説明

ラインインクジェットプリンター

【課題】ヘッドが印刷位置に移動したことを検出する検出器を設けた場合でも、部品点数が増加することを抑制できるラインインクジェットプリンターを提供すること。
【解決手段】ラインインクジェットプリンター1は印刷位置AとホームポジションBの間でインクジェットヘッド11を移動させるヘッド移動機構14と、プラテン4とインクジェットヘッド11の間のギャップGを調整するギャップ調整機構50を有する。ヘッド移動機構14はギャップGを基準寸法G1に維持した状態でインクジェットヘッド11を移動させる。ギャップ調整機構50はインクジェットヘッド11が基準位置Rに位置することを検出するヘッド位置検出器40を備える。ヘッド移動機構14によってインクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動させられるとインクジェットヘッド11は基準位置Rに配置されるので、この移動がヘッド位置検出器40で検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙に印刷を施す印刷位置と当該印刷位置から離れた待機位置の間でインクジェットヘッドを移動させるヘッド移動機構と、印刷位置においてインクジェットヘッドとプラテンとの間のギャップを調整するギャップ調整機構とを備えるラインインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターとしては、印刷位置を経由する搬送経路に沿って記録紙を送る紙送り動作と、印刷位置においてキャリッジに搭載されたインクジェットヘッドを紙送り方向と直交する記録紙幅方向に移動させながら記録紙に向かってインクを吐出するインク吐出動作を交互に行なうことにより記録紙に印刷を施すシリアルインクジェットプリンターが一般的である。このようなシリアルインクジェットプリンターは、特許文献1に記載されている。
【0003】
同文献のシリアルインクジェットプリンターは、インクジェットヘッドを記録紙幅方向に移動させるために、インクジェットヘッドを搭載するキャリッジと、キャリッジを記録紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構を備えている。また、同文献のシリアルインクジェットプリンターでは、プラテンの側方にインクジェットヘッドの待機位置(ホームポジション)が設けられており、印刷処理が終了したインクジェットヘッドは待機位置に移動させられるようになっている。インクジェットヘッドが待機位置に移動すると、インクノズル面はヘッドキャップで覆われてインクノズル面からのインクの蒸発が防止される。キャリッジ移動機構は、インクジェットヘッドが待機位置に移動したことを検出する検出器と、キャリッジを移動させる駆動源としてのステッピングモーターを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−239970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェットヘッドとして記録紙の印刷領域の幅以上の幅寸法を備えるものを用意することができれば、インクジェットプリンターとしてラインインクジェットプリンターを構成することが可能となる。すなわち、インクジェットヘッドを印刷位置に停止させたままの状態で記録紙に対して印刷を施すことが可能となる。
【0006】
このようなラインインクジェットプリンターでは印刷中にインクジェットヘッドを移動させる必要はないので、印刷動作を行うためにキャリッジ移動機構を備える必要はなく、印刷動作中のインクジェットヘッドの位置を検出するためのリニアエンコーダーを備える必要もない。しかし、ラインインクジェットプリンターにおいても印刷終了後にインクノズル面をヘッドキャップで覆ってインクの蒸発を防止する必要があるので、インクジェットヘッドを印刷位置と待機位置との間で移動させる移動機構を備えなくてはならない。
【0007】
ここで、特許文献1と同様に、インクジェットヘッドを移動させるための移動機構にインクジェットヘッドが待機位置に移動したことを検出する検出器を設けておけば、検出器がキャリッジの位置を検出した時点から所定のステップ数だけステッピングモーターを駆動することによってインクジェットヘッドを待機位置から印刷位置に戻すことができる。しかし、例えば、待機位置から印刷位置への戻り途中に記録紙がインクジェットヘッドやキャリッジと干渉してインクジェットヘッドの印刷位置への移動が妨げられた場合には、ステッピングモーターが脱調してしまい、所定のステップ数だけステッピングモーターを駆動したにも拘わらずインクジェットヘッドが印刷位置に到達しないというエラーが発生することがある。このような場合に、シリアルインクジェットプリンターでは、印刷動作中のインクジェットヘッドの位置を検出するためのリニアエンコーダーによってインクジェットヘッドが印刷位置に移動したか否かを検出することができるので、エラーの発生を検出して、エラー状態からの回復処理を行うことができる。これに対して、ラインインクジェットプリンターはリニアエンコーダーを備えていないので、リニアエンコーダーの替わりに、インクジェットヘッドが印刷位置に移動したことを検出する検出器を設けなければならない。しかし、新たな検出器を単独で設けると、部品点数の増加を招くという問題がある。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、インクジェットヘッドが印刷位置に移動したことを検出する検出器を設けた場合でも、部品点数が増加することを抑制できるラインインクジェットプリンターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のラインインクジェットプリンターは、
インクジェットヘッドによる印刷位置を規定しているプラテンと、
前記印刷位置と当該印刷位置から離れた待機位置との間で前記インクジェットヘッドを移動させるヘッド移動機構と、
前記インクジェットヘッドと前記プラテンの間のギャップが予め定めた基準寸法となっている基準位置を基準として当該インクジェットヘッドを当該プラテンに接近する方向或いは離れる方向に移動させることにより前記ギャップを目標とする目標寸法に調整するギャップ調整機構とを有し、
前記ヘッド移動機構は、前記ギャップを前記基準寸法に維持した状態で前記インクジェットヘッドを移動させ、
