説明

ラクタム化合物含有ナノ粒子分散体

本発明は、特定のナノ粒子を安定剤の存在下水性媒体に分散せしめて成るナノ粒子分散体を提供し、該ナノ粒子は、式I:


(式中、R,R,R,R,R,R,RおよびQは明細書の記載と同意義である)
のラクタム化合物からなる。本発明は、癌または他の増殖疾患の処置法としての上記ナノ粒子分散体の非経口投与法、また上記ラクタム化合物のナノ粒子から成る固形ナノ粒子組成物およびその投与法にも関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ラクタム化合物の少なくとも1種のナノ粒子を含有する組成物に関する。かかる組成物は、腫瘍の処置に有用である。癌または他の増殖疾患の処置のための、該組成物の使用法も提供される。
【背景技術】
【0002】
エポチロン化合物(epothilones)は、医薬分野で有用性を有するマクロライド化合物である。たとえば、エポチロンAおよびBは、下式の構造を有し、一定の微生物から単離できる天然産出化合物である。
【化1】

【0003】
公知のエポチロン化合物は、TAXOL(登録商標)に類する微小管−安定化効果を発揮し、従って、癌や他の高増殖性細胞疾患で起こるような、急速に増殖する細胞に対して細胞毒活性を示す(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,Vol.35,No.13/14,1996;および D.M.Bollag の Exp.Opin.Invest.Drugs, 6(7):867-873,1997 参照)。
【0004】
有利な活性を有するエポチロン類縁体は、式I:
【化2】

(式中、各種記号は下記に定義する)
のラクタム化合物で代表される。これらの化合物並びに他のエポチロン類縁体の詳細は、たとえばU.S.特許No.6605599、6262094、6288237、6613912および6831076に記載され、かかる特許はそれぞれ、本発明出願人に譲渡されている。式Iで示される1つの格別有利なラクタム化合物は、イキサベピロン(ixabepilone)であって、これはU.S.特許No.6605599の実施例3に記載されている。
【0005】
しかしながら、これらのラクタム化合物は、患者の疾患処置に使用できる前に、患者に投与しうる医薬組成物に、たとえば経口投与、粘膜投与(たとえば鼻腔、舌下、膣、頬または直腸投与)、非経口投与(たとえば皮下、静脈内、ボーラス注入、筋肉内または動脈内)または経皮投与に適する投与剤形に処方(配合)しなければならない。
【0006】
式Iのラクタム化合物は、重要な治療特性を有するが、一定の化学特性の結果として、医薬調合の当業者に対し忌避(challenges)も示す。これらの化合物は、ラクタム環の形状の中に窒素部分を含有するが、一般に水溶解性は低く、かつ水性媒体への処方が困難である。さらに、これらの化合物の幾つかは、水中で分解し易い。U.S.特許No.6670384に、式Iのラクタム化合物から調製した静脈注射用組成物が開示されている。ラクタム化合物を水とt−ブタノールの混合物中で、凍結乾燥することにより、凍結乾燥物が得られる。静脈注射用組成物は、ラクタム化合物凍結乾燥物を、脱水アルコールと非イオン性界面活性剤、たとえばポリオキシエチル化ひまし油の混合物中で再組成することによって調製される。しかしながら、ポリオキシエチル化ひまし油の使用は、不都合、たとえば患者に投与される医薬的活性成分の最大用量の潜在的制限などをもたらしうる。
【0007】
式Iのラクタム化合物を含有する組成物にあって、当該分野で望まれるのは、その溶解度数値を越える濃度で、好ましくはポリオキシエチル化ひまし油を適用せずに、非経口投与することができ、および/または安定性の高い組成物である。
【発明の開示】
【0008】
本発明によれば、式Iのラクタム化合物のナノ粒子を含有する組成物であって、現存する配合物(製剤)の場合より高濃度での非経口投与に好適であるか、あるいはポリオキシエチル化ひまし油を用いて配合したものなどの現存配合物より長期間にわたる投与を可能ならしめるのに十分な安定性を有するものが提供される。さらに本発明の組成物は、有機溶媒が実質的に無い水性担体中で、配合し、患者に投与することができる。
【0009】
(発明の概要)
本発明は、式Iのラクタム化合物の少なくとも1種のナノ粒子を含有する組成物に関する。本発明の1つの側面によれば、ナノ粒子は液体媒体に分散しうる。本発明の別の側面によれば、該ナノ粒子の表面に安定剤の少なくとも1種を吸着させてよく、かかる安定剤は、平均粒径約1ミクロン以下の分散ナノ粒子を付与するのに十分な量で存在することができる。本発明の異なる側面によれば、ナノ粒子から成る固形組成物が提供される。また、癌または他の増殖疾患を処置する方法であって、患者に対して、ナノ粒子を含有する医薬組成物を投与する処置法も提供される。
【0010】
図1は、ナノ粒子分散体F1−F4および対照溶液のラットへのボーラス注入後の時間関数として、ラクタム化合物Ia、ixabepiloneの血漿濃度を示す。
(発明の詳細)
定義
本明細書で本発明の説明に用いる各種語句の定義は、以下通りである。これらの定義は、特定の場合に他に特別の限定がなければ、本明細書を通じて個別的あるいはより大なる基の一部として用いる語句に適用される。
【0011】
語句“アルキル”とは、炭素数1〜約20、好ましくは1〜約7の必要に応じて置換される直鎖または分枝鎖飽和炭化水素基を指称する。語句“低級アルキル”とは、炭素数1〜4のアルキル基を指称する。“置換低級アルキル”とは、1〜4個の炭素原子および下記“置換アルキル”基の場合に列挙したものから選ばれる1、2または3個(好ましくは1または2個)の置換基を有するアルキル基を指称する。
【0012】
語句“置換アルキル”とは、たとえば1〜4個の置換基(好ましくは1または2個の置換基)、たとえばハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、オキソ(=O)、アルカノイル、アリール、アリールオキシ、アラルキル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ジ置換アミノ(ここで、アミノ基上の2個の置換基は、アルキル、アリールおよびアラルキルから選ばれる)、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、アルキルチオノ、アリールチオノ、アラルキルチオノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、スルホンアミド(たとえばSONH)、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル(たとえばCONH)、置換カルバミル(たとえばCONRR’、ここで、RおよびR’は水素、アルキルおよびアリールから選ばれ、但し、RとR’の少なくとも一方は水素でない)、アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、グアニジノ、およびヘテロシクロ、たとえばインドリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジル等で置換されたアルキル基を指称する。ここで、上記の如く、置換基自体もさらに置換されてよく、さらなる置換基としては、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリールおよびアラルキルからなる群から選ばれる。アルキルおよび置換アルキルの場合に示した定義は、アルコキシ基のアルキル部にも適用される。
【0013】
語句“ハロゲン”または“ハロ”とは、フッ素、塩素、臭素および沃素を指称する。
語句“アリール”とは、環部に約6〜12個の炭素原子を有する、必要に応じて置換されるモノ環式またはジ環式芳香族炭化水素基を指称し、たとえばフェニルおよびナフチルが挙げられる。
語句“アラルキル”とは、大きな存在物(larger entity)に対しアルキル基を介して結合するアリール基、たとえばベンジル基を指称する。
【0014】
語句“置換アリール”とは、たとえば1〜4個の置換基(好ましくは1または2個の置換基)、たとえばアルキル、置換アルキル、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アラルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、アルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、ウレイド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルバミル、アルコキシカルボニル、アルキルチオノ、アリールチオノ、アルキルスルホニル、スルホンアミド、アリールオキシ等で置換されたアリール基を指称する。置換基はさらに、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリール、置換アルキル、置換アリールおよびアラルキルからなる群から選ばれる1個以上の基で置換されてよい。
【0015】
語句“シクロアルキル”とは、好ましくは1〜3つの環を含有し、環1つ当りの炭素数3〜7の、必要に応じて置換される飽和環式炭化水素環系を指称し、さらに不飽和のC−C炭素環式環と縮合していてもよい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシルおよびアダマンチルが挙げられる。置換基の具体例としては、上記アルキルもしくは置換アルキル基の1個以上、またはアルキル基の置換基として上記した基の1個以上が挙げられる。加えて、シクロアルキルは、1または2個の橋頭(bridgehead)炭素原子の炭素−炭素橋を含有してもよく、および/または環炭素原子の1または2個(好ましくは1個)を、必要に応じてカルボニル基(ケトで置換)に置換してもよい。
【0016】
語句“複素環”、“複素環式”および“ヘテロシクロ”とは、少なくとも1個の炭素原子含有の環に少なくとも1個のヘテロ原子を有し、必要に応じて置換される、不飽和、部分飽和または完全飽和の芳香族または非芳香族環式基、たとえば4〜7員モノ環式、7〜11員ジ環式、または10〜15員トリ環式環系である基を指称する。ヘテロ原子を含有する複素環式基の各環は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1、2または3個のヘテロ原子を有してよく、この場合、窒素および硫黄ヘテロ原子は必要に応じて酸化されてもよく、また窒素ヘテロ原子は必要に応じて第4級化されてもよい。複素環式基は、ヘテロ原子もしくは炭素原子のいずれかで結合しうる。
【0017】
モノ環式複素環式基の具体例としては、ピロリジニル、ピロリル、ピラゾリル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソキサゾリニル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、2−オキサゼピニル、アゼピニル、4−ピペリドニル、ピリジル、N−オキソ−ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオピラニル・スルホン、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニル・スルホキシド、チオモルホリニル・スルホン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロ−1,1−ジオキソチエニル、ジオキサニル、イソチアゾリジニル、チエタニル、チイラニル、トリアジニル、トリアゾリル等が挙げられる。
【0018】
ジ環式複素環式基の具体例としては、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチエニル、キヌクリジニル、キノリニル、キノリニル−N−オキシド、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリル、インドリジニル、ベンゾフリル、クロモニル、クマリニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジニル(たとえばフロ[2,3−c]ピリジニル、フロ[3,1−b]ピリジニル、またはフロ[2,3−b]ピリジニル)、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキナゾリニル(たとえば3,4−ジヒドロ−4−オキソ−キナゾリニル)、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾジアジニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズピラゾリル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾチオピラニル、ジヒドロベンゾチオピラニル・スルホン、ジヒドロベンゾピラニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、ナフチリジニル、フタラジニル、ピペロリニル、プリニル、ピリドピリジル、キナゾリニル、テトラヒドロキノリニル、チエノフリル、チエノピリジル、チエノチエニル等が挙げられる。
小さなヘテロシクロ、たとえばエポキシド、アジリジンなども含まれる。
【0019】
“複素環”、“複素環式”および“ヘテロシクロ”基の置換基の具体例としては、アルキル、置換アルキル、または上記置換アルキルまたは置換アリール基の場合に記載した1個以上の置換基が挙げられる。
語句“アルカノイル”とは、−C(O)−アルキルを指称する。
語句“置換アルカノイル”とは、−C(O)−置換アルキルを指称する。
語句“ヘテロ原子”には、酸素、硫黄および窒素が含まれる。
語句“希釈液”および“注入液体”とは、本明細書で取り替えて使用でき、たとえば非経口(皮下、静脈内、ボーラス注入、筋肉内または動脈内など)投与による、患者への投与用液体を意味する。
【0020】
式Iのラクタム化合物は、種々の有機および無機酸を用いて塩を形成しうる。かかる塩としては、塩化水素、臭化水素、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸を用いて形成される塩、および医薬調合の分野の当業者が認識しているような他の種々の塩が挙げられる。かかる塩は、該塩が析出する媒体または水性媒体中、式Iのラクタム化合物を少なくとも1当量の酸と反応させ、次いで蒸発することによって形成される。
【0021】
加えて、両性イオンも形成でき、これも本明細書で用いる語句“塩”の中に含まれる。
本明細書で用いる語句“エポチロン”とは、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンEおよびエポチロンFから選ばれる化合物を指称する。
【0022】
本明細書で用いる語句“ラクタム化合物”および“式Iのラクタム化合物”とは、
【化3】

