説明

ラクチドとグリコリドとの(共)重合用触媒系

本発明は、触媒としてトリフルオロメタンスルホネートと(共)重合用添加剤とを含有してなる、ラクチド及びグリコリド(共)重合用触媒系に関する。本発明はまたかかる触媒系の使用を伴なうラクチド及びグリコリドの(共)重合方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒としてトリフルオロメタンスルホネートと(共)重合添加剤とを含有してなる、ラクチドとグリコリドとの(共)重合触媒系即ち触媒組成物に関する。本発明はまたかかる触媒組成物の使用を伴なうラクチド及びグリコリドの(共)重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、人工器官の開発及び医薬の処方のため合成ポリマーに対して増大しつつある注意が払われている〔Chem. Eng. News (2001) 79 (6) 30〕。当該ポリマーは在る多数の規準に適合せねばならず、特に該ポリマーは生体相溶性でなければならない。生体への適当な移植期間後にポリマーを除去しようとするならば、生分解性の特性は追加の利点である。これに関して、乳酸とグリコール酸とに基づいたコポリマー (PLGA) は多大の利点がある。何故ならばPLGAは加水分解に対して感受性であり、しかも無毒の副生物を放出しながら生体内で分解するからである。PLGAの使用範囲は広範である (Adv. Mater. (1996) 8, 305 及び Chemosphere (2001) 43, 49) 。外科分野においては、PLGAはマルチフィラメント糸、縫合糸、移植材、補綴材等の合成に用いられる。薬理学においては、PLGAは有効成分の包封、移動及び調節した放出を可能とする。
【0003】
全てのこれらの用途について、主要な因子は、勿論PLGAの構造 (鎖長、分散度、割合、立体化学及びモノマーの連鎖等) に応じて決まるPLGAの分解速度である。近年、それ故、多数の研究はラクチドとグリコリドとの(共)重合即ち重合又は共重合の触媒及び/又は開始剤の開発に専念されていて、制御した構造を有するPLGAの製造を可能とする。
【0004】
触媒として金属系を用いると、金属塩の存在によってかくして得られたポリマーの汚染を通常生起し、これは時として想定される用途に応じて重大な制限を成す。制御したラクチドとグリコリドとの(共)重合を可能とする非金属系を開発することが、それ故重要な要件である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故本発明者は、触媒と(共)重合添加剤とを含有する簡単な触媒系であって製造した(コ)ポリマーの鎖長を調節できるのみならず連鎖端の性状をも調節できる触媒系 (触媒組成物) を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明の要旨は、(a) 触媒として次式(1)

〔式中R1は水素又はジュウテリウム原子を表わすか又は式
−E14(R14)(R’14)(R’’14)
(但しE14は14族の元素であり;
R14、R’14及びR’’14は個々に水素、ジュウテリウム原子又は次の置換した基又は非置換の基;アルキル、シクロアルキル又はアリール基の1つを表わし、その際1個又はそれ以上の該置換基はハロ、アルキル、シクロアルキル及びアリール基から選ばれる)の基を表わす〕のトリフルオロメタンスルホネート及び
(b) 次式(2)
R2−E−R3 (2)
〔式中Eは16族の元素を表わし;
R2は水素又はジュウテリウム原子を表わし;
R3は水素又はジュウテリウム原子を表わすか又は次式
−E’14(T14)(T’14)(T’’14)
(但しE’14は14族の元素であり;
T14、T’14及びT’’14は個々に水素原子;ジュウテリウム原子;又は次の置換した基又は非置換の基;アルキル、シクロアルキル又はアリール基の1つを表わし、その際1個又はそれ以上の該置換基はハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、シクロアルコキシカルボニル及びアリールオキシカルボニル基から選ばれる)の基を表わす〕の(共)重合添加剤を含有してなる、ラクチド及びグリコリドの(共)重合用触媒組成物に在る。
【0007】
ハロなる表現はフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表わし、好ましくはクロロを表わす。アルキルなる表現は好ましくは 1〜6 個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基、特に 1〜4 個の炭素原子を有するアルキル基例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル基を表わす。用語アルコキシはアルキル基が前述の如くであるアルコキシ基を表わし、例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ又はイソプロピルオキシ且つまた直鎖の第二級又は第三級ブトキシ、ペンチルオキシ基を表わす。用語アルコキシカルボニルは好ましくはアルコキシ基が前述の如くであるアルコキシカルボニル基を表わし、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル基を表わす。
