ないし「PNA」は、以下の化学式の共有結合したサブユニットを2個以上含むポリ核酸塩基鎖またはポリ核酸塩基鎖のセグメントである:
【0016】
【化18】

ただし、式中、Jはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、H、R’、OR′、SR′、NHR′、NR′、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択される。Kはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、O、S、NH、およびNR′からなる群から選択される。R’はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基である。例えば、R’は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、フェニル基、ビニル基、またはアリル基である。
【0017】
Aはそれぞれ、単結合、−(CJ−という化学式をもつ基、および−(CJC(O)−という化学式をもつ基からなる群から選択されるが、ただし、Jは、上記で定義された通りであり、sはそれぞれ、1から5までの整数である。tはそれぞれ1または2であり、uはそれぞれ1または2である。Lはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、5−メチルシトシン、シュードイソシトシン、2−チオウラシル、および2−チオチミン、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、N9−(2,6−ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)、N9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)、N8−(8−アザ−7−デアザアデニン)、その他天然型の核酸塩基アナログおよびその他の非天然型核酸塩基(例えば、図1Aおよび1B)からなる群から独立して選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、PNAサブユニットは、メチレンカルボニル結合を介してN−[2−(アミノエチル)]グリシン骨格のN−α−グリシル窒素に結合した、天然型または非天然型の核酸塩基であってもよい。この核酸塩基は、現在、もっとも通常に使用される形態のペプチド核酸サブユニットである。
【0019】
g.本明細書において、「配列特異的に」とは、水素結合を介した塩基対合によるハイブリダイゼーションを意味する。標準的な塩基対合の非限定的な例は、チミンまたはウラシルとアデニンとの塩基対合、およびシトシンとグアニンとの塩基対合などである。塩基対合モチーフのその他の非限定的な例は、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、2−チオウラシル、または2−チオチミンのいずれかとアデニンとの塩基対合;5−メチルシトシンまたはシュードイソシトシンのいずれかとグアニンとの塩基対合;ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)、またはN9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)のいずれかとシトシンとの塩基対合;2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、またはN9−(2,6−ジアミノプリン)のいずれかとチミンまたはウラシルとの塩基対合;および、ユニバーサル塩基であるN8−(8−アザ−7−デアザアデニン)の、それ以外の核酸塩基、例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、5−メチルシトシン、シュードイソシトシン、2−チオウラシルおよび2−チオチミン、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、N9−(2,6−ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)のいずれかとの塩基対合などである。
【0020】
h.本明細書において、「キメラ」または「キメラオリゴマー」という用語は、異なった種類のサブユニットから選択される2個以上の結合サブユニットを含むポリ核酸塩基鎖を意味する。例えば、PNA/DNAキメラは、少なくとも1つの2’−デオキシリボ核酸サブユニットに結合した少なくとも1つのPNAサブユニットを含むことが可能である(PNA/DNAキメラ調製物に関する方法および組成物の例については、米国特許第6,063,569号参照)。
【0021】
i.本明細書において、「結合ポリマー」という用語は、リンカーによって結合されている2つ以上のポリマーセグメントを含む核酸塩基鎖を意味する。結合されると結合ポリマーを形成することができるポリマーセグメントは、オリゴデオキシヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチド、ペプチド、ポリアミド、ペプチド核酸(PNA)、およびPNA/DNAキメラからなる群から選択することができる。
【0022】
j.本明細書において、「アルキル」という用語は、直鎖状もしくは分枝状のC〜C20炭化水素または完全に飽和した環状のC〜C20炭化水素(すなわち、シクロアルキル基)を意味する。本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、置換または非置換の基を意味する。本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、置換または非置換のメチレン基の炭素原子の1個以上がケイ素原子(Si)によって置換され得るアルキル基も意味する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、直鎖状もしくは分枝状のC〜C炭化水素、または完全に飽和した環状のC〜C炭化水素であってもよい。
【0023】
k.本明細書において、「アルキレン」という用語は、少なくとも2つの部分(例えば、−{CH}−(メチレン)、−{CHCH}−、(エチレン)、
【0024】
【化19】