前記ギャップ調整機構は、前記インクジェットヘッドが前記印刷位置において前記基準位置に位置していることを検出する検出器を備え、
前記検出器は、前記ヘッド移動機構によって前記インクジェットヘッドが前記印刷位置に移動させられたことを検出することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ヘッド移動機構がインクジェットヘッドとプラテンの間のギャップを基準寸法に維持した状態でインクジェットヘッドを移動させるので、ヘッド移動機構によってインクジェットヘッドが印刷位置に移動させられると、印刷位置に達したインクジェットヘッドは基準位置に配置される。従って、ギャップ調整機構においてインクジェットヘッドが基準位置に位置することを検出する検出器によって、インクジェットヘッドが印刷位置に移動したことを検出できる。この結果、ギャップ調整機構の検出器と、インクジェットヘッドが印刷位置に移動したことを検出する検出器を兼用できるので、ラインインクジェットプリンターが予めギャップ調整機構を備えている場合には、印刷位置にインクジェットヘッドが移動したことを検出するための検出器を新たに設ける必要がない。また、ラインインクジェットプリンターに、新たに、印刷位置にインクジェットヘッドが移動したことを検出する検出器とギャップ調整機構を搭載する場合には、印刷位置にインクジェットヘッドが移動したことを検出する検出器とギャップ調整機構の検出器を一つの検出器で兼用できるので、部品点数の増加を抑制できる。さらに、検出器の増加を抑制できるので、消費電力の増加を抑制することができる。また、検出器を設置するスペースの増加を抑制できるので、装置の小型化を図ることができる。
【0011】
本発明において、前記ヘッド移動機構および前記ギャップ調整機構を搭載するフレームを有し、前記検出器は、溝部を挟んで対向配置された発光部および受光部を備える検出部と、前記溝部に挿入されて前記発光部から受光部に向けて照射されている検出光を遮蔽することが可能な遮蔽部材とを備え、前記検出部および前記遮蔽部材のうちの一方が、前記インクジェットヘッド、或いは、前記ヘッド移動機構および前記ギャップ調整機構において前記インクジェットヘッドを搭載しているキャリッジに設けられており、他方が前記フレームに設けられていることが望ましい。このようにすれば、検出器を非接触型のものとすることができるので、インクジェットヘッドの位置を検出する際に、インクジェットヘッドの移動が阻害されることがない。
【0012】
この場合において、前記溝部は、前記プラテンの表面に対して垂直方向に延びていることが望ましい。このようにすれば、ギャップ調整に際してインクジェットヘッドがプラテンの表面に対して垂直方向に移動したときに、検出部と遮蔽部材が干渉することを防止できる。
【0013】
本発明において、前記基準寸法は、前記目標寸法よりも長く、前記ギャップ調整機構は、前記インクジェットヘッドが前記印刷位置において前記基準位置に位置していることが検出されると、前記インクジェットヘッドを前記プラテンに接近する方向に移動させることにより前記ギャップを前記目標寸法に調整することが望ましい。このようにすれば、インクジェットヘッドが印刷位置と待機位置の間を往復移動する際に、インクジェットヘッドとプラテンの間のギャップが印刷時におけるギャップよりも長く維持されるので、インクジェットヘッドとプラテン上の記録紙が干渉することを防止或いは抑制できる。
【0014】
本発明において、インクジェットヘッドが待機位置に移動したことを検出するためには、前記ヘッド移動機構は、前記インクジェットヘッドが前記待機位置に移動したことを検出する第2の検出器を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ギャップ調整機構においてインクジェットヘッドが印刷位置の基準位置にあることを検出する検出器によって、インクジェットヘッドが印刷位置に移動したことを検出することができる。従って、ギャップ調整機構の検出器とは別にインクジェットヘッドが印刷位置に移動したことを検出する検出器を設ける必要がなく、部品点数の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のラインインクジェットプリンターの全体構成を示す縦断面図である。
【図2】インクジェットヘッドおよびヘッド移動機構の説明図である。
【図3】ヘッド移動機構によるキャリッジの移動過程を示す説明図である。
【図4】キャリッジが印刷位置および待機位置に移動した状態を示す斜視図である。
【図5】ヘッド移動機構の側面図である。
【図6】ヘッド移動機構の印刷位置側の端部および印刷位置検出器の斜視図である。
【図7】モノレール機構の説明図である。
【図8】インクジェットヘッドの移動を制御する制御系のブロック図である。
【図9】インクジェットヘッド移動動作とプラテンギャップ調整動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したラインインクジェットプリンターを説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は本実施形態のプリンターの全体構成を示す縦断面図である。ラインインクジェットプリンター1は、複数種類のカラーインクを用いて長尺状の記録紙Pに印刷を行うものである。ラインインクジェットプリンター1の後側部分にはロール紙装填部2が設けられており、ここに装填されたロール紙3から引き出された記録紙Pは、ロール紙装填部2の前方に配置されたプラテン4の表面4aを経由する記録紙搬送経路5に沿って、プリンター前方に向かって搬送される。
【0019】
ロール紙装填部2の上方には記録紙Pのスキューを防止するための用紙ガイド6が配置され、その後方にロール紙3から記録紙Pを引き出すための繰り出しローラー7が配置されている。記録紙Pは、ロール紙3から繰り出しローラー7に向かって斜め後方に引き出された後、繰り出しローラー7に掛け回される。そして、繰り出しローラー7から前方に引き出された記録紙Pは、用紙ガイド6の後方に配置された図示しない負荷ローラーを経由した後、用紙ガイド6およびその前方に配置された搬送ローラー対8を経由して、プラテン4の表面を通過するようにセットされる。搬送ローラー対8は、記録紙Pに下側から当接する駆動ローラー8aと、駆動ローラー8aの側に上方から付勢された従動ローラー8bとを備えている。搬送ローラー対8の下側には駆動ローラー8aを正逆方向に回転させるための紙送りモーター9が配置されている。繰り出しローラー7、搬送ローラー対8、紙送りモーター9等によって、記録紙Pを記録紙搬送経路5に沿って正逆方向に搬送するための搬送手段が構成されている。
