説明

ヨウ素含有微細繊維

【課題】 優れた殺菌・抗菌機能を有し、かつ、耐湿性、耐水性に優れたヨウ素含有微細繊維およびこれを用いた不織布を提供する。
【解決手段】 ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分を静電紡糸して得られるヨウ素含有微細繊維であって、架橋構造を有することを特徴とするヨウ素含有微細繊維。また、当該ヨウ素含有微細繊維からなる不織布は、例えば、フィルター、シート等として、幅広い使用条件において好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヨウ素含有微細繊維および当該繊維からなる不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、殺菌・抗菌剤としては、トリアゾール系、アルコール系、フェノール系、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ハロゲン系、トリアジン系、イミダゾール系、チアゾール系、ジスルフィド系、チオカーバメート系等の所謂有機合成で得られる有機系の殺菌・抗菌剤と、銀などの金属イオン系、ホウ酸系、イオウ系、ヨウ素系等の無機系の殺菌・抗菌剤が良く知られている。
【0003】
中でも、ヨウ素は古くから殺菌・抗菌効果があることがよく知られており、人体に対して比較的安全であることから、各種の用途に用いられている。このようなヨウ素系の殺菌・抗菌剤としては、ポリビニルピロリドンに分子ヨウ素が錯体を形成したポビドンヨードが広く知られている。
【0004】
ポビドンヨードは、通常は10質量%程度の水溶液として使用されている。ポピドンヨードを用いた抗菌素材としては、繊維基材の表面にポビドンヨードを担持した抗菌性のシート(特許文献1参照)、ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分を静電紡糸したヨウ素含有微細繊維(特許文献2参照)等が検討されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−89974号公報
【特許文献2】特開2008−163509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のシートは、繊維の表面にポビドンヨードを、水溶性ポリマー等を介して担持させるため、ヨウ素が繊維表面から脱落するといった問題がある。また、特許文献2に記載のヨウ素含有微細繊維は、耐湿性、耐水性が不充分であることから、フィルター素材等として用いた場合に、使用条件が制限されるといった問題がある。
【0007】
本発明の目的は、例えばフィルター素材等に使用した場合であっても、優れた殺菌・抗菌機能を有し、かつ、耐湿性、耐水性に優れたヨウ素含有微細繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
項1. ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分を静電紡糸して得られるヨウ素含有微細繊維であって、架橋構造を有することを特徴とするヨウ素含有微細繊維、
項2. ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分を静電紡糸した後、架橋処理して得られる項1に記載のヨウ素含有微細繊維、
項3. 架橋処理が、架橋剤を用いて架橋する処理である項2に記載のヨウ素含有微細繊維、
項4. 架橋剤が、グリオキサルおよび/またはメチロール化メラミンである項3に記載のヨウ素含有微細繊維、
項5. 水溶性樹脂が、ポリビニルピロリドンである項1〜4のいずれか1項に記載のヨウ素含有微細繊維、
項6. ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分に、他の水溶性樹脂をさらに含む項1〜5のいずれか1項に記載のヨウ素含有微細繊維、
項7. 他の水溶性樹脂が、ポリビニルアルコールおよび/またはアセトアセチル化ポリビニルアルコールである項6に記載のヨウ素含有微細繊維、
項8. 平均繊維径が、0.01〜10μmである項1〜7のいずれか1項に記載のヨウ素含有微細繊維、
項9. 項1〜8のいずれか1項に記載のヨウ素含有微細繊維からなる不織布、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、優れた殺菌・抗菌機能を有し、かつ、耐湿性、耐水性に優れたヨウ素含有微細繊維を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかるヨウ素含有微細繊維は、ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分を静電紡糸して得られるものであって、架橋構造を有することから、ヨウ素が繊維表面から脱落することなく繊維の構造中に保持された微細繊維を、安全で、かつ低コストで製造することができ、また、耐湿性、耐水性に優れたものである。なお、本明細書において、「複合化」とは、ヨウ素が水溶性樹脂と一体化していることを意味する。
【0011】
