説明

ユニーク認識配列及びタンパク質分析におけるその利用方法

試料中のタンパク質の存在を、試料中のユニークに特徴的な一組のタンパク質の認識配列を認識して相互作用する捕捉剤の利用によって検出する信頼性のある方法を開示する。これらの捕捉剤を含むアレイも又、提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ゲノム研究は、遺伝子配列決定法の進歩及び遺伝子、それらがコードするタンパク質及びそれらが関与する経路の研究のための高スループットな方法の増大する利用可能性のおかげで、今や、「産業的」速度と規模に達している。DNAマイクロアレイの開発は、遺伝子発現並びにゲノムDNA変異の大規模にパラレルな研究を可能にした。
【0002】
DNAマイクロアレイは、進歩した医学診断における見込みを示した。一層詳細には、幾つかのグループは、正常組織と病気の組織の遺伝子発現パターンを全ゲノムレベルで比較した場合に、特定の病気に特徴的な発現パターンを認めることができることを示した。Bittner等、(2000) Nature 406:536-540; Clark等、(2000) Nature 406:532-535; Huang等、(2000) Science 294:870-875; 及びHughes等、(2000) Cell 102;109-126。例えば、悪性型の前立腺癌の患者に由来する組織試料は、この病気の中位の悪性型の患者に由来する組織試料に対するmRNA発現パターンの認識できる差異を示す。Dhanasekaran等、(2000) Nature 412 (2001), 822-826頁参照。
【0003】
しかしながら、James Watsonが最近指摘したように、タンパク質は、実際、「生物学における役者」である(「A Cast of Thousands」Nature Biotechnology 2003年3月)。一層魅力的なアプローチは、鍵となるタンパク質を直接モニターすることであろう。これらは、DNAマイクロアレイ分析により同定されるバイオマーカーであってよい。この場合、必要とされるアッセイは、比較的単純であってよく、5〜10のタンパク質を調べるだけでよい。他のアプローチは、血液、唾液又は尿などの直接的分析などのために、数百又は数千のタンパク質の特徴を検出するアッセイを利用することである。身体が特定の病気に対して特定の仕方で反応して、複雑なデータセット中に個別的な「生体識別特性」例えば血中の500のタンパク質のレベルを生成すると考えることは妥当なことである。殆どの病気を診断するために利用できる、未来における単一の血液検査を想像することができよう。
【0004】
基礎研究用ツールとしての大規模なタンパク質検出アッセイの開発の動機付けは、医学的診断のためのそれらの開発の動機付けとは異なっている。生体識別特性の有用性は、遺伝的、生理的又は環境的刺激に対する細胞応答の分子的基礎を理解するために研究者が望む一面である。DNAマイクロアレイは、この役割において十分な仕事をするが、タンパク質の検出は、タンパク質レベルの一層正確な測定を可能にするであろうし、一層重要なことには、種々のスプライス変異体又はイソ型の存在を定量するためにデザインすることができよう。これらの事象は、しばしば、タンパク質活性に著しい効果を有するが、該事象に対しては、DNAマイクロアレイは、大抵又は完全に盲目である。
【0005】
これは、タンパク質レベルで行なわれるべき類似の実験を可能にするタンパク質検出用マイクロアレイ(PDM)などの装置の開発に、特に、数百又は数千のタンパク質のレベルを同時にモニターすることのできる装置の開発に大きな関心を誘発した。
【0006】
本発明の前に、PDMは、DNAマイクロアレイの複雑さに近いものさえ存在していない。大規模にパラレルな(例えば、細胞全体又はプロテオーム全体の)タンパク質検出への現在のアプローチには幾つかの問題がある。第一に、試薬生成が困難である:生物体内の各タンパク質に対する検出剤を単離するために個々の標的タンパク質を単離し、次いで、精製したタンパク質に対する検出剤を開発する必要がある。ヒトの体内のタンパク質の数は、現在、約30,000と見積もられているので、これは、多くの時間(数年)と供給源を必要とする。その上更に、ネイティブなタンパク質に対する検出剤は、該検出剤が認識するのがタンパク質のどの部分であるのかを知ることが困難な仕事であるので、一層限定されていない特異性を有する。この問題は、多数の検出剤を一緒に整列させた場合にかなりの交差反応性を引き起こし、大規模なタンパク質検出用アレイを構築することを困難にしている。これらの方法は、典型的には、生物学的試料中に可溶性タンパク質のみを含む。それらは、しばしば、現在偏在性が認められているスプライス変異体を区別することができない。それらは、オルガネラ若しくは細胞膜に結合し又は試料を検出のために処理する際に不溶性である多数のタンパク質を排除する。第三に、現在の方法は、すべてのタンパク質に対し又はすべての型の生物学的試料に対して一般的なものではない。タンパク質は、化学的特性において、全く広範に変化する。タンパク質のグループは、それらを検出のために安定に可溶性に保つために異なる処理条件を必要とする。一つの条件は、すべてのタンパク質に適当ではありえない。更に、生物学的試料は、それらの化学的性質において変化する。同じと考えられた個々の細胞は、それらの生成及び最終的な死の過程において異なるタンパク質を発現する。尿及び血清のような生理学的液体は、比較的単純であるが、生検組織試料は、非常に複雑である。各型の試料を処理して、最大のタンパク質可溶化及び安定化を達成するためには、種々のプロトコールが必要である。
【0007】
現在の検出方法は、一様に全タンパク質にわたって有効ではなく又は多数のタンパク質(例えば、>5,000)の同時の検出を可能にするために高度に多重化されえない。光学的検出方法は、費用に対し最も効率のよい方法であろうが、種々のタンパク質にわたる一様性に欠けている。試料中のタンパク質は、染料分子で標識しなければならず、タンパク質の異なる化学的特性は、標識の効率の不一致へと導く。標識は又、検出剤と分析物タンパク質との間の相互作用に干渉して、定量における更なる誤りへと導きうる。非光学的検出方法は、開発されているが、計器装備が全く高価であり、中位の多さの試料(例えば、>100試料)のパラレル検出のための多重化さえ非常に困難である。
【0008】
現在の技術の他の問題は、それらが、タンパク質複合体形成、タンパク質構造を変化させる多数の酵素反応、及びタンパク質のコンホメーション変化の複雑な網を含む細胞内の生命過程によって悩まされることである。これらの過程は、試料中に存在することが知られた結合部位をマスクし又は露出させることができる。例えば、前立腺特異的な抗原(PSA)は、遊離(未結合)形態例えばプロPSA、BPSA(BPH結合した遊離PSA)、及び複合体化形態例えばPSA−ACT、PSA−A2M(PSA−アルファ−マクログロブリン)及びPSA−API(PSA−アルファ1プロテアーゼインヒビター)を含む多くの形態で血清中に存在することが知られている(Stephan C.等(2002) Urology 59:2-8参照)。同様に、サイクリンEは、完全長の50kDタンパク質としてのみならず、5つの他の分子量の形態(34〜49kDの大きさ)でも存在することが知られている。事実、低分子量形態のサイクリンEは、乳癌に対して完全長タンパク質よりも一層鋭敏なマーカーであると考えられている(Keyomarsi K.等(2002) N.Eng.J.Med.347(20):1566-1575参照)。
【0009】
検出アッセイ前の試料の収集及び取扱いも又、試料中に存在するタンパク質の性質に影響を与えうるので、これらのタンパク質を検出する能力に影響を与えうる。Evans M.J.等(2001) Clinical Biochemistry 34:107-112及びZhang D.J.等(1998) Clinical Chemistry 44(6):1325-1333により示されたように、免疫アッセイを標準化することは、試料の取扱い及び血漿又は血清中のタンパク質の安定性の可変性のために困難である。例えば、PSA試料の取扱い例えば試料の凍結は、試料中の種々の形態のPSAの安定性及び相対的レベルに影響を与える(Leinonen J, Stenman UH (2000) Tumour Biol.21(1):46-53)。
【0010】
最後に、現在の技術は、予測不能な仕方で(例えば、分析エラーへと導くことにより)免疫アッセイの結果に影響を与える自己抗体の存在に悩まされている(Fitzmaurice T.F.等 (1998) Clinical Chemistry 44(10):2212-2214)。
【0011】
これらの問題は、異質タンパク質抗原に関する免疫アッセイを標準化することは可能であるのかどうかという疑問を促した(Stenman U-H. (2001) Immunoassay Standardization: Is it possible? Who is responsible? Who is capable? Clinical Chemistry 47(5) 815-820)。従って、当分野には、生物学的試料中で発現されるタンパク質の効率的で簡単なパラレル検出方法に対する、特に、タンパク質化学の複雑さにより引き起こされる不正確さを克服することのできる方法に対する、及び所与の細胞型において所与の時点で発現されるタンパク質のすべて又は主要部を検出することのできる方法に対する、又は生物学的試料において発現されたタンパク質のプロテオームワイドの検出及び定量に対する大きな要求が存在している。
【0012】
発明の概要
本発明は、再現性のあるタンパク質の検出及び定量(例えば、複雑な生物学的試料中でのパラレル検出及び定量)のための方法及び試薬に向けられている。本発明のある具体例の顕著な特徴は、試薬生成の複雑さを軽減し、生物体内のすべてのタンパク質のクラスの一層大きいカバーを達成し、試料処理及び分析物安定化工程を大いに単純化し、そして光学的又は他の自動化検出法による効果的で信頼性のあるパラレル検出、及びタンパク質及び/又は翻訳後修飾された形態の定量を可能にし、そして大規模なプロテオームワイドのタンパク質検出のための最少の交差反応性及び十分限定された特異性を有する標準化されたタンパク質捕捉剤の多重化を可能にする。
【0013】
本発明の具体例は又、試料中のタンパク質の多数の形態での存在(例えば、様々な翻訳後修飾された形態又は様々な複合体化し若しくは凝集した形態);血漿又は血清などの試料の取り扱い及び試料中のタンパク質の安定性の可変性;及び試料中の自己抗体の存在により引き起こされる検出方法における不正確さをも克服する。ある具体例において、標的化断片化プロトコールを利用して、本発明の方法は、前述の理由の一つによりマスクされているかもしれない関心あるタンパク質上の結合部位が、捕捉剤との相互作用に利用可能になることを保証する。他の具体例においては、変化した(或は、隠れた)URS部分を溶媒に接近させて捕捉剤と相互作用できるように、これらの試料タンパク質を、それらが変性し、適宜、アルキル化される条件にかける。結果として、本発明は、増大した感度及び一層正確なタンパク質定量能力を有する検出方法を与える。本発明のこの利点は、例えば、タンパク質マーカー型の病気を検出するアッセイ(例えば、PSA又はサイクリンEベースのアッセイ)において、これらのアッセイの予測値、感度及び再現性に改良を与えるので、特に有用である。本発明は、すべての試料からのすべてのタンパク質についての検出及び測定アッセイを標準化することができる。
【0014】
本発明は、少なくとも部分的に、個々のタンパク質中に存在するユニーク認識配列(URS)の利用が、個々のタンパク質の再現可能な検出及び定量を、生物学的試料中のタンパク質の環境中でパラレルに可能にしうるという理解に基づいている。このユニーク認識配列ベースのアプローチの結果として、この発明の方法は、特異的タンパク質を、分析のために全タンパク質の保存を必要とせずそのネイティブな三次構造さえも必要としない仕方で検出する。その上、この発明の方法は、細胞膜に結合した又はオルガネラ膜に結合したタンパク質などの可溶性タンパク質を含む試料中の殆どの又はすべてのタンパク質の検出に適している。
【0015】
本発明は又、少なくとも部分的に、ユニーク認識配列が、特異的生物体のプロテオームに特徴的なプロテオームエピトープタグとして役立ちうるし、特異的生物体の認識及び検出を可能にできるという理解にも基づいている。
【0016】
本発明は又、少なくとも部分的に、予め定めた特異性を有するアフィニティー剤(例えば、抗体)を、限定された短い長さのペプチドにつき生成することができ、抗体がタンパク質又はペプチドエピトープを認識する場合には、4〜6個(平均)のアミノ酸のみが臨界的であるという理解にも基づいている。例えば、Lerner RA (1984) Advances In Immunology. 36:1-45を参照されたい。
【0017】
本発明は又、少なくとも部分的に、主題の方法は、試料中のすべてのタンパク質を変性させ且つ/又は断片化させて、そうでなければ隠れたURSが溶媒に近づくことのできるタンパク質分析物の可溶性のセットを生成することによって、再現可能で正確な(アッセイ内で及びアッセイ間で)タンパク質の測定を与えるという理解に基づいている。
【0018】
従って、一面において、本発明は、生物体プロテオーム中のタンパク質(例えば、膜に結合したタンパク質)の存在を包括的に検出する方法を提供する。この方法は、可溶性のポリペプチド分析物の集合を生成するように変性され且つ/又は断片化された試料を用意すること;それらのポリペプチド分析物を複数の捕捉剤(例えば、固体支持体例えばアレイ上に固定化された捕捉剤)と、捕捉剤と対応するユニーク認識配列との相互作用が起き、それにより生物体プロテオーム中のタンパク質の存在が包括的に検出されるような条件下で接触させることを含む。
【0019】
この方法は、例えば、診断(例えば、臨床診断又は環境診断)、薬物送達、タンパク質配列決定又はタンパク質プロファイリングにおいて利用するのに適している。一具体例において、生物体のプロテオームの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%は、整列された捕捉剤から検出可能である。
【0020】
捕捉剤は、URSを捕捉するタンパク質、ペプチド、抗体例えば一本鎖抗体、人工タンパク質、RNA又はDNAアプタマー、アロステリックリボザイム、小型分子又は電子工学的手段であってよい。
【0021】
試験すべき試料(例えば、ヒト、酵母、マウス、C.エレガンス、キイロショウジョウバエ又はアラビドプシス・サリアナ試料例えば全細胞溶解物)を、タンパク質分解剤を利用して断片化させることができる。タンパク質分解剤は、ポリペプチドを特異的アミノ酸残基間(即ち、ポリペプチド開裂パターン)で開裂させることのできる任意の薬剤であってよい。本発明のこの面の一具体例によれば、タンパク質分解剤は、タンパク質分解酵素である。タンパク質分解酵素の例には、トリプシン、カルパイン、カルボキシペプチダーゼ、キモトリプシン、V8プロテアーゼ、ペプシン、パパイン、ズブチリシン、トロンビン、エラスターゼ、gluc−C、endo lys−C又はプロテイナーゼK、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、MetAP−2、アデノウイルスプロテアーゼ、HIVプロテアーゼなどが含まれるが、これらに限られない。本発明のこの面の他の具体例によれば、タンパク質分解剤は、タンパク質分解性化学剤例えばシアノゲンブロミド及び2−ニトロ−5−チオシアノベンゾエートである。更に別の具体例においては、試験試料のタンパク質を、物理的剪断によって;超音波処理により、又はこれらの若しくは他の処理ステップの組合せによって断片化させることができる。
【0022】
ある具体例に関する、特に、複雑な試料を分析する場合に重要なことは、ユニーク認識配列として役立つペプチド好ましくは可溶性ペプチドを再現可能に生成することの知られた断片化プロトコールを開発することである。この断片化から生成されたポリペプチド分析物の集合は、5〜30、5〜20、5〜10、10〜20、20〜30又は10〜30アミノ酸長又はそれより長くてよい。上に列挙した値の中間の範囲(例えば、7〜15又は15〜25)も又、この発明の部分である。例えば、上に列挙した何れかの値の組合せを上限及び/又は下限として利用する範囲は、包含される。
【0023】
このユニーク認識配列は、直鎖状配列又は非隣接配列であってよく、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、又は30アミノ酸長であってよい。ある具体例においては、このユニーク認識配列は、配列番号:1〜546よりなる群又はその部分集合から選択する。
【0024】
一具体例において、検出されるタンパク質は、病原性生物体例えば炭疽菌、天然痘、コレラ毒素、黄色ブドウ球菌α毒素、志賀菌毒素、細胞傷害性壊死因子1、大腸菌熱安定性毒素、ボツリヌス毒素、又は破傷風神経毒素に特徴的なものである。
【0025】
他の面において、本発明は、試料中のタンパク質の存在を、好ましくは同時に検出する方法又は多数のタンパク質のパラレル検出を提供する。この方法は、可溶性ポリペプチド分析物の集合を生成するように変性され且つ/又は断片化された試料を用意すること;複数の捕捉剤が結合された複数の別個の領域を有する支持体を含むアレイを用意すること(各捕捉剤は、異なる別個の領域に結合され、各捕捉剤は、タンパク質内のユニーク認識配列を認識して相互作用することができる);捕捉剤のアレイをポリペプチド分析物と接触させること;及び何れの個別の領域が試料への特異的結合を示したかを測定し、それにより試料中のタンパク質の存在を検出することを含む。
【0026】
更に説明すると、本発明は、パッケージされたタンパク質検出用アレイを提供する。かかるアレイには、複数の特徴を有するアドレス可能アレイが含まれ、各特長は、分析物タンパク質のユニーク認識配列(URS)と、例えば、分析物タンパク質が、タンパク質分解及び/又は変性により生成された可溶性タンパク質である条件下で選択的に相互作用する別個の種類の捕捉剤を含む。このアレイの特徴は、分析物と捕捉剤との間の相互作用の正体を与えるパターンで又は標識を配列されて、例えば、試料中に存在するタンパク質の正体及び/又は量を確認することである。このパッケージされたアレイには又、(i)アドレス可能アレイを、タンパク質のアミド主鎖位置での変性及び/又は開裂により生成されたポリペプチド分析物を含む試料と接触させ;(ii)該ポリペプチド分析物と該捕捉剤部分との相互作用を検出し;そして(iii)ポリペプチド分析物の又はそれらが由来したネイティブなタンパク質の正体を、捕捉剤部分との相互作用に基づいて測定するための指示も含まれうる。
【0027】
尚更なる面において、本発明は、試料中のタンパク質の存在を、可溶性ポリペプチド分析物の集合を生成するように変性され且つ/又は断片化された試料を用意し;その試料を複数の捕捉剤と接触させることにより検出する方法であって、各捕捉剤が、タンパク質中のユニーク認識配列を、試料中のタンパク質の存在が検出されるような条件下で認識して、該配列と相互作用することのできる当該方法を提供する。
【0028】
他の面において、本発明は、試料中のタンパク質の存在を、複数の捕捉剤が結合された複数の別個の領域(特徴)を有する支持体を含む捕捉剤のアレイを用意し;該アレイを該試料と接触させ;そして何れの別個の領域が該試料への特異的結合を示すかを測定し、それにより試料中のタンパク質の存在を検出することによって検出する方法であって、上記の複数の捕捉剤が、生物体プロテオームの少なくとも50%と相互作用することができる当該方法を提供する。
【0029】
更なる面において、本発明は、生物体プロテオーム中のタンパク質の存在を、タンパク質を含む試料を用意して、該試料を、複数の捕捉剤と、該捕捉剤と対応するユニーク認識配列との相互作用が起き、それにより生物体プロテオーム中のタンパク質の存在が包括的に検出されるような条件下で接触させることにより、包括的に検出する方法を提供する。
【0030】
他の面において、本発明は、複数の捕捉剤を提供するが、該複数の捕捉剤は、生物体のプロテオームの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%相互作用することができ、各捕捉剤は、タンパク質内のユニーク認識配列を認識して該配列と相互作用することのできるものである。
【0031】
更に別の面において、本発明は、捕捉剤のアレイを提供し、該アレイは、複数の捕捉剤(例えば、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000又は13000の異なる捕捉剤)が結合された複数の別個の領域を有する支持体を含み、各捕捉剤は、異なる別個の領域に結合され、各捕捉剤は、タンパク質内のユニーク認識配列を認識して該配列と相互作用することができる。これらの捕捉剤は、支持体に例えばリンカーによって、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500又は1000捕捉剤/cm2の密度で結合されうる。一具体例において、別個の領域の各々は、他の別個の領域から物理的に分離されている。
【0032】
この捕捉剤アレイは、珪素、プラスチック、ガラス、ポリマー例えばセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレン、セラミック、フォトレジスト又はゴム表面を含む任意の適当な固体表面上に生成することができる。好ましくは、珪素表面は、二酸化珪素又は窒化珪素表面である。やはり好ましくは、このアレイは、チップ形態で作成する。これらの固体表面は、チューブ、ビーズ、ディスク、シリコンチップ、ミクロプレート、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、その他の多孔質膜、非多孔質膜例えばプラスチック、ポリマー、パースペクス、シリコン(他のものの内で)、複数のポリマーピン、又は複数のミクロ滴定ウェル、又は任意の他のタンパク質の固定化及び/又は免疫アッセイ若しくは他の結合アッセイの実施に適した表面の形態であってよい。
【0033】
この捕捉剤は、タンパク質、ペプチド、抗体例えば一本鎖抗体、人工タンパク質、RNA又はDNAアプタマー、アロステリックリボザイム又は小型分子であってよい。
【0034】
更なる面において、本発明は、複数の単離されたユニーク認識配列を含む組成物であって、該ユニーク認識配列が、生物体プロテオームの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%に由来する、当該組成物を提供する。一具体例において、各ユニーク認識配列は、異なるタンパク質に由来する。
【0035】
他の面において、本発明は、捕捉剤のアレイの製造方法を提供する。この方法は、生物体プロテオームの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%に由来する複数の単離されたユニーク認識配列を用意すること;複数のユニーク認識配列と結合することのできる複数の捕捉剤を生成すること;及びそれらの複数の捕捉剤を、複数の別個の領域を有する支持体に結合させることを含み、各捕捉剤が異なる別個の領域に結合され、それにより捕捉剤のアレイが製造される。
【0036】
一つの基礎的面において、この発明は、多タンパク質試料例えば体液試料又は自然の組織試料又は微生物試料の溶解により生成された細胞試料中の複数の特異的タンパク質の存在を同時に検出するための装置を提供する。この装置は、試料との接触のための複数の固定化捕捉剤を含み、それぞれ特異的に個々のユニーク認識配列と結合する剤の少なくとも部分集合、及びそれぞれの捕捉剤とユニーク認識配列との間の結合事象を検出するための手段例えば、捕捉剤に結合したユニーク認識配列の存在及び/又は濃度を検出するためのプローブを含む。これらのユニーク認識配列は、各配列の存在が、それが由来した標的タンパク質の試料(断片化前)中の存在を明白に指示するように選択する。各試料は、一組のタンパク質分解プロトコールにより、ユニーク認識配列が再現可能に生成されるように処理する。適宜、結合事象を検出するための手段には、結合したユニーク認識配列の量を示すデータを検出するための手段が含まれる。これは、該試料中の少なくとも2つの標的タンパク質の相対量の評価を可能にする。
【0037】
この発明は又、多タンパク質試料中の複数の特異的タンパク質の存在を同時に検出する方法をも提供する。この方法は、試料中のタンパク質を、予め決めたプロトコールを利用して変性させ且つ/又は断片化させて、複数のユニーク認識配列を生成させることを含み、試料中のその存在は、それらが由来した標的タンパク質の存在を明白に示す。試料中のこれらの認識配列の少なくとも一部は、ユニーク認識配列の少なくとも一部と特異的に結合する複数の捕捉剤と接触する。特定のユニーク認識配列への結合事象の検出は、それらの配列に対応する標的タンパク質の存在を示す。
【0038】
他の面において、本発明は、生物学的試料において行われるタンパク質結合アッセイの再現性を改良する方法を提供する。この改良は、一層大きい有効感度での標的タンパク質の存在の検出又は一層信頼できるタンパク質の定量(即ち、標準偏差の減少)を可能にする。これらの方法は、(1)試料を、A)標的タンパク質−タンパク質非共有又は共有結合性錯体形成又は凝集により引き起こされる標的タンパク質のマスキング、標的タンパク質の分解又は変性、標的タンパク質の翻訳後修飾、又は標的タンパク質の三次構造の環境に誘導された変化を阻害し、B)標的タンパク質を断片化し、それにより少なくとも一つのペプチドエピトープ(即ち、URS)であって、その濃度が試料中の標的タンパク質の真の濃度に比例する当該エピトープを生成する予め決めたプロトコールを利用して処理すること;(2)そのように処理した試料を、URSの捕捉剤と適当な結合条件下で接触させること、及び(3)結合事象を定性的又は定量的に検出することを含む。
【0039】
主題のアッセイのある具体例において、ここに記載の教示によって利用可能にされる捕捉剤を利用して、例えばELISA及び他の免疫アッセイと比較して増大した感度、ダイナミックレンジ及び/又は回収率を有する複合アッセイを開発することができる。かかる改良された性能特性は、次の少なくとも一つを含むことができる:参照標準例えば比較対照試料に対する0.95以上の回帰係数(R2)(一層好ましくは、0.97、0.99又は0.995よりも大きいR2);少なくとも50パーセントの、一層好ましくは少なくとも60、75、80又は90パーセントの平均回収率;少なくとも90パーセントの、一層好ましくは少なくとも95、98又は99パーセントの試料中のタンパク質の存在についての平均陽性予想値;99パーセント以上の、一層好ましくは少なくとも99.5又は99.8パーセントの試料中のタンパク質の存在についての平均診断感度(DSN);99パーセント以上の、一層好ましくは少なくとも99.5又は99.8パーセントの試料中のタンパク質の存在についての平均診断特異性(DSP)。
【0040】
この発明の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明及び請求の範囲から明らかとなろう。
【0041】
図面の簡単な説明
図1は、インターロイキン8レセプターAの配列及びこの配列中の5量体のユニーク認識配列(URS)を描いている。
図2は、ヒスタミンH1レセプターの配列及びこの配列中のトリプシン消化で破壊されない5量体のユニーク認識配列(URS)を描いている。
図3は、複雑な試料に由来するURSのパラレル認識のための別の形式である。この型の「仮想アレイ」においては、多くの異なるビーズの各々は、異なるURSに向けられた捕捉剤を示している。各異なるビーズは、特徴的な比の2つの染料(染料1及び染料2)の共有結合によるカラーコードを付されている。明確化のために、2つの異なるビーズしか示してない。試料の添加に際して、この捕捉剤は、同起源のURSが試料中に存在するならば、それに結合する。その後、第三の蛍光タグに結合された二次的結合性リガンド(この場合、標識URSペプチド)の混合物を、これらのビーズの混合物に添加する。これらのビーズを、次いで、染料1と染料2の比をビーズごとに解明し、そうしてビーズ上に捕捉されたURSを同定することのできるフローサイトメトリー他の検出方法を利用して分析することができ、同時に、染料3の蛍光強度を読んで、ビーズ上の標識URSの量を定量する(分析物URSレベルを逆に反映する)。
図4は、a)複合ペプチド混合物中の標的ペプチドの特異的捕捉及び定量のための蛍光サンドイッチ免疫アッセイの図式表示;b)二次抗体により検出される読み出し蛍光シグナルの結果を説明している。
【0042】
発明の詳細な説明
本発明は、試料中のタンパク質又はタンパク質のパネルの存在を検出する(例えば、包括的に検出する)ための方法、試薬及びシステムを提供する。ある具体例において、この方法は、試料中の少なくとも一種のタンパク質の発現又は翻訳後修飾のレベルを定量するために利用することができる。この方法は、好ましくはペプチドの集合を生成するために断片化され且つ/又は変性された試料を用意すること、及び該試料を複数の捕捉剤と接触させることを含み、各捕捉剤は、特定のタンパク質又は修飾状態に特徴的なユニーク認識配列(URS)を認識して該配列と相互作用することができる。結合データの検出及びデコンヴォルーションによって、試料中のタンパク質の存在及び/又は量を測定することができる。
【0043】
第一のステップにおいて、生物学的試料が得られる。生物学的試料は、ここで用いる場合、任意の身体的試料例えば血液(血清又は血漿)、唾液、腹水液、胸膜滲出液、生検試料、単離された細胞及び/又は細胞膜調製物をいう。哺乳動物から組織生検及び体液を得る方法は、当分野で周知である。
【0044】
回収した生物学的試料は、更に、生物学的試料及び試験するポリペプチドの性質(即ち、分泌性、膜繋留型又は細胞内可溶性ポリペプチド)に依って、洗剤ベースの又は洗剤を含まない(即ち、超音波処理)方法を利用して可溶化することができる。
【0045】
ある具体例において、可溶化生物学的試料を、少なくとも一種のタンパク質分解剤と接触させる。消化を、効果的な条件下で、診断されるポリペプチドの完全な消化を保証するのに十分な時間にわたって実施する。生物学的試料を温度及び緩衝剤強度に関する適当な条件下で消化することのできる薬剤は、好適である。測定は、非特異的な試料消化を許さないように行ない、そうして、消化剤の量、反応混合条件(即ち、塩分濃度及び酸度)、消化時間及び温度を注意深く選択する。インキュベーション時間の最後に、タンパク質分解活性を停止して、非特異的なタンパク質分解活性を回避し(これは、延長された消化期間から生じうる)、そして他のペプチドベースの分子(即ち、タンパク質由来の捕捉剤)の更なるタンパク質分解を回避する(これらは、次のステップでこの混合物に加えられる)。