【0020】
プラテン4の上方にはキャリッジ10に搭載されたインクジェットヘッド11が配置されている。プラテン4の下方にはインクカートリッジ装着部12が設けられている。インクカートリッジ装着部12には、シアン、マゼンダ、イエローおよびブラックの4色のインクのそれぞれを貯留するインクカートリッジが装着される。インクカートリッジ装着部12にインクカートリッジを装着すると、インク供給管(図示省略)を介して、インク供給用のポンプ機構(図示省略)とインクカートリッジ内のインクタンクとが接続された状態となり、インクジェットヘッド11へのインクの供給が可能となる。
【0021】
図2はインクジェットヘッドおよびヘッド移動機構の説明図であり、図2(a)は平面構成を示す説明図、図2(b)はプリンター前面側から見た概略断面構成を示す説明図である。図2(a)に示すように、インクジェットヘッド11は、第1ヘッド11Aおよび第2ヘッド11Bを備える複合ヘッドであり、第1ヘッド11Aにはブラックおよびシアンのインクを吐出するインクノズル列が形成され、第2ヘッド11Bにはイエローおよびマゼンダのインクを吐出するインクノズル列が形成されている。第1および第2ヘッド11A、11Bは記録紙Pよりも幅広に形成されており、各ヘッドにおけるインクノズル列は、記録紙Pの印刷領域全体をカバーできる幅の領域に配列されている。
【0022】
図2(b)に示すように、第1および第2ヘッド11A、11Bはインクノズル面11aを下向きにしてキャリッジ10に搭載されており、キャリッジ10を水平にしたとき、インクノズル面11aが水平になるように構成されている。キャリッジ10は、各ヘッドのインクノズル面11aとプラテン4の表面4aとの間に予め設定した寸法のギャップGが形成される高さにインクジェットヘッド11を保持している。
【0023】
プラテン4の側方にはメンテナンスユニット13が配置されている。キャリッジ10は、プラテン4の上方の印刷位置Aから、メンテナンスユニット13の上方のホームポジション(退避位置:図2(a)(b)において一点鎖線で示す位置)Bまでの範囲でインクジェットヘッド11を往復移動させる。インクジェットヘッド11は、印刷位置Aでは、長手方向を記録紙Pの記録紙搬送方向Xと直交する方向に向けた横向きの姿勢になっており、第1および第2ヘッド11A、11Bに設けられた各色のインクノズル列が記録紙Pの印刷領域をカバーしている。ホームポジションBではインクジェットヘッド11が印刷位置Aでの姿勢から90度回転した姿勢になっており、長手方向を記録紙搬送方向Xと一致させた縦向きの姿勢になっている。
【0024】
ここで、ラインインクジェットプリンター1は、キャリッジ10を移動させることによりインクジェットヘッド11を印刷位置AとホームポジションBとの間で往復移動させるヘッド移動機構14と、印刷位置Aにおいてキャリッジ10をプラテン4に接近させる方向および離れる方向に移動させることによりプラテン4とインクジェットヘッド11の間のギャップGを調整するギャップ調整機構50を備えている。
【0025】
ラインインクジェットプリンター1は、インクジェットヘッド11が印刷位置Aに位置すると、ギャップ調整機構50によりプラテン4とインクジェットヘッド11の間のギャップGを印刷に適した目標寸法G0(図9参照)とする。この状態で、記録紙Pが所定ピッチずつ搬送される毎にインクジェットヘッド11からインクの吐出動作を行うことにより、記録紙Pへ印刷を施す。また、ラインインクジェットプリンター1は、印刷が終了すると、ギャップ調整機構50によりギャップGを目標寸法G0よりも長い基準寸法G1とする(図9参照)。その後、ヘッド移動機構14によってインクジェットヘッド11をプラテン4の上から外れたホームポジションBに退避させ、このホームポジションBで待機させる。待機中には、メンテナンスユニット13により、インクジェットヘッド11のインクノズルの目詰まりを防止あるいは解消するためのメンテナンス動作を行う。すなわち、メンテナンスユニット13の上端に設けられたヘッドキャップを上昇させてインクノズル面11aをキャッピングし、必要に応じてヘッドキャップ内へのインクの吐出動作やヘッドキャップ側からのインク吸引動作を行う。あるいは、メンテナンスユニット13にワイピング機構を設けておき、インクノズル面11aをワイピングする。印刷を再開するときには、ヘッドキャップやワイピング機構を下側に退避させてから、ヘッド移動機構14によってインクジェットヘッド11を印刷位置Aに移動させる。
【0026】
(ヘッド移動機構)
図3、4を参照して、ヘッド移動機構14によるキャリッジ10の移動経路およびヘッド移動機構14の構成を詳細に説明する。図3はヘッド移動機構14によるキャリッジ10の移動過程を示す説明図である。図4(a)はヘッド移動機構14によってインクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動させられた状態を記録紙搬送方向Xの下流側の上方から見た斜視図であり、図4(b)はヘッド移動機構14によってインクジェットヘッド11がホームポジションBに移動させられた状態を記録紙搬送方向Xの下流側の上方から見た斜視図である。
【0027】
ヘッド移動機構14は、キャリッジ10の幅方向の一端側の角部10aと他端側の角部10bの2箇所においてキャリッジ10を支持しており、この2箇所を異なる移動経路に沿って案内するように構成されている。角部10aは、印刷位置AにおいてホームポジションBの側に位置しており、角部10bは、ホームポジションBとは逆の側に位置している。図3に示すように、角部10aの移動経路T1は、記録紙搬送方向Xと直交する方向から記録紙搬送方向Xと平行な方向に方向転換しており、方向転換部分が円弧状移動経路になっている。一方、角部10bの移動経路T2は、記録紙搬送方向Xと直交する方向に延びる直線状移動経路である。
【0028】
図3(a)に示すように、角部10aの移動経路T1は、印刷位置Aの側から順に、記録紙搬送方向Xと直交する短い第1直線経路T1aと、円弧状経路T1b(円弧状移動経路)と、記録紙搬送方向Xと平行な第2直線経路T1cを繋げた形状をしている。キャリッジ10が印刷位置Aのとき、角部10aは第1直線経路T1a上にあり、角部10bは移動経路T2の始端部分(印刷位置A側の端部)に位置している。円弧状経路T1bは、ホームポジションBの側に向かうに従って移動経路T2から遠ざかる形状に設定されている。
