説明

ラジエータ及び冷却システム

【課題】ノートPCのような小型薄型の機器に搭載することができる小型薄型で、放熱性がよいラジエータを得る。冷却性能に優れた冷却システムを得る。
【解決手段】被冷却液の入口ラインと出口ライン;この入口ラインと出口ラインの間に並列にかつ相互に間隔をあけて接続された、該入口ラインから出口ラインに戻る液流路を形成する複数の流路ユニット;を有するラジエータ及び該ラジエータを用いた冷却システム。流路ユニットの数と流路断面積を適当に定めることで、各流路ユニットでの流速を落とし、被冷却液を効果的に冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過する液体を冷却するラジエータ及び冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発熱するCPU(熱源)の冷却システムは、CPUに当接して熱を奪う冷却液ジャケットと、ラジエータと、この冷却液ジャケットとラジエータの間で冷却液を循環させる液体ポンプとを基本構成要素としており、各要素について、ノートPCのような小型な機器に搭載可能なように、小型化と高信頼性が図られている。
【特許文献1】特開平6-97338号公報
【特許文献2】特開2003-8273号公報
【特許文献3】特開2003-324174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来知られているラジエータは、ノートPCのような小型薄型の機器に搭載することが困難であり、あるいは十分な放熱性を期待することができなかった。
【0004】
本発明は、狭い空間に収納可能な小型薄型で、放熱性がよいラジエータを得ることを目的とする。また本発明は、冷却性能に優れた冷却システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のラジエータは、被冷却液の入口ラインと出口ライン;この入口ラインと出口ラインの間に並列にかつ相互に間隔をあけて接続された、該入口ラインから出口ラインに戻る液流路を形成する複数の流路ユニット;を有することを特徴としている。
【0006】
各流路ユニットは、具体的には例えば、少なくとも1回U字状に曲折された液流路を形成する一対の流路板を積層結合して形成し、この一対の流路板に、入口ラインと出口ラインに連なり該入口ラインと出口ラインの一部を構成する入口孔と出口孔を穿設することができる。
【0007】
各流路ユニットを構成する一対の流路板は、重ね合わせ面に関して対称な面対称形状とし、平面U字状をなす流路凹部と、この流路凹部の一端部と他端部に形成された上記入口孔と出口孔とを設けることが好ましい。
【0008】
また各流路ユニットを構成する一対の流路板には、入口孔と出口孔部分において外方に突出するスペーサ部を設け、重ね合わされた流路ユニットのスペーサ部を互いに当接させて、流路ユニットの残部に空気通過空間を構成することができる。
【0009】
積層された複数の流路ユニットの入口孔と出口孔は相互に連通させ、該入口孔と出口孔にそれぞれ、入口ラインと出口ラインを接続するのが実際的である。
【0010】
また、各流路ユニットを構成する一対の流路板には、上記入口孔と出口孔部分のスペーサ部とは別に、重ね合わせたときに互いに当接し各流路ユニットの間に空間を確保するスペーサ突起を一体に形成することができる。
【0011】
以上のラジエータは、このラジエータの流路ユニットに向けて送風するファンと、熱源に当接して該熱源の熱を奪う冷却液ジャケットと、この冷却液ジャケットとラジエータの間で冷却液を循環させる液体ポンプとを備えた冷却システムに用いることができる。本発明の冷却システムにおいて、ラジエータは、ファンの送風口に対して、入口ラインが出口ラインより遠くなる姿勢で配置されていることを特徴としている。また、ファンは、遠心方向に送風する遠心ファンであって、流路ユニットに向けて送風したとき、該流路ユニットの入口ライン及び出口ラインを設けた一端側より入口ラインから出口ラインに折り返す他端側で風量が大きくなる姿勢で配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のラジエータは、被冷却液の入口ラインと出口ラインとの間に並列にかつ相互に間隔をあけて複数の流路ユニットを接続したものであって、各流路ユニットは、該入口ラインから出口ラインに戻る液流路を備えているので、入口ラインからの被冷却液を各流路ユニットに分流させ、流速を落として通過させることができるので、冷却効率を高めることができる。一対の流路板により各流路ユニットを構成する具体的な態様によれば、小型薄型で冷却効率の高いラジエータを得ることができる。