など。ただし、式中の括弧は結合点を示す)に対する少なくとも2つの結合点をもつ直鎖状または分枝状のアルキル鎖または環状のアルキル基を意味する。本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。いくつかの実施形態において、アルキレン基はC〜C炭化水素であってもよい。
【0025】
l.本明細書において、「アルケニル」という用語は、1つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状のC〜C20炭化水素または環状のC〜C20炭化水素を意味する。本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。本明細書の目的にとって、「アルケニル」は、置換または非置換のメチレン基の炭素原子の1個以上がケイ素原子(Si)によって置換されているアルケニル基も意味し得る。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状のC〜C炭化水素または環状のC〜C炭化水素であってもよい。
【0026】
m.本明細書において、「アルキニル」という用語は、1つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状のC〜C20炭化水素または環状のC〜C20炭化水素を意味する。本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。本明細書の目的にとって、「アルキニル」は、置換または非置換のメチレン基の炭素原子の1個以上がケイ素原子(Si)によって置換されているアルキニル基も意味する。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状のC〜C炭化水素または環状のC〜C炭化水素であってもよい。
【0027】
n.本明細書において、「ヘテロアルキル」という用語は、アルキル鎖の中の1個以上のメチレン基が、−O−、−S−、−SO−、または−NR”−(ただし、R”は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアリールアルキルであり得る)などのヘテロ原子によって置換されるアルキル基を意味する。本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。
【0028】
o.本明細書において、「ヘテロアルケニル」という用語は、1個以上のメチレン基が、−O−、−S−、−SO−、または−NR”−(ただし、R”は、上記定義のとおり)などのヘテロ原子によって置換されるアルケニル基を意味する。本明細書で使用される場合、「ヘテロアルケニル」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。
【0029】
p.本明細書において、「ヘテロアルキニル」という用語は、1個以上のメチレン基が、−O−、−S−、−SO−、または−NR”−(ただし、R”は、上記定義のとおり)などのヘテロ原子によって置換されるアルキニル基を意味する。本明細書で使用される場合、「ヘテロアルケニル」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。
【0030】
q.本明細書において、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、1個以上の酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を含む非芳香族環(例えば、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリドン、およびチオモルホリン)を意味する。本明細書において、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。
【0031】
r.本明細書において、「アリール」という用語は、単独または、別の成分(例えば、アリールアルキルなど)の一部のいずれかで、フェニル基などの炭素環芳香族基を意味する。アリール基は、炭素環芳香族環が別の炭素環芳香族環(例えば、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラシル、2−アントラシルなど)に融合しているか、炭素環芳香族環が1つ以上の炭素環非芳香族環(例えば、テトラヒドロナフチレン、インダンなど)に融合している縮合多環芳香族環系も含む。本明細書において、「アリール」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。
【0032】
s.本明細書において、「ヘテロアリール」という用語は、窒素、硫黄、および酸素から個別に選択される1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子を含む芳香族ヘテロ環を意味する。本明細書において、「ヘテロアリール」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。ヘテロアリールは、1個または2個の環、例えば、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールに融合することができる。ある分子に対するヘテロアリールの結合点は、ヘテロアリール上、シクロアルキル上、ヘテロシクロアルキル上、またはアリール環上にあり得、ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して結合させることができる。ヘテロアリール基は、置換型でも非置換型でもよい。ヘテロアリール基の例は、イミダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、キノリル、イソキノリニル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、インドリジニル、イミダゾピリジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、テトラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンズオキサジアゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キナゾリニル、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジル、ピラゾロ[3,4]ピリミジル、またはベンゾ(b)チエニルなどであるが、これらはそれぞれ任意で置換型であってもよい。
【0033】
t.本明細書において、「アリールアルキル」という用語は、アルキレンリンカーを介して別の部分に結合しているアリール基を意味する。本明細書において、「アリールアルキル」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。
【0034】
u.本明細書において、「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アルキレンリンカーを介して別の部分(例えば、アルキル基またはヘテロアルキル基)に結合しているヘテロアリール基を意味する。本明細書において、「ヘテロアリールアルキル」という用語は、置換型または非置換型の基を意味する。
【0035】
任意のアルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基に対する適当な置換基には、本発明の実施形態において用いられる反応条件下で安定している任意の置換基が含まれる。適当な置換基の非限定的な例は、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基など)、ハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基など)、アリール基(例えば、フェニル基)、アリールアルキル基(例えば、ベンジル基)、ニトロ基、シアノ基、四級化窒素原子、またはハロ基(例えば、フッ素基、塩素基、臭素基、およびヨウ素基など)などである。
【0036】
なお、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基の任意の飽和部位を、=O、=S、=N−R”(但し、R”は前記で定義されている)により置換することも可能である。
【0037】
ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、またはヘテロアリールアルキル基が窒素原子を含む場合、置換型でも非置換型でもよい。ヘテロアリール基の芳香環内の窒素原子が置換基を有する場合、窒素は四級化窒素原子でもよい。
【0038】
v.本明細書において、「アミノ酸」は、R”’−NH−CH(R””)−C(O)−R”’(但し、式中、R”’は独立して、水素、脂肪族基、置換脂肪族基、芳香族基、別のアミノ酸、ペプチド、または置換芳香族基である)と表示される基を意味する。「天然型アミノ酸」とは、自然界に存在するアミノ酸のことである。それらの例には、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リジン、オルニチン、プロリン、ヒドロキシプロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニン、およびヒスチジンが含まれる。いくつかの実施形態において、R””は、水素、または天然型アミノ酸の側鎖でもよい。天然型アミノ酸の側鎖の例には、メチル基(アラニン)、イソプロピル基(バリン)、sec−ブチル(イソロイシン)、−CHCH(−CH(ロイシン)、ベンジル基(フェニルアラニン)、p−ヒドロキシベンジル基(チロシン)、−CH−OH(セリン)、−CHOHCH(スレオニン)、−CH−3−インドイル基(トリプトファン)、−CHCOOH(アスパラギン酸)、−CHCHCOOH(グルタミン酸)、−CHC(O)NH(アスパラギン)、−CHCHC(O)NH(グルタミン)、−CHSH(システイン)、−CHCHSCH(メチオニン)、−(CHNH(リジン)、−(CHNH(オルニチン)、−{(CH)NHC(=NH)NH(アルギニン)、および−CH−3−イミダゾイル基(ヒスチジン)が含まれる。
【0039】
ヘテロ原子含有官能基を含むアミノ酸の側鎖、例えば、アルコール基(セリン、チロシン、ヒドロキシプロリン、およびスレオニン)、アミン基(リジン、オルニチン、ヒスチジン、およびアルギニン)などは、本明細書で検討する反応を促進するためには保護基を必要とするかもしれない。ヘテロ原子含有官能基を修飾して保護基を含ませる場合、側鎖は、アミノ酸の「保護側鎖」と呼ばれる。保護基は、ペプチド合成法において一般的に使用されており、当業者に周知され、しばしば使用されている。例えば、多数の適当な保護基、および保護アミノ酸を調製する方法が、Green ら,Protecting Groups In Organic Synthesis,Third Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,1999に記載されていよう。
【0040】
w.本明細書において、「塩型」という用語は、ある化合物の塩、またはある化合物の塩の混合物を意味する。化合物の双性イオン型も、「塩型」という用語に含まれる。アミン基、またはその他の塩基性基をもつ化合物の塩は、例えば、塩化水素、臭化水素、酢酸、過塩素酸など、適当な有機酸または無機酸と反応させることによって得ることができる。四級アンモニウム基をもつ化合物は、塩素、臭素、ヨード、酢酸、過塩素酸などの対アニオンを含むことも可能である。カルボン酸、またはその他の酸性官能基を有する化合物の塩は、化合物を適当な塩基、例えば、水酸化塩基などと反応させることによって調製することができる。したがって、酸性官能基の塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの対カチオンをもつかもしれない。
【0041】
5.説明
I.一般的説明
当然ながら、この「一般的説明」の節に記載した以下の考察は、本明細書記載の発明の多様な実施形態の一部またはすべてに関連し得る。
【0042】
PNA合成
PNAを化学的に組み立てる方法は既知である(例えば、米国特許第5,539,082号、第5,527,675号、第5,623,049号、第5,714,331号、第5,718,262号、第5,736,336号、第5,773,571号、第5,766,855号、第5,786,461号、第5,837,459号、第5,891,625号、第5,972,610号、第5,986,053号および第6,107,470号参照)。PNA合成法に関する一般的な参考文献としては、Nielsen ら,Peptide Nucleic Acids;Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,Norfolk England(1999)を参照されたい。
【0043】
ペプチド核酸を支持体に結合させて自動で化学的に組み立てるための化学物質および装置を利用することができる。標識されたPNAオリゴマーも非標識のPNAオリゴマーも、同じように、特注PNAオリゴマーの販売業者から入手することができる。PNAの化学的組み立ては、固相ペプチド合成と同様であるが、ただし、組み立ての各サイクルにおいて、オリゴマーは成長しているポリマーに付加される次のシントンと縮合することができる反応性アルキルアミノ末端を有する。標準的なペプチド化学法を利用することができるため、天然型および非天然型のアミノ酸を普通にPNAオリゴマーの中に取り込ませることができる。PNAはポリアミドであるため、C末端(カルボキシル末端)とN末端(アミノ末端)を有する。標的配列に逆平行(好適な方向)に結合させるのに適したハイブリダイゼーション用プローブを設計するためには、PNAプローブのプローブ用核酸塩基配列のN末端を、同等のDNAまたはRNAのオリゴヌクレオチドの5’−ヒドロキシル基末端と同じにする。しかし、PNAオリゴマーは、核酸にも別のPNAオリゴマーにも平行方向に結合することも知られているため、ハイブリダイゼーションの方向は限定的なものではない。
【0044】
PNA標識:
PNAオリゴマーを標識するための非限定的な方法は、米国特許第6,110,676号、第6,355,421号、第6,361,942号、および第6,485,901号に記載されているか、またはPNA合成の技術分野において知られている。PNAオリゴマーを標識するための別の非限定的な例が、Nielsen ら,Peptide Nucleic Acids;Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,Norfolk England(1999)においても考察されている。PNAオリゴマーおよびオリゴヌクレオチドは、米国特許第6,197,513号に記載されているように、タンパク質(例えば、酵素)およびペプチドにより標識することができる。このように、さまざまな標識PNAオリゴマーを調製するか、または販売業者から購入することができる。
【0045】
核酸の合成および修飾
核酸オリゴマー(オリゴヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチド)合成は日常的なものになっている。核酸合成の詳細な説明については、Gait,M.J.,Oligonucleotide Synthesis:a Practical Approach.IRL Press,Oxford Englandを参照されたい。当業者は、標識オリゴヌクレオチドおよび非標識オリゴヌクレオチド(DNA、RNAおよびそれらの合成アナログ)を容易に利用できることを認識しているはずである。これらは、市販の機器および試薬を用いて合成するか、あるいは特注製造されるオリゴヌクレオチドの販売業者から購入することができる。
【0046】
PNA/DNAキメラの合成および修飾
PNA/DNAキメラは、核酸およびペプチド核酸のサブユニットを組み合わせたものである。PNA/DNAキメラの合成、標識および修飾についての適当な参考文献は、米国特許第6,063,569号の中に見出すことができる。さらに、PNAを合成および標識するための上記方法は、PNA/DNAキメラのPNA部分を修飾するためにしばしば用いることができる。加えて、核酸を合成および標識するための既知の方法を、PNA/DNAキメラの核酸部分を修飾するためにしばしば用いることができる。したがって、PNA/DNAキメラを合成、標識、および修飾するには、当業者に周知の方法、ならびに上記で説明された方法、または上記で言及された方法を利用することができる。
【0047】
標識
PNAオリゴマーおよびPNA/DNAキメラは標識を含むことができる。ポリ核酸塩基鎖(例えば、PNAオリゴマー)を標識するために用いることができる検出可能な成分(標識)の非限定的な例には、デキストラン結合体、分枝状核酸検出系、発色団、フルオロフォア、スピン標識、放射性同位体、酵素、ハプテン、アクリジニウムエステル、または化学発光性化合物などがある。その他の適当な標識試薬および好適な結合法は、PNA、ペプチド、または核酸の合成法の技術分野の当業者によって認識されているであろう。
【0048】
ハプテンの非限定的な例は、5(6)−カルボキシフルオレセイン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、およびビオチンなどである。
【0049】
蛍光色素(フルオロフォア)の非限定的な例は、5(6)−カルボキシフルオレセイン(Flu)、6−((7−アミノ−4−メチルクマリン−3−アセチル)アミノ)ヘキサン酸(Cou)、5(および6)−カルボキシ−X−ローダミン(Rox)、シアニン2(Cy2)色素、シアニン3(Cy3)色素、シアニン3.5(Cy3.5)色素、シアニン5(Cy5)色素、シアニン5.5(Cy5.5)色素、シアニン7(Cy7)色素、シアニン9(Cy9)色素(シアニン色素2、3、3.5、5および5.5はAmersham,Arlington Heights,IL.からNHSエステルとして入手可能)、またはAlexa色素シリーズ(Molecular Probes,Eugene,OR.)などである。
【0050】
酵素の非限定的な例は、ポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ、Klenow DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Sequenase、DNAポリメラーゼ1およびphi29ポリメラーゼ)、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、大豆ペルオキシダーゼ(SBP))、リボヌクレアーゼ、およびプロテアーゼなどである。
【0051】
スペーサー/リンカー部分
PNAオリゴマーおよびPNA/DNAキメラは、スペーサーおよび/またはリンカー部分を含むことができる。通常、スペーサーを用いて、大量の標識試薬がプローブのハイブリダイゼーション特性に与え得る有害作用を最小化する。リンカーは、一般的には、ポリ核酸塩基鎖に柔軟性および無秩序(randomness)を生じさせ、あるいはポリ核酸塩基鎖の2つ以上の核酸塩基配列を結びつける。本明細書に記載されたポリ核酸塩基鎖の好適なスペーサー/リンカー部分は、1つ以上のアミノアルキルカルボン酸(例えば、アミノカプロン酸)、アミノ酸の側鎖(例えば、リジンまたはオルニチンの側鎖)、天然アミノ酸(例えば、グリシン)、アミノオキシアルキル酸(例えば、8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸)、アルキル二酸(例えば、コハク酸)、アルキルオキシ二酸(例えば、ジグリコール酸)、またはアルキルジアミン(例えば、1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン)を含むことができる。ポリ核酸塩基鎖の可溶性が改善されるよう、スペーサー/リンカー部分を偶発的または意図的に構築することもできる(例えば、Gildea ら,Tett.Lett.39:7255−7258(1998)ならびに米国特許第6,326,479号および第6,770,442号参照)。
【0052】
例えば、スペーサー/リンカー部分は、化学式:−Q−(O−(CM−T−をもつ1つ以上の連結化合物を含むことができる。Q基は、単結合、−(CM−、−C(O)(CM−、−C(S)(CM−、および−S(O)(CM-からなる群から選択することができる。T基は化学式NH、NR″″′、S、−SO−、またはOをもつことができる。Mはそれぞれ独立して、H、R″″′、−OR″″′、F、Cl、BrまたはIでありえるが、ただし、R″″′はそれぞれ独立して、−CV、−CVCV、−CVCVCV、−CVCV(CVおよび−C(CVからなる群から選択することができ、ただし、ここで、Vはそれぞれ独立して、水素(H)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であってもよい。mはそれぞれ独立して、0または1であってもよい。n、oおよびpはそれぞれ独立して、0から10までの整数であってもよい。いくつかの実施形態において、n、oおよびpはそれぞれ独立して、0から3までの整数であってもよい。
【0053】
II.本発明のさまざまな実施形態
a.方法
i)アルキル化
本発明の方法は、全般には8−アザ−7−デアザアデニンを含む組成物を製造することに関し、該組成物を製造するための中間体を含む。これらの方法は、8−アザ−7−デアザアデニンを含むPNAモノマーおよびPNAオリゴマーを製造する際に有用である。該PNAオリゴマーにおいて、8−アザ−7−デアザアデニンはユニバーサル塩基として機能することができる。ユニバーサル塩基とは、8−アザ−7−デアザアデニンが、他のポリ核酸塩基鎖において、核酸塩基であるアデニン、チミン、グアニンまたはシトシンと特異的に水素結合を形成することができることを意味する。したがって、核酸塩基8−アザ−7−デアザアデニンを含むPNAオリゴマーは、相補的なポリ核酸塩基鎖において、アデニン、チミン、グアニンまたはシトシンのいずれかが、この8−アザ−7−デアザアデニンの反対側にある相補的なポリ核酸塩基鎖に配列特異的にハイブリダイズすることができる。
【0054】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、置換型または非置換型の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリル化合物をアルキル化する方法に関する。置換型3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルとは、ピラゾール環の5位の炭素において、水素原子が置換されていることを意味する。水素原子を置換した5位の炭素の置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であってもよいが、ただし、この置換基は、アルキル化反応の過程で反応性をもつ1つ以上の基を含まない。Green ら,Protecting Groups In Organic Synthesis,Third Edition,John Wiley & Sons,Inc.New York,1999に記載されているように、反応基の可能性があるものは、保護基により保護し、その後、必要に応じて脱保護することができる。
【0055】
図2に関して、3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルの2つの互変異性体が存在することが知られている。これらは、ピラゾール環の番号に基づいて、N−1およびN−2の互変異性体として知られている。アルキル化は、2つの環窒素原子の一方で進行することがあるが、いくつかの実施形態においては、選好なしに窒素原子の両方で生じてもよい。2つの互変異性型が存在するせいで、3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルをアルキル化すると、2つの異なる生成物(すなわち、それぞれ化合物1Aおよび1Bとして、図2の中で同定されているN−1アルキル化型またはN−2アルキル化型)が形成される。N−1アルキル化3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルは、8−アザ−7−デアザアデニンのN−8アルキル化型を調製するために使用することができる。本出願人らは、図2に示された具体的組成物(すなわち、1Aおよび1B)は結晶化技術によって分離することができることを測定したが、クロマトグラフィーまたはその他の分離法を適用して、結晶化によっては分離できない他のアルキル化化合物の分離をもたらすことができる。適当な分離法は、有機化学分野の当業者に周知されていよう。
【0056】
数多くのハロアセテート誘導体およびハロアセテートのさまざまなエステルが市販されている。置換型または非置換型の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルをアルキル化するのに有用なアルキル化試薬は、以下の化学式をもつハロアセテート化合物であってもよい:
【0057】
【化20】