【0046】
次の方法ステップにおいては、与えられた生物学的試料を、少なくとも一種の捕捉剤と接触させ、これらは、URS結合による相互作用によって、少なくとも一種のタンパク質分析物と区別して結合することができ、かかる結合相互作用の生成物を、試料中に見出されるタンパク質を同定し及び/又は定量するために、試験し、必要であれば、デコンヴォルーションする。
【0047】
本発明は、少なくとも部分的に、ユニーク認識配列(URS)は、コンピューター分析によって同定されうるが、所定試料中の個々のタンパク質を特性決定することができ、例えば、他のものの内から特定のタンパク質を同定し及び/又はタンパク質の特定の翻訳後修飾型を同定することができるという理解に基づいている。URSに結合する薬剤の利用は、幾つかの環境に由来する個々のタンパク質又は生物学的試料中の多くのタンパク質の検出及び定量のために利用されうる。主題の方法を利用して、例えば体液、細胞又は組織試料、細胞溶解物、細胞膜などの中のタンパク質の状態を評価することができる。ある具体例において、この方法は、スプライス変異体、アレル変異体及び/又は点突然変異(例えば、単一のヌクレオチド多型から生じる変化したアミノ酸配列)を区別する一組の捕捉剤を利用する。
【0048】
試料調製即ち変性及び/又はタンパク質分解の結果として、主題の方法を利用して、特異的タンパク質を、標的タンパク質の均質性を分析のために必要としない仕方で検出することができる(試料間の小さいが有意の差異に比較的不従順である)。この発明の方法は、試料中の全タンパク質(細胞膜結合性の及びオルガネラ膜結合性のタンパク質を含む)のすべて又は何れかの選択した部分集合の検出に適している。
【0049】
ある具体例において、この方法の検出ステップは、ネイティブなタンパク質の翻訳後修飾に鋭敏でないが、他の具体例においては、調製ステップは、関心ある翻訳後修飾を保存するようにデザインされ、この(これらの)検出ステップは、タンパク質の修飾型と未修飾型とを区別できる一組の捕捉剤を利用する。検出して定量するために主題の方法を利用することのできる典型的な翻訳後修飾には、アシル化、アミド化、脱アミド化、プレニル化(例えば、ファルネシル化又はゲラニル化)、ホルミル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、リン酸化、ユビキチン化、リボシル化及び硫酸化が含まれる。一つの特別な具体例において、評価すべきリン酸化は、チロシン、セリン、スレオニン又はヒスチジン残基のリン酸化である。他の特定の具体例において、評価すべき疎水性の基の添加は、脂肪酸例えばミリステート又はパルミテートの添加であり、又はグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーの添加である。ある具体例において、本発明を利用して、特定の病気例えば感染症、新生物(新生組識形成)、癌、免疫系疾患又は障害、代謝疾患又は障害、筋肉及び骨格の疾患又は障害、神経系の疾患又は障害、シグナル疾患又は障害、又はトランスポーターの疾患又は障害のタンパク質修飾プロファイルを評価することができる。
【0050】
ここで用いる場合、用語「ユニーク認識配列」又は「URS」は、特定の試料中で検出された場合に、それが由来したタンパク質がその試料中に存在することをはっきりと示すアミノ酸配列を意味することを意図している。例えば、URSは、その試料中の存在が、該配列と選択的に結合するようにデザインされた捕捉剤との信頼すべき結合事象の検出により示される場合、必ず該配列を含むタンパク質が該試料中に存在することを意味するように選択する。有用なURSは、タンパク質混合物が変性及び/又は断片化された場合に溶媒が接近できる結合表面に存在しなければならず、選択された捕捉剤と最少の交差反応性で有意に特異的に結合しなければならない。ユニーク認識配列は、それが由来したタンパク質内に存在し且つ研究中の試料、細胞型、又は種に存在しうる他のタンパク質中には存在しない。その上、URSは、好ましくは、試料中に存在しうる他のタンパク質内に、最隣接分析により測定されるような如何なる密接に関連する配列をも有しない。URSは、タンパク質の表面領域、埋没領域、スプライスジャンクション、又は翻訳後修飾領域に由来してよい。
【0051】
おそらく、理想的なURSは、一つの種のプロテオーム中の一つのタンパク質中にだけ存在するペプチド配列である。しかし、実際は、ヒトの試料において有用なURSを含むペプチドは、他の生物のタンパク質構造中に存在しうる。成人の細胞試料において有用なURSは、その試料に対して「ユニークな」ものである(たとえ、それが、同じ生物の他の異なるタンパク質の構造中に、その生涯の異なる時点例えば胎生期に存在しえても、又は研究中の試料と異なる他の組織若しくは細胞型に存在しても)。URSは、たとえ同じアミノ酸配列が、異なるタンパク質に由来する試料中に存在しても、ユニークでありうる(但し、そのアミノ酸の少なくとも一つは誘導体化され、それらのペプチドを溶解させるバインダーを開発することができるならば)。
【0052】
ここでURSに関して「ユニークさ」という場合は、参照は、常に、前記に関連して行なわれる。従って、ヒトのゲノム内では、URSは、それが由来したタンパク質に対して真にユニークであるアミノ酸配列であってよい。或は、それは、正にそれが由来した試料に対してユニークであってよいが、同じアミノ酸配列が、例えばマウスゲノム中に存在してよい。同様に、多数の異なる生物に由来するタンパク質を含有しうる試料に言及する場合には、ユニークさは、はっきりと同定して種々の生物に由来する(例えば、宿主又は病原体に由来する)タンパク質を区別する能力をいう。
【0053】
従って、ユニーク認識配列は、種内の一種より多くのタンパク質中に存在しうる(但し、それは、それが由来した試料に対してユニークである)。例えば、URSは、ある種の細胞型例えば肝細胞、脳細胞、心臓細胞、腎臓細胞又は筋肉細胞に対して;ある種の生物学的試料例えば血漿、尿、羊水、生殖腔液、骨髄、脊髄液、又は囲心腔液試料に対して;ある種の生物学的経路例えばGタンパク質共役型レセプターシグナリング経路又は腫瘍壊死因子(TNF)シグナリング経路に対してユニークであるアミノ酸配列であってよい。
【0054】
これらのユニーク認識配列は、それが由来したネイティブなタンパク質において、隣接する又は隣接しないアミノ酸配列として見出されうる。それは、典型的には、大きいペプチド又はタンパク質の配列の一部分を構成し、捕捉剤によって、無傷の又は部分的に分解された又は消化されたタンパク質の表面において、又は予め決めた断片化プロトコールにより生成されたタンパク質の断片上で認識可能である。このユニーク認識配列は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20アミノ酸残基長であってよい。好適具体例において、URSは、6、7、8、9又は10アミノ酸残基長である。
【0055】
「〜を区別することのできる捕捉剤」における用語「区別する」は、捕捉剤の、意図する分析物への結合と、試料中に存在する他のタンパク質(又は化合物)へのバックグラウンド結合における相対的差異をいう。特に、捕捉剤は、もし結合定数の差異が、結合における統計的に有意な差異がアッセイプロトコール及び検出感度下で生成されるようなものであれば、タンパク質(又は、改変種)の2つの異なる種を区別することができる。好適具体例において、この捕捉剤は、少なくとも0.5の、一層好ましくは少なくとも0.1、0.001又は0.0001の識別インデックス(D.I.)を有し、ここに、D.I.は、Kd(a)/Kd(b)として定義され、Kd(a)は、意図する分析物の解離定数であり、Kd(b)は、試料中に存在する任意の他のタンパク質(又は、この場合のように、改変型)の解離定数である。
【0056】
ここで用いる場合、用語「プロテオームエピトープタグ」は、特定の生物のプロテオームを特性決定し且つ該プロテオームにユニークであるユニーク認識配列の特定の集合を含むことを意図している。
【0057】
ここで用いる場合、用語「捕捉剤」には、ユニーク認識配列を含むタンパク質に、例えば、少なくとも検出可能な感度で、結合することのできる任意の薬剤が含まれる。捕捉剤は、ユニーク認識配列と(直接又は間接に)特異的に相互作用し、又は該配列に(直接又は間接に)結合することができる。好適具体例において、この捕捉剤は、抗体又はその断片(例えば、一本鎖抗体)であり、又はディスプレーされたライブラリーから選択されたペプチドである。他の具体例において、この捕捉剤は、人工タンパク質、RNA又はDNAアプタマー、アロステリックリボザイム又は小型分子であってよい。他の具体例において、この捕捉剤は、ユニーク認識配列の電子工学的(例えば、コンピューターベースの又は情報ベースの)認識を与えることができる。一具体例において、この捕捉剤は、自然には細胞中で見出されない薬剤である。
【0058】
ここで用いる場合、用語「包括的に検出する」には、試料中のタンパク質の少なくとも40%を検出することが含まれる。好適具体例においては、用語「包括的に検出する」には、試料中のタンパク質の少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%が含まれる。上に列挙した値の中間の範囲例えば50〜70%又は75%〜95%も又、この発明の部分である。例えば、上に列挙した値の何れかの組合せを上限及び/又は下限として利用する範囲は包含される。
【0059】
ここで用いる場合、用語「プロテオーム」は、一生物体中の化学的に別個のタンパク質の完全なセットをいう。
【0060】
ここで用いる場合、用語「生物」には、動物例えば鳥類、昆虫、哺乳動物例えばヒト、マウス、ラット、サル、又はウサギ;微生物例えば細菌、酵母及び真菌類例えば大腸菌、カンピロバクター菌、リステリア菌、レジオネラ菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、サルモネラ菌、ボルダテラ菌、肺炎双球菌、根粒菌、クラミジア、リケッチア、放線菌、マイコプラズマ、ヘリコバクター・ピロリ、クラミジア・ニューモニア、コクシエラ・バーネッティイ、炭疽菌、及びナイセリア;原生動物例えばトリパノゾーマ・ブルセイ;ウイルス例えばヒト免疫不全ウイルス、ライノウイルス、ロータウイルス、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、サル免疫不全ウイルス、ネコ白血病ウイルス、RSウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、カポジ肉腫随伴ヘルペスウイルス(KSHV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、シンドビスウイルス、ラッサウイルス、西ナイルウイルス、エンテロウイルス例えば23コクサッキーAウイルス、6コクサッキーBウイルス、及び28エコーウイルス、エプスタイン−バールウイルス、カリチウイルス、アストロウイルス及びノーウォークウイルス;真菌類例えばクモノスカビ、アカパンカビ、酵母又はプクキニア;条虫例えば単包条虫、多包条虫、フォーゲル包条虫、及びヤマネコ包条虫;及び植物例えばシロイスナズナ、イネ、コムギ、トウモロコシ、トマト、アルファルファ、ナタネ、ダイズ、綿、ヒマワリ又はカノーラを含む任意の生きた生物が含まれる。
【0061】
ここで用いる場合、「試料」は、タンパク質分析物を含有しうる任意のものを指す。この試料は、生物学的試料例えば生物学的液体又は生物学的組織であってよい。生物学的液体の例には、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、大便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、羊水などが含まれる。生物学的組織は、細胞(通常、特定の種類)の、ヒト、動物、植物、細菌、真菌類又はウイルス構造の構造材料の一つを形成する細胞間物質と一緒になった凝集物であり、結合組織、上皮組織、筋肉組織及び神経組織が含まれる。生物学的組織の例には、臓器、腫瘍、リンパ節、動脈及び個々の細胞も又含まれる。この試料は又、イン・ビトロで調製された分子を含む標的タンパク質の混合物であってもよい。
【0062】
ここで用いる場合、「比較対照用試料」は、試験試料と比較して少なくとも一つの限定された面において異なるだけの対照用試料を指し、本発明の方法、キット又はアレイが、これらの試験試料と対照用試料との間で、例えば、発現されたタンパク質の量又は種類について及び/又はタンパク質修飾プロフィルについて、これらの限定された差異の効果を同定するために利用される。例えば、対照用生物試料は、生理学的に正常な状態から誘導することができ及び/又は種々の物理的、化学的、生理学的若しくは薬物での処理にかけることができ、又は、種々の生物学的ステージなどから得ることができる。
【0063】
2000年のMacBeath及びSchreiber による報告(Science 289 (2000), p1760-1763)は、タンパク質がマイクロアレイ形式にプリントされえてアッセイされうることを確立し、それにより、タンパク質チップへの期待に対する興奮を再び起こすのに大きな役割を有した。この後、短期間に、Snyderとその協同研究者は、ほぼ6000の酵母遺伝子産物を含むタンパク質チップの製造を報告し、このチップを利用して新規なクラスのカルモジュリン−及びリン脂質−結合性タンパク質(Zhu等、Science 293 (2001), p.2101-2105)を同定した。これらのタンパク質は、オープンリーディングフレームをクローン化して、これらのタンパク質の各々をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ−(GST)とHisタグ付き融合物として過剰生産することにより生成された。これらの融合物を利用して、各タンパク質の精製を促進し、そのHisタグ付きファミリーも又、タンパク質の固定化に利用した。この分野におけるこの及び他の参考文献は、数千のタンパク質を含有するマイクロアレイを製造することができて、結合相互作用を発見するために利用することができることを確立した。彼らは又、Hisタグにより固定化され、それ故、表面に一様に配向しているタンパク質が、アルデヒド表面にランダムに結合されているタンパク質よりも優れたシグナルを与えることをも報告した。
【0064】
関連する研究は、抗体アレイの構築に向けられている(de Wildt等、Antibody arrays for high-throughput screening of antibodyantigen interactions. Nat.Biotechnol. 18 (2000), p.989-994;Haab, B.B.等 (2001) Protein microarrays for highly parallel detection and quantitation of specific proteins and antibodies in complex solutions. Genome Biol. 2, RESEARCH0004.1-RESEARCH0004.13)。特に、初期の目立つ報告において、de Wildt及びTomlinson は、濾紙上でscFv抗体断片を提示するファージライブラリーを固定化して、複雑な混合物中で特異的抗原に対する抗体を選択した(前出)。この目的のためのアレイの利用は、スループットを大いに増大させ、抗体を評価する場合、ほぼ20,000のユニークなクローンを1サイクルでスクリーニングすることを可能にする。Brownとその協同研究者は、この概念を拡張して、抗体がアルデヒド改変ガラスに直接結合された分子的に限定されたアレイを造った。彼らは、115の市販の抗体をプリントし、同起源の抗原との相互作用を分析して、半定量的な結果を得た(前出)。Kingsmoreとその協同研究者は、類似のアプローチを利用して、75の別個のサイトカインを認識する抗体のアレイを、ローリングサークル増幅ストラテジー(Lizardi等、Mutation detection and single molecule counting using isothermal rolling circle amplification. Nat.Genet.19(1998), p.225-233)を利用して製造し、フェムトモル濃度のサイトカインを測定することができた(Schweitzer等、Multiplexed protein profiling on microarrays by rolling-circle amplification. Nat.Biotechnol. 20(2002), p359-365)。
【0065】
これらの例は、タンパク質チップが演じうる多くの重要な役割を示し、これらのツールの製造における広まった活性の証拠を与えている。以下の数節は、この発明の様々な面について更に詳しく記載している。
【0066】
I.捕捉剤の種類
ある好適具体例において、利用する捕捉剤は、URS部分との選択的な親和性反応をすることができるべきである。一般に、かかる相互作用は、非共有結合性である(もっとも、本発明は、URSと共有結合する捕捉用試薬の利用をも企図しているが)。
【0067】
利用できる捕捉剤の例には、ヌクレオチド;オリゴヌクレオチド、二本鎖若しくは一本鎖核酸(鎖状又は環状)、核酸アプタマー及びリボザイムを含む核酸;PNA(ペプチド核酸);抗体(例えば、モノクローナル又は組換えにより処理した抗体又は抗体断片)、T細胞レセプター及びMHC複合体、レクチン及び足場ペプチドを含むタンパク質;ペプチド;他の天然のポリマー例えば炭水化物;プラスチボディーを含む人工ポリマー;小型有機分子例えば薬物、代謝産物及び天然産物などが含まれるが、これらに限られない。
【0068】
ある具体例においては、これらの捕捉剤を、永久に又は可逆的に、固体支持体例えばビーズ、チップ又はスライド上に固定化する。タンパク質の複雑な混合物を分析するために用いる場合には、捕捉剤(及びそれが結合したタンパク質)の正体を明らかにするための結合データのデコンヴォルーションのため及び(適宜)結合を定量するために、固定化捕捉剤を整列させ且つ/又は標識する。或は、これらの捕捉剤は、溶液中に遊離させて与えることができ(可溶性)、URS結合のパラレルなデコンヴォルーションのために他の方法を利用することができる。
【0069】
一具体例において、これらの捕捉剤は、蛍光分子又は酵素などのレポーター分子と結合体化して、例えば「サンドイッチ」型アッセイにおいて、基材(例えば、チップ又はビーズ)上の結合URSの存在を検出するために利用するが、該アッセイにおいては、一つの捕捉剤を支持体上に固定化して、一種のURSを捕捉し、その捕捉されたURSに特異的な標識した第二の捕捉剤を加えてその捕捉されたURSを検出/定量することもできる。他の具体例においては、標識されたURSペプチドを競合結合アッセイで利用して、捕捉剤に結合する(試料由来の)未標識のURSの量を測定する。
【0070】
この発明の重要な利点は、検出すべきタンパク質の試料が存在しない場合でさえ、有用な捕捉剤を同定及び/又は合成しうることである。ヒト、ハエ(キイロショウジョウバエ)及び線虫(C.エレガンス)など幾つかの生物の全ゲノム解析が完了すれば、所定の長さのURS又はそれらの組合せをある種の生物の所定の単一タンパク質のために同定し、次いで、関心あるこれらのタンパク質の何れに対する捕捉剤でも、完全長タンパク質をクローン化して発現させることなく作成することができる。
【0071】
加えて、捕捉剤の抗原又は標的として役立つ任意のURSの適否を、更に他の利用可能な情報に対してチェックすることができる。例えば、今や、多くのタンパク質のアミノ酸配列を、利用可能なゲノムでデータから推論することができるので、試料にユニークなタンパク質の構造から配列を、コンピューター検索によって測定することができ、そのペプチドのタンパク質中での位置、及び無傷のタンパク質においてそれに接近できるかどうかを測定することができる。一度適当なURSペプチドが見出されれば、それを、公知技術を利用して合成することができる。手に入れたURSの試料を用いて、該ペプチドと相互作用する抗体又はペプチドバインダーなどの薬剤を、該ペプチドに対して高め又はパニングによってライブラリーから得ることができる。この状況においては、任意の選択した試料の断片化プロトコールがタンパク質を、URSを破壊し又は傷つけることにより制限することのないことを保証するように注意しなければならない。これは、理論的及び/又は実験的に測定でき、このプロセスを、選択したURSが捕捉剤によって確かに回収されるまで反復することができる。
【0072】
本発明の教示により選択されたURSセットは、それらが生成された元のタンパク質の酵素的開裂及びペプチドの選択により、又は好ましくはペプチド合成法によって、ペプチドを生成するために利用することができる。
【0073】
タンパク質分解により開裂されたペプチドは、周知の従来技術によって、クロマトグラフィー又は電気泳動手順によって分離して、精製して、復元することができる。
【0074】
合成ペプチドは、当分野で公知の古典的な方法によって、例えば、標準的な固相技術を利用することにより調製することができる。これらの標準的方法は、排除固相合成、部分固相合成法、断片濃縮、古典的な溶液合成を包含し、組換えDNA技術によるものさえ含まれる。例えば、Merrifield, J.Am.Chem.Soc., 85:2149 (1963)(参考として、本明細書中に援用する)を参照されたい。固相ペプチド合成手順は、当分野で周知であり、John Morrow Stewart and Janis Dillaha Young, Solid Phase Peptide Syntheses (第二版、Pierce Chemical Company, 1984)に一層記載されている。
【0075】
合成ペプチドは、調製用高性能液体クロマトグラフィー[Creighton T. (1983) Proteins, structures and molecular principles. WH Freeman and Co. ニューヨーク]により精製することができ、その組成は、アミノ酸配列決定により確認することができる。
【0076】
加えて、他の添加剤例えば安定剤、緩衝剤、ブロッカーなども、捕捉剤と共に提供しうる。
【0077】
A.抗体
一具体例において、捕捉剤は、抗体又は抗体様分子(集合的に「抗体」という)である。従って、捕捉剤として有用な抗体は、完全長抗体又はその断片であってよく、これは、抗体の「抗原結合部分」を含む。用語「抗原結合部分」は、ここで用いる場合、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体の少なくとも一つの断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって遂行されうるということが示されている。抗体の「抗原結合性部分」なる用語に包含される結合性断片の例には、(i)Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインよりなる一価の断片);(ii)F(ab')2断片(ヒンジ領域でジスルフィド橋により結合された2つのFab断片を含む二価の断片);(iii)VH及びCH1ドメインよりなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインよりなるFv断片;(v)VHドメインよりなるdAb断片(Ward等(1989)Nature 341:544-546);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。その上、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされており、それらは、組換え法を利用して、合成リンカーによって結合することができ、該リンカーは、それらが単一のタンパク質の鎖として作成されることを可能にし、該タンパク質中で、VL及びVH領域は、対合して一価の分子を形成する(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird等(1988) Science 242:423-426;及びHuston等 (1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;及びOsbourn等、1998, Nature Biotechnology 16:778参照)。かかる一本鎖抗体も又、抗体の「抗原結合性部分」なる用語に包含されるものである。特定のscFvの任意のVH及びVL配列を、完全なIgG分子又は他のイソ型をコードする発現ベクターを生成するために、ヒト免疫グロブリン定常領域cDNA又はゲノム配列に結合させることができる。VH及びVLは又、タンパク質化学又は組換えDNA技術を利用するFab、Fv又は他の免疫グロブリン断片の生成においても利用することができる。他の形態の一本鎖抗体例えばディアボディーも又、含まれる。ディアボディーは、二価の、二重特異性抗体であり、そのVH及びVLドメインは、一本鎖ポリペプチド上で発現されるが、同鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを利用しており、それにより、これらのドメインは、他方の鎖の相補性ドメインとの対合を強いられて、2つの抗原結合部位が造られる(例えば、Holliger, P.等 (1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak, R.J.等 (1994) Structure 2:1121-1123参照)。
【0078】
尚更に、抗体又はその抗原結合部分は、抗体又は抗体の部分の少なくとも一つの他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有結合により形成される一層大きい免疫接着分子の部分であってよい。かかる免疫接着分子の例には、四量体scFv分子を作るためのストレプトアビジンコア領域の利用(Kipriyanov, S.M.等 (1995) Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)及び二価のビオチン化scFv分子を作るためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの利用(Kipriyanov, S.M.等 (1994) Mol.Immunol.31:1047-1058)が含まれる。抗体部分例えばFab及びF(ab')2断片は、全抗体から、慣用技術例えば、それぞれ、全抗体のパパイン又はペプシン消化を利用して製造することができる。その上、抗体、抗体タンパク質及び免疫接着分子は、標準的組換えDNA技術を利用して得ることができる。
【0079】
抗体は、ポリクローナルであってもモノクローナル抗体であってもよい。用語「モノクローナル抗体」及び「モノクローナル抗体組成物」は、ここで用いる場合、抗原の特定のエピトープと免疫反応することのできる唯一種の抗原結合部位を含む抗体分子の集団を指し、用語「ポリクローナル抗体」及び「ポリクローナル抗体組成物」は、特定の抗原と相互作用できる多数種の抗原結合部位を含む抗体分子の集団を指す。モノクローナル抗体組成物は、典型的には、それが免疫反応する特定の抗原に対する単一の結合親和性を示す。
【0080】
当分野で認められた任意の方法を利用して、URSに向けられた抗体を生成することができる。例えば、URS(単独又はハプテンと結合したもの)を利用して、適当な患者(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス又は他の哺乳動物又は脊椎動物)を免疫化することができる。例えば、米国特許第5,422,110号;5,837,268号;5,708,155号;5,723,129号及び5,849,531号(これらの各内容を参考として本明細書中に援用する)に記載された方法を利用することができる。免疫原性調製物には、更に、アジュバント例えば完全若しくは不完全フロイントアジュバント又は類似の免疫刺激剤が含まれうる。適当な患者の、URSによる免疫化は、ポリクローナル抗URS抗体応答を誘導する。この抗URS抗体の免疫化された患者における力価は、標準的技術例えば固定化URSを利用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって経時的にモニターすることができる。
【0081】
URSに向けられた抗体分子は、哺乳動物から(例えば、血液から)単離し、更に、周知技術例えばプロテインAクロマトグラフィーにより精製してIgG画分を得ることができる。免疫化した後、適当な時点で(例えば、抗URS抗体力価が最高のとき)、抗体産生細胞を患者から得て、例えば、標準的技術例えばKohler及びMilstein (1975) Nature 256:495-497により最初に記載されたハイブリドーマ技術(Brown等 (1981) J.Immunol.127:539-46;Brown等 (1980)J.Biol.Chem.255:4980-83;Yeh等 (1976) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:2927-31;及びYeh等 (1982) Int.J.Cancer 29:269-75も参照されたい)、一層最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor等 (1983) Immunol Today 4:72)又はEBVハイブリドーマ技術(Cole等 (1985), Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., p.77-96)によってモノクローナル抗体を製造するために利用することができる。モノクローナル抗体ハイブリドーマを生成するための技術は、周知である(一般的には、R.H. Kenneth, in Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analysis, Plenum Publishing Corp., New York, ニューヨーク(1980);E.A. Lerner (1981) Yale J.Biol.Med., 54:387-402;M.L. Gefter等 (1977) Somatic Cell Genet.3:231-36を参照されたい)。簡単にいえば、不滅化細胞株(典型的には、ミエローマ)を、上記のように、URS免疫原で免疫化した哺乳動物由来のリンパ球(典型的には、脾臓細胞)と融合させ、その結果生成したハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングして、URSに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する。