本発明において、ヨウ素が複合化する水溶性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸等のアクリル系樹脂;ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリアルキレンオキシド系樹脂;ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アクリルニトリル変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール、アクリルアミド変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系樹脂;ポリエーテルグリコール系樹脂;ポリビニルピロリドン系樹脂;澱粉類;水溶性になるように分子量を小さくしたキチン・キトサン等が挙げられる。これらの中でも、より安定的にヨウ素を複合化できる観点から、ポリビニルピロリドン系樹脂、分子量調整を行ったキチン・キトサンが好ましく、ポリビニルピロリドンがより好ましい。
【0012】
ヨウ素が複合化する水溶性樹脂の分子量は、水溶性樹脂を一度水に溶解し、その後繊維化する際に効率よく製造するという観点から、3,000〜3,000,000が好ましく、5,000〜1,500,000がより好ましく、6,000〜1,300,000がさらに好ましい。なお、本明細書において、樹脂の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0013】
水溶性樹脂とヨウ素を複合化する方法については特に限定されない。例えば、水溶性樹脂を水に溶解した後、これと、ヨウ素を溶解させた水とを混合し複合化させる方法、水溶性樹脂とヨウ素を密閉容器で混合、加熱することにより、昇華したヨウ素を水溶性樹脂に吸着、複合化させる方法等が挙げられる。また、水に溶解した水溶性樹脂とヨウ素を混合する際にヨウ素を予めシクロデキストリン等に包接させておいてもよい。
【0014】
ヨウ素が複合化された水溶性樹脂の具体例としては、ポリビニルピロリドンに分子ヨウ素が錯体を形成したポビドンヨードが挙げられ、例えば、米国International Specialty Products(IPS)社から「PVP−IODINE」として市販されているものが利用できる。
【0015】
本発明において、ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分は、ヨウ素が複合化された水溶性樹脂を含有するものであるが、微細繊維の繊維径を調整する観点、後述する架橋処理を容易にする観点から、他の水溶性樹脂や水溶性物質を含んでもよい。ヨウ素が複合化された水溶性樹脂の含有量は、前記成分中、0.1〜100質量%であることが好ましく、0.5〜100質量%であることがより好ましい。
【0016】
前記他の水溶性樹脂や水溶性物質の具体例としては、澱粉類、天然物から採取精製されたグァーガム、ローカストビーンガム等の各種ガム類;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸類;ゼラチン類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂;ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アクリルニトリル変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール、アクリルアミド変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系樹脂;ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニル等との共重合体等のビニルピロリドン系重合体;イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等の無水マレイン酸共重合体およびそのアルカリ溶解液;ポリエチレンオキサイド;ポリアリルアミン等が挙げられる。これらの他の水溶性樹脂や水溶性物質は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、他の水溶性樹脂が好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂がより好ましく、ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコールがさらに好ましい。
【0017】
他の水溶性樹脂の分子量は、後述する樹脂溶液中の水分が蒸発したときに繊維として得られる範囲のものであればよい。具体的には、所望の樹脂溶液粘度を確保する観点から、3,000〜3,000,000が好ましく、5,000〜1,500,000がより好ましい。分子量が3,000未満では繊維強度が確保しにくく、3,000,000を超えると水への溶解性が悪くなり、後述の樹脂溶液濃度範囲での粘度の確保が難しくなる。
【0018】
本発明にかかるヨウ素含有微細繊維は、ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分を含む樹脂溶液を、静電紡糸法により紡糸して得られるものである。静電紡糸法はエレクトロスピニング法とも呼ばれ、1μm以下の径を持つ繊維の製造方法として数十年以上前に発見された方法であるが、最近になっていわゆるナノスケールの微細繊維が有機EL素子、電池セパレーター、電子ペーパー、電磁波シールド材等への用途のニーズが拡大したこともあり再度注目を集めている。
