説明

ヨウ素化フェニル誘導体の連続晶出方法

本発明は、ヨウ素化アリール化合物の精製方法であって、溶媒の少なくとも一部を除去することにより溶媒中の粗生成物を連続的に晶出させることによって精製を実施する方法を記載する。連続晶出プロセスは、1以上の晶出装置内において晶出装置の内容物の沸点で実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コストで効率的かつ安全なやり方での精製を可能にする、ヨウ素化X線造影剤のようなヨウ素化アリール化合物の晶出による精製方法に関する。本発明は、特に工業規模の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の現状では、莫大な数のヨウ素化アリール化合物が知られている。これらのうち、三ヨウ素化フェニル誘導体がX線造影剤として常用されている。フェニル環中において互いにメタの位置に3つのヨウ素原子を含みかつ非ヨウ素置換フェニル炭素の1以上の位置に各種の置換基を含む三ヨウ素化フェニル化合物は、立体配置間の転移に対して立体障害を受けた複数の立体配置で得られることが多い。任意に置換されたアルキレン橋かけ基のような結合基を介して結合された2つのヨードフェニル基を含むいわゆる二量体化合物は、特にバルキーな置換基で束縛されている。
【0003】
一次製造プロセスの最終段階では、ヨードフェニル化合物のようなヨウ素化アリール化合物を含む粗生成物を精製しなければならない。通常の精製方式は晶出による精製である。結晶成長速度を高めるため、晶出は高温で行う必要がある。晶出はまた、高度の過飽和によっても促進される。しかし、高度の過飽和は晶出化合物の純度を制限することがある。晶出プロセスは時間及び設備サイズの点で非常に要求が厳しく、実施するのに数日を要する。晶出段階は工業規模のプロセス中でのネックとなる場合が多い。
【0004】
晶出はバッチプロセスとして実施される。工業規模でのバッチサイズは、通常は数百キロから数トンまでであり、かなりのサイズの晶出設備を要求する。そこで、プロセスを促進するために多くの試みが行われてきた。
【0005】
欧州特許第747344号は、溶液を大気圧下で還流することによるイオパミドールの精製及び結晶化を開示している。
【0006】
国際公開第99/18054号は、高圧下で晶出を行うことにより、例えばトリヨードフェニル基含有化合物を結晶化するためのバッチ法を開示している。
【0007】
バッチ晶出法を使用する場合、溶媒中における生成物の適正な飽和度又は過飽和度を達成するために各種の溶媒系が提唱されてきた。例えば、米国特許第4250113号、欧州特許第747344号、英国特許第2280436号、国際公開第98/08804号、国際公開第99/18054号、国際公開第02/083623号及び国際公開第2005/003080号を参照されたい。
【0008】
実施するのが容易であると共に、消費時間及び高価な設備の必要性に関する要求の厳しくない方法を探求すること以外に、製造プロセスにおける主要な問題は、X線造影剤がイン・ビボ投与(例えば、静脈内投与)用として好適であるために保健機関が規定した純度基準に適合することである。例えば、欧州薬局方は、市販X線造影剤Visipaque(商標)の有効薬剤成分(API)である二量体化合物イオジキサノール(1,3−ビス(アセトアミノ)−N,N’−ビス[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルアミノカルボニル)−2,4,6−トリヨードフェニル]−2−ヒドロキシプロパン)及び市販X線造影剤Omnipaque(商標)の有効薬剤成分(API)である単量体化合物イオヘキソール(5−(アセチル(2,3−ジヒドロキシプロピル)アミノ)−N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨードベンゼン−1,3−ジカルボキサミド)に関して98.0%以上の純度を規定している。
【0009】
このたび意外にも、ヨードフェニル化合物のようなヨウ素化アリール化合物を連続晶出方法によって成功裡に精製できることが見出された。
【特許文献1】欧州特許出願公開第747344号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/18054号明細書
【特許文献3】米国特許第4250113号明細書
【特許文献4】英国特許第2280436号明細書
