説明

ラジカル捕捉剤およびその製造方法

【課題】 ラジカル化合物捕捉能を有する分散安定性の高い金属コロイド分散液およびその液相製造法を提供する。特に、白金コロイド分散液であり、医薬品、食品、化粧品分野に応用される。
【解決手段】
ポリエチレングリコール誘導体R−PEG−R’−SX,R−PEG−S−S−PEG−R’,R−PEG/PAMA,R−PEG−NYおよびまたはR−PEG−R’−Z(R、R’、RおよびRは、アセタール、アルデヒド、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基およびアクリロイル基等からなる群から選択される官能基を示す)と金属イオン含む溶液に電磁波を照射することによって金属イオンを還元することによって、または前記ポリマーと金属イオンとアルコールを含む溶液を加熱することによって還元し得られたラジカル化合物捕捉能を有する分散安定な金属コロイド分散液およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属に安定に結合あるいは吸着し得る官能基と生体物質などに対する反応性官能基を有するポリエチレングリコール誘導体、例えばタンパク質に反応性アルデヒドを生成するアセタール基をω末端に有し、α末端にメルカプト基あるいはピリジルチオ基あるいはオリゴアミノ基あるいはポリアミノ基を有するヘテロケリックポリエチレングリコール誘導体の共存下で液相還元法、より詳しくは光還元法により、またはアルコール還元法により金属イオンを還元せしめることによって製造した分散安定なラジカル捕捉能を有する金属コロイドラジカル捕捉剤およびその製造方法に関する。本発明によれば、該ポリエチレングリコールの末端の一方を金属粒子表面に物理およびまたは化学吸着させ、他方は生体化合物に直接もしくはリンカーを介して結合せしめ、特異的におよびまたは局所的部位においてラジカル捕捉作用を発現させることが可能となる。
【背景技術】
【0002】
近年、フリーラジカルの生体への影響について盛んに研究されている。ラジカルとして、O−、H、OH・、などがあり、特に生体組織に影響を及ぼす物質としては「過酸化水素H」および「一重項酸素」などの活性酸素があり、また活性酸素種の中で特に重要なフリーラジカルとしては「スーパーオキシドO」、「ヒドロキシルラジカルOH・」の2種類がある。「ヒドロキシルラジカル」が、生体に及ぼす影響の大体95%を占めると言われており、「ヒドロキシルラジカル」を制御することが、生体にとって重要である。
これらの活性酸素・フリーラジカルは喫煙、飲食、ストレスなどの外的刺激によって過剰に発生し細胞に損傷をきたす。
遺伝子技術が進んだ昨今、活性酸素・フリーラジカルと生体傷害との関係が幅広く研究されている。細胞中のSOD(Super Oxide Dimutase)は加齢とともに減少することは判っているが、SODと寿命やSODと組織障害の関係については、未だ不明な点が多いのが現状である。このため、特異的およびまたは局所的な部位において、ラジカル捕捉作用を発現する機能性化合物の開発が要求されている。
ここで、「SOD活性」とは、前記活性酸素化合物を除去する能力を示す。
金コロイドにヒドロキシラジカルの捕捉能があることは、Esumiらによって報告されている(非特許文献1)。しかしながら、当該方法で調製した金コロイドは、キトサンを高分子保護材として用いており、生体レベルでの高いイオン強度環境下では分散安定性が不十分であり、非特異吸着やまたホモケリックなキトサンはラジカル捕捉作用を発現させる上では反応特異性が乏しいという問題点がある。
金属コロイドの製造は、気相製造法(以下気相法という)と液相製造法(以下液相法という)に大別される。気相法は具体的には、特許文献1に開示されている方法がある。しかしながら、気相法は、粒径分布を制御することが困難であり、粒径分布が広くなってしまうという欠点がある。また、気相合成法では大がかりな装置が必要であり、コストが高くなってしまう欠点がある。
【0003】
液相法は金属イオンを溶液中で還元する方法であり、気相法で得られる粒子よりも狭い粒径分布のコロイド溶液を得ることが可能である。しかしながら、液相法では成長過程およびまたは成長完了した粒子どうしが静電相互作用およびまたはvan der Waals力相互作用によって凝集してしまうことがある。液相法は、さらに物理的な方法と化学的な方法に大別される。物理的な方法としては、紫外線(非特許文献2)、超音波(非特許文献3)、γ線(非特許文献4)などが開示されている。化学的な方法は、溶液中で一般に水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの還元剤を用いて還元するものである。具体的には、例えば非特許文献5にクエン酸ナトリウムを用いた液相法が開示されている。前記化学的還元法では、一般に金イオンに対して3倍から5倍モル量の還元剤を添加し、必要に応じて加熱還流する。ここでは、クエン酸ナトリウムは還元剤および分散剤として機能している。クエン酸イオンが金イオンを還元して生成した金粒子の表面に吸着し、静電反発によって粒子同士の凝集を抑止している。
【0004】