【0019】
静電紡糸法では、2〜100kV、多くの場合5〜50kVに設定された電極の一方にセットされた細いノズルより樹脂溶液を他方の電極に向けて放出することにより、他方の電極上に通常は積層された形で微細繊維を得ることができる。
【0020】
本発明における樹脂溶液としては、ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分を水に溶解した水溶液が用いられる。前記樹脂溶液では樹脂の溶解溶剤として水を使用しているため、製造時の引火・爆発の危険が無く、また溶剤の回収が必要ないため、製造コストの低減を図ることができる。得られる微細繊維の繊維径は、水溶性樹脂の特性にもよるが、水溶性樹脂の分子量、樹脂溶液の粘度、樹脂溶液の濃度、樹脂溶液を供給するノズル径、樹脂溶液の供給速度、2極間の電圧、2極間の距離等種々の要因により変えることができる。これらの要因は、得られるヨウ素含有微細繊維の繊維径を決定するのに各々独立して影響を与えるものではなく、それぞれの要因がお互いに影響を及ぼしあっている。
【0021】
樹脂溶液から繊維化に至るのは、電極にセットされたノズルから放出された樹脂溶液が積層側の他の電極に至るまでの間に、溶媒である水を蒸発させながら静電反発等により微細液滴化・微細繊維化が進むことによるものと考えられるが、この遷移している状態を好適化させるために樹脂溶液の粘度は1つの要因となる。本発明で使用可能な樹脂溶液の粘度範囲としては5〜10000mPa・sが好ましく、5〜6000mPa・sがより好ましい。樹脂溶液粘度が5mPa・s未満では積層側の電極に至る前に繊維化することなく液滴の分散が起こる。また粘度が10000mPa・sより大きいとノズルからの供給が難しいだけでなく繊維径の調整が難しくなる。なお、本明細書において、樹脂溶液の粘度は、25℃における粘度のことであり、B型粘度計により測定される。
【0022】
樹脂溶液の樹脂濃度は、繊維化が可能である範囲で出来る限り濃い濃度が好ましい。具体的には0.5〜70質量%が好ましく、0.5〜50質量%がより好ましい。樹脂濃度が0.5質量%未満では電極間移動中での乾燥が進まず、それが静電反発にも影響するためか繊維の微細化がうまく行われない。樹脂濃度が70質量%を超える場合には樹脂溶液の粘度を確保するために水溶性樹脂の分子量を小さくする必要などが生じ、分子量の低下が繊維化を難しくするため好ましくない。
【0023】
静電紡糸法において、樹脂溶液を供給するノズルの径は、目的とする微細繊維の繊維径、使用する水溶性樹脂の種類、樹脂溶液濃度、粘度等により選択され、通常0.05〜3mmのものが好ましく使用される。また繊維径の細いものを得るためには、ノズル径が細いほうが良好な結果が得られる場合がある。この場合のノズル径は、好ましくは0.05〜0.5mm、より好ましくは0.1〜0.25mmのノズルが使用される。
【0024】
微細繊維を製造するために与える2極間の電圧は、目的とする微細繊維の径により上述の各種要因を変更させながら適切に設定すればよく、通常5〜50kVの範囲で選択される。
【0025】
電極間の距離、すなわちノズル先端と積層させる電極(巻き取り機)との距離は、微細繊維の繊維径、微細繊維の含水率に影響を与えるが、本発明においては、5〜30cmに設定することが好ましい。なお、本明細書において、ノズルと巻き取り機との間の距離とは、ノズルから樹脂溶液が放出される方向に対して垂直に巻き取り機が設置された場合の、ノズルと巻き取り機との間の最短距離のことを意味する。
【0026】
樹脂溶液の供給速度は、目的とする微細繊維の繊維径により、各種要因を変更させながら適切な値、例えば、1個のノズル当たり0.005〜0.3mL/minに設定にすればよい。供給速度が速すぎると、溶媒である水の蒸発が十分に行われず、液滴の静電反発が十分に進行しない等の影響で、所望の微細繊維が得られない。逆に供給速度が遅すぎると微細繊維の生産性が悪くなるため好ましくない。
【0027】
本発明においては、上記条件を適宜設定することにより微細繊維が得られる。本発明における「微細繊維」とは、平均繊維径が10μm以下の繊維を意味し、本発明により平均繊維径が好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.03〜5μmの範囲の微細繊維が得られる。本明細書において、平均繊維径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0028】
本発明にかかるヨウ素含有微細繊維は、架橋構造を有するものであり、例えば、前記静電紡糸後の微細繊維を架橋処理することにより得ることができる。
【0029】
静電紡糸後の微細繊維を架橋処理する方法としては、得られるヨウ素含有微細繊維に架橋構造を付与できる方法であれば、特に限定されない。例えば、前記静電紡糸後の微細繊維に、紫外線、電子線等を照射して架橋処理する方法や、静電紡糸後の微細繊維に含まれるヨウ素が複合化された水溶性樹脂および/または前記他の水溶性樹脂が含有する官能基と反応可能な官能基を有する架橋剤を用いて架橋処理する方法等が挙げられる。
【0030】
