説明

ライザーシステム

【課題】 ライザー管を海底地盤から切り離すときに、海底地盤や船舶にライザー管が当たるのを防ぎ、船舶やライザー管の損傷を防ぐことを目的とする。
【解決手段】 ライザーシステム10においては、荒天時等に、船舶1の上下動が許容量以上となった場合には、防噴装置20をベース部20Aと連結部20Bに切り離す。すると、ライザー管11は、テンショナー33によって付与されたテンションにより上昇する。このとき、ライザー管11の外表面に設けられた抵抗部材(フラップ)が、海水の抵抗によってライザー管11に対して所定の開き角で開いて抵抗力を発揮し、ライザー管11の上昇速度を抑えるようになっている。また、ライザー管11が切り離されると、すぐに付勢部材の付勢力によって可動管が上昇してライザー管11の全長が短縮するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底地盤の掘削を行うときに用いるライザーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
大深度の海底地盤の調査等のために、ライザーシステムが用いられている。ライザーシステムは、図1に示すように、海上に停泊した船舶1からライザー管2を降ろし、このライザー管2の内部を通してドリルパイプ3を海底地盤Gに到達させ、海底地盤Gの掘削を行う。
【0003】
ライザー管2は、その下端2aが海底地盤Gに固定されている。ライザー管2の上端部2bには、船舶1に固定された支持管4が挿入され、これによってライザー管2と支持管4は内外の二重管構造となっており、上下方向に相対移動可能なテレスコピック機構を構成している。このような構成により、波浪による船舶1の上下動を吸収するようになっている。
さらに、ライザー管2の上端部2bは、テンショナー5を介し、船舶1側に支持されている。テンショナー5は、一端5aが船舶1に固定され、他端5bがライザー管2に固定され、一端5aと他端5bを互いに接近させる方向のテンションを付与するテンショナーシリンダ6を備えている。このテンショナーシリンダ6で付与したテンションにより、ライザー管2の座屈を防ぐようになっている。
【0004】
ライザーシステムでは、上記のような構成で海底地盤Gおよび船舶1に固定されることで、波浪によるある程度の船舶1の上下動は吸収できるようになっているものの、荒天時等に、船舶1の上下動が許容量以上となった場合には、そのままではライザー管2の海底地盤Gへの固定部分や、船舶1側への連結部分が損壊してしまう恐れがある。
このため、ライザー管2を海底地盤Gに固定する固定部7を上下に分割可能としておき、必要時に固定部7を上下に分割することで、ライザー管2を海底地盤Gから切り離すことが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
そして、ライザー管2が海底地盤Gから切り離されると、テンショナー5のテンションによりライザー管2は上昇するので、テンショナー5のテンションを制御し、ライザー管2を適切な位置で停止させた後、ライザー管2を船舶1側に固縛している。
【0005】
【特許文献1】特開平10−311191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ライザー管2を海底地盤Gから切り離した後、これを船舶1側に固縛するまでの間において船舶1が大きく上下動すると、沈み込んだ船舶1を、上昇するライザー管2が突き上げてしまう恐れがあり、それにより、ライザー管2や船舶1が損傷することがある。
【0007】
また、図6に示すように、ライザー管2の上端部2bは、テンショナー5の他端5bが固定されたサポートリング8によって下方への移動のみが拘束された状態で支持されている。このため、ライザー管2を海底地盤Gから切り離したときに、テンショナー5のテンションによって、ライザー管2の上端部2bがサポートリング8から上方に大きく飛び上がり、上記の船舶1を突き上げてしまう現象が起こることがある。
【0008】