ただし、式中、各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であってもよい。R基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基またはヘテロアリールアルキニル基であってもよい。Halは、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)であってもよい。各Xは、独立して、OまたはSであってもよい。各XはOであってもよい。
【0058】
置換型または非置換型の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルのアルキル化は、ハロアセテートまたはハロアセテートのエステルを使用して、塩基性条件下、極性非プロトン性有機溶媒の中で行うことができる。置換型または非置換型の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルをアルキル化するために用いられる条件は、PNAモノマーの製造に適用されるように、核酸塩基をアルキル化するために用いられる条件と実質的に同じであってもよい(米国特許第5,539,082号、第6,357,163号、第6,710,163号、第6,265,559号および第6,133,444号参照)。
【0059】
置換型または非置換型の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルからプロトンを除去するのに十分強い非求核性塩基を用いることができる。アルキル化剤がカルボン酸(例えば、化合物I)であって、そのカルボン酸のエステル(例えば、化合物II)でない場合には、1当量のカルボン酸につき少なくとも2当量の塩基をアルキル化反応において使用しなければならない。塩基は有機物または無機物であってもよい。そのような非求核性塩基の非限定的な例は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、カリウムtert−ブトキシド、トリエチルアミン、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどである。
【0060】
溶媒は、置換型または非置換型の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルが少なくともやや溶けにくくなるように、溶媒を選択することができる。溶解性が高まると、より早い反応が容易になるため、3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルが、より可溶性になる可能性がある。この溶媒は非プロトン性でなければならず、そのことによって、塩基性条件下において置換型または非置換型3−アミノピラゾール4−カルボニトリルの脱プロトン化よりも溶媒の脱プロトン化が優先されるのを回避する。極性非プロトン性溶媒の非限定的な例には、N−メチル−ピロリジノン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が含まれる。別の極性非プロトン性溶媒が当業者に知られている。適当な溶媒を、日常的な実験法または本明細書の記述を適用して、当業者が選択することができる。
【0061】
このように、いくつかの実施形態において、本発明は、以下の化学式のハロアセテート部分によって、置換型または非置換型の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルをアルキル化することを包含する方法に関する:
【0062】
【化21】