本明細書においては、実施形態の一例として、ヨウ素が複合化された水溶性樹脂および/または前記他の水溶性樹脂が含有する官能基と反応可能な官能基を有する架橋剤を用いて架橋処理する方法についてより詳しく説明する。
【0031】
前記架橋剤は、ヨウ素が複合化された水溶性樹脂および/または前記他の水溶性樹脂が含有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であれば、特に限定されない。架橋剤としては、例えば、前記他の水溶性樹脂としてポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系樹脂を使用した場合、アルデヒド化合物類、アミン化合物類、メチロール化合物類、エポキシ化合物類、イソシアネート化合物類、多価金属化合物等が挙げられる。これらの中でも、架橋反応の容易さの観点から、アルデヒド化合物類、メチロール化合物類が好ましく用いられ、グリオキサル、メチロール化メラミンがより好ましく用いられる。
【0032】
架橋剤の使用量は、ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.02〜5質量部であることがより好ましく、0.05〜5質量部であることがさらに好ましい。架橋剤の使用量が、0.01質量部未満の場合、得られるヨウ素含有微細繊維の耐湿性、耐水性が充分でないおそれがある。また、架橋剤の使用量が、10質量部を超える場合、使用量に見合う架橋効果が得られず、また、経済的でなくなるおそれがある。
【0033】
架橋処理する方法としては、前記樹脂溶液にあらかじめ架橋剤を添加しておき、静電紡糸後に加熱処理する方法;静電紡糸後の微細繊維に架橋剤を、塗布、噴霧等の方法により添加し、加熱処理する方法等が挙げられる。これらの中でも、得られるヨウ素含有微細繊維において架橋反応が均一に進行する観点から、樹脂溶液にあらかじめ架橋剤を添加しておき、静電紡糸後に加熱処理する方法が好適に用いられる。
【0034】
加熱処理の温度条件としては、使用する水溶性樹脂の種類、使用する架橋剤種、架橋剤の使用量等により異なるので、一概には言えないが、通常、50℃〜200℃である。また、処理時間は、通常、10分〜300分である。
【0035】
上記の架橋処理によれば、得られるヨウ素含有微細繊維の平均繊維径は、当該処理前の平均繊維径と実質上変化するものではない。
【0036】
静電紡糸法においては、通常、微細繊維が電極上に積層された形で得られるため、本発明にかかる不織布は、これを前記架橋処理することにより、容易に得ることができる。したがって、これを用いることにより、殺菌・抗菌機能に優れているだけでなく、耐湿性や耐水性に優れたフィルター素材等として利用することができる。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
攪拌機、冷却管を備えた300mL容のフラスコに、水115gを仕込み、90℃に維持しながら、他の水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名:クラレポバールPVA−117)10gを加えて2時間攪拌し、ポリビニルアルコールが溶解したことを確認した後、25℃に冷却して8質量%ポリビニルアルコール水溶液を得た。これに、ポピドンヨード(ISP社製、商品名:PVP−IODINE、分子量50,000、ヨウ素含有量:約10質量%)0.1gを加え攪拌して溶解したことを確認した後、架橋剤として40質量%グリオキサル水溶液(関東化学社製)0.025gを添加し、さらに水43gを加えて、樹脂濃度が6質量%、粘度230mPa・sの樹脂溶液を得た。
【0039】
得られた樹脂溶液適当量を、図1に示した静電紡糸装置(カトーテック社製、ナノファイバーエレクトロスピニングユニット)のシリンジに仕込み、シリンジ針先端(ノズル、ノズル径0.2mm)と巻き取り機との距離を100mmとして、2極間に電圧を印加(20kV)し、平均繊維径200〜300nmの微細繊維からなる不織布を得た。なお、平均繊維径は、電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−6390LA型)を用いて、任意に30本の繊維の繊維径を計測して、平均を算出することにより求めた。
【0040】
得られた不織布を、150℃に設定した恒温槽に20分間入れて熱処理を行なうことにより、目付量が5g/mのヨウ素含有微細繊維からなる不織布を得た。
【0041】
[実施例2]
実施例1において、他の水溶性樹脂としてのポリビニルアルコール10gに代えて、アセトアセチル化ポリビニルアルコール(日本合成化学製、商品名:ゴーセファイマーZ−410)10gを用いた以外は実施例1と同様にして、平均繊維径200〜300nmの微細繊維からなる不織布を得た。
【0042】
得られた不織布を、150℃に設定した恒温槽に20分間入れて熱処理を行なうことにより、目付量が5g/mのヨウ素含有微細繊維からなる不織布を得た。
【0043】
[実施例3]
実施例1において、架橋剤としての40質量%グリオキサル水溶液0.025gに代えて、メチロール化メラミン(関東化学社製、N,N’−ビス(ヒドロキシメチル)尿素)0.01gを用いた以外は実施例1と同様にして、平均繊維径200〜300nmの微細繊維からなる不織布を得た。
【0044】