【0082】
リンパ球と不滅化細胞株との融合に利用される多くの周知のプロトコールの何れでも、抗URSモノクローナル抗体を生成する目的のために適用することができる(例えば、G. Galfre等 (1977) Nature 266:55052;Gefter等、Somatic Cell Genet., 前出;Lerner, Yale J.Biol.Med., 前出;Kenneth, Monoclonal Antibodies, 前出を参照されたい)。その上、当業者は、かかる方法のやはり有用な多くの変法があることを認めよう。典型的には、不滅化細胞株(例えば、ミエローマ細胞株)は、リンパ球と同じ哺乳動物種に由来する。例えば、マウスハイブリドーマを、本発明の免疫原性調製物で免疫化したマウスに由来するリンパ球を不滅化マウス細胞株と融合させることによって作成することができる。好適な不滅化細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養培地(「HAT培地」)に感受性のマウスミエローマ細胞株である。多くのミエローマ細胞株(例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653又はSp2/O−Ag14ミエローマ細胞株)の何れでも、標準的技術に従って、融合パートナーとして利用することができる。これらのミエローマ株は、ATCCから入手できる。典型的には、HAT感受性のマウスミエローマ細胞を、ポリエチレングリコール(「PEG」)を利用して、マウス脾臓細胞に融合させる。その融合から生じたハイブリドーマ細胞を、次いで、HAT培地を利用して選択する。該培地は、未融合のミエローマ細胞及び非生産性の融合ミエローマ細胞を殺す(未融合脾臓細胞は、トランスフォームされないので数日後に死ぬ)。この発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、ハイブリドーマ培養上清をURSに結合する抗体について例えば標準的ELISAアッセイを利用してスクリーニングすることによって検出する。
【0083】
加えて、標的タンパク質/URSのアレイに対する抗体又は足場ライブラリーの自動化スクリーニングは、タンパク質発現プロファイリングのために利用されうる数千の試薬を開発するための最も迅速な方法であろう。その上、ライブラリーシステムに由来するポリクローナル抗血清、ハイブリドーマ又は選択も又、必要な捕捉剤を迅速に生成するために利用することができる。抗体単離のための高スループットな方法は、Hayhurst及びGeorgiou, Curr Opin Chem Biol 5(6):683-9, 2001年12月(参考として援用する)に記載されている。
【0084】
B.タンパク質及びペプチド
本発明の捕捉剤を生成する他の方法には、例えばDower等、WO91/17271、McCafferty等、WO92/01047、Herzig等、米国特許第5,877,218号、Winter等、米国特許第5,871,907号、Winter等、米国特許第5,858,657号、Holliger等、米国特許第5,837,242号、Johnson等、米国特許第5,733,743号及びHoogenboom等、米国特許第5,565,332号(これらの各々の内容を、参考として援用する)に記載されたファージディスプレー技術が含まれる。これらの方法においては、メンバーが、それらの外表面に、異なる抗体、抗体結合部位又はペプチドを提示しているファージのライブラリーを生成する。抗体は、通常、Fv又はFab断片として提示される。所望の特異性を有するファージディスプレー配列を、特異的URSに対するアフィニティー富化によって選択する。
【0085】
酵母ディスプレー及びイン・ビトロリボソームディスプレーなどの方法も又、本発明の捕捉剤を生成するために利用することができる。前述の方法は、例えば、Methods in Enzymology 328巻 C部:Protein-protein interactions & Genomics and Bradbury A. (2001) Nature Biotechnology 19:528-529(これらの各々の内容を参考として本明細書中に援用する)に記載されている。
【0086】
関連する具体例において、タンパク質又はポリペプチドも又、本発明の捕捉剤として作用しうる。これらのペプチド捕捉剤も又、所定のURSに特異的に結合し、例えば、固定化URSに対するファージディスプレースクリーニングを利用して、又は任意の他の当分野で認められた方法を利用して同定することができる。一度同定されたならば、それらのペプチド捕捉剤は、ペプチド配列を製造するための周知の方法の何れかを利用することにより製造することができる。例えば、これらのペプチド捕捉剤は、原核又は真核宿主細胞中で、特定のペプチド配列をコードするポリヌクレオチドの発現により生成することができる。或は、かかるペプチド捕捉剤は、化学的方法によって合成することができる。組換え体宿主における異種ペプチドの発現、ペプチドの化学合成、及びイン・ビトロ翻訳のための方法は、当分野で周知であり、Maniatis等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1989), 第二版、Cold Spring Harbor, N.Y.;Berger及びKimmel, Methods in Enzymology, 152巻、Guide to Molecular Cloning Techniques (1987), Academic Press, Inc., San Diego, Calif.;Merrifield, J. (1969) J.Am.Chem.Soc.91:501;Chaiken, I.M. (1981) CRC Crit.Rev.Biochem.11:255;Kaiser等 (1989) Science 243:187;Merrifield, B. (1986) Science 232:342;Kent, S.B.H. (1988) Am.Rev.Biochem.57:957;及びOfford,R.E. (1980) Semisynthetic Proteins, Wiley Publishing (これらを、参考として、そのまま本明細書中に援用する)に更に記載されている。
【0087】
これらのペプチド捕捉剤は又、溶液相及び固相化学合成を含む化学的なペプチド合成のための適当な方法によっても製造することができる。好ましくは、これらのペプチドは、固体支持体上で合成する。ペプチドを化学合成する方法は、当分野で周知である(例えば、Bodansky, M. Principles of Peptide Synthesis, Springer Verlag, Berlin (1993) 及びGrant, G.A.(編). Synthetic Peptides: A User's Guide, W.H. Freeman and Company, New York (1992)を参照されたい)。これらのペプチド捕捉剤を作成するのに有用な自動化ペプチド合成機は、市販されている。
【0088】
C.足場ペプチド
本発明で使用するための捕捉剤の生成への別のアプローチは、抗体を利用し、それらは、足場付きペプチド例えばタンパク質の表面に提示されたペプチドである。この考えは、ペプチドの自由度を、それを表面に露出されたタンパク質のループに組み込むにより制限することが、標的タンパク質への結合のエントロピーコストを低下させることができて、一層高い親和性を生じるというものである。例えば、チオレドキシン、フィブロネクチン、トリ膵臓ポリペプチド(aPP)及びアルブミンは、多くの配列変化を許容するであろう表面ループを有する小さい、安定なタンパク質である。標的URSに選択的に結合する足場付きペプチドを同定するために、ランダムペプチドがネイティブなループ配列を置換するのに利用されていて、親和性突然変異の過程により、関心あるURSに選択的に結合するものが同定されるキメラタンパク質のライブラリーを生成させることができる。
【0089】
D.単純ペプチド及びペプチド模倣化合物
ペプチドは又、小型分子とタンパク質の利点を併せ持つので、捕捉剤の魅力的な候補でもある。大きい、多様なライブラリーを生物学的に又は合成によって作ることができ、URS部分に対する結合スクリーニングにおいて得られる「ヒット」を大量に合成することができる。
【0090】
ペプチド様オリゴマー(Soth等 (1997) Curr.Opin.Chem.Biol. 1:120-129)例えばペプトイド(Figliozzi等 (1996) Methods Enzymol. 267:437-447)も又、捕捉剤として利用することができ、ペプチドを超えるある利点を有しうる。それらは、プロテアーゼを受け付けず、それらの合成は、特に、20種類の一般的アミノ酸において見出されない官能基の利用を考えるならば、ペプチドの合成よりも簡単で且つ安価でありうる。
【0091】
E.核酸
他の具体例において、URSに特異的に結合するアプタマーも又、捕捉剤として利用することができる。ここで用いる場合、用語「アプタマー」、例えばRNAアプタマー又はDNAアプタマーには、標的分子に特異的に結合する一本鎖オリゴヌクレオチドが含まれる。アプタマーは、例えば、指数関数的富化によるリガンドの系統的進化と称するイン・ビトロ進化プロトコールを利用することにより選択される。アプタマーは、標的分子に固く且つ特異的に結合し;タンパク質に対する殆どのアプタマーは、1pM〜1nMの範囲内のKd(解離平衡定数)で結合する。アプタマー及びそれらの製造方法は、例えば、E.N.Brody等(1999) Mol.Diagn.4:381-388(内容を本明細書中に参考として援用する)に記載されている。
【0092】
一具体例において、主題のアプタマーは、タンパク質の代りに核酸よりなる非常に高親和性のレセプターを生成する方法であるSELEXを利用して生成することができる。例えば、Brody等 (1999) Mol.Diagn.4:381-388を参照されたい。SELEXは、伝統的なタンパク質ベースの抗体技術に代わる完全にイン・ビトロのコンビナトリアルケミストリーを提供する。ファージディスプレーと同様に、SELEXは、特定の標的URSに対する特異的結合剤の生成に関与する動物宿主が不要であり、時間と労力が低減され、そして精製が簡単になるという点で有利である。
【0093】
更に説明するために、SELEXは、例えば、公知のプライマー配列と隣接した20塩基長より大きいランダムオリゴヌクレオチドライブラリーを合成することにより実行することができる。ランダム領域の合成は、配列中の各位置において4種類の全ヌクレオチドを混合することにより達成することができる。従って、このランダム配列の多様性は、最大で、4n(ここに、nは、配列の長さである)から、パリンドローム及び対称性配列の頻度を引いたものである。SELEXにより与えられる一層大きい多様性は、3次元の結合部位を形成するオリゴヌクレオチドを選択する一層大きい機会を与える。高親和性オリゴヌクレオチドの選択は、ランダムSELEXライブラリーを固定化した標的URSにさらすことにより達成される。容易に結合して洗い去られない配列は、保持されて、その後の数ラウンドのSELEXのために、PCRにより増幅される(該SELEXは、別のアフィニティー選択と結合核酸配列のPCR増幅よりなる)。典型的には、4〜5ラウンドのSELEXは、アプタマーの高親和性セットを生成するのに十分である。
【0094】
それ故、数百〜数千のアプタマーを、経済的に可能な仕方で、作ることができる。血液と尿を、タンパク質を捕捉して定量するアプタマーチップ上で分析することができる。SELEXは又、5−ブロモ(5−Br)及び5−ヨード(5−I)デオキシウリジン残基の利用にも適合された。これらのハロゲン化塩基は、タンパク質と特異的に架橋することができる。イン・ビトロ進化中の選択圧を、結合特異性と特異的光架橋性の両方について加えることができる。これらは、典型的なサンドイッチアッセイにおいて、一つの試薬、光架橋性アプタマーを2つの試薬、捕捉剤抗体及び検出用抗体の代用とするのに十分に独立のパラメーターである。結合、洗浄、架橋及び洗剤洗浄のサイクルの後に、タンパク質は、特異的に且つ共有結合によりそれらの同起源のアプタマーを結合する。他のタンパク質はこれらのチップ上に存在しないので、タンパク質特異的な汚れは、今や、チップ上のピクセルの意味のあるアレイを示す。アルゴリズムの学習及び後向き研究との結合により、この技術は、丈夫でしかもシンプルな診断用チップへと導くはずである。
【0095】
更に別の関連する具体例において、捕捉剤は、アロステリックリボザイムであってよい。用語「アロステリックリボザイム」は、ここで用いる場合、様々なエフェクター例えばヌクレオチド、二次メッセンジャー、酵素補因子、医薬、タンパク質、及びオリゴヌクレオチドにより引き金を引かれたときに触媒作用を遂行する一本鎖オリゴヌクレオチドを包含する。アロステリックリボザイム及びそれらの製造方法は、例えば、S. Seetharaman等(2001) Nature Biotechnol.19:336-341(内容を参考として本明細書中に援用する)に記載されている。Seetharaman等によれば、試作品のバイオセンサーは、特異的エフェクターにより引き金を引かれたときにリボザイム媒介の自己開裂を受ける処理されたRNA分子スイッチから組み立てられた。各々の型のスイッチは、金への固定化を与えて、個々にアドレス指定可能なピクセルを形成する5’−チオトリホスフェート部分を利用して製造される。各ピクセルを含むリボザイムは、それらの対応するエフェクターと共に存在する場合にのみ活性となり、それで、各型のスイッチは、特異的な分析物用センサーとして役立つ。7つの異なるRNAスイッチにより造られたアドレス指定されたアレイは、金属イオン、酵素補因子、代謝産物、及び薬物分析物を含む複雑な混合物中の標的の状態を報告するために利用された。RNAスイッチのアレイは又、自然に生成された3’,5’−環状アデノシン一リン酸(cAMP)を細菌培養培地において検出することによって、アデニレートシクラーゼ機能について大腸菌株の表現型を測定するためにも利用された。
【0096】
F.プラスティボディー
ある具体例において、主題の捕捉剤は、プラスティボディーである。用語「プラスティボディー」は、選択したテンプレート分子を刻印されたポリマーを指す。例えば、Bruggemann (2002) Adv Biochem Eng Biotechnol 76:127-63;及びHaupt等 (1998) Trends Biotech. 16:468-475を参照されたい。このプラスティボディーの原理は、分子刻印即ち、ポリマー鎖の側鎖にグラフトされ、それにより例えば抗体の結合部位を模倣するペンダント官能基の立体規則性ディスプレーにより生成されうる認識部位に基づいている。
【0097】
G.2つの低親和性リガンドに由来するキメラ結合剤
適当な捕捉剤を生成するための更に別のストラテジーは、2つ以上の控えめの親和性のリガンドを結合させて、高い親和性の捕捉剤を生成することである。適当なリンカーがあれば、かかるキメラ化合物は、URSに対する2つの個々のリガンドの親和性の積に近い親和性を示すことができる。説明のために、化合物の集合を、標的URSの弱い相互作用相手について高濃度でスクリーニングする。次いで、互いに競争しない化合物を同定し、キメラ化合物のライブラリーを、異なる長さのリンカーにより作成する。次いで、このライブラリーを、URSに対する結合について、ずっと低濃度でスクリーニングして、高い親和性のバインダーを同定する。かかる技術は又、ペプチド又は任意の他の型の控えめの親和性のURS結合性化合物にも適用することができる。
【0098】
H.捕捉剤の標識
本発明の捕捉剤は、当業者に公知の技術例えば蛍光標識、放射性標識、色標識、光学標識、及び他の物理的又は化学的標識を利用して、後記のように、検出を可能にするように改変することができる。
【0099】
I.その他
加えて、任意所定のURSについて、上記の捕捉剤の範疇の各々に属する多数の捕捉剤を利用することができる。これらの多数の捕捉剤は、URSに対する種々の特性例えば親和性/アビディティー/特異性を有しうる。異なる親和性は、幾つかのタンパク質が示しうる発現の動的範囲をカバーするのに有用である。特定の利用に応じて、捕捉剤の任意所定のアレイにおいて、異なる種類/量の捕捉剤が、最適の全体的性能を達成するように、単一のチップ/アレイ上に存在することができる。
【0100】
好適具体例において、捕捉剤を、関心あるタンパク質の表面例えば親水性領域に位置するURSに対して高めることができる。関心あるタンパク質の表面に位置するURSは、当分野で利用できる周知のソフトウェアの何れかを利用して同定することができる。例えば、Naccessプログラムを利用することができる。
【0101】
Naccessは、PDB(Protein Data Bank)フォーマットのファイルからの分子の接近可能な領域を計算するプログラムである。それは、タンパク質及び核酸の両方について、原子及び残基の接近可能性を計算することができる。Naccessは、プローブが巨大分子のファンデルワールス面の周りを回る場合の原子の接近可能な領域を計算する。かかる三次元座標のセットは、Brookhaven国立研究所のPDBから入手できる。このプログラムは、Lee及びRichards (1971) J.Mol.Biol.,55,379-400の方法を利用しており、それにより、所定半径のプローブは、分子表面の周囲を回り、その中心により追跡された道筋が接近可能な面である。
【0102】
Boger, J., Emini, E.A. & Schmidt, A., Surface probability profile-An heuristic approach to the selection of synthetic peptide antigens, Reports on the Sixth International Congress in Immunology (Toronto) 1986 250頁に記載された溶媒接近可能性方法も又、関心あるタンパク質の表面に位置するURSを同定するために利用することができる。パッケージMOLMOL(Koradi, R.等 (1996) J.Mol.Graph.14:51-55)及びEisenhaberのASC法(Eisenhaber及びArgos (1993) J.Comput.Chem.14:1272-1280;Eisenhaber等 (1995) J.Comput.Chem.16:273-284)も又、利用することができる。
【0103】
他の具体例においては、タンパク質の接近可能なペプチド表面よりも、無傷のタンパク質の消化により生成されたペプチドと結合するようにデザインされた捕捉剤を高めることができる。この具体例においては、研究中の試料内のすべてのURSを再現可能に生成する断片化プロトコールを利用することが好ましい。
【0104】
II.捕捉剤を含むツール(アレイなど)
ある具体例において、複雑な化学的若しくは生物学的試料又は多数の化合物の効率的なスクリーニングのための捕捉剤のアレイ例えば高密度アレイを構築するためには、これらの捕捉剤を、固体支持体(例えば、平面の支持体又はビーズ)の上に固定化することが必要である。当分野では、生物学的分子を固体支持体に結合させるための様々な方法が知られている。一般的には、Affinity Techniques Enzyme Purification: Part B, Meth.Enz.34(W.B. Jakoby及びM. Wilchek編、Acad.Press, N.Y. 1974)及びImmobilized Biochemicals and Affinity Chromatography, Adv.Exp.Med.Biol.42(R. Dunlap, Plenum Press, N.Y. 1974)を参照されたい。下記は、アレイを構築する際に考慮すべきことがらである。
【0105】
A.形式及び表面の考慮すべき問題
タンパク質のアレイは、ありふれた免疫アッセイ例えばELISA及びドットブロッティングの小型化としてデザインされ(しばしば、蛍光読出しを利用)、多数のアッセイを同時に実行することを可能にするロボット工学及び高スループット検出システムによって促進された。一般的な物理的支持体には、スライドガラス、シリコン、ミクロウェル、ニトロセルロース若しくはPVDF膜、及び磁気その他のミクロビーズが含まれる。平面上に送達されたタンパク質の微小液滴が広く利用されているが、関連する別の構成には、ミクロな液体中での発展に基づくCD遠心分離装置[Gyros]及び特殊化チップデザイン例えばプレート中の処理されたミクロチャンネル[The Living Chip(商標)、Biotrove]及びシリコン表面上の小さい3Dポスト[Zyomyx]が含まれる。懸濁液中の粒子も又、それらが同定のためにコード化され;システムが、ミクロビーズ[Luminex, Bio-Rad]及び半導体ナノクリスタル[QDots(商標)、Quantum Dots]のためのカラーコーディング、並びにビーズ[UltraPlex(商標)、Smartbeads]及びマルチメタルミクロロッド[Nanobarcodes(商標)粒子、Surromed]のためのバーコーディングを含む場合には、アレイの基礎として利用することができる。ビーズは又、半導体チップ上に二次元アレイに組み立てることもできる[LEAPS 技術、BioArray Solutions]。
【0106】
B.固定化で考慮すべきことがら
タンパク質例えば抗体の固定化における変数には、カップリング試薬及び結合される表面の性質の両方が含まれる。理想的には、利用する固定化方法は、再現可能であり、種々の特性(大きさ、親水性、疎水性)のタンパク質に適用可能であり、高スループット及び自動化に従順であり、そして完全に機能的なタンパク質活性の保持と両立すべきである。表面結合されたタンパク質の向きは、そのリガンド又は基質(活性状態)への提示における重要な因子として認められており;捕捉剤アレイに関して、最も効率的な結合結果は、方向付けられた試薬を用いて得られ、これは、一般に、タンパク質の部位特異的な標識を必要とする。
【0107】
良好なタンパク質アレイ支持体表面の特性は、カップリング手順の前後で化学的に安定であり、良好なスポット形態を与え、最小の非特異的結合を提示し、検出システムにおいてバックグラウンドに寄与せず、そして種々の検出系と両立すべきであることである。
【0108】
タンパク質固定化の共有結合法及び非共有結合法の両方が利用され、様々な賛否両論がある。表面への受動的吸着は、方法論的に単純であるが、定量的又は方向付けた制御が殆どできず;タンパク質の機能的特性を変えるかもしれず、そして再現性及び効率が、変化しやすい。共有結合法は、安定な結合を与え、ある範囲のタンパク質に適用できて且つ良好な再現性を有するが;方向付けが変わりやすく、化学的誘導体化が、タンパク質の機能を変えるかもしれず、安定な相互作用性の表面を必要とする。タンパク質上のタグを利用する生物学的捕捉方法は、安定な結合を提供し且つ該タンパク質と特異的に、再現可能な向きで結合するが、生物学的試薬は、先ず適当に固定化されなければならず、そのアレイは、特殊な取扱いを必要とし変わり易い安定性を有しうる。
【0109】
タンパク質アレイの作成のために、幾つかの固定化用化学及びタグが、記載されている。共有結合のための基材には、アミノ又はアルデヒド含有シラン試薬で被覆されたスライドガラス[Telechem]が含まれる。Versalinx(商標)システム[Prolinx]においては、可逆的共有結合が、フェニルジボロン酸で誘導体化されたタンパク質と、支持体表面に固定化されたサリチルヒドロキサム酸との間の相互作用により達成される。これは又、低いバックグラウンド結合及び低い固有の蛍光をも有して、固定化されたタンパク質が機能を保持することを可能にする。未修飾タンパク質の非共有結合は、HydroGel(商標)[PerkinElmer]などの多孔性構造中に、3次元ポリアクリルアミドゲルベースで生じ;この基材は、ガラスマイクロアレイに特に低いバックグラウンドを与え、高いタンパク質機能の容量及び保持を有することが報告されている。広く用いられている生物学的捕捉方法は、ビオチン/ストレプトアビジン又はヘキサヒスチジン/Ni相互作用(適宜改変されたタンパク質を有する)によるものである。ビオチンは、二酸化チタン[Zyomyx]又は五酸化タンタル[Zeptosens]などの表面に固定化されたポリリジン主鎖に結合させることができる。
【0110】
Arenkov等は、例えば、微細加工されたポリアクリルアミドゲルを利用してタンパク質を捕捉し、次いで、微細電気泳動によりマトリクスを通過する拡散を加速することによって、タンパク質を、それらの機能を保持しながら固定化する方法を記載している(Arenkov等(2000), Anal Biochem 278(2):123-31)。特許文献も又、生物学的分子を固体支持体に結合するための多くの異なる方法を記載している。例えば、米国特許第4,282,287号は、多層のビオチン、アビジン及び増量剤の連続適用によってポリマー表面を改変する方法を記載している。米国特許第4,562,157号は、生化学的リガンドを、光化学的に反応性のアリールアジドに結合することにより表面に結合する技術を記載している。米国特許第4,681,870号は、遊離のアミノ基又はカルボキシル基をシリカマトリクスに導入するための方法であって、該基が、次いで、カルボジイミドの存在下でタンパク質と共有結合する当該方法を記載している。加えて、米国特許第4,762,881号は、ポリペプチド鎖を固体基材に結合する方法であって、光感受性の不自然アミノ酸基を該ポリペプチド鎖に組み込み、その生成物を低エネルギー紫外線に曝すによって結合する当該方法を記載している。
【0111】
支持体の表面は、更なる結合化学に利用できる少なくとも一つの反応性の化学基を有するように、又は該基を有するように化学的に誘導体化されるものを選択する。支持体と捕捉剤との間に挿入された随意の可撓性のアダプター分子があってよい。一具体例において、捕捉剤は、物理的に、支持体上に吸着される。
【0112】
この発明のある具体例においては、捕捉剤を、捕捉剤のURS結合領域とそれが支持体と結合される領域とを離す仕方で、支持体上に固定化される。好適具体例において、この捕捉剤は、その一端と支持体上のアダプター分子との共有結合を形成するように巧みに処理される。かかる共有結合は、シッフ塩基結合、マイケル付加により生成される結合又はチオエーテル結合によって形成されうる。
【0113】
アダプターによる結合又は直接捕捉剤による結合を可能にするために、基材の表面は、適当な反応性の基を造るための準備を必要としうる。かかる反応性の基は、単純な化学的部分例えばアミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシレート、アルデヒド、エステル、アミド、アミン、ニトリル、スルホニル、ホスホリル、又は同様に化学的に反応性の基を包含することができよう。或は、反応性の基は、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、ニトリロトリ酢酸、活性化ヒドロキシル、ハロアセチル(例えば、ブロモアセチル、ヨードアセチル)、活性化カルボキシル、ヒドラジド、エポキシ、アジリジン、スルホニルクロリド、トリフルオロメチルジアジリジン、ピリジルジスルフィド、N−アシル−イミダゾール、イミダゾールカーバメート、アリールアジド、アンヒドリド、ジアゾアセテート、ベンゾフェノン、イソチオシアネート、イソシアネート、イミドエステル、フルオロベンゼン、ビオチン及びアビジンを含む(但し、これらに限られない)一層複雑な部分を含むことができる。かかる反応性の基を、機械的、物理的、電気的又は化学的手段によって基材上に配置する技術は、当分野で周知であり、例えば、米国特許第4,681,870号(参考として本明細書中に援用する)に記載されている。
【0114】
一度反応性の基の基材上の初期の準備が完了したならば(必要ならば)、アダプター分子を、適宜、該基材の表面に加えて、該表面を更なる結合化学に適したものにすることができる。かかるアダプターは、基材上の反応性の基と捕捉剤との連続的結合を形成する化学結合の主鎖及び該主鎖に沿った自由に回転する複数の結合を有して、既に基材上にある反応性の基と固定化すべき捕捉剤とを共有結合により結させる。基材アダプターは、化合物の任意の適当なクラスから選択することができ、有機酸、アルデヒド、アルコール、チオール、アミンなどのポリマー又はコポリマーを含むことができる。例えば、ヒドロキシル−、アミノ−又はジ−カルボン酸例えばグリコール酸、乳酸、セバシン酸又はサルコシンのポリマー又はコポリマーを用いることができる。或は、飽和又は不飽和の炭化水素例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、糖類などのポリマー又はコポリマーを利用することができる。好ましくは、この基材アダプターは、結合すべき捕捉剤が、試料溶液中の分子と自由に相互作用して有効な結合を形成することを可能にするのに適当な長さであるべきである。これらの基材アダプターは、分枝していてもいなくてもよいが、この及び他のアダプターの構造的属性は、立体化学的に捕捉剤の関連機能例えば、URS相互作用に干渉すべきでない。当業者に公知の保護基を利用して、アダプターの最後の基の望ましくない反応又は時期尚早の反応を防止することができる。例えば、米国特許第5,412,087号(本明細書中に参考として援用する)は、アダプターのチオール基における光除去可能な保護基の利用を記載している。
【0115】
捕捉剤の結合親和性を保存するために、捕捉剤を、それが支持体基材に、そのリガンド即ちURSとの相互作用の原因である領域から離れた領域で結合するように改変することは好ましい。
【0116】
