説明

ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物の製造方法

【課題】環状ケトン化合物から、ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物を製造する工業的に有利な製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の課題は、カルボン酸塩化合物の存在下で、環状ケトン化合物と過酸化物とを反応させることを特徴とする、ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物の製造方法の提供により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ケトン化合物から、ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物を製造する方法に関する。特に本発明は、ヘキサメチレン−1,6−ジオール化合物の原料化合物となりうる、ε−カプロラクトン化合物及び6−ヒドロキシヘキサン酸化合物の高効率的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物は、医薬、香料、染料、有機合成中間体や樹脂原料等として有用な化合物である。(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
更に近年、ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物は、それぞれジオール化合物合成における出発原料として使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ラクトン化合物の製造方法としては、例えば、ケトン化合物と過酢酸、過安息香酸等の有機過酸とを反応させる方法(いわゆる、バイヤー−ビリガー(Baeyer−Villiger)反応)が、特に有名な方法として知られている(例えば、非特許文献2参照)。しかし、バイヤー−ビリガー反応に使用される過酢酸又はm−クロロ過安息香酸等の有機過酸は、研究目的としては広く使用されているが、これらの有機過酸は衝撃に敏感であり、濃縮相では爆発の危険もあるため、工業的な使用を考えた場合、その安全性やコスト面からも実用的な方法とは言い難かった。
【0005】
そこで、これらの極めて危険な物質の使用を避け、更に、廃棄処理が必要な副生成物の環境への影響をできるだけ低く抑えるために、酸化剤として過酸化水素を使用する様々な酸化反応が開発されてきている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。例えば、特許文献2では、周期表3族、13族、14族及び15族から選択された金属元素を含む化合物の存在下、ケトン化合物と過酸化水素とを反応させて、エステル化合物又はラクトン化合物を製造する方法が示され、更に実施例では、シクロへキサノンからのε−カプロラクトンの合成法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開公報第1996/020909号パンフレット
【特許文献2】特開2000−256342号
【特許文献3】特開2003−300722号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Org. Chem., 51, p.2830 (1986)
【非特許文献2】Tetrahedron letters, 43, p.6925 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本願発明者も特許文献2、実施例12で使用された塩化スズを用いて実際に試してみたが、目的とするε−カプロラクトンの選択率は、わずか4.1%であることがわかった(本願比較例1参照)。更に、例えば、前記特許文献3のバイヤー−ビリガー反応においても、特殊な触媒調製を行う必要など、調製の煩雑さやコスト面での問題があり、工業的に簡便かつ効率的な製法が、依然として望まれている。
【0009】
上記より、本発明の課題は、環状ケトン化合物から、ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物を製造する工業的に有利な製造方法を提供することである。特に本発明の課題は、ヘキサメチレン−1,6−ジオールの合成原料となりうる、ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の工業的に有利な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、触媒としてカルボン酸塩化合物を用いると、環状ケトン化合物と過酸化物との反応により効率よくラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物が製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明の課題は、カルボン酸塩化合物の存在下、一般式(1)で示される環状ケトン化合物:
【0012】
【化1】

(式(1)中、Aは、アルキレン基、アラルキレン基、又はヘテロアラルキレン基を示し、これらの基は置換基を有していても良い。)
と過酸化物とを反応させることを特徴とする、一般式(2)で示されるラクトン化合物:
【0013】
【化2】

(式(2)中、Aは、前記と同じである。曲線は結合を示す。)
及び一般式(3)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物:
【0014】
【化3】

(式(3)中、Aは、前記と同じである。)
の製造方法により解決することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、高価な触媒を使用することなく、或いは工程を複雑にすることなく、取り扱いが容易で、入手しやすい安価なカルボン酸塩化合物を触媒として用いることで、環状ケトン化合物から、ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物を選択率よく製造することができる。従って、本発明により、ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物からジオール化合物をより収率よく得ることができる。また、それぞれを更に単離・精製することで、医薬、香料、染料、有機合成中間体や樹脂原料等としても使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、原料の環状ケトン化合物は、下記一般式(1):
【0017】
【化4】

(式(1)中、Aは、アルキレン基、アラルキレン基、又はヘテロアラルキレン基を示し、これらの基は置換基を有していても良い。)
で示される。
【0018】
本発明の一実施態様では、一般式(1)で示される環状ケトン化合物において、Aは、炭素原子数2から18のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は置換基を有していても良い。
【0019】
Aにおけるアルキレン基は、炭素原子数2〜18の直鎖状アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基等)、炭素原子数3〜18の分岐鎖状アルキレン基(例えば、2−メチルエチレン基、3,3−ジメチルプロピレン基、3,3−ジメチルペンチレン基等)、炭素原子数3〜18の環状のアルキレン基(例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロデカレン基、シクロドデカレン基等)、下記一般式(4)で示されるスピロ骨格を含有するアルキレン基を示し、更に各種異性体も含む。これらの中で、炭素原子数2〜18の直鎖状アルキレン基、炭素原子数3〜18の分岐鎖状アルキレン基が好ましく、炭素原子数3〜12の直鎖状アルキレン基が特に好ましい。