[式中、Qは
【化4】

,R,R,R,R,R,RおよびR10はそれぞれ独立して、H、アルキル、置換アルキルおよび/またはアリールで、RとRがアルキルのとき、両者は共に合して、シクロアルキルを形成でき;およびRおよびRはそれぞれ独立して、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリールおよび/またはヘテロシクロである]
を指称する。
【0023】
1つの制限具体例において、ラクタム化合物は、Qが
【化5】

である式Iのラクタム化合物から選ばれる。
異なる制限具体例において、ラクタム化合物は、Rがヘテロシクロ、たとえばチアゾリルまたは置換チアゾリルである式Iのラクタム化合物から選ばれる。
【0024】
式Iの好ましいラクタム化合物は、
【化6】

である。
また“ラクタム化合物Ia”と称せられる式Iaのラクタム化合物は、ixabepilone であって、下記の化学名を持つ。
[1S−[1R,3R(E),7R,10S,11R,12R,16S]]−7,11−ジヒドロキシ−8,8,10,12,16−ペンタメチル−3−[1−メチル−2−(2−メチル−4−チアゾリル)エテニル]−4−アザ−17−オキサビシクロ[14.1.0]ヘプタデカン−5,9−ジオン
式Iaのラクタム化合物,ixabepilone の製造法は、U.S.特許No.6518421、およびU.S.特許出願公報2004/0132146A1に記載されている。
【0025】
50値とは、容積分布に基づき、粒子の50%がD50値よりも小さい径を有しおよび粒子の50%がD50値よりも大きい径を有する粒子の母集団に対する母数を指称する。D100値とは、粒子の100%がD100値より小さい径を有する最小値を表わす母数を指称する。D50値およびD100値は、適当な静レーザー光線散乱技法、たとえばHoriba(登録商標)LA−910 Laser Diffraction Particle Size Analyzer(レーザー回折粒径分析器)(Horiba Ltd.、日本)によって測定しうる。本明細書で用いる“平均粒径”とは、D50値を指称する。光学鏡検法を用いて、大きな凝集物が存在しないことを確かめることができる。
【0026】
本発明の組成物は、式Iのラクタム化合物のナノ粒子を含有する。ナノ粒子は、約1ミクロン以下、好ましくは約700ナノメートル(nm)以下、より好ましくは約500nm以下の平均粒径を有しうる。ナノ粒子の平均粒径の好ましい範囲は、約50nm〜1ミクロンの範囲、好ましくは約100〜700nmの範囲、より好ましくは約100〜500nmの範囲を包含しうる。1つの具体例において、式Iのラクタム化合物のナノ粒子はまた、約5ミクロン以下、好ましくは約4ミクロン以下、最も好ましくは約2.5ミクロン以下のD100値を有する。本発明のナノ粒子分散体は、粒径測定の前に、5ミクロン細孔フィルターで濾過しうる。
【0027】
ラクタム化合物はナノ粒子中、結晶、非晶質形態、またはこれらの混合物で存在しうる。結晶が好ましい。本発明の組成物は、式Iのラクタム化合物の種々の多形態を含有しうる。式Iaのラクタム化合物の結晶性多形態は、U.S.特許No.6689802に記載されている。
【0028】
式Iのラクタム化合物の結晶は、当該分野で公知の方法、たとえばWO00/39276、WO02/14323、WO03/070170、Crystallization Processes, Ohtaki H., Wiley(1998)、およびHandbook of Industrial Crystallization, Meyerson Allan S., Butterworth−Heinemann(1993)に記載の方法によって製造することができる。これらの結晶を特性決定する適当な技法は、当該分野で公知であり、粉末X線回折技法が包含される。たとえば、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、トルエン、酢酸イソプロピル、メチルt−ブチルエーテル、もしくはメチルイソブチルケトンなどの適当な溶剤を単一溶剤として、または抗溶剤(antisolvents)(たとえばヘキサン、n−ヘプタンまたはシクロヘキン)と併用して用い、該溶剤中のラクタム化合物の溶液を周囲温度でまたは沸点までの温度で調製しあるいはプロセス流れ(process stream)から得る。溶液を攪拌または非攪拌下、これに適当な抗溶剤を加えるかもしくは温度を下げるか、または両手段を併用することにより、溶液を過飽和にする。必要に応じて、混合物の沸点もしくはそれ以下での加熱時間を延ばして、結晶特性をコントロールする。生成する結晶を濾過で集め、必要に応じて加熱しながら、標準大気圧もしくは減圧下で乾燥しうる。
【0029】
本発明のナノ粒子分散体は、式Iのラクタム化合物のナノ粒子、安定剤の少なくとも1種、および液体媒体から成る。ナノ粒子分散体は、ナノ粒子を必要とする患者に対し、有効量のナノ粒子の投与を可能ならしめるのに十分な濃度のナノ粒子を含有しうるが、ナノ粒子の濃度は、ナノ粒子分散体があまりに粘稠もしくは不安定になりすぎる位、高くなりすぎないことが必要である。たとえば、ナノ粒子分散体は、ナノ粒子分散体の重量に基づき約0.1〜40重量%、好ましくは約0.5〜20重量%、より好ましくは約1〜10重量%範囲のナノ粒子を含有しうる。
【0030】
1つの具体例において、ナノ粒子分散体は2種以上の異なる式Iのラクタム化合物を含有する。好ましい具体例において、ナノ粒子分散体は、式Iaのラクタム化合物を含有する。
またナノ粒子分散体は、安定剤の少なくとも1種を含有しうる。安定剤は、ナノ粒子の表面に吸着させることができる。典型例として、ナノ粒子は、好ましくは安定剤の存在下液体媒体に分散する。安定剤は、分散プロセス中個々のナノ粒子の湿潤および/または分離を助ける補助剤として使用しうる。個々のナノ粒子の湿潤および/または分離を助ける安定剤の能力は、安定剤を含有する組成物と安定剤なしの対照組成物のナノ粒子分散プロセスの比較によって決定しうる。個々のナノ粒子の湿潤および/または分離を助ける安定剤の能力は、同様なプロセス条件下、同じ分散時間で、同じ平均粒径のまたはより小さな平均粒径のナノ粒子分散体を得るのに必要な短い分散時間で表示されうる。
【0031】
別法として、安定剤は、液体媒体、好ましくは水性媒体に分散したナノ粒子の安定性を促進するのに使用しうる。ナノ粒子の安定性を促進する安定剤の能力は、安定剤を含有するナノ粒子分散体を安定剤なしの対照ナノ粒子分散体と比較して、20℃で24時間後のナノ粒子の沈降が少ないことによって決定しうる。別法として、安定性は、静レーザー光線散乱で測定されるD50値における、200nm以下、好ましくは50nm以下の増加によって確かめることができる。さらに安定剤は、5ミクロン以上、好ましくは1ミクロン以上の凝集物もしくは粒子の非存在またはほとんど非存在によっても確かめることができる。
【0032】
本明細書で用いる“表面に吸着”とは、安定剤がナノ粒子の表面に会合していることを示すが、安定剤がラクタム化合物の生物学的利用能を実質的に妨げないような程度までである。たとえば、安定剤は粒子の表面に物理的に吸着しうる。別法として、安定剤はたとえば共有結合、水素結合あるいはファンデルワールス力などによって、表面に結合しうる。2種以上の安定剤を使用して、液体媒体へのナノ粒子の分散および/または分散したナノ粒子の安定性を最適化することができる。たとえば、最初の安定剤を用いて、個々のナノ粒子の湿潤や分散を助成し、二番目の安定剤を用いて、液体媒体に分散したナノ粒子に安定性を付与することができる。
【0033】
安定剤は、ナノ粒子の湿潤もしくは安定化を助成する、有機および/または無機の医薬用賦形剤および/または他の物質から選ばれてよい。適当な安定剤としては、たとえば各種ポリマー、低分子量オリゴマー、天然物、酵素、および/または非イオン性およびアニオン性界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。適当な安定剤の具体例としては、これらに限定されないが、ゼラチン、カゼイン、レシチン、アカシアゴム、コレステロール、トラガカントゴム、ステアリン酸、ベンズアルコニウムクロリド、ステアリン酸カルシウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸、胆汁酸塩、グリセリル・モノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴル(cetomacrogol)乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、ホスフェート、リゾチーム、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルブミン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース・フタレート、非結晶性セルロース、珪酸マグネシウム・アルミニウム、ポリビニルアルコール、グレードK29/32、K30、K13−19、K12およびK17などのポリビニルピロリドン、酢酸ビニルとビニルピロリドンのコポリマー、およびU.S.特許No.6270806に開示のものなどのポリエチレングリコール−誘導脂質が挙げられる。
【0034】
ポリエチレンオグリコール−誘導脂質の具体例としては、ポリエチレングリコール−リン脂質、ポリエチレングリコール−コレステロール、ポリエチレングリコール−コレステロール誘導体、ポリエチレングリコール−ビタミンA、およびポリエチレングリコール−ビタミンEが挙げられる。適当な非イオン性ブロックコポリマーの具体例としては、酸化エチレンと酸化プロピレンのブロックコポリマーなどのポラキサマー(polaxamers)が挙げられる。ポリキサマーの具体例としては、これらに限定されないが、Pluronic(登録商標)F68コポリマーおよびPluronic(登録商標)F108コポリマー(BASFコーポレーション)が挙げられる。
【0035】
一般に、ナノ粒子分散体は、安定剤の1種以上をナノ粒子分散体の重量に基づき、約0.01〜10重量%、好ましくは約0.2〜7重量%、より好ましくは約0.5〜4重量%の範囲で含有しうる。
【0036】
またナノ粒子分散体は、ナノ粒子が分散する液体媒体を含有する。液体媒体は、たとえば有機溶媒および/または水などの1種以上の溶媒であってよい。1種以上のラクタム化合物は液体媒体中、1種以上のラクタム化合物が液体媒体中完全には可溶化せずに、粒子を形成する程度に、十分な低溶解性を有する。
【0037】
好ましい具体例において、液体媒体は、主成分量の水と、必要に応じて少量の水混和性有機溶媒の1種以上からなる水性媒体である。任意の水混和性有機溶媒の少量は、水性媒体の重量に基づき50重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。適当な任意の水混和性有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジメチルアセタミド、グリセロール、イソプロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチレンクロリド、およびt−ブチルアルコールが挙げられる。
【0038】
一般に、水性媒体を含有するナノ粒子分散体のpHは、哺乳類へのナノ粒子分散体の非経口投与を可能ならしめる範囲にある。この具体例でのナノ粒子分散体の適当なpH値としては、これらに限定されないが、約2〜10、好ましくは約4〜9、より好ましくは約6〜8範囲のpHである。この具体例でのナノ粒子分散体のpHを測定する1つの標準法は、温度約25℃で組合せ電極を用いる測定法である。
【0039】
1つの制限具体例において、ナノ粒子分散体は、実質的に有機溶媒が無い水性媒体を含有する。本明細書で用いる“実質的に有機溶媒が無い”とは、ナノ粒子分散体の重量に基づき約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約1重量%以下の有機溶媒しか含有しないことを意味する。1つの他の制限具体例において、有機溶媒の適当な範囲は、0〜約10重量%、好ましくは0〜約5重量%、より好ましくは0〜約1重量%である。最も好ましいナノ粒子分散体は、約0重量%、最も好ましくは0重量%の有機溶媒を含有するものである。
【0040】
本発明のナノ粒子分散体における、式Iのラクタム化合物の安定性は、約1mg/mL濃度のナノ粒子分散体中および0.1mg/mL濃度を有する溶液中の式Iのラクタム化合物の分解速度の測定によって決定でき、ここで、ナノ粒子分散体と溶液の液体媒体は同じである。分散速度は、ナノ粒子分散体と溶液を同じ条件、たとえば温度、pH、および同じ露光に維持しながら、24時間にわたって測定される。ラクタム化合物の安定性の改善は、溶液中のラクタム化合物と比較して、ナノ粒子分散体中のラクタム化合物の分解速度の低下によって示される。
【0041】
ラクタム化合物の分解は、不純物の含量測定によって決定しうる。ナノ粒子分散体中のラクタム化合物の分解速度は、溶液中のラクタム化合物の分解速度の半分以下が好ましく、より好ましくは、ナノ粒子分散体中のラクタム化合物の分解速度は、溶液中のラクタム化合物の分解速度の4分の1以下であって、最も好ましくは、ナノ粒子分散体中のラクタム化合物の分解速度は、溶液中のラクタム化合物の溶解速度の10分の1以下である。
【0042】
ナノ粒子分散体は、各種の方法によって調製することができ、該方法として衝撃力、剪断力あるいはキャビテーション力を付与する方法、たとえば均質化、超音波処理、粉砕化、向流フロー均質化もしくはマイクロ流動化、または沈殿による方法が挙げられる。これらの方法の組合せも使用しうる。乾燥したナノ粒子は、ノズルもしくは細管を用いる噴霧法、たとえば超臨界流体法、極低温法または噴霧乾燥によって調製しうる。かかる乾燥ナノ粒子を少なくとも1種の安定剤の存在下、液体媒体に分散させて、ナノ粒子分散体を得ることができる。