捕捉剤を、基材表面の又はアダプター上の反応性の末端基に結合する方法には、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、アミド結合、カーバメート結合、尿素結合、エステル結合、カーボネート結合、エーテル結合、ヒドラゾン結合、シッフ塩基結合、及び例えばイオン性又は疎水性相互作用により媒介される非共有結合性結合 などの結合を形成する反応が含まれる。反応の種類は、勿論、基材/アダプター及び捕捉剤の両者の利用可能な反応性の基に依存する。
【0117】
C.アレイ作成において考慮すべきことがら
好ましくは、固定化捕捉剤は、固体支持体上例えばシリコンベースのチップ又はスライドガラス上でアレイに配列させる。所定の公知のタンパク質(前に存在が認識されたもの)の存在(及び、適宜、濃度)を検出するようにデザインされた少なくとも一つの捕捉剤は、アレイ中の複数のセル/領域の各々に固定化される。従って、特定のセル/領域でのシグナルは、試料中の公知のタンパク質の存在を示し、そのタンパク質の正体は、そのセルの位置によって示される。或は、一つ又は複数のURSの捕捉剤を、ビーズ上に固定化する(適宜、それらを、意図する標的分析物を同定するために標識する)か又はミクロウェルプレートなどのアレイに分配する。
【0118】
一具体例において、マイクロアレイは、高密度であり、1cm2当たり、約100スポットより大きい、好ましくは、約1000、1500、2000、3000、4000、5000スポットより大きい、更に好ましくは、約9000、10000、11000、12000又は13000スポットより大きい密度を有し、捕捉剤を、高密度の反応性の基を造るように官能化され又は反応性の基を有する高密度のアダプターの付加により官能化された支持体表面に結合させることにより形成される。他の具体例において、このマイクロアレイは、試料中で、病気の診断、細胞型の決定、病原体の同定などの証拠を提供するパターンを生成する特異的タンパク質の様々な組合せを検出するために選択された比較的少数(例えば、10〜50)の捕捉剤を含む。
【0119】
基材又は支持体の特徴は、意図する用途によって変わりうるが、それらの基材の形状、材料及び表面改変は、考慮しなければならない。基材が実質的に二次元の又は平らな少なくとも一つの面を有することは好適なことであるが、それは、へこみ、突起、段、隆起、段丘などを含んでもよく、如何なる幾何学的形態(例えば、円筒形、円錐形、球形、凹面、ひも状、又はこれらの任意のものの組合せ)を有してもよい。適当な基材材料には、ガラス、セラミック、プラスチック、金属、合金、炭素、紙、アガロース、シリカ、石英、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリアミド、及びゼラチン並びに他のポリマー支持体、他の固体材料支持体又は可撓性膜支持体が含まれるが、これらに限られない。基材として利用しうるポリマーには、ポリスチレン;ポリ(テトラ)フルオロエチレン(PTFE);ポリビニリデンジフルオリド;ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレート;ポリビニルエチレン;ポリエチレンイミン;ポリオキシメチレン(POM);ポリビニルフェノール;ポリラクチド;ポリメタクリルイミド(PMI);ポリアルケンスルホン(PAS);ポリプロピレン;ポリエチレン;ポリヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA);ポリジメチルシロキサン;ポリアクリルアミド;ポリイミド;及び様々なブロックコポリマーが含まれるが、これらに限られない。この基材は又、多層構造中に材料(水透過性又は非透過性)の組合せを含むこともできる。この基材の好適具体例は、表面にSi−OH官能基を有する単純な2.5cm×7.5cmのスライドガラスである。
【0120】
アレイの作成方法は、ロボットによる密着プリンティング、インクジェット、圧電スポッティング及びフォトリソグラフィーを包含する。多くの市販のアレイ[例えば、Packard Biosience]並びに手動装置[V & P Scientific]が利用可能である。細菌コロニーを、イン・シトゥーでタンパク質発現を誘導するために、PVDF膜上に、ロボットによってグリッドに据えることができる。
【0121】
ナノアレイは、スポットの大きさ及び密度の限界にあり、ナノメートルの空間的スケールのスポットは、数千の反応を1平方mm未満の単一チップ上で行なうことを可能にする。BioForce Laboratoriesは、85平方ミクロン中に1521のタンパク質のスポットを有する(2500万スポット/平方cmに匹敵する)光学検出の限界にあるナノアレイを開発したが;それらの読出し方法は、蛍光及び原子間力顕微鏡(AFM)である。
【0122】
スライドガラス上のアレイを有する自動化試料インキュベーション及び洗浄のためのミクロな液体のシステムが、NextGen及びPerkinElmerによって同時に開発された。
【0123】
例えば、捕捉剤マイクロアレイは、少量の反応物質を基材表面の特定の位置に分配する「スポッティング」を含む多くの方法によって生成することができる。スポッティングのための方法には、ミクロな液体のプリンティング、マイクロスタンピング(例えば、米国特許第5,515,131号、米国特許第5,731,152号、Martin, B.D.等(1998), Langmuir 14:3971-3975及びHaab, BB等(2001) Genome Biol 2 及びMacBeath, G.等(2000) Science 289:1760-1763参照)、マイクロコンタクトプリンティング(例えば、PCT公開WO96/29629参照)、インクジェットヘッドプリンティング(例えば、Roda, A.等(2000) BioTechniques 28:492-496,及びSilzel, J.W.等(1998) Clin Chem 44:2036-2043参照)、ミクロな液体の直接的塗布(Rowe, C.A.等(1999) Anal Chem 71:433-439及びBernard, A.等(2001), Anal Chem 73:8-12)及びエレクトロスプレー付着(Morozov, V.N.等(1999) Anal Chem 71:1415-1420及びMoerman R.等(2001) Anal Chem 73:2183-2189)が含まれるが、これらに限られない。一般に、分配装置には、試料分配量を制御するための較正手段が含まれており、試料を支持体表面に対して動かして位置決めするための構造も含まれうる。アレイにおける捕捉剤ごとに分配すべき液体の容積は、そのアレイの意図する用途及び利用可能な装備によって変化する。好ましくは、一度の分配により形成される容積は、100nL未満であり、一層好ましくは、10nL未満であり、最も好ましくは、約1nLである。その結果生成されたスポットのサイズは、そのように変化し、好適具体例において、これらのスポットは、20,000μm未満の直径であり、一層好ましくは、2,000μm未満の直径であり、最も好ましくは、約150〜200μmの直径である(約1600スポット/平方センチメートルが得られる)。ブロッキング剤の溶液をこのマイクロアレイに加えて、捕捉剤に結合しなかった反応性の基による非特異的結合を防止することができる。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、又は無脂肪乳の溶液をブロッキング剤として用いて、後続のアッセイにおけるバックグラウンド結合を減少させることができる。
【0124】
好適具体例において、高い精度の、密着プリンティングロボットを利用して、小さい容積の溶解した捕捉剤をミクロ滴定プレートのウェルからピックアップして、約1nLの溶液を基材例えば化学的に誘導体化された顕微鏡用のスライドガラスの表面上の規定された位置に繰り返し送達する。かかるロボットの例には、Affymetrix(カリフォルニア、Santa Clara在)から市販されているGMS417Arrayer、及びBrown研のウェブサイト(http://cmgm.stanford.edu/pbrown)からダウンロードできる指示に従って構築されるスプリットピンアレイヤーが含まれる。これは、スライドガラス上の化合物の顕微鏡的スポットの形成を生じる。しかしながら、当業者は、本発明が、1nLの容積の溶液の送達に限定されず、特定のロボット装置の利用に限定されず、又は化学的に誘導体化されたスライドガラスの利用に限定されないこと、及びピコリットル以下の容積を送達することのできる別の送達手段を利用することができることを認めよう。それ故、高精度のアレイロボットに加えて、インクジェットプリンター、圧電プリンター及び小容積ピペッティングロボットを含む(これらに限られない)これらの化合物を送達するための他の手段を利用することができる。
【0125】
一具体例において、本発明の捕捉剤を含む組成物(例えば、マイクロアレイ又はビーズ)は、他の成分例えば特定のペプチド、代謝産物、薬物又は薬物候補、RNA、DNA、脂質などを認識して結合する分子をも含むことができる。従って、URSに幾らかしか結合しない捕捉剤のアレイは、この発明の具体例を構成することができる。
【0126】
二次元マイクロアレイに代わるものとして、蛍光活性化セルソーティング(FACS)と組み合せたビーズベースのアッセイが、複合免疫アッセイを実施するために開発されている。蛍光活性化セルソーティングは、20年より長く、診断において日常的に用いられてきた。mAbを利用して、細胞表面マーカーが、正常及び新生物細胞の集団において同定され、これらは、様々な形態の白血病の分類を可能にし、又は病気のモニターを可能にする(最近、Herzenberg等 Immunol Today 21(2000), p.282-390により総説された)。
【0127】
ビーズベースのアッセイシステムは、マイクロアレイアッセイに慣用的に用いられている二次元基材の代りに、ミクロスフェアを捕捉分子のための固体支持体として利用する。個々の免疫アッセイにおいて、捕捉剤を、別の種類のミクロスフェアに結合させる。この反応は、これらのミクロスフェアの表面で起きる。個々のミクロスフェアは、赤及び橙色の蛍光色素の一様な及び別個の混合物により色分けされる。適当な捕捉分子への結合の後に、異なる色分けのビーズのセットをプールすることができ、免疫アッセイを単一反応バイアル中で行なう。URS標的とそれらの各捕捉剤との異なる種類のビーズ上での生成物形成を、蛍光ベースのレポーターシステムによって検出することができる。シグナル強度は、フローサイトメーターで測定され、これは、捕捉された標的の量を個々のビーズ上で定量することができる。各ビーズの種類及び各固定化標的は、第二蛍光シグナルにより測定される色分けを利用して同定される。これは、単一試料に由来する多数の標的の複合的定量を可能にする。感度、信頼性及び精度は、標準的ミクロ滴定ELISA手順で認められるものと類似している。色分けされたミクロスフェアを利用して、最大100の異なる種類のアッセイを同時に行なうことができる(LabMAPシステム、ラボラトリー・マルチプル・アナライト・プロファイリング、米国、テキサス、Austin在、Luminex)。例えば、ミクロスフェアベースのシステムは、生物学的試料に由来するサイトカイン又は自己抗体を同時に定量するために用いられてきた(Carson及びVignali, J Immunol Methods 227 (1999), p41-52;Chen等、Clin Chem 45(1999), p1693-1694;Fulton等、Clin Chem 43(1997), p.1749-1756)。Bellisario等(Early Hum Dev 64(2001), p21-25)は、この技術を利用して、新生児の乾燥させた血液スポット試料に由来する3つのHIV−1抗原に対する抗体を測定した。
【0128】
ビーズベースのシステムは、幾つかの利点を有している。捕捉剤分子は、別々のミクロスフェアに結合されているので、個々のカップリング事象を、完全に分析することができる。従って、複合免疫アッセイのために、品質制御されたビーズだけをプールすることができる。その上、もし更なるパラメーターがこのアッセイに含まれなければならないならば、新しい型の積載ビーズを加えなければならないだけである。洗浄ステップは、このアッセイを行なう際には必要とされない。この試料は、異なる種類のビーズ及び蛍光標識された検出用抗体と共にインキュベートされる。サンドイッチ免疫複合体の形成後に、ミクロスフェアの表面に限定的に結合されたフルオロフォアだけが、フローサイトメーターで計数される。
【0129】
D.関連する非アレイ形式
捕捉剤のアレイに代わるものは、いわゆる「分子インプリンティング」技術により作成されたものであり、該技術においては、ペプチド(例えば、選択されたURS)をテンプレートとして利用して、構造的に相補性の配列特異的な空隙を重合可能なマトリクス中に生成し;その後、これらの空隙は、適当な一次アミノ酸配列を有する(消化された)タンパク質を特異的に捕捉することができる[ProteinPrint(商標)、Aspira Biosystems]。説明のために、選択したURSを合成することができ、重合可能なモノマーの万能マトリクスが該ペプチドの周囲で自動組み立てされ、空間内に架橋される。次いで、このURS又はテンプレートを除去すると、形状及び機能において相補的な空隙が残る。これらの空隙は、フィルム、アレイの分離された部位又はビーズの表面上に形成することができる。断片化したタンパク質の試料をこの捕捉剤にさらすと、このポリマーは、選択的に当該URSを含む標的タンパク質を保持して他のすべてを排除する。洗浄後に、結合したURS含有ペプチドが残る。一般的な染色及びタグ手順、又は下記の任意の非標識技術を利用して、発現レベル及び/又は翻訳後修飾を検出することができる。或は、捕捉されたペプチドを、更なる分析例えば質量分析のために溶出させることができる。WO01/61354A1、WO01/61355A1及び関連する出願/特許を参照されたい。
【0130】
診断及び発現プロファイリングにおいて利用することの出来る他の方法は、ProteinChip(登録商標)アレイ[Ciphergen]であり、該方法において、固相クロマトグラフィー表面は、血漿又は腫瘍抽出物などの混合物に由来する類似の帯電特性又は疎水性を有するタンパク質と結合し、SELDI−TOF質量スペクトル分析が、保持されたタンパク質の検出に利用される。ProteinChip(登録商標)は、新規な病気のマーカーを同定する能力を有すると信じられている。しかしながら、この技術は、一般に、特異的なリガンド相互作用の検出のための個々のタンパク質の固定化を含まないので、ここで論じているタンパク質アレイとは異なるものである。
【0131】
E.単一アッセイ形式
URS特異的な親和性捕捉剤は又、単一アッセイ形式においても利用することができる。例えば、かかる薬剤は、循環剤例えばPSAの検出のための一層良好なアッセイを、増大された感度、ダイナミックレンジ及び/又は回収率を与えることにより開発するために利用することができる。例えば、単一アッセイは、伝統的なELISA及び他の免疫アッセイを超える機能性能特性例えば:参照標準例えば比較対照試料についての0.95以上の回帰係数(R2)、一層好ましくは0.97、0.99又は0.995より大きいR2;少なくとも50パーセントの、一層好ましくは少なくとも60、75、80又は90パーセントの回収率;少なくとも90パーセントの、一層好ましくは少なくとも95、98又は99パーセントの試料中のタンパク質の存在についての陽性予測値;99パーセント以上の、一層好ましくは少なくとも99.5パーセントの又は99.8パーセントの試料中のタンパク質の存在についての診断感度(DSN);99パーセント以上の、一層好ましくは少なくとも99.5又は99.8パーセントの試料中のタンパク質の存在についての診断特異性(DSP)の少なくとも一つを有することができる。
【0132】
III.結合事象の検出方法
この発明の捕捉剤並びにこれらの捕捉剤を含む組成物例えばマイクロアレイ又はビーズは、健康産業において例えば治療、診断、イン・ビボイメージング又は薬物の発見において広範囲の応用を有する。本発明の捕捉剤は又、産業及び環境における応用例えば環境診断薬、産業診断薬、食品安全性、毒物学、反応触媒、又は高スループットスクリーニングにおける応用;並びに農業及び基礎研究例えばタンパク質配列決定における応用をも有する。
【0133】
本発明の捕捉剤は、強力な分析用ツールであり、ユーザーが、特異的タンパク質、又は複雑な試料中に存在する関心ある一群のタンパク質を検出することを可能にする。加えて、この発明は、試料の効率的で迅速な分析;試料の保存及び直接的な試料の比較を可能にする。この発明は、タンパク質試料の「多パラメーター」分析を可能にする。ここで用いる場合、タンパク質試料の「多パラメーター」分析は、複数のパラメーターに基づくタンパク質試料の分析を包含することを意図している。例えば、タンパク質試料を、複数のURSと接触させることができ、各URSは、試料中の異なるタンパク質を検出することができる。試料中で検出されたタンパク質の組合せ(及び、好ましくは、相対的濃度)に基づいて、当業者は、試料の正体を決定し、病気若しくは病気の素因を診断し、又は病気の段階を診断することができよう。
【0134】
本発明の捕捉剤は、タンパク質又はポリペプチドの検出に適した任意の方法例えば免疫沈降、免疫細胞化学、ウエスタンブロット又は核磁気共鳴分光分析(NMR)において利用することができる。
【0135】
捕捉剤と相互作用するタンパク質の存在を検出するために、当分野で公知の様々な方法を利用することができる。検出すべきタンパク質を検出可能な標識で標識することができ、結合した標識の量を直接測定することができる。用語「標識」は、ここでは、広い意味に用いて、直接に又はシグナル生成系の少なくとも一つの更なるメンバーとの相互作用によって検出可能なシグナルを与えることのできる薬剤を指す。直接検出できる標識及び本発明において用途を見出すことができる標識には、例えば、蛍光標識例えばフルオレセイン、ローダミン、BODIPY、シアニン染料(例えば、Amersham Pharmacia製)、Alexa染料(例えば、Molecular Probe, Inc.製)、蛍光染料、ホスホルアミダイト、ビーズ、化学発光化合物、コロイド粒子などが含まれる。適当な蛍光染料は、当分野で公知であり、フルオレセインイソチオシアネート(FITC);ローダミン及びローダミン誘導体;テキサスレッド;フィコエリトリン;アロフィコシアニン;6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM);2’,7’−ジメトキシ−41,51−ジクロロカルボキシフルオレセイン(JOE);6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX);6−カルボキシ−21,41,71,4,7−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM);N,N,N1,N’−テトラメチルカルボキシローダミン(TAMRA);スルホン化ローダミン;Cy3;Cy5などが含まれる。放射性同位元素例えば35S、32P、3H、125Iなども又、標識に利用することができる。加えて、標識には、近赤外染料(Wang等、Anal.Chem, 72:5907-5917(2000)、アップコンバーティング蛍光体(Hampl等、Anal.Biochem.,288:176-187(2001)、DNAデンドリマー(Stears等、Physiol.Genomics 3:93-99(2000)、量子ドット(Bruchez等、Science 281:2013-2016(1998)、ラテックスビーズ(Okana等、Anal.Biochem.202:120-125(1992)、セレン粒子(Stimpson等、Proc.Natl.Acad.Sci.92:6379-6383(1995)及びユーロピウムナノ粒子(Harma等、Clin.Chem.47:561-568(2001)も含まれうる。この標識は、好ましくは、変わり易いシグナルを与えないで、所定期間にわたって一定した再現性のあるシグナルを与えるものである。
【0136】
非常に有用な標識剤は、水溶性の量子ドット、又はいわゆる「官能化ナノクリスタル」又は「半導体ナノクリスタル」である(米国特許第6,114,038号に記載されたものなど)。一般に、量子ドットを製造することができ、それは、以前に、記載されたように(Bawendi等、1993, J.Am.Chem.Soc.115:8706)、相対的単分散(例えば、調製物において量子ドット間で凡そ10%未満で変化するコアの直径)を生じる。量子ドットの例は、CdSe、CdS及びCdTe(集合的に「CdX」と呼ばれる)よりなる群から選択されるコアを有することが当分野で公知である(例えば、Norris等、1996, Physical Review B.53:16338-16346;Nirmal等、1996, Nature 383:802-804;Empedocles等、1996, Physical Review Letters 77:3873-3876;Murray等、1996, Science 270:1355-1338;Effort等、1996, Physical Review B.54:4843-4856;Sacra等、1996, J.Chem.Phys.103:5236-5245;Murakoshi等、1998, J.Colloid Interface Sci.203:225-228;Optical Materials and Engineering News, 1995, Vol.5, No.12;及びMurray等、1993, J.Am.Chem.Soc.115:8706-8714;(これらの開示を参考として本明細書中に援用する)を参照されたい)。
【0137】
CdX量子ドットは、その上に一様に付着した無機被覆(「シェル」)により不動態化している。コア量子ドットの表面の不動態化は、この無機被覆の性質に依って、化学発光放射のカンタム収率の増大を生じうる。この量子ドットの不動態化に利用されるシェルは、好ましくは、YZよりなる(ここに、Yは、Cd又はZnであり、Zは、S又はSeである)。CdXコア及びYZシェルを有する量子ドットは、当分野で記載されている(例えば、Danek等、1996, Chem.Mater.8:173-179;Dabbousi等、1997, J.Phys.Chem.B 101:9463;Rodriguez-Viejo等、1997, Appl.Phys.Lett.70:2132-2134;Peng等、1997, J.Am.Chem.Soc.119:7019-7029;1996, Phys.Review B.53:16338-16346;(これらの開示を、参考として本明細書中に援用する)参照)。しかしながら、上記の量子ドットは、無機シェルを利用して不動態化しており、有機、非極性(又は弱く極性)の溶媒中でしか可溶性でない。量子ドットを生物学的応用において有用なものとするために、量子ドットは水溶性であることが望ましい。「水溶性」は、ここで用いる場合、水ベースの溶液例えば水又は水ベースの溶液又は緩衝剤溶液(当業者に公知の生物学的又は分子検出システムにおいて利用されるものを含む)において十分に溶解性であるか懸濁可能であることを意味する。
【0138】
米国特許第6,114,038号は、非同位体検出システムで用いるための官能化ナノクリスタルを含有する組成物を与えている。この組成物は、少なくとも一つの更なる化合物を連続的様式で操作可能に結合することにより水溶性で且つ官能化されている量子ドット(一層のキャッピング化合物でキャップされている)を含む。好適具体例において、少なくとも一つの更なる化合物は、ナノクリスタル上に連続層を形成する。一層詳細には、これらの官能化ナノクリスタルは、このキャッピング化合物でキャップされた量子ドットを含み、且つこのキャッピング化合物に操作可能に結合された少なくとも一のジアミノカルボン酸を有する。従って、これらの官能化ナノクリスタルは、このキャッピング化合物を含む第一の層及びジアミノカルボン酸を含む第二の層を有することができ;そして更に、アミノ酸の層、アフィニティーリガンドの層、又はこれらの組合せを含む多層を含む少なくとも一つの連続層を含むことができる。この組成物は、高い量子収量の分離した発光ピークを有する検出可能な発光放射を生じる単一波長の光で励起させることのできる量子ドットのクラスを含む。かかる官能化ナノクリスタルを利用して、本発明の捕捉剤を、それらの、結合事象の検出及び/又は定量における利用のために標識することができる。
【0139】
米国特許第6,326,144号は、量子ドットの特定のサイズを選択することにより所望のエネルギーに同調できる特徴的なスペクトル放射を有する量子ドット(QD)を記載している。例えば、2ナノメートルの量子ドットは、緑色光を放射し、5ナノメートルの量子ドットは、赤色光を放射する。これらの量子ドットの放射スペクトルは、試料のサイズ不均一度に依存する25〜30nmの狭い準位幅、及び対称的なテイリング領域のないガウス型又は殆どガウス型の線形状を有する。同調可能性、狭い準位幅、及びテイリング領域のない対称的放射スペクトルの組合せは、システム内の多様なサイズの量子ドットの高い解像度を与えて、研究者が、QDで標識した様々な生物学的部分を同時に調べることを可能にする。加えて、ナノクリスタル量子ドットの励起波長の範囲は広く、エネルギーにおいて、すべての利用可能な量子ドットの放射波長より高くてよい。従って、これは、単一光源(通常、紫外線又は青色領域のスペクトル)を有するシステム内のすべての量子ドットの同時励起を与える。QDは又、慣用の有機蛍光染料よりも丈夫であり、それらの有機染料よりも光退色に耐性である。QDの丈夫さは又、調べている系内の有機染料の分解産物の汚染の問題をも軽減する。これらのQDは、タンパク質、核酸及び他の天然の生物学的分子の捕捉剤の標識に利用することができる。セレン化カドミウム量子ドットナノクリスタルは、カリフォルニア、Hayward のQuantum Dot Corporationから入手可能である。
【0140】
或は、試験すべき試料を標識せずに、第二ステージの標識試薬を、試料中のタンパク質の存在を検出し又は量を定量するために加える。かかる「サンドイッチベースの」検出方法は、各タンパク質について2つの捕捉剤(一つは、URSを捕捉し、一つは、一度それが捕捉されたならば標識する)を開発しなければならないという不都合を有する。かかる方法は、それらが一つのペプチド上の異なる点における2つの結合反応を利用し、従って、ノイズ比に対する増大したシグナルの故に、タンパク質の存在及び/又は濃度を一層正確に且つ高精度で測定することができるので、ノイズ比に対して本質的に改良されたシグナルによって特徴付けられるという利点を有する。
【0141】
更に別の具体例において、主題の捕捉剤アレイは、「仮想アレイ」であってよい。例えば、抗体その他の捕捉剤をビーズ上に固定化した仮想アレイを生成することができ、その正体は、結合した捕捉剤の故にそれが特異的である特定のURSに関して、2種以上の共有結合した染料の特定の比率によりコード化されるものである。コード化されたURSビーズの混合物を試料に加えて、固定化捕捉剤により認識されるURS実在物の捕捉を生じる。
【0142】
捕捉された種を定量するために、捕捉されたURSに結合する蛍光標識された抗体を利用するサンドイッチアッセイ、又は捕捉剤に対する蛍光標識されたリガンドを利用する競合結合アッセイをこの混合物に加える。一具体例において、標識されたリガンドは、分析物のURSと捕捉剤への結合について競合する標識されたURSである。次いで、これらのビーズを、各ビーズ上の様々な蛍光シグナルの強度を読むフローサイトメーターなどの機器に導入して、該ビーズの正体を、染料の比を測定することにより決定することができる(図3)。この技術は、比較的早くて効率的であり、研究者が、殆どの関心あるURSのセットをモニターするために適合させることができる。
【0143】
他の具体例において、捕捉剤のアレイを、イオン化に適したマトリクスに包埋する(例えば、Fung等 (2001) Curr.Opin.Biotechnol.12:65-69に記載のように)。試料の添加及び未結合分子の除去(洗浄による)後に、保持されたURSタンパク質を質量分光分析により分析する。幾つかの場合には、イオン化の前に、結合種のトリプシンによる更なるタンパク質分解性消化が必要とされうる(特に、エレクトロスプレーが、ペプチドのイオン化の手段ならば)。
【0144】
上記のすべての試薬は、これらの捕捉剤を標識するために利用することができる。好ましくは、標識すべき捕捉剤を、検出すべきタンパク質上に存在する基例えばアミン基、チオール基又はアルデヒド基と反応する活性化染料と結合させる。
【0145】
この標識は又、適当な基質の添加後に検出可能な産生物シグナルを与えることのできる共有結合された酵素であってもよい。本発明で利用するのに適した酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、マレートデヒドロゲナーゼなどが含まれる。
【0146】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)も又、捕捉剤と相互作用するタンパク質の検出に利用することができる。ELISAにおいて、指標分子は、酵素に共有結合されて、分光光度計により、酵素が純粋な基質を相関生成物に変換する初速度を測定することにより定量されうる。ELISAを実施する方法は、当分野で周知であり、例えば、Perlmann, H.及びPerlmann, P.(1994). Enzyme-Linked Immunosorbent Assay. Cell Biology: A Laboratory Handbook. San Diego, カリフォルニア、Academic Press, Inc., 322-328;Crowther, J.R.(1995). Methods in Molecular Biology, Vol.42-ELISA: Theory and Practice. Humana Press, Totowa, ニュージャージー;及びHarlow, E.及びLane, D.(1988). Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 553-612に記載されている(これらの各々の内容を参考として援用する)。サンドイッチ(捕捉)ELISAは又、2つの捕捉剤と相互作用するタンパク質を検出するために利用することができる。これらの2つの捕捉剤は、同じペプチド(例えば、上記のように、関心ある試料の断片化により生成されたペプチド)上に存在する2つのURSと特異的に相互作用することができてよい。或は、これらの2つの捕捉剤は、共に同じペプチド(例えば、上記のように、関心ある試料の断片化により生成されたペプチド)上に存在する一つのURS及び一つのユニークでないアミノ酸配列と特異的に相互作用することができてよい。関心あるタンパク質の定量のためのサンドイッチELISAは、試料中のタンパク質の濃度が低く且つ/又は関心あるタンパク質が高濃度の夾雑タンパク質を含む試料中に存在する場合に、特に価値がある。