【0013】
本発明の冷却システムは、上述したように入口ラインからの被冷却液を各流路ユニットに分流させ、流速を落として通過させることができるラジエータを用いているので、小型薄型で優れた冷却性能を得ることができる。この冷却システムにおいて、ラジエータの入口ラインは出口ラインよりファンの送風口から離れているので、入口ラインからの被冷却液を出口ラインに至るまでの流路内で効率良く冷やすことができ、冷却効率を高めることができる。また、ファンは遠心方向の一部に送風口を有する遠心ファンであって、流路ユニットの入口ライン及び出口ラインを設けた一端側よりも入口ラインから出口ラインに折り返す他端側へより多く送風するので、入口ラインからの被冷却液を出口ラインに至るまでの流路内でより効率良く冷やすことができ、冷却効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図9は、CPU1を熱源として例示する、本発明による冷却システム(水冷システム)の概念図である。CPU1は、受熱ブロックとしてのCPUジャケット(冷却液ジャケット)10に接触している。液体ポンプ12からCPUジャケット10に供給される冷却液は、CPUジャケット10内の流路を流れてCPU1から熱を奪う。CPUジャケット10で昇温した冷却液は、ラジエータ20内の冷却液流路21を流れる間に冷却ファン22からの冷却風を受けて冷却され、再び液体ポンプ12に戻り、以下この循環を繰り返す。
【0015】
図1は、本発明によるラジエータ20の基本概念を示す図である。被冷却液の入口ライン23と出口ライン24は互いに平行をなしている。複数の流路ユニット30は、この入口ライン(入口流路)23と出口ライン(出口流路)24の間に互いに間隔をおいて並列に接続されている。すなわち、各流路ユニット30は、入口ライン23に接続された(連通する)入口孔31と、出口ライン24に接続された(連通する)出口孔32と、この入口孔31と出口孔32の間に形成された冷却液流路21とを備えており、積層状態の複数の流路ユニット30は、少なくとも冷却液流路21部分において互いに離間している。入口ライン23と出口ライン24は、図9の冷却システムの例では、CPUジャケット10と液体ポンプ12にそれぞれ接続される。
【0016】
以上のラジエータ20は、入口ライン23と出口ライン24に流す流量をAとし、流路ユニット30の数をnとすると、各流路ユニット30に流れる流量を、A/nとすることができる。このため、各流路ユニット30に流れる流量を小さくしても、全ての流路ユニット30の合計流路断面積は大きくなるため、十分な冷却効果を得ることができる。
【0017】
図2ないし図8は、ラジエータ20のより具体的な実施形態を示している。図2ないし図6の例では、流路ユニット30は5段積層されており、各流路ユニット30は、最下段の流路ユニット30を除き同一構造である。
【0018】
各流路ユニット30は、重ね合わせて結合される一対の流路板34Uと34Lによって構成されている。流路板34Uと34Lは、例えば伝熱性に優れた金属材料のプレス成形品から構成するもので、重ね合わせ面(積層面)に関して対称な形状(同一の単体形状)をしている。図7、図8は、流路板34U(34L)の単体形状を示している。流路板34U(34L)は細長形状をなしており、平坦な接合面35に、平面U字状の流路凹部36を有している。U字状流路凹部36の両端部(U字状折返部の反対側の端部)には、入口孔31と出口孔32が穿設されている。
【0019】
この入口孔31と出口孔32は、U字状流路凹部36部分より外方に突出させて流路板34U(34L)に形成したスペーサ部37とスペーサ38部に形成されている。また、流路板34U(34L)には、スペーサ部37(38)の反対側に位置させて、該スペーサ部37(38)と同一高さの別のスペーサ突起39が穿設されている。
【0020】