【0020】
【化5】

(式(4)中、nは、それぞれ1から6までの整数、l及びmは、それぞれ1から3までの整数を示す。波線は、ケトン基との結合部位を示す。)
【0021】
本発明の一般式(1)で示される環状ケトン化合物としては、例えば、無置換又は置換基を有しても良い、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン、2−デカロン(Decahydro-2-naphthalenone)、ビシクロ[2.1.0]ペンタン−5−オン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−オン、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン−7−オン、スピロ[2.5]オクタン−6−オン、スピロ[3.5]ノナン−7−オン等が挙げられる。
【0022】
本発明の別の実施態様では、一般式(1)で示される環状ケトン化合物において、Aは、炭素原子数7から18のアラルキレン基を示し、当該アラルキレン基は置換基を有していても良い。
【0023】
Aがアラルキレン基である一般式(1)で示される環状ケトン化合物としては、例えば下記式(5)〜(9)等の化合物が挙げられる。
【0024】
【化6】

【0025】
本発明の別の実施態様では、一般式(1)で示される環状ケトン化合物において、Aは、炭素原子数6から18のヘテロアラルキレン基を示し、当該ヘテロアラルキレン基は置換基を有していても良い。
【0026】
Aがヘテロアラルキレン基である一般式(1)で示される環状ケトン化合物としては、例えば、下記式(10)〜(15)等の化合物が挙げられる。
【0027】
【化7】

【0028】
更に前記アルキレン基、アラルキレン基及びヘテロアラルキレン基は、炭素原子上に置換基を有しても良い。なお、アラルキレン基及びヘテロアラルキレン基の置換基は、当該化合物の芳香族環上及び/又は脂肪族環上に有していてもよい。
【0029】
置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)、炭素原子数1から8のアルキル基(直鎖、分岐鎖、環状;各種異性体も含む)、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、フェニル基、ハロゲン原子で置換されたフェニル基、フェニルオキシ基、及び(ハロゲン原子で置換されたフェニル)オキシ基が挙げられる。これらの置換基は、同一炭素或いはそれぞれ異なる炭素上に置換されていても良く、更に置換基の個数は限定されない。
【0030】
本発明の一般式(1)で示される環状ケトン化合物としては、好ましくは、無置換又は置換基を有しても良い、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン、前記式(7)〜(15)であり、より好ましくは無置換又は置換基を有しても良い、シクロプロパノン、シクロペンタノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロドデカノン、前記式(7)、式(8)、又は式(11)であり、更に好ましくは、無置換又は置換基を有しても良い、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、又はシクロドデカノン、特に好ましくは無置換の、シクロペンタノン、シクロヘキサノン又はシクロドデカノン、特に好ましくは無置換のシクロヘキサノン又はシクロドデカノンである。
【0031】
本発明で使用される過酸化物は、過酸化水素、過硫酸、過硫酸アルカリ塩化合物、及び過硫酸アルカリ土類塩化合物からなる群より選ばれる1種以上の過酸化物を示す。前記過酸化物は、例えば、市販品をそのまま使用しても、水又は後述の別途使用される溶媒に溶解又は懸濁させて使用してもよい。任意の公知の方法により製造して用いてもよい。
【0032】
本発明の過酸化物として、好ましくは過酸化水素、過硫酸、過硫酸のアルカリ金属塩、更に好ましくは過酸化水素水、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムの混合物からなる群より選ばれる1種以上の過酸化物、より好ましくは過酸化水素水、特に好ましくは30%〜60%過酸化水素水が使用される。
【0033】
本発明の過酸化物の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等により適宜調節するが、一般式(1)で示される環状ケトン化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜100モル、より好ましくは0.3〜50モル、特に好ましくは0.5〜10モル使用する。
【0034】
本発明で使用されるカルボン酸塩化合物は、蟻酸、炭素原子数1から8のアルキル基を有するモノ又はジカルボン酸及び炭素原子数6から20の芳香族基を有するモノ又はジカルボン酸から選ばれるモノ又はジカルボン酸化合物とアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第3族、第8族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選択された金属元素からなる群より選ばれる1種以上の金属とからなる塩化合物である。
【0035】
本発明のカルボン酸塩化合物としては、入手又は調製が容易なカルボン酸塩化合物が望ましく、具体的には次のものが挙げられる。
【0036】
<アルカリ金属のカルボン酸塩>
蟻酸のアルカリ金属塩(例えば、蟻酸リチウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、蟻酸ルビジウム、蟻酸セシウム等);酢酸のアルカリ金属塩(例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム等);プロピオン酸のアルカリ金属塩(例えば、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸ルビジウム、プロピオン酸セシウム等);ブタン酸のアルカリ金属塩(例えば、ブタン酸リチウム、ブタン酸ナトリウム、ブタン酸カリウム、ブタン酸ルビジウム、ブタン酸セシウム等);ヘプタン酸のアルカリ金属塩(例えば、ヘプタン酸リチウム、ヘプタン酸ナトリウム、ヘプタン酸カリウム、ヘプタン酸ルビジウム、ヘプタン酸セシウム等);ヘキサン酸のアルカリ金属塩(例えば、ヘキサン酸リチウム、ヘキサン酸ナトリウム、ヘキサン酸カリウム、ヘキサン酸ルビジウム、ヘキサン酸セシウム等);2−エチルヘキサン酸のアルカリ金属塩(例えば、2−エチルヘキサン酸リチウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ルビジウム、2−エチルヘキサン酸セシウム等);安息香酸のアルカリ金属塩(例えば、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ルビジウム、安息香酸セシウム等);シュウ酸のアルカリ金属塩(例えば、シュウ酸二カリウム、シュウ酸一ナトリウム等);マロン酸のアルカリ金属塩(例えば、マロン酸二カリウム、マロン酸一ナトリム等);マレイン酸のアルカリ金属塩(例えば、マレイン酸二カリウム、マレイン酸一ナトリウム等)など。
【0037】
<アルカリ土類金属のカルボン酸塩>