【特許文献5】国際公開第98/08804号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/083623号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2005/003080号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2006/016815号パンフレット
【発明の開示】
【0010】
一実施形態では、本願は、ヨウ素化アリール化合物の精製方法であって、プロセス中に溶媒の少なくとも一部を除去することで溶媒中の対応する該化合物含有粗生成物を連続的に晶出させることによる精製方法を提供する。詳しくは、イン・ビボで使用するためのX線造影剤中に有効薬剤成分(API)として使用されるもののようなヨードフェニル化合物を連続晶出方法で製造できる。かかる晶出を連続方法として実施することにより、晶出するヨウ素化化合物の純度レベルを維持し、時にはさらに上昇させながら、設備の単位容積及び単位時間当たりの収量が増加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
最も広義には、本発明は、ヨウ素化アリール化合物の精製方法であって、プロセス中に溶媒中の粗生成物から溶媒の少なくとも一部を除去することによって上記化合物を連続的に晶出させることによって精製を実施する方法に関する。
【0012】
溶媒の少なくとも一部を除去することにより、溶媒中における化合物の飽和又は過飽和状態が達成される。これは、溶媒からの所望精製化合物の晶出を容易にする。
【0013】
連続晶出プロセス中に溶媒中の化合物の溶液に貧溶媒又は貧溶媒の混合物を添加することで、化合物の過飽和度をさらに高めることができる。
【0014】
溶媒とは、化合物が一般に十分に可溶である液体又は液体混合物を意味する。他方、貧溶媒とは、化合物がそれほど可溶でなく、好ましくは溶媒に比べて著しく溶解性の低い液体又は液体混合物を意味する。
【0015】
ヨウ素化アリール化合物の晶出で使用するための各種の貧溶媒は、上述のような先行技術において知られている。本発明の精製方法では、プロセス中に貧溶媒の混合物を有利に使用できる。貧溶媒の混合物を使用すれば、晶出させるべき化合物の溶解性及び貧溶媒の沸点に関して所望の性質を有する貧溶媒を生成させることができる。
【0016】
別法として、晶出方法で使用するために単一の貧溶媒を選択することも可能である。単一の貧溶媒が貧溶媒の混合物について述べた基準を満たし得る場合には、この貧溶媒を使用することが通常は好ましい。
【0017】
以後の記載中で、貧溶媒という用語は貧溶媒の混合物又は単一の貧溶媒を意味し、溶媒という用語は単一の溶媒又は溶媒の混合物を意味する。一般に、本文書中では単数形及び複数形は互換的に使用される。
【0018】
本発明では、溶媒は当業技術の現状で知られる任意の方法で除去できる。しかし、連続晶出プロセス中に溶媒を留去することで溶媒を除去するのが好ましい。薄膜蒸発技法も好ましい。溶媒は、不純物を実質的に含まない結晶性化合物を得るために最適の過飽和度がプロセス中に達成されるように除去される。さらに、結晶は容易に濾過可能であると共に、良好な収量で得られることが好ましい。
【0019】
晶出させるべき粗生成物を溶解する共沸混合物を溶媒と共に形成する貧溶媒の使用が有益であり得る。好ましくは、共沸混合物は晶出プロセス中に除去すべき溶媒を高率で含有すべきである。
【0020】
イン・ビボX線造影剤中にAPIとして使用するためのヨウ素化アリール化合物、特にヨウ素化フェニル化合物(単一及び複数の化合物を総称する)は水に可溶であり、X線造影剤はAPIの水溶液として商業的に提供されるのが普通である。この部類の化合物は通常は立体障害を受けた有機化合物であり、かかる化合物が結晶構造によって要求される立体配置を取るためには大きい熱エネルギー入力が必要となる。そのため、晶出装置の内容物の沸点までの高温で作業することで必要な熱エネルギーが供給される。したがって、貧溶媒の沸点及び晶出させるべき粗生成物の溶液と混合された貧溶媒の沸点は適度に低くて、粗生成物のヨウ素化化合物及び他の成分並びに溶媒が安定であるような温度である必要がある。好ましくは、溶媒及び貧溶媒の沸点は周囲圧力下で150℃未満、さらに好ましくは120℃未満(例えば、30〜110℃)にすべきである。晶出は、200℃未満、好ましくは150℃未満、特に120℃未満の温度で行うべきである。晶出は、周囲圧力下又は高圧下(例えば、0.05〜20バールの超過圧力下)で行うべきである。晶出は、本晶出方法で使用される特定の圧力(好ましくは周囲圧力)下における溶液(即ち、実際の晶出装置の内容物)の沸点で行うべきである。
【0021】