ただし、式中、W基、Hal基、X基およびR基は上記で定義されている。いくつかの実施形態において、各Wは、独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、またはsec−ブチルであってもよい。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、アリル、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、またはフェニルであってもよい。いくつかの実施形態において、Rはイソブチル、tert−ブチル、またはsec−ブチルであってもよい。いくつかの実施形態において、Rはアリル、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリルまたはフェニルであってもよい。
【0063】
この方法に従えば、アルキル化反応の生成物の少なくとも1つは、以下の化学式の置換型または非置換型の複素環式化合物であり得る:
【0064】
【化22】

ただし、式中、WおよびXは上記で定義されている。Rは水素またはRであってもよいが、ただし、Rは上記で定義されている。いくつかの実施形態において、置換型または非置換型の複素環式化合物(化合物III)は、結晶化によるか、またはクロマトグラフィーによるなど、別の方法によって、この反応の別のアルキル化産物から単離することができる。
【0065】
ハロアセテート(例えば、化合物I)を用いてアルキル化を実施する場合、生成物を塩基性塩の形態で単離するか、または生成物を酸性化して、双性イオンの形態またはアミンプロトン化カルボン酸の形態を再生させることができる。
【0066】
ハロアセテートによってアルキル化された化合物(例えば、化合物I)では、既知のエステル化法を用いて、カルボン酸基をエステルに変換することができる。例えば、エステルを形成させるさまざまな方法が、Green ら,Protecting Groups In Organic Synthesis,Third Edition,John Wiley & Sons,Inc.New York,1999の中に記載されている。
【0067】
一般化学式IIIをもつ、いくつかの具体的な化合物を作成する方法が、下記の実施例の節および図の中に記載されている。
【0068】
ii)核酸塩基の生成
N−1アルキル化された置換型または非置換型の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリル化合物のエステル(例えば、化合物III)を、N−8アルキル化された置換型または非置換型の8−アザ−7−デアザアデニンに変換させることについて、以下の方法を考察する。ピラゾールの該エステルは、「アルキル化」という標題で上記したように調製することができる。
【0069】
以下の化学式をもつアルキル化された置換型または非置換型の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリル化合物のエステル(チオエステルを含む)を、
【0070】
【化23】

以下の化学式の置換型または非置換型のジアミンと反応させるか、
【0071】
【化24】

または以下の化学式の置換型または非置換型の化合物と反応させて、
【0072】
【化25】

N−8アルキル化された置換型または非置換型の8−アザ−7デアザアデニン化合物を生成することができる。このN−8アルキル化された置換型または非置換型の8−アザ−7デアザアデニン化合物を保護し、必要に応じて脱保護してから、置換型または非置換型の8−アザ−7デアザアデニン核酸塩基を含むPNAオリゴマーの製造に使用することができる。上に示した3つの構造について、W基、X基およびR基は、上記で定義されている。W′基は水素または−NHであってもよい。
【0073】
ジアミン(すなわち、化合物IVa)について置換型または非置換型というのは、W基が水素(非置換型)または別の置換基(置換型)であることを意味する。H−Ac基は、ジアミンをプロトン化することができる酸性基である。化合物VIaは、1当量の酸をジアミンに加えることによって、ジアミンから生成させることができる。この酸性基は酢酸であってもよい。この酸性基はHClでもHBrであってもよい。この酸性基は、アミンをプロトン化するのに適したpKをもつ別の酸性基であってもよい。
【0074】
化合物IVaを使用する場合、反応は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールまたはtert−ブタノールなどのアルコール性溶媒の中で進行させることができる。反応は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルスルホキシド(DMSO)など、他の極性溶媒の中で進行させることができる。
【0075】
化合物IVbを使用する場合、反応は、いくつかの実施形態において、化合物IVbを溶媒として用いて進行させることができる。いくつかの実施形態において、極性溶媒(例えば、アルコール)を使用してもよい。
【0076】
化合物IVaまたはIVbのいずれを使用するにしても、化合物IIIは、少なくとも、反応条件下において難溶性でなければならないが、選択された溶媒の中では非常に溶けやすいか、完全に可溶性であってもよい。可溶性が高いほど、反応が早く進行する。反応液を加熱して、溶媒中での化合物IIIの反応速度および溶解度を増大させてもよい。いくつかの実施形態において、反応液を選択された溶媒の中で還流させる。具体的な反応条件は、使用される出発物質に応じて、当業者が、本明細書に示された指針に従って、通常の実験を実施して決定することができる。
【0077】
このように、いくつかの実施形態において、本発明は、以下の化学式の置換型または非置換型の複素環式化合物を
【0078】
【化26】

以下の化学式の置換型または非置換型のジアミン:
【0079】
【化27】

または以下の化学式の置換型または非置換型の化合物:
【0080】
【化28】

と反応させることを包含する方法に関するが、
ただし、式中、W、W′、X、RおよびH−Acは上記で定義されている。いくつかの実施形態において、前記方法を還流状態で行うことも可能である。いくつかの実施形態において、溶媒は、化合物IVb、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、DMF、またはDMSOであってもよい。いくつかの実施形態において、Rはイソブチル、tert−ブチル、またはsec−ブチルであってもよい。いくつかの実施形態において、Rはアリル、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、またはフェニルであってもよい。いくつかの実施形態において、各Xは、Oである。
【0081】
いくつかの実施形態において、この反応は、以下の化学式の置換型または非置換型の複素環式化合物を生成させる:
【0082】
【化29】

ただし、式中、W、XおよびRは上記で定義されている。
【0083】
いくつかの実施形態において、この方法は、置換型または非置換型の複素環式化合物の環外アミンをアミン保護基で保護することをさらに含むことができる。この保護された置換型または非置換型の複素環式化合物は以下の化学式をもつことができる:
【0084】
【化30】

ただし、式中、W基、X基、R基およびPg基は上記で定義されている。
【0085】
保護基、および保護アミン基を作出する方法は、当技術分野において周知されており、この作出法の例はGreen ら,Protecting Groups In Organic Synthesis,Third Edition,John Wiley & Sons,Inc.New York,1999に記載されている。
【0086】
前記の置換型または非置換型の複素環式化合物の環外アミン基を保護するのにも適用することができる、核酸塩基の環外アミン基を保護するためのその他の既知の方法は、米国特許第6,063,569号、第6,172,226号および第6,133,444号に記載されている。本明細書に記載されているように、一般的には、環外アミンはカルボニル等価体(例えば、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲン)と反応させることができ、次に、イミダゾリドまたはイソシアネートを、アルコール(例えば、置換型または非置換型の9−フルオレンメタノール、ジフェニルメタノール(ベンズヒドロール)、ベンジルアルコール、tert−ブタノール、または3−ヒドロキシプロピオニトリル)と反応させて、カルバメートとして保護されたアミンを生成することができる。
【0087】
例えば、アミノ保護基は、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、またはCyocであってもよく、ただし、このFmoc保護基、Bhoc保護基、Z保護基、t−boc保護基、またはCyoc保護基は置換型でも非置換型でもよい。したがって、本明細書において、Fmoc保護基、Bhoc保護基、Z保護基、t−boc保護基またはCyoc保護基は以下の一般式をもち得る:
【0088】
【化31】