以上の流路板34Uと34Lは、流路凹部36が外側に向くように向きを反対にして重ね合わされ、接合面35どうしを例えばロウ付けによって接合される。すると、上下の互いに反対方向に突出するU字状流路凹部36により冷却液流路21が形成される。この冷却液流路21は、図5に明らかなように、偏平な形状をなしている。また、上下の流路ユニット30のスペーサ部37(38)どうしが当接して上下の流路ユニット30の入口孔31どうし、出口孔32どうしがそれぞれ連通し、入口ライン23の一部及び出口ライン24の一部が構成される。最下段の流路ユニット30の下方の流路板34Lのスペーサ部37(38)には、入口孔31(出口孔32)が穿設されていない(図6)。図7では入口孔31と出口孔32を鎖線で描いており、両孔31、32を穿設しないことで、最下方の流路板34Lを得ることができる。上下の流路ユニット30のスペーサ突起39は、上下の流路ユニット30のスペーサ部37(38)どうしが当接するとき、同時に当接して上下の流路ユニット30のU字状流路凹部36(冷却液流路21)の間に冷却空気通過空間Sを構成する。
【0021】
以上のように重ね合わされた5段の流路ユニット30は、流路ブロック40により接続結合される。流路ブロック40は、入口ライン23と出口ライン24を有するアッパボディ41と、このアッパボディ41との間に5段の流路ユニット30を挟着保持するロワボディ42とを有している。アッパボディ41には、最上段の流路ユニット30のスペーサ部37(38)を受け入れる一対の環状凹部43が形成されており、この環状凹部43に、スペーサ部37(38)と同時にOリング44が挿入されて液密が保持される(図6)。アッパボディ41とロアボディ42の締付距離はスペーサ脚41Sが規制する。
【0022】
以上のラジエータ20は従って、入口ライン23から供給される被冷却液が各流路ユニット30に分配される。すなわち、各流路ユニット30の入口孔31から冷却液流路21に供給され出口孔32から出口ライン24に戻される。上下の流路ユニット30の間には、冷却空気通過空間Sが形成されており、該空間を通過する空気は、流路板34U(34L)と熱交換して冷却液流路21内の被冷却液を冷却することができる。流路ユニット30内では、流路断面積の適切に設定することにより十分な冷却作用が行われるように流速を落とすことが可能であり、また流路ユニット30の積層段数を選ぶことにより、冷却能力の設定を自由に行うことができる。
【0023】
本実施形態では、流路ユニット30(流路板34U(34L))に一つのU字状流路を形成したが、S字状、あるいは複数回の折返状の流路を形成することもできる。また、スペーサ突起39は、流路板34U(34L)の長さ方向に関し、スペーサ部37(38)の反対側に設けているため、流路ユニット30の間隔をバランスよく保つことができるという利点があるが、別の部分にスペーサ突起を設けてもよいし、流路ユニット30の間隔を保つことができれば、スペーサ突起39は無くてもよい。
【0024】
次に、図9〜図11を参照し、本発明による冷却システムについて説明する。
【0025】
本冷却システムLは、上述のラジエータ20と、ラジエータ20の冷却液流路21に向けて送風する冷却ファン22と、熱源であるCPU1に当接して熱を奪うCPUジャケット(冷却液ジャケット)10と、このCPUジャケット10とラジエータ20の間で冷却液を循環させる液体ポンプ12とにより構成される水冷システムである。被冷却液の入口ライン23と出口ライン24は、冷却ファン22に近い側を出口ライン24、遠い側を入口ライン23としてある。
【0026】
冷却ファン22は、遠心方向の一部に送風口22aを有する多翼式の遠心ファンであって、送風口22aをラジエータ20に向け、ラジエータ20の入口ライン23及び出口ライン24が設けられた一端側20aよりも入口ライン23から出口ライン24に折り返す他端側20bにより多く送風する向きで配置されている。図10は冷却ファン22を示す外観図であり、図11は冷却ファン22の風量分布を示している。この風量分布は、冷却ファン22の表面を上向きにした状態で送風口22a近傍に位置を異ならせて風速センサS1〜S7を複数設置し(図10参照)、各位置における風速を測定したものである。この測定時、冷却ファン22の回転方向は反時計周りであり、風速センサS1〜S7の位置は送風口22aの図示下側(図10の下側)をゼロとして表してある。冷却ファン22は、その表面を上向きにしたとき、風が図10の左下から右上に向かって数十度の大きな角度を持って流れることとなるため、図11に明らかなように、送風口22aの図示上側(図10の上側)で風速が大きく、送風口22aの図示下側(図10の下側)で風速が小さくなる。このような送風口22a内の位置に応じて風量が異なる冷却ファンでは、その表裏面を逆にした場合、これに伴って風量分布も反転する。すなわち、冷却ファン22の裏面を上向きにした状態では、風が図10の左上から右下に向かって大きな角度を持って流れることとなるため、送風口22aの図示下側で風速が大きく、送風口22aの図示上側で風速が小さくなる。本冷却システムLでは、後述する別の理由も考慮に入れて、ラジエータ20の一端側20a(入口ライン23及び出口ライン24側)に対向する送風口22aの図示下側で風速が小さく、ラジエータ20の他端側20b(折り返し側)に対向する送風口22aの図示上側で風速が大きくなるように、冷却ファン22の表面を上向きにして配置してある。