貧溶媒は、粗生成物の溶液と完全に混和し得るものにすべきである。溶液状態の粗生成物に貧溶媒を添加した場合、粗生成物の飽和又は過飽和が生じ、沸騰する溶液から化合物が晶出する。
【0022】
粗生成物から化合物を晶出させるための貧溶媒は、通常はアルコール、ケトン、エステル、エーテル及び炭化水素から選択され、特にアルコール、アルコール−エーテル、エーテル及びケトン(例えば、C2−5アルコール)から選択される。好適な貧溶媒の例には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール(イソアミルアルコールを含む)、アセトン、エチルメチルケトン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチレンエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなど、及びこれらの化合物の混合物がある。特に好ましいのは、1−メトキシ−2−プロパノールのようなC〜C10アルキレングリコールのC1〜Cモノアルキルエーテル及び2−プロパノールである。
【0023】
粗生成物は、化合物の一次製造から得られる。一次製造は、アリール基(例えば、フェニル基)をヒドロキシアルキル基及び/又はアシルアミノ基及び/又はアルキルアミノカルボニル基で置換する多段合成操作である。ここで、上記の置換基はさらにヒドロキシ基、アミノ基、エーテル基及び類似の基で任意に置換され、或いはアルキル鎖がオキソ基又はチオ基を含み得る。アリール基はさらにヨウ素原子で置換され、フェニル基の場合には互いにメタの位置にある3つのヨウ素原子で置換されるのが普通である。三ヨウ素化フェニル化合物並びにかかる化合物の二量体及び多量体(特にこれらの非イオン性化合物)は、上述のようにX線造影剤のAPIとして有用である。
【0024】
かかる単量体及び二量体の例は、ジアトリゾエート、イオベンザメート、イオカルメート、イオセタメート、イオダミド、イオジパミド、イオジキサノール、イオヘキソール、イオペントール、イオベルソール、イオパミドール、イオトロラン、ヨードキサメート、イオグリケート、イオグリカメート、イオメプロール、イオパノエート、イオフェニレート、イオプロミド、イオプロネート、イオセレート、イオシミド、イオタスル、イオタラメート、イオトロキセート、イオキサグレート、イオキシタラメート、メトリザミド、メトリゾエート、イオビトリドール、イオキサグル酸、イオシメノール及び当業技術の現状で知られる他の化合物(国際公開第96/09285号及び国際公開第96/09282号から知られる単量体及び二量体を含む)である。
【0025】
上述した単量体及び二量体のいくつかは市販X線造影剤のAPIであり、その例はOmnipaque(商標)のイオヘキソール、Isovue(商標)のイオパミドール、Iomeron(商標)のイオメプロール、Ultravist(商標)のイオプロミド、Isovist(商標)のイオトロラン、Visipaque(商標)のイオジキサノール及びXenetix(商標)のイオビトリドールである。これらの生成物は大量に製造されており、効率的で経済的に実施可能な方法が絶えず探求されている。
【0026】
上述の生成物及びその製造方法は、文献及び特許文書(例えば、米国特許第4364921号、同第4250113号、同第5349085号、同第4001323号、同第4352788号、同第4341756号及び同第5043152号)中において知られている。
【0027】
晶出に先立ち、一次製造からの粗生成物を含む溶液をさらに精製することができる。好ましくは、粗生成物の溶液がある量の塩を含むならば、例えばイオン交換カラム上での処理によって溶液を完全に又は部分的に脱塩することができる。化学合成段階中に使用した溶媒も、必要ならば、本晶出方法を実質的に妨害しない量まで低減させるべきである。溶媒及び溶媒の予想される共沸混合物は、化合物の分解が開始する温度より低いが、晶出プロセスを促進するのに十分なエネルギーを供給するには十分に高い沸点を有するべきである。
【0028】
溶液はまた、例えば減圧下及び/又は共沸蒸留により溶媒の一部を除去して濃縮することもできる。例えば、溶媒としての水の量は粗生成物の5〜100重量%の範囲内で変化し得るが、好ましくは50重量%未満である。
【0029】