また、ライザー管2を船舶1側に固縛した後の状態においても、船舶1が大きく上下動すると、船舶1が沈み込んだときに、ライザー管2が海底地盤Gを打つ恐れがあり、ライザー管2が損傷することがある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、ライザー管を海底地盤から切り離したときに、海底地盤や船舶にライザー管が当たるのを防ぎ、船舶やライザー管の損傷を防止することのできるライザーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもと、本発明のライザーシステムは、上端部が海上の船舶に対し上下動可能な状態で支持されたライザー管と、ライザー管内を通して海底地盤に到達し、海底地盤を掘削するドリルパイプと、ライザー管の下端部を海底地盤に固定するとともに、必要時に海底地盤へのライザー管の固定を解放可能な固定装置と、ライザー管を船舶側に引き寄せる方向のテンションをライザー管に作用させるテンショナーと、を備える。そして、このようなライザーシステムにおいて、ライザー管の表面に、ライザー管が海中を上昇するときに抵抗力を発揮する抵抗部材が設けられていることを特徴とする。緊急時等において、ライザー管の海底地盤への固定が固定装置によって解放されると、ライザー管はテンショナーのテンションによって海中を上昇する。このとき、抵抗部材が発揮する抵抗力によって、ライザー管の上昇速度を抑えることができる。これによって、上昇したライザー管が船舶に当たるのを防止できる。
【0010】
このような抵抗部材は、ライザー管の表面に固定して設けてもよいが、通常時、つまり固定装置によってライザー管が海底地盤に固定された状態で、抵抗部材によって潮流の影響が増えるのは好ましくない。このため、抵抗部材を、ライザー管の下端部が固定装置によって海底地盤に固定された状態ではライザー管の表面に沿って位置し、ライザー管の海底地盤への固定が固定装置によって解放された状態ではライザー管の表面に対して開いて位置するような、可動板によって構成するのが好ましい。この場合、ライザー管が海底地盤から切り離されたときには、可動板を確実に開く必要がある。このため、例えば、モータやシリンダ、バネ等によって強制的に可動板を開くようにしても良いが、ライザー管が海中を上昇するときに海水の抵抗力によって可動板が開くよう、可動板の上端部に傾斜面を形成すれば、何らの機構を用いることなく、可動板を開くことができる。
また、可動板は、海中で可動板に浮力を作用させる材質で形成することで、通常時には、何らの機構を用いることなく、可動板をライザー管に沿わせた状態とすることができる。
【0011】
海中のライザー管には、潮流によって周囲にカルマン渦が発生する。これに対し、抵抗部材を、ライザー管の表面にらせん状に配列することで、カルマン渦の発生位相をずらし、カルマン渦に起因する振動を抑えることができる。
【0012】
また、このようなライザー管の下端部は、ライザー管の海底地盤への固定が固定装置によって解放された状態で、ライザー管の長さが収縮可能となる収縮機構を備えるのが好ましい。
このとき、収縮機構では、ライザー管の海底地盤への固定が固定装置によって解放されたときに、ライザー管の長さを自動的に収縮させるようにすれば、ライザー管の切り離しとほぼ同時に、ライザー管の下端部を海底から遠ざけることができ、海底地盤との干渉を防ぐことができる。
【0013】
さらに、ライザー管と、テンショナーとの間に、ライザー管のテンショナーに対する変位を緩和する変位緩和機構を備えるようにしてもよい。これにより、ライザー管が海底地盤から切り離されて上昇した場合に、その変位を変位緩和機構で緩和することができ、船舶への衝突を防止できる。
【0014】
本発明のライザーシステムは、上端部が、海上の船舶に対し上下動可能な状態で支持されたライザー管と、ライザー管内を通して海底地盤に到達し、海底地盤を掘削するドリルパイプと、ライザー管の下端部を海底地盤に固定するとともに、必要時に海底地盤へのライザー管の固定を解放可能な固定装置と、ライザー管を船舶側に引き寄せる方向のテンションをライザー管に作用させるテンショナーと、を備え、ライザー管の下端部には、ライザー管に対して上下動に可能に設けられ、固定装置に連結される可動管と、可動管を上方に付勢する付勢部材と、が備えられていることを特徴とする。
このようなライザーシステムでは、ライザー管の下端部の海底地盤への固定が固定装置によって解放されると、固定部材に連結されていた可動管が、付勢部材の付勢力によってライザー管に対して上昇する。これによってライザー管の全長が収縮し、ライザー管の下端部と海底地盤と距離が離れる。その結果、ライザー管の海底地盤への衝突を抑止できる。
【0015】
また、本発明のライザーシステムは、ライザー管と、テンショナーとの間に、ライザー管のテンショナーに対する上方への変位を規制する変位規制機構を備えることを特徴とする。これにより、ライザー管が海底地盤から切り離されて上昇した場合に、その変位を変位規制機構で規制し、船舶等に当たるのを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、緊急時等に海底地盤からの切り離しを行った後に、ライザー管が、船舶を突き上げたり、海底地盤に衝突してライザー管や船舶が損傷するのを効果的に回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態におけるライザーシステム10の構成を説明するための図である。