【0029】
キャリッジ10が印刷位置AからホームポジションBへ移動するときは、図3(b)に示すように、角部10aが第1直線経路T1aに沿って記録紙搬送方向Xと直交する方向に移動する。このとき、角部10bも同様に記録紙搬送方向Xと直交する方向に移動するため、キャリッジ10は、印刷位置Aと同じ姿勢のままで幅方向に移動する。次に、図3(c)に示すように、角部10aが円弧状経路T1bに沿って移動する。このとき、角部10bは移動経路T2に沿って直線状に進む一方で、角部10aは移動経路T2から離れてゆく。このため、キャリッジ10は、角部10bを中心として時計回りに回転しながら移動することになる。キャリッジ10は、このような回転による姿勢変化が可能な状態で支持されている。続いて、角部10aが第2直線経路T1cに沿って移動し、角部10bは移動経路T2の終端部分(ホームポジションB側の端部)に沿って移動するときも、角部10aは移動経路T2から離れてゆくため、キャリッジ10は時計回りに回転しながら移動する。図3(d)に示すように、キャリッジ10がホームポジションBに到達したとき、印刷位置Aのときの姿勢から90度回転した姿勢になっている。ホームポジションBから印刷位置Aに戻るときは、この逆の過程で移動する。
【0030】
次に、ヘッド移動機構14の各部の構成について説明する。ヘッド移動機構14は、図2(a)、図4に示すように、記録紙搬送経路5による記録紙搬送方向(X方向)と直交する方向に延びるキャリッジフレーム15と、キャリッジフレーム15のホームポジションB側の端部に支持されているキャリッジモーター16を備えている。キャリッジフレーム15はラインインクジェットプリンター1の装置本体フレーム(不図示)に支持されている。キャリッジモーター16はステッピングモーターである。キャリッジフレーム15のホームポジションB側の端部はホームポジションBの左端まで延びており、この部分に、ホームポジションBの左端位置に沿って記録紙搬送方向の上流側に延びる吊り下げフレーム17が取り付けられている。なお、図4では、吊り下げフレーム17に天板17aが取り付けられた状態となっている。キャリッジフレーム15は、上下方向に延びている垂直板部15aと、垂直板部15aの上端から記録紙搬送方向の上流側に向かって水平に延びている水平板部15bを備えており、水平板部15bの下側に吊り下げフレーム17の基端部が固定されている。
【0031】
図5はヘッド移動機構14の側面図(図2(a)のY1方向から見た側面図)であり、図2(a)のZ−Z線よりも右側の部分は図示を省略している。図6はヘッド移動機構14の印刷位置A側の端部の斜視図(図2(a)のY2方向から見た斜視図)であり、図7はキャリッジ10を吊り下げるためのモノレール機構の説明図であり、図7(a)は平面構成を示す説明図、図7(b)は部分斜視図である。ヘッド移動機構14は、ホームポジションB側の角部10aを上から吊って円弧状経路T1bを含む移動経路T1に沿って案内するモノレール機構18と、ホームポジションBとは逆の側の角部10bを直線状の移動経路T2に沿って案内するスライド案内機構19を備えている。
【0032】
モノレール機構18は、吊り下げフレーム17におけるプラテン4側の縁部に形成されたガイドレール20と、このガイドレール20からキャリッジ10の角部10aを吊り下げるために角部10aに設けられた吊り下げ部21を備えている。ガイドレール20は、図2(a)に示すように、第1直線経路T1aを規定している短い第1直線レール部20Aと、円弧状経路T1bを規定しており、第1直線レール部20Aの左端から記録紙搬送方向上流側に向かって円弧状に延びている円弧状レール部20Bと、第2直線経路T1cを規定しており、円弧状レール部20Bの後端から記録紙搬送方向Xと平行に延びている第2直線レール部20Cとを備えている。ガイドレール20の各部分は、図5、図7に示すように、下向きに延びる垂直な壁部22aと、壁部22aの下端から壁部22aの両側に水平に延びる水平部22bとを備えており、T字型を上下逆にした断面形状をしている。
【0033】
吊り下げ部21は、図7(b)に示すように、キャリッジ10の角部10aからガイドレール20に向けて上向きに突出する突出部23と、突出部23の先端に設けられた走行部24とを備えている。走行部24は、突出部23に対し、キャリッジ10を水平にしたときに垂直な方向(すなわち、インクノズル面11aに対して垂直な方向)を向く回転軸線(図示省略)を中心として回転可能となるように取り付けられている。走行部24は、軸線方向を水平にした走行ローラー25およびこれを挟んで配置された一対のガイドローラー26を備えるローラーユニット27を、壁部22aの厚さに対応する隙間を空けて対向配置した構成である。各ガイドローラー26は、軸線方向を垂直にして配置されている。走行部24は、壁部22aをローラーユニット27の隙間に挿入し、水平部22bの上に各走行ローラー25を載せた状態となるようにガイドレール20に装着される。これにより、壁部22aの表裏両面をガイドローラー26によってガイドしながら、水平部22bの上を各走行ローラー25が落下することなく走行可能になる。ガイドレール20に沿って走行部24を走行させると、角部10aは、ガイドレール20に吊り下げられた状態で、第1直線レール部20A、円弧状レール部20B、第2直線レール部20Cによって規定される移動経路T1に沿って移動する。
【0034】
スライド案内機構19は、図2、図4、図5、図7に示すように、キャリッジフレーム15の垂直板部15aに沿って、記録紙搬送方向Xと直交する方向に、且つ、水平に延びているキャリッジ軸30と、このキャリッジ軸30にスライド可能に支持されているスライダー31と、スライダー31をキャリッジ軸30に沿って往復移動させるための駆動ベルト機構32を備えている。駆動ベルト機構32はキャリッジモーターの16の出力回転に基づいて駆動される。図5に示すように、スライダー31には水平に延びる角型断面の溝31aが形成されており、溝31aの内部にキャリッジ軸30が装着されている。スライダー31は、キャリッジ軸30の表面に溝31aの内側面を摺動させながら、キャリッジ軸30に沿ってスライドする。スライダー31における溝31aの背面側には軸保持部31bが形成されている。軸保持部31bは、キャリッジ10の角部10bに取り付けられた垂直な回転軸33を回転可能に保持している。