上記に説明したようにして任意に前処理した合成段階からの粗生成物は、晶出装置への供給流れとして使用される。晶出ユニットは1以上の晶出タンクを含んでいて、これらのタンクの少なくとも1つは蒸留塔並びに供給流れのための1以上の入口及び生成物流れのための1つの出口を備えている。タンクはさらにヒーター(例えば、温度制御用ジャケット)を備えるべきであり、また混合装置を備えることができる。任意には、タンクはさらに、例えば追加の貧溶媒の供給及び/又は試料抽出のための入口及び出口開口を含んでいる。かかる供給及び抽出は、好ましくは液体をポンプで流入及び流出させることで実施されるが、重力の利用のような他の構成も実施可能である。
【0030】
晶出ユニットはさらに、晶出装置の内容物の加圧を可能にするように装備することもできる。
【0031】
溶液状態の粗生成物の供給を行う晶出装置には、好ましくは晶出させるべき生成物の結晶の適当量を溶媒(例えば、水)及び1種以上の貧溶媒中に懸濁したものが予備装入される。種晶の使用は、初期晶出過程を向上させ、定常条件の確立を促進する。
【0032】
晶出プロセスを開始する場合には、好ましくは上述したように前処理した粗生成物の溶液からなる供給流れを、好ましくは上述したように装備しかつ結晶の懸濁液を予備装入した晶出装置内に装入する。好ましくは蒸留により溶媒を除去することで、溶媒中における化合物の過飽和の発生が制御される。貧溶媒を使用する場合、特に溶媒及び貧溶媒から形成される共沸混合物を留去する場合には、同一の入口又は別の入口を通して貧溶媒が晶出装置に供給される。
【0033】
好ましくは、溶液状態の粗生成物及び貧溶媒(使用する場合)は一定速度で晶出装置に供給される。生成物流れの晶出化合物は、懸濁液として一定速度で抜き取られる。溶液状態の粗生成物の供給速度(F1)は、留去される溶媒の量(F2)及び生成物流れとして抜き取られる化合物の量(F3)に等しい。換言すれば、定常状態ではF1=F2+F3である。貧溶媒をF4の量で使用する場合には、定常状態はF1+F4=F2+F3で特徴づけられる。溶媒及び貧溶媒が共沸混合物を形成する場合、溶媒及び貧溶媒の供給速度及び除去速度は、晶出装置内における化合物の滞留時間を決定する。滞留時間は、晶出化合物の動力学及び所要の生産能力に従って設定できる。各晶出装置における最適滞留時間は、使用する晶出装置の数及び容積に依存し、各々の特定プロセスについて最適化される。
【0034】
供給速度F1及び任意のF4は、供給流れ中における化合物及び貧溶媒の濃度に応じて同一であるか又は相異なることがあり得る。
【0035】
プロセス変数が時間と共に変化しなければ、プロセスは定常状態にあると見なされる。定常状態は、特定の溶媒及び貧溶媒含有量、温度、母液濃度、マグマ密度並びに粒度分布によって特徴づけられる。
【0036】
本晶出方法は、1以上の晶出装置を用いて実施される。各晶出装置は、好ましくは蒸留塔を備えている。晶出装置は通常は直列に連結され、任意には下記に一層詳しく説明されるように生成物流れ及び濾過後の母液又は結晶をある晶出装置から系列中にある1以上の以前の晶出装置へ部分的に再循環させる。溶媒を除去すること、及び任意には釣り合った量の貧溶媒(使用する場合)を晶出装置に添加することにより、第1の晶出装置から以後の晶出装置に向かって総合溶解度が減少する。
【0037】
十分な収量及び純度の化合物はただ1つの晶出装置を用いて得ることもできるが、本方法は2以上の晶出装置を用いて実施することが一般に好ましい。即ち、複数の晶出装置を使用することにより、化合物の総収量が分割され、本方法は一層温和に実施される。これは、晶出化合物の総収量、濾過性及び純度にとって有益である。
【0038】
連続晶出プロセスでは、使用できるいくつかの流れパターン組合せが存在する。例えば、所要の数の晶出装置を直列に使用すること、回収物質の全部又は一部を最終晶出装置又は中間晶出装置から以前の晶出装置に再循環させること、或いはこれらの組合せを使用することができる。
【0039】
例えば、2以上の晶出装置(例えば、3つの晶出装置)を直列に配列することで連続晶出を行うことができる。これらの晶出装置の1以上は、溶媒を任意には共沸混合物として除去するための蒸留塔が備えている。好ましくは結晶を予備装入した第1の晶出装置には、溶液状態の粗生成物及び任意には貧溶媒が装入される。晶出装置内の温度は内容物の沸点に調整され、溶媒(共沸蒸留を行う場合には貧溶媒と混合された溶媒)が留去される。第1の晶出装置からの懸濁液(生成物流れ)は第2の晶出装置に移送され、沸騰状態に保たれる。溶媒含有量は、蒸留による溶媒の除去でさらに減少する。溶媒含有量が減少した場合、さらに多くの化合物が晶出する。任意には、晶出装置の内容物の所要体積を保つため、追加量の貧溶媒又は貧溶媒/溶媒が添加される。懸濁液(生成物流れ)を系列中の次の晶出装置に移送し、第2の晶出装置について記載したように処理し、この操作を十分な物質が晶出するまで続けることができる。最終段階として、温度が晶出装置の内容物の沸点より低い晶出装置に懸濁液を移送することができる。蒸留塔を備える必要がないこのユニットでは、推進力は冷却による溶解度の低下である。最終の結晶性化合物は、濾過及び(必要ならば)洗浄によって最後の晶出装置から単離され、また乾燥して乾燥結晶性化合物として回収することもできる。