ただし、式中、A′はそれぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、メトキシ、またはエトキシである。B′はそれぞれ独立して、水素、メチル、またはエチルである。D′はそれぞれ独立して、メチル、トリフルオロメチル、またはエチルである。E′はそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、またはtert−ブチルである。Hは水素であり、G′は電子求引基である。例えば、G′は−CNまたは−NOであってもよい。図示したように、括弧「}」は、保護基が、核酸塩基の環外アミン(例えば、化合物VIのPg)に結合する箇所を示している。
【0089】
環外アミンが保護されると否とにかかわらず、エステルは、保護型または非保護型の核酸塩基をPNAシントンまたはPNAオリゴマーに結合させるために用いることができるカルボン酸基に変換することができる。エステルをカルボン酸基に変えることは、エステルと、核酸塩基上の任意の保護基との性質に応じて、塩基性条件下または酸性条件下で行うことができる。エステルは保護基と考えることができるため、あるエステルをカルボン酸基に塩基性下または酸性下で変換する方法を、Green ら,Protecting Groups In Organic Synthesis, Third Edition,John Wiley & Sons,Inc.New York,1999に見出すことができる。
【0090】
このように、いくつかの実施形態において、この方法は、非保護型化合物(V)のエステルをカルボン酸基またはチオカルボン酸基に変換し、それによって、以下の化学式をもつ保護されていない置換型または非置換型の複素環式化合物を生成させることをさらに含むことができる。
【0091】
【化32】

ただし、式中、WおよびXは上記で定義されている。この保護されていない置換型または非置換型の複素環式化合物(VII)は、8−アザ−7−デアザアデニン核酸塩基を含む。8−アザ−7−デアザアデニンの環外アミンは、アミン保護基によって保護することができ、部分的に保護された複素環を用いて、PNAオリゴマーの合成に用いることができるPNAシントン(モノマー)を生成させることができる。部分的に保護された複素環を、置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分がPNAオリゴマーのPNAサブユニットまたはPNA/DNAキメラのPNAサブユニットであるPNAオリゴマーの骨格に直接結合させることができる(実施例11を参照)。
【0092】
さらに、いくつかの実施形態において、この方法は、保護された置換型または非置換型の複素環式化合物(VI)のエステルをカルボン酸基またはチオカルボン酸基に変換し、それによって、以下の化学式をもつ部分的に保護された置換型または非置換型の複素環式化合物を生成させることをさらに含むことができる。
【0093】
【化33】

ただし、式中、W、PgおよびXは上記で定義されている。いくつかの実施形態において、Pgは、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、またはCyocである。これらの部分的に保護された複素環式化合物は、8−アザ−7−デアザアデニン核酸塩基を含み、PNAオリゴマーを合成する際に使用することができるPNAシントン(モノマー)を製造するのに適している。部分的に保護された複素環式化合物を、PNAオリゴマーの骨格に直接結合させることも可能である(実施例11を参照)。
【0094】
一般化学式V、VI、VII、またはVIIIをもつ具体的な化合物を生成させる方法が、以下の実施例の節および図の中に記載されている。
【0095】
iii)PNAシントンの製造
PNAシントン(PNAモノマーと呼ばれることもある)は、PNAオリゴマーを組み立てるために用いられる基本的な構成単位である。PNAオリゴマーを組み立てる方法、組成物、および機器類は市販されている。
【0096】
8−アザー7−デアザアデニン核酸塩基を含む、上記した部分的に保護された置換型または非置換型の複素環式化合物(例えば、化合物VIII)のさまざまなものを、ユニバーサル塩基として1つ以上の8−アザ−7−デアザアデニンを含むPNAオリゴマーを組み立てるのに適したユニークなPNAモノマーを製造するために使用することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、上記の部分的に保護された置換型または非置換型の複素環式化合物(すなわち、化合物VIII)のカルボン酸基またはチオカルボン酸基を活性化させてから、そのカルボニル基またはチオカルボニル基を、置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分の二級窒素と反応させることができる。このようにして、核酸塩基を含む部分を、N−(2−アミノエチル)グリシン骨格部分に結合させることができる。アミン基と反応させるためにカルボン酸基およびチオカルボン酸基を活性化する方法は周知されており、ペプチド合成の分野においてもしばしば実施されている。
【0098】
例えば、カルボン酸基またはチオカルボン酸基のカルボニル炭素またはチオカルボニル炭素を、混合無水物を形成することによって、N−(2−アミノエチル)グリシンの骨格部分の二級アミン基(または別の求核基)と反応させるために活性化させることができる(例えば、米国特許第6,133,444号、第6,172,226号、第6,265,559号および第6,451,968号、ならびに実施例7および10参照)。カルボニル炭素またはチオカルボニル炭素も、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)または1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)と組み合わせて、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−tirs−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロリン酸(BOP)などの既知のペプチド結合試薬と反応させるために、またはO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸(HBTU)または2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸(HATU)と直接反応させることによって、活性化させることができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記した部分的に保護された置換型または非置換型の複素環式化合物(例えば、化合物VIII)のカルボン酸基またはチオカルボン酸基は、活性エステルに変換することができる。活性エステルはペプチド合成において知られており、ペプチド合成で一般に用いられる条件下で容易にアミノ酸のアミンと反応する一定のエステルを意味する(活性エステルについて検討するには、Innovation And Perspectives In Solid Phase Synthesis,Editor:Roger Epton,SPCC(UK)Ltd,Birmingham,1990を参照されたい)。活性エステルの一般に用いられる形態はN−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルである。活性エステルを、置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分の二級窒素(すなわち、N−グリシル窒素)と反応させることができる。このようにして、核酸塩基を含む部分をN−(2−アミノエチル)グリシン骨格部分と結合させることができる。
【0100】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、式:
【0101】
【化34】

の置換型または非置換型の複素環式化合物のカルボン酸基、チオカルボン酸基、または活性エステル基(チオール化活性エステルを含む)のカルボニル炭素またはチオカルボニル炭素を、置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分の二級窒素と反応させることを包含する方法に関するが、ただし、上記式中、W基、Pg基、およびX基は上記で定義されている。R基は−OH、−SH、または活性エステル脱離基であってもよい。例えば、この活性エステル脱離基は以下のものであってもよい:
【0102】
【化35】

ただし、式中、XはOまたはSである。
【0103】
いくつかの実施形態において、置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分は以下の化学式を有することが可能である:
【0104】
【化36】

ただし、式中、Pgはアミン保護基であり、Yはそれぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であってもよい。置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分は、Yおよび/またはYとして同定された基における水素の置換を意味する。Y基はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基またはヘテロアリールアルキル基であってもよい。Y基は水素、または保護されているか保護されていないアミノ酸側鎖であってもよい。R基は−OH、−SH、SR、または−ORであってもよいが、ただし、Rは上記で定義された通りである。例えば、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、アリル、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、またはフェニルであってもよい。
【0105】
Pgは、Pgとは異なるアミン保護基であってもよい。Pgは、Pgとは独立して、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、またはCyocであってもよい。トリチル基も、PNAオリゴマー合成で用いられるPNAモノマーの骨格の一級アミンを保護するためにも用いられているため(Vinayank ら,Nucleosides and Nucleotides,16(7−9):1653−1656(1997)参照)、Pgは以下の化学式の置換型または非置換型のトリチル基であってもよい:
【0106】
【化37】

ただし、式中、A′は上記で定義されている。括弧「}」は結合点を示す。
【0107】
置換型または非置換型の複素環式化合物(例えば、化合物VIII)のカルボニル炭素またはチオカルボニル炭素を、置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分の二級窒素と反応させると、部分的に保護された置換型または非置換型の核酸塩基部分を、置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分の性質に応じて、PNAモノマー、PNAオリゴマーまたはPNA/DNAキメラの骨格部分に結合する。
【0108】
部分的に保護されたアルキル化核酸塩基が部分的に保護された骨格サブユニットと結合している、PNAシントンを製造する一般的な手順が知られている(米国特許第5,539,082号、第6,063,569号、第6,172,226号、および第6,133,444号参照)。さまざまな溶媒および条件を使用して、この方法によってPNAモノマーが製造されてきた。以下の実施例の節に示されているように(例えば、実施例7および10)、適当な一部保護された核酸塩基(例えば、化合物IX)が利用可能ならば、本明細書の開示内容と組み合わせて日常的な実験を行うことによって、8−アザ−7−デアザアデニン核酸塩基を含むPNAシントンの製造に、これらの条件を適用することができる。
【0109】
その結果、いくつかの実施形態において、この方法を実施して製造されたPNAシントンは以下の一般化学式をもつことができる:
【0110】
【化38】