【0008】
シクロアルキル基は飽和又は不飽和の単環式シクロアルキル基から選ばれる。飽和単環式シクロアルキル基は 3〜7 個の炭素原子を有するシクロアルキル例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基から選択できる。不飽和のシクロアルキル基はシクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン基から選択できる。用語シクロアルコキシはシクロアルキル基が前述の如くであるシクロアルコキシ基例えばシクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロブテニルオキシ、シクロペンテニルオキシ、シクロヘキセニルオキシ、シクロペンタジエニルオキシ、シクロヘキサジエニルオキシ基を表わす。用語シクロアルコキシカルボニルはシクロアルコキシ基が前述の如くであるシクロアルコキシカルボニル基例えばシクロプロピルオキシカルボニル、シクロブチルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキオキシカルボニル、シクロヘプチルオキシカルボニル、シクロブテニルオキシカルボニル、シクロペンテニルオキシカルボニル、シクロヘキセニルオキシカルボニル基を表わす。
【0009】
アリール基は単環式又は多環式のアリール基であり得る。単環式のアリール基は1個又はそれ以上のアルキル基で随意に置換されたフェニル基、例えばトリル、キシリル、メシチル、クメニル基から選択できる。多環式のアリール基はナフチル、アンスリル、フェナンスリル基から選択できる。用語アリールオキシはアリール基が前述の如くであるアリールオキシ基例えばフェニルオキシ、トリルオキシ、ナフチルオキシ、アンスリルオキシ及びフェナンスリルオキシ基を表わす。用語アリールオキシカルボニル好ましくはアリールオキシ基が前述の如くであるアリールオキシカルボニル基例えばフェニルオキシカルボニル、トリルオキシカルボニル基を表わす。
【0010】
本発明においては、用語(共)重合は重合又は共重合を表わす。即ちラクチドとグリコリドとの(共)重合はラクチドの重合、グリコリドの重合且つまたラクチドとグリコリドとの共重合を包含する。
【0011】
本発明の触媒組成物においては、触媒に関して(共)重合添加剤の量は0.05〜5 モル当量よりなるのが好ましく 0.5〜2 モル当量よりなるのがきわめて好ましい。
【0012】
本発明の要旨は更に詳しく言えば式 (1) の化合物 (但しR1は水素原子又は式−E14(R14)(R’14)(R’’14) の基を表わす) を有する前述の触媒組成物である。
【0013】
R1は水素原子を表わし、化合物(1)はかくしてトリフルオロメタンスルホン酸を表わすのが好ましい。R1は式−E14(R14)(R'14)(R''14) (式中E14は炭素又はケイ素原子であり、きわめて好ましくはE14は炭素原子であり、R14、R’14及びR’’14は個々に水素原子又はアルキル基を表わす)の基を表わすのも好ましい。
【0014】
本発明によると、かくして用いた式 (2) の (共) 重合添加剤は (共) 重合開始剤 (又は共−開始剤) として作用する。その存在は必要不可欠である。何故ならば、式 (2) のかかる化合物の不在下では、 (共) 重合反応はずっと遅く、ずっと低い収率を生起し、再現可能ではなく、それ故工業的に利用できないからである。
【0015】
本発明のより特定の要旨は一般式 (2) の化合物を有する前述の触媒組成物であり、その際
Eは酸素又は硫黄原子を表わし;
R2は水素原子を表わし;
R3は水素原子又は式 −E’14(T14)(T'14)(T''14) の基を表わし;
E’14は炭素又はケイ素原子であり;
T14、T’14及びT’’14は個々に水素原子又は次の置換した又は非置換の基;アルキル、シクロアルキル又はアリール基の1つを表わし、その際1つ又はそれ以上の該置換基はハロ、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ナフチル、カルボキシル及びアルコキシカルボニル基から選ばれ、
しかもより詳しく言えば
Eは酸素原子を表わし;
R2は水素原子を表わし;
R3は水素原子又は式−E’14(T14)(T'14)(T''14) (但しE’14は炭素原子を表わし、T14、T’14及びT’’14は個々に水素原子又はアルキル基を表わす) の基を表わす。
【0016】