図1に示すように、大深度の海底地盤の調査、石油や天然ガス等の資源掘削のために用いられるライザーシステム10は、筒状のライザー管11と、ライザー管11の内部を通して海底地盤Gに到達し、海底地盤Gの掘削を行うドリルパイプ12とを備えている。
【0018】
ライザー管11は、所定長のユニット管13を多数連結することで構成されている。
図2に示すように、ライザー管11を構成する各ユニット管13の外表面には、ライザー管11が海中を上昇するときに抵抗力を発揮する抵抗部材15が設けられている。
このような抵抗部材15としては、例えば、可倒式のフラップ(可動板)15Aがある。フラップ15Aは、その下端部が、ライザー管11の外表面に対してヒンジ16を介して回動可能に連結され、また図示しないストッパ部材により、ライザー管11に対する開き角が規制されるようになっている。これによりフラップ15Aは、ライザー管11の外表面に沿った状態と、ライザー管11に対し所定の角度開いた状態との間で開閉できるようになっている。フラップ15Aの上端部は、ライザー管11が上昇するときに、海水の抵抗によってフラップ15Aを開く方向の力が作用するように、傾斜面15aとするのが好ましい。
【0019】
フラップ15Aは、通常の状態において、潮流の影響を最小限に抑えるため、ライザー管11の外表面に沿った状態を維持するのが好ましい。このため、フラップ15Aを、例えばシンタクティック・フォーム等と称される、気泡を含む材料等、海中でフラップ15Aに浮力を作用させるような材料で形成することができる。これにより、通常状態においては、フラップ15Aに作用する浮力によってフラップ15Aはライザー管11の外表面に沿った状態となり、ライザー管11が上昇したときに傾斜面15aに海水が当たることでフラップ15Aが自動的に開くようにできる。
これ以外にも、バネ等の弾性部材により、フラップ15Aがライザー管11の外表面に沿った状態を維持するよう、フラップ15Aを付勢するようにしても良い。
上記フラップ15Aは、例えば、ユニット管13の上下方向の所定レベルに、周方向に略等間隔で複数設けるのが好ましい。
【0020】
このようなフラップ15Aは、ライザー管11が上昇しはじめると海水の抵抗によってライザー管11に対して所定の開き角で開く。フラップ15Aが開いた状態では、ライザー管11の上昇に対し、抵抗力を発揮する抵抗部材15として機能する。
【0021】
また、図3に示すように、フラップ15Aを、ライザー管11を構成するユニット管13に対し、らせん状に配列しても良い。海中においては、ライザー管11に潮流が当たることでカルマン渦が生じ、これによってライザー管11には、流れに直交する振動が生じることがある。この振動により、ライザー管11が疲労し、強度に悪影響を及ぼすことがある。このようなライザー管11にフラップ15Aをらせん状に配置すると、フラップ15Aによってライザー管11の周囲における海水の流れが変化し、ライザー管11の上下方向において位相ずれが生じて振動が抑制される。
これにより、フラップ15Aを、ライザー管11の上昇に対し、抵抗力を発揮する抵抗部材15として機能させるだけでなく、ライザー管11の周囲におけるカルマン渦の発生による振動の抑制のために機能させることもできる。
【0022】
さて、ライザー管11の下端部11aは、海底地盤Gに、防噴装置(固定装置)20を介して固定されている。防噴装置20は、掘削中に海底地盤G中からガス等が噴出した場合に、ライザー管11が吹き飛ばされるのを防止するための圧力解放機構を備えたものである。この防噴装置20は、荒天時等にライザー管11を海底地盤Gから切り離すための切り離し機構をも備えている。このため、防噴装置20は、海底地盤Gに固定されたベース部20Aと、ベース部20Aに対して着脱可能とされ、ライザー管11の下端部11aに連結された連結部20Bからなる二分割可能な構成とされている。連結部20Bは、通常時はベース部20Aに連結された状態とされ、必要時に、船舶1側からの制御等によって、ベース部20Aに対する連結が解放されるようになっている。
【0023】
