説明

ヨウ素化アミノアリール化合物の調製プロセス

本発明は、超微粉アミノアリール化合物をヨウ素化試薬と反応させる、ヨウ化アミノアリールの調製プロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低減粒径のアリールアミンをヨウ素化剤と反応させる、ヨウ素化アリールアミンの高収率生産プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素化アミノアリール化合物は、製薬分野を含む様々な分野の場において有用な広範な物質の合成中間体として相当な価値がある。例えば、2−ヨードアニリンは、2,3−二置換インドールを含む多数のインドールの合成において有用な公知前駆体であり、潜在的偏頭痛薬としての有用性を有すると報告されているものもある。Larock, R.C., Yum, E. K., Refvik, M.D., J. Org. Chem., 1998, 63, 7652およびそこに引用されている参考文献。アミノアリール化合物をヨウ素化するための多数の方法が、文献に報告されているが、それらは、低から中等度の収率をもたらすか、別調製が必要な高価な試薬の使用を必要とする。例えば、図式Iに示す4−クロロアニリンの一ヨウ素化は、文献に記載されているが、重炭酸ナトリウム水溶液への分子ヨウ素の添加についての最も一般的に報告されている方法、Xiao, W.; Alper, H. J. Org. Chem. 1999,64, 9646-9652; Callaghan, P. D.; Gibson, M. S.; J. Chem. Soc. (C), 1970, 2106-2111, or calcium carbonate, Dains, F. B.; Vaughn, T.H.; Janney, W. M., J. Am. Chem. Soc., 1918, 40, 932; Breukink, K.W.; Krol, L. H.; Verkade, P. E.; Wepster, B. M., Rec. Trav Chim. Pay-Bas, 1957, 76, 401; Rosowsky, A. ; Marini, J. L.; Nadel, M. E.; Modesi, E. J. J. Med. Chem., 1970, 13, 882、は、結果として、53%から69%の中等度の報告収率しかもたらさない。特別に開発された試薬、例えば、ジクロロヨウ素酸ベンジルトリメチルアンモニウム(BnNMe3ICl2、86%)、Kajigaeshi, S. , Kakinami, T. ; Yamasaki, H. ; Fujisaki, S.; Okamoto, T. Bull. Chem. Soc. Japan 1988,61, 600-602およびテトラフルオロホウ酸ビス(ピリジン)ヨードニウム(I)(Ipy2BF4、99%)。Ezquerra, J. ; Concepcion, L. ; Barluenga, J. ; Perez, M. J. Org. Chem. 1996, 61, 5804-5812、を用いて、より高い収率が達成された。
【化4】

図式I
4−クロロ−2−ヨードアニリンにするための4−クロロアニリンのヨウ素化

従って、4−クロロ−2−ヨードアニリンなどのヨウ素化アリールアミンへの改善された合成経路が必要である。
【発明の開示】
【0003】
一部の実施形態において、本発明は、式I:
【化5】

(式中、
Arは、ハロゲン、C16アルキル、CN、NO2、CHO、COC16アルキル、CO2H、CO216アルキル、C16アルコキシ、フェニルおよびC16チオアルキルから成る群より独立して選択される4個以下の置換基を場合によっては含有する一、二または三環式アリールまたはヘテロアリール環構造であり、この場合のフェニルは、C13アルキル、ハロゲン、C13アルコキシ、CN、NO2、CHOおよびフェニルから独立して選択される1から3個の置換基で場合によっては置換されていてもよく;
6およびR7は、各々、独立して、H、C16アルキルおよび窒素保護基から成る群より選択される)
の化合物を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、約100μmまたはそれ以下の平均粒径を有する式IIのアミノアリール化合物:
【化6】

とヨウ素化剤を反応させる段階を含む。
【0004】
一部の好ましい実施形態において、前記式IIの化合物は、式III:
【化7】

(式中、
5は、ハロゲン、C16アルキル、CN、NO2、CHO、COC16アルキル、CO2H、CO216アルキル、C16アルコキシ、フェニルおよびC16チオアルキルから成る群より選択され、この場合のフェニルは、C13アルキル、ハロゲン、C13アルコキシ、CN、NO2、CHOおよびフェニルから成る群より選択される1から3個の置換基で場合によっては置換されていてもよく;ならびに