【0043】
1つの方法で、ナノ粒子分散体は、少なくとも1種のラクタム化合物の粒子を液体媒体中で混合することによって調製しうる。粒子は、非晶質または結晶性物質であってよい。粉砕化方法が採用でき、ここで、混合物を粉砕媒体の存在下、粉砕化に付して粒子の径を縮小し、平均粒径約1ミクロン以下のナノ粒子を有するナノ粒子分散体を得る。粉砕化段階の前、途中および/または後に、もしくは組合せて、1種以上の安定剤を添加しうる。1つの具体例において、粉砕化の前に安定剤を加えて、生成するナノ粒子の分離や安定化を助成する。
【0044】
各種の媒体微粉砕機が使用でき、たとえばボールミル、磨耗(attritor)ミル、震動ミル、およびビーズミルやサンドミルなどの媒体微粉砕機が挙げられる。粉砕媒体の適当な媒体としては、酸化ジルコニウムなどの酸化金属;珪酸ジルコニウム;フェライト;ステンレス鋼;チタニア;アルミナ;ガラス;およびジビニルベンゼン架橋ポリスチレン、スチレンコポリマー、ポリカーボネート、ポリアセタール、塩化ビニルポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、珪素含有ポリマーなどのポリマービーズが挙げられる。
【0045】
別の方法では、ナノ粒子分散体は沈殿技法によって調製される。この方法において、ラクタム化合物を適当な溶剤に溶解し、1種以上の安定剤を含有する第2溶液と混合し、次いで適当な抗溶剤を用いて沈殿せしめ、平均粒径約1ミクロン以下のナノ粒子を得る。水性媒体中でなければ、これらのナノ粒子を水性媒体に分散せしめ、必要に応じて低または高剪断で混合して、本発明のナノ粒子分散体を得てもよい。
【0046】
平均粒径1ミクロン以下のナノ粒子分散体として、医薬的活性成分を供給する技法は、U.S.特許No.5145684、5833891、6113795、6264922B1、6270806B1、6555139B1;WO02/094215A2、03/049718A1;および E. Merisko−Liversidgeらの European J. Pharmaceutical Sci., 18, 113-120(2003)に開示されている。
【0047】
1つの制限具体例において、本発明のナノ粒子分散体を水性媒体または非水性媒体中で調製し、次いで凍結乾燥物が得られるように乾燥する。凍結乾燥物は、式Iの少なくとも1種のラクタム化合物のナノ粒子からなる。他の適当な乾燥法としては、蒸発、噴霧乾燥、噴霧もしくは湿式造粒、および溶射被覆が挙げられる。ナノ粒子分散体は、典型例として混合または超音波処理しながら、乾燥物を液体媒体に分散させることにより調製される。
【0048】
ナノ粒子分散体は、必要に応じて賦形剤または他の物質を含有し、たとえばメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールおよびチオメルサールなどの保存剤;水酸化ナトリウム、塩化水素酸、リン酸塩、クエン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよびホウ酸塩などのpH調整剤もしくは緩衝剤;マンニトール、デキストラン、ブドウ糖、塩化ナトリウム、トレハロース、スクロース、チロキサポールおよびアミノ酸などの増量剤もしくは凍結防止剤;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ゼラチン、微結晶セルロース、Polyox(登録商標)水溶性樹脂(Dow Chemical Co., MI)、ビタミンE TPGS(D−アルファ・トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの粘度調節剤;アスコルビン酸またはその塩などの酸化防止剤;エチレンジアミン・テトラアセテートおよびその塩などの金属キレート化剤;およびシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が挙げられる。
【0049】
別の具体例において、ナノ粒子分散体は、哺乳類への非経口投与に適する医薬組成物である。非経口投与の具体例としては、皮下、静脈内、筋肉内および動脈内投与;およびボーラス注入が挙げられる。好ましいのは、静脈内投与である。この具体例の医薬組成物は、少なくとも1種のラクタム化合物のナノ粒子、少なくとも1種の安定剤、および水性媒体から成り、ここで、ナノ粒子は水性媒体に分散し、少なくとも1種の安定剤は、平均粒径約1ミクロン以下のナノ粒子を付与するのに十分な量で、ナノ粒子の表面に吸着している。好ましくは、この具体例の医薬組成物は、平均粒径約600nm以下、より好ましくは約500nm以下のナノ粒子を含有する。
【0050】
この具体例の医薬組成物は、必要に応じて賦形剤または他の物質、たとえばマンニトール、1,3−ブタンジオール、乳酸加リンガー液(Lactated Ringer's Injection)、または等張塩化ナトリウム溶液などの適当な非毒性の、非経口的に許容しうる希釈剤もしくは溶剤を含有する。この具体例の医薬組成物は、好ましくは実質的に有機溶媒が無い。この具体例の医薬組成物は、約6〜8のpH範囲を有することが好ましい。好ましくは、この具体例の医薬組成物は、約5重量%以下のポリオキシエチル化ひまし油界面活性剤、より好ましくは、約0重量%のポリオキシエチル化ひまし油界面活性剤、最も好ましくは、0重量%のポリオキシエチル化ひまし油界面活性剤を含有する。
【0051】
ナノ粒子分散体は、適当な殺菌技法により殺菌することができ、該技法はナノ粒子分散体の調製の前、途中および/または後に採用されてよい。適当な技法としては、加熱、放射線照射、化学処理、濾過またはこれらの組合せが挙げられる。
オートクレーブ処理を用いる技法が、ナノ粒子組成物の殺菌に好適であるが、この技法はU.S.特許No.5298262、5346702、5352459および5534270に開示されている。
【0052】
本発明の1つの側面において、式Iのラクタム化合物のナノ粒子から成り、該ナノ粒子は約1ミクロン以下の平均粒径を有している固形ナノ粒子組成物が提供される。固形ナノ粒子組成物は好ましくは、平均粒径約700nm以下、より好ましくは、約500nm以下のナノ粒子から成る。固形ナノ粒子組成物は、2種以上の異なる種類の式Iのラクタム化合物、たとえば2種の式Iのラクタム化合物のナノ粒子混合物で構成されてよい。
【0053】
好ましい具体例において、固形ナノ粒子組成物は、式Iaのラクタム化合物から成る。固形ナノ粒子組成物は、固形で乾燥形状、たとえば乾燥粉末である。固形ナノ粒子組成物に、低含量もしくは痕跡量の水および/または溶剤が存在していてもよい。固形ナノ粒子組成物は、固形ナノ粒子組成物の重量に基づき、好ましくは6重量%以下、より好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1重量%以下の水および/または溶剤を含有する。
【0054】
1つの具体例において、固形ナノ粒子組成物は必要に応じて、少なくとも1種の安定剤を含有してもよい。安定剤は、ナノ粒子の表面に吸着しうる。安定剤は、固形ナノ粒子組成物の調製に、たとえば本発明のナノ粒子分散体の調製に使用され、その後に乾燥が行なわれてよく;および/または乾燥ナノ粒子の再分散を助成して、ナノ粒子分散体を構成しうる。ナノ粒子分散体から液体媒体を除去すれば、固形ナノ粒子組成物が得られ、ナノ粒子分散体に存在する安定剤とナノ粒子の割合は同じである。必要に応じて、固形ナノ粒子組成物に別途安定剤を加えてもよい。
【0055】
固形ナノ粒子組成物は、必要に応じて医薬的に許容しうる賦形剤の少なくとも1種を含有してもよい。適当な賦形剤の具体例としては、ラクトース、微結晶セルロース、デキストリン、ブドウ糖、マンニトールおよびキシリトールなどの希釈剤;スターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドンおよびヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤;クロスポビドン(crospovidone)、クロスカルメロース(croscarmellose)、アルギン酸ナトリウムおよび予備ゲル化スターチなどの崩壊剤;タルクおよびコロイド二酸化珪素などの滑剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ポリエチレングリコールおよびステアリルフマル酸ナトリウムなどの潤滑剤;およびドキュセートナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート、たとえばTween(登録商標)80界面活性剤(ICI Americas Inc., NJ)などの湿潤剤が挙げられる。
【0056】
固形ナノ粒子組成物は、Gennaro Alfonso R., Remington Joseph P. の Remington's Pharmaceutical Science, Mack Publishing Co., Easton, PA(1995)に見られるように、当該分野で公知の方法に従って配合されてよい。固形ナノ粒子組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤(たとえば凍結乾燥物など)またはコーティングビーズで、経口、頬または舌下投与しうる。さらに、固形ナノ粒子組成物は、即時放出あるいは長期放出に適する形状で投与されてもよい。
有用性
【0057】
式Iのラクタム化合物は、微小管−安定化剤として有用である。かかる化合物は、種々の癌および他の増殖疾患の処置に有用で、癌および他の増殖疾患としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:
膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、頸部、甲状腺、脾臓、前立腺および皮膚(扁平上皮細胞を含む)のそれらを含む癌腫;
白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含む、リンパ系統の造血腫瘍;
急性および慢性骨髄白血病および前骨髄球性白血病を含む、骨髄系統の造血腫瘍;
星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫および神経線維腫を含む、中枢および末梢神経系の腫瘍;
線維肉腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む、間葉起点の腫瘍;および
黒色腫、色素性乾皮症、精上皮腫、角化棘細胞腫、甲状腺小胞癌および奇形癌を含む他の腫瘍。
【0058】
式Iのラクタム化合物は、癌のため以前に処置した患者並びに癌のため以前に処置していない患者の処置に有用である。本発明の方法および組成物は、第一線および第二線の癌処置に使用できる。さらに式Iのラクタム化合物は、難治性または耐性の癌の処置に有用である。
【0059】
また式Iのラクタム化合物は、脈管形成を阻害し、これによって、腫瘍成長に影響を及ぼしかつ腫瘍および腫瘍−関連障害の処置を付与するだろう。またこのような抗脈管形成特性は、抗脈管形成剤に反応する他の病態、たとえばこれらに限定されないが、網膜血管新生に関連する一定形態の失明、関節炎、特に炎症性関節炎、多発性硬化症、再狭窄および乾癬の処置にも有用であろう。
【0060】
式Iのラクタム化合物は、正常な発育や恒常性に危険な生理学的細胞死プロセスの、アポプトシスを誘発または阻止するだろう。アポプトシス経路の変更は、種々のヒト疾患の病因に関与する。本発明化合物は、アポプトシスのモジュレーターとして、アポプトシスに異常を持つ種々のヒト疾患、たとえばこれらに限定されないが、癌および前癌外傷、免疫応答関連疾患、ウイルス性感染、腎疾患、および筋骨格系の変性疾患の処置に有用であろう。
【0061】
また式Iのラクタム化合物は、上述の病態にかかわるセラピーを施すのに、個々の実用性によって選ばれる他の治療薬といっしょに配合または投与されてもよい。式Iのラクタム化合物は、吐気、過敏症、および胃過敏を予防する治療薬、たとえば制吐薬、HおよびH抗ヒスタミン薬といっしょに配合されてよい。上記治療薬は、式Iの化合物と組合せて使用するとき、ザ・フィジシャンズ・デスク・リファレンス(the Physician's Desk Reference, PDR)に示される量または当業者が別な方法で決定する量で使用しうる。
【0062】
さらに、式Iのラクタム化合物は、他の抗癌および細胞毒剤や、癌または他の増殖疾患の処置に用いる治療薬と組合せて投与されてもよい。特に抗癌および細胞毒薬との組合せが有用で、ここで、選定した第二薬物は、G−M相で効果を発揮する式Iの本発明化合物とは、異なる仕方であるいは異なる細胞サイクルの相、たとえばS相で作用する。
【0063】