本発明のより特定の要旨は一般式 (2) の (共) 重合添加剤が水又は脂肪族アルコールであることを特徴とする前述の如き触媒組成物である。脂肪族アルコールのうちでは、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール又はペンタン−1−オールを挙げ得る。脂肪族アルコールはイソプロパノール及びペンタン−1−オールから選択するのが好ましい。
【0017】
本発明の要旨は、当該の1種又はそれ以上のモノマーと、一般式 (1) の化合物及び一般式 (2) の (共) 重合添加剤を含有する前述の如き触媒組成物と、場合によっては重合溶剤とを互いに一緒にすることからなるラクチドとグリコリドとの (共) 重合方法である。
【0018】
本発明のラクチドとグリコリドの (共) 重合は開環 (共) 重合により行なう。かかる方法は溶液中で又は懸濁物 (surfusion) 中で行ない得る。(共) 重合を溶液中で行なう時は、反応溶剤は触媒反応で用いた基剤 (又はそれの1種)で有り得る。触媒反応それ自体に干渉しない溶剤もまた適当である。かかる溶剤の例としては芳香族炭化水素 (例えばトルエン、キシレン又はメシチレン) 、1個又はそれ以上のニトロ基により場合によっては置換された芳香族炭化水素 (例えばニトロベンゼン) 、エーテル類 (例えばメチル第3級ブチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン) 、脂肪族又は芳香族ハライド (例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン又はジククロベンゼン) を挙げ得る。
【0019】
本発明の方法によると、 (共) 重合反応は−20℃と大体150℃との間の温度で行なう。(共) 重合を溶液中で行なう場合には温度は0℃〜30℃よりなるのが好ましい。反応時間は数分間〜48時間よりなり、30分〜20時間の間が好ましい。触媒に関して (共) 重合添加剤の量は0.05〜5モル当量よりなるのが好ましく、0.5〜2モル当量よりなるのがきわめて好ましい。本発明の (共) 重合方法の収率は一般に80%より高く、実施例に例示した如く比較的温和な条件 (室温、数時間) 下では100%にさえ達し得る。
【0020】
本発明のより特定の要旨はまた式(1)の化合物(但しR1は水素原子又は式−E14(R14)(R’14)(R’’14) の基の何れかを表わす)を含有する前述の如き触媒組成物を用いての前述の如き方法である。
【0021】
本発明の要旨は、R1が水素原子を表わし、この場合には、化合物(1)はトリフロオロメタンスルホン酸を表わすことを特徴とする前述の如き方法であるのが好ましい。本発明の要旨は、R1が式−E14(R14)(R’14)(R’’14)(式中E14は炭素又はケイ素原子であり、きわめて好ましくはE14は炭素原子であり、R14、R’14、R’’14は水素原子又はアルキル基を表わす) の基を表わすことを特徴とする前述の如き方法であるのも好ましい。
【0022】
本発明のより特定の要旨は、一般式 (2)(但し
Eは酸素又は硫黄原子を表わし;
R2は水素原子を表わし;
R3は水素原子又は式−E14(T14)(T'14)(T''14) の基を表わし;
E’14は炭素又はケイ素原子を表わし;
T14、T’14及びT’’14は個々に水素原子又は次の置換した又は非置換の基:アルキル、シクロアルキル又はアリール基の1つを表わし、その際1つ又はそれ以上の該置換基はハロ、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ナフチル、カルボキシ及びアルコキシカルボニル基から選ばれ、
しかもより詳しく言えば、
Eは酸素原子を表わし;
R2は水素原子を表わし;
R3は水素原子又は式−E’14(T14)(T'14)(T''14) (但しE’14は炭素原子を表わし、T14、T’14及びT’’14は個々に水素原子又はアルキル基を表わす)の基を表わす) の化合物を含有する前述の如き触媒組成物を用いての前述の如き(共)重合方法でもある。
【0023】
本発明のより特定の要旨は、触媒組成物の(共)重合添加剤が水又は脂肪族アルコールの何れかでありしかも好ましくは脂肪族アルコールがメタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールから選択される触媒組成物を用いての前述の如きラクチドとグリコリドの(共)重合方法である。
【0024】
それ故、本発明のラクチドとグリコリドの(共)重合方法は(コ)ポリマー連鎖端の性状を調節することができ、しかも実験部分で例示した通り酸−アルコール末端又はエステル−アルコール末端を有する(コ)ポリマーを得るのに特に適当である。
【0025】
本発明のラクチドとグリコリドの(共)重合方法は500〜50,000ダルトンの質量、より特に1,000〜20,000ダルトンの質量の(コ)ポリマーを得るのに特に良く適している。
【0026】
