説明

ライン・スペース判定方法およびライン・スペース判定装置

【課題】ライン・スペース判定方法およびライン・スペース判定装置に関し、ラインとスペースの幅がほぼ同一でしかも明るさ・コントラストが同じような場合であっても画像上でいずれかラインでありいずれがスペースであるかを自動判定し、測長対象のラインあるいはスペースを間違いなく判定して測長する。
【解決手段】ラインとスペースとが混在する領域の画像を取得するステップと、ラインとスペースとが混在する領域を一方向に走査してラインプロファイルを取得するステップと、取得したラインプロファイルのラインとスペースの境界を表す部分のピークを検出し、ピークと隣接する他のピークとの間の領域のラインプロファイルの傾きを算出するステップと、算出したピークとピークとの間の領域の傾きの大小をもとに、スペースおよびラインを判定するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子顕微鏡を用いて生成した画像上で、パターンが形成されているラインとパターンが形成されていないスペースとを判定するライン・スペース判定方法およびライン・スペース判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、CADデータから生成したCAD画像をマスクに露光して現像した当該マスク上のパターンや、更に、マスクを用いて露光して現像したウェハ上のパターンについて、走査型電子顕微鏡を用いたパターン検査装置で実画像のパターンを取得(撮影)して測長する場合、マスク基板やウェハ基板の上に形成されたパターンがある部分をラインと呼び、パターンがない部分をスペースと呼び、測長する場合にいずれの部分を測長するか指定する必要があり、測長者が画像を見てこの部分を測長すると指定していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、測長個所が多数になると、全ての測長個所を画像上で指定る必要があり、多大の作業が必要になってしまう問題があった。
【0004】
また、CADデータ上で指定した場合には、走査型電子顕微鏡で撮影した画像上では当該走査型電子顕微鏡の試料移動装置の移動精度の関係で数百nÅの幅などと微細になると精密に所定場所に位置づけが困難であって、確実にCADデータ上で指定したパターンか否か確認できないという問題があった。
【0005】
更に、ラインとスペースの幅がほぼ同一でしかも明るさ・コントラストが同じような場合には、ラインとスペースの間には走査型電子顕微鏡で撮影した2次電子画像の特徴からピークが現れて白あるいは黒の境界線が明示されてその境界ははっきりするが、いずれかラインであり、いずれがスペースであるか判断し難いという大きな問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するため、走査型電子顕微鏡を用いて生成した画像上で、パターンが形成されているラインとパターンが形成されていないスペースとを判定する判定方法において、基板上あるいは基板上に形成された膜上に、パターンが形成されているラインとパターンが形成されていないスペースとが混在する領域の画像を取得するステップと、ラインとスペースとが混在する領域を一方向に走査してラインプロファイルを取得するステップと、取得したラインプロファイルのラインとスペースの境界を表す部分のピークを検出し、ピークと隣接する他のピークとの間の領域のラインプロファイルの傾きを算出するステップと、算出したピークとピークとの間の領域の傾きの大小をもとに、スペースおよびラインを判定するステップとを有するようにしている。
【0007】
この際、一方向に走査として、ラインとスペースとが混在する領域においてラインとスペースにほぼ直交する一方向に走査するようにしている。尚、実験では、直交する一方向(0°)に限られず、30°、45°、60°、更に大きな角度(90°に近い角度)でもよかったので、いずれにしても一方向に走査すればよい。しかし、ラインとスペース特定後に、ラインあるいはスペースをほぼ直交する方向にラインスキャンして精密測長する関係で、その方向に一致させ、特定と測長を同じ一方向(あるいは反対の一方向)に走査を行い、迅速化を図るという意味がある。
【0008】
また、一方向の走査に代えて、反対方向の一方向に走査するようにしている。
また、算出したピークとピークとの間の傾きが大きい、小さいと交互に出現した場合には、傾きが大きいグループと、傾きが小さい部グループとに分けてそれぞれ傾きを平均化した後、平均の傾きの大小をもとに、スペースおよびラインを判定するようにしている。
【0009】