得られた不織布を、150℃に設定した恒温槽に20分間入れて熱処理を行なうことにより、目付量が5g/mのヨウ素含有微細繊維からなる不織布を得た。
【0045】
[比較例1]
実施例1において、40質量%グリオキサル水溶液0.025gを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、平均繊維径200〜300nmの微細繊維からなる不織布を得た。
【0046】
得られた不織布を、150℃に設定した恒温槽に20分間入れて熱処理を行なうことにより、目付量が5g/mのヨウ素含有微細繊維からなる不織布を得た。
【0047】
[評価]
実施例1〜3および比較例1で得られた熱処理後の不織布について、それぞれ抗菌性および耐水性を評価した。
【0048】
(1)抗菌性
抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果、JIS Z 2801:2000に準じて試験を行なった。大腸菌IFO3972を前培養し、1白金耳の菌を採取して1/500栄養培地に分散稀釈し、試験菌液とした。この菌液0.4mlを直径90mmの滅菌シャーレ中に置いた50mm角の評価用不織布に滴下し、その上に40mmのストマッカーフィルムを密着させて載せ、シャーレの蓋を被せた後、プラスチック製容器に入れた。
【0049】
35℃で24時間培養した後、不織布を滅菌ストマッカー袋に移して、滅菌水10mlを加えて接種した試験菌の洗い出しを行なった。この液について標準寒天稀釈法により35℃、48時間培養し、1検体当りの生菌数を測定した。
【0050】
抗菌性の判定は、初期濃度と35℃、24時間培養後の生菌数測定した。培養前の生菌数は、4.2×10であった。なお、培養後の生菌数が1/100未満に減少していれば『抗菌性あり』と判断できる。評価結果を表1に示す。
【0051】
(2)耐水性
溶出試験による質量減少率を測定することにより評価した。まず、温度25℃のイオン交換水100mlに、秤量した100mm角の評価用不織布を浸漬させて1時間攪拌し、取り出した。
【0052】
その後、熱風乾燥機により100℃で30分間乾燥させた後、再秤量し、質量減少率を以下の式から算出した。なお、質量減少率が10質量%未満であれば『耐水性あり』と判断できる。また、このとき、耐湿性についても充分優れたものであると判断できる。評価結果を表1に示す。
質量減少率(質量%)=(試験前の不織布質量−試験後の不織布質量)
÷試験前の不織布質量×100
【0053】
【表1】

【0054】
表1より、実施例1〜3で得られたヨウ素含有微細繊維からなる不織布は、抗菌性に優れ、かつ、耐水性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明にかかるヨウ素含有微細繊維は、殺菌・抗菌機能を有し、かつ、耐湿性、耐水性に優れているため、例えばフィルター、シート等の素材に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明にかかるヨウ素含有微細繊維の製造に好適に使用される静電紡糸装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0057】
1 シリンジ
2 樹脂溶液
3 ノズル(シリンジ針)
4 加電圧器
5 巻き取り機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分を静電紡糸して得られるヨウ素含有微細繊維であって、架橋構造を有することを特徴とするヨウ素含有微細繊維。
【請求項2】
ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分を静電紡糸した後、架橋処理して得られる請求項1に記載のヨウ素含有微細繊維。
【請求項3】
架橋処理が、架橋剤を用いて架橋する処理である請求項2に記載のヨウ素含有微細繊維。
【請求項4】
架橋剤が、グリオキサルおよび/またはメチロール化メラミンである請求項3に記載のヨウ素含有微細繊維。
【請求項5】
水溶性樹脂が、ポリビニルピロリドンである請求項1〜4のいずれか1項に記載のヨウ素含有微細繊維。
【請求項6】
ヨウ素が複合化された水溶性樹脂含有成分に、他の水溶性樹脂をさらに含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のヨウ素含有微細繊維。
【請求項7】
他の水溶性樹脂が、ポリビニルアルコールおよび/またはアセトアセチル化ポリビニルアルコールである請求項6に記載のヨウ素含有微細繊維。
【請求項8】
平均繊維径が、0.01〜10μmである請求項1〜7のいずれか1項に記載のヨウ素含有微細繊維。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のヨウ素含有微細繊維からなる不織布。

【図1】
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【公開番号】特開2010−126856(P2010−126856A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304913(P2008−304913)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】