ただし、式中、Y、Y、W、R、PgおよびPgは上記で定義されている。各Xは、独立して、OまたはSである。
【0111】
一般化学式XIを有する特定のPNAモノマーを製造する方法は、以下の実施例の節、および図の中に記載されている。
【0112】
iv)組み合わせ
いくつかの実施形態において、本発明は、上記の方法を2つ以上組み合わせて実施することに関する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、上記した「アルキル化」法の一部または全部の態様を、上記した「核酸塩基の生成」法の一部または全部の態様と組み合わせて実施することに関する。いくつかの実施形態において、本発明は、上記した「核酸塩基の生成」法の一部または全部の態様を、上記した「PNAシントンの製造」法の一部または全部の態様と組み合わせて実施することに関する。さまざまな実施形態において、本発明は、上記した「アルキル化」法の一部または全部の態様を、上記した「核酸塩基の生成」法の一部または全部の態様と組み合わせ、さらに、上記した「PNAシントンの製造」法の一部または全部の態様と組み合わせて実施することにも関する。
【0113】
b.組成物
いくつかの実施形態において、本発明は、8−アザ−7−デアザアデニンを含む一定の組成物に関し、該組成物を製造するための中間体などを含む。
【0114】
すなわち、いくつかの実施形態において、本発明は、以下の化学式の置換型または非置換型の複素環式化合物に関する:
【0115】
【化39】

ただし、式中、W、RおよびX基は上記で定義されているが、ただし、Rはエチルではない。例えば、Rは、メチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、アリル、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、またはフェニルであってもよい。いくつかの実施形態において、Rはイソブチル、tert−ブチル、またはsec−ブチルであってもよい。いくつかの実施形態において、Rはアリル、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、またはフェニルであってもよい。いくつかの実施形態において、各Xは、Oであってもよい。前記した置換型または非置換型の複素環式化合物は、「アルキル化」という副標題の下、本明細書で上述されている3−アミノピラゾール−4−カルボニトリルのアルキル化によって製造することができる。
【0116】
さまざまな実施形態において、本発明は、以下の化学式の置換型または非置換型の複素環式化合物にも関する:
【0117】
【化40】

ただし、式中、W基、X基およびR基は上記で定義されている。Pg基は水素基またはアミン保護基であってもよい。例えば、アミン保護基はFmoc、Bhoc、Z、t−boc、またはCyocであってもよい。いくつかの実施形態において、Rは−SRまたは−ORであってもよい(ただし、Rは上記で定義されている)。例えば、Rはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、アリル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、またはフェニルであってもよい。いくつかの実施形態において、Rはイソブチル、tert−ブチル、またはsec−ブチルであってもよい。いくつかの実施形態において、Rはアリル、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、またはフェニルであってもよい。いくつかの実施形態において、XはOであってもよい。
【0118】
前記の置換型または非置換型の複素環式化合物は、アルキル化3−アミノピラゾール−4−カルボニトリル(すなわち、化合物IIIa)を、「核酸塩基の生成」という副標題下で既述されているジアミン(すなわち、化合物IVa)、または化学式IVbをもつ化合物と反応させて製造することができる。
【0119】
いくつかの実施形態において、この置換型または非置換型の複素環式化合物は、以下の化学式をもち得る:
【0120】
【化41】

【0121】
【化42】

ただし、この化合物は任意で置換されている。
【0122】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下の化学式をもつPNAシントンにも関する:
【0123】
【化43】

ただし、式中、Y、Y、W、R、PgおよびPgは上記で定義されている。各Xは、独立して、OまたはSである。該PNAシントンは、「PNAシントンの製造」という副標題下で既述されているようにして製造することができる。目的とするPNAシントンの非限定的な例は、図7Aおよび7Bに記載されている。
【実施例】
【0124】
6.実施例
本教示の態様は、以下の実施例に照らせば、さらに理解することができるが、これらの実施例は、如何なる意味においても、本教示の範囲を制限するものと解してはならない。
【0125】
実施例1:3−アミノ−4−シアノ−ピラゾロ−N1−酢酸t−ブチル(1A)の合成
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、150mL)中の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリル溶液(25.00g、0.23モル、Lancaster,USA,P/N 7086)に、炭酸カリウム(48.39g、0.35モル、Aldrich Chemical,Milwaukee,Wisconsin,USA,P/N 34782)を加えた。この反応混合液を30分間室温で攪拌してから、ブロモ−第三級ブチルアセテート(41.4mL、モル、Aldrich chemical,Milwaukee、Wisconsin,USA,P/N 124230)をゆっくり加えた。この反応混合液を、さらに2時間室温で攪拌した。次に、反応混合物を濾過してから蒸発乾固した。この粗混合物をジクロロメタン(1.5L)に溶解し、有機層を水(1.0L)、次いで5%NaCl溶液で洗浄した。有機層を、硫酸ナトリウムで分離乾燥させ、蒸発させた。この粗混合物をジクロロメタンによって結晶化させて、3−アミノ−4−シアノ−ピラゾール−N2−酢酸t−ブチル(1B)が得られたが、母液からは、3−アミノ−4−シアノピラゾール−N1−酢酸t−ブチル(1A)が得られた。化合物1Aの収量は20.65g(41%)であった。
化合物1Aの1H−NMR
【0126】
【化44】

実施例2:6−アミノ−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−酢酸t−ブチル(2)の合成
3−アミノ−4−シアノピラゾール−N−酢酸t−ブチル(1A)(3.0g、13.6mmol)を無水エタノール(150mL、Aldrich Chemical,Milwaukee,Wisconsin,USA)に溶解してから、酢酸ホルムアミジン(4.0g、20.18mmol、Aldrich Chemical,Wisconsin,USA,P/N 15803)を加えた。この反応混合液を14時間加熱して還流し、濾過してから蒸発乾固した。残留物をフラッシュシリカゲルカラムによって精製した。生成物を、ジクロロメタン中2〜6%のメタノールで溶出した。適当な画分を集め、蒸発させた。収量は1.53g(75%)であった。
【0127】
【化45】

実施例3:N−ベンジルオキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]−ピリミジン−N−イル−酢酸t−ブチル(3)の合成
6−アミノ−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N8−イル−酢酸tBu(2)(8.52g、32.02mmol)を、無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、85mL)に懸濁し、混合液をアルゴン下で攪拌した。この混合液に、1,1−カルボニルジイミダゾール(CDI、7.8g、48.4mmol、Aldrich Chemical,Milwaukee,Wisconsin,USA,P/N 115533)を加え、反応混合液を95〜103℃の温度で攪拌した。2時間後、温度を75℃に低下させ、ベンジルアルコール(5.0mL、44.45mmol、Aldrich Chemical,Milwaukee,Wisconsin,USA,P/N 305197)を加えてから、オイルバスを取り除いた。この混合液を一晩室温で攪拌してから、蒸発乾固した。粗残留物を酢酸エチル(1.2L)に溶解し、水(1.5L)、および5%(wt/v)塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で分離、乾燥させ、濾過してから乾燥させた。生成物を、ジクロロメタンとアセトニトリルの混合液(9:1v/v)から晶出させた。収量は8.25g(63%)であった。
【0128】
【化46】

実施例4:N−ベンジルオキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−酢酸(4)の合成
−ベンジルオキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−イル−酢酸tBu(3)(2.65g、10.63mmol)を無水ジクロロメタン(65mL)に溶解し、トリエチルシラン(13.73g、118mmol、Aldrich Chemical,Milwaukee,Wisconsin,USA,P/N 230197)で処理した。反応混合液を氷浴で0℃まで冷却してから、15分間にわたってトリフルオ酢酸(30mL)を加えた。反応混合液を0℃で10分間攪拌し、温度をゆっくりと25℃に上げ、8時間攪拌した。この反応混合液を蒸発乾固し、残留物をジクロロメタン(3×30mL)と一緒に蒸発させた。生成物を、ジクロロメタンとエーテルの混合物(9:1v/v)から晶出させた。収量は1.98g(97%)であった。
【0129】
【化47】