蟻酸のアルカリ土類金属塩(例えば、蟻酸マグネシウム、蟻酸カルシウム、蟻酸ストロンチウム、蟻酸バリウム等);酢酸のアルカリ土類金属塩(例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム等);プロピオン酸のアルカリ土類金属塩(例えば、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ストロンチウム、プロピオン酸バリウム等);ブタン酸のアルカリ土類金属塩(例えば、ブタン酸マグネシウム、ブタン酸カルシウム、ブタン酸ストロンチウム、ブタン酸バリウム等);ヘプタン酸のアルカリ土類金属塩(例えば、ヘプタン酸マグネシウム、ヘプタン酸カルシウム、ヘプタン酸ストロンチウム、ヘプタン酸バリウム等);ヘキサン酸のアルカリ土類金属塩(例えば、ヘキサン酸マグネシウム、ヘキサン酸カルシウム、ヘキサン酸ストロンチウム、ヘキサン酸バリウム等);2−エチルヘキサン酸のアルカリ土類金属塩(例えば、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸ストロンチウム、2−エチルヘキサン酸バリウム等);安息香酸のアルカリ土類金属塩(例えば、安息香酸マグネシウム、安息香酸カルシウム、安息香酸ストロンチウム、安息香酸バリウム等);シュウ酸のアルカリ土類金属塩(例えば、シュウ酸カルシウム等);マロン酸のアルカリ土類金属塩(例えば、マロン酸カルシウム等);マレイン酸のアルカリ土類金属塩(例えば、マレイン酸カルシウム等)など。
【0038】
<周期表第3族の金属のカルボン酸塩>
蟻酸の周期表第3族の金属塩(例えば、蟻酸スカンジウム、蟻酸イットリウム、蟻酸ランタニウム、蟻酸サマリウム等);酢酸の周期表第3族の金属塩(例えば、酢酸スカンジウム、酢酸イットリウム、酢酸ランタニウム、酢酸サマリウム等);プロピオン酸の周期表第3族の金属塩(例えば、プロピオン酸スカンジウム、プロピオン酸イットリウム、プロピオン酸ランタニウム、プロピオン酸サマリウム等);ブタン酸の周期表第3族の金属塩(例えば、ブタン酸スカンジウム、ブタン酸イットリウム、ブタン酸ランタニウム、ブタン酸サマリウム等);ヘプタン酸の周期表第3族の金属塩(例えば、ヘプタン酸スカンジウム、ヘプタン酸イットリウム、ヘプタン酸ランタニウム、ヘプタン酸サマリウム等);ヘキサン酸の周期表第3族の金属塩(例えば、ヘキサン酸スカンジウム、ヘキサン酸イットリウム、ヘキサン酸ランタニウム、ヘキサン酸サマリウム等);2−エチルヘキサン酸の周期表第3族の金属塩(例えば、2−エチルヘキサン酸スカンジウム、2−エチルヘキサン酸イットリウム、2−エチルヘキサン酸ランタニウム、2−エチルヘキサン酸サマリウム等);安息香酸の周期表第3族の金属塩(例えば、安息香酸スカンジウム、安息香酸イットリウム、安息香酸ランタニウム、安息香酸サマリウム等)など。
【0039】
<周期表第8族の金属のカルボン酸塩>
蟻酸の周期表第8族の金属塩(例えば、蟻酸鉄、蟻酸ルテニウム、蟻酸オスミウム等);酢酸の周期表第8族の金属塩(例えば、酢酸鉄、酢酸ルテニウム、酢酸オスミウム等);プロピオン酸の周期表第8族の金属塩(例えば、プロピオン酸鉄、プロピオン酸ルテニウム、プロピオン酸オスミウム等);ブタン酸の周期表第8族の金属塩(例えば、ブタン酸鉄、ブタン酸ルテニウム、ブタン酸オスミウム等);ヘプタン酸の周期表第8族の金属塩(例えば、ヘプタン酸鉄、ヘプタン酸ルテニウム、ヘプタン酸オスミウム等);ヘキサン酸の周期表第3族の金属塩(例えば、ヘキサン酸鉄、ヘキサン酸ルテニウム、ヘキサン酸オスミウム等);2−エチルヘキサン酸の周期表第8族の金属塩(例えば、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸ルテニウム、2−エチルヘキサン酸オスミウム等);安息香酸の周期表第8族の金属塩(例えば、安息香酸鉄、安息香酸ルテニウム、安息香酸オスミウム等);シュウ酸の周期表第8族の金属塩(例えば、シュウ酸鉄等);マロン酸の周期表第8族の金属塩(例えば、マロン酸鉄等);マレイン酸の周期表第8族の金属塩(例えば、マレイン酸鉄等)など。
【0040】
<周期表第11族の金属のカルボン酸塩>
蟻酸の周期表第8族の金属塩(例えば、蟻酸銅、蟻酸銀、蟻酸金等);酢酸の周期表第11族の金属塩(例えば、酢酸銅、酢酸銀、酢酸金等);プロピオン酸の周期表第11族の金属塩(例えば、プロピオン酸銅、プロピオン酸銀、プロピオン酸金等);ブタン酸の周期表第11族の金属塩(例えば、ブタン酸銅、ブタン酸銀、ブタン酸金等);ヘプタン酸の周期表第11族の金属塩(例えば、ヘプタン酸銅、ヘプタン酸銀、ヘプタン酸金等);ヘキサン酸の周期表第11族の金属塩(例えば、ヘキサン酸銅、ヘキサン酸銀、ヘキサン酸金等);2−エチルヘキサン酸の周期表第11族の金属塩(例えば、2−エチルヘキサン酸銅、2−エチルヘキサン酸銀、2−エチルヘキサン酸金等);安息香酸の周期表第3族の金属塩(例えば、安息香酸銅、安息香酸銀、安息香酸金等);シュウ酸の周期表第11族の金属塩(例えば、シュウ酸銅等);マロン酸の周期表11族の金属塩(例えば、マロン酸銅等);マレイン酸の周期表第11族の金属塩(例えば、マレイン酸銅等)など。
【0041】
<周期表第12族の金属のカルボン酸塩>
蟻酸の周期表第12族の金属塩(例えば、蟻酸亜鉛、蟻酸カドミウム、蟻酸水銀等);酢酸の周期表第12族の金属塩(例えば、酢酸亜鉛、酢酸カドミウム、酢酸水銀等);プロピオン酸の周期表第12族の金属塩(例えば、プロピオン酸亜鉛、プロピオン酸カドミウム、プロピオン酸水銀等);ブタン酸の周期表第12族の金属塩(例えば、ブタン酸亜鉛、ブタン酸カドミウム、ブタン酸水銀等);ヘプタン酸の周期表第12族の金属塩(例えばヘプタン酸亜鉛、ヘプタン酸カドミウム、ヘプタン酸水銀等);ヘキサン酸の周期表第12族の金属塩(例えば、ヘキサン酸亜鉛、ヘキサン酸カドミウム、ヘキサン酸水銀等);2−エチルヘキサン酸の周期表第12族の金属塩(例えば、2−エチルヘキサン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸カドミウム、2−エチルヘキサン酸水銀等);安息香酸の周期表第12族の金属塩(例えば、安息香酸亜鉛、安息香酸カドミウム、安息香酸水銀等);シュウ酸の周期表第12族の金属塩(例えば、シュウ酸亜鉛等);マロン酸の周期表第12族の金属塩(例えば、マロン酸亜鉛等);マレイン酸の周期表第12族の金属塩(例えば、マレイン酸亜鉛等)など。
【0042】
<周期表第13族の金属のカルボン酸塩>
蟻酸の周期表第13族の金属塩(例えば、蟻酸ガリウム、蟻酸インジウム、蟻酸タリウム等);酢酸の周期表第13族の金属塩(例えば、酢酸ガリウム、酢酸インジウム、酢酸タリウム等);プロピオン酸の周期表第13族の金属塩(例えば、プロピオン酸ガリウム、プロピオン酸インジウム、プロピオン酸タリウム等);ブタン酸の周期表第13族の金属塩(例えば、ブタン酸ガリウム、ブタン酸インジウム、ブタン酸タリウム等);ヘプタン酸の周期表第13族の金属塩(例えば、ヘプタン酸ガリウム、ヘプタン酸インジウム、ヘプタン酸タリウム等);ヘキサン酸の周期表第13族の金属塩(例えば、ヘキサン酸ガリウム、ヘキサン酸インジウム、ヘキサン酸タリウム等);2−エチルヘキサン酸の周期表第13族の金属塩(例えば、2−エチルヘキサン酸ガリウム、2−エチルヘキサン酸インジウム、2−エチルヘキサン酸タリウム等);安息香酸の周期表第13族の金属塩(例えば、安息香酸ガリウム、安息香酸インジウム、安息香酸タリウム等);シュウ酸の周期表第13族の金属塩(例えば、シュウ酸タリウム等);マロン酸の周期表第13族の金属塩(例えば、マロン酸タリウム等);マレイン酸の周期表第13族の金属塩(例えば、マレイン酸タリウム等)など。
【0043】
<周期表第14族の金属のカルボン酸塩>
蟻酸の周期表第14族の金属塩(例えば、蟻酸ゲルマニウム、蟻酸スズ、蟻酸鉛等);酢酸の周期表第14族の金属塩(例えば、酢酸ゲルマニウム、酢酸スズ、酢酸鉛等);プロピオン酸の周期表第14族の金属塩(例えば、プロピオン酸ゲルマニウム、プロピオン酸スズ、プロピオン酸鉛等);ブタン酸の周期表第14族の金属塩(例えば、ブタン酸ゲルマニウム、ブタン酸スズ、ブタン酸鉛等);ヘプタン酸の周期表第14族の金属塩(例えば、ヘプタン酸ゲルマニウム、ヘプタン酸スズ、ヘプタン酸鉛等);ヘキサン酸の周期表第14族の金属塩(例えば、ヘキサン酸ゲルマニウム、ヘキサン酸スズ、ヘキサン酸鉛等);2−エチルヘキサン酸の周期表第14族の金属塩(例えば、2−エチルヘキサン酸ゲルマニウム、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸鉛等);安息香酸の周期表第14族の金属塩(例えば、安息香酸ゲルマニウム、安息香酸スズ、安息香酸鉛等)など。