【0035】
図5、図6に示すように、キャリッジ10の角部10bの上部には筒状部34が形成され、ここに回転軸33が挿通されている。また、角部10bの下端部分には筒状部34と同軸状に配置された円板状部分35が形成されており、円板状部分35の中央の軸孔に回転軸33の下端側の部分が挿通されている。回転軸33は、キャリッジ10を水平な姿勢にしたとき、その回転軸線Lがインクノズル面11aおよびこれに対峙する記録紙Pの印刷面に対して垂直になるように取り付けられている。キャリッジ10における筒状部34の下側は、スライダー31の軸保持部31bを装着可能な凹み形状となっている。ここに軸保持部31bが挿入され、軸保持部31bの軸孔に回転軸33の中央部分が挿入されている。このような構成により、回転軸33を介して、キャリッジ10がスライダー31に回転自在に保持されると共に、スライダー31を介してキャリッジ10の角部10b側の重量がキャリッジ軸30に支持された状態になっている。キャリッジ軸30に沿ってスライダー31を往復移動させると、これに伴い、キャリッジ10の角部10bおよび回転軸33がキャリッジ軸30に沿って記録紙搬送方向Xと直交する方向に往復移動する。
【0036】
回転軸33の上端は筒状部34の上に突出しており、その先端には上部ガイドローラー36が取り付けられている。キャリッジフレーム15の上端部分に設けられた水平板部15bの下側には、下向きに突出する矩形断面の上部ガイド37が取り付けられている。上部ガイド37と、キャリッジフレーム15における垂直板部15aの上端部分との間に上部ガイドローラー36が配置されており、上部ガイド37は、上部ガイドローラー36に対し、図5の右側から当接している。同様に、回転軸33の下端は円板状部分35の下側に突出しており、その先端に下部ガイドローラー38が取り付けられている。キャリッジフレーム15の垂直板部15aの下端部分には、下部ガイドローラー38と同一高さの部分に下部ガイドローラー38の側に突出する下部ガイド39が取り付けられている。下部ガイド39は、下部ガイドローラー38に対し、図5の左側から当接している。
【0037】
キャリッジ10がキャリッジ軸30に沿って往復移動するとき、上部ガイドローラー36が上部ガイド37の側面37aによってガイドされ、且つ、下部ガイドローラー38が下部ガイド39の側面39aによってガイドされながら移動する。ここで、キャリッジ10は、回転軸33の中央部分を支持しているスライダー31を介して片持ち状態で支持されており、キャリッジ10の重心Qは回転軸33からずれている。このため、回転軸33には、回転軸33の上端をキャリッジ10の重心の側(図5の右側)に傾ける回転力(図5の時計回りの方向への回転力)が作用している。しかしながら、上部ガイドローラー36に対してキャリッジ10の重心Qの側(図5の右側)に上部ガイド37が配置され、下部ガイドローラー38に対してキャリッジ10の重心Qとは逆の側(図5の左側)に下部ガイド39が配置されているため、キャリッジ10の重量に起因する傾き方向への回転軸33の傾きが防止され、キャリッジ10が水平な姿勢で保持されている。
【0038】
ここで、ヘッド移動機構14は、図4(a)、図6に示すように、キャリッジ10が印刷位置Aに移動したことを検出するヘッド位置検出器(検出器)40を備えている。ヘッド位置検出器40は、ギャップ調整機構50において、プラテン4とインクジェットヘッド11の間のギャップGが基準寸法G1となっているときのインクジェットヘッド11の基準位置Rを検出するためのヘッド位置検出器40であり、ヘッド移動機構14では、キャリッジ10が印刷位置Aに移動したことを検出する検出器として兼用されている。
【0039】
ヘッド位置検出器40は、印刷位置Aの右側において装置本体フレームに搭載された検出部41と、キャリッジ10が印刷位置Aに配置されたときに装置本体フレームと対向するインクジェットヘッド11の端面に設けられた検出凸部(遮蔽部材)42を備えている。検出部41には上下方向(プラテン4の表面4aに対して垂直方向)に延びる上向きの溝部41aが形成されており、この溝部41aを挟み、発光部41bと受光部41cが対向配置されている。溝部41aには記録紙搬送方向Xと直交する方向から検出凸部42が挿入可能となっており、検出凸部42が発光部41bと受光部41cの間の隙間に挿入されて発光部41bから受光部41cに向けて照射されている検出光を遮蔽すると、ヘッド位置検出器40は、キャリッジ10が印刷位置Aに移動したことを検出する。なお、検出凸部42はキャリッジ10が印刷位置Aに配置されたときに装置本体フレームと対向するキャリッジ10の端面に設けておくこともできる。
【0040】
また、ヘッド移動機構14は、図4(b)に示すように、キャリッジ10がホームポジションBに移動したことを検出するためのホームポジション検出器(第2の検出器)43を備えている。ホームポジション検出器43は、ホームポジションBの左側において装置本体フレームに固定されている。ホームポジション検出器43は、キャリッジ10がホームポジションBに移動したときに当該キャリッジ10に当接して移動させられるレバー(不図示)と、このレバーの移動を検出する光学式の検出部を備えており、レバーが所定位置に移動するとキャリッジ10がホームポジションBに移動したことを検出する。なお、ホームポジション検出器43として、ヘッド位置検出器40と同様の検出器を採用することもできる。すなわち、キャリッジ10或いはインクジェットヘッド11に検出凸部を備え、装置本体フレームに溝部を挟んで発光部と受光部が対向配置された構成の検出部を備えるものを採用することもできる。この場合には、ホームポジション検出器の検出部の溝部にヘッド位置検出器40を構成している検出凸部42が挿入される構成を採用することもできる。また、ホームポジション検出器43として、キャリッジ10がホームポジションBに移動したときにキャリッジ10に押されてオンおよびオフの一方の状態となり、キャリッジ10がホームポジションから離れたときに、開放されてオンおよびオフの他方となるスイッチを採用することもできる。
【0041】
(ギャップ調整機構)