また、判定したラインをもとに画像上の該当パターンにラインである旨のマークを表示、および前記判定したスペースをもとに画像上のパターンのない該当部分にスペースである旨のマークを表示、のいずれか一方あるいは両者を行うようにしている。
【0010】
また、基板あるいは基板上に形成された膜をSiO2とし、基板あるいは膜上にCr/Cr2O3のラインを生成するようにしている。
【0011】
また、傾きが大きい領域をスペース、小さい領域をラインとするようにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、走査型電子顕微鏡を用いて生成した画像上で、パターンが形成されているラインとパターンが形成されていないスペースとを判定する判定方法において、基板上あるいは基板上に形成された膜上にラインとスペースとが混在する領域の画像を取得、およびラインとスペースとが混在する領域を一方向に走査したラインプロファイルを取得し、取得したラインプロファイルのラインとスペースの境界を表す部分のピークを検出し、ピークと隣接する他のピークとの間の領域のラインプロファイルの傾きを算出し、算出したピークとピークとの間の領域の傾きの大小をもとに、スペースおよびラインを判定することにより、ラインとスペースの幅がほぼ同一でしかも明るさ・コントラストが同じような場合であっても画像上でいずれかラインでありいずれがスペースであるかを自動判定し、測長対象のラインあるいはスペースを間違いなく判定して測長などすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、走査型電子顕微鏡を用いて生成した画像上でラインとスペースの幅がほぼ同一でしかも明るさ・コントラストが同じような場合であってもいずれかラインでありいずれがスペースであるかを自動判定し、測長対象のラインあるいはスペースを間違いなく判定して測長などすることを実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明のシステム構成図を示す。
図1において、走査型電子顕微鏡1は、試料(マスク)4の拡大画像を生成するものであって、電子線ビームを発生する電子銃、発生された電子線ビームを集束する集束レンズ、集束された電子線ビームを試料4の上に細く絞る対物レンズ、微細かつ高速に電子線ビームを試料4の上に細く絞る(フォーカス調整、フォーカス合わせする)ためのダイナミックコイル、試料4の上で細く絞られた電子線ビームを平面走査(X方向およびY方向に走査)するための2段の偏向系、更に、細く絞った電子線ビーム2で試料4の上を平面走査したときに放出された2次電子、光、反射された反射電子を検出する検出器などから構成され、試料4の表面の画像(2次電子画像、反射電子画像)などを生成する公知のものである。
【0015】
鏡筒2は、走査型電子顕微鏡1を構成する鏡筒であって、電子銃、集束レンズ、対物レンズ、2段偏向系、検出器などを収納した公知のものである。
【0016】
試料室3は、試料4、ステージ5などを収納などする、真空の部屋である。
試料(マスク、ウェハ)4は、測定対象のマスクやウェハなどの試料であって、ここでは、マスクやウェハ上にパターンの形成されたライン、およびパターンの形成されていないスペースを有するものである。ここでは、試料4の1例であるマスクとして、SiO2(石英)の上にCr/Cr2O3などのパターンを形成するようにしている。
【0017】
ステージ5は、試料4を搭載して微細に所望の位置に移動させるものであって、図示外のレーザ干渉計(X方向、Y方向)にそれぞれ精密に移動可能なものである。
【0018】
パソコン11は、プログラムに従い各種処理を実行するものであり、ここでは、位置合わせ手段12、画像取得手段13、プロファイル取得手段14、ピーク間領域検出手段15、傾き検出手段16、領域判定手段17、測定手段18、およびDB21などから構成されるものである。
【0019】
位置合わせ手段12は、設計データ、CADデータ上で測定対象のパターンが指定されたときに、当該位置にステージ5などを移動制御し、画像上のほぼ中心に位置合わせするものである。
【0020】
画像取得手段13は、位置合わせ手段12で位置合わせされた位置を中心に、画像を取得するものである。例えば画像取得手段13は、位置合わせ手段12でステージ5を移動制御して試料4の指定された位置に位置合わせされた後、電子線ビームを照射しつつ平面走査し、そのときに放出された2次電子を検出・増幅して表示装置19に画像として表示する。
【0021】
プロファイル取得手段14は、画像取得手段13で取得されて表示された画像上で、指定された場所の近傍について電子線ビームで一方向にライン走査し、そのときに放出された2次電子を検出器で検出・増幅して例えば後述する図5の(a)のラインプロファイルを表示(取得)するものである。
【0022】