1、R2、R3およびR4は、水素、ハロゲン、C16アルキル、CN、NO2、CHO、COC16アルキル、CO2H、CO216アルキル、C16アルコキシ、C16チオアルキルおよびフェニルから成る群より、各々、独立して選択され、この場合のフェニルは、C13アルキル、ハロゲン、C13アルコキシ、CN、NO2、CHOおよびフェニルから成る群より選択される1から3個の置換基で場合によっては置換されていてもよいが、但し、
1およびR3の少なくとも一方は、Hであることを条件とする)
のアニリンである。
【0005】
一部の実施形態において、R5は、ハロゲンまたはC16アルキル、好ましくはハロゲンであり、ならびにR1、R2、R3、R4、R6およびR7は、各々、水素である。
【0006】
一部の実施形態において、式IIの化合物は、4−クロロアニリンであり、4−クロロアニリンとヨウ素化剤の反応は、2−ヨード−4−クロロアニリンを形成するために有効な条件下で行われる。
【0007】
上記の一部の実施形態において、式IIの化合物は、約80μm未満の平均粒径、または60μm未満の平均粒径、または約50μmもしくはそれ以下の平均粒径、または約40μmもしくはそれ以下の平均粒径を有する。典型的な下限は、約30μmまたはそれ以下、例えば10μmである。一部の実施形態において、式IIの化合物は、約30μmと約60μmの間の平均粒径、または約40μmと約50μmの間の平均粒径を有する。
【0008】
一部の実施形態において、ヨウ素化剤は、分子ヨウ素である。さらなる実施形態において、式IIのアミノアリール化合物とヨウ素化剤の反応は、I族またはII族金属ヨウ化物、好ましくはヨウ化カリウムの存在下で行われる。
【0009】
一部の実施形態において、式IIのアミノアリール化合物とヨウ素化剤の反応は、水溶液、好ましくは弱塩基で緩衝された、好ましくはNaHCO3で緩衝された水溶液中で行われる。
【0010】
一部の実施形態において、式IIのアミノアリール化合物とヨウ素化剤の反応は、分子ヨウ素またはI族もしくはII族金属ヨウ化物、あるいは分子ヨウ素とI族またはII族金属ヨウ化物の両方を含む水溶液中で行われる。好ましくは、この金属ヨウ化物は、ヨウ化カリウムである。好ましくは、この水溶液は、弱塩基、好ましくはNaHCO3で緩衝されている。
【0011】
一部の実施形態において、ヨウ化カリウム、分子ヨウ素、または両方が、式IIのアミノアリール、NaHCO3および水の混合物に添加される。さらなる実施形態において、ヨウ化カリウムおよび分子ヨウ素は、式IIのアミノアリール、NaHCO3および水の混合物に水溶液として添加される。
【0012】
一部の実施形態において、分子ヨウ素は、式IIのアミノアリール化合物に対して約1から約1.5当量の量で利用される。さらなる実施形態において、本プロセスは、ヨウ素付加後、且つ、生成物単離前の混合物に無機還元剤を添加する段階をさらに含む。好ましくは、この無機還元剤は、IもしくはII族チオ硫酸塩、IもしくはII族金属亜硫酸塩、またはIもしくはII族金属重亜流酸塩、好ましくはチオ硫酸ナトリウムである。
【0013】
一部の実施形態において、式Iの化合物は、濾過される。さらなる実施形態において、その濾過された式Iの化合物は、溶媒、好ましくは水で洗浄される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ヨウ素化アミノアリール化合物の高効率的生産方法を提供する。本明細書に記載するプロセスは、ヨウ素化アミノアリール化合物を調製するために有効なヨウ素化基質として超微粉アミノアリール化合物を利用する。本明細書で用いる場合の用語「超微粉(砕された)」は、1mm未満、好ましくは約100μm未満、さらに好ましくは約80μm未満、さらに好ましくは約60μm未満、さらに好ましくは約50μmもしくはそれ以下、または約40μmもしくはそれ以下の平均粒径を有するアミノアリール化合物の使用を指す。一部の好ましい実施形態において、アミノアリール化合物は、約30μmと約60μmの間、または約40μmと約50μmの間の平均粒径を有する。
【0015】
そうした超微分アミノアリール化合物は、より高価な試薬を使用せずに高純度および高収率の生成物を生じさせる点でヨウ素化反応に有意な利点をもたらすことが、本発明に従って判明した。
【0016】
アミノアリール誘導体の超微粉化は、ミリング(ボールミル粉砕、摩擦摩鉱、およびこれらのプロセスの変形)、マイクロフルイダイゼーション、噴霧乾燥、または押出しおよびその後の超臨界流体への暴露を含む(しかし、これらに限定されない)当業者には周知の様々な物理的技法により達成することができる。本明細書で用いる場合、用語「平均粒径」は、当該技術分野において公知の標準的な技法のいずれかにより決定されるような、アミノアリール出発原料の粒子の平均サイズを意味する。一部の好ましい実施形態において、粒径は、顕微鏡観察、篩分析により、または標準的な計測装置、例えば、限定ではないが、モルヴァン・インストルメンツ(Malvern Instruments)(マサチューセッツ州、サウスバラ(Southborough, MA))から入手できるマスターサイザーSパーティクルサイズアナライザー(Mastersizer S Particle Size Analyzer)を使用して光散乱により決定される。