【0147】
高スループットのための完全に自動化されたマイクロアレイベースのアプローチであるELISAは、Mendoza等(BioTechniques 27:778-780, 782-786, 788, 1999)により記載された。このシステムは、テフロンマスクにより分離された96ウェルを有する光学的に均一なガラス板よりなった。100より多くの捕捉剤分子が、各ウェル中に固定化された。試料のインキュベーション、洗浄及び蛍光ベースの検出を、自動化液体ピペッターにより行なった。これらのマイクロアレイを、スキャニング電荷結合素子(CCD)検出器を利用して定量的にイメージ形成した。そうして、整列させた抗原の多重検出の、高スループット様式での実行可能性を、成功裏に示すことができた。加えて、Silzel等(Clin Chem 44 p.2036-2043, 1998)は、多数のIgGサブクラスを、マイクロアレイ技術を利用して、同時に検出することができることを示すことができた。Wiese等(Clin Chem 47 p.1451-1457, 2001)は、前立腺特異的な抗原(PSA)、-(1)-抗キモトリプシン結合PSA及びインターロイキン6(マイクロアレイ形式)を測定することができた。Arenkov等(前出)は、マイクロアレイサンドイッチ免疫アッセイ及び直接抗原又は抗体検出実験を、改変ポリアクリルアミドゲルを固定化捕捉剤分子の基質として利用して行なった。
【0148】
当分野で記載されたマイクロアレイアッセイ形式の殆どは、化学発光又は蛍光ベースの検出方法に依存している。感度に関する更なる改良には、蛍光標識及び導波管技術の適用が含まれる。蛍光ベースのアレイの免疫センサーは、Rowe等(Anal Chem 71 (1999), p.433-439;及びBiosens Bioelectron 15 (2000), p.579-589)により開発されて、サンドイッチ免疫アッセイ形式を利用する臨床分析物の同時検出に適用された。ビオチン化した捕捉用抗体を、アビジンコートした導波管上にフローチャンバーモジュールシステムを利用して固定化した。捕捉用分子の別々の領域を、導波管表面に垂直に配置した。関心ある試料をインキュベートして、標的をそれらの捕捉用分子に結合させた。捕捉された標的を、次いで、適当な蛍光標識した検出用分子を利用して可視化した。このアレイ免疫センサーは、標的の、様々な臨床試料における生理的に適当な濃度での検出及び測定に適していることが示された。
【0149】
導波管技術を利用する更なる感度の増大が、二次元導波管技術の開発により達成された(Duveneck等、Sens Actuators B B38 (1997), p.88-95)。薄いフィルム導波管が、高屈折率の物質例えばTa25(該物質を透明基材上に付着させる)から生成される。所望の波長のレーザー光を回折格子手段によって二次元導波管に結合させる。光は二次元導波管内を伝搬して、1平方センチメートルより大きい領域が、均一に明るくなりうる。この面において、伝搬する光は、いわゆるエバネセント場を生成する。これは、この溶液に及んで、表面に結合された蛍光体のみを活性化する。周囲の溶液中の蛍光体は、励起されない。表面近くにおいて、励起場強度は、標準的共焦点励起により達成されるものの100倍でありうる。CCDカメラを利用して、二次元導波管の全領域を横切るシグナルを同時に同定する。従って、二次元導波管における捕捉用分子のマイクロアレイ形式での固定化は、高感度の小型化されて平行化された免疫アッセイの性能を与える。このシステムは、40fMもの低濃度のインターロイキン6を検出するために成功裏に利用され且つ未結合の検出用分子を除去するのに通常必要とされる洗浄ステップなしでアッセイを行なうことができるという利点を有する(Weinberger等、Pharmacogenomics 1 (2000), p.395-416)。
【0150】
感度を増大させるために遂行された別のストラテジーは、シグナル増幅手順に基づいている。例えば、イムノRCA(免疫ローリングサークル増幅)は、検出用分子(例えば、サンドイッチ型アッセイ形式における第二の捕捉剤)に共有結合されたオリゴヌクレオチドプライマーを含む。この結合したオリゴヌクレオチドに相補的な環状DNAをテンプレートとして利用して、DNAポリメラーゼは、該結合したオリゴヌクレオチドを伸張させて、検出用分子に結合したままの数百コピーの環状DNAよりなる長いDNA分子を生成する。数千の蛍光標識されたヌクレオチドの組込みは、強力なシグナルを生成する。Schweitzer等(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97 (2000), p.10113-10119)は、この検出技術を、マイクロアレイベースのアッセイにおける利用について評価した。huIgE及び前立腺特異的抗原についてのサンドイッチ免疫アッセイは、マイクロアレイ形式で行なわれた。これらの抗原は、フェムトモル濃度で検出することができ、個々の抗体−抗原複合体から生じた別々の蛍光シグナルを計数することにより単一の特異的に捕捉された抗原を記録することが可能であった。これらの著者は、ローリングサークルDNA増幅を利用する免疫アッセイが、抗原の超高感度検出のための多用途プラットホームであり、従って、タンパク質マイクロアレイ技術における利用に適していることを示した。
【0151】
放射免疫アッセイ(RIA)も又、捕捉剤と相互作用するタンパク質の検出に利用することができる。RIAにおいては、指標分子を、放射性同位元素で標識して、放射性崩壊事象をシンチレーションカウンターで計数することにより定量することができる。直接的又は競合RIAを実施する方法は、当分野で周知であり、例えば、Cell Biology: A Laboratory Handbook. San Diego, カリフォルニア、Academic Press, Inc.(内容を参考として本明細書中に援用する)に記載されている。
【0152】
他の免疫アッセイは、一般に、細胞試料中のタンパク質のレベルを定量するために利用され、当分野で周知であって、本発明における利用のために適合させることができる。この発明は、特定のアッセイ手順に限定されず、それ故、均一手順及び不均一手順の両方を包含するものである。この発明により行なわれうる典型的な他の免疫アッセイには、蛍光偏光免疫アッセイ(FPIA)、蛍光免疫アッセイ(FIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)、免疫比朧法(NIA)が含まれる。指標部分(又は、標識基)を、患者の抗体に結合させることができ、該部分は、この方法の様々な用途の要求に合うように選択するが、それらは、しばしば、アッセイ装置及び適合性の免疫アッセイ手順の利用可能性により指図される。上記の様々な免疫アッセイの実施において用いるべき一般的技術は、当業者には公知である。一具体例において、生物学的試料におけるタンパク質レベルの測定は、マイクロアレイ分析(タンパク質チップ)により実施されうる。
【0153】
幾つかの他の具体例において、捕捉剤と相互作用するタンパク質の存在の検出は、標識なしで達成することができる。例えば、タンパク質の捕捉剤に結合する能力の測定は、実時間バイオモレキュラーインタラクションアナリシス(BIA)などの技術を利用して達成することができる。Sjolander, S.及びUrbaniczky, C. (1991) Anal.Chem.63:2338-2345及びSzabo等 (1995) Curr.Opin.Struc.Biol.5:699-705。ここで用いる場合、「BIA」は、生体特異的な相互作用を、如何なる反応体をも標識せずに、実時間で研究するための技術である(例えば、BIAcore)。
【0154】
他の具体例において、特定の回折格子表面を有するバイオセンサーを利用して、処理した(消化した)生物学的試料中の非標識URS含有ペプチドとバイオセンサー表面の固定化捕捉剤との間の結合を検出/定量することができる。この技術の詳細は、B. Cunningham, P. Li, B. Lin, J. Pepper, 「Colorimetric resonant reflection as a direct biochemical assay technique」Sensors and Actuators B, Vol 81, p.316-328, 2002年1月5日、及びPCT No. WO02/061429A2及びUS2003/0032039に一層詳しく記載されている。簡単にいえば、導波モードの共鳴現象を利用して、平行化された白色光で照らされた場合に単一波長(色)だけを反射するようにデザインされた光学的構造を生成する。分子をこのバイオセンサーの表面に結合させたときに、反射した波長(色)は、格子に結合された光の経路の変化のためにシフトする。レセプター分子を格子表面に結合することにより、相補的結合分子を、如何なる種類の蛍光プローブ又は粒子標識の利用もなしで検出/定量することができる。このスペクトルのシフトを分析して、与えられた発現データを測定すること、及び特定の指示の存否を示すことができる。
【0155】
このバイオセンサーは、典型的には、高い屈折率を有する物質よりなる二次元の格子、この二次元格子を支持する基材層、及びこの二次元格子の表面(基材層の反対側)に固定された少なくとも一つの検出用プローブを含む。バイオセンサーが照らされると、共鳴格子効果が、反射放射スペクトルに生じる。この二次元格子の深さ及び周期は、共鳴格子効果の波長より小さい。
【0156】
光学的波長の狭いバンドは、このバイオセンサーから、それが広いバンドの光学的波長で照らされたときに反射しうる。その基材は、ガラス、プラスチック又はエポキシを含むことができる。この二次元格子は、硫化亜鉛、二酸化チタン、酸化タンタル、及び窒化珪素よりなる群から選択する材料を含むことができる。
【0157】
この基材及び二次元格子は、適宜、単一ユニットを含むことができる。この二次元格子を構成する単一ユニットの表面は、高い屈折率を有する材料で被覆され、少なくとも一つの検出用プローブが、該高い屈折率を有する材料の表面に固定化される(単一ユニットの反対側)。この単一ユニットは、ガラス、プラスチック及びエポキシよりなる群から選択する材料よりなってよい。
【0158】
このバイオセンサーは、適宜、基材層の反対側の二次元格子の表面に被覆層を含むことができる。少なくとも一つの検出用プローブが、二次元格子の反対側の被覆層の表面に固定化される。この被覆層は、高い屈折率の二次元格子材料より一層低い屈折率を有する材料を含むことができる。例えば、被覆層は、ガラス、エポキシ及びプラスチックを含むことができる。
【0159】
二次元格子は、線、四角形、円、楕円、三角形、台形、正弦波、卵形、長方形及び六角形よりなる群から選択する形状の反復パターンよりなってよい。形状の反復パターンは、直線的グリッド即ち平行線のグリッド、長方形グリッド、又は六角形のグリッドに配置することができる。二次元格子は、約0.01ミクロン〜約1ミクロンの周期及び約0.01ミクロン〜約1ミクロンの深さを有することができる。
【0160】
説明のために、マイクロアレイスライド、ミクロ滴定プレート又は他のデバイスの表面に埋められた熱量測定共鳴光学的バイオセンサーの表面で起きる生化学的相互作用は、センサー表面で、蛍光タグ又は熱量測定標識の利用なしで、直接検出して測定することができる。このセンサー表面は、平行化白色光で照らされた場合に、狭いバンドの波長(色)だけを反射するようにデザインされた光学的構造を含む。この狭い波長は、波長の「ピーク」として記載される。「ピーク波長値」(PWV)は、生物学的物質がセンサー表面付着し又は該表面から除去されたとき例えば結合が起きたようなときに変化する。かかる結合に誘導されたPWVの変化は、US2003/0032039に開示された測定用機器を利用して測定することができる。
【0161】
一具体例において、この機器は、平行化白色光をセンサー構造に向けることによりバイオセンサー表面を照らす。照らされる光は、平行化光のスポットの形態をとってよい。或は、この光は、扇型の光線の形態で生成される。この機器は、照らされたバイオセンサー表面からの反射光を集める。この機器は、このバイオセンサー表面の多くの位置からの反射光を同時に集めることができる。この機器は、光を、バイオセンサー表面を横切る不連続な幾つかの位置に向ける複数の照明プローブを含むことができる。この機器は、バイオセンサーが埋め込まれたミクロ滴定プレート内の離れた位置のピーク波長値(PWV)を、分光計を利用して測定する。或は、イメージング分光計を利用する。この分光計は、センサー表面のPWVイメージマップを生成することができる。一具体例において、この測定機器は、空間的に、PWVイメージを200ミクロン未満の解像度で分析する。
【0162】
一具体例において、サブ波長構造化面(SWS)を利用して、鋭い光学的共鳴反射を、特定の波長で造ることができ、これは、生物学的物質例えば特異的結合性物質又は結合パートナー又はこれら両者の相互作用を高感度で追跡するために利用することができる。熱量共鳴回折格子面は、特異的結合性物質(例えば、本発明の固定化捕捉剤)のための表面結合プラットホームとして作用する。SWSは、薄いフィルムコーティングの効果を模倣することのできる非在来型の回折光学部品である。(Peng及びMorris,「Resonant scattering from two-dimensional gratings」、J.Opt.Soc.Am.A, Vol.13,No.5,p.993, 5月;Magnusson及びWang, 「New principle for optical filters」、Appl.Phys.Lett.,61,No.9,p.1022,1992年8月;Peng及びMorris,「Experimental demonstration of resonant anomalies in diffraction from two-dimensional gratings」、Optics Letters, Vol.21,No.8,p.549, 1996年4月)。SWS構造は、表面起伏、二次元格子を含み、該格子においては、入射光の波長と比べて格子周期が小さく、それで反射及び伝達されるゼロ次以外の回折次数は伝搬できない。SWS表面狭帯域フィルターは、基材層と格子の溝を満たす被覆層との間に挟まれた二次元格子を含むことができる。適宜、被覆層は、利用されない。格子領域の有効屈折率が基材又は被覆層より大きい場合には、導波管が造られる。フィルターをこのようにデザインする場合には、入射光は、導波管領域に進む。二次元格子構造は、狭帯域の波長の光を選択的に導波管に結合する。この光は、短距離(10〜100マイクロメートルのオーダー)だけ伝搬し、散乱を受け、そして前方及び後方へ伝搬するゼロ次の光と結合する。鋭敏なカップリング条件は、共鳴格子効果を反射した放射スペクトルに生成することができ、狭帯域の反射又は伝達波長(色)を生じる。この二次元格子の深さ及び周期は、共鳴格子効果の波長より小さい。
【0163】
この構造の反射又は伝達色は、分子例えば捕捉剤若しくはそれらのURS含有結合パートナー又はこれら両方を被覆層の上面又は二次元格子表面に添加することにより調節することができる。これらの添加された分子は、この構造を通る入射放射の光学距離を増し、そうして、最大の反射率又は透過率が生じる波長(色)を改変する。従って、一具体例において、バイオセンサーは、白色光で照らされたときに単一波長だけを反射するようにデザインされる。特異的な結合物質がこのバイオセンサーの表面に結合した場合には、反射した波長(色)は、格子に結合された光の光路の変化のためにシフトする。特異的結合物質のバイオセンサー表面への結合により、相補的結合パートナー分子を、如何なる種類の蛍光プローブ又は粒子標識も利用することなく検出することができる。この検出技術は、例えば、約0.1nmの厚みのタンパク質結合の変化を分析することができ、且つバイオセンサーの液体に浸した又は乾燥した表面により実施することができる。このPWV変化は、例えば通常の入射角で光ファイバープローブによる、例えばバイオセンサーの小さいスポットを照らす光源よりなる検出システムにより検出することができる。分光計は、反射光を、例えば、やはり通常の入射角の第二の光ファイバープローブによって集める。励起/検出システムとバイオセンサー表面との間の物理的接触が生じないので、空間結合プリズムは必要ない。それ故、このバイオセンサーは、一般に用いられるアッセイプラットホーム(例えば、ミクロ滴定プレート及びマイクロアレイスライドを含む)に適合させることができる。分光計の読みは、数ミリ秒で行なうことができ、従って、バイオセンサーの表面で並行して起きる多数の分子の相互作用を効率的に測定すること及び反応速度論をリアルタイムでモニターすることができる。
【0164】
上記のバイオセンサーの様々な具体例、変形物は、US2003/0032039(参考として、そっくりそのまま本明細書中に援用する)に見出すことができる。
【0165】
少なくとも一つの特異的捕捉剤を、二次元格子又は被覆層(存在する場合)上に固定化することができる。固定化は、上記の方法の何れかによって起こりうる。適当な捕捉剤は、例えば、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体(scFv)、F(ab)断片、F(ab')2断片、Fv断片、小型有機分子であってよく、細胞、ウイルス又は細菌であってもよい。生物学的試料を、例えば、血液、血漿、血清、胃腸の分泌液、組織若しくは腫瘍のホモジェネート、滑液、大便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹腔液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙又は前立腺液から得ること及び/又は導くことができる。好ましくは、少なくとも一つの特異的捕捉剤を、バイオセンサー上の別個の位置のマイクロアレイに配置する。捕捉剤のマイクロアレイは、少なくとも一種の特異的捕捉剤をバイオセンサー表面に含み、それで、バイオセンサー表面は、各々異なる捕捉剤又は異なる量の特異的捕捉剤を有する複数の別個の位置を含む。例えば、一つのアレイは、1、10、100、1,000、10,000、又は100,000の別個の位置を含むことができる。多数の別個の位置を有するバイオセンサー表面は、少なくとも一種の特異的捕捉剤が典型的にはx−y座標内に規則的なグリッドパターンで置かれているので、マイクロアレイと呼ばれる。しかしながら、マイクロアレイは、規則的な又は不規則なパターンで置かれた少なくとも一つの特異的捕捉剤を含むことができる。
【0166】
マイクロアレイスポットは、直径が約50ミクロンから約500ミクロンに及びうる。或は、マイクロアレイスポットは、直径が約150ミクロンから約200ミクロンに及びうる。少なくとも一種の特異的捕捉剤を、それらの特異的URS含有結合パートナーに結合させることができる。
【0167】
一つのバイオセンサーの具体例において、バイオセンサー上のマイクロアレイは、少なくとも一種の特異的捕捉剤の微小液滴を、例えば二次元格子又は被覆層表面上のx−y座標の位置に置くことにより造られる。バイオセンサーを、少なくとも一つのURS結合パートナーを含む試験試料にさらした場合、それらの結合パートナーは、優先的に、それらのURS結合パートナーに対する高い親和性を有する捕捉剤を含むマイクロアレイ上の別個の位置に結合する。これらの別個の位置の幾つかは、結合パートナーをそれらの表面に集めるが、他の位置は集めない。従って、特異的捕捉剤は、そのURS結合パートナーに特異的に結合するが、バイオセンサー表面に加えられた他のURS結合パートナーには実質的に結合しない。別の具体例においては、核酸マイクロアレイ(例えば、アプタマーアレイ)が与えられ、該マイクロアレイにおいては、アレイ内の各別個の位置が異なるアプタマー捕捉剤を含む。マイクロアレイスポッターを利用する特異的捕捉剤のバイオセンサーへの塗布により、1平方インチ当たり10,000の特異的結合物質の密度を得ることができる。光ファイバープローブの照明光線を単一マイクロアレイ位置に集中して送ることにより、バイオセンサーは、標識なしのマイクロアレイ読み出しシステムとして利用することができる。
【0168】
約0.1ng/ml未満の濃度のURS結合パートナーの検出のためには、バイオセンサーに結合した結合パートナーを増幅して、バイオセンサー表面の追加層に変換することができる。バイオセンサー上に付着した増大した量を、増大した光学距離の結果として検出することができる。一層大きい量のバイオセンサー表面への組込みにより、その表面上の結合パートナーの光学密度も増大し、従って、この追加量のない場合よりも一層大きい共鳴波長シフトを与える。この量の追加は、例えば、酵素的に、「サンドイッチ」アッセイにより又は該量(例えば、URSペプチドに特異的な第二の捕捉剤)を、適当に結合されたビーズ又は様々な大きさ及び組成のポリマーの形態で、バイオセンサー表面に直接塗布することによって達成することができる。これらの捕捉剤は、URS特異的であるので、異なる種類及び特異性の多数の捕捉剤を、一緒に、捕捉されたURSに加えることができる。この原理は、他の型の光学的バイオセンサーに利用されて、該量の増幅なしで達成される感度限界を超える1500倍の感度増大が示されている。例えば、Jenison等「Interference-based detection of nucleic acid targets on optically coated silicon」、Nature Biotechnology, 19:62-65, 2001を参照されたい。
【0169】
別の具体例において、バイオセンサーは、表面起伏容積回折構造(SRVDバイオセンサー)を包含する。SRVDバイオセンサーは、広帯域の光学波長で照らされたときに、主として特定の狭帯域の光学波長で反射する表面を有する。特異的捕捉剤及び/又はURS結合パターンをSRVDバイオセンサー上に固定化した場合、反射された光の波長は、シフトする。一次元的表面例えば薄膜干渉フィルター及びブラッグ反射体は、反射し又は透過した波長の狭帯域を広帯域励起源から選択することができる。しかしながら、追加の物質例えば特異的捕捉剤及び/又はURS結合パートナーのそれらの上面への付着は、共鳴波長ではなく、共鳴準位幅の変化だけを生じる。対照的に、SRVDバイオセンサーは、追加の物質例えば特異的捕捉剤及び/又は表面への結合パートナーにより反射波長を変える能力を有する。
【0170】
SRVDバイオセンサーは、第一及び第二の表面を有するシート材料を含む。このシート材料の第一の表面は、起伏容積回折構造を規定する。シート材料は、例えば、プラスチック、ガラス、半導体ウェハー、又は金属フィルムを含むことができる。起伏容積回折構造は、例えば、上記のような二次元格子、又は三次元の表面起伏容積回折格子であってよい。起伏容積回折構造の深さ及び周期は、バイオセンサーから反射される光の共鳴波長より小さい。三次元の表面起伏容積回折格子は、例えば、三次元の位相量子化した段丘面起伏パターンであってよく、その溝のパターンは、階段状ピラミッドに似ている。かかる格子を広帯域放射の光線で照らしたならば、光は、等しく間隔をあけた段丘から、周囲の媒質の屈折率と段間隔の積の2倍により与えられる波長で、可干渉的に反射される。所定波長の光は、半波長離れた段から、段数に反比例する帯域幅で、干渉的に屈折又は反射される。この反射又は屈折された色は、新しい波長が選択されるような誘電体層の付着によって、該コーティングの屈折率に依存して、制御することができる。
【0171】
階段状構造は、先ず、薄いフォトレジストフィルムを3つのレーザー光線に可干渉的にさらすことにより、前に記載されたように、フォトレジストで製造することができる。例えば、Cowen,「The recording and large scale replication of crossed holographic grating arrays using multiple beam interferometry」(International Conference on the Application, Theory, and Fabrication of Periodic Structures, Diffraction Gratings), 及び Moire Phenomena II, Lerner等、Proc.Soc.Photo-Opt.Instrum.Eng., 503, 120-129, 1984;Cowen,「Holographic honeycomb microlens」Opt.Eng.24,796-802(1985);Cowen及びSlafer,「The recording and replication of holographic micropatterns for the ordering of photographic emulsion grains in film systems」J Imaging Sci.31,100-107, 1987を参照されたい。フォトレジストに特徴的な非線形エッチングを利用して露出されたフィルムを現像して、三次元的起伏パターンを造る。このフォトレジスト構造を、次いで、標準的なエンボス手順を利用して複製する。例えば、薄い銀フィルムをフォトレジスト構造上に付着させて、導電層を形成することができ、該層上に薄いニッケルのフィルムを電気めっきすることができる。次いで、このニッケル「マスター」プレートを利用して、直接、ビニールなどのプラスチックフィルム(熱又は溶剤により軟化させてある)に浮彫り細工を施す。階段状ピラミッドに似た三次元相量子化段丘面浮き彫りパターンのデザイン及び加工を記述する理論が記載されている:「Aztec surface-relief volume diffractive structure」J.Opt.Soc.Am.A,7:1529(1990)。三次元相量子化段丘面浮き彫りパターンの例は、階段状ピラミッドに似たパターンであってよい。各逆ピラミッドは、直径約1ミクロンである。好ましくは、各逆ピラミッドは、直径約0.5〜5ミクロンであってよい(例えば、約1ミクロンを含む)。これらのピラミッド構造は、直径150〜200ミクロンの典型的なマイクロアレイスポットが数百の階段状ピラミッド構造を組み込むことができるように、最密であってよい。これらの浮き彫り容積回折構造は、約0.1〜1ミクロンの周期及び約0.1〜1ミクロンの深さを有する。
【0172】
少なくとも一種の上記の特異的な結合物質を、SRVDバイオセンサーの反射材上に固定化する。少なくとも一種の特異的な結合物質を、上記のように、反射材上に、マイクロアレイの別個の位置に配置することができる。
【0173】
SRVDバイオセンサーは、広帯域の光学波長で照らされた場合、主として第一の単一の光学波長で光を反射し、少なくとも一種の結合物質を反射面上に固定化した場合には、第二の単一の光学波長で光を反射する。この第二の光学波長での反射は、光学的干渉から生じる。SRVDバイオセンサーは又、少なくとも一種の特異的な捕捉剤をそれらのそれぞれのURS結合パートナーに結合させた場合には、光学的干渉のために、第三の単一の光学波長でも光を反射する。反射された色の読出しは、顕微鏡の対物レンズを個々のマイクロアレイスポットに焦点を合わせて、反射されたスペクトルを分光器若しくはイメージング分光計の補助により読むことによって逐次的に行なうことができ、又は、例えば、マイクロアレイの反射したイメージを高解像度のカラーCCDカメラを組み込んだイメージング分光計にかけることによって並行して行なうことができる。
【0174】
SRVDバイオセンサーは、例えば、金属マスタープレートを製造して、浮き彫り容積回折構造を例えばビニールのようなプラスチック材料に刻印することによって製造することができる。刻印した後に、その表面を、例えば金、銀又はアルミニウムなどの薄い金属フィルムのブランケット付着により反射するようにする。写真平版技術、エッチング及びウェハー結合手順に依存するMEMSベースのバイオセンサーと比較して、SRVDバイオセンサーの製造は、非常に安価である。
【0175】
SWS又はSRVDバイオセンサーの具体例は、内面を含むことができる。一つの好適具体例において、かかる内面は、液体を含有する容器の底面である。液体含有容器は、例えば、ミクロ滴定プレートのウェル、試験管、ペトリ皿、又はミクロな液体のチャンネルであってよい。一具体例において、SWS又はSRVDバイオセンサーは、ミクロ滴定プレートに組み込まれる。例えば、SWSバイオセンサー又はSRVDバイオセンサーは、ミクロ滴定プレートの底面に、これらの反応容器の壁を共鳴反射面上に、各反応「スポット」が別個の試験試料にさらされうるように組み立てることによって組み込むことができる。それ故、各個別のミクロ滴定プレートのウェルは、別々の反応容器として作用しうる。それ故、別々の化学反応が、隣接するウェル内で混合反応液なしで起き、化学的に別個の試験溶液を個別のウェルに適用することができる。
【0176】
この技術は、多くの生体分子相互作用が並行的に測定される応用において、特に、分子標識が研究中の分子の機能を変化させ又は阻害する場合に有用である。タンパク質標的を用いる医薬化合物の高スループットスクリーニング、及びプロテオミクスのためのタンパク質−タンパク質相互作用のマイクロアレイスクリーニングは、この発明の組成物及び方法により与えられる感度及びスループットを必要とする応用の例である。
【0177】
表面プラズモン共鳴、共鳴鏡及び導波管バイオセンサーと異なり、記載した組成物及び方法は、数千の個別の結合反応がバイオセンサー表面で同時に起きることを可能にする。この技術は、多数の生体分子相互作用が並行的に(例えば、アレイ中で)測定される応用において、特に、分子標識が研究中の分子の機能を変化させ又は阻害する場合に有用である。これらのバイオセンサーは、特に、タンパク質標的を用いる医薬化合物ライブラリーの高スループットのスクリーニング、及びプロテオミクスのためのタンパク質−タンパク質相互作用のマイクロアレイスクリーニングに適している。この発明のバイオセンサーは、例えば、プラスチックエンボス手順を利用して、大きい領域で製造することができ、従って、一般的な使い捨ての研究室用のアッセイプラットホーム例えばミクロ滴定プレート及びマイクロアレイスライドに安価に組み込むことができる。