【0044】
上記カルボン酸塩化合物として、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第3族、第8族、第11族、第12族、第13族、及び第14族からなる群より選ばれる1種以上の金属とからなる蟻酸塩化合物、又は炭素原子数1から8のアルキル基を有するモノ又はジカルボン酸とからなるカルボン酸塩化合物、より好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第3族、第8族、第11族、第12族、第13族、及び第14族からなる群より選ばれる1種以上の金属と炭素原子数1から6のアルキル基を有するモノ又はジカルボン酸とからなるカルボン酸塩化合物、更に好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、スカンジウム、イットリウム、鉄、ルテニウム、銅、銀、亜鉛、インジウム、及びスズからなる群より選ばれる1種以上の金属と炭素原子数1から6のアルキル基を有するモノ又はジカルボン酸とからなるカルボン酸塩化合物、特に好ましくは酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸亜鉛、及び酢酸スズからなる群より選ばれる1種以上の金属の酢酸塩が使用される。
【0045】
本発明のカルボン酸塩化合物は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。また、そのまま使用しても、例えば、水、後述の別途使用される溶媒或いはこれらの混合溶媒に溶解又は懸濁させて使用しても良い。
本発明のカルボン酸塩化合物の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等により適宜調整して使用されるが、通常、一般式(1)で示される環状ケトン化合物1モルに対して、0.001モル以上2.0モル以下であり、好ましくは0.001モル以上1.0モル未満、より好ましくは0.003モル以上1.0モル未満、特に好ましくは0.004モル以上0.5モル以下である。
【0046】
本発明の反応は、無溶媒で行うことも、別途溶媒の存在下にて行うこともできる。また、その反応系は、均一系或いは不均一系のどちらでもよく、更に、均一系の場合、単相系であっても、例えば、水−有機相からなる二相系のような多相系であってもどちらの場合でもあってもよい。
【0047】
使用される溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ヘキフルオロイソプロパノール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;アセトン、2−ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;蟻酸、酢酸等のカルボン酸類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、スルホラン等のスルホン類;N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロエタン等のハロゲン類;酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。
【0048】
前記溶媒として、好ましくは水、ニトリル類、ケトン類、カーボネート類、エーテル類、カルボン酸類、芳香族炭化水素類、ハロゲン類、及びカルボン酸エステル類からなる群より選ばれる1種以上の溶媒、より好ましくは水、アセトニトリル、アセトン、ジメチルカーボネート、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ベンゼン、トルエン、及びキシレンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒、特に好ましくは、水、アセトニトリル、アセトン、1,4−ジオキサン、酢酸、プロピオン酸エチル、及びトルエンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒が挙げられる。
【0049】
前記溶媒を二種以上の混合溶媒として使用する場合、それらの混合組成は特に限定されないが、全溶媒量に対する水の量は、通常0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.3〜20質量%、更に好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは0.5〜7.5質量%である。
【0050】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等により適宜調節するが、一般式(1)で示される環状ケトン化合物1gに対して、好ましくは、0.1〜1000gであり、より好ましくは0.3〜750g、特に好ましくは0.5〜500gである。
【0051】
本発明の反応は、例えば、大気中又は不活性ガス雰囲気にて行われる。また、環状ケトン化合物、過酸化物、カルボン酸塩化合物及び溶媒の混合順序は特に限定されない。通常、危険性を有する過酸化物が、反応時に確実に消費され、反応終了後に過剰に残存しないように、一般式(1)で示される環状ケトン化合物、カルボン酸塩化合物、溶媒との混合物に、反応温度条件下にて過酸化物を加えていく態様が望ましい。反応時に、過酸化物が確実に消費されるように、攪拌しながら反応を行うことが好ましい。
【0052】
本発明の反応温度は、好ましくは0℃〜150℃、更に好ましくは10℃〜120℃、より好ましくは20℃〜100℃、特に好ましくは60℃〜90℃であり、反応圧力は、特に限定されない。
【0053】
なお、反応の進行は、ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)等の分析手段により確認しながら行うことが望ましい。
【0054】
本発明の反応は、反応終了後、例えば、反応混合物を必要により分液、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩や、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤にて処理後、得られたラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物の混合物を、引き続き、ジオール化合物の製造に使用することができる。また、得られたラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物の混合物は、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の弱アルカリ性水溶液と有機溶媒(例えば、トルエン、酢酸エチル、塩化メチレン等)を用いて分液することで、ラクトン化合物を有機層溶液へ、ヒドロキシカルボン酸化合物を水層溶液へ分配させることにより、それぞれを単離・精製することができ、或いは、例えば、蒸留、再結晶又はカラムクロマトグラフィー等の方法により、それぞれを単離・精製することもできる。
【0055】
本発明は、上記のような反応条件下で反応を行うことにより、入手又は調製が容易なカルボン酸塩化合物存在下、環状ケトンと過酸化物から、効率よくラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物が製造できる。
【0056】