【0017】
本明細書に記載するヨウ素化反応は、アリール基に直接連結されたアミン官能基を有するアリール基質を使用して、好ましくは行われる。当業者には理解されるであろうが、ヨウ素化の位置化学および化学量論は、置換に利用できる位置、ヨウ素化される特定のアリール環、他の活性化/非活性化基の存在、溶媒、反応時間および温度、使用されるヨウ素化当量数などを含む幾つかの因子によって決定される。全体的な反応を下の図式IIに示す。
【化8】

図式II
アミノアリール化合物とヨウ素化剤の反応
【0018】
本明細書で用いる場合、単独でまたは他の用語と組み合わせて用いる用語「アリール」は、別様に述べない限り、14以下の炭素原子、例えば6〜14の炭素原子の芳香族炭化水素と定義し、これは、単一の環(単環式)であってもよいし、または共に縮合しているか、二重結合で連結されている多数の環(二環式、三環以下)であってもよい。アリール部分の例としては、化学基、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ビフェニル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、インダニル、ビフェニレニル、アセナフテニル、アセナフチレニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、アリール部分は、ハロゲン、C16アルキル、CN、NO2、CHO、COC16アルキル、CO2H、CO216アルキル、C16アルコキシ、C16チオアルキル、ならびにC13アルキル、ハロゲン、C13アルコキシ、CN、NO2、CHOおよび非置換フェニルから選択される1から3の置換基で場合によっては置換されているフェニル、から成る群より選択される1から4の置換基で、場合によっては置換されていてもよい。
【0019】
本明細書で用いる場合、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの炭素(「ヘテロ」)環原子を含有する、上で定義したようなアリール基、すなわち、14以下の環原子、例えば5〜14の環原子のアリール基を意味する。好ましくは、ヘテロアリール基は、O、NおよびSの1つまたはそれ以上から好ましくは選択されるような1から4のヘテロ原子を含有する。
【0020】
本発明の方法に従って超微粉アミノアリール化合物を多数の異なるヨウ素化試薬と反応させて、所望の結果を達成することができる。一般に、ヨウ素化試薬は、ヨウ素原子を標的基質に供与することができる試薬である。有用なヨウ素化試薬または手順としては、酸化剤、金属塩もしくはアルミナの付加を伴うもしくは伴わない分子ヨウ素;金属ヨウ化物塩と共に酸化剤;ヨード水銀化;電気化学的ヨウ素化;ヨードアミド;ヨードニウム塩またはトランスヨウ素化手順が挙げられる。一部の好ましい実施形態では、超微粉アミノアリール化合物を分子ヨウ素と反応させて、ヨウ素化アミノアリール化合物を形成する。一部のそうした実施形態において、超微粉アミノアリール化合物は、I族またはII族金属ヨウ化物塩、例えば、LiI、NaI、KI、CaI2などの存在下で、分子ヨウ素と反応する。一部の好ましい実施形態において、金属ヨウ化物塩は、KIである。
【0021】
アミノアリール化合物とヨウ素化試薬の間の反応は、当該技術分野では公知の様々なプロトコルによって、例えば、ヨウ素化試薬を適切な溶媒中のアミノアリール化合物の混合物に導入することによって、またはアミノアリール化合物をそうした溶媒中のヨウ素化試薬に添加することによって、行うことができる。
【0022】
アミノアリール化合物またはヨウ素化試薬がその溶媒に完全に可溶性である必要はない。従って、ある実施形態では、アミノアリール化合物が、溶媒への限定溶解度を有するであろうし、他の実施形態では、ヨウ素化試薬が、反応溶媒への限定溶解度を有するであろう。
【0023】
アミノアリール化合物とヨウ素化試薬を反応させるために使用される溶媒は、単一の溶媒から成ってもよいし、または2つもしくはそれ以上の溶媒の混合物であってもよい。反応混合物が、2つまたはそれ以上の溶媒を含む場合、その混合物は、均質であってもよいし、または不均質であってもよい。
【0024】