さらに、防噴装置20には、ライザー管11内を通るドリルパイプ12を切断するための切断機構(図示無し)が備えられている。防噴装置20の切り離し機構でベース部20Aから連結部20Bおよびライザー管11を切り離す際、通常はドリルパイプ12を先行して引き上げるが、ドリルパイプ12を引き上げるだけの時間的猶予が無い場合等には、この切断機構(図示無し)で、ライザー管11内を通っているドリルパイプ12を切断した後、切り離し機構でベース部20Aから連結部20Bおよびライザー管11を切り離す。
【0024】
ライザー管11の下端部11aにおいて、防噴装置20の連結部20Bに対して連結される部分の構造は、以下のような収縮機構となっている。
すなわち、図4に示すように、ライザー管11の下端部11aは、管本体21に対し、可動管22が上下方向に移動可能に装着された構成とされている。管本体21の下端部と可動管22の上端部にはフランジ21a、22aが形成され、これによって可動管22の下方への移動が規制されている。そして、可動管22のフランジ22aと管本体21との間には、可動管22を引き上げる方向の付勢力を発する付勢部材23と、可動管22が上方に移動したときに、その移動速度を減衰させるダンパー25とが設けられている。
【0025】
また、可動管22には、通常時において、その移動ストロークの下端位置、すなわちフランジ21a、22aが接触した状態で可動管22を管本体21に固定するストッパ機構が備えられている。このストッパ機構は、防噴装置20の連結部20Bがベース部20Aから切り離されたときには、可動管22を管本体21に対し移動自在な状態に解放するようになっている。
このようなストッパ機構としては、例えば、管本体21の所定位置形成された孔に、ストッパピン24を挿入するものがある。ストッパピン24は、管本体21の孔に挿入された状態で管本体21のフランジ21aの直下に位置することで、可動管22の上方への移動を規制する。そして、例えば、ストッパピン24を、防噴装置20のベース部20Aにワイヤー26等で結んでおく等して、防噴装置20の連結部20Bがベース部20Aから切り離されてライザー管11が上昇したときには、ストッパピン24が管本体21の孔から抜けるようにする。
これ以外に、例えば、ストッパピン24を管本体21の孔に抜き差しするための機構を備えておき、防噴装置20の連結部20Bをベース部20Aから切り離すときに、ストッパピン24を自動的に管本体21の孔から抜くようにすることもできる。
【0026】
ライザー管11の下端部11aが、このような構造の収縮機構を有することで、図4(b)に示すように、防噴装置20の連結部20Bがベース部20Aから切り離されてライザー管11が上昇すると、ストッパ機構が解放されて、可動管22が管本体21に対し移動自在な状態となり、付勢部材23の付勢力によって可動管22が管本体21に対して上昇する。これによってライザー管11の全長を短縮させ、ライザー管11の下端部11aおよび連結部20Bと海底地盤Gとの隙間を大きく確保し、ライザー管11が海底地盤Gに無用に干渉して下端部11aや連結部20Bが損傷するのを防止できる。しかも、可動管22は、防噴装置20の連結部20Bがベース部20Aから切り離されてストッパ機構が解放された直後に移動し、ライザー管11の下端部11aと海底地盤Gとの間隔が開くので、その効果は大きい。
【0027】
図5に示すように、ライザー管11の上端部11bは、テレスコピック機構を有している。すなわち、ライザー管11の上端部11bに、船舶1に固定された支持管30が挿入され、これによってライザー管11と支持管30が内外の二重管構造となって、上下方向に相対移動可能となっており、船舶1とライザー管11の上下方向の相対移動を許容するようになっている。
また、ライザー管11の上端部11bには、外方に張り出すフランジ31が形成されている。このフランジ31の下側には、リング状のサポートリング32が設けられている。このサポートリング32は、フランジ31によってライザー管11に対し上方への移動が規制されている。
【0028】
サポートリング32は、テンショナー33を介し、船舶1に連結されている。テンショナー33は、一端33aが船舶1に固定され、他端33bがサポートリング32に固定され、一端33aと他端33bを互いに接近させる方向のテンションを付与するテンショナーシリンダ34を備えている。これにより、ライザー管11の上端部11bは、サポートリング32およびテンショナー33を介し、船舶1側に引き寄せられる方向のテンションが付与された状態で、船舶1に支持されている。
【0029】