次に、ギャップ調整機構50はキャリッジ軸30を上下動させることによってキャリッジ10を昇降させ、これにより、インクジェットヘッド11のインクノズル面11aとプラテン4の表面4aの間のギャップGを調整する。すなわち、キャリッジ10は、スライダー31を介してキャリッジ軸30に装着されており、キャリッジ軸30によって上下位置が規定されているので、ギャップ調整機構50は、インクジェットヘッド11が印刷位置Aにあるときにキャリッジ軸30を上下方向に移動させて、プラテン4に対するインクジェットヘッド11の位置を調整する。
【0042】
図4、図6に示すように、ギャップ調整機構50は、キャリッジ軸30の印刷位置A側およびホームポジションB側の各端部に回転不能に取り付けられたカム部材51と、その下側に固定されたカムピン52と、キャリッジ軸30を介してカム部材51を回転させるためのギャップ調整用モーター53を備えている。キャリッジ軸30の両端は、キャリッジフレーム15の左右の端部に設けられた図示しない長孔を通るように装着されている。カム部材51は、図6に示すように、周方向の位置に応じて径寸法D(キャリッジ軸30の軸中心からの距離)が連続的に変化する外周形状をした無段階カムであり、カム部材51の外周面をカム面51aとして用いている。カム部材51は、カム面51aに当接するカムピン52によって下側から支持されている。ギャップ調整用モーター53の出力軸は減速機構を介してキャリッジ軸30に連結されている。
【0043】
ギャップ調整用モーター53を回転駆動させると、キャリッジ軸30が回転し、カム部材51がキャリッジ軸30と一体回転する。カム部材51が回転すると、カムピン52に当接するカム面51aの位置が変化し、これに応じてキャリッジ軸30が上下動する。なお、カム部材51およびカムピン52は、キャリッジ軸30の印刷位置A側およびホームポジションB側の各端部に配置されているので、キャリッジ軸30は水平な姿勢を保ったままで上下動する。
【0044】
また、ギャップ調整機構50は、ヘッド位置検出器40を備えている。ヘッド位置検出器40は、プラテン4とインクジェットヘッド11の間のギャップGが目標とする目標寸法G0よりも長い基準寸法G1となっているときに、インクジェットヘッド11が基準位置Rにあることを検出するものであり、キャリッジ10が印刷位置Aに移動したことを検出するための検出器と兼用されている。キャリッジ10の側に設けられた検出凸部42が発光部41bと受光部41cの間の隙間に挿入されて発光部41bから受光部41cに向けて照射されている検出光を遮蔽すると、ギャップ調整機構50においては、プラテン4とインクジェットヘッド11の間のギャップGが基準寸法G1となっており、インクジェットヘッド11が基準位置Rに位置していることが検出される。
【0045】
ギャップ調整を行う際には、ギャップ調整用モーター53の回転駆動によりキャリッジ軸30を移動させて、ギャップGが基準寸法G1となる基準位置Rにインクジェットヘッド11を配置して、ヘッド位置検出器40にインクジェットヘッド11の位置を検出させる。しかる後に、ギャップ調整用モーター53を予め設定した回転量だけ回転駆動してキャリッジ軸30を下降させ、これによりキャリッジ10をプラテン4に接近させ、ギャップGが目標寸法G0となる目標位置Sにインクジェットヘッド11を配置する。
【0046】
(インクジェットヘッド移動制御およびギャップ調整制御)
図8はインクジェットヘッド11の移動を制御する制御系のブロック図である。図8に示すように、ラインインクジェットプリンター1はインクジェットヘッド11の移動制御を司る移動制御部60を備えている。移動制御部60の入力側にはヘッド位置検出器40およびホームポジション検出器43が接続されており、移動制御部60の出力側には、ヘッド移動機構14のキャリッジモーター16およびギャップ調整機構50のギャップ調整用モーター53が接続されている。移動制御部60は、ヘッド位置検出器40およびホームポジション検出器43の検出結果に基づいてキャリッジモーター16およびギャップ調整用モーター53を駆動制御することにより、インクジェットヘッド11を印刷位置AとホームポジションBとの間で往復移動させる。また、移動制御部60は、ヘッド位置検出器40の検出結果に基づいてギャップ調整用モーター53を駆動制御することにより、印刷位置Aにおいてプラテン4とインクジェットヘッド11の間のギャップGを調整する。
【0047】
次に、図9を参照してインクジェットヘッド移動動作とプラテンギャップ調整動作を説明する。図9はインクジェットヘッド移動動作とプラテンギャップ調整動作の説明図であり、プリンター前面側から見た概略断面構成を示している。まず、インクジェットヘッド11は、図9(a)に示すように、印刷位置AにおいてギャップGが目標寸法G0に調整された目標位置Sに配置されているものとする。
【0048】
インクジェットヘッド11を印刷位置AからホームポジションBに移動させる際には、図9(b)に示すように、移動制御部60はギャップ調整機構50を制御してインクジェットヘッド11を基準位置Rに配置する。より詳細には、移動制御部60はギャップ調整用モーター53を駆動制御することによりキャリッジ軸30を上昇させて、ヘッド位置検出器40によってインクジェットヘッド11が検出されるまで、キャリッジ10を上昇させる。ヘッド位置検出器40によってインクジェットヘッド11が検出されると、移動制御部60はギャップ調整用モーター53を停止させる。これにより、インクジェットヘッド11は目標位置Sから基準位置Rに移動し、ギャップGは基準寸法G1となる。
【0049】
次に、移動制御部60は、キャリッジ10を印刷位置AからホームポジションBに移動させるのに必要な所定ステップ数だけキャリッジモーター16を駆動する。これにより、キャリッジ10は印刷位置AからホームポジションBに移動する。ここで、ギャップ調整機構50によってギャップGが基準寸法G1とされると、キャリッジ軸30はギャップGが目標寸法G0となっているときよりも上方の位置に保持されており、インクジェットヘッド11が印刷位置AからホームポジションBに移動する際には、インクジェットヘッド11とプラテン4との間のギャップGは目標寸法G0よりも長い基準寸法G1に維持される。
【0050】
その後、キャリッジ10がホームポジションBに達すると、図9(c)に示すように、ホームポジション検出器43によってインクジェットヘッド11がホームポジションBに移動したことが検出される。
【0051】