ピーク間領域検出手段15は、プロファイル取得手段14によって取得したラインプロファイル(例えば図5の(a))中で、ピークとピークの間の領域をそれぞれ検出するものである。
【0023】
傾き検出手段16は、ピーク間領域検出手段15によって検出された領域毎に、当該領域の傾きをそれぞれ検出するものである。
【0024】
領域判定手段17は、傾き検出手段16によって検出された領域毎の傾きをもとに、領域がライン(パターンの形成された部分)、あるいはスペース(パターンが形成されていない部分)のいずれかを判定するものである(図2から図7を用いて後述する)。
【0025】
測定手段18は、領域判定手段17によって判定されたラインあるいはスペースの寸法を測長などするものである。測長は、ラインあるいはスペースを判定したラインプロファイルと同じラインプロファイル中のピークとピークとの間の距離を測長して求めるようにしている。これにより、ラインとスペースをほぼ直交する一方向に走査して取得したラインプロファイルのピークとピークとの間の傾きをもとにラインあるいはスペースを自動判定した後、併せて同じラインプロファイルのピークとピークとの間の距離を測定してラインあるいはスペースの距離を求めることが可能となる。
【0026】
表示装置19は、画像、ラインプロファイルなどを表示するものである(図2から図8参照)。
【0027】
入力装置20は、データや各種指示を入力するものであって、マウス、キーボード、タッチパネルなどである。
【0028】
DB21は、各種データ、結果などを格納するものであって、ここでは、22ないし24などから構成されるものである。
【0029】
設計データ22は、試料4である例えばマスク上に形成するパターンを設計したデータである。
【0030】
領域データ23は、ピーク間領域検出手段15が検出した領域などのデータを保存するものである。
【0031】
結果データ24は、領域判定手段17によって領域毎に判定された結果(ライン、スペース)を保存するものである。
【0032】
次に、図2のフローチャートの順番に従い、図1の構成の全体の動作を説明する。
図2は、本発明の動作説明フローチャート(全体)を示す。
【0033】
図2において、S1は、試料をセットする。これは、図1の試料4である、ここでは、マスクをステージ5にセットする(図示外のロボットで図示外の予備排気室から試料室3へ搬送してステージ5に固定する)。
【0034】
S2は、CADデータ又はマニュアルで測定対象パターンへ移動する。これは、図1の表示装置19上にCADデータをもとに表示したパターン上で操作者が測定対象パターンをマウスなどで指定したことに対応して、位置合わせ手段12がステージ5を移動制御して測定対象パターンがほぼ画像上の中心になるようにする。または、操作者が、図1の表示装置19に表示した画像を観察しながらステージ5を移動制御し、測定対象パターンがほぼ中心になるように調整する。
【0035】
S3は、2次電子画像を表示する。これは、S2でマスク上の測定対象パターンが画像のほぼ中心に位置するようにステージ5を移動制御されたので、画像取得手段13が電子線ビームを照射しつつ平面走査し、放出された2次電子を検出・増幅して表示装置19上に画像(2次電子画像)を表示、例えば後述する図5の(b)のように表示する。
【0036】
S4は、2次電子プロファイル(一方向スキャン)を表示する。これは、S3で表示装置19に画像を表示した状態で、測定対象パターンを横切るように電子線ビームを一定方向(例えば左から右方向に一方向)にスキャンし、放出された2次電子を検出・増幅してラインプロファイルを表示、例えば後述する図5の(a)のラインプロファイルを表示する。この際、画像上に一方向にスキャンした場所に当該ラインプロファイルを重畳して表示してもよい(図5の(b)の画像上にその走査位置に対応づけて図5の(a)のラインプロファイルを重畳表示してもよい)。
【0037】
S5は、ラインプロファイルのピークとピークの間の傾きを算出する。これは、例えば図5の(a)のラインプロファイル中のピークとピークとの間の領域毎に、当該領域の傾きをそれぞれ算出する。
【0038】
S6は、傾きからマスク材料部と基盤のガラス部とを区別して表示する。これは、S5で算出したピークとピークとの間の傾きが大きい場合にはスペース、即ち基盤のガラス部と判定し、一方、小さい場合にはライン、即ち、マスク材料部と判定し、両者を区別して表示する。例えば後述する図7に示すように、ライン(マスク材料部)に○のマークを付与して区別して表示する。
【0039】
S7は、測定対象であるマスク材料部又は基盤ガラス部を測定する。これは、S6で判定されたマスク材料部(ライン)又は基盤ガラス部(スペース)のうちの指定された方について、図示外の測長手段で精密に測定する。例えばラインキャンしてそのときのピークとピークの間隔を算出し、当該部分の寸法と決定する。