また、本発明において、特に過酸化水素を過酸化物として使用した場合、過酸化水素は反応後に水と酸素に分解されるため、過酸化物由来の副生成物の処理を行う必要がない。また、使用したカルボン酸塩化合物は、水溶液として、又は反応後処理時のろ過によりろ物として回収されるため、次回の製造に再利用することが可能である。即ち、ラクトン化合物の製造において消費される物質は環状ケトン化合物と過酸化水素のみである。従って、従来のバイヤービリガー反応を使った製造方法に比べ、安い値段で、かつ環境への負荷を抑えた方法で製造することができる。
【0057】
本発明の方法により、高収率にて、ラクトン化合物及びそれと対応するヒドロキシカルボン酸化合物が得られる。本発明の方法から得られるラクトン化合物中では、特に、ε−カプロラクトン化合物がヘキサメチレンジオール化合物の合成原料や香料化合物となりうるため有用である。このようなε−カプロラクトン化合物としては、例えば、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−プロピル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−カプロラクトン、β−エチル−ε−カプロラクトン、γ−エチル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−ブチル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−イソプロピル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−イソブチル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、α−プロピル−ε−カプロラクトン、α−ブチル−ε−カプロラクトン、α−ブチル−ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−ブチル−ε−プロピル−ε−カプロラクトン、α−イソプロピル−ε−カプロラクトン、α−イソプロピル−ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−イソプロピル−ε−プロピル−ε−カプロラクトン、α−イソプロピル−ε−ブチル−ε−カプロラクトン、α−イソプロピル−ε−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−プロピル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−ブチル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−イソプロピル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、α−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、β−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、γ−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、α−tert−ブチル−ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−tert−ブチル−ε−プロピル−ε−カプロラクトン、α−tert−ブチル−ε−ブチル−ε−カプロラクトン、α,β−ジメチル−ε−カプロラクトン、α,γ−ジメチル−ε−カプロラクトン、α,δ−ジメチル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジメチル−ε−カプロラクトン、β,γ−ジメチル−ε−カプロラクトン、β,δ−ジメチル−ε−カプロラクトン、α,β−ジエチル−ε−カプロラクトン、α,γ−ジエチル−ε−カプロラクトン、α,δ−ジエチル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジエチル−ε−カプロラクトン、β,γ−ジエチル−ε−カプロラクトン、β,δ−ジエチル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジプロピル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジブチル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジイソプロピル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジイソブチル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジtert−ブチル−ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0058】
また、上記と同様に本発明の方法により得られるラクトン化合物として、例えば、β−プロピオラクトン化合物、β−ブチロラクトン化合物、γ−ブチロラクトン化合物、γ−バレロラクトン化合物、δ−バレロラクトン化合物、γ−カプロラクトン化合物、δ−カプリロラクトン化合物、γ−デカラクトン化合物、γ−ウンデカラクトン化合物、δ−オクタラクトン化合物、δ−デカラクトン化合物、δ−ウンデカラクトン化合物、δ−ドデカラクトン化合物、δ−トリデカラクトン化合物、γ−ノナラクトン化合物、8−オクタラクトン、9−ノナラクトン、10−デカラクトン化合物、11−ウンデカラクトン化合物、12−ドデカラクトン化合物等のラクトン化合物及びそれと対応するヒドロキシカルボン酸化合物が挙げられる。これらのラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物はいずれも香料用化合物又はその合成原料としても特に有用である。
【実施例】
【0059】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「%」は特記しない限り、「質量%」を意味する。
【0060】
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析条件>
カラム:ODS−80TsQA φ4.6mm×250mm(TOSOH製)+Unision C−18 φ4.6mm×100mm(Imtact製)
溶離液:アセトニトリル/20mM NaHPO水溶液;Vol/Vol)=5/95(リン酸でpH=3.0に調整)。
カラム温度:40℃
検出器:210nm
流量:1.0ml/min
標品:ε−カプロラクトンは市販品(東京化成製)を用いた。6−ヒドロキシヘキサン酸は、前記市販品のε−カプロラクトンを用いて参考例1に示す方法で合成し、標品とした。
【0061】
参考例1(HPLC標品の合成:6−ヒドロキシヘキサン酸の水溶液)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にε−カプロラクトン(0.20g、東京化成製)、精製水(8ml)、8M水酸化ナトリウム水溶液(2ml)を加え、100℃の油浴中で1時間攪拌し、反応させた。反応終了後、得られた反応液を冷却し、3M硫酸水溶液を用いて、当該反応液のpHを2.5〜3.0とし、6−ヒドロキシヘキサン酸の水溶液を得た。
【0062】
実施例1(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して2等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)、アセトニトリル4g、60%過酸化水素1.146g(20.4mmol)、酢酸スズ(II)0.120g(0.5mmol)を加え、70℃にて6時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(HPLC,絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は51.5%、ε−カプロラクトンの収率は40.0%、その選択率は77.7%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は9.5%、その選択率は18.5%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、96.2%であった。