【0040】
このような構成では、結晶の濃度はすべての晶出装置で高く、溶媒はプロセスから迅速に除去される。所要の滞留時間は短く、晶出装置のサイズは比較的小さくてよい。しかし、この構成は、最終の結晶性化合物が不純物に富む母液から単離されるので化合物中への不純物の堆積を受けやすい。したがって、この構成は、不純物レベルが比較的低く、及び/又は晶出による精製の選択性が高い場合に最も適している。
【0041】
別の構成は、回収された物質を再循環させるように構成し、系列中の最後の晶出装置でない晶出装置から化合物を生成物流れとして抜き取ることからなる。
【0042】
このような構成は、上記に説明したように配列された複数の晶出装置(例えば、3つの晶出装置)を含んでいる。第1の晶出装置からの流れが抜き取られ、第2及び以後の晶出装置に供給される。すべての晶出装置は任意に蒸留塔を備えており、内容物を沸点に維持するように加熱される。ある晶出装置からの結晶懸濁液の流れ又は濾別された結晶を、直接に或いは溶媒中における粗生成物の供給流れ中に溶解した後に、以前の晶出装置の1つ(例えば、第1の晶出装置)に再循環させる。結晶性化合物はこの晶出装置から抜き取られ、濾過され、洗浄され、所望ならば乾燥される。このような構成は、最終の結晶性化合物の純度が非常に良好であると共に、収量をさらに向上できるという利益を有する。他方、第2及び以後の晶出装置のマグマ密度は低下し、これは長い滞留時間及び晶出装置の大きい容積を要求することがある。しかし、上述の欠点は、ある量の結晶を最後のタンクから第1の晶出装置及び1以上の中間晶出装置に再循環させることで低減できる。
【0043】
さらに別の実施形態では、本方法は連続晶出プロセスとバッチ晶出プロセスとの組合せとして実施することができる。この場合には、主として連続晶出プロセスで化合物を晶出させた後、残りの晶出をバッチ晶出プロセスで行う。初期晶出をバッチ晶出方式で行い、次いで(好ましくは同一の晶出装置内で)連続晶出プロセスとして晶出を続けることも可能である。このような構成の目的は、連続晶出モードへの切換えの前に十分な量の結晶を溶液中に得ることにある。連続晶出プロセスに続いてバッチ晶出装置を設けることもできる。この場合には、バッチ晶出装置から化合物を抜き取り、必要又は所望ならば化合物を洗浄及び乾燥した後に回収する。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明は、1−メトキシ−2−プロパノールを貧溶媒として使用すると共に蒸留塔を備えた単一又は複数の晶出装置を使用して、水及び場合によっては追加の溶媒からイオヘキソール及びイオジキサノールを連続的に晶出させるための方法からなる。本方法は晶出装置の内容物の標準沸点で実施されるか、或いは高圧を使用する場合にはそれより高い温度で実施される。
【0045】
粗イオヘキソール又は粗イオジキサノール生成物1kg当たり約0.1〜0.7Lの水及び粗イオヘキソール生成物1kg当たり1〜4Lの1−メトキシ−2−プロパノール又は粗イオジキサノール生成物1kg当たり1〜4Lの1−メトキシ−2−プロパノールを含む供給流れが、結晶の懸濁液を含む晶出装置に速度F1(単位時間当たりの粗生成物及び溶媒/貧溶媒の量)で連続的に添加される。晶出装置は連続的に加熱される。水/1−メトキシ−2−プロパノール共沸混合物が蒸留塔から速度F2(単位時間当たりの共沸混合物の量)で連続的に留去される。これによって含水量は、通常は粗イオヘキソール生成物1kg当たり0.1L以下及び粗イオジキサノール生成物1kg当たり0.15〜0.25L以下の所望レベルに低下する。溶媒中における結晶性化合物の懸濁液(生成物流れ)は、晶出装置内の体積を一定に保つ速度F3(単位時間当たりの量)でカスケード中の第2の晶出装置に連続的に移送され、或いは濾過ユニットに連続的に移送される。したがって、定常状態ではF1=F2+F3である。体積はまた、晶出プロセス中に1−メトキシ−2−プロパノールを速度F4で添加すること(例えば、連続的に添加すること)によっても調整できる。
【0046】
総合溶解度は、第1の晶出装置からカスケード中の最後の晶出装置に向かって減少する。純度、結晶サイズ及び収量に関して満足すべき結果を得るためには、2以上の晶出装置を用いて連続晶出を行うことにより、各晶出装置内で最適の過飽和度を達成すればよい。