ここで、キャリッジモーター16が、インクジェットヘッド11を印刷位置AからホームポジションBに移動させるのに必要なステップ数だけ駆動されたにも拘わらず、ホームポジション検出器43によってインクジェットヘッド11がホームポジションBに移動したことが検出されていない場合には、移動制御部60はエラーを検出する。すなわち、移動制御部60は、インクジェットヘッド11或いはキャリッジ10が記録紙Pなどと干渉してその移動が阻害されており、これに起因してキャリッジモーター16において脱調が発生したことを検出する。エラーを検出すると、移動制御部60はラインインクジェットプリンター1に予め搭載されている表示器(不図示)にエラーの発生を表示する。その後、エラーの発生を認識したユーザーによってインクジェットヘッド11或いはキャリッジ10と記録紙Pが干渉している状態が解消されると、移動制御部60は、ホームポジション検出器43によってインクジェットヘッド11がホームポジションBに移動したことが検出されるまでキャリッジモーター16を駆動して、インクジェットヘッド11をホームポジションBに到達させる。これにより、ラインインクジェットプリンター1はエラー状態から回復する。
【0052】
次に、インクジェットヘッド11をホームポジションBから印刷位置Aに移動させる際には、移動制御部60は、キャリッジ10をホームポジションBから印刷位置Aに到達させるのに必要な所定ステップ数だけキャリッジモーター16を駆動する。これにより、キャリッジ10はホームポジションBから印刷位置Aに移動する。キャリッジ10が印刷位置Aに達すると、図9(d)に示すように、ヘッド位置検出器40によってインクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動したことが検出される。より詳細には、インクジェットヘッド11がホームポジションBから印刷位置Aに移動する際にも、インクジェットヘッド11はギャップGが基準寸法G1に維持されたままの状態で移動するので、インクジェットヘッド11が印刷位置Aに達すると、インクジェットヘッド11は基準位置Rに配置される。従って、ヘッド位置検出器40によってインクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動したことが検出される。
【0053】
ここで、キャリッジモーター16が、インクジェットヘッド11をホームポジションBから印刷位置Aに移動させるのに必要な所定ステップ数だけ駆動されたにも拘わらず、ヘッド位置検出器40によってインクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動したことが検出されていない場合には、移動制御部60はエラーを検出する。すなわち、移動制御部60は、インクジェットヘッド11或いはキャリッジ10が記録紙Pなどと干渉してその移動が阻害されており、これに起因してキャリッジモーター16において脱調が発生したことを検出する。エラーを検出すると、移動制御部60は表示器にエラーの発生を表示する。その後、エラーの発生を認識したユーザーによってインクジェットヘッド11或いはキャリッジ10と記録紙Pが干渉している状態が解消されると、移動制御部60は、ヘッド位置検出器40によってインクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動したことが検出されるまでキャリッジモーター16を駆動して、インクジェットヘッド11を印刷位置Aに到達させる。これにより、ラインインクジェットプリンター1はエラー状態から回復する。
【0054】
ヘッド位置検出器40によってインクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動したことが検出されると、図9(e)に示すように、移動制御部60は、ギャップGを印刷に適した目標寸法G0とする。より詳細には、ヘッド位置検出器40によってインクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動したことが検出されると、ギャップ調整機構50においては、印刷位置Aにおいてインクジェットヘッド11が基準位置Rに位置していることが検出される。そこで、移動制御部60は、ギャップ調整用モーター53を予め設定した回転量だけ回転駆動させることによりキャリッジ軸30を下降させてキャリッジ10をプラテン4に接近させ、基準寸法G1となっていたギャップGを目標寸法G0とする。これにより、インクジェットヘッド11は印刷に適した目標位置Sに配置される。
【0055】
(作用効果)
本例によれば、ヘッド移動機構14がインクジェットヘッド11とプラテン4の間のギャップGを基準寸法G1に維持した状態でインクジェットヘッド11を移動させるので、ヘッド移動機構14によってインクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動させられると、印刷位置Aに達したインクジェットヘッド11は基準位置Rに配置される。よって、ギャップ調整機構50において、インクジェットヘッド11が基準位置Rにあることを検出する検出器(ヘッド位置検出器40)によって、インクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動したことを検出できる。従って、ラインインクジェットプリンター1が予めギャップ調整機構50を備えている場合には、このギャップ調整機構50の検出器を、印刷位置Aにインクジェットヘッド11が移動したことを検出する検出器として用いることができ、インクジェットヘッド11が印刷位置Aに移動したことを検出する印刷位置検出器を新たに設ける必要がない。また、ラインインクジェットプリンター1に、新たに、印刷位置Aにインクジェットヘッド11が移動したことを検出する検出器と、ギャップ調整機構50とを搭載する場合には、印刷位置Aにインクジェットヘッド11が移動したことを検出する検出器とギャップGの調整に必要な検出器とを一つの検出器で兼用できる。従って、部品点数が増加することを抑制でき、装置の小型化を図ることが可能となる。また、検出器が増加することを抑制できるので、消費電力の増加を抑制することができる。
【0056】
さらに、本例によれば、インクジェットヘッド11が印刷位置AとホームポジションBの間を往復移動する際に、ギャップ調整機構50によってプラテン4とインクジェットヘッド11の間のギャップGが印刷時における目標寸法G0よりも長い基準寸法G1となっており、インクジェットヘッド11の移動中には、この基準寸法G1が維持される。従って、インクジェットヘッド11の移動時に、プラテン4上の記録紙Pがインクジェットヘッド11やキャリッジ10に干渉することを防止或いは抑制できる。