【0178】
他の類似のバイオセンサーも又、本発明において利用することができる。多くのバイオセンサーが、オリゴヌクレオチドを含む様々な生体分子複合体、抗体−抗原相互作用、ホルモン−レセプター相互作用、及び酵素−基質相互作用を検出するために開発されている。一般に、これらのバイオセンサーは、高度に特異的な認識用エレメントと分子的認識を定量可能なシグナルに変換するトランスデューサーの2つの構成要素からなる。シグナル変換は、蛍光、干渉法(Jenison等「Interference-based detection of nucleic acid targets on optically coated silicon」、Nature Biotechnology, 19,p.62-65;Lin等「A porous silicon-based optical interferometric biosensor」Science, 278,p.840-843, 1997)及び重量法(A. Cunningham, Bioanalytical Sensors, John Wiley & Sons (1998))を含む多くの方法により達成されてきた。光学ベースの変換方法の内で、蛍光化合物による分析物の標識を必要としない直接的方法が、相対的なアッセイの容易性及び小型分子と容易に標識されないタンパク質との相互作用を研究する能力のために興味深い。
【0179】
これらの直接的な光学的方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)(Jordan及びCorn,「Surface Plasmon Resonance Imaging Measurements of Electrostatic Biopolymer Adsorption onto Chemically Modified Gold Surfaces」、Anal.Chem.,69:1449-1456(1997);プラズモン共鳴粒子(PRP)(Schultz等、Proc.Natl.Acad.Sci., 97:996-1001(2000);格子カップラー(Morhard等「Immobilization of antibodies in micropattems for cell detection by optical diffraction」、Sensors and Actuators B,70,p.232-242,2000);楕円偏光法(Jin等「A biosensor concept based on imaging ellipsometry for visualization of biomolecular interactions」、Analytical Biochemistry, 232,p.62-72,1995)、エバネセント波装置(Huber等「Direct optical immunosensing (sensitivity and selectivity)」、Sensors and Actuators B,6,p.122.126,1992)、共鳴光散乱(Bao等、Anal.Chem.,74:1792-1797(2002)、及び反射率(Brecht及びGauglitz「Optical probes and transducers」、Biosensors and Bioelectronics, 10,p.923-936,1995)を包含する。表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象における変化は、生物学的分子の間のリアルタイムの反応の指標として利用できる。これらの検出方法の理論的に予想される検出限界は、測定されており、診断的に適当な濃度範囲まで実行可能であることが実験的に確認されている。
【0180】
表面プラズモン共鳴(SPR)は、成功裏に、様々な生化学的分析物の簡単で迅速且つ非標識のアッセイのための免疫センサー形式に組み込まれた。タンパク質、複雑な結合体、毒素、アレルゲン、薬物及び農薬を、検出エレメントとして高い感度及び選択性を有する自然抗体又は合成レセプターを利用して直接測定することができる。免疫センサーは、抗原−抗体反応をリアルタイムでモニターすることができる。広範囲の分子を、10-9〜10-13モル/Lの範囲の下限で検出することができる。幾つかの上首尾に商業的に開発されたSPR免疫センサーが利用可能であり、それらのウェブページには、技術情報が豊富である。Wayne等(Methods 22:77-91,2000)は、多くの最近のSPRベースの免疫アッセイにおける開発、金表面の官能化、分子認識の新しいレセプター及び感度増強のための進歩した技術を総説して強調している。
【0181】
光学現象表面プラズモン共鳴(SPR)の利用には、1902年のWoodによるその初期の発見(Phil.Mag.4(1902),p.396-402)以来、多大な発展が見られた。SPRは、簡単な、直接的検出技術であり、それを利用して、薄い金属フィルム表面の非常に近くで起きる屈折率(η)の変化をプローブ検出することができる(Otto Z. Phys.216(1968),p.398)。この検出機構は、全反射部位に生成されたエバネセント場の特性を利用している。この場は、金属フィルム内に透過し、振幅がガラス金属界面から指数関数的に減少する。表面プラズモン(金属フィルムの上面に沿って振動し伝搬する)は、平面偏光エネルギーの幾らかをこのエバネセント場から吸収して、全反射光の強度Irを変化させる。Irの入射角(又は反射角)θに対するプロットは、角度で測った強度プロフィルを生じ、鋭い伏角を示す。最小伏角の正確な位置(即ち、SPR角θr)は、少数のダイオードからのIrシグナルを最小に適合させる多項式アルゴリズムを利用して測定することができる。上部金属面への分子の結合は、表面媒質のηの変化を引き起こし、それは、θrのシフトとして観察することができる。
【0182】
バイオセンサー目的のためのSPRの潜在的能力は、1982〜1983年に、Liedberg等により理解され、彼らは、免疫グロブリンG(IgG)抗体上塗層を金検出フィルムに吸着させて、その後のIgGの選択的結合及び検出を生じた(Nylander等、Sens.Actuators 3(1982),p.79-84;Lieberg等、Sens.Actuators 4(1983),p.229-304)。バイオセンサー技術としてのSPRの原理は、以前に総説されている(Daniels等、Sens.Actuators 15(1988),p.11-18;VanderNoot及びLai, Spectroscopy 6(1991),p.28-33;Lundstrom Biosens.Bioelectron,9(1994),p.725-736;Liedberg等、Biosens.Bioelectron,10(1995);Morgan等、Clin.Chem.42(1996),p.193-209;Tapuchi等、S.Afr.J.Chem.49(1996),p.8-25)。SPRのバイオセンサーへの応用は、ウイルス粒子から性ホルモン結合性グロブリン及び梅毒に至る広範囲の分子について示された。最も重要なことは、SPRは、多用途性及び、生体分子の蛍光又は放射性標識を必要とせずに結合相互作用をモニターする能力において、他の型のバイオセンサーを超える固有の利点を有することである。このアプローチは又、濃度、速度論的定数、及び個々の生体分子の相互作用ステップの結合特異性のリアルタイムの測定における有望性をも示した。抗体−抗原相互作用、ペプチド/タンパク質−タンパク質相互作用、DNAハイブリダイゼーション条件、ポリマーの生体適合性研究、生体分子−細胞レセプター相互作用、及びDNA/レセプター−リガンド相互作用を、すべて分析することができる(Pathak及びSavelkoul, Immunol.Today 18(1997),p.464-467)。商業的には、SPRベースの免疫アッセイの利用は、Biacore(スウェーデン、Uppsala在)(Jonsson等、Ann.Biol.Clin.51(1993),p.19-26)、Windsor Scientific (英国)(Windsor Scientific IBIS Biosensor のWWW URL)、Quantech (ミネソタ)(QuantechのWWW URL)及びTexas Instruments (テキサス、Dallas在)(Texas InstrumentsのWWW URL)などの会社により促進されてきた。
【0183】
更に別の具体例において、WO02/074997に記載のように、蛍光ポリマースーパークエンチングベースのバイオアッセイを利用して、未標識URSのその捕捉剤への結合を検出することができる。この具体例においては、標的URSペプチド及び化学部分の両方に特異的な捕捉剤を利用する。この化学部分は、(a)捕捉剤のための認識エレメント、(b)蛍光特性を変えるエレメント、及び(c)この認識エレメントと特性を変えるエレメントを結合する繋留エレメントを含む。蛍光ポリマーを含む組成物と捕捉剤を、一つの支持体上の同じ場所に配置する。化学部分が捕捉剤に結合した場合には、その化学部分の特性を変えるエレメントは、蛍光ポリマーにより放射される蛍光を変える(消光する)だけ、蛍光ポリマーに十分に近い。分析物試料が導入された場合、この標的URSペプチドは(存在するならば)、この捕捉剤に結合し、それにより、この化学部分をレセプターから退去させ、消光減少及び検出される蛍光の増加を生じる。標的の生物学的薬剤の存在を検出するためのアッセイも又、この出願で開示する。
【0184】
他の関連する具体例において、これらの捕捉剤とURSとの間の結合事象は、US2003/0008414A1に記載されたような水溶性の発光性量子ドットを利用することにより検出することができる。一具体例において、水溶性発光性半導体量子ドットは、コア、キャップ及び親水性結合基を含む。IIB−VIB、IIIB−VB又はIVB−IVB半導体の何れのコアでもこの関連で利用することができるが、このコアは、キャップとの組合せにおいて、発光性量子ドットを生じるようでなければならない。IIB−VIB半導体は、周期律表のIEB族に由来する少なくとも一つの元素及びVIB族に由来する少なくとも一つの元素を含む化合物などである。好ましくは、このコアは、大きさが」約1nmから約10nmに及ぶIIB−VIB、IIIB−VB又はIVB−IVB半導体である。このコアは、一層好ましくは、IIB−VIB半導体であり、大きさにおいて約2nmから約5nmに及ぶ。最も好ましくは、このコアは、CdS又はCdSeである。このことに関して、CdSeは、特に大きさが約4.2nmのものは、コアとして特に好ましい。
【0185】
この「キャップ」は、コアの半導体とは異なる半導体であって、コアに結合し、それにより、コア上に表面層を形成する。このキャップは、所定の半導体コアとの組合せに際して、発光性量子ドットを生じるようでなければならない。このキャップは、コアを、コアより高いバンドギャップを有することにより不動態化すべきである。これに関して、キャップは、好ましくは、高いバンドギャップのIIB−VIB半導体である。一層好ましくは、キャップは、ZnS又はCdSである。最も好ましくは、キャップは、ZnSである。コアがCdSe又はCdSである場合には、キャップは、好ましくは、ZnSであり、コアがCdSeである場合には、キャップは、好ましくは、CdSである。
【0186】
「結合基」は、ここで用いる場合、任意の安定な物理的又は化学的結合によって発光性半導体量子ドットのキャップの表面に結合することができ、量子ドットをもはや発光性にすることなく水溶性にすることのできる任意の有機基を指す。従って、この結合基は、親水性部分を含む。好ましくは、この結合基は、親水性量子ドットを少なくとも約1時間、1日、1週間又は1ヶ月にわたって溶液中に維持することを可能にする。望ましくは、結合基は、共有結合によりキャップに結合され、親水性部分が露出されるような仕方でキャップに結合される。好ましくは、親水性結合基は、硫黄原子を介して量子ドットに結合される。一層好ましくは、親水性結合基は、硫黄原子及び少なくとも1つの親水性結合基を含む有機基である。適当な親水性結合基には、例えば、カルボン酸若しくはその塩、スルホン酸若しくはその塩、スルファミン酸若しくはその塩、アミノ置換基、第四アンモニウム塩、及びヒドロキシが含まれる。本発明の親水性結合基の有機基は、好ましくは、C1〜C6アルキル基又はアリール基、一層好ましくは、C1〜C6アルキル基、尚一層好ましくは、C1〜C3アルキル基である。それ故、好適具体例において、本発明の結合基は、チオールカルボン酸又はチオールアルコールである。一層好ましくは、この結合基は、チオールカルボン酸である。最も好ましくは、この結合基は、メルカプト酢酸である。
【0187】
従って、水溶性発光性半導体量子ドットの好適具体例は、約4.2nmの大きさのCdSeコア、ZnSキャップ及び結合基を含むものである。水溶性発光性半導体量子ドットの他の好適具体例は、CdSeコア、ZnSキャップ及び結合基メルカプト酢酸を含むものである。特に好適な水溶性発光性半導体量子ドットは、約4.2nmのCdSeコア、約1nmのZnSキャップ及びメルカプト酢酸結合基を含む。
【0188】
本発明の捕捉剤は、親水性結合基を介して量子ドットに結合できる。この捕捉剤は、任意の安定な物理的又は化学的結合などにより、水溶性発光性量子ドットの親水性結合基に、直接又は間接的に、任意の適当な手段によって、少なくとも1つの共有結合によって、捕捉剤又は量子ドットの機能を害しない随意のリンカーを介して結合することができる。例えば、結合基がメルカプト酢酸であって、核酸生体分子がこの結合基に結合するならば、リンカーは、好ましくは、第一アミン、チオール、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ビオチンなどの分子である。結合基がメルカプト酢酸であって、タンパク質生体分子又はその断片がこの結合基に結合するならば、リンカーは、好ましくは、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ビオチンなどの分子である。
【0189】
量子ドット捕捉剤結合体の利用により、URS含有試料は、上記のように結合体と接触した場合、発光の放射を促進する(結合体の捕捉剤がURSペプチドに特異的に結合する場合)。これは、捕捉剤が核酸アプタマー又は抗体である場合、特に有用である。アプタマーを利用する場合、蛍光クエンチャーを、自己対合ステムループ構造を介して量子ドットに隣接して位置させることができる(アプタマーがURS含有配列に結合しない場合)別の具体例を採用することができる。アプタマーがURSに結合する場合、ステムループ構造は、開き、そうして、クエンチング効果を和らげて、発光を生じる。
【0190】
他の関連する具体例において、US2002/0117659A1に記載されたようなナノワイヤー又はナノチューブを含むナノセンサーのアレイを利用して、URS−捕捉剤相互作用の検出及び/又は定量を行なうことができる。簡単にいえば、「ナノワイヤー」は、1ナノメートルほどの薄い断面寸法を有することのできる伸長されたナノスケールの半導体である。同様に、「ナノチューブ」は、中空のコアを有するナノワイヤーであり、当業者に公知のナノチューブが含まれる。「ワイヤー」は、少なくとも半導体又は金属の伝導性を有する任意の材料を指す。これらのナノワイヤー/ナノチューブは、ナノワイヤーがさらされた試料中の分析物(例えば、URSペプチド)を測定するために構築されて配置されたシステムにおいて利用することができる。ナノワイヤーの表面は、捕捉剤で被覆することにより官能化されている。分析物の官能化ナノワイヤーへの結合は、ナノワイヤーの導電性又は光学特性の検出可能な変化を引き起こす。従って、分析物の存在を、ナノワイヤーの特性典型的には電気的特性又は光学特性の変化を測定することにより測定することができる。アミノ酸、タンパク質、糖、DNA、抗体、抗原及び酵素などを含む様々な生体分子実在物を被覆に利用することができるが、これらに限られない。ナノワイヤーの構築、様々な生体分子(例えば、本発明の捕捉剤)による官能化、及びナノワイヤー装置での検出などについて、一層詳細には、US2002/0117659A1(参考として援用する)を参照されたい。各々異なる捕捉剤を官能化原子団として有する多数のナノワイヤーを並行的に利用することができるので、この技術は、生物学的試料中のURS含有粒子の、URSペプチドの標識を必要としない、大規模なアレイ化検出に理想的に適している。このナノワイヤー検出技術は、pH変化(H+結合)、ビオチン−ストレプトアビジン結合、抗体−抗原結合、金属(Ca2+)結合を、ピコモルの感度で、リアルタイムで検出するために、上首尾に利用されてきた(Cui等、Science 293:1289-1292)。
【0191】
マトリクス補助レーザー脱着/イオン化飛行時間質量分析(MALDI−TOF MS)は、レーザーパルスを利用して、タンパク質を表面から脱着し、その後、質量分析を行なって、それらのタンパク質の分子量を同定する(Gilligan等、Mass spectrometry after capture and small-volume elution of analyte from a surface plasmon resonance biosensor. Anal.Chem.74(2002),p.2041-2047)。この方法は、タンパク質の質量だけを界面で測定するので、及び脱着プロトコールが断片化を生じないだけ十分に穏やかであるので、MALDIは、結合したURSペプチドの正体、又はURSペプチドの任意の酵素的改変を確認するような直接的で有用な情報を与えることができる。この問題に関しては、MALDIを利用して、固定化捕捉剤に結合したタンパク質を同定することができる。結合したタンパク質を同定するのに重要な技術は、アレイ(及び該アレイに選択的に結合したタンパク質)をプロテアーゼで処理してから、その結果生成したペプチドを分析して、配列データを得ることに依存している。
【0192】
IV.試料及びそれらの調製
これらの捕捉剤又は捕捉剤のアレイを、典型的には、試料例えば生物学的液体、水試料又は食料試料(ペプチドの集合を生成するように断片化してある)と、関心あるタンパク質に対応するURSとの結合に適した条件下で接触させる。
【0193】
本発明の捕捉剤を利用してアッセイすべき試料は、様々な生理学的起源、環境的起源又は人工的起源から引き出すことができる。特に、生理学的試料例えば患者又は生物の体液又は組織試料を、アッセイ試料として利用することができる。かかる液体には、唾液、粘液、汗、全血液、血清、尿、羊水、性器液、糞便、骨髄、血漿、脊髄液、囲心腔液、胃液、腹腔液、腹膜液、胸膜液及び他の身体部分からの抽出物、及び他の腺からの分泌物が含まれるが、これらに限られない。或は、患者から採取された細胞から引き出し又は培養で増殖させた生物学的試料を利用することができる。かかる試料には、上清、全細胞溶解物、又は細胞材料の溶解及び分画から得られた細胞画分が含まれる。細胞及びその画分(生物学的実在物から直接のもの及び人工的環境で成長させたものを含む)の抽出物も又、利用することができる。加えて、生物学的試料は例えば血液、血漿、血清、胃腸分泌液、組織若しくは腫瘍のホモジェネート、滑液、糞便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹腔液、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙又は前立腺液から得ることができ且つ/又は引き出すことができる。
【0194】
試料は、無関係の物質を除去するために前処理し、安定化させ、緩衝処理し、保存し、濾過し、或は、条件付けすることができる(所望し又は必要であるならば)。試料中のタンパク質は、典型的には、この発明の方法の部分として又はこれらの方法の実施に先立って断片化される。断片化は、任意の当分野で認められた所望の方法を利用して例えば化学的開裂(例えば、シアノゲンブロミド);酵素的手段(例えば、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、カルボキシペプチダーゼ、カルパイン、ズブチリシン、gluc−C、endo lys−C及びプロテイナーゼKなどのプロテアーゼの利用、又はこれらの集合又は下位集合);又は物理的手段(例えば、物理的剪断による断片化又は超音波処理による断片化)を利用して行なうことができる。ここで用いる場合、用語「断片化」、「開裂」、「タンパク質分解性開裂」、「タンパク質分解」「制限」などは、交換可能に用い、タンパク質中の化学結合典型的にはペプチド結合を切断してペプチド(即ち、タンパク質の断片)の集合を生成することを指す。
【0195】
この断片化の目的は、可溶性であって捕捉剤との結合に利用できるURSを含むペプチドを生成することである。本質において、試料調製物は、試料中に存在しうる関連タンパク質の上又は内部に存在するすべてのURSが捕捉剤との反応に利用できる程度を保証するようにデザインされる。このストラテジーは、タンパク質チップをデザインするための以前の試みで遭遇した、タンパク質−タンパク質複合体形成、翻訳後修飾などにより引き起こされる多くの問題を回避することができる。
【0196】
一具体例において、関心ある試料を、予め決めたプロトコールを利用して処理する。該プロトコールは、(A)標的タンパク質−タンパク質非共有結合若しくは共有結合性複合体形成若しくは凝集、標的タンパク質分解若しくは変性、標的タンパク質の翻訳後修飾、又は標的タンパク質の三次構造に環境的に誘導された変化により引き起こされる標的タンパク質のマスキングを阻止し、そして(B)標的タンパク質を断片化し、それにより、少なくとも一つのペプチドエピトープ(即ち、URS)を生成し、その濃度は、試料中の標的タンパク質の真の濃度に直接比例する。この試料処理プロトコールは、所定の捕捉剤との反応に利用できるURSを再現可能に生成するようにデザインされて、経験的に試験される。この処理は、タンパク質分離;タンパク質分画;溶媒の改変例えば極性の変化、浸透圧変化、希釈又はpH変化;加熱;凍結;沈殿;抽出;試薬例えばエンド、エキソ又は部位特異的プロテアーゼとの反応;非タンパク質分解性消化;酸化;還元;幾つかの生物学的活性の中和、及び当業者に公知の他のステップを含むことができる。
【0197】
例えば、試料を、ジスルフィド/ジチオール交換によりダイマー又は他の凝集体の形成を阻止するためにアルキル化剤及び還元剤で処理することができる。URS含有ペプチドの試料を処理して、リン酸化、メチル化、グリコシル化、アセチル化、プレニル化を含む(これらに限られない)二次的修飾を、例えば、それぞれの修飾に特異的な酵素例えばホスファターゼなどを利用して除去することもできる。
【0198】
一具体例において、試料のタンパク質は、変性、還元及び/又はアルキル化されるが、タンパク質分解的に開裂されない。タンパク質は、熱変性又は有機溶媒によって変性させてから、直接検出にかけ又は適宜更なるタンパク質分解性開裂を行なうことができる。
【0199】
分画は、任意の単一の又は多次元のクロマトグラフィー例えば逆相クロマトグラフィー(RPC)、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー又は親和性分画例えばイムノアフィニティー及び固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを利用して行なうことができる。好ましくは、この分画は、表面媒介による選択ストラテジーを含む。電気泳動(スラブゲル又はキャピラリー電気泳動)も又、試料中のペプチドを分画するために利用することができる。スラブゲル電気泳動法の例には、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)及びネイティブゲル電気泳動が含まれる。分画に利用することのできるキャピラリー電気泳動法には、キャピラリーゲル電気泳動(CGE)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)及びキャピラリーエレクトロクロマトグラフィー(CEC)、キャピラリー等電集束法、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー及びアフィニティー電気泳動が含まれる。
【0200】
タンパク質沈殿は、当分野で周知の技術を利用して行なうことができる。例えば、沈殿は、公知の沈殿剤例えばチオシアン酸カリウム、トリクロロ酢酸及び硫酸アンモニウムを利用して達成することができる。
【0201】
断片化に続いて、試料を、本発明の捕捉剤例えばここに記載の二次元支持体又はビーズ上に固定化された捕捉剤と接触させることができる。或は、断片化試料(ペプチドの集合を含む)を、例えば、大きさ、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)又は抗原特性に基づいて分画し、その後、本発明の捕捉剤例えば二次元支持体又はビーズ上に固定化された捕捉剤と接触させる。
【0202】
V.URSの選択
本発明のURSは、様々な方法で選択することができる。最も簡単な具体例において、所定の生物又は生物学的試料についてのURSを、関連データベースの力ずくの検索によって、所定の長さの理論的に可能なすべてのURSを利用して、発生させ又は同定することができる。例えば、5アミノ酸長のURS(可能なURSの候補の総数は、320万、後記の表2.2.2参照)を同定するために、320万の候補の各々を、問合せ配列として利用して、ヒトプロテオームに対する検索を後記のようにすることができる。1つより多くのヒットを有する如何なる候補(2以上のタンパク質において見出される)も、更なる検索を行なう前に直ちに排除する。検索の終わりに、1つ以上のURSを有するヒトタンパク質のリストが得られる(後記の実施例1参照)。同じ又は類似の手順を、任意の予め決めた生物又はデータベースに対して利用することができる。
【0203】
例えば、各ヒトタンパク質に対するURSを、次の手順を利用して同定することができる。ヒトタンパク質における限定された長さN(アミノ酸)の20Nにより与えられるすべての可能なペプチドの発生を計算するためにパールプログラムが開発されている。例えば、全タグスペースは、4量体ペプチドについて、160,000(204)であり、5量体ペプチドについて、3.2M(205)であり、6量体ペプチドについて、64M(206)であり、以下同様である。予想されるヒトタンパク質配列は、Nアミノ酸のすべての可能なペプチドの存否について分析される。URSは、ヒトプロテオーム中に一度だけ出現するペプチド配列である。従って、特異的URSの存在は、タンパク質配列の固有の特性であり、操作に依らない。このアプローチによって、決定的なURSのセットを規定することができ、試料の処理手順に依らずに利用できる(操作非依存性)。
【0204】
一具体例において、検索プロセスを早くするために、コンピューターアルゴリズムを開発し又は改変して、実際的検索を開始する前に、不必要な検索を排除することができる。
【0205】
上記の例を利用して、2つの高度に関連する(少数のアミノ酸の位置のみ異なる)ヒトタンパク質を整列させることができ、多数の候補のURSを、同一領域の配列に基づいて、排除することができる。例えば、20アミノ酸の同一の配列の範囲があれば、5アミノ酸の16のURSを、それらの2つの同一でないヒトタンパク質における同時の出現によって、検索なしで排除することができる。この排除プロセスは、できるだけ多くの高度に関連するタンパク質(例えば、進化的に保存されたタンパク質例えばヒストン、グロビンなど)の対又はファミリーを利用して続けることができる。
【0206】
他の具体例においては、所定のタンパク質について同定されたURSを、ある種の基準に基づいて順位付け、一層高いランクのURSを特異的捕捉剤の生成において用いるのが好ましいようにすることができる。
【0207】
例えば、あるURSは、自然にはタンパク質の表面に存在しえて、それ故、プロテアーゼにより消化した場合に可溶性であるので、よい候補となる。他方、あるURSは、タンパク質の内部又はコア領域に存在しえて、消化後でも容易に可溶性とならない。かかる溶解度特性は、利用可能なソフトウェアによって評価することができる。Boger,J.,Emini,E.A.及びSchmidt,A., Surface probability profile-An heuristic approach to the selection of synthetic peptide antigens, Report on the Sixth International Congress in Immunology (Toronto) 1986 p.250に記載された溶媒接近可能性法も又、関心あるタンパク質の表面に位置しているURSを同定するために利用することができる。パッケージMOLMOL(Koradi,R.等(1996) J.Mol.Graph.14:51-55)及びEisenhaberのASC法(Eisenhaber及びArgos(1993) J.Comput.Chem.14:1272-1280;Eisenhaber等(1995) J.Comput.Chem.16:273-284)も又、利用できる。表面URSは、一般に、内部URSよりも一層高いランキングを有している。一具体例においては、URS又はURSを含有するタンパク質分解された断片について計算することができるlogP又はlogD値を、計算して、タンパク質試料が捕捉剤と接触する条件下での類似の溶解度に基づいてURSを順位付けるために利用することができる。
【0208】
何れのURSにも、注釈が付随してもよく、該注釈は、有用な情報例えばそのURSがある種のプロテアーゼ(例えばトリプシン)によって破壊されうるか、比較的硬い又は柔軟な構造を有する消化されたペプチド上に出現することがありそうかというような情報を含むことができる。これらの特性は、特に、所定のタンパク質に結合した多数のURSがある場合に特異的捕捉剤を生成するならば、用途につきURSを順位付けするのを助けることができる。URSは、所定の生物における特定の用途に依って変化しうるので、順位は、特定の用法に依って変化しうる。あるプロテアーゼにより破壊される確立のために低ランキングでありうるURSは、異なるプロテアーゼを利用する異なる断片化計画においては一層高くランクされうる。
【0209】