ここで、サポートリング32とライザー管11のフランジ31との間には、サポートリング32に対するライザー管11の上方への移動を抑制する機構(変位緩和機構、変位規制機構)が備えられている。この機構としては、サポートリング32とライザー管11のフランジ31との間に、双方を接近させる方向の付勢力を付与する付勢部材35と、サポートリング32に対しライザー管11の上方への移動速度を減衰させるダンパー36とを備えることができる。これら付勢部材35およびダンパー36により、サポートリング32に対しライザー管11の上方への移動を抑制でき、これによって、ライザー管11が過度に上昇して船舶1に当たってしまうことや、テンショナー33のテンショナーシリンダ34に過大な圧縮力を作用させるのを防止できる。
また、サポートリング32とライザー管11とが、上記の機構によって連結されることになるため、テンショナー33による下向きのテンションをサポートリング32を介しライザー管11に伝達でき、これによってもライザー管11の過度な上昇を抑えることができる。
【0030】
このような構成のライザーシステム10においては、ライザー管11の下端部11aを、防噴装置20を介して海底地盤Gに固定し、上端部11bは、支持管30およびテンショナー33を介し、船舶1で支持する。そして、ドリルパイプ12を、ライザー管11の内部を通して海底地盤Gに到達させた状態で、図示しない駆動源で回転させることで、海底地盤Gの掘削を行う。
この状態(通常状態)では、ライザー管11と支持管30とがテレスコピック機構を構成することで、波浪による船舶1の上下動を吸収するようになっている。また、この状態で、テンショナーシリンダ34を備えたテンショナー33によってライザー管11を上方に引っ張ってテンションを付与することで、ライザー管11が座屈してしまうのを防ぐ。
【0031】
そして、荒天時等に、船舶1の上下動が許容量以上となった場合には、防噴装置20をベース部20Aと連結部20Bに切り離す。すると、ライザー管11は、テンショナー33によって付与されたテンションにより上昇する。このとき、ライザー管11の外表面に設けられたフラップ15Aが、海水の抵抗によってライザー管11に対して所定の開き角で開いて抵抗力を発揮し、ライザー管11の上昇速度を抑える。また、付勢部材35およびダンパー36によっても、ライザー管11の上方への移動が抑制される。これによって、ライザー管11が過度に上昇して船舶1に当たってしまうことや、テンショナー33のテンショナーシリンダ34に過大な圧縮力を作用させるのを防止できる。また、ライザー管11の上昇時には、テンショナー33のテンショナーシリンダ34で発揮するテンションを適宜制御して、ライザー管11を適切な位置で停止させた後、ライザー管11を船舶1側に固縛する。
【0032】
また、ライザー管11が切り離されると、すぐに付勢部材23の付勢力によって可動管22が上昇してライザー管11の全長が短縮するので、ライザー管11が海底地盤Gに無用に干渉して下端部11aや連結部20Bが損傷するのを防止できる。
そして、ライザー管11を船舶1に固縛した後の状態では、船舶1が想定外に大きく上下動して、ライザー管11の下端部11aおよび連結部20Bが海底地盤G等に衝突しても、ライザー管11の上端部11b側において、付勢部材35およびダンパー36によって、ライザー管11の上方への移動が抑制されるので、これによって、ライザー管11が過度に上昇して船舶1に当たってしまうことや、テンショナー33のテンショナーシリンダ34に過大な圧縮力を作用させるのを防止できる。
【0033】
このようにして、緊急時に切り離しを行った後のライザー管11が、船舶1を突き上げたり、海底地盤Gに衝突して、ライザー管11や船舶1等が損傷するのを効果的に回避することが可能となる。
【0034】
なお、上記実施の形態において、特に抵抗部材15や、ライザー管11の下端部11a、上端部11bの構造等は、上記したのと同様の機能を発揮できるのであれば、適宜他の構造を採用しても何ら支障は無い。また、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態におけるライザーシステムの概要を示す図である。
【図2】ライザー管に設けた抵抗部材の一例を示す図である。
【図3】抵抗部材の他の例を示す図である。
【図4】ライザー管の下端部を切り離すときの状態を示す図である。
【図5】ライザー管の上端部の支持構造を示す図である。
【図6】従来のライザー管の上端部の支持構造を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1…船舶、10…ライザーシステム、11…ライザー管、12…ドリルパイプ、13…ユニット管、15…抵抗部材、15A…フラップ(可動板)、15a…傾斜面、16…ヒンジ、20…防噴装置(固定装置)、20A…ベース部、20B…連結部、21…管本体、22…可動管、23…付勢部材、24…ストッパピン、30…支持管、31…フランジ、32…サポートリング、33…テンショナー、34…テンショナーシリンダ、35…付勢部材、36…ダンパー、G…海底地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部が、海上の船舶に対し上下動可能な状態で支持されたライザー管と、