抗癌および細胞毒薬の種類としては、たとえばこれらに限定されないが、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、エチレンイミンおよびトリアゼン(triazenes)などのアルキル化剤;ホレートアンタゴニスト、プリン類縁体およびピリミジン類縁体などの代謝拮抗物質;アントラサイクリン、ブレオマイシン、ミトマイシン、ダクチノマイシンおよびプリカマイシン(plicamycin)などの抗生物質;L−アスパラギナーゼなどの酵素;ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害薬;グルココルチコイド、エストロゲン/アンチエストロゲン、アンドロゲン/アンチアンドロゲン、プロゲスチン、および黄体化ホルモン放出ホルモン・アンタゴニスト・酢酸オクトレオチド(octreotide)などのホルモン剤;エクティナスシジン(ecteinascidins)またはその類縁体および誘導体などの微小管−崩壊剤;パクリタキセル(TAXOL,登録商標)、ドセタキセル(TAXOTERE,登録商標)などの微小管−安定剤;ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン(epipodophyllotoxins)およびタキサン(taxanes)などの植物−由来生成物;トポイソメラーゼ阻害薬;プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害薬;およびヒドロキシウレア、プロカルバジン、ミトーテン、ヘキサメチルメラミン、白金配位錯体(たとえばシスプラチンおよびカルボプラチン)などの種々雑多な作用物質;並びに生物学的反応モディファイアー、成長因子、免疫モジュレーターおよびモノクローナル抗体などの抗癌および細胞毒薬として用いる他の作用物質が挙げられる。また式Iのラクタム化合物は、放射線療法と共に使用しうる。
【0064】
これら部類の抗癌および細胞毒薬の代表例としては、これらに限定されないが、塩酸メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、イホスファミド(ifosfamide)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、チオテパ、ダカルバジン、メトトレキサート、チオグアニン、メルカプトプリン、フルダラビン(fludarabine)、ペンタスタチン、クラドリビン(cladribin)、シタラビン、フルオロウラシル、ドキソルビシン(塩酸ドキソルビシンなどの塩を含む)、ダウノルビシン、イダルビシン、硫酸ブレオマイシン、ミトマイシンC、アクチノマイシンD、サフラシン(safracins)、サフラマイシン、キノカルシン(quinocarcins)、ジスコーダーモリド(discodermolides)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、酒石酸ビンオレルビン(vinorelbine)、エトポシド(リン酸エトポシドなどの塩を含む)、テニポシド、パクリタキセル、タモキシフェン、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、フルタミド、ブセレリン(buserelin)、ロイプロリド、プテリジン、ジイネス(diyneses)、レバミソール(levamisole)、アフラコン(aflacon)、インターフェロン、インターロイキン、アルデスロイキン、フィルグラスチン(filgrastim)、サルグラモスチン(sargramostim)、リチュキシマブ(rituximab)、BCG、トレチノイン、塩酸イリノテカン(irinotecan)、ベタメタゾン、カペシタビン(capecitabine)、塩酸ゲムシタビン(gemcitabine)、アルトレタミン(altretamine)およびトポテカ(topoteca)およびその類縁体または誘導体が挙げられる。
【0065】
これら部類の抗癌および細胞毒薬の他の具体例としては、これらに限定されないが、シスプラチン、カルボプラチン、カルミノマイシン、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、エクティナスシジン743、ポルフィロマイシン(porfiromycin)、5−フルオロウラシル(5−FU)、6−メルカプトプリン、ゲムシタビン、アラビノシルシトシン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトマイシンC、ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体、たとえばエトポシド、リン酸エトポシドまたはテニポシド、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ビンデシンおよびロイロシンが挙げられる。
【0066】
理解すべき点は、式Iの化合物がこれら部類の作用物質に属する個々の抗癌および細胞毒薬と組合せて使用しうることであり、たとえば、式Iの化合物を、5−FU作用物質、および/またはこれに限定されずケープシタビン(capecitabine)(XELODA,登録商標)を含むそのプロドラッグと組合せて使用することができる。
さらに抗癌および細胞毒薬の具体例としては、WO99/24416に見られるサイクリン従属キナーゼ阻害薬;およびWO97/30992およびWO98/54966に見られるフレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害薬が挙げられる。
【0067】
いずれかのメカニズムあるいは形態論に拘束されることを望まないが、式Iのラクタム化合物は、癌または他の増殖疾患以外の病態の処置にも使用できることが予測される。かかる病態としては、これらに限定されないが、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタイン−バーウイルス、シンドビスウイルスおよびアデノウイルスなどのウイルス感染;全身性エリテマトーデス、免疫仲介糸球体腎炎、リウマチ性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患および自己免疫糖尿病などの自己免疫疾患;アルツハイマー病、AIDS−関連痴呆、パーキンソン病、筋萎縮側索硬化症、色素性網膜炎、脊髄筋萎縮および小脳変性などの神経変性障害;AIDS;脊髄形成異常症候群;再生不良性貧血;虚血性外傷関連心筋梗塞;発作および再灌流外傷;再狭窄;不整脈;アテローム硬化症;トキシン−誘発またはアルコール誘発肝疾患;慢性貧血および再生不良性貧血などの血液疾患;骨粗しょう症および関節炎などの筋骨格系の変性疾患;アスピリン−感受性副鼻腔炎;のう胞性線維症;多発性硬化症;腎疾患;および癌痛が挙げられる。
【0068】
式Iのラクタム化合物の有効量は、当業者によって決定されてよく、たとえばヒトの癌または他の増殖疾患の処置の場合、約0.01〜200mg/kg/日の投与量が挙げられ、1日1回の単一用量または2〜4回の分割用量で投与されてよい。好ましくは、本発明化合物は100mg/kg/日以下の用量にて、1日1回の単一用量または2〜4回の分割用量で投与される。式Iのラクタム化合物は、約24時間以内、たとえば1〜3時間の注入時間で、注入投与されてよい。
【0069】
たとえば、転移性乳房癌は、21日ごとに1日1回、50mg/m以下の用量の式Iのラクタム化合物を、トータル容量約200mLおよび注入時間24時間以内で投与することによって、処置されてよい。別の具体例において、転移性乳房癌は、式Iのラクタム化合物を1週間ごとに1日1回、20mg/m以下の用量で投与することにより、処置されてもよい。さらに他の具体例において、転移性乳房癌は、式Iのラクタム化合物を21日の処置サイクルにて5日間続けて毎日、約6〜8mg/mの用量で投与することにより、処置されてもよい。処置サイクルは必要に応じて、1回以上繰返してよい。
【0070】
個々の被験者の特定の用量レベルや投与回数は適宜変化させてよく、かつ種々の要因に、たとえば用いる特定化合物の活性、該化合物の代謝安定性や作用長さ、被験者(体)の種、年令、体重、一般健康状態、性別および食事規制、投与のモードや時間、排泄速度、薬物組合せ、および個々の病態のつらさに左右されることが理解されよう。本発明のナノ粒子分散体は、非経口投与しうるが、腫瘍学分野の当業者が認識している他の投与ルートも意図される。
【0071】
ナノ粒子分散体中の式Iのラクタム化合物の濃度およびナノ粒子分散体を経口投与する場合の時間長さは、患者において式Iのラクタム化合物の所望レベルが得られるように適宜に変化させてよい。たとえば、本発明のナノ粒子分散体を静脈内投与(IV)などの非経口投与で、短時間、たとえば10〜30分間で投与することにより、患者に式Iのラクタム化合物のナノ粒子を付与することができる。投与後、患者の中で溶解して、有効用量の式Iのラクタム化合物を付与する。
【0072】
別法として、ナノ粒子分散体を投与の直前に注入用液体または希釈剤で希釈することにより、式Iのラクタム化合物を含有する静脈注射液を付与しうる。この静脈注射液は、24時間以内の期間で投与されてよい。
上述の障害に対する処置に好ましい被験体としては、動物が挙げられ、最も好ましくは、哺乳類種、たとえばヒトや、イヌ、ネコなどの飼いならされた動物である。
本発明のナノ粒子分散体は、癌または他の増殖疾患の処置に適する医薬組成物として好適である。
【0073】
医薬組成物は、式Iのラクタム化合物のナノ粒子の1種以上を、約1〜50mg/mLの濃度で有しうる。固形ナノ粒子組成物は、再組成用の凍結乾燥物として、たとえばナノ粒子のラクタム化合物を、10〜100mg/バイアル、好ましくは20〜80mg/バイアル、最も好ましくは40〜60mg/バイアルの分量で包装して提供しうる。凍結乾燥物は投与に先立ち、再組成することにより、1〜50mg/mL、好ましくは1〜10mg/mL範囲の薬物濃度が得られる。1つの制限具体例において、ラクタム化合物のナノ粒子および少なくとも1種の安定剤を含有する凍結乾燥組成物を水性媒体と混合して、ナノ粒子分散体を再組成する。
【0074】
このナノ粒子分散体をさらに、適当な非経口用希釈剤の1種以上で希釈することにより、非経口投与に適する組成物が得られる。このような希釈剤は、当業者にとって周知である。これらの希釈剤は、一般に臨床施設で入手可能である。適当な希釈剤としては、5%ブドウ糖液(Dextrose Injection)、乳酸加リンガー液、注射用殺菌水(Sterile Water for Injection)等が挙げられる。好ましい希釈剤は、乳酸加リンガー液である。100mL当りの乳酸加リンガー液は、塩化ナトリウム(USP、0.6g)、乳酸ナトリウム(0.31g)、塩化カリウム(USP、0.03g)および塩化カルシウム・2HO(USP、0.02g)を含有する。容量オスモル濃度は275mオスモル/Lで、これは非常に等浸透圧に近い。最終の投与濃度は好ましくは、約0.5〜2.5mg/mLのラクタム化合物の1種以上のナノ粒子を含有するだろう。医薬組成物は、6〜8のpH範囲を有することが好ましい。
【0075】
式Iのラクタム化合物は典型例として、患者が反応(たとえば腫瘍大きさの減少)を示すまで、あるいは用量限界毒性に達するまで投与される。当業者であれば、患者が反応を示すとき、あるいは用量限界毒性に達するときが容易にわかるだろう。エポチロン(epothilone)類縁体に関連する普通の用量限界毒性としては、これらに限定されないが、疲労、関節痛/筋肉痛、食欲不振、過敏症、好中球減少、血小板減少および神経毒が挙げられる。
【0076】
一般に、式Iのラクタム化合物のナノ粒子は、約10分〜24時間にわたりIV注入で投与される。他の適当な注入時間の具体例としては、約30分〜3時間、約45分〜2時間、約1時間、および約3時間が挙げられる。典型例として、式Iのラクタム化合物のナノ粒子は、約0.5〜100mg/m、好ましくは約1〜80mg/m、より好ましくは約2.5〜60mg/m、最も好ましくは約40mg/mの用量で静脈内に投与される。
【0077】
当業者であれば、患者の身長もしくは体重のいずれかまたは両方から、用量をmg/kgからmg/mにどのように変えるかが容易にわかるだろう(たとえば、http://www. fda. gov/cder/cancer/animalframe. htm参照)。
【0078】
上述の通り、式Iのラクタム化合物のナノ粒子は、静脈内もしくは経口、または静脈内と経口の両方で投与することができる。特に、本発明の方法は、たとえば2〜10日間にわたり、好ましくは3〜9日ごとに、より好ましくは4〜8日ごとに、最も好ましくは5日ごとに1日1回の投与プロトコルを包含する。1つの制限具体例において、処置のないサイクル間に、3日〜5週間、好ましくは4日〜4週間、より好ましくは5日〜3週間、最も好ましくは1〜2週間の期間を設ける。
【0079】
別の制限具体例において、式Iのラクタム化合物のナノ粒子は、処置のないサイクル間に好ましくは1〜3週間の期間を設け、3日間にわたり1日1回、静脈内にまたは静脈内と経口の両方で投与することができる。なお別の制限具体例において、式Iのラクタム化合物のナノ粒子は、処置のないサイクル間に好ましくは1〜3週間の期間を設け、5日間にわたり1日1回投与される。
1つの好ましい制限具体例において、式Iのラクタム化合物のナノ粒子の静脈内投与の処置サイクルは、5日間続けて毎日1回で、処置サイクル間の期間は、2〜10日、好ましくは1週間である。
【0080】
また式Iのラクタム化合物のナノ粒子は、1〜10週間ごとに、好ましくは2〜8週間ごとに、より好ましくは3〜6週間ごとに、より一層好ましくは3週間ごとに1回、静脈内にまたは静脈内と経口の両方で投与することもできる。
【0081】
本発明の別の方法において、式Iのラクタム化合物のナノ粒子は、28日サイクルで投与され、ここで、式Iのラクタム化合物は、1、7および14日目に静脈内投与され、21日目に経口投与される。別法として、式Iのラクタム化合物のナノ粒子は、28日サイクルで投与され、ここで、式Iのラクタム化合物は、1日目に経口投与され、7、14および28日目に静脈内投与される。
【実施例】
【0082】