【0063】
実施例2(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.573g(10.2mmol)、酢酸スズ(II)0.120g(0.5mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は34.7%、ε−カプロラクトンの収率は27.6%、その選択率は79.5%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は4.2%、その選択率は12.2%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、91.7%であった。
【0064】
実施例3(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量、アセトニトリルと酢酸との混合溶媒使用)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)、アセトニトリル4g、酢酸0.3g、60%過酸化水素0.86g(15.3mmol)、酢酸スズ(II)0.145g(0.6mmol)を加え、70℃で2時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は47.2%、ε−カプロラクトンの収率は37.8%、その選択率は80.0%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は6.0%、その選択率は12.7%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、92.7%であった。
【0065】
実施例4(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;酢酸スズ(IV)使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.573g(10.2mmol)、酢酸スズ(IV)0.181g(0.5mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は44.0%、ε−カプロラクトンの収率は30.2%、その選択率は68.6%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は9.0%、その選択率は20.5%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、89.1%であった。
【0066】
実施例5(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;2−エチルヘキサン酸スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.573g(10.2mmol)、2−エチルヘキサン酸スズ(II)0.206g(0.5mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は30.8%、ε−カプロラクトンの収率は20.5%、その選択率は66.6%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は5.5%、その選択率は17.9%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、84.5%であった。
【0067】
実施例6(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;酢酸亜鉛(II)使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.573g(10.2mmol)、酢酸亜鉛(II)0.094g(0.5mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は19.2%、ε−カプロラクトンの収率は11.4%、その選択率は59.4%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は0.4%、その選択率は2.1%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、61.5%であった。
【0068】
実施例7(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;酢酸ナトリウム使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.573g(10.2mmol)、酢酸ナトリウム0.042g(0.5mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は8.1%、ε−カプロラクトンの収率は3.9%、その選択率は48.1%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は2.2%、その選択率は27.2%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、75.3%であった。
【0069】
実施例8(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;酢酸ルビジウム使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
酢酸スズ(II)を、酢酸ルビジウムに変えた以外は、実施例2と同様に反応を行い、同様に得られたろ液を分析し、シクロヘキサノンの転化率、ε−カプロラクトンの選択率及び収率、6−ヒドロキシヘキサン酸の選択率及び収率、並びにε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率を算出した。その結果を下記表1に示す。
【0070】
実施例9(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;プロピオン酸亜鉛使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.573g(10.2mmol)、プロピオン酸亜鉛0.108g(0.5mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は8.0%、ε−カプロラクトンの収率は6.1%、その選択率は75.6%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は0.2%、その選択率は2.4%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、78.0%であった。
【0071】
実施例10(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;ギ酸カリウム使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
酢酸スズ(II)を、ギ酸カリウムに変えた以外は、実施例2と同様に反応を行い、同様に得られたろ液を分析し、シクロヘキサノンの転化率、ε−カプロラクトンの選択率及び収率、6−ヒドロキシヘキサン酸の選択率及び収率、並びにε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率を算出した。その結果を下記表1に示す。
【0072】
実施例11(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;安息香酸ナトリウム使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