本明細書に記載するプロセスの反応は、有機合成の技術分野の技術者が容易に選択することができる、適する溶媒中で行うことができる。適する溶媒としては、有機溶媒、水性溶媒、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、適する溶媒は、溶媒の凍結温度から溶媒の沸騰温度までの任意の適する温度であり得る反応が行われる温度で、その反応の出発原料(反応体)、中間体および/または生成物と実質的非反応性である。適する有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トルエン、メシチレン、クロロベンゼン、ポリクロロベンゼン、ブロモベンゼンなどを含む炭化水素およびハロ炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、s−ブタノールなどを含むアルコール;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどを含むアミド;アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノンなどを含むケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ギ酸メチル、ギ酸エチルなどを含むエステル;ギ酸、酢酸、プロピオン酸などを含むカルボン酸;ならびにジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アニソールなどを含むエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。水性溶媒としては、水、または水に有機溶媒を溶解したものが挙げられる。
【0025】
本明細書で用いる場合、用語「反応させる(こと)」または「反応」は、指定の化学反応体を引き合わせて化学変換を引き起こし、その系に最初に導入されたものとは異なる化合物を生じさせることを指す。
【0026】
一部の実施形態において、生成物単離前、還元剤を反応混合物に添加して、一切の残存分子ヨウ素、またはヨウ素原子を転移させることができる一切の他の供給源をクエンチングすることができる。使用される特定の還元試薬が、使用される特定のヨウ素化試薬、反応および生成物単離に使用される溶媒、ならびに単離すべき反応生成物に依存するであろうということは、当業者には理解される。好ましい還元剤としては、I族またはII族金属亜流酸塩、重亜流酸塩およびチオ硫酸塩などの試薬を含有する無機硫黄が挙げられる。一部の好ましい実施形態において、還元剤は、チオ硫酸ナトリウムおよび/またはSO2(気体)である。
【0027】
超微粉アミノアリール化合物とヨウ素化試薬の間の反応が、そのヨウ素化試薬の素性に依存して、ヨウ化水素などの高酸性副生成物を発生させ得ることは、当業者には理解されるだろう。場合によっては、そうした副生成物が、出発原料、反応生成物または両方と反応性であり得る、ならびに所望の生成物の低減収率を生じさせ得る可能性がある。従って、任意の強酸性反応副生成物、例えばヨウ化水素を緩衝するために弱塩基を含めることが時として望ましい。好ましい塩基としては、弱有機塩基、例えば、IまたはII炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩などが挙げられる。一部の好ましい弱塩基としては、NaHCO3およびCaCO3が挙げられる。
【0028】
本明細書で用いる場合、用語「アルキル」または「アルキレン」は、直鎖または分枝鎖である飽和炭化水素基を指すものとする。アルキル基の例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n−プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル)、ペンチル(例えば、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが挙げられる。一部の好ましい実施形態において、アルキル基は、1から約20、2から約20、1から約10、1から約8、1から約6、1から約4、または1から約3の炭素原子を含有することができる。
【0029】
本明細書で用いる場合、「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。
【0030】
本明細書で用いる場合、「アルコキシ」は、−O−アルキル基を指す。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば、n−プロポキシおよびイソプロポキシ)、t−ブトキシなどが挙げられる。
【0031】
一部の実施形態において、式Iの化合物は、R6またはR7位に窒素保護基を含有することができる。代表的な保護基は、例えば、Greene, T. W., and Wuts, P. G.M, Protective Groups In Organic Synthesis, 3rd ed. , John Wiley & Sons, NY, 1999(これは、本明細書に参照として組み込まれている)において見出すことができる。
【0032】
本明細書の様々な場所で、本発明の化合物の置換基を群または範囲で開示している。これは、具体的には、本発明が、そうした群および範囲の構成員の各々およびあらゆる個々の副次的組み合わせを包含とことを意図している。例えば、具体的には、用語「C16アルキル」は、メチル、エチル、C3アルキル、C4アルキル、C5アルキルおよびC6アルキルを個々に開示するものと解釈する。
【0033】