【0040】
以上のように、測長対象パターンの画像を表示すると共にラインプロファイルを取得して当該ラインプロファイルのピークとピークとの間の領域毎に傾きを算出し、当該傾きをもとにライン(ここでは、マスク材料部)又はスペース(ここでは、基盤ガラス部)と自動判定することが可能となる。これにより、走査型電子顕微鏡を用いて生成した画像上でラインとスペースの幅がほぼ同一でしかも明るさ・コントラストが同じような場合であってもいずれかラインでありいずれがスペースであるかを自動判定し、測長対象のラインあるいはスペースを間違いなく判定して測長などすることが可能となる。
【0041】
以下順次詳細に説明する。
図3は、本発明の動作説明フローチャート(材料の判定)を示す。
【0042】
図3において、S11は、ピークを検出する。これは、例えば図5の(a)の一方向(右方向)にラインスキャン(右スキャン)したときのラインプロファイル中のピークP1,P2,P3,P4,P5,P6をそれぞれ検出する。
【0043】
S12は、ピーク間にラベルを付与する。ここでは、ラベル(1)からレベル(5)を
図5の(a)に示すように付与する。
【0044】
S13は、奇数((1)、(3)、(5))の平均の傾きを求める。これは、図5の(a)の奇数のラベル(1)の傾きSL1、ラベル(3)の傾きSL3、ラベル(5)の傾きのSL5の平均、即ち、Ask=((SL1+SL3+SL5)/3)を求める。
【0045】
S14は、偶数((2)、(4))の平均の傾きを求める。これは、図5の(a)の偶数のラベル(2)の傾きSL2、ラベル(4)の傾きSL4の平均、即ち、Asg=((SL2+SL4)/2)を求める。
【0046】
S15は、Asg>Askか判別する。YESの場合には、Asg(偶数(2)、(4))の平均傾きが大きいと判明したので、S16でAsgをガラス部(スペース)と判定、およびS17でAskをマスク材料部(ライン)と判定する(図5の(a)の場合)。一方、NOの場合には、Ask(奇数(1)、(3)、(5))の平均傾きが大きいと判明したので、S18でAskをガラス部(スペース)と判定、およびS19でAsgをマスク材料部(ライン)と判定する。
【0047】
以上によって、例えば図5の(a)のラインプロファイル(右方向に一方向)のピークとピークの間の領域にラベルを付与し、奇数ラベルの傾きの平均をAsk、偶数ラベルの傾きの平均をAsgをそれぞれ求め、傾きの大きい方、ここではAsgをガラス部(スペース)と判定、および傾きの小さい方、ここではAskをマスク材料部(ライン)と判定することが可能となる。
【0048】
尚、S13、S14で奇数ラベルの平均の傾きおよび偶数ラベルの平均の傾きを求め、傾きの大きい領域をスペース、傾きの小さい領域をラインと判定したが、これに限られない。ラインとスペースとを構成する物質に依存して傾きが逆の場合には、傾きによる判定を逆とすればよい。また、複数のラベルの領域をグループ分けしてグループ間の傾きの大小でスペースとラインとを判定したが、隣接する領域についてその領域の傾きの大小によって同様に、スペースとラインを判定するようにしてもよい。
【0049】
図4は、本発明の説明図を示す。図示のように、マスク(基盤)上にパターンが形成された場合、1次電子線ビームの走査は、図示のように、左から右へスキャンする右スキャンと、右から左へスキャンする左スキャンとがある。右スキャンしたときのラインプロファイルを図5の(a)に示し、左スキャンしたときのラインプロファイルを図6の(a)に示す。また、右スキャンおよび左スキャンの両者のスキャンしたときのラインプロファイルを図8の(a)に示す。
【0050】
図5は、本発明の実測例(右スキャン)を示す。
図5の(a)は、ラインプロファイル例(右スキャン)を示す。
【0051】
(1)図3のフローチャートの説明で既述したように、ラインプロファイルのピークの位置をP1,P2,P3,P4,P5,P6と検出する。
【0052】
(2)検出したピークとピークとの間の領域をラベル(1)、(2)、(3)、(4)、(5)と図示のように付与する。
【0053】
(3)各ラベル(1)から(5)の領域毎に図示の傾きをそれぞれ算出する。
(4)そして、ここでは、奇数のラベル(1)、(3)、(5)の傾きの平均をAskとして算出する(図2のS13)。同様に偶数のラベル(2)、(4)の傾きの平均をAsgとして算出する(図2のS14)。
【0054】
(5)奇数のラベルの傾きの平均値Askと、偶数のラベルの傾きの平均値Asgとを比較し、ここでは、偶数のラベルの平均の傾きAsgが大きいので、当該部分をパターンでない部分(スペース)と判定し、奇数のラベルの平均の傾きAskが小さいので、当該部分をパターン部分(ライン)と判定することが可能となることを、本発明者は実験によって見つけ、再現性が良好であることも実験で確認できた。