次に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、限定の意図はない。なお、実施例中の略語の意義は、以下の通りである。
略語
cc:cm
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
g:グラム
kg:キログラム
kPa:キロパスカル
mg:ミリグラム
mL:ミリリットル
mm:ミリメートル
mt:ミリトル
ng:ナノグラム
rpm:回転数/分
wt.%:重量%
【0083】
実施例において、脱イオン水とは、脱イオンし、かつ18メグオーム以上の電気抵抗まで蒸留した水を指称する。
粒径測定:ナノ粒子分散体の平均粒径は、1.20−0.10i標準モードの相対屈折率設定を用い、分析器の Horiba LA−91 Laser Diffraction Particle Size Analyzer で測定した。分析用サンプルは、約40〜80ミクロリットルのナノ粒子分散体を9mLの脱イオン水に希釈して、分析器における透過率60〜80%を得ることにより調製した。
【0084】
以下に示す手順に従って、式Iaのラクタム化合物,[1S−[1R,3R(E),7R,10S,11R,12R,16S]]−7,11−ジヒドロキシ−8,8,10,12,16−ペンタメチル−3−[1−メチル−2−(2−メチル−4−チアゾリル)エテニル]−4−アザ−17−オキサビシクロ[14.1.0]ヘプタデカン−5,9−ジオンを含有するナノ粒子分散体を調製した。
【0085】
実施例1:5wt.%のラクタム化合物Iaおよび2wt.%の Pluronic (登録商標)F108界面活性剤を含有するナノ粒子分散体の調製
脱イオン水中の5wt.% Pluronic F108界面活性剤(BASF Corp.)の原液を調製し、これを0.2ミクロンフィルターで濾過する。Nano Mill(登録商標)−01微粉砕機(Elan Pharma International Limited、アイルランド)のジャケット付10mL微粉砕室に、以下に列挙する材料をその順序で投入する:5.43gの0.5mmポリスチレン微粉砕媒体、0.233gの式Iaのラクタム化合物、5wt.% Pluronic F108界面活性剤含有の1.865mLの濾過溶液、および2.563mLの脱イオン水。
【0086】
微粉砕機を取付け、微粉砕室を循環サーモスタット水浴で温度4〜5℃に平衡させる。内容物を1800rpmで2分間、次いで5500rpmで43分間微粉砕する。26ゲージ5/8インチ針を備えた3mL Sub−Q注射器に吸引することにより、生成するナノ粒子分散体をポリスチレン微粉砕ビーズから分離し、次いでこれを適当なバイアルに移す。収量=3.05g(〜65wt.%)。
【0087】
実施例2:10wt.%のラクタム化合物Ia、1.8wt.%のポリビニルピロリドン(PVP)および0.2wt.%のデオキシコール酸ナトリウムを含有するナノ粒子分散体の調製
注射用水中の4wt.%PVP(MW〜10000)および0.4wt.%デオキシコール酸ナトリウムの原液をそれぞれ調製し、これらを0.45ミクロンフィルターで濾過する。Nano Mill −01微粉砕機のジャケット付50mL微粉砕室に、以下に列挙する材料をその順序で投入する:26.1gの0.5mmポリスチレン微粉砕媒体、2.25gの式Iaのラクタム化合物、10.1gの濾過PVP K13−19ポリマー原液、および10.1gの濾過デオキシコール酸ナトリウム原液。
【0088】
微粉砕機を取付け、微粉砕室を循環サーモスタット水浴で温度4〜5℃に平衡させる。内容物を1800rpmで2分間、次いで2930rpmで58分間微粉砕する。26ゲージ5/8インチ針を備えた3mL Sub−Q注射器に吸引することにより、生成するラクタム化合物Iaの結晶含有のナノ粒子分散体をビーズから分離し、次いでこれを適当なバイアルに移す。収量=9.2g(〜41wt.%)。注射用水中の2wt.%ポリビニルピロリドンおよび0.2wt.%デオキシコール酸ナトリウムからなる濾過ビヒクルを用いて、ナノ粒子分散体を2wt.%薬物まで希釈する。
【0089】
凍結乾燥
実施例2の2wt.%ナノ粒子分散体の1ミリリットルアリコートを、10mLガラスバイアルに充填する。バイアルの内容物を以下に示すサイクルで、Virtis Genesis Model 25EL凍結乾燥器中48時間にわたって凍結乾燥する。貯蔵液体温度を5℃から−40℃まで2時間にわたって下げる。貯蔵液体温度をー40℃で2時間保持して、生成物を凍結させる。一次乾燥を始めるため、室の圧力を150ミリトル(mt)に下げ、貯蔵液体温度を1時間にわたり−25℃に上げる。
【0090】
かかる150mt室圧および−25℃貯蔵液体温度の一次乾燥状態を、20時間維持する。二次乾燥を始めるため、貯蔵液体温度を4時間にわたり25℃に上げる。二次乾燥は、室圧150mtおよび貯蔵液体温度25℃で18時間行なう。凍結乾燥サイクルの終りに、室圧を窒素ブリードで大気圧まで上げる。バイアルに栓を十分にし、凍結乾燥器から取出し、密封する。
凍結乾燥物を再組成し、さらに5%ブドウ糖液で希釈して、ラクタム化合物濃度を約1mg/mLとすることにより、式Iaのラクタム化合物のナノ粒子含有のナノ粒子分散体を調製する。
【0091】
実施例3:5wt.%のラクタム化合物Iaおよび2wt.% Pluronic F108界面活性剤を含有するナノ粒子分散体の調製
注射用水(WFI)中の5wt.% Pluronic F108界面活性剤の原液を調製し、これを0.22ミクロンフィルターで濾過する。 Nano Mill −01微粉砕機のジャケット付100mL微粉砕室に、以下に列挙する材料をその順序で投入する:48.86gの0.5mmポリスチレン微粉砕媒体、2.11gの式Iaのラクタム化合物、5wt.% Pluronic F108界面活性剤含有の16.78gの濾過溶液、および23.05gのWFI。微粉砕機を取付け、微粉砕室を循環サーモスタット水浴で温度4〜5℃に平衡させる。
【0092】
内容物を1800rpmで2分間、次いで2140rpmで88分間微粉砕する。26ゲージ5/8インチ針を備えた3mL Sub−Q注射器に吸引することにより、生成するナノ粒子分散体をビーズから分離し、次いでこれを適当なバイアルに移す。収量=31gのナノ粒子分散体(〜74wt.%)。8gのナノ粒子分散体にマンニトール(400mg)を攪拌下で溶解して、5wt.%マンニトールを得る。
【0093】
凍結乾燥
実施例3のナノ粒子分散体にマンニトールを加えたものと加えなかったもののアリコート(〜600ミクロリットル)を、10mLガラスバイアルに充填する。バイアルに20
mm Omniflex Plus RFS栓(予め殺菌し、乾燥しておく)で部分的に栓をする。生成物を以下に示すサイクルで、Virtis Genesis Model 25EL凍結乾燥器中24時間にわたって凍結乾燥する。貯蔵液体温度を5℃から−40℃まで2時間にわたって下げる。貯蔵液体温度を−40℃で2時間保持して、生成物を凍結させる。一次乾燥を始めるため、室圧を150ミリトル(mt)に下げ、貯蔵液体温度を3時間にわたり−10℃に上げる。
【0094】
かかる150mt室圧および−10℃貯蔵液体温度の一次乾燥状態を、8時間維持する。二次乾燥を始めるため、貯蔵液体温度を3時間にわたり25℃に上げる。二次乾燥は、室圧150mtおよび貯蔵液体温度25℃で7時間行なう。凍結乾燥サイクルの終りに、室圧を窒素ブリードで大気圧まで上げる。バイアルに栓を十分にし、凍結乾燥器から取出し、密封する。
【0095】
実施例4:9.9wt.%のラクタム化合物Iaおよび2.5wt.%のヒト血清アルブミンを含有するナノ粒子分散体の調製
20mLねじ込キャップ・アンバーガラスボトルに、以下に列挙する材料をその順序で投入する:7.5mLの0.8mmYTZ(イットリウム安定化ジルコニウム)セラミックビーズ(メスシリンダーで計量)、375mgの式Iaのラクタム化合物、310ミクロリットル(〜0.330g)の30wt.%ヒト血清アルブミン溶液、および3.089gの脱イオン水。キャップボトルをボールミルに設置し、周囲実験室温度(約20℃)にて〜130rpmで約17時間回転させる。26ゲージ5/8インチ針を備えた3mL Sub−Q注射器に吸引することにより、生成するナノ粒子分散体をビーズから分離し、次いでこれを適当なバイアルに移す。収量=2.64g(〜70wt.%)。
【0096】
実施例5:10.2wt.%のラクタム化合物Iaおよび1.9wt.%のPEG化リン脂質を含有するナノ粒子分散体の調製
脱イオン水中の5wt.%PEG化リン脂質(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]アンモニウム塩粉末)の原液を調製し、これを0.45ミクロンフィルターで濾過する。20mLねじ込キャップ・アンバーガラスボトルに、以下に列挙する材料をその順序で投入する:7.5mLの0.8mm YTZ(イットリウム安定化ジルコニウム)セラミックビーズ(メスシリンダーで計量)、375mgの式Iaのラクタム化合物、1.406gの5wt.% PEGリン脂質原液、および1.877gの脱イオン水。キャップボトルをボールミルに設置し、周囲実験室温度にて〜130rpmで約40時間回転させる。さらに67時間以内の微粉砕を行ったが、粒径分布の実質的な影響はない。26ゲージ5/8インチ針を備えた3mL Sub−Q注射器に吸引することにより、生成するナノ粒子分散体をビーズから分離し、次いでこれを適当なバイアルに移す。収量=2.84g(〜76wt.%)。
【0097】
実施例6:10.2wt.%のラクタム化合物Ia、0.5wt.%の Pluronic F68界面活性剤および0.025wt.%のデオキシコール酸ナトリウムを含有するナノ粒子分散体の調製
脱イオン水中の5wt.% Pluronic F68界面活性剤および1wt.%デオキシコール酸ナトリウムの原液をそれぞれ調製し、これらを0.45ミクロンフィルターで濾過する。20mLねじ込キャップ・アンバーガラスボトルに、以下に列挙する材料をその順序で投入する:7.5mLの0.8mm YTZ(イットリウム安定化ジルコニウム)セラミックビーズ(メスシリンダーで計量)、375mgの式Iaのラクタム化合物、5wt.% Pluronic F68濾過原液含有の375ミクロリットルの濾過溶液、94ミクロリットルの1wt.%デオキシコール酸ナトリウム濾過原液、および2.906mLの脱イオン水。キャップボトルをボールミルに設置し、周囲実験室温度にて〜130rpmで約17時間回転させる。26ゲージ5/8インチ針を備えた3mL Sub−Q注射器に吸引することにより、生成するナノ粒子分散体をビーズから分離し、次いでこれを適当なバイアルに移す。収量=1.53g(〜41wt.%)。
【0098】
実施例7:10wt.%のラクタム化合物Ia、5wt.%の Pluronic F68界面活性剤および0.25wt.%のデオキシコール酸ナトリウムを含有するナノ粒子分散体の調製
脱イオン水中の5wt.% Pluronic F68界面活性剤および1wt.%デオキシコール酸ナトリウムの原液をそれぞれ調製し、これらを0.2ミクロンフィルターで濾過する。Nano Mill 微粉砕機のジャケット付10mL微粉砕室に、以下に列挙する材料をその順序で投入する:5.43gの0.5mmポリスチレン微粉砕媒体、0.466gの式Iaのラクタム化合物、0.466mLの5wt.% Pluronic F68界面活性剤の濾過溶液、1.165mLの1wt.%デオキシコール酸ナトリウム濾過原液、および2.561mLの脱イオン水。
【0099】
微粉砕機を取付け、微粉砕室を循環サーモスタット水浴で温度5℃に平衡させる。内容物を1800rpmで2分間、次いで5500rpmで28分間微粉砕する。26ゲージ5/8インチ針を備えた3mL Sub−Q注射器に吸引することにより、生成するナノ粒子分散体をビーズから分離し、次いでこれを適当なバイアルに移す。収量=3.04g(〜65wt.%)。
【0100】
10wt.%ナノ粒子分散体のアリコートをそれぞれ、脱イオン水、10wt.%マンニトール溶液、10wt.%デキストラン溶液、10wt.%トレハロース溶液、または10wt.%スクロース溶液で2.5wt.%に希釈したが、初期段階での、または冷凍条件(2〜8℃)下24時間貯蔵後の粒径分布に悪影響はない。さらに、凍結乾燥によって満足なケークが得られる。
【0101】
実施例8:5.4wt.%のラクタム化合物Ia、0.5wt.%の Pluronic は68界面活性剤、0.27wt.%のデオキシコール酸ナトリウム、および0.6wt.%の Phospholipon (登録商標)90G安定剤を含有するナノ粒子分散体の調製
脱イオン水中の1wt.%デオキシコール酸ナトリウムの原液を調製し、これを0.45ミクロンフィルターで濾過する。20mLねじ込キャップ・アンバーガラスボトルに、以下に列挙する材料をその順序で加える:7.5mLの0.8mm YTZ(イットリウム安定化ジルコニウム)セラミックビーズ(メスシリンダーで計量)、187.4mgの式Iaのラクタム化合物、18.8mgの Pluronic F68界面活性剤(固体で添加)、943ミクロリットルの1wt.%デオキシコール酸ナトリウム濾過原液、22.5mgの
Phospholipon 90G安定剤固体(American Lecithin Co., CT)、および2.271mLの脱イオン水。キャップボトルをボールミルに設置し、周囲実験室温度にて〜130rpmで約40時間回転させる。26ゲージ5/8インチ針を備えた3mL Sub−Q注射器に吸引することにより、生成するナノ粒子分散体をビーズから分離し、次いでこれを適当なバイアルに移す。収量=1.53g(〜41wt.%)。
【0102】
表1:実施例1〜8のナノ粒子分散体
【表1】