本発明の反応体または生成物は、不斉原子を含有することがあり、ならびに本化合物の一部は、1つまたはそれ以上の不斉元素または不斉中心を含有することがあり、従って、光学異性体(エナンチオマー)およびジアステレオマーを生じることがある。本発明は、そうした光学異性体(エナンチオマー)およびジアステレオマー(幾何異性体);ならびにラセミおよび分割されたエナンチオマー的に純粋なRおよびS立体異性体;ならびにRおよびS立体異性体の他の混合物、ならび薬学的に許容される塩を含むそれらの塩を含む。光学異性体は、ジアステレオマー塩の形成、動的分割および不斉合成を含む(しかし、これらに限定されない)当業者には公知の標準的な手順によって、純粋な形態で得ることができる。カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを含む(しかし、これらに限定されない)当業者には公知の標準的な分離手順によって、純粋な形態で得ることができる、すべての可能な位置異性体およびそれらの混合物を本発明が包含することも理解される。
【0034】
本明細書に記載するプロセスは、当該技術分野では公知の任意の適する方法に従ってモニターすることができる。例えば、生成物の形成は、分光学的手段により、例えば、核磁気共鳴分光分析(例えば、1Hもしくは13C)、赤外分光分析、吸光分光分析(例えば、UV−可視)もしくは質量分析により;またはクロマトグラフィー、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もしくは薄層クロマトグラフィーにより、モニターすることができる。
【0035】
本明細書に記載するプロセスの反応は、当業者が容易に決定することができる適切な温度で行うことができる。反応温度は、例えば、試薬および存在する場合には溶媒の融点および沸点;反応の熱力学(例えば、激しい発熱を伴う反応は、典型的には低減温度で行われる);ならびに反応速度(例えば、高活性化エネルギー障壁は、典型的には高温を必要とする)に依存するであろう。「高温」は、室温(約20℃)より高い温度を指し、「低減温度」は、室温より低い温度を指す。
【0036】
本明細書に記載のプロセスの反応は、空気中または不活性雰囲気化で行うことができる。典型的には、空気と実質的に反応する試薬または生成物を含む反応は、当業者には周知である空気感受性合成技術を使用して行うことができる。
【0037】
理解しやすいように別個の実施形態に関連して記載する発明の一定の特徴を、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることは、理解される。逆に、簡略のために単一の実施形態に関連して説明する様々な特徴を別々にまたは任意の適する副次的組み合わせで提供することもできる。
【0038】
本発明のプロセスは、任意の適便な規模、例えば、約0.01mg、0.10mg、1mg、10mg、100mg、1g、10g、100g、1kg、10kgまたはそれ以上よりも大きい規模での式Iの化合物の調製に適する。本プロセスは、ヨウ素化アミノ芳香族化合物の大規模(例えば、約十グラムより多い)調製に特に有利である。
【0039】
本発明を具体的な実施例によりさらに詳細に説明しよう。以下の実施例は、説明のために提供するものであり、如何様にも本発明を制限するためのものではない。本質的に同じ結果を生じるように変化または変更することができる様々な重要でないパラメータは、当業者により容易に理解されることだろう。
【実施例1】
【0040】
4−クロロ−2−ヨードアニリンの調製
【化9】

【0041】
ヨウ化カリウム(50g、0.301mol)、ヨウ素(76g、0.299mol)および水(100mL)の水溶液を、4−クロロアニリン(35g、0.276mol、50um 平均粒径)、炭酸水素ナトリウム(37g、0.440mol)および水(210mL)の攪拌懸濁液に、45分かけて添加する。その混合物を3〜5時間攪拌する。濾過によって固体を回収し、水で洗浄し、その後、乾燥させて、4−クロロ−2−ヨードアニリン(69.6g、100%収率、98.5%純度)を生じさせる。1H NMR(CDCl3): δ7.56(d,1H,J=2.4Hz)、7.12(dd,1H,J=2.4Hz,8.6 Hz)、6.75(d,1H,J=8.6Hz)、5.37(br s,2H)。
【0042】
当業者には理解されるように、本発明の精神から逸脱することなく本発明の好ましい実施形態に変化および変更を加えることができる。すべてのそうした変形は、本発明の範囲内に包含されると解釈する。
【0043】
本出願は、2004年3月26日出願の米国特許仮出願番号60/557,014(その全文が、本明細書に参照により組み込まれている)の優先権の恩典を主張するものである。本特許書類において言及する特許、出願、および本を含む印刷刊行物は、それらの全文が、本書に参照により組み込まれていると解釈する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