【0027】
以下では、本冷却システムL(図9)の冷却性能について評価する。
【0028】
図12は、冷却システムLの比較例として、空冷システムAの構成を示している。空冷システムAは、CPU1を熱源とした場合、CPUジャケット10を介してCPU1から熱を奪うヒートパイプ111と、ヒートパイプ111のCPU1に接する授熱部111aとは反対側の端部(放熱部111b)を挿通したラジエータ120と、このラジエータ120に向けて送風する冷却ファン122とで構成される。ヒートパイプ111内には熱媒体が封入されており、この熱媒体が授熱部111aでCPU1からの熱を受けると沸騰して気体となり熱ともに放熱部111bへ移動し、放熱部111bでラジエータ20により冷却されると凝縮して液体となり授熱部111aへ戻り、以下この循環を繰り返すことでCPU1を冷却する。この空冷システムAと冷却システムLにおいて、熱源となるCPU1及び冷却ファン22、122には同一のものを用いる。
【0029】
表1に、冷却システムL(実施例)と空冷システムA(比較例)の冷却性能を比較して示す。
【0030】
[表1]

【0031】
表1において、第1項目a1は熱源(CPU1)のパワー[W]である。第2項目a2は、冷却ファンのサイズであり、送風口の内寸寸法[mm×mm]で示してある。第3項目a3は冷却ファン(電源DC5V)の送風口から出てくるときの風速[m/s]、第4項目a4はラジエータから出てくるときの風速[m/s]、第5項目a5は室温[Ta℃]である。第6項目a6はラジエータから出てくる風の温度[T℃]、第7項目a7は熱源(CPU1)の温度[T℃]である。第8項目a8及び第9項目a9は、冷却システムLではCPUジャケット10の入口側及び出口側での被冷却液の温度であるが、空冷システムAではヒートパイプ111の授熱部111a(図12の測定ポイントa9)の温度を、CPUジャケット10の出口側での温度として記してある。第10項目a10及び第11項目a11は、冷却システムLではラジエータ20の入口側及び出口側での被冷却液の温度であるが、空冷システムAではラジエータ120内に挿通されているヒートパイプ111の放熱部直近(図12の測定ポイントa10)の温度を、ラジエータの入口側の温度として記してある。第12項目a12は、冷却システムLではCPUジャケット10の入口側と出口側の温度差[ΔT℃]、空冷システムAではCPU1とヒートパイプ111の授熱部111aの温度差[ΔT℃]である。第13項目a13は、冷却システムLではラジエータ20の出口側とCPUジャケット10の入口側との温度差[ΔT℃]、空冷システムAではラジエータ120の入口側とCPUジャケット10の出口側の温度差、すなわち、ヒートパイプ111の授熱部111aと放熱部直近の温度差[ΔT℃]である。第14項目a14は冷却システムLにおけるラジエータ20の入口側と出口側の温度差[ΔT℃]、第15項目a15はラジエータ20、120から出てくる風の温度と室温の差[ΔT℃]である。第16項目a16はCPUジャケット10での熱抵抗値[℃/W]、第17項目a17はヒートパイプ111での熱抵抗値[℃/W]、第18項目a18はラジエータ20、120での熱抵抗値[℃/W]、第19項目a19はシステム全系での熱抵抗値[℃/W]である。冷却性能はシステム全系の熱抵抗値の大きさにより評価することでき、熱抵抗値が小さいほど冷却性能が良いと言える。システム全系の熱抵抗は、(熱源の温度a7−室温a5)/熱源のパワーa1により算出できる。
【0032】
表1から明らかなように、本冷却システムLは、その熱抵抗値1.11[℃/W]が空冷システムAの熱抵抗値1.73[℃/W]より小さく、該空冷システムAよりも優れた冷却性能を有している。
【0033】