他の具体例において、抗体生成のためにタンパク質から最適のURSを選択するためのコンピューターアルゴリズムは、抗体−ペプチド相互作用のデータを考慮する。Nearest-Neighbor Analysis (NNA)などのプロセスを利用して、各タンパク質について最もユニークなURSを選択することができる。タンパク質中の各URSは、それが有するnearest neighborsの数に基づく相対的スコア(又は、URS ユニークネス・インデックス)を与えられる。URS ユニークネス・インデックスが高いほど、そのURSは、一層ユニークである。URS ユニークネス・インデックスは、アミノ酸置換マトリクス例えば表VIIIのGetzoff, ED, Tainer JA及びLerner RA The chemistry and meachnism of antibody binding to protein antigens. 1988. Advances. Immunol. 43:1-97のものを利用して計算することができる。このマトリクスにおいて、各アミノ酸の残りの19アミノ酸による置換可能性が、単一変異の(ペプチド配列中の各アミノ酸を残りの19アミノ酸で置換した)多数のペプチドに対する抗体の交叉反応性についての実験データに基づいて計算された。例えば、タンパク質に由来する各8量体URSは、ヒトプロテオーム中に存在する870万の8量体と比較されて、URS ユニークネス・インデックスが計算される。このプロセスは、特定のタンパク質について最もユニークなURSを選択するだけでなく、このURSについてのNearest Neighbor Peptideをも同定する。これは、Nearest Neighbor Peptideは、特定の抗体と交叉反応することが最もありそうなので、URS特異的抗体の交叉反応性の限定に重要になる。
【0210】
URS ユニークネス・インデックスの他に、各URSについて下記のパラメーターも又、計算することができて、URSのランク付けを助ける:
a)URS溶解度インデックス:これは、URSのLogP及びLogDの計算を含む。
b)URS疎水性及び水接近容易性:親水性ペプチド及び良好な水接近容易性を有するペプチドが選択される。
c)URS長:一層長いペプチドは、溶液中でコンホメーションを有する傾向があり、我々は、8アミノ酸の限定された長さのURSペプチドを利用する。URS特異的な抗体は、一層短いペプチド配列中のエピトープの限定された数のために、一層良好な限定された特異性を有する。これは、これらの抗体を利用する複合的アッセイには非常に重要である。一具体例においては、この方法により精製された抗体だけが、複合的アッセイに利用される。
d)進化保存インデックス:各ヒトURSは、URS配列が、種を超えて保存されているかどうかを示すために、他の種と比較される。理想的には、例えば、マウスとヒトの配列の間で、最小の保存を有するURSが選択される。マウスにおける良好な免疫応答及びモノクローナル抗体を生成する可能性を最大にする。
【0211】
A.翻訳後修飾
主題のコンピューターで生成されたURSは、翻訳後修飾の適当な存否によって分析することもできる。100を超えるかかる異なるアミノ酸残基の修飾が知られており、例には、アシル化、アミド化、脱アミド化、プレニル化(例えば、ファルネシル化又はゲラニル化)、ホルミル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、リン酸化、ユビキチン化、リボシル化及び硫酸化が含まれるが、これらに限られない。所定のアミノ酸配列における推定の翻訳後修飾を測定できる配列分析ソフトウェアには、真核生物のタンパク質におけるセリン、スレオニン及びチロシンリン酸化部位(http://www.cbs.dtu.dk/services/Net- Phos/から入手可能)、GPI修飾部位予測(http://mendel.imp.univie.ac.at/gpi から入手可能)についてのニューラルネットワーク予測を生成するNetPhosサーバー及び全タンパク質分析のための ExPASyプロテオミクス サーバー(www.expasy.ch/tools/より入手可能)が含まれる。
【0212】
ある具体例において、好適URS部分は、翻訳後修飾されたアミノ酸配列は、試料調製及び/又は捕捉剤との相互作用を複雑にするので、如何なる翻訳後修飾をも欠くものである。上記にもかかわらず、関心あるポリペプチドの生物学的活性を示すことのできるURSの翻訳後修飾形態を識別することのできる捕捉剤を生成して、本発明において利用することができる。非常に一般的な例は、ポリペプチド中のセリン、スレオニン又はチロシン基のアミノ酸側鎖のOH基のリン酸化である。ポリペプチドに依って、この修飾は、その機能活性を増大又は減少させうる。一具体例において、主題の発明は、一種以上のタンパク質の様々な翻訳後修飾形態の識別力のある結合及び同定を与えるように、多彩にされた捕捉剤のアレイを提供する。
【0213】
VI.この発明の応用
A.研究及び診断的応用
本発明の捕捉剤は、生きている系のプローブ検査及び診断応用における強力なツールを与える(例えば、臨床的、環境的及び産業的応用、並びに食品安全性の診断への応用)。臨床診断応用のために、これらの捕捉剤を、一種以上の診断標的(例えば、病気に関連するタンパク質、タンパク質の集合、又はタンパク質のパターン)に対応する一種以上のURSに結合するようにデザインする。特定の個々の病気に関連するタンパク質には、例えば、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)又は前立腺特異的膜抗原(PSMA)(前立腺癌診断用);乳癌診断のためのサイクリンE;アネキシン例えばアネキシンV(例えば癌、虚血又は移植の拒絶における細胞死の診断用);又はβ−アミロイドプラーク(アルツハイマー病診断用)が含まれる。
【0214】
従って、本発明のユニークな認識配列及び捕捉剤は、代理マーカーの源として利用することができる。例えば、それらを、障害又は病気のマーカーとして、病気の前兆のマーカーとして、病気の素因のマーカーとして、薬物活性のマーカーとして、又はタンパク質発現の薬理ゲノム学的プロフィルのマーカーとして利用することができる。
【0215】
ここで用いる場合、「代理マーカー」は、病気若しくは障害の存否と、又は病気若しくは障害の進行(例えば、腫瘍の存否)と相関する目標の生化学的マーカーである。かかるマーカーの存在又は量は、病気の原因とは無関係である。それ故、これらのマーカーは、特定の治療コースが病気又は障害の軽減に有効であるかどうかを指示するのに役立ちうる。代理マーカーは、病気又は障害の存在又は程度を標準的な方法論によって評価することが困難な場合(例えば、初期ステージの腫瘍)、又は潜在的に危険な臨床的終点に達する前に病気の進行を評価することが望ましい場合に、特に有用である(例えば、心臓血管病の評価は、心臓血管病と関係するタンパク質に対応するURSを代理マーカーとして利用して行なうことができるし、HIV感染の分析を、HIVタンパク質に対応するURSを代理マーカーとして利用して、心筋梗塞又は完全に発生したAIDSの望ましくない臨床結果より十分前に行なうことができる)。当分野における代理マーカーの利用の例には、Koomen等(2000) J.Mass.Spectorom.35:258-264;及びJames (1994) AIDS Treatment News Archive 209が含まれる。
【0216】
おそらく、この発明の最も重要な利用は、それが、強力な新しいタンパク質発現の分析技術(特定のタンパク質の組合せの存在及び特定のタンパク質の組合せの発現レベルについての試料の分析)の実施を可能にすることである。これは、広く、分子生物学の研究において価値のあることであり、特に、新規なアッセイの開発において価値がある。故に、この発明は、試料中の、幾つかの病気、生理的状態又は種の正体に特徴的なタンパク質、タンパク質のグループ、及びタンパク質発現パターンを同定することを可能にする。かかるマルチパラメトリックアッセイプロトコールは、もし検出されるタンパク質が不連続な又は離れた経路に由来するものならば、特に、有益な情報を与えるものである。例えば、この発明を利用して、正常な患者と癌患者の組織、尿又は血中におけるタンパク質の発現パターンを比較することができ、特定の種類の癌の存在下で、第一のタンパク質の群が正常より一層高レベルで発現されて他の群が一層低レベルで発現されることを発見することができる。他の例として、プロテインチップを利用して、様々な細菌株におけるタンパク質発現レベルを概観し、種々の株を特徴付ける発現パターンを発見し、そしてどの株がどの抗生物質に感受性かを測定することができる。その上更に、この発明は、特定のタンパク質の特定のパターンを検出するためのアレイ又は他の捕捉剤の配置を含む専門的なアッセイ装置の製造を可能にする。従って、この発明の実施による例を続けるならば、患者由来の細胞溶解調製物又は体液にさらして、その患者が癌を有しないか又は特定の種類の癌を患っているという情報を与える、発現の存否又はパターンをを示すことのできるチップを製造することができる。或は、試料にさらされて読まれて、感染細菌の種及びそれを破壊する抗生物質を示すプロテインチップを製造することができる。
【0217】
接合URSは、一つのペプチドであって、それをコードするRNAのスプライス部位に対応するタンパク質領域をまたぐ当該ペプチドである。接合URSに結合するようにデザインされた捕捉剤は、染色体再配置例えば癌と関連する染色体再配置により生成されたスプライス変異体並びに遺伝子融合物を検出するための分析に含まれうる。かかる再配置の検出は、病気例えば癌の診断へと導きうる。今や、スプライス変異体が一般的であり、RNAスプライシングを制御する機構が様々な生理的過程の制御機構として進化してきたことが明らかになりつつある。この発明は、かかる種によりコードされるタンパク質の発現、及びかかるタンパク質の存在と病気又は障害との相関関係の検出を可能にする。癌と関連する染色体再配置の例には、骨髄性白血病及び非リンパ性急性白血病に関連する遺伝子FUS−ERGの間の転座t(16;21)(p11;q22)(Ichikawa H.等 (1994) Cancer Res.54(11):2865-8参照);ユーイング肉腫及び神経上皮腫に関連する遺伝子ERG−EWSの間の転座t(21;22)(q22;q12)(Kaneko Y.等 (1997) Genes Chromosomes Cancer 18(3):228-31参照);bcl2遺伝子に関与し且つ濾胞性リンパ腫と関連する転座t(14;18)(q32;q21);及び肺胞横紋筋肉腫に関連する第二染色体上のPAX3遺伝子のコード領域と第13染色体上のFKHR遺伝子とを並置させる転座(Barr F.G.等 (1996) Hum.Mol.Genet.5:15-21参照)が含まれる。
【0218】
環境及び産業的診断における応用のために、これらの捕捉剤は、それらが、生物戦用の薬剤(例えば、炭疽菌、天然痘、コレラ毒素)に対応する一種以上のURS及び/又は他の環境毒素(黄色ブドウ球菌a−トキシン、志賀毒素、1型細胞傷害性壊死因子、大腸菌熱安定性毒素、並びにボツリヌス及び破傷風神経毒)又はアレルゲンに対応する一種以上のURSに結合するようにデザインされる。これらの捕捉剤は又、細菌、プリオン、寄生虫などの感染性因子に対応する一種以上のURS又はウイルス(例えば、1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)、HIV−2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、インフルエンザ、口蹄疫ウイルス、及びエボラウイルス)に対応するURSに結合するようにデザインすることもできる。
【0219】
B.高スループットスクリーニング
この発明の捕捉剤を含む組成物例えばマイクロアレイ、ビーズ又はチップは、特定の捕捉剤と相互作用することができる化合物を同定し、又はURSとの結合について競合する分子を検出するための非常に多数の化合物の高スループットのスクリーニングを可能にする。マイクロアレイは、天然の又は合成の化合物の大きいライブラリーをスクリーニングして、捕捉剤についての天然又は非天然リガンドの競合相手を同定するのに有用であり、それらは、診断、予知、治療又は科学的に興味深いものでありうる。
【0220】
本発明の捕捉剤を用いるマイクロアレイ技術の利用は、正常な及び病気の血清、細胞及び組織に由来する多数のタンパク質の包括的なプロファイリングを可能にする。
【0221】
例えば、一度マイクロアレイが形成されれば、それを、高スループットの薬物の発見に(例えば、化合物のライブラリーの、それらの、標的タンパク質に結合してその活性を調節する能力についてのスクリーニング);高スループットの標的同定に(例えば、タンパク質と病気過程との相関関係);高スループットの標的確認に(例えば、タンパク質を例えば突然変異誘発により操作して、その操作のそのタンパク質又は他のタンパク質に対する効果をモニターする);又は基礎的研究(例えば、鍵となる発生若しくは細胞周期タイムポイントにおけるタンパク質発現パターンの研究又は様々な刺激に対する応答におけるタンパク質発現パターンの研究)に利用することができる。
【0222】
一具体例において、この発明は、関心あるリガンドの活性を調節する試験化合物例えば小型分子を同定する方法を提供する。この具体例によれば、捕捉剤は、リガンド及び試験化合物にさらされる。次いで、捕捉剤とリガンドとの間の結合の存否を検出して、試験化合物のリガンドに対する調節効果を測定する。好適具体例において、同じ細胞内の経路で作用するリガンドに結合する捕捉剤のマイクロアレイを利用して、試験化合物のこれらすべてのタンパク質に対する効果を、並行的様式でプロファイリングする。
【0223】
C.薬物プロテオミクス
本発明の捕捉剤又は該捕捉剤を含むアレイは又、患者のタンパク質発現プロフィルとその患者の外来化合物又は薬物に対する応答の間の関係を研究するために利用することもできる。治療剤の代謝における差異は、投与量と薬理学的に活性な薬物との血中濃度の関係を変えることにより、重大な毒性又は治療の失敗へと導きうる。従って、これらの捕捉剤の前述の様式での利用は、薬理学的に活性な薬物を患者に投与すべきかの決定において、並びに 投薬量及び/又はその薬物を用いる治療養生法をぴったりに調整することにおいて、内科医又は臨床医を助けうる。
【0224】
D.タンパク質プロファイリング
上記のように、本発明の捕捉剤は、任意の生物学的状態の特性決定をタンパク質プロファイリングによって可能にする。用語「タンパク質プロファイル」は、ここで用いる場合、所定の条件セットの下で所定の組織又は細胞について得られるタンパク質発現パターンを包含する。かかる条件には、細胞成長、アポトーシス、増殖、分化、トランスフォーメーション、腫瘍形成、転移、及び発癌物質への曝露が含まれるが、これらに限られない。
【0225】
本発明の捕捉剤は又、2つの細胞の又は異なる細胞集団のタンパク質発現パターンを比較するために利用することもできる。2つの細胞又は細胞集団のタンパク質発現を比較する方法は、特に、生物学的過程の理解に有用である。例えば、これらの方法を利用して、異なる条件にさらされた同じ細胞又は密接に関連する細胞のタンパク質発現パターンを比較することができる。最も典型的には、一細胞又は細胞集団のタンパク質の内容を、対照細胞又はその集団のタンパク質の内容と比較する。上記のように、これらの細胞又は細胞集団の一方は新生物であってよく、他方は、そうでない。他の具体例においては、2つのアッセイされる細胞又は細胞集団の一方は、病原体に感染していてよい。或は、2つの細胞又は細胞集団の一方は、化学的、環境的又は熱的ストレスにさらされており、他方は、対照として働く。更なる具体例において、これらの細胞又は細胞集団の一方を薬物又は潜在的薬物にさらすことができ、そのタンパク質発現パターンを対照用細胞と比較することができる。
【0226】
かかる異なるタンパク質発現をアッセイする方法は、新しい潜在的薬物標的の同定及び確認並びに薬物スクリーニングに有用である。例えば、この発明の捕捉剤及び方法を利用して、腫瘍細胞で過剰発現されるが正常細胞では過剰発現されないタンパク質を同定することができる。このタンパク質は、薬物介入の標的たりうる。次いで、この過剰発現されるタンパク質の作用に対する阻害剤を開発することができる。或は、この過剰発現を阻止するためのアンチセンスストラテジーを開発することができる。他の例において、薬物又は潜在的薬物にさらされた細胞又は細胞集団のタンパク質発現パターンを、その薬物にさらされてない他の細胞又は細胞集団のそれと比較することができる。この比較は、この薬物が標的タンパク質に対して所望の効果(薬物効力)を有するかどうか及びこの細胞又は細胞集団の他のタンパク質も影響されるかどうか(薬物特異性)についての洞察を与える。
【0227】
E.タンパク質の配列決定、精製及び特性決定
本発明の捕捉剤は又、タンパク質配列決定に利用することもできる。簡単にいえば、ユニークな認識配列の公知の組合せと相互作用する捕捉剤が増す。その後、関心あるタンパク質を、ここに記載の方法を利用して断片化してペプチドの集合を生成してから、その試料をこれらの捕捉剤と相互作用させる。ペプチドの集合とこれらの捕捉剤との間の相互作用パターンに基づいて、ペプチドの集合のアミノ酸配列を解読することができる。好適具体例において、これらの捕捉剤は、アレイ上に、ペプチド−捕捉剤相互作用の容易な測定を与える予め決めた位置に固定化することができる。これらの配列決定方法は、更に、アミノ酸多型(例えば、関心あるタンパク質中の単一のアミノ酸多型又は突然変異)の同定をも可能にする。
【0228】
他の具体例において、本発明の捕捉剤は又、タンパク質精製に利用することもできる。この具体例において、URSは、リガンド/アフィニティータグとして作用して、タンパク質のアフィニティー精製を可能にする。タンパク質の表面上に露出したURSに対して高められた捕捉剤は、関心あるカラムに、当分野で公知の技術を利用して結合することができる。カラムの選択は、捕捉剤のアミノ酸配列に依存し、その末端は、マトリクスに結合される。例えば、捕捉剤のアミノ末端がマトリクスに結合するべきものであれば、アフィゲル(Biorad)などのマトリクスを利用することができる。システイン残基による結合がが望ましいならば、エポキシ−セファロース−6Bカラム(Pharmacia)を利用することができる。次いで、関心あるタンパク質を含む試料を、このカラムを通して流し、関心あるタンパク質を、例えば、J. Nilsson等 (1997) 「Affinity fusion strategies for detection, purification, and immobilization of recombinant proteins」, Protein Expression and Purification, 11:11-16 (内容を参考として援用する)に記載されたような当分野で公知の技術を利用して溶出させることができる。この発明のこの具体例は又、研究すべきタンパク質への人工的なアフィニティータグの導入を必要とせずに、ネイティブな条件下でのタンパク質−タンパク質相互作用の特性決定をも可能にする。
【0229】
更に別の具体例において、本発明の捕捉剤は、タンパク質の特性決定に利用することができる。同じ遺伝子産物の択一的形態例えば異なる翻訳後修飾(例えば、同じタンパク質のリン酸化対非リン酸化バージョン又は同じタンパク質のグリコシル化対非グリコシル化バージョン)を有するタンパク質又は選択的スプライシングを受けた遺伝子産物を識別する捕捉剤を生成することができる。
【0230】
この発明の有用性は、診断に限られない。ここに記載したシステム及び方法は又、スクリーニングにも有用であり得、病気の結果を予測し、治療様式の示唆を病的細胞のプロファイリング、通常の病変の結果の予測及び病変の悪性形質転換に対する罹病性に基づいて与える。
【0231】
VII.この発明の他の面
他の面において、この発明は、複数のユニーク認識配列を含む組成物を提供する(ここに、ユニーク認識配列は、一生物のプロテオームの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%から導かれる)。一具体例において、これらのユニーク認識配列の各々は、異なるタンパク質から導かれる。
【0232】
本発明は、更に、特定の生物を、その生物のプロテオームエピトープタグに基づいて同定し及び/又は検出する方法をも提供する。これらの方法は、関心ある生物を含む試料(例えば、ここに記載した方法を利用して断片化して、ペプチドの集合を生成させた試料)を、その生物のプロテオームを特性決定し且つ/又は該プロテオームにおいてユニークであるユニーク認識配列の集合と接触させることを含む。一具体例において、プロテオームエピトープタグを含むユニーク認識配列の集合は、アレイ上に固定化される。これらの方法を利用して、例えば、特定の細菌又はウイルスを他の細菌又はウイルスのプールから識別することができる。
【0233】
本発明のユニーク認識配列は又、ユニーク認識配列が支持体に結合された複数の捕捉剤と結合されるタンパク質検出アッセイにも利用することができる。この支持体を、関心ある試料と接触させ、試料が捕捉剤の一つにより認識されるタンパク質を含む場合には、ユニーク認識配列は、捕捉剤に結合することにより提示される。これらのユニーク認識配列は、標識されうる(例えば、支持体からのシグナルの消失が、ユニーク認識配列が提示されたこと及びその試料が少なくとも一種の捕捉剤により認識されるタンパク質を含むことを示すように蛍光標識されうる)。
【0234】
本発明のユニーク認識配列は、治療応用で利用して、例えば、患者の病気を予防し又は治療することもできる。特に、これらのユニーク認識配列は、ワクチンとして利用して、患者における所望の免疫応答例えば腫瘍細胞、感染性因子又は寄生因子に対する免疫応答を誘出することができる。この発明のこの具体例においては、関心ある組織、関心ある感染性因子又は関心ある寄生因子に対してユニークであり又は例えばこれらにおいて過剰表現されるユニーク認識配列が選択される。ユニーク認識配列は、例えば米国特許第5,925,362号及び国際公開No.WO91/11465及びWO95/24924(これらの各々の内容を参考として本明細書中に援用する)に記載されたような当分野で公知の技術を利用して患者に投与される。簡単にいえば、このユニーク認識配列は、免疫応答を増進するようにデザインされた配合物にて、患者に投与することができる。適当な配合物には、追加のアジュバントを有し若しくは有しないリポソーム及び/又はユニーク認識配列をコードするDNAのウイルス又は細菌ベクター中へのクローニングが含まれるが、これらに限られない。これらのユニーク認識配列を組み込んだ配合物例えばリポソーム配合物は又、免疫系補助物質(少なくとも一種のリポ多糖類(LPS)、リピドA、ムラミルジペプチド(MDP)、グルカンを含む)又はある種のサイトカイン(インターロイキン、インターフェロン、及びコロニー刺激因子例えばIL1、IL2、ガンマーインターフェロン及びGM−CSFを含む)をも含むことができる。
【実施例】
【0235】
実施例
この発明を、下記の実施例によって更に説明する(該実施例は、制限と解すべきではない)。この出願中で引用されたすべての参考文献、特許及び公開された特許出願並びに図面を、参考として、本明細書中に援用する。
【0236】
実施例1:ヒトプロテオーム中のユニーク認識配列の同定
全20アミノ酸の何れかがペプチド中の特定の位置に存在しうるので、4量体のすべての可能な結合(4つのアミノ酸残基を含むペプチド)は、204であり;5量体のすべての可能な結合(5つのアミノ酸残基を含むペプチド)は、205であり;6量体のすべての可能な結合(6つのアミノ酸残基を含むペプチド)は、206である。ヒトプロテオーム中のユニーク認識配列を同定するために、各可能な4量体、5量体又は6量体を、ヒトプロテオームに対して検索した(総数:29,076;ヒトプロテオームの起源:EBI Ensembl project release v 4.28.1、2002年3月12日、http://www.ensembl.org/Homo_sapiens/)。
【0237】
この分析の結果は、下記の通りであるが、5量体をユニーク認識配列として利用した場合、ヒトプロテオームの80.6%(23,446配列)がそれら自身のユニーク認識配列を有することを示している。6量体をユニーク認識配列として利用すると、ヒトプロテオームの89.7%が、それら自身のユニーク認識配列を有する。対照的に、4量体をユニーク認識配列として利用した場合には、ヒトプロテオームの2.4%だけがそれら自身のユニーク認識配列を有する。
【0238】
結果及びデータ
2.1.4量体分析:
【表1】

【0239】
【表2】

【0240】
2.2.5量体分析:
【表3】

【0241】
【表4】

【0242】
2.3.6量体分析:
【表5】

【0243】
【表6】

【0244】
ヒトプロテオームにおける類似の分析を、7〜10アミノ酸長のURS配列について行なって、結果を、下記の表にまとめてある:
【0245】
【表7】

【0246】
実施例2:全細菌プロテオーム中のユニーク認識配列の同定
例えば特定の細菌を他のすべての細菌のプールから識別するために利用することのできる5量体URSを同定するために、各可能な5量体を、NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PMGifs/Genomes/eub_g.html)に対して検索した。この分析の結果を、以下に示す。
【0247】
【表8】



【0248】
実施例3:特異的な5量体ユニーク認識配列の同定
上記のように、可能な4量体、5量体又は6量体の各々を、ヒトプロテオーム(総数:29,076ヒトプロテオーム源:EBI Ensembl project release 4.28.1 2002年3月12日、http://www.ensembl.org/Homo_sapiens/)に対して検索して、ユニーク認識配列(URS)を同定した。
【0249】
前述の検索に基づいて、ヒトプロテオームの大部分についての特異的URSが同定された。図1は、インターロイキン8レセプターAの配列中で同定された5量体のユニーク認識配列を描いていたものである。図2は、トリプシン消化により破壊されないヒスタミンH1レセプター内で同定された5量体のユニーク認識配列を描いたものである。ヒトプロテオーム中で同定された5量体のユニーク認識配列の更なる例を如何に示す。
【0250】
【表9】





【0251】
実施例4:2つの重複しないURS配列を有する単一ペプチド配列の複雑な混合物における、サンドイッチELISAアッセイを利用する検出及び定量
ここでは、複雑なペプチド混合物における特異的捕捉剤についての蛍光サンドイッチ免疫アッセイ及び標的ペプチドの定量を説明する。
【0252】
ここに示した実施例においては、3つの一般的に用いられるアフィニティーエピトープ配列(HAタグ、FLAGタグ及びMYCタグ)よりなるペプチドを、消化されたヒトタンパク質試料に由来する大過剰の無関係のペプチドと混合する(図4a)。ここでは、標的ペプチドの中央のFLAGエピトープが、FLAG抗体によって最初に捕捉され、次いで、標識した抗体(HA mAb又はMYC mAb)を利用して、第二のエピトープを検出する。最終的なシグナルを、第二抗体からの蛍光読み出しにより検出する。図4bは、ピコモル濃度のHA−FLAG−MYCペプチドが、百万倍過剰の消化された無関係のタンパク質の存在下で検出されたことを示している。
【0253】
同等物
当業者は、ここに記載したこの発明の特定の具体例に対する多くの同等物を認め、或は日常的実験を利用して確認することができよう。かかる同等物は、後記の請求の範囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】インターロイキン8レセプターAの配列及びこの配列中の5量体のユニーク認識配列(URS)を描いている図である。
【図2】ヒスタミンH1レセプターの配列及びこの配列中のトリプシン消化で破壊されない5量体のユニーク認識配列(URS)を描いている図である。
【図3】複雑な試料に由来するURSのパラレル認識のための別の形式を描いた図である。
【図4A】複合ペプチド混合物中の標的ペプチドの特異的捕捉及び定量のための蛍光サンドイッチ免疫アッセイの図式表示である。
【図4B】二次抗体により検出される読み出し蛍光シグナルの結果を説明している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のタンパク質を明確に同定するための一組の捕捉剤を生成させる方法であって、該方法は、下記:
タンパク質の多彩な試料中に存在すると予想されるタンパク質についてのアミノ酸配列をコンピューターで分析して、各分析したタンパク質にユニークなアミノ酸配列の代表的なデータを生成し;
一組の参照試薬を生成し(各参照試薬は、独立に、該分析したタンパク質の一つに由来するユニークなアミノ酸配列を含む);
一組の捕捉剤を生成させる(各々は、該参照試薬の一つのユニークアミノ酸配列に選択的に結合する)
ことを含み、ここに、集合的に、該一組の捕捉剤は、該捕捉剤が、溶液中で可溶化された該タンパク質又はその断片と接触する条件下で、該試料中に存在する複数のタンパク質の出現に結合して明確に同定することができる上記の方法。
【請求項2】