本発明のラクチドとグリコリドの(共)重合方法は多数の利点があり、特に次の利点がある;
(イ)触媒組成物は、容易に得やすく且つ安価な触媒及び(共)重合添加剤を含有する;
(ロ)(共)重合開始剤として1種の添加剤を用いると、(共)重合の進行にきわめて有意な改良をもたらすのみならず、当初のモノマー対開始剤の比率に実際上等しい鎖長の正確な調節を可能とする;
(ハ)(共)重合開始剤として1種の添加剤を用いると、製造された(コ)ポリマーの連鎖端の性状の調節を可能とする;
(ニ)(共)重合は、1種又はそれ以上のモノマーの殆んど全転化に必要な反応時間を数時間を超えることなくしかも精々24時間で室温の如き特に温和な温度で行なうことができる;
(ホ)(共)重合は、得られた(コ)ポリマーの質量分布が狭いように均質な媒質中で実際に行なうことができ、本発明により得られた(コ)ポリマーの多数分散指数は実際上1.0〜1.5よりなる;
(ヘ)得られた(コ)ポリマーはそれらの特性を変更することなく簡単に、迅速に且つ有効に精製できる。微量の残留モノマー並びに触媒残渣は、アルミナ基材(basic)での簡単な濾過により及び/又は炭酸水素の希薄水溶液での二相洗浄により実際上定量的に除去される。
【0027】
本発明は最後に前記した方法を実施することにより得られ又は得ることが可能であるラクチド及びグリコリドのポリマー又はコポリマーに関する。かかる(コ)ポリマーは調節した酸−アルコール末端又はエステル−アルコール末端を有し得る。かかる(コ)ポリマーは 500〜50,000 ダルトンよりなる質量で、好ましくは1,000〜20,000ダルトンよりなる質量で低質量を有し得る。
【0028】
本発明の要旨は調節した酸−アルコール末端又はエステル−アルコール末端を有するラクチドとグリコリドの(コ)ポリマーである。本発明の要旨はまた 500〜50,000 ダルトン、好ましくは1,000〜20,000 ダルトンの質量を有するラクチドとグリコリドの(コ)ポリマーである。特に好ましくは、本発明の要旨は、調節した酸−アルコール又はエステル−アルコール末端を有し且つ 500〜50,000 ダルトン、好ましくは1,000〜20,000ダルトンの質量を有するラクチドとグリコリドの(コ)ポリマーである。
【0029】
一般式(1)及び(2)の生成物は市販されて入手し得るか又は当業者に既知の方法によって製造できる。
【0030】
但し書きがなければ、本発明で用いた全ての技術的且つ科学的な用語は、本発明が属する分野で専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。同様に、本発明で挙げた全ての刊行物、特許出願及び全ての他の文献は参考のためにここに組入れてある。
【0031】
次の実施例は前記の方法を例証するのに提示されており、本発明の範囲を限定するものと何ら考えるべきでない。
【0032】
実施例1: 酸−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド)ポリマーの製造
22gのD,L−ラクチド(0.153モル)と150mlのジクロロメタンと1.35mlのトリフルオロメタン−スルホン酸(0.153モル)と0.3mlの水 (0.0153モル) とを、磁気攪拌機を備え且つアルゴン下に掃気したシュレンク管に連続的に装入した。反応混合物を室温で攪拌下に放置した。重合の進行はプロトン NMR により監視した。3時間の反応後には、モノマーの転化率は100%である。アルミナ基材を反応混合物に添加した。1時間攪拌した後に、反応媒質をフリット上で濾過し、溶剤を減圧下に除去した。761〜400,000の質量のポリスチレン標準品(PS)から行なった検量を用いてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)によると、試料は同様な質量(Mw=2,600ダルトン、Mw/Mn=1.48)を有するポリマーよりなる。酸−アルコール連鎖端の性状は質量分析法(電子噴霧イオン化、正イオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定した。
【0033】
実施例2: エステル−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド)ポリマーの製造
22gのD,L−ラクチド(0.153モル)と150mlのジクロロメタンと1.35mlのトリフルオロメタンスルホン酸(0.0153モル)と1.17mlのイソプロパノール(0.0153モル)とを、磁気攪拌機を備え且つアルゴン下に掃気したシュレンク管に連続的に装入した。反応混合物を室温で攪拌下に3時間放置した。次いでアルミナ基材を反応混合物に添加した。1時間攪拌した後に、反応媒質をフリット上で濾過し、溶剤を減圧下に除去した。ポリマーはプロトンNMRによって特徴付けられ;モノマーの転化率は100%である。761〜400,000の質量のポリスチレン標準品(PS)から行なった検量を用いてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)分析によると、試料は同様な質量(Mw=2070ダルトン、Mw/Mn=1.25)を有するポリマーよりなる。エステル−アルコール連鎖端の性状は質量分析法(電子噴霧イオン化、正イオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリル上に溶解した試料)により測定した。