【0047】
純粋な1−メトキシ−2−プロパノールは119℃の沸点を有し、水と共に沸点97.5℃の共沸混合物を形成する。共沸混合物は約49%の水を含んでいる。97.5℃の沸点では、イオヘキソール及びイオジキサノールには、溶液から比較的迅速に晶出するのに十分な熱エネルギーが供給される。
【実施例】
【0048】
以下、非限定的な実施例によって本発明をさらに説明する。すべての%は、特記しない限り重量%である。
【0049】
実施例1
水/1−メトキシ−2−プロパノールからのイオヘキソールの連続晶出
96.7%のイオヘキソールを含む粗生成物を、粗生成物1g当たり0.2mlの水と粗生成物1g当たり1.0mlの1−メトキシ−2−プロパノールとの溶媒混合物に溶解することで粗生成物溶液を調製した。
【0050】
1−メトキシ−2−プロパノール及び水中における粗生成物の溶液からイオヘキソールを晶出させた。連続的な共沸水除去によって過飽和を発生させた。晶出は、作業容積1100mlのジャケット付き撹拌鋼製晶出装置内において実施した。晶出装置は、水除去用の蒸留塔並びに流入流れ(粗生成物溶液及び1−メトキシ−2−プロパノール)及び流出流れ(留出物及び生成物懸濁液)制御用のポンプを備えていた。流入流れについては、粗生成物溶液及び1−メトキシ−2−プロパノールを予熱するための熱交換器が備わっていた。
【0051】
連続晶出プロセスは、全還流下にある1000mlの沸騰1−メトキシ−2−プロパノール中に300gのイオヘキソール結晶を予備装入した晶出装置内で開始した。沸騰する懸濁液を含む晶出装置内に、予熱した粗生成物溶液及び1−メトキシ−2−プロパノールをそれぞれ8.8ml/分及び21.1ml/分の速度で連続的に供給した。水を1−メトキシ−2−プロパノール/水留出物として6.6ml/分の速度で晶出装置から連続的に除去した。結晶の懸濁液を晶出装置から連続的に抜き取ることで、晶出装置内における懸濁液の体積を一定に保った。約3時間の運転後に定常状態が達成された。晶出装置内における懸濁液の滞留時間は47分であった。定常状態では、母液中の(245nmでの)UV吸収物質の濃度は5.9%であった。定常状態での母液中の含水量は1.05%であった。結晶性イオヘキソール生成物の純度は99.0%であった。
【0052】
連続晶出プロセスの晶出装置単位容積及び単位時間当たりのスループットは、315kgイオヘキソール/m・時であった。対応するバッチプロセスでは、典型的なスループットは12kgイオヘキソール/m・時である。
【0053】
実施例2
水/1−メトキシ−2−プロパノールからのイオジキサノールの連続晶出
91.9%のイオジキサノールを含む粗生成物2605gを、1250mlの水と3000mlの1−メトキシ−2−プロパノールとの混合物に溶解することで粗生成物溶液を調製した。
【0054】
1−メトキシ−2−プロパノール及び水中における粗生成物の溶液からイオジキサノールを晶出させた。連続的な共沸水除去によって過飽和を発生させた。晶出は、作業容積1100mlのジャケット付き撹拌鋼製晶出装置内において実施した。晶出装置は、水除去用の蒸留塔並びに流入流れ(粗生成物溶液及び1−メトキシ−2−プロパノール)及び流出流れ(留出物及び生成物懸濁液)制御用のポンプを備えていた。
【0055】
連続晶出プロセスは、800mlの1−メトキシ−2−プロパノール、30mlの水及び100mlの粗生成物原液の混合物中に懸濁した355gのイオジキサノール結晶を予備装入した晶出装置内で開始した。晶出装置を沸騰状態にし、蒸留塔を通しての全還流を確立した後、すべてのポンプを始動し、46時間にわたり動作させた。流量は7.5時間の滞留時間を保つように選択した。即ち、下記の通りであった。
1−メトキシ−2−プロパノール 1.61ml/分
粗生成物溶液 1.27ml/分
留出物 0.44ml/分
留出物中の水の濃度は41.6%であった。
【0056】
定常状態では、母液中の(244.5nmでの)UV吸収物質の濃度は4.4%であった。定常状態での母液中の含水量は6.0%であった。溶媒の総量は乾燥粗生成物1kg当たり3.5Lであった(0.2L/kgの水及び3.3L/kgの1−メトキシ−2−プロパノール)。濾過及びメタノール洗浄後における結晶性イオジキサノール生成物の純度は98.7%であった。
【0057】