【0103】
実施例9:ラットにおける薬物動態実験
ラクタム化合物Iaを含有するナノ粒子分散体の薬物動態実験を、ラットで行なう。ナノ粒子分散体の調製は、以下の通りである。
例F1
実施例7の一般手順に従って、水中に50mg/mLのラクタム化合物Ia、5mg/mLの Pluronic F68界面活性剤、および2.5mg/mLのデオキシコール酸ナトリウムを含有するナノ粒子分散体を調製する。次いでナノ粒子分散体を、5%ブドウ糖液(USP水溶液)に溶解した5mg/mLの Pluronic F68界面活性剤からなるビヒクルで、ラクタム化合物Ia濃度1mg/mLに希釈する。例F1のナノ粒子分散体の最終濃度は水中、ラクタム化合物Ia 1mg/mL、 Pluronic F68界面活性剤5mg/mL、デオキシコール酸ナトリウム0.06mg/mL、およびブドウ糖49mg/mLであって;平均粒径(D50)403nm、D90値1.2ミクロン、およびD100値11.6ミクロン以下である。
【0104】
例F2
実施例1の一般手順に従って、水中に50mg/mLのラクタム化合物Iaおよび20mg/mLの Pluronic F108界面活性剤を含有するナノ粒子分散体を調製する。約0.2mLのナノ粒子分散体をバイアルに移し、実施例3の一般凍結乾燥手順を用いて凍結乾燥する(マンニトールなし)。凍結乾燥物を10mLの標準食塩水(0.9% NaCl)で再組成して、例F2のナノ粒子分散体を得、該分散体は水中に、1mg/mLのラクタム化合物Ia、0.4mg/mLの Pluronic F108界面活性剤、および9mg/mLの塩化ナトリウムを含有し;その平均粒径(D50)は290nm、D90値は1.3ミクロン、およびD100値は34ミクロン以下である。
【0105】
例F3
実施例4の一般手順に従って、水中に100mg/mLのラクタム化合物Iaおよび25mg/mLのヒト血清アルブミンを含有するナノ粒子分散体を調製する。次いでナノ粒子分散体を、5%ブドウ糖液(USP水溶液)でラクタム化合物Ia濃度1mg/mLに希釈する。例F3のナノ粒子分散体は、水中に1mg/mLのラクタム化合物Ia、25mg/mLのヒト血清アルブミン、および49.5mg/mLのブドウ糖を含有し;その
平均粒径(D50)は147nm、D90値は228nm、およびD100値は766nm以下である。
【0106】
例F4
微粉砕プロセスにおいて、実施例5に記載の低エネルギー微粉砕の代わりに、約82分の微粉砕時間で Nano Mill−01微粉砕機を使用する以外は、実施例5の一般手順に従って、水中に100mg/mLのラクタム化合物Ia、20mg/mLのPEG化リン脂質を含有するナノ粒子分散体を調製する。次いでナノ粒子分散体を、5%ブドウ糖液(USP水溶液)で、ラクタム化合物Ia濃度1mg/mLに希釈する。例F4のナノ粒子分散体は、水中に1mg/mLのラクタム化合物Ia、0.2mg/mLのPEG化リン脂質、および49.5mg/mLのブドウ糖を含有し;その平均粒径(D50)は241nm、D90値は401nm、およびD100値は3.4ミクロン以下である。
【0107】
対照溶液
16mgの凍結乾燥したラクタム化合物Iaを4mLの Cremophor EL/エタノール(50/50)溶液に溶解して、ラクタム化合物Iaの溶液を調製し、次いで得られる溶液3mLを9mLの標準食塩水(0.9%NaCl)で希釈する。かかる対照溶液は、水(75%)中に1mg/mLのラクタム化合物Ia、12.5%の Cremophor EL、12.5%のエタノール、および6.75mg/mLの塩化ナトリウムを含有する。
【0108】
ラットにおける薬物動態
例F1〜F4のナノ粒子分散体と対照溶液を、雄スプラーグ−ダウレイ(sprague
dawley)ラットに静脈内投与し、ラクタム化合物Iaの薬物動態を評価する。各配合物におけるラクタム化合物Iaの投与量は、2mg/kgである。
実験設計は、単一用量、4処置、2期間非無作為化、クロスオーバー(crossover)設計である。ラクタム化合物Iaは、雄ラットに対し単一IVボーラス用量で投与される。ラットは、各期間中2つのグループに分ける。各グループは、ナノ粒子分散体(n=7)または対照溶液(n=2)の一方を受容するラットからなる。
【0109】
実験設計は、下記表2に示す。
表2:ラットにおける薬物動態実験の設計
【表2】