酢酸スズ(II)を、安息香酸ナトリウムに変え、その使用量をシクロヘキサノンの1モルに対して、0.05モルとした以外は、実施例2と同様に反応を行い、反応終了後、同様に得られたろ液を分析し、シクロヘキサノンの転化率、ε−カプロラクトンの選択率及び収率、6−ヒドロキシヘキサン酸の選択率及び収率、並びにε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率を算出した。その結果を下記表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例12(δ−バレロラクトン及び5−ヒドロキシペンタン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;シクロペンタノン1モルに対して1等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にシクロペンタノン1.00g(11.9mmol)、アセトニトリル(4g)、60%過酸化水素0.673g(11.9mmol)、酢酸スズ(II)0.141g(0.6mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、シクロペンタノンの転化率は33.3%、δ−バレロラクトンの収率は23.7%、その選択率は71.2%(シクロペンタノン基準)、5−ヒドロキシペンタン酸の収率は6.3%、その選択率は18.8%(シクロペンタノン基準)であり、δ−バレロラクトン及び5−ヒドロキシペンタン酸の合計の選択率(シクロペンタノン基準)は、90.0%であった。
【0075】
実施例13〜17(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、溶媒4g使用)
実施例2のアセトニトリルを表2に記載の溶媒(実施例13〜16)、並びに無溶媒(実施例17)に変えた以外は、実施例2と同様に反応を行い、反応終了後、同様に得られたろ液を分析し、シクロヘキサノンの転化率、ε−カプロラクトンの選択率及び収率、6−ヒドロキシヘキサン酸の選択率及び収率、並びにε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率を算出した。その結果を、実施例2の結果と併せて、下記表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
実施例18〜21(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、溶媒4g使用)
実施例3のアセトニトリルを表3に記載の溶媒に変えた以外は、実施例3と同様に反応を行い、反応終了後、同様に得られたろ液を分析し、シクロヘキサノンの転化率、ε−カプロラクトンの選択率及び収率、6−ヒドロキシヘキサン酸の選択率及び収率、並びにε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率を算出した。その結果を、実施例3の結果と併せて、下記表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
実施例22(3,4−ジヒドロクマリン及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;1−インダノン1モルに対して2等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器に1−インダノン1.35g(10.2mmol)、アセトニトリル4g、60%過酸化水素1.15g(20.4mmol)、酢酸スズ(II)0.241g(1.0mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、1−インダノンの転化率は8.27%、3,4−ジヒドロクマリンの収率は0.4%、その選択率は4.6%(1−インダノン基準)、3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の収率は2.0%、その選択率は23.8%(1−インダノン基準)であり、3,4−ジヒドロクマリン及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の合計の選択率(1−インダノン基準)は、28.4%であった。
【0080】
実施例23(3,4−ジヒドロクマリン及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;1−インダノン1モルに対して2等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器に1−インダノン1.35g(10.2mmol)、アセトニトリル4g、酢酸0.6g、60%過酸化水素1.15g(20.4mmol)、酢酸スズ(II)0.241g(1.0mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、1−インダノンの転化率は20.5%、3,4−ジヒドロクマリンの収率は2.4%、その選択率は11.7%(1−インダノン基準)、3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の収率は5.3%、その選択率は25.8%(1−インダノン基準)であり、3,4−ジヒドロクマリン及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の合計の選択率(1−インダノン基準)は、37.5%であった。
【0081】
実施例24(3,4−ジヒドロクマリン及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;1−インダノン1モルに対して2等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器に1−インダノン1.35g(10.2mmol)、トルエン4g、60%過酸化水素1.15g(20.4mmol)、酢酸スズ(II)0.241g(1.0mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、1−インダノンの転化率は13.2%、3,4−ジヒドロクマリンの収率は5.5%、その選択率は41.9%(1−インダノン基準)、3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の収率は1.3%、その選択率は9.6%(1−インダノン基準)であり、3,4−ジヒドロクマリン及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の合計の選択率(1−インダノン基準)は、51.5%であった。
【0082】
実施例25(3,4−ジヒドロクマリン及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;1−インダノン1モルに対して2等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器に1−インダノン1.35g(10.2mmol)、トルエン4g、酢酸0.6g、60%過酸化水素1.15g(20.4mmol)、酢酸スズ(II)0.241g(1.0mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、1−インダノンの転化率は35.6%、3,4−ジヒドロクマリンの収率は8.6%、その選択率は24.3%(1−インダノン基準)、3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の収率は7.1%、その選択率は19.9%(1−インダノン基準)であり、3,4−ジヒドロクマリン及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の合計の選択率(1−インダノン基準)は、44.2%であった。