Arは、ハロゲン、C16アルキル、CN、NO2、CHO、COC16アルキル、CO2H、CO216アルキル、C16アルコキシ、フェニルおよびC16チオアルキルから成る群より独立して選択される4個以下の置換基を場合によっては含有する一、二または三環式アリールまたはヘテロアリール環構造であり、この場合のフェニルは、C13アルキル、ハロゲン、C13アルコキシ、CN、NO2、CHOおよびフェニルから独立して選択される1から3個の置換基で場合によっては置換されていてもよく;
6およびR7は、各々、独立して、H、C16アルキルおよび窒素保護基から成る群より選択される)
の化合物を調製するためのプロセスであって、約100μmまたはそれ以下の平均粒径を有する式IIのアミノアリール化合物:
【化2】

(式中のAr、R6およびR7は、上で定義したとおりである)
とヨウ素化剤を反応させる段階を含むプロセス。
【請求項2】
式IIのアミノアリール化合物が、式III:
【化3】

(式中、
5は、ハロゲン、C16アルキル、CN、NO2、CHO、COC16アルキル、CO2H、CO216アルキル、C16アルコキシ、フェニルおよびC16チオアルキルから成る群より選択され、この場合のフェニルは、C13アルキル、ハロゲン、C13アルコキシ、CN、NO2、CHOおよびフェニルから成る群より選択される1から3個の置換基で場合によっては置換されていてもよく;ならびに
1、R2、R3およびR4は、水素、ハロゲン、C16アルキル、CN、NO2、CHO、COC16アルキル、CO2H、CO216アルキル、C16アルコキシ、C16チオアルキルおよびフェニルから成る群より、各々、独立して選択され、この場合のフェニルは、C13アルキル、ハロゲン、C13アルコキシ、CN、NO2、CHOおよびフェニルから成る群より選択される1から3個の置換基で場合によっては置換されていてもよいが、但し、
1およびR3の少なくとも一方は、Hであることを条件とする)
のアニリンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
5が、ハロゲンまたはC16アルキルであり;ならびにR1、R2、R3、R4、R6およびR7が、各々、水素である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
5が、ハロゲンである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
式IIまたはIIIの化合物が、約80μm未満の平均粒径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
式IIまたはIIIの化合物が、約60μm未満の平均粒径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
式IIまたはIIIの化合物が、約50μmまたはそれ以下の平均粒径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
式IIまたはIIIの化合物が、約40μmまたはそれ以下の平均粒径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
式IIまたはIIIの化合物が、約30μmと約60μmの間の平均粒径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
式IIまたはIIIの化合物が、約40μmと約50μmの間の平均粒径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
式IIまたはIIIのアミノアリール化合物とヨウ素化剤の反応が、水溶液中で行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
式IIまたはIIIのアミノアリール化合物とヨウ素化剤の反応が、I族またはII族金属ヨウ化物の存在下で行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
式IIまたはIIIのアミノアリール化合物とヨウ素化剤の反応が、分子ヨウ素またはI族もしくはII族金属ヨウ化物、あるいは分子ヨウ素とI族またはII族金属ヨウ化物の両方を含む水溶液中で行われる、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
金属ヨウ化物が、ヨウ化カリウムである、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記水溶液が、弱塩基で緩衝されている、請求項11から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記水溶液が、NaHCO3で緩衝されている、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
ヨウ素化剤が、分子ヨウ素である、請求項1から16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