【0034】
実施例3: エステル−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド/グリコリド)75/25コポリマーの製造
150mlのジクロロメタンに溶解した16.5gのD,L−ラクチド(0.115モル)と4.4gのグリコリド(0.038モル)とを、磁気攪拌機を備え且つアルゴン下に掃気したシュレンク管に装入した。次いで1.35mlのトリフルオロメタンスルホン酸(0.0153モル)と1.17mlのイソプロパノール(0.0153モル)とを連続的に添加した。反応混合物を室温で攪拌下に2時間放置した。次いでアルミナ基材を反応混合物に添加した。1時間攪拌した後に、反応媒質をフリット上で濾過し、溶剤を減圧下に除去した。ポリマーはプロトンNMRによって特徴付けられ;モノマーの各々の転化率は95%以上である。ポリラクチド部分(5.2ppm)及びポリグリコリド部分(4.85ppm)に対応する信号積分(signal integrals)の割合によってコポリマーの組成を79%のラクチド及び21%のグリコリドと評価させ得る。761〜400,000の質量のポリスチレン標準品(PS)から行なった検量を用いてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)分析によると、試料は同様な質量(Mw=2,100ダルトン、Mw/Mn=1.34)を有するコポリマーよりなる。連鎖端の性状は質量分析法(電子噴霧イオン化、正イオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定した。
【0035】
実施例4: エステル−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド)ポリマーの製造
22gのD,L−ラクチド (0.153モル) と150mlのジクロロメタンと190μlのトリフルオロメタンスルホン酸(0.002モル)と170μlのイソプロパノール(0.002モル)とを、磁気攪拌機を備え且つアルゴン下に掃気したシュレンク管に連続的に装入した。反応混合物を攪拌下に室温で10時間放置した。次いでアルミナ基材を反応混合物に添加した。1時間攪拌した後に、反応媒質をフリット上で濾過し、溶剤を減圧下に除去した。ポリマーはプロトンNMRによって特徴付けられ;モノマーの転化率は100%である。イソプロピルエステル連鎖端の存在はプロトンNMRによっても証明される。761〜400,000の質量を有するポリスチレン標準品(PS)から行なった検量を用いてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)によると、試料は同様な質量(Mw=13000ダルトン、Mw/Mn=1.15)を有するポリマーよりなる。
【0036】
実施例5: エステル−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド)オリゴマー(1000Daに近いMw) の製造
19.39gのD,L−ラクチド (0.135モル) と160mlのジクロロメタンと3.00mlのトリフルオロメタンスルホン酸(0.0336モル)と3.65mlのペンタン−1−オール(0.0336モル)とを、磁気攪拌機を備え且つアルゴン下に掃気したシュレンク管に連続的に装入した。反応混合物を攪拌下に室温で1時間放置した。次いでアルミナ基材を反応混合物に添加した。1時間攪拌した後に、反応媒質をフリット上で濾過し、溶剤を減圧下に除去した。ポリマーはプロトンNMRによって特徴付けられ;モノマーの転化率は100%である。761〜400,000の質量のポリスチレン標準品(PS)から行なった検量を用いてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)分析に応じて、試料は同様な質量(Mw=1008ダルトン、Mw/Mn=1.13)を有するポリマーよりなる。エステル−アルコール連鎖端の性状は質量分析法(電子噴霧イオン化、正イオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により決定した。
【0037】
実施例6: エステル−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド/グリコリド)80/20コ−オリゴマー(1,000Daに近いMw)の製造