続いて、表2に、被冷却液の入口ライン23を冷却ファン22から遠い側に、出口ライン24を冷却ファン22に近い側に配置した冷却システムL(実施例)と、被冷却液の出口ライン24を冷却ファン22から遠い側に、入口ライン23を冷却ファン22に近い側に配置した第2の冷却システム(比較例)について、冷却性能を比較して示す。第2の冷却システムは、入口ライン23及び出口ライン24の配置が異なる以外は、図9に示す冷却システムLとすべて同一の構成としてある。表2における項目a1〜a16、a18、a19は、表1の項目a1〜a16、a18、a19と同一であるから説明を省略する。
【0034】
[表2]

【0035】
表2から明らかなように、被冷却液の入口ライン23を冷却ファン22から遠い側に、出口ライン24を冷却ファン22に近い側に配置した冷却システムL(実施例)は、その熱抵抗値0.97[℃/W]が第2の冷却システム(比較例)の熱抵抗値0.99[℃/W]より小さく、被冷却液の出口ライン24を冷却ファン22から遠い側に、入口ライン23を冷却ファン22に近い側に配置する場合よりも冷却性能を高められる。
【0036】
この入口ライン23及び出口ライン24の配置態様の違いにより冷却性能に差が生じるのは、出口ライン24側に最も温度の低い冷風を当てることで冷却液を効率よく冷やせる冷却システムL(実施例)に対し、第2の冷却システム(比較例)では、一度冷やされた冷却液が出口ライン24を通るときに、入口ライン23を通る熱い冷却液により熱せられた温風に当たることで冷却効率が劣化するためと考えられる。
【0037】
続いて、表3に、ラジエータ20の一端側(入口ライン23及び出口ライン24側)20aよりも他端側(折り返し側)20bに多く送風する向きで冷却ファン22を配置した冷却システムL(実施例)の冷却性能と、ラジエータ20の他端側20bよりも一端側20aに多く送風する向きで冷却ファン22を配置した第3の冷却システム(比較例)の冷却性能とを比較して示す。第3の冷却システムは、冷却ファン22の向きが異なる以外は、図9の冷却システムLとすべて同一の構成である。表3における項目a1〜a16、a18、a19は、表1の項目a1〜a16、a18、a19と同一であるから、説明を省略する。
【0038】
[表3]

【0039】
表3から明らかなように、冷却ファン22からの風がラジエータ20の一端側20aよりも他端側20bに多く送風される冷却システムL(実施例)では、その熱抵抗値0.97[℃/W]が第3の冷却システム(比較例)の熱抵抗値1.01[℃/W]より小さく、冷却ファン22からの風がラジエータ20の他端側20bよりも一端側20aに多く送風される場合よりも冷却性能を高められる。
【0040】
この冷却ファン22の向きの違いにより冷却性能に差が生じるのは、ラジエータ20の構造上、入口ライン23及び出口ライン24を設けた一端側20aが他端側20bより風の通り道が狭いこと、及び、冷却ファン22から送り出される風が送風口22aに直角ではなく、上記図10及び図11で説明したように回転方向に大きな角度を持つことによって生ずると考えられる。すなわち、第3の冷却システム(比較例)では、図9において冷却ファン20からの風がラジエータ20の一端側20aの図示左側から他端側20bの図示右側へ向かって送風されるから、冷却ファン20によって生じた風は流路ブロック40によって遮られ、風の圧力損が増大する。このため、実際にラジエータ20に当たる冷風量は少なくなり、冷却効果が下がる。これに対し、本冷却システムL(実施例)では、図9において冷却ファン22からの風がラジエータ20の他端側20bの図示左側から一端側20aの図示右側に向かって送風され、他端側20bでは風を遮る部分が一端側20aに比べて小さいから、第3の冷却システム(比較例)に比べて風の通りが良くなり、風の圧力損は減少する。この結果、実際にラジエータ20に当たる冷風量は第3の冷却システムに比べて多くなる。これにより、本冷却システムLでは、第3の冷却システムより優れた冷却効果が得られると考えられる。また、冷却効果は冷風の温度と対象物の温度の差に大きく依存するから、次のような理由も考えられる。本冷却システムLでは、冷風の温度が最も低く室温に近い冷風が、冷却液の温度が最も低くかつ冷風との温度差が大きい部分(出口ライン24)に当たるため、この部分に最も冷たい冷風を当てると出口の液温がより下がることから冷却効果が高くなる。これに対し、第3の冷却システムでは、ラジエータ20の一端側20aで一度暖められた風が、ラジエータ20出口付近の冷却液が最も冷えた部分(出口ライン24)に当たるため、冷却液の出口温度付近で冷却液の温度が下がらないとも推測される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のラジエータの基本概念を示す斜視図である。