【0055】
当該理由は、細く絞った電子線ビームで試料(マスクなど)上を走査することで、パターンのエッジ部分にチャージ現象が発生すると思われ、パターンの部分(ライン)とパターンでない部分(スペース)とで、一方向にラインスキャンして得たラインプロファイル(一方向スキャン)したときに各ピークとピークとの間の領域毎の傾きの違いとして出現され、それを検出してラインとスペースとして区別できること、更に、再現性良好に区別できることが実験により判明した。
【0056】
走査する一方向はラインあるいはスペースにほぼ直交する方向が後に続く測長するときに同じラインプロファイルを使って両者の判定と測長を行うことができる。しかし、ラインあるいはスペースを判定するには一方向が直交(0°)である必要は無く、30°、45°、60°、更に大きな角度(90°の近い大きな角度)でも、同じ現象が観察された。
【0057】
尚、両方向にラインスキャンした場合には、後述する図8の(a)に示すように、傾きの違いは検出されなかった。
【0058】
図5の(b)は、2次電子画像上にライン、スペースの区別を表示した例を示す。図示の2次電子画像は、マスクを電子線ビームで照射しつつ平面走査し、そのときに放出された2次電子を検出・増幅して表示した画像上に、図5の(a)の右キャンして得たラインプロファイルをもとに上述した奇数のラベルの平均の傾きが小さいのでライン部分、および偶数のラベルの平均の傾きが大きいのでスペース部分と判定し、図示のように該当部分に区別できるように表示した例を示す。図示の画像のように、ラインとスペースの幅がほぼ同一でしかも明るさ・コントラストが同じような場合には、画像上でいずれかラインでありいずれがスペースであるかを人が判定することは極めて困難であるが、上述した手法により本願発明では自動判定してラインとスペースを区別して表示するので、測長対象のラインあるいはスペースを間違いなく判定(認識)して測長などすることが可能となる。
【0059】
図6は、本発明の実測例(左スキャン)を示す。
図6の(a)はラインプロファイル(左スキャン)を示し、図6の(b)は2次電子画像を示す。ここで、図6の(a)のラインプロファイルでは、左スキャンであるので、図5の(a)の右スキャンのラインプロファイルに比べて、パターンでない部分(スペース)の部分の傾きが逆になっていることが判明する(図5の(a)の傾きは右下がり、図6の(a)の傾きは左下がりで、傾きが逆になっていることが判明する)。同様に、図6の(b)の画像でも、その違いがわずかに認識できる(スペースの部分の右端が僅か明るく、左端が僅か暗い)。図5の(b)では逆であることが認識できる。
【0060】
図7は、本発明の判定結果例を示す。これは、既述した図3のフローチャートに従い、右スキャンして得た図5の(a)のラインプロファイルからラインを判定し、当該ラインの領域に○印を表示し、スペースと区別できるように表示した例を示す。
【0061】
図8は、本発明の実測例(両スキャン)を示す。
図8の(a)はラインプロファイル例を示し、図8の(b)は2次電子画像例を示す。これらは、右スキャンおよび左スキャンの両スキャンした場合のものであって、図8の(a)のラインプロファイルでは、スペース部分の傾きがほぼ平坦となってしまっている。図5の(a)の右スキャンの一方向のみスキャンしたときに得られたラインプロファイルのスペース部分の傾き、および図6の(a)の左スキャンの一方向のみスキャンしたときに得られたラインプロファイルのスペース部分の傾きの両者を合算して平坦になっているように見える。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、ラインとスペースの幅がほぼ同一でしかも明るさ・コントラストが同じような場合であっても画像上でいずれかラインでありいずれがスペースであるかを自動判定し、測長対象のラインあるいはスペースを間違いなく判定して測長などするライン・スペース判定方法およびライン・スペース判定装置に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のシステム構成図である。
【図2】本発明の動作説明フローチャート(全体)である。
【図3】本発明の輪郭抽出フローチャート(材料の判定)である。
【図4】本発明の説明図である。
【図5】本発明の実測例(右スキャン)である。
【図6】本発明の実測例(左スキャン)である。
【図7】本発明の判定結果例である。
【図8】本発明の実測例(両スキャン)である。
【符号の説明】
【0064】
1:走査型電子顕微鏡
2:鏡筒
3:試料室
4:試料(マスク)