メルカプト基を有する化合物は、粒子の表面に対して強い吸着力を有するため、有効な分散剤として、多数報告されている(非特許文献6)。しかしながら、メルカプト基は金属イオンに対して強い配位力を有するため、特許文献2に開示されている水素化ホウ素ナトリウムのような強い還元剤が必要である(非特許文献7)。特許文献2には水素化ホウ素ナトリウムを還元剤、アセタール−PEG−SHを高分子保護材として調製した場合の金コロイドの調製方法が開示されているが、当該方法で用いられる水素化ホウ素ナトリウムは、水溶液中で著しく不安定で気泡を発生し激しく分解することおよび著しく強い還元力を有することから、冷却しながらかつ極めて迅速に添加しなければならない。このため、当該方法では、再現性よくコロイドを調製することは困難である。
また、イオン性界面活性剤(sodium dodecylsulfate、dodecyltrimethylammoium chloride)の共存下で高圧水銀ランプによって紫外・可視光線を照射し、白金コロイドを合成できることが報告されている(非特許文献8)。しかしながら、周知のごとくイオン性界面活性剤を保護剤とするコロイドは生体レベルのイオン強度下では分散を保つことができず、容易に凝集してしまう。
【0005】
【特許文献1】 特開昭58−186967号公報
【0006】
【特許文献2】 特開2002−080903号公報
【0007】
【非特許文献1】
【0008】
Esumi、 Langmuir、 2004、20、2536−2538
【0009】
【非特許文献2】 Sauら、J. Nanopart. Res. 2001、3、257−261
【0010】
【非特許文献3】 OkitsuらUltrasonic Chemistry 1996、3、249−251
【0011】
【非特許文献4】 Arnimら、J. Phys. Chem. B、1999、103、9533−9539
【0012】
【非特許文献5】 Turkevitchら.Discuss. Faraday Soc. 1951、 11、 55−75
【0013】
【非特許文献6】 Royce Murrayら、J. Am. Chem. Soc. 1998、120、12696−12697
【0014】
【非特許文献7】 季刊化学総説 無機有機ナノ複合物質、No.42、148−149
【0015】
【非特許文献8】 Toshimaら、Chem. Lett.1985、1245−1248
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記に鑑み、液相法によって、ラジカル捕捉能と標的指向性(反応特異性)を有し、分散安定性が高い金属コロイドのラジカル捕捉剤およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上述のような現状に鑑み鋭意研究を重ねた結果、液相法においてラジカル捕捉能と標的指向性(反応特異性)を有し、分散安定性が高い金属コロイド分散液およびその製造方法を提供せんとするものである。本発明者は、末端にメルカプト基を有するポリエチレングリコール誘導体の共存下で金属イオンを含む溶液に紫外線およびまたは可視光線を照射することによって、生体レベル以上のイオン強度下でも分散安定な金属コロイド分散液が調製可能であることおよび当該金属コロイド分散液がラジカル捕捉能を有することを発見した。
すなわち本発明は、ポリエチレングリコール誘導体R−PEG−R’−SXおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG−S−S−PEG−R’およびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG/PAMAおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG−NYおよびまたはR−PEG−R’−Z(RおよびR’は、アセタール、アルデヒド、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、活性エステルアジド基、ビオチン基、単糖、オリゴ糖、アミノ酸、核酸、アリル基、ビニルベンジル基、メタクリロイル基およびアクリロイル基からなる群から選択される官能基であり、PEGは−(CHCHO)−であり、Xは水素またはピリジルチオ基であり、PEG/PAMAはポリエチレングリコールと構造式化1で表されるメタクリル酸ポリマーとのブロックポリマーであり、NYは構造式化2で表されるアミン誘導体セグメントを示し、Zは環状アミン誘導体または環状スルフィド誘導体またはデンドリマーを示す)が金属表面に結合していること特徴とする金属コロイドが分散していることを特徴とする金属コロイド分散液であり、さらにまた金属イオンが、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群より選択された少なくとも1種類以上の金属イオンである前記の金属コロイド分散液である。ここで、ポリエチレングリコール誘導体が金属表面に結合してなるとは、ポリエチレングリコール誘導体の一部が金属表面に物理吸着およびまたは化学吸着していることを示す。
【0018】