【図2】本発明のラジエータの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】同平面図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】図3のV-V線に沿う断面図である。
【図6】図3の一部の拡大断面図である。
【図7】図2ないし図6のラジエータに用いる流路板単体の平面図である。
【図8】同流路板単体の断面図である。
【図9】本発明のラジエータを含む冷却システムの構成図である。
【図10】図9の冷却ファンの外観図である。
【図11】同冷却ファンの風量分布を示すグラフである。
【図12】従来の空冷システムの構成図である。
【符号の説明】
【0042】
20 ラジエータ
22 冷却ファン
21 冷却液流路
23 入口ライン
24 出口ライン
30 流路ユニット
31 入口孔
32 出口孔
34U 34L 流路板
35 接合面
36 U字状流路凹部
37 38 スペーサ部
39 スペーサ突起
40 流路ブロック
41 アッパボディ
42 ロアボディ
S 冷却空気通過空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却液の入口ラインと出口ライン;及び
この入口ラインと出口ラインの間に並列にかつ相互に間隔をあけて接続された、該入口ラインから出口ラインに戻る液流路を備えている複数の流路ユニット;
を有することを特徴とするラジエータ。
【請求項2】
請求項1記載のラジエータにおいて、各流路ユニットは、少なくとも1回U字状に曲折された液流路を形成する一対の流路板を積層結合してなり、この一対の流路板に、入口ラインと出口ラインに連なり該入口ラインと出口ラインの一部を構成する入口孔と出口孔が穿設されているラジエータ。
【請求項3】
請求項2記載のラジエータにおいて、各流路ユニットを構成する一対の流路板は、重ね合わせ面に関して対称な面対称形状をなしており、平面U字状をなす流路凹部と、この流路凹部の一端部と他端部に形成された上記入口孔と出口孔とを有するラジエータ。
【請求項4】
請求項2または3記載のラジエータにおいて、各流路ユニットを構成する一対の流路板は、上記入口孔と出口孔部分において外方に突出するスペーサ部を有し、重ね合わされた流路ユニットのスペーサ部が互いに当接して、流路ユニットの残部に空気通過空間を構成するラジエータ。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項記載のラジエータにおいて、積層された複数の流路ユニットの入口孔と出口孔は相互に連通し、該入口孔と出口孔にそれぞれ、入口ラインと出口ラインが接続されているラジエータ。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれか1項記載のラジエータにおいて、各流路ユニットを構成する一対の流路板には、重ね合わせたときに互いに当接し各流路ユニットの間に空間を確保するスペーサ突起が一体に形成されているラジエータ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のラジエータと、このラジエータの流路ユニットに向けて送風するファンと、熱源に当接して該熱源の熱を奪う冷却液ジャケットと、この冷却液ジャケットとラジエータの間で冷却液を循環させる液体ポンプとを備えた冷却システムであって、
前記ラジエータは、前記ファンに対して、前記入口ラインが前記出口ラインより遠くなるように配置されていることを特徴とする冷却システム。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のラジエータと、このラジエータの流路ユニットに向けて送風するファンと、熱源に当接して該熱源の熱を奪う冷却液ジャケットと、この冷却液ジャケットとラジエータの間で冷却液を循環させる液体ポンプとを備えた冷却システムであって、
前記ファンは、遠心方向に送風する遠心ファンであって、前記流路ユニットに向けて送風したとき、該流路ユニットの前記入口ライン及び前記出口ラインを設けた一端側より前記入口ラインから前記出口ラインに折り返す他端側で風量が大きくなるように配置されていることを特徴とする冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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