5:ステージ
11:パソコン(コンピュータ)
12:位置合わせ手段
13:画像取得手段
14:プロファイル取得手段
15:ピーク間領域検出手段
16:傾き検出手段
17:領域判定手段
18:測定手段
19:表示装置
20:入力装置
21:DB
22:設計データ
23:領域データ
24:結果データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型電子顕微鏡を用いて生成した画像上で、パターンが形成されているラインとパターンが形成されていないスペースとを判定する判定方法において、
基板上あるいは基板上に形成された膜上に、パターンが形成されているラインとパターンが形成されていないスペースとが混在する領域の画像を取得するステップと、
前記ラインとスペースとが混在する領域を一方向に走査してラインプロファイルを取得するステップと、
前記取得したラインプロファイルのラインとスペースの境界を表す部分のピークを検出し、当該ピークと隣接する他のピークとの間の領域のラインプロファイルの傾きを算出するステップと、
前記算出したピークとピークとの間の領域の傾きの大小をもとに、スペースおよびラインを判定するステップと
を有するライン・スペース判定方法。
【請求項2】
前記一方向に走査として、前記ラインとスペースとが混在する領域において当該ラインとスペースにほぼ直交する一方向に走査することを特徴とする請求項1記載のライン・スペース判定方法。
【請求項3】
前記一方向の走査に代えて、反対方向の一方向に走査することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のライン・スペース判定方法。
【請求項4】
前記算出したピークとピークとの間の傾きが大きい、小さいと交互に出現した場合には、傾きが大きいグループと、傾きが小さいグループとに分けてそれぞれ傾きを平均化した後、平均の傾きの大小をもとに、スペースおよびラインを判定することを特徴とする請求項1からは請求項3のいずれかに記載のライン・スペース判定方法。
【請求項5】
前記判定したラインをもとに当該画像上の該当パターンにラインである旨のマークを表示、および前記判定したスペースをもとに当該画像上のパターンのない該当部分にスペースである旨のマークを表示、のいずれか一方あるいは両者を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のライン・スペース判定方法。
【請求項6】
前記基板あるいは基板上に形成された膜をSiO2とし、当該基板あるいは膜上にCr/Cr2O3のラインを生成したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のライン・スペース判定方法。
【請求項7】
前記傾きが大きい領域をスペース、小さい領域をラインとしたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のライン・スペース判定方法。
【請求項8】
前記ラインとスペースにほぼ直交する一方向に走査してラインプロファイルを取得してラインとスペースを判定した後、同じプロファイル中のピークをもとに、前記判定したラインあるいはスペースあるいは両者の距離を測長することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のライン・スペース判定方法。
【請求項9】
走査型電子顕微鏡を用いて生成した画像上で、パターンが形成されているラインとパターンが形成されていないスペースとを判定する判定装置において、
基板上あるいは基板上に形成された膜上に、パターンが形成されているラインとパターンが形成されていないスペースとが混在する領域の画像を取得する手段と、
前記ラインとスペースとが混在する領域を一方向に走査してラインプロファイルを取得する手段と、
前記取得したラインプロファイルのラインとスペースの境界を表す部分のピークを検出し、当該ピークと隣接する他のピークとの間の領域のラインプロファイルの傾きを算出する手段と、
前記算出したピークとピークとの間の領域の傾きの大小をもとに、スペースおよびラインを判定する手段と
を備えたことを特徴とするライン・スペース判定装置。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−37985(P2009−37985A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203589(P2007−203589)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(591012668)株式会社ホロン (63)
【Fターム(参考)】