18.81gのD,L−ラクチド(0.128モル)と4,00gのグリコリド(0.031モル)と160mlのジクロロメタンとを、磁気攪拌機を備え且つアルゴン下に掃気したシュレンク管に装入した。次いで3.5mlのトリフルオロメタンスルホン酸(0.039モル)と3.4mlのペンタン−1−オール (0.039モル) とを連続的に添加した。反応混合物を攪拌下に室温で1時間放置した。次いでアルミナ基材を反応混合物に添加した。1時間攪拌した後に、反応媒質をフリット上で濾過し、溶剤を減圧下に除去した。ポリマーはプロトンNMRによって特徴付けられ;モノマーの各々の転化率は45%以上である。ポリラクチド部分(5.2ppm)とポリグリコリド部分(4.85ppm)に対応する信号積分の割合によってコポリマーの組成を80%のラクチドと20%のグリコリドと評価し得る。761〜400,000の質量のポリスチレン標準品(PS)から行なった検量を用いてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)分析によると、試料は同様な質量(Mw=1030ダルトン、Mw/Mn=1.23)を有するコポリマーよりなる。連続端の性状は質量分析法(電子噴霧イオン化、正イオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶かした試料)により測定した。
【0038】
実施例7: エステル−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド/グリコリド)60/40コオリゴマー(1,000Daに近いMw)の製造
2.68gのD,L−ラクチド(0.0186モル)と1.44gのグリコリド (0.0124モル) と40mlのジクロロメタンとを、磁気攪拌機を備え且つアルゴン下に掃気したシュレンク管に装入した。次いで0.69mlのトリフルオロメタンスルホン酸 (0.0077モル) と0.85mlのペンタン−1−オール (0.0077モル) とを連続的に添加した。反応混合物を攪拌下に室温で2時間放置した。次いでアルミナ基材を反応混合物に添加した。1時間攪拌した後に、反応媒質をフリット上で濾過し、溶剤を減圧下に除去した。ポリマーはプロトンNMRによって特徴付けられ;モノマーの各々の転化率は95%以上である。ポリラクチド部分 (5.2ppm) 及びポリグリコリド部分 (4.85ppm)に対応する信号積分の比率によってポリマーの組成を60%ラクチドの質量のポリスチレン標準品(PS)から行なった検量を用いてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)分析によると、試料は同様な質量(Mw=953ダルトン、Mw/Mn=1.26)を有するコポリマーよりなる。連続端の性状は質量分析法(電子噴霧イオン化、正のイオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定した。
【0039】
実施例8: 酸−アルコール末端と大体7,000DaのMwとを有する (D,L−ラクチド) ポリマーの製造
22.1gのD,L−ラクチド (0.153モル) と140mlのジクロロメタンと0.486mlのトリフルオロメタンスルホン酸 (0.0055モル) と0.10mlの水 (0.0055モル) とを、磁気攪拌機を備え且つアルゴン下に掃気したシュレンク管に連続的に装入した。反応混合物を攪拌下に室温で放置した。重合の進行はプロトンNMRにより監視した。6時間反応した後に、モノマーの転化率は95%以上であった。反応媒質を分離漏斗に移し、NaHCO3の飽和水溶液次いで塩水で洗浄した。得られた溶液をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、次いで溶剤を減圧下に除去した。761〜400,000の質量のポリスチレン標準品(PS)から行なった検量を用いてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)によると、質量は同様な質量(Mw=7,200ダルトン、Mw/Mn=1.32)を有するポリマーからなる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 触媒として次式(1)

〔式中R1は水素又はジュウテリウム原子を表わすか又は式
−E14(R14)(R’14)(R’’14)
(但しE14は14族の元素であり;
R14、R’14及びR’’14は個々に水素、ジュウテリウム原子又は次の置換した基又は非置換の基;アルキル、シクロアルキル又はアリール基の1つを表わし、その際1個又はそれ以上の該置換基はハロ、アルキル、シクロアルキル及びアリール基から選ばれる)の基を表わす〕のトリフルオロメタンスルホネート及び
(b) 次式(2)
R2−E−R3 (2)
〔式中Eは16族の元素を表わし;
R2は水素又はジュウテリウム原子を表わし;
R3は水素又はジュウテリウム原子を表わすか又は次式
−E’14(T14)(T’14)(T’’14)