【0083】
実施例26(12−ドデカラクトン及び12−ヒドロキシドデカン酸の合成;酢酸スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;シクロドデカノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、加熱装置、及び温度計を備えたガラス製容器にシクロドデカノン1.86g(10.2mmol)、トルエン4g、酢酸0.6g、60%過酸化水素0.867g(15.3mmol)、酢酸スズ(II)0.241g(1.0mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、ろ過を行った。得られたろ液を分析したところ、シクロドデカノンの転化率は33.9%、12−ドデカラクトンの収率は22.5%、その選択率は66.3%(シクロドデカノン基準)、12−ヒドロキシドデカン酸の収率は0.8%、その選択率は2.5%(シクロドデカノン基準)であり、12−ドデカラクトン及び12−ヒドロキシドデカン酸の合計の選択率(シクロドデカノン基準)は、68.8%であった。
【0084】
比較例1〜4(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
酢酸スズ(II)を、塩化スズ(II)(比較例1)、塩化インジウム(III)(比較例2)、スズトリフラート(II)(比較例3)、亜鉛トリフラート(II)(比較例4)にそれぞれ変えた以外は、実施例2と同様に反応を行い、反応終了後、同様に得られたろ液を分析し、シクロヘキサノンの転化率、ε−カプロラクトンの選択率及び収率、6−ヒドロキシヘキサン酸の選択率及び収率、並びにε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率を算出した。その結果を下記表4に示す。
【0085】
比較例5(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
酢酸スズ(II)を、酢酸に変え、その使用量をシクロヘキサノンの1モルに対して、0.10モルとした以外は、実施例2と同様に反応を行い、反応終了後、同様にろ液を分析し、シクロヘキサノンの転化率、ε−カプロラクトンの選択率及び収率、6−ヒドロキシヘキサン酸の選択率及び収率、並びにε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合計の選択率を算出した。その結果を下記表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
上記実施例及び比較例より、本発明の製造方法を用いることで、環状ケトン化合物からラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物を高い選択率で得ることが出来る。また、本発明の製造方法は、ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物以外の副生物が生成しにくい反応である為、未反応の原料の回収物は、特別な単離・精製等を行うことなく、次回の製造の合成原料として使用することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、環状ケトン化合物から、ラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物を選択率よく得る製造方法に関する。本発明の製法により得られるラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物は、医薬、香料、染料、有機合成中間体や樹脂原料等として有用な化合物であるだけでなく、それらはジオール化合物の合成原料として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸塩化合物の存在下、一般式(1)で示される環状ケトン化合物:
【化1】

(式(1)中、Aは、アルキレン基、アラルキレン基、又はヘテロアラルキレン基を示し、これらの基は置換基を有していても良い。)
と過酸化物とを反応させることを特徴とする、一般式(2)で示されるラクトン化合物:
【化2】

(式(2)中、Aは、前記と同じである。曲線は結合を示す。)
及び一般式(3)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物:
【化3】

(式(3)中、Aは、前記と同じである。)
の製造方法。
【請求項2】
Aが、炭素原子数2〜18の直鎖状アルキレン基である、請求項1に記載の一般式(2)で示されるラクトン化合物及び一般式(3)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)で示される環状ケトン化合物が、無置換の、シクロペンタノン、シクロヘキサノン又はシクロドデカノンである、請求項1に記載の一般式(2)で示されるラクトン化合物及び一般式(3)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項4】
過酸化物が、過酸化水素水である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の一般式(2)で示されるラクトン化合物及び一般式(3)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項5】
過酸化物の使用量が、一般式(1)で示される環状ケトン化合物1モルに対して、0.3〜50モルである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の一般式(2)で示されるラクトン化合物及び一般式(3)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項6】
カルボン酸塩化合物が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第3族、第8族、第11族、第12族、第13族、及び第14族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属と炭素原子数1から6のアルキル基を有するモノ又はジカルボン酸とからなるカルボン酸塩化合物である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の一般式(2)で示されるラクトン化合物及び一般式(3)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項7】
カルボン酸塩化合物の使用量が、一般式(1)で示される環状ケトン化合物1モルに対して、0.003モル以上1.0モル未満、である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の一般式(2)で示されるラクトン化合物及び一般式(3)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項8】
水、ニトリル類、ケトン類、カーボネート類、エーテル類、カルボン酸類、芳香族炭化水素類、ハロゲン類、及びカルボン酸エステル類からなる群より選ばれる1種以上の溶媒を使用する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の一般式(2)で示されるラクトン化合物及び一般式(3)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−225549(P2011−225549A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71695(P2011−71695)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】