前記のアミノ酸配列をコンピューターで分析するステップが、ユニークアミノ酸配列を、pI、電荷、立体的、溶解度、疎水性、極性及び溶媒に露出される領域の少なくとも1つをも含む基準に基づいて同定するニアレスト・ネイバー分析を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記のアミノ酸配列をコンピューターで分析するステップが、少なくとも示された溶解条件下で閾値溶解度を有することが予想されるユニークアミノ酸配列を同定する溶解度分析を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記のユニークアミノ酸配列が、5〜30アミノ酸長である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記の捕捉剤が、抗体、又は抗原結合性のその断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の捕捉剤を、ヌクレオチド;核酸;PNA(ペプチド核酸);タンパク質;ペプチド;炭水化物;人工的ポリマー;及び小型有機分子よりなる群から選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記の捕捉剤を、アプタマー、足場付きペプチド及び小型有機分子よりなる群から選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記の捕捉剤が、可溶性タンパク質の溶液中に存在するタンパク質と結合して、明確に同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記の可溶性タンパク質の溶液が、生物学的液体に由来する試料タンパク質の変性及び/又はタンパク質分解により生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記の可溶性タンパク質の溶液が、細胞を含む生物学的試料の変性及び/又はタンパク質分解により生成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記の一組の捕捉剤が、変性条件下で前記のユニークアミノ酸配列に対する選択性について最適化される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記の一組の捕捉剤のアレイをビーズ又はアレイ装置の表面に、配列された捕捉剤の正体をコード化する仕方で生成させる更なるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記のアレイが、100以上の異なる捕捉剤を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記のアレイ装置が、回折格子表面を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記の捕捉剤が、抗体又はその抗原結合部分であり、前記のアレイが、アレイ化ELISAである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記のアレイ装置が、表面プラズモン共鳴アレイである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記のビーズが、仮想アレイとしてコード化されている、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記の捕捉剤を検出可能な標識により誘導体化するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記の捕捉剤を下記についての指示書と共にパッケージ化するステップを更に含む、請求項1又は11に記載の方法:
捕捉剤を、変性及び/又はアミド主鎖開裂により生成されたポリペプチド分析物を含む試料と接触させ;そして
該ポリペプチド分析物と該捕捉剤との相互作用を検出する。
【請求項20】
指示書が、更に、較正手順及び調製手順のデータ、及び捕捉剤の性能特性についての統計データの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アレイが、生物学的液体又は、細胞を含む生物学的試料の変性及び/又はタンパク質分解により生成された可溶性タンパク質の溶液中のタンパク質を定量するための、ネイティブなタンパク質に対して生成された抗体を利用するELISAに関して、一層大きい統計的信頼度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
アレイが、生物学的液体又は、細胞を含む生物学的試料の変性及び/又はタンパク質分解により生成された可溶性タンパク質の溶液における参照標準に対する0.95以上の回帰係数(R2)を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
アレイが、少なくとも50パーセントの回収率を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
アレイが、前記の試料におけるタンパク質の出現についての、少なくとも90パーセントの全体的陽性予想値を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
アレイが、前記の試料におけるタンパク質の出現についての、99パーセント以上の全体的診断感度(DSN)を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
アレイが、前記の試料におけるタンパク質の出現についての、99パーセント以上の全体的診断特異性(DSP)を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項27】
生物学的試料中のタンパク質を定量する方法であって、該方法は、下記:
試験試料中の複数の異なるタンパク質を検出するための複数の異なる捕捉剤を用意し(これらの捕捉剤は、アドレス可能アレイとして与えられ、各捕捉剤は、ユニーク認識配列(URS)と選択的に相互作用する);
該アレイを、試験試料に由来するタンパク質の変性及び/又は開裂により生成されたポリペプチド分析物の溶液と接触させ;
該ポリペプチド分析物と該捕捉剤との相互作用により、試料中のタンパク質の正体及び量を測定する
ことを含み、ここに、各捕捉剤について、該方法は、0.95以上の回帰係数を有する、当該方法。
【請求項28】
アレイが、少なくとも50パーセントの回収率を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
多タンパク質試料中の複数の特異的タンパク質の存在を同時に検出する方法であって、下記のステップを含む当該方法:
試料中のタンパク質を、予め決めたプロトコールを利用して断片化して、複数のユニーク認識配列であって該試料中のその存在がそれらが由来した標的タンパク質の存在を明確に示す当該複数のユニーク認識配列を生成させ、
試料の少なくとも一部分を、断片化後の試料中の条件下で、該ユニーク認識配列の少なくとも一部分に特異的に結合する複数の捕捉剤と接触させ、そして、
結合事象を標的タンパク質の存在の指示として検出する。
【請求項30】
捕捉剤が、試料との結合に際して、病気の存在、生理的状態、又は種を示す、一組のユニーク認識配列のバインダーを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
試料中の少なくとも一種のタンパク質の存在を検出するための方法であって、該方法は、下記:
(i)複数の試料タンパク質の変性及び/又は開裂により生成される可溶性ペプチド分析物の溶液を用意し、そして
(ii)適宜、該ペプチドの集合を、検出可能成分により標識し;
(iii)該溶液を少なくとも一種の捕捉剤と接触させ、ここに、該捕捉剤の各々は、参照タンパク質のユニーク認識配列(URS)を特異的に認識して該配列と相互作用することができ;そして、
(iv)少なくとも一種の該捕捉剤と該ペプチド分析物との結合を検出する
ことを含み、捕捉剤とペプチド分析物との結合の検出が、該複数の試料タンパク質中の該参照タンパク質の存在を示す、上記の方法。
【請求項32】
診断、薬物の発見、又はタンパク質配列決定に利用される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記の診断が、臨床診断である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記の診断が、環境診断である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記の捕捉剤を、ヌクレオチド;核酸;PNA(ペプチド核酸);タンパク質;ペプチド;炭水化物;人工ポリマー;及び小型有機分子よりなる群から選択する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記の捕捉剤が、抗体、又はその抗原結合性の断片である、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記の捕捉剤が、完全長抗体、又は:Fab断片、F(ab')2断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、単離された相補性決定領域(CDR)、一本鎖抗体(scFv)、又はこれらの誘導体から選択する機能性抗体断片である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記の捕捉剤の各々が、一本鎖抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記の捕捉剤が、アプタマーである、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記の捕捉剤が、足場付きペプチドである、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記の捕捉剤が、小型有機分子である、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記の捕捉剤が、固体支持体上で固定化される、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記の捕捉剤が、前記の固体支持体上にアレイとして配置され、各捕捉剤が、該アレイ上で別個のアドレス可能な位置を占める、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記の捕捉剤が、コード化されたビーズの表面上に結合されて、該捕捉剤の仮想アレイを形成する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記のアレイが、前記の支持体に結合された少なくとも1,000の異なる捕捉剤を含む、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
前記のアレイが、前記の支持体に結合された少なくとも10,000の異なる捕捉剤を含む、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項47】
前記の捕捉剤が、前記の支持体に、100捕捉剤/cm2の密度で結合される、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記の可溶性ペプチド分析物が、前記の試料タンパク質の、プロテアーゼ、化学薬品、物理的剪断又は超音波処理による処理により生成される、請求項31に記載の方法。
【請求項49】
前記のプロテアーゼが、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、カルボキシペプチダーゼ、カルパイン、ズブチリシン、gluc−C、エンドlys−C又はプロテイナーゼKである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記の可溶性ペプチド分析物が、前記の試料タンパク質の、化学薬品による処理によって生成される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記の化学薬品が、シアノゲンブロミドである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記のタンパク質試料が、生理学的、環境的又は人工的起源に由来する、請求項31に記載の方法。
【請求項53】
前記の生理学的起源が、唾液、粘液、汗、全血液、血清、尿、羊水、性器液、糞便、骨髄、血漿、脊髄液、囲心腔液、胃液、腹腔液、腹膜液、胸膜液、滑液、嚢胞液、脳脊髄液、肺洗浄液、リンパ液、涙、前立腺液、他の身体部分からの抽出液、又は他の腺からの分泌液から選択する体液である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記のタンパク質試料が、上清、全細胞溶解物、又は細胞材料の溶解及び分画から得られた細胞画分、生物学的実在物から直接得られた細胞の又は人工的環境で成長させた細胞の抽出物又は画分に由来する、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記の試料が、ヒト、マウス、ラット、カエル(アフリカツメガエル)、魚(ゼブラフィッシュ)、ハエ(キイロショウジョウバエ)、線虫(C.エレガンス)、分裂酵母若しくは出芽酵母、又は植物(シロイスナズナ)から得られる、請求項31に記載の方法。
【請求項56】
前記のURSが、線状配列である、請求項31に記載の方法。
【請求項57】
前記のURSが、非隣接配列である、請求項31に記載の方法。
【請求項58】
前記のURSが、5〜10アミノ酸長である、請求項31に記載の方法。
【請求項59】
前記のURSが、8アミノ酸長である、請求項31に記載の方法。
【請求項60】
前記のURSを、配列番号:1〜546、又はそれらの下位集合よりなる群から選択する、請求項31に記載の方法。
【請求項61】
病原体の検出のための、請求項31に記載の方法。
【請求項62】
炭疽菌毒素、天然痘毒素、コレラ毒素、黄色ブドウ球菌α毒素、志賀菌毒素、細胞傷害性壊死因子1、大腸菌熱安定性毒素、ボツリヌス毒素、又は破傷風神経毒素から選択する少なくとも一種の毒素の検出のための、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記の可溶性ペプチド分析物が、膜結合タンパク質の処理により生成される、請求項31に記載の方法。
【請求項64】
前記の試料タンパク質又は前記の可溶性ペプチド分析物を処理して、該可溶性ペプチド分析物の翻訳後修飾を減じることを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項65】
前記の翻訳後修飾が、リン酸化、メチル化、グリコシル化、アセチル化、又はプレニル化である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記の可溶性ペプチド分析物を、翻訳後修飾を保存する条件下で生成し、且つ前記の捕捉剤が、参照タンパク質の前記のユニーク認識配列(URS)の未修飾形態及び翻訳後修飾された形態と特異的に相互作用して、これらを識別する、請求項31に記載の方法。
【請求項67】
前記の捕捉剤が、アセチル化、アミド化、脱アミド化、プレニル化、ホルミル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、リン酸化、ユビキチン化、リボシル化及び硫酸化よりなる群から選択する参照タンパク質の翻訳後修飾と特異的に相互作用して、それらを識別する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
ステップ(2)を行ない、且つステップ(4)を、前記の可溶性ペプチド分析物上の前記の検出可能な成分を検出することにより遂行する、請求項31に記載の方法。
【請求項69】
前記の検出可能な成分が、蛍光標識、着色染料、化学発光性化合物、コロイド粒子、放射性同位元素、近赤外染料、DNAデンドリマー、水溶性量子ドット、ラテックスビーズ、セレン粒子、又はユーロピウムナノ粒子である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
ステップ(2)を行なわず、且つステップ(4)を、ELISA又は免疫RCAにより遂行する、請求項31に記載の方法。
【請求項71】
ステップ(2)を行なわず、且つステップ(4)を、質量分析(MALDI−TOF)、SWS若しくはSRVDバイオセンサーを利用する熱量測定共鳴反射、表面プラズモン共鳴(SPR)、干渉法、重量法、エバネセント波装置、共鳴光散乱反射率測定、蛍光ポリマースーパークエンチングベースのバイオアッセイ、又はナノワイヤー又はナノチューブを含むナノセンサーのアレイにより遂行する、請求項31に記載の方法。
【請求項72】
前記の少なくとも一つの捕捉剤の各々に結合したURSの量を定量することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項73】
前記の捕捉剤を、病気、生理的状態、又は種を示す、前記のタンパク質試料中のタンパク質のパターンを検出するように選択する、請求項31に記載の方法。
【請求項74】
前記の試料タンパク質を、該試料内のタンパク質のマスキングを阻止する予め決めたプロトコールで処理し、それで、該タンパク質の断片化又は変性に際して、少なくとも一つのURSが生成され、その濃度が、該試料中の該タンパク質の濃度に直接比例する、請求項31に記載の方法。
【請求項75】
前記のタンパク質の前記のマスキングが、タンパク質−タンパク質複合体形成、タンパク質の分解若しくは変性、翻訳後修飾、又は環境的に誘導されたタンパク質構造の変化により引き起こされる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記の捕捉剤の前記のユニーク認識配列への結合が、定性的に検出される、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記の捕捉剤の前記のユニーク認識配列への結合が、定量的に検出される、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
多タンパク質試料中の複数の特異的タンパク質を同時に検出する装置であって、該装置は:
該試料との接触のために、それぞれユニーク認識配列に特異的に結合する捕捉剤の少なくとも部分集合を含む、複数の固定化された捕捉剤、及び
それぞれの該捕捉剤とユニーク認識配列との間の結合を、タンパク質分解及び/又は変性のプロトコールの実施後に試料中で得られる条件下で検出するための手段
を含み、
特定のユニーク認識配列の存在は、それが由来した標的タンパク質の該試料中の存在を明確に示し、
該ユニーク認識配列の各々は、該標的タンパク質を含む該試料について行われる予め決められたタンパク質分解及び/又は変性のプロトコールによって、再現可能に生成される、上記の装置。
【請求項79】
前記の結合事象を検出するための手段が、結合されたユニーク認識配列の量を示すデータを検出し、それにより該試料中の少なくとも2つの標的タンパク質の相対的量の評価を与えるための手段を含む、請求項78に記載の装置。
【請求項80】
パッケージ化されたタンパク質検出用アレイであって、該パッケージ化されたタンパク質検出用アレイは、下記:
(a)試料中の複数の異なるタンパク質を検出するための複数の異なる捕捉剤{該捕捉剤はアドレス可能なアレイとして与えられ、各捕捉剤は、ユニーク認識配列(URS)と特異的に相互作用する};及び
(b)指示書
を含み、該指示書は、下記を指示する当該パッケージ化されたタンパク質検出用アレイ、
アドレス可能なアレイを、アミド主鎖の位置でタンパク質の変性及び/又は開裂により生成されたポリペプチド分析物を含む試料と接触させ、そして
該ポリペプチド分析物と該捕捉剤成分との相互作用を検出する。
【請求項81】
アドレス可能なアレイが、特徴のあるアレイパターンで基材に結合された複数の前記の捕捉剤を含む装置である、請求項80に記載のパッケージ化されたタンパク質検出用アレイ。
【請求項82】
装置が、前記の捕捉剤の前記のポリペプチド分析物との結合の、プラズモン共鳴検出による検出を可能にする層で被覆された、請求項81に記載のパッケージ化されたタンパク質検出用アレイ。
【請求項83】
前記の捕捉剤に結合するURS部分を含む少なくとも一つの参照ペプチドを更に含み、前記の捕捉剤と前記のポリペプチド分析物との前記の結合が、参照ペプチドとの競合結合アッセイにより検出される、請求項80に記載のパッケージ化されたタンパク質検出用アレイ。
【請求項84】
前記のURSの一つを含むポリペプチドと免疫反応性の少なくとも一種の抗体を更に含み、前記の捕捉剤と前記のポリペプチド分析物との前記の結合が、免疫アッセイにより検出される、請求項80に記載のパッケージ化されたタンパク質検出用アレイ。
【請求項85】
装置が、高い屈折率を有する材料、二次元格子を支持する基材層、及び基材層の反対側の該格子表面上に別個のアドレス可能な位置に固定化された前記の捕捉剤よりなる格子を含み、それで、該装置が照らされた場合に、反射放射に基づく、ポリペプチド分析物と捕捉剤との結合に依存する仕方での共鳴格子効果が生じる、請求項81に記載のパッケージ化されたタンパク質検出用アレイ。
【請求項86】
アドレス可能なアレイが、ビーズの集合であり、その各々が、捕捉剤の別個の種及びビーズを同定する少なくとも一つの標識を含む、請求項80に記載のパッケージ化されたタンパク質検出用アレイ。
【請求項87】
複数の異なる捕捉剤が、前記のユニーク認識配列(URS)の未修飾形態と翻訳後修飾形態とを識別して、前記の試料中の翻訳後修飾形態のタンパク質を明確に同定する、請求項80に記載のパッケージ化されたタンパク質検出用アレイ。
【請求項88】
前記の捕捉剤が、アセチル化、アミド化、脱アミド化、プレニル化、ホルミル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、リン酸化、ユビキチン化、リボシル化及び硫酸化よりなる群から選択するタンパク質の翻訳後修飾を識別する、請求項87に記載のパッケージ化されたタンパク質検出用アレイ。
【請求項89】
タンパク質検出用アレイを提供する事業方法であって、下記を含む当該方法:
(i)少なくとも一種の予め決めたタンパク質の各々についての少なくとも一つのユニーク認識配列(URS)を同定し;
(ii)(i)で同定された該URSの各々についての少なくとも一つの捕捉剤を生成し、該捕捉剤の各々は、該捕捉剤が生成された該URSの一つに特異的に結合し;
(iii)(ii)で生成した捕捉剤のアレイを作成し、該捕捉剤の各々は、該固体支持体の異なる別個の領域又はアドレスに結合し;
(iv)(iv)の該捕捉剤のアレイを、診断及び/又は研究実験における利用のためにパッケージ化する。
【請求項90】
前記の捕捉剤のアレイの市場開発を更に含む、請求項89に記載の事業方法。
【請求項91】
前記の捕捉剤のアレイの分配を更に含む、請求項89に記載の事業方法。
【請求項92】
検出用アッセイを作成して販売するシステムであって、下記を含む当該システム:
複数の捕捉剤検出アッセイの少なくとも一つを注文するためのコンピューターベースの顧客注文コンポーネント;
該捕捉剤検出アッセイを造るための検出アッセイ生成コンポーネント;
該捕捉剤検出アッセイを輸送するための輸送コンポーネント;及び
顧客に、該捕捉剤検出アッセイについての請求書を送付するための請求書送付コンポーネント。
【請求項93】
複数の捕捉剤を含む組成物であって、該複数の捕捉剤が、集合的に、一の生物のプロテオームの少なくとも25%と特異的に相互作用することができ、該捕捉剤の各々が、該プロテオームのタンパク質中の唯一つのユニーク認識配列を認識して該配列と相互作用することができる当該組成物。
【請求項94】
前記の捕捉剤を、ヌクレオチド;核酸;PNA(ペプチド核酸);タンパク質;ペプチド;炭水化物;人工ポリマー;及び小型有機分子よりなる群から選択する、請求項93に記載の組成物。
【請求項95】
前記の捕捉剤が、抗体、又はその抗原結合性断片である、請求項94に記載の組成物。
【請求項96】
前記の捕捉剤が、完全長抗体であり、又は、Fab断片、F(ab')2断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、単離された相補性決定領域(CDR)、一本鎖抗体(scFv)、又はこれらの誘導体から選択する機能性抗体断片である、請求項95に記載の組成物。
【請求項97】
前記の捕捉剤の各々が、一本鎖抗体である、請求項95に記載の組成物。
【請求項98】
前記の捕捉剤が、アプタマーである、請求項94に記載の組成物。
【請求項99】
前記の捕捉剤が、足場付きペプチドである、請求項94に記載の組成物。
【請求項100】
前記の捕捉剤が、小型有機分子である、請求項94に記載の組成物。
【請求項101】
前記の生物が、ヒトである、請求項93に記載の組成物。
【請求項102】
前記の生物が、細菌生物、ウイルス性生物又は植物である、請求項93に記載の組成物。
【請求項103】
試料中の複数のタンパク質の存在を同時に検出するための装置であって、該装置は、下記:
(i)複数の捕捉剤が結合された固体支持体;及び
(ii)該捕捉剤と対応するユニーク認識配列との相互作用を検出するための手段
を含み、該捕捉剤の各々は、タンパク質中のユニーク認識配列(URS)を特異的に認識して該配列と相互作用することができる。
【請求項104】
前記の捕捉剤と対応するユニーク認識配列との相互作用を検出するための手段が、前記の試料中の前記の複数のタンパク質の量を定量するための手段を含む、請求項103に記載の装置。
【請求項105】
多タンパク質試料中の複数の特異的タンパク質の存在を同時に検出するための装置であって、該装置は、下記:
(a)該試料との接触のための複数の固定化された捕捉剤、及び
(b)それぞれの該捕捉剤とユニーク認識配列との結合事象を検出する手段
を含み、該捕捉剤は、少なくともそれぞれユニーク認識配列と特異的に結合する薬剤の部分集合を含み、各該配列の存在が、それが由来した標的タンパク質の該試料中の存在を明確に示し、各該配列が、該標的タンパク質を含む該試料につき実施される予め決めたタンパク質分解プロトコールによって再現可能に生成される、当該装置。
【請求項106】
前記の結合事象を検出するための手段が、結合されたユニーク認識配列の量を示すデータを検出する手段を含み、それにより、前記の試料中の少なくとも2つの標的タンパク質の相対的量の評価を可能にする、請求項105に記載の装置。
【請求項107】
捕捉剤のアレイを製造する方法であって、該方法は、下記:
(a)複数の単離されたユニーク認識配列(URS)を含み、該複数のURSは、一の生物のプロテオームの少なくとも50%を構成するタンパク質に由来し;
(b)該複数のURSの1つに、各々特異的に結合することのできる複数の捕捉剤を生成させ;そして
(c)該複数の捕捉剤を、複数の別個の領域を有する支持体に結合させる
ことを含み、該捕捉剤の各々が、異なる別個の領域に結合し、それにより捕捉剤のアレイが製造される当該方法。
【請求項108】
前記の捕捉剤の各々が、重複しないURSを特異的に認識して結合する、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
研究及び開発における市場開発のための捕捉剤のアレイを生成する事業方法であって、下記を含む当該方法:
(a)少なくとも一種の予め決めたタンパク質の各々の少なくとも一つのユニーク認識配列(URS)を同定し;
(b)(1)で同定された該URSの各々に対する少なくとも一種の捕捉剤を生成し、該捕捉剤の各々は、該捕捉剤が生成された該URSの一つと特異的に結合し;
(c)(2)で生成された捕捉剤のアレイを固体支持体上に作成し、該捕捉剤の各々は、該固体支持体の異なる個別の領域に結合され;
(d)該(3)の捕捉剤のアレイを、商業及び/又は学術的研究室での診断及び/又は研究用にパッケージ化する。
【請求項110】
該(c)の捕捉剤のアレイの又は該(d)の捕捉剤のパッケージ化アレイの、潜在的顧客及び/又は配給業者への市場開発を更に含む、請求項109に記載の事業方法。
【請求項111】
該(c)の捕捉剤のアレイの又は該(d)の捕捉剤のパッケージ化アレイの、顧客及び/又は配給業者への分配を更に含む、請求項109に記載の事業方法。
【請求項112】
研究及び化衣鉢における市場開発のために捕捉剤のアレイを生成する事業方法であって、下記を含む当該方法:
(a)少なくとも一種の予め決めたタンパク質の各々の少なくとも一つのユニーク認識配列(URS)を同定し;
(b)第三者に該一種以上のユニーク認識配列の製造又は使用を許諾する。
【請求項113】
生物学的試料中の様々な形態の翻訳後修飾されたタンパク質を定量する方法であって、下記を含む当該方法:
多くの特徴を有するアドレス可能なアレイを用意し、各特長は、独立に、未修飾又は修飾された状態のタンパク質の検出のための捕捉剤を含み、これらの捕捉剤の各々は、ユニーク認識配列(URS)と選択的に相互作用し、そして各特長は、試験試料のタンパク質に存在する特定の修飾された及び未修飾形態の該URSに識別して結合することを与え;
このアレイを、試験試料由来のタンパク質の変性及び/又は開裂により生成された可溶性ポリペプチド分析物の溶液と接触させ、該可溶性ポリペプチド分析物は、翻訳後修飾を保存する条件下で生成され;そして
該ポリペプチド分析物と該捕捉剤の相互作用に由来する試料中の翻訳後修飾されたタンパク質の正体及び量を測定する。
【請求項114】
前記の捕捉剤が、アセチル化、アミド化、脱アミド化、プレニル化、ホルミル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、リン酸化、ユビキチン化、リボシル化及び硫酸化よりなる群から選択する参照タンパク質の翻訳後修飾と特異的に相互作用して識別する、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
パッケージ化されたタンパク質検出用アレイであって、該パッケージ化されたタンパク質検出用アレイは、下記
(a)複数の特徴を有するアドレス可能なアレイ
(b)指示書
を含み、各特長は、独立に、分析物タンパク質のユニーク認識配列(URS)と分析物タンパク質がタンパク質分解及び/又は変性により生成される可溶性タンパク質である条件下で選択的に相互作用する別個の種類の捕捉剤を含み、該アレイの該特徴はあるパターンで配置され又は捕捉剤との相互作用の正体を与えるための標識を伴って配置され(確認できる);
該指示書は、下記を指示する当該パッケージ化されたタンパク質検出用アレイ
アドレス可能なアレイを、アミド主鎖位置でのタンパク質の変性及び/又は開裂により生成されるポリペプチド分析物を含む試料と接触させ、
該ポリペプチド分析物と該捕捉剤成分との相互作用を検出し;
そしてポリペプチド分析物の、又はそれらが由来したネイティブなタンパク質の正体を捕捉剤成分との相互作用に基づいて測定する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−511819(P2006−511819A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570352(P2004−570352)
【出願日】平成15年5月12日(2003.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/014846
【国際公開番号】WO2004/046164
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(504416585)イピトミ バイオシステムズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】