実施例5:N′−([6−[N−ベンジルオキシカルボニル]ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−アセチル−N″−(2−[t−ブチルオキシカルボニル]−2−アミノエチル)グリシンエチルエステル(5)の合成
N6−ベンジルオキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−酢酸(4)(3.60g、10.99mmol)に、無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、45.0mL)を加え、アルゴン下で混合液を攪拌した。この混合液に、N,N−ジメチルホルムアミド(5.0mL)中のN−(tert−ブトキシカルボニル)−N−(2−アミノエチル)−グリシンエチルエステル(2.71g、10.98mmol)溶液を加えた。この反応混合液に、BOP(12.16g、27.5mmol、Novabiochem,Merck Biosciences AG,Germany,P/N A3184a)、HOBT(3.72g、27.47mmol、Novabiochem,Merck Biosciences AG,Darmstadt,Germany,P/N 01−62−008)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.5mL、Aldrich Chemical Milwaukee、 Wisconsin,USA,P/N 387649)を加えた。この反応混合液を室温で8時間攪拌してから蒸発させた。残留物をジクロロメタン(600mL)に溶解させ、重炭酸ナトリウム溶液(500mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過、蒸発させ、トルエン(3×25mL)と同時蒸発させた。生成物をフラッシュシリカゲルカラムで精製し、ジクロロメタン中約5〜12%(v/v)の酢酸エチルで溶出させた。収量は4.65g(76%)であった。
【0130】
【化48】

実施例6:N′−([6−[N−ベンジルオキシカルボニル]ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−アセチル)−N″−(2−[tert−ブチルオキシカルボニル]−2−アミノエチル)−グリシン(6)の合成
N′−([6[N−ベンジルオキシカルボニル]ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N8−アセチル)−N″−(2−[tert−ブチルオキシカルボニル]−2−アミノエチル)−グリシンエチルエステル(6)(2.0g、3.61mmol)を、アセトニトリル(30mL)とN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)の混合液に溶解し、この反応混合液を氷浴で0℃に冷却した。この混合液に、水酸化リチウムの2M溶液(10mL)を加え、反応混合液を0℃で攪拌した。20分後、2N塩酸溶液(10mL)を加えた。最終pHは3以下であった。溶媒を真空中で完全に蒸発させ、トルエン(2×25mL)と同時に蒸発させてから、アセトニトリル(2×25mL)と同時蒸発させた。生成物を水から晶出させた。冷水(10mL)を残留物に加え、固形物を濾過よって集めた。収量は1.92g(95%)であった。
【0131】
【化49】

実施例7:N−[N″−フルオレニルメチルオキシカルボニル−(2″−アミノエチル)]−N−[2−N−ベンジルオキシカルボニル]ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−アセチル]グリシン(7)の合成
20mLのアセトニトリル中0.5g(1.53mmol)のN−ベンジルオキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N8−酢酸(4)に、300μL(3.13mmol)のN−メチルモルホリンの一部を室温にて加え、得られた混合液を室温で10分間攪拌した。この混合液を0℃に冷却して、アルゴン下で塩化ピバロイル(210μL、1.68mmol)を一滴ずつ加えた。反応混合液を室温で20分間攪拌した。別のフラスコの中で、0.5g(1.46mmol)の細かく破砕したN−[N′−フルオレニルメチルオキシカルボニル−(2′−アミノエチル)]グリシンを、20mLのアセトニトリル/水(1:1)の混合液に懸濁した。炭酸ナトリウム(100mg)を加え、得られた混合液を10分間攪拌した。次に、これら2つの溶液を混合し、得られた混合液を室温で30分間攪拌した。溶媒を蒸発させて取り除き、残留物をジクロロメタン(150mL)に溶解して、塩化ナトリウム溶液(300mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で蒸発乾固した。10〜15%のメタノール−ジクロロメタンを溶出剤として用いて、粗生成物をフラッシュシリカゲルカラムで精製した。
【0132】
【化50】

実施例8:N−ベンズヒドロキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−イル酢酸t−ブチル(8)の合成
無水N,N−ジメチルホルムアミド(80mL)中の6−アミンピラゾロ[3,4−d]ピリミジンーN−酢酸t−ブチル(2)(5.0g、20.05mmol)に、1,1−カルボニルジイミダゾール(5.0g、30.63mmol)を加えた。この反応混合液を、アルゴン下でゆっくりと103℃に加熱してから、2時間この温度を維持した。オイルバスの温度を75℃に低下させてから、反応混合液にベンズヒドロール(6.25g、33.92mmol)を加えた。熱をすべて取り除き、この反応液を室温で一晩攪拌した。この反応混合液を真空中で蒸発させ、この粗混合物をジクロロメタン(1L)に溶解させて5%塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で分離、乾燥させ、濾過してから蒸発乾固した。生成物をフラッシュシリカゲルカラムによって精製した。ジクロロメタン中6〜10[%v/v]の酢酸エチルを用いて、生成物を溶出させた。適当な画分を集めて蒸発させた。収量は6.89g(74.7%)であった。
【0133】
【化51】

実施例9:N−ベンズヒドロキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−イル酢酸(9)の合成
2.00g(4.35mmol)のN−ベンズヒドロキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−イル酢酸t−ブチル(8)に、エタノール(60mL)およびアセトニトリルを加えた。反応混合液を氷浴で5℃以下に冷却した。この反応混合液に、20mLの水に溶解した1.93gの水酸化リチウムを加え、温度を25℃に上げた。反応混合液を15分間攪拌し、0℃に冷却してから、クエン酸の2M水溶液(pH3以下)を加えた。この反応混合液を蒸発乾固し、冷水で残留物を粉砕(triturate)した。生成物をメタノールから晶出させた。収量は1.65(82.62%)であった。
【0134】
【化52】

実施例10:N−[N″−フルオレニルメチルオキシカルボニル−(2″−アミノエチル)]−N−[2−N−ベンズヒドロキシカルボニル−N−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン)]アセチル]グリシンまたはN−[N″−Fmoc−(2″−アミノエチル)]−N−[2−[N6−Bhoc−(ピラゾロ[3,4−d]ピラミジン−N−イル)]アセチルグリシン(10)の合成
10mLの乾燥アセトニトリル中1.0g(2.47mmol)のN−ベンズヒドロキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−イル酢酸(9)に、560μLのN−メチルモルホリンを加えた。この反応混合液を室温で10分間攪拌した。次に、この反応混合液を0℃に冷却して、塩化ピバロイル(310μL、2.59mmol)をアルゴン下で30分間加えた。別のフラスコの中で、0.87g(2.45mmol)のN−[N′−フルオレニルメチルオキシカルボニル−(2′−アミノエチル)]グリシンを、アセトニトリル(10mL)、水(5mL)、炭酸ナトリウム(0.76g)、および炭酸カリウム(0.65g)の混合液に懸濁した。この懸濁液を、透明な溶液が得られるまで攪拌した。次に、N−ベンズヒドロキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−イル酸のビバロイル活性化エステルの反応混合液を、N−[N′−フルオレニルメチルオキシカルボニル−(2′−アミノエチル)]グリシンの溶液に加え、反応液を室温で30分間攪拌した。この反応混合液を蒸発乾固し、トルエン(2×20mL)と同時蒸発させ、フラッシュシリカゲルカラムで精製した。このカラムを、ジクロロメタン中10〜15%メタノールで溶出した。収量は280mg(10%)であった。
【0135】
実施例11:N−ベンズヒドロキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−イル酢酸(9)のPNAオリゴマーへの固相結合
図8Aでは、N−[tert−ブチルオキシカルボニル]−[N′−フレオニルメチルオキシカルボニル−(2′−アミノエチル)]グリシン(20)を、図示された塩基配列(21)をもつ支持体結合型PNAオリゴマー(21)と結合させて、それにより完全に保護された支持体結合型PNAオリゴマー(22)を形成させた。図8Bでは、次に、完全に保護された支持体結合型PNAオリゴマー(22)のFmoc基を取り除いて、部分的に脱保護された支持体結合型PNAオリゴマー(23)を形成させた。次いで、N−ベンズヒドロキシカルボニル−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−N−イル酢酸(9)を、支持体結合型PNAオリゴマー(23)の末端PNA骨格部分の二級窒素(N−グリシル窒素)によって縮合し、それにより、完全に保護された、細長い支持体結合型PNAオリゴマー(24)を形成させた。次に、通常の方法を用いて、このPNAオリゴマーを支持体から切断し、脱保護および精製して、ユニバーサル塩基用のUとして図示されているN8−8−アザ−7デアザアデニン核酸塩基を含む、完全に脱保護されたPNAオリゴマー(25)を生成させた。
【0136】
新規の部分的に保護されたN8−8−アザ−7デアザアデニン核酸塩基を用いる場合を除いて、本PNAオリゴマーの合成は、Seitz ら,Convergent strategies for the attachment of fluorescing reporter groups to peptide nucleic acids in solution and on solid phase,Chemistry−A European Journal(2001),7(18), 3911−3925またはSeitz ら,A convergent strategy for the modification of peptide nucleic acids:novel mismatch−specific PNA−hybridization probes,Angewandte Chemie,International Edition(1999),38(15),2203−2206に記載されている通りに実質的に進められた。
【0137】
本開示は、さまざまな実施形態とともに説明されているが、本開示を、それらの実施形態に限定しようとするものではない。それどころか、本開示は、当業者が認識できるような、改変、変更および等価物も包含する。
【0138】
(7.参考文献)
【0139】
【化53】