また、液の溶媒が、水および有機溶媒からなる群から選択された1種類以上の溶媒である前記の金属コロイド分散液であり、ポリエチレングリコール誘導体の量が、金属の量に対して、モル比で”金属のモル量”:”ポリエチレングリコール誘導体のモル量”=1:0.001〜1:100の範囲である前記の金属コロイド分散液である。
【0019】
本発明の金属コロイド分散液はポリエチレングリコール誘導体R−PEG−R’−SXおよびまたはR−PEG−S−S−PEG−R’およびまたはR−PEG/PAMA、R−PEG−NYおよびまたはR−PEG−R’−Z(RおよびR’は、アセタール、アルデヒド、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、活性エステルアジド基、ビオチン基、単糖、オリゴ糖、アミノ酸、核酸、アリル基、ビニルベンジル基、メタクリロイル基およびアクリロイル基からなる群から選択される官能基、PEGは−(CHCHO)−(nは2〜10、0000の任意の整数)、Xは水素またはピリジルチオ基、NYは構造式化2で表されるアミン誘導体セグメントを示し、Zは環状アミン誘導体または環状スルフィド誘導体またはデンドリマーを示す)を含む液中で金属イオンを還元せしめることによって、還元反応中に凝集することなく生成した金属コロイド分散液であって、金属粒子表面にポリエチレングリコール誘導体が吸着あるいは結合してなる分散安定な金属コロイド分散液である。
R−PEG−R’−SXおよびまたはR−PEG−S−S−PEG−R’およびまたはR−PEG/PAMAおよびまたはR−PEG−NYおよびまたはR−PEG−R’−Zはいずれを使用してもよく、また混合使用してもよい。水溶液中では、溶存酸素によって、R−PEG−R’−SXは酸化されR−PEG−S−S−PEG−R’との溶解平衡の状態で溶解しているものと考えられる。
【0020】
本発明における金属としては、特に限定されるものではないが、好ましい金属として金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金などが挙げられ、特に金、銀、白金はメルカプト基あるいはジスルフィド基あるいはアミノ基と極めて安定に結合するため最も好適な金属である。
また金属塩である金属の化合物としては、特に限定されるものではないが、塩化金酸、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化パラジウム・ニ水和物、硝酸バラジウム、硝酸ロジウム、酢酸ロジウム、酢酸ルテニウム、ヘキサニトロイリジウム酸、酸化オスミウムなどが好ましく適用できる。
【0021】
金属イオンを還元せしめるために照射される光としては、赤外線、可視光線、紫外線、x線、γ線線、γ線、ラジオ波などが挙げられるが、紫外光およびまたは可視光は簡便な装置で照射できることから好適に用いることができる。
【0022】
R−PEG−R’−SXまたはR−PEG−S−S−PEG−R’またはR−PEG/PAMAまたはR−PEG−NYまたはR−PEG−R’−Zの分子量は100〜100、000の範囲が使われる。好適には300〜20、000の範囲である。200未満の場合には立体反発力による分散安定性が不十分で粒子が凝集してしまう可能性がある。一方、20、0000を超えると粘度が高くなりすぎ、例えば十分な攪拌が困難であり、粒径分布が広くなってしまう。また、化2のnは1〜30の任意の整数であって、より好ましくは1〜10の範囲である。
【0023】
上記、光還元法およびまたはアルコール還元法で用いる溶媒は、環境面から水を好適に用いることができるが、水と水に可溶な有機溶媒とを混合した混合溶媒であってもよい。水に可溶な溶媒としては、特に限定されず、メタノール、エタノールなどの炭素数1〜4のアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。アルコールは炭素数が多くなるにつれて、沸点が高くなり、留去が困難になることから、炭素数1〜4程度が好ましい。
アルコール還元法で用いる溶媒は好適には体積比で水:アルコール=5:95〜95:5であり、より好適には20:80〜80:20の範囲である。
【0024】
また、上記、R−PEG−R’−SXまたはR−PEG−S−S−PEG−R’またはR−PEG/PAMAまたはR−PEG−NYの量は、金属(イオン)の量に対して、モル比で”金属のモル量”:”ポリエチレングリコール誘導体のモル量”=1:0.001〜1:100の範囲が好適であって、より好適には 1:0.01〜1:50の範囲である。当該モル比が0.01以下の時には分散安定およびまたは粒径分布の狭いコロイド分散液を調製することが困難であり、一方、当該モル比が50以上の 場合には、粘度が高くなりすぎる。
【発明の効果】
【0024】
本発明で得られた金属コロイド分散液は生体レベル以上のイオン強度下でも凝集せずに安定であり、さらに標的指向性を持たせることが可能なラジカル捕捉剤として機能する。
また、該分散液は粒径分布が狭く、かつ粒径が50nm以下であり、前述のごとくPEGの片末端に機能性化合物反応性官能基を有することから医療診断、光学材料、触媒材料などに好適に使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【実