分子ヨウ素が、式IIのアミノアリール化合物に対して約1から約1.5当量の量で利用される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
ヨウ化カリウム、分子ヨウ素または両方が、式IIのアミノアリール化合物、NaHCO3および水の混合物に添加される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項20】
ヨウ化カリウムおよび分子ヨウ素が、式IIのアミノアリール化合物、NaHCO3および水の混合物に水溶液として添加される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項21】
ヨウ素付加後、且つ、生成物単離前の混合物に無機還元剤を添加する段階をさらに含む、請求項17から20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記無機還元剤が、IもしくはII族チオ硫酸塩、IまたはII族金属亜硫酸塩またはIもしくはII族金属重亜硫酸塩である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記無機還元剤が、チオ硫酸ナトリウムである、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
式Iの化合物が、濾過によって単離される、請求項1から23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
濾過された式Iの化合物が、溶媒で洗浄される、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
濾過された式Iの化合物が、水で洗浄される、請求項24に記載のプロセス。
【請求項27】
(a)約100μmまたはそれ以下の平均サイズを有する粒子の形態で4−クロロアニリンを供給する段階;および
(b)2−ヨード−4−クロロアニリンを形成するために有効な条件下で、その4−クロロアニリンをヨウ素化剤と反応させる段階
を含むプロセス。
【請求項28】
前記4−クロロアニリンの粒子が、約60μmまたはそれ以下の平均サイズを有する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記4−クロロアニリンの粒子が、約50μmまたはそれ以下の平均サイズを有する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項30】
前記ヨウ素化剤が、分子ヨウ素である、請求項27から29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記4−クロロアニリンと前記分子ヨウ素の反応が、I族またはII族金属ヨウ化物および弱塩基緩衝液をさらに含む水溶液中で行われる、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記金属ヨウ化物が、ヨウ化カリウムであり、弱塩基緩衝液が、NaHCO3である、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記ヨウ化カリウムおよび分子ヨウ素が、水中の前記4−クロロアニリンとNaHCO3の混合物に添加される、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記ヨウ化カリウムおよび分子ヨウ素が、水中の前記4−クロロアニリンとNaHCO3の混合物に水溶液として添加される、請求項32に記載のプロセス。
【請求項35】
前記分子ヨウ素が、4−クロロアニリンの量に対して約1から約1.5当量の量で利用される、請求項30から34のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項36】
ヨウ素付加後、且つ、生成物単離前の混合物に無機還元剤を添加する段階をさらに含む、請求項30から35のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項37】
前記無機還元剤が、チオ硫酸ナトリウムである、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
2−ヨード−4−クロロアニリンを濾過によって単離する段階をさらに含む、請求項30から37のいずれか一項に記載のプロセス。

【公表番号】特表2007−530572(P2007−530572A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505151(P2007−505151)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/009746
【国際公開番号】WO2005/097727
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】