【図面の簡単な説明】
【0140】
当業者には、以下に説明する図面が例示のためだけのものであることを理解できる。う。これらの図面は、どのような意味においても、本開示の範囲を制限しようとするものではない。
【図1A】図1Aおよび1Bは、核酸、PNAオリゴマー、およびPNA/DNAキメラの中に取り込ませることができる核酸塩基をいくつか図示したものである。
【図1B】図1Aおよび1Bは、核酸、PNAオリゴマー、およびPNA/DNAキメラの中に取り込ませることができる核酸塩基をいくつか図示したものである。
【図2】図2は、Z保護N8アルキル化8−アザ−7−デアザアデニン化合物の合成経路を図示したものである。
【図3】図3は、Z保護N8アルキル化8−アザ−7−デアザアデニンを含むt−bocPNAモノマーの合成経路を図示したものである。
【図4】図4は、保護N8アルキル化8−アザ−7−デアザアデニン核酸塩基を含むFmoc/Z PNAモノマーの合成経路を図示する。
【図5】図5は、Bhoc保護N8アルキル化8−アザ−7−デアザアデニン核酸塩基の合成経路を図示したものである。
【図6】図6は、保護N8アルキル化8−アザ−7−デアザアデニン核酸塩基を含むFmoc/Bhoc保護PNAモノマーの合成経路を図示する。
【図7A】図7Aおよび7Bは、保護N8アルキル化8−アザ−7−デアザアデニン核酸塩基を含む、さまざまなPNAシントンを図示する。
【図7B】図7Aおよび7Bは、保護N8アルキル化8−アザ−7−デアザアデニン核酸塩基を含む、さまざまなPNAシントンを図示する。
【図8A】図8Aおよび8Bは、部分的に保護されたN8アルキル化8−アザ−7−デアザアデニン核酸塩基が、支持体に結合したPNAオリゴマーの骨格に直接結合することを図示している。
【図8B】図8Aおよび8Bは、部分的に保護されたN8アルキル化8−アザ−7−デアザアデニン核酸塩基が、支持体に結合したPNAオリゴマーの骨格に直接結合することを図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)置換型または非置換型の3−アミノピラゾール−4−カルボニトリル化合物を、式:
【化1】

のハロアセテート化合物でアルキル化する工程であって、
該式において、
各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
Halは、Cl、Br、またはIであり;
各Xは、OまたはSである、工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
各Wが、独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルまたはsec−ブチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、メチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、アリル、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、またはフェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各Xが、Oである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応の生成物のうちの1つが、式:
【化2】

の置換型または非置換型の複素環式化合物であり、
該式において、
各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
は、水素、またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
各Xは、OまたはSである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
a)式:
【化3】

の置換型または非置換型の複素環式化合物を、
式:
【化4】

の置換型または非置換型の化合物、あるいは式:
【化5】

の置換型または非置換型の化合物と反応させる工程;
を包含する方法であって、
該反応によって、式:
【化6】

の置換型または非置換型の複素環式化合物が生成され、該生成される複素環式化合物の式において、
各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
W’は、水素または−NHであり;
は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
H−Acは、ジアミンをプロトン化することができる酸性基であり;
各Xは、独立して、OまたはSである、方法。
【請求項7】
前記反応のための溶媒が、化合物IVb、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、またはt−ブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応が還流させられる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
b)前記置換型または非置換型の複素環式化合物Vの環外アミンをアミン保護基で保護することにより、式:
【化7】

の化合物を生成させる工程;
をさらに包含し、該式において、
各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
Pgは、アミン保護基であり;
は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
各Xは、OまたはSである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記アミン保護基が、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、またはCyocである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
b)化合物Vのエステル基をカルボン酸基に変換することにより、式:
【化8】

の置換型または非置換型の複素環式化合物を生成させる工程;
をさらに包含し、該式において、
各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
各Xは、OまたはSである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
c)化合物VIのエステル基をカルボン酸基に変換することにより、式:
【化9】

の置換型または非置換型の複素環式化合物を生成させる工程;
をさらに包含し、該式において、
各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
Pgは、アミン保護基であり;
各Xは、OまたはSである、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
Pgが、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、またはCyocである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
a)式:
【化10】

の置換型または非置換型の複素環式化合物の活性化カルボン酸基、チオカルボン酸基、または活性型エステル基のカルボニル炭素またはチオカルボニル炭素を、置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分の二級窒素と反応させる工程;
を包含し、該式において、
各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
Pgは、アミン保護基であり;
は、−SH、−OH、または活性エステル脱離基であり;
は、OまたはSである、
方法。
【請求項15】
前記置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分が、式:
【化11】

を有し、該式において、
Pgは、アミン保護基であり;
各Yは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
は、水素、または保護されたアミノ酸側鎖もしくは保護されていないアミノ酸側鎖であり;
は、−OH、−SH、−SR、または−ORであり、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
各Xは、OまたはSである、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、アリル、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、またはフェニルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記置換型または非置換型のN−(2−アミノエチル)グリシン部分が、PNAオリゴマーのPNAサブユニットまたはPNA/DNAキメラのPNAサブユニットである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
Pgが、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、またはCyocである、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
Pgが、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、またはCyocであり、PgがPgとは異なっており、Pgは独立して、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、Cyoc、またはトリチルである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記活性エステル脱離基が、式:
【化12】

の基であり、該式において、Xは、OまたはSである、
請求項14に記載の方法。
【請求項21】
式:
【化13】

の置換型または非置換型の複素環式化合物であって、
該式において、
各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であるが、ただしRはエチルではなく;
各Xは、OまたはSである、
複素環式化合物。
【請求項22】
が、メチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、アリル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、またはフェニルである、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
各XがOである、請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
式:
【化14】

の置換型または非置換型の複素環式化合物であって、
該式において、
Pgは、水素またはアミン保護基であり;
各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
は、OまたはSであり;
は、−OH、−SH、−SR、または−ORであり、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基である、
複素環式化合物。
【請求項25】
Pgが、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、またはCyocである、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、アリル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、またはフェニルである、請求項24記載の化合物。
【請求項27】
がOである、請求項24に記載の化合物。
【請求項28】
式:
【化15】

を有する、請求項24に記載の化合物であって、
該化合物は、必要に応じて置換されている、化合物。
【請求項29】
式:
【化16】

のPNAシントンであって、
該式において、
Pgは、アミン保護基であり;
Pgは、アミン保護基であり;
各Wは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
各Yは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
は、水素、または保護されたアミノ酸側鎖もしくは保護されていないアミノ酸側鎖であり;
は、−OH、−SH、−SR、または−ORであり、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり;
各Xは、OまたはSである、
PNAシントン。
【請求項30】
Pgが、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、またはCyocであり;
Pgが、Pgとは異なったアミノ酸保護基であり、該Pgは、Fmoc、Bhoc、Z、t−boc、Cyoc、およびトリチルからなる群より選択される、
請求項29記載のPNAシントン。
【請求項31】
式:
【化17】

を有する、請求項29記載のPNAシントン。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2009−507765(P2009−507765A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517100(P2008−517100)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/023293
【国際公開番号】WO2006/138453
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(505310541)アプレラ コーポレイション (12)
【Fターム(参考)】