注a)2匹のラットについては、対照溶液に加えて各ナノ粒子分散体で処置する。
【0110】
サンプル採集および分析
投与の0.033、0.025、0.5、0.75、1、2、4、6、8、12および24時間後に、各ラットの頸静脈または伏在静脈から血液サンプルを採集する。抗凝固薬としてEDTAを含有するチューブに、サンプルを集める。遠心分離を行って、血漿を得る。血漿中のラクタム化合物Iaの濃度を、確認LC/MS/MS法(レンジ=2〜500ng/mL)で測定する。
【0111】
薬物動態分析
薬物動態パラメーターAUC0−24hrs、Cmax、CL、Vdおよびt1/2を、e Toolbox/Kinetica (Version 2.4、PA、フィラデルフィアの InnaPhase Corporation)による非区画法で算定する。LLOQ以下の値は、計算に使用せず。AUCは、台形基準(trapezoidal rule)で算定する。
【0112】
ナノ粒子分散体F1〜F4および対照溶液の単一IVボーラス投与後のラットにおける血漿濃度と薬物動態パラメーターをそれぞれ、図1と下記表3に示す。平均終末半減期は、約20〜29時間の範囲にある。分布の容量は、中心区分の容量、ラクタム化合物Iaの組織への指標分布より大きい。
【0113】
表3:例F1〜F4および対照溶液の薬物動態パラメーター
【表3】