前記ライザー管内を通して海底地盤に到達し、前記海底地盤を掘削するドリルパイプと、
前記ライザー管の下端部を前記海底地盤に固定するとともに、必要時に前記海底地盤への前記ライザー管の固定を解放可能な固定装置と、
前記ライザー管を前記船舶側に引き寄せる方向のテンションを前記ライザー管に作用させるテンショナーと、を備え、
前記ライザー管の表面に、前記ライザー管が海中を上昇するときに抵抗力を発揮する抵抗部材が設けられていることを特徴とするライザーシステム。
【請求項2】
前記抵抗部材は、前記ライザー管の下端部が前記固定装置によって前記海底地盤に固定された状態では前記ライザー管の表面に沿って位置し、前記ライザー管の前記海底地盤への固定が前記固定装置によって解放された状態では前記ライザー管の表面に対して開いて位置する可動板であることを特徴とする請求項1に記載のライザーシステム。
【請求項3】
前記可動板の上端部は、前記ライザー管が海中を上昇するときに海水の抵抗力によって前記可動板が開くよう、傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のライザーシステム。
【請求項4】
前記可動板は、海中で前記可動板に浮力を作用させる材質で形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のライザーシステム。
【請求項5】
前記抵抗部材は、前記ライザー管の表面に、らせん状に配列されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のライザーシステム。
【請求項6】
前記ライザー管の下端部は、前記ライザー管の前記海底地盤への固定が前記固定装置によって解放された状態で、前記ライザー管の長さが収縮可能となる収縮機構を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のライザーシステム。
【請求項7】
前記収縮機構は、前記ライザー管の前記海底地盤への固定が前記固定装置によって解放されると、前記ライザー管の長さを自動的に収縮させることを特徴とする請求項6に記載のライザーシステム。
【請求項8】
前記ライザー管と、前記テンショナーとの間に、前記ライザー管の前記テンショナーに対する変位を緩和する変位緩和機構を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のライザーシステム。
【請求項9】
上端部が、海上の船舶に対し上下動可能な状態で支持されたライザー管と、
前記ライザー管内を通して海底地盤に到達し、前記海底地盤を掘削するドリルパイプと、
前記ライザー管の下端部を前記海底地盤に固定するとともに、必要時に前記海底地盤への前記ライザー管の固定を解放可能な固定装置と、
前記ライザー管を前記船舶側に引き寄せる方向のテンションを前記ライザー管に作用させるテンショナーと、を備え、
前記ライザー管の下端部には、前記ライザー管に対して上下動に可能に設けられ、前記固定装置に連結される可動管と、前記可動管を上方に付勢する付勢部材と、が備えられていることを特徴とするライザーシステム。
【請求項10】
上端部が、海上の船舶に対し上下動可能な状態で支持されたライザー管と、
前記ライザー管内を通して海底地盤に到達し、前記海底地盤を掘削するドリルパイプと、
前記ライザー管の下端部を前記海底地盤に固定するとともに、必要時に前記海底地盤への前記ライザー管の固定を解放可能な固定装置と、
前記ライザー管を前記船舶側に引き寄せる方向のテンションを前記ライザー管に作用させるテンショナーと、を備え、
前記ライザー管と、前記テンショナーとの間に、前記ライザー管の前記テンショナーに対する上方への変位を規制する変位規制機構を備えることを特徴とするライザーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−177039(P2006−177039A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371207(P2004−371207)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】