【0057】
また、本例によれば、インクジェットヘッド11が印刷位置Aに戻る毎に、プラテン4とインクジェットヘッド11の間のギャップGが印刷に適した目標寸法G0に調整されるので、印刷品質を維持できる。
【0058】
(その他の実施の形態)
上記の例では、ヘッド位置検出器40は非接触型のものであるが、接触型の検出器を採用することもできる。この場合には、ヘッド位置検出器40として、インクジェットヘッド11が印刷位置Aの基準位置Rに移動したときに当該インクジェットヘッド11或いはキャリッジ10に当接して所定位置に移動させられるレバーと、このレバーの所定位置への移動の移動を検出する光学式の検出部を備えるものとすることができる。また、ヘッド位置検出器40として、インクジェットヘッド11が印刷位置Aの基準位置Rに移動したときに、インクジェットヘッド11或いはキャリッジ10に押されてオンおよびオフの一方の状態となり、インクジェットヘッド11が印刷位置Aの基準位置Rから離れたときに、開放されてオンおよびオフの他方となるスイッチを採用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1・・ラインインクジェットプリンター、2・・ロール紙装填部、3・・ロール紙、4・・プラテン、4a・・プラテンの表面、5・・記録紙搬送経路、6・・用紙ガイド、7・・繰り出しローラー、8・・搬送ローラー対、8a・・駆動ローラー、8b・・従動ローラー、9・・紙送りモーター、10・・キャリッジ、10a・・角部、10b・・角部、11・・インクジェットヘッド、11A・・第1ヘッド、11B・・第2ヘッド、11a・・インクノズル面、12・・インクカートリッジ装着部、13・・メンテナンスユニット、14・・ヘッド移動機構、15・・キャリッジフレーム、15a・・垂直板部、15b・・水平板部、16・・キャリッジモーター、17・・吊り下げフレーム、17a・・天板、18・・モノレール機構、19・・スライド案内機構、20・・ガイドレール、20A・・直線レール部、20B・・円弧状レール部、20C・・直線レール部、21・・吊り下げ部、22a・・壁部、22b・・水平部、23・・突出部、24・・走行部、25・・走行ローラー、26・・ガイドローラー、27・・ローラーユニット、30・・キャリッジ軸、31・・スライダー、31a・・溝、31b・・軸保持部、32・・駆動ベルト機構、33・・回転軸、34・・筒状部、35・・円板状部分、36・・上部ガイドローラー、37・・上部ガイド、37a・・側面、38・・下部ガイドローラー、39・・下部ガイド、39a・・側面、40・・ヘッド位置検出器(検出器)、41・・検出部、41a・・溝部、41b・・発光部、41c・・受光部、42・・検出凸部(遮蔽部材)、43・・ホームポジション検出器(第2の検出器)、50・・ギャップ調整機構、51・・カム部材、51a・・カム面、52・・カムピン、53・・ギャップ調整用モーター、60・・移動制御部、A・・印刷位置、B・・ホームポジション、D・・径寸法、G・・ギャップ、G0・・目標寸法、G1・・基準寸法、L・・回転軸線、P・・記録紙、Q・・重心、R・・基準位置、S・・目標位置、T1・・移動経路、T1a・・直線経路、T1b・・円弧状経路、T1c・・直線経路、T2・・移動経路、X・・記録紙搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドによる印刷位置を規定しているプラテンと、
前記印刷位置と当該印刷位置から離れた待機位置との間で前記インクジェットヘッドを移動させるヘッド移動機構と、
前記インクジェットヘッドと前記プラテンの間のギャップが予め定めた基準寸法となっている基準位置を基準として当該インクジェットヘッドを当該プラテンに接近する方向或いは離れる方向に移動させることにより前記ギャップを目標とする目標寸法に調整するギャップ調整機構とを有し、
前記ヘッド移動機構は、前記ギャップを前記基準寸法に維持した状態で前記インクジェットヘッドを移動させ、
前記ギャップ調整機構は、前記インクジェットヘッドが前記印刷位置において前記基準位置に位置していることを検出する検出器を備え、
前記検出器は、前記ヘッド移動機構によって前記インクジェットヘッドが前記印刷位置に移動させられたことを検出することを特徴とするラインインクジェットプリンター。
【請求項2】
請求項1において、
前記ヘッド移動機構および前記ギャップ調整機構を搭載するフレームを有し、
前記検出器は、溝部を挟んで対向配置された発光部および受光部を備える検出部と、前記溝部に挿入されて前記発光部から受光部に向けて照射されている検出光を遮蔽することが可能な遮蔽部材とを備え、
前記検出部および前記遮蔽部材のうちの一方が、前記インクジェットヘッド、或いは、前記ヘッド移動機構および前記ギャップ調整機構において前記インクジェットヘッドを搭載しているキャリッジに設けられており、他方が前記フレームに設けられていることを特徴とするラインインクジェットプリンター。
【請求項3】
請求項2において、
前記溝部は、前記プラテンの表面に対して垂直方向に延びていることを特徴とするラインインクジェットプリンター。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記基準寸法は、前記目標寸法よりも長く、
前記ギャップ調整機構は、前記インクジェットヘッドが前記印刷位置において前記基準位置に位置していることが検出されると、前記インクジェットヘッドを前記プラテンに接近する方向に移動させることにより前記ギャップを前記目標寸法に調整することを特徴とするラインインクジェットプリンター。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記ヘッド移動機構は、前記インクジェットヘッドが前記待機位置に移動したことを検出する第2の検出器を備えていることを特徴とするラインインクジェットプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−56464(P2013−56464A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195748(P2011−195748)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】