表示を除き、平均値およびSDの算定の場合n=7
a)n=6
b)n=5
c)n=8(2実験のデータをプールする)
【0114】
統計分析より、種々の配合物の間で、薬物動態パラメーターAUC0−24hrs、CLおよびVdに有意差の存在しないことが示され、 但し、例F4と対照溶液間のAUC0−24hrsは統計的に異なる(1.41倍、p<0.01)。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】ナノ粒子分散体F1〜F4および対照溶液をラットに投与した後の、ラクタム化合物Iaの血漿濃度と時間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)式I:
【化1】

[式中、Qは
【化2】

,R,R,R,R,R,RおよびR10はそれぞれ独立して、H、アルキル、置換アルキルおよび/またはアリールで、RとRがアルキルのとき、両者は共に合して、シクロアルキルを形成でき;およびRおよびRはそれぞれ独立して、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリールおよび/またはヘテロシクロである]
のラクタム化合物の少なくとも1種からなるナノ粒子;
ii)安定剤の少なくとも1種;および
iii)液体媒体
から成り、上記ナノ粒子は液体媒体に分散し;および上記安定剤の少なくとも1種は、平均粒径約1ミクロン以下のナノ粒子を付与するのに十分な量で、ナノ粒子の表面に吸着されていることを特徴とするナノ粒子分散体。
【請求項2】
式Iのラクタム化合物が、
【化3】

である請求項1に記載のナノ粒子分散体。
【請求項3】
ナノ粒子分散体の重量に基づき約40重量%以下のナノ粒子を含有する請求項1に記載のナノ粒子分散体。
【請求項4】
ナノ粒子分散体の重量に基づき約0.1〜10重量%の安定剤の少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載のナノ粒子分散体。
【請求項5】
液体媒体が水性媒体である請求項1または2に記載のナノ粒子分散体。
【請求項6】
安定剤の少なくとも1種が、デオキシコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、アルブミン、ポリエチレングリコール−リン脂質、レシチン、および酸化エチレンと酸化プロピレンのブロックコポリマーからなる群から選ばれる請求項1乃至5のいずれか1に記載のナノ粒子分散体。
【請求項7】
水性媒体が、約4〜9のpHを有する請求項5に記載のナノ粒子分散体。
【請求項8】
ナノ粒子分散体の重量に基づき、
i)式:
【化4】

の式Iの化合物からなる約0.1〜40重量%のナノ粒子;および
ii)約0.1〜10重量%の安定剤の少なくとも1種
を含有し、水性媒体が約6〜8のpHを有する請求項5に記載のナノ粒子分散体。
【請求項9】
式I:
【化5】

[式中、Qは
【化6】

,R,R,R,R,R,RおよびR10はそれぞれ独立して、H、アルキル、置換アルキルおよび/またはアリールで、RとRがアルキルのとき、両者は共に合して、シクロアルキルを形成でき;およびRおよびRはそれぞれ独立して、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリールおよび/またはヘテロシクロである]
のラクタム化合物の少なくとも1種からなるナノ粒子
から成り、上記ナノ粒子は約1ミクロン以下の平均粒径を有することを特徴とする固形ナノ粒子組成物。
【請求項10】
さらに安定剤の少なくとも1種を含有し、安定剤の少なくとも1種が、ナノ粒子の表面に吸着されている請求項9に記載の固形ナノ粒子組成物。
【請求項11】
式Iのラクタム化合物が、
【化7】

である請求項9または10に記載の固形ナノ粒子組成物。
【請求項12】
哺乳類の癌または他の増殖疾患を処置する方法であって、該哺乳類に対して、請求項1に記載のナノ粒子分散体から成る医薬組成物の有効量を投与することを特徴とする処置法。
【請求項13】
医薬組成物を静脈内に投与する請求項12に記載の処置法。
【請求項14】
癌が乳房癌、前立腺癌または肺癌である請求項12に記載の処置法。
【請求項15】
式Iのラクタム化合物が、
【化8】

である請求項12に記載の処置法。
【請求項16】
哺乳類の癌または他の増殖疾患を処置する方法であって、該哺乳類に対して、請求項9に記載の固形ナノ粒子組成物から成る医薬組成物の有効量を投与することを特徴とする処置法。
【請求項17】
固形ナノ粒子組成物を錠剤、カプセル剤、顆粒剤または粉剤で投与する請求項16に記載の処置法。
【請求項18】
式Iのラクタム化合物が、
【化9】

である請求項16に記載の処置法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−505982(P2008−505982A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527369(P2007−527369)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/017232
【国際公開番号】WO2005/110407
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【出願人】(505295134)エラン ファーマ インターナショナル リミテッド (10)
【Fターム(参考)】