(但しE’14は14族の元素であり;
T14、T’14及びT’’14は個々に水素原子;ジュウテリウム原子;又は次の置換した基又は非置換の基;アルキル、シクロアルキル又はアリール基の1つを表わし、その際1個又はそれ以上の該置換基はハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、シクロアルコキシカルボニル及びアリールオキシカルボニル基から選ばれる)の基を表わす〕の(共)重合添加剤を含有してなる、ラクチド及びグリコリドの(共)重合用触媒組成物。
【請求項2】
触媒(a)に対して(共)重合添加剤(b)の量は0.05〜5モル当量、好ましくは0.5〜2モル当量よりなることを特徴とする請求項1記載の触媒組成物。
【請求項3】
式(1)の化合物はR1が水素原子又は式−E14(R14)(R’14)(R’’14) の基の何れかを表わすようなものであることを特徴とする請求項1又は2記載の触媒組成物。
【請求項4】
R1が水素原子を表わすことを特徴とする請求項3記載の触媒組成物。
【請求項5】
式(1)の化合物はR1’が式−E14(R14)(R’14)(R’’14) の基を表わし、E14が炭素又はケイ素原子であるようなものであることを特徴とする請求項3記載の触媒組成物。
【請求項6】
E14が炭素原子であり、R14、R’14及びR’’14が個々に水素原子又はアルキル基を表わすことを特徴とする請求項5記載の触媒組成物。
【請求項7】
一般式(2)の化合物は、Eが酸素又は硫黄原子を表わし;R2が水素原子を表わし;R3が水素原子又は式
−E’14(T14)(T’14)(T’’14)
の基を表わし;その際E’14が炭素又はケイ素原子であり、T14、T’14及びT’’14が個々に水素原子又は次の置換した基又は非置換の基;アルキル、シクロアルキル又はアリール基を表わし、その際1個又はそれ以上の該置換基はハロ、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ナフチル、カルボキシ及びアルコキシカルボニル基から選ばれるようなものであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の触媒組成物。
【請求項8】
Eは酸素原子を表わし;
R2は水素原子を表わし;
R3は水素原子又は次式
−E’14(T14)(T’14) 及び (T’’14) の基を表わし;
その際、E’14は炭素原子を表わし、T14、T’14及びT’’14は個々に水素原子又はアルキル基を表わすことを特徴とする請求項7記載の触媒組成物。
【請求項9】
一般式 (2) の化合物は水又は脂肪族アルコールの何れかであることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の触媒組成物。
【請求項10】
一般式 (2) の化合物はイソプロパノール及びペンタン−1−オールから選んだ脂肪族アルコールであることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の触媒組成物。
【請求項11】
1種又はそれ以上の当該モノマーと請求項1〜10の何れかに記載の触媒組成物と場合によっては重合溶剤とを互いに一緒にすることからなるラクチド及びグリコリドの(共)重合方法。
【請求項12】
重合温度は−20℃〜大体150℃であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
本法は0℃〜30℃の温度で溶液中で行なうことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
反応時間は数分〜48時間の間、好ましくは30分〜20時間の間よりなることを特徴とする請求項11〜13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
請求項11〜14の何れかに記載の方法を実施することにより得られるラクチド及びグリコリドのポリマー又はコポリマー。


【公表番号】特表2006−515899(P2006−515899A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502104(P2006−502104)
【出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000100
【国際公開番号】WO2004/067602
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505474717)ソシエテ ド コンセイユ ド ルシェルシェ エ ダアップリカーション シャンティフィック(エス.セー.エール.アー.エス.) (41)
【出願人】(501339241)サントル・ナシヨナル・ド・ラ・ルシエルシエ・シヤンテイフイツク・(セ・エーヌ・エール・エス) (4)
【Fターム(参考)】