連続晶出プロセスの晶出装置単位容積及び単位時間当たりのスループットは、34kgイオジキサノール/m・時であった。対応するバッチプロセスでは、典型的なスループットは5.6kgイオジキサノール/m・時である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素化アリール化合物の精製方法であって、溶媒中の粗生成物から溶媒の少なくとも一部を除去することによって上記化合物を連続的に晶出させることによって精製を実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
ヨウ素化アリール化合物がヨウ素化フェニル誘導体であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヨウ素化アリール化合物が水溶性の結晶性三ヨウ素化フェニル誘導体であることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ヨウ素化アリール化合物が、イオヘキソール、イオパミドール、イオメプロール、イオプロミド、イオトロラン、イオジキサノール及びイオビトリドールから選択されることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
溶媒が蒸留で除去されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
貧溶媒が添加されることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
連続晶出プロセスが1以上の晶出装置内において装置の内容物の沸点で実施されることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
当該方法が周囲圧力下において該沸点で実施されることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
当該方法が高圧下において該沸点で実施されることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
溶媒及び貧溶媒が共沸蒸留で除去されることを特徴とする、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
当該方法が1以上の晶出装置を用いて実施されることを特徴とする、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
溶液状態の粗生成物が一定速度で晶出装置に供給されることを特徴とする、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
溶媒/貧溶媒中の結晶性生成物が一定速度で抜き取られ、好ましくは晶出装置の体積装入量が一定に保たれるような速度で抜き取られることを特徴とする、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
溶液状態中の粗生成物及び貧溶媒(存在する場合)の供給速度が晶出装置内での該化合物の滞留時間によって決定されることを特徴とする、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
さらにバッチ晶出段階を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
貧溶媒が、アルコール、ケトン、エステル、エーテル及び炭化水素からなる群に属する化合物からなることを特徴とする、請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
貧溶媒がC〜C10アルキレングリコールのC〜Cモノアルキルエーテルからなることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
貧溶媒が1−メトキシ−2−プロパノールからなることを特徴とする、請求項17記載の方法。
【請求項19】
粗生成物からの化合物がイオヘキソール又はイオジキサノールからなり、溶媒が水からなることを特徴とする、請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2009−502911(P2009−502911A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523826(P2008−523826)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/NO2006/000289
【国際公開番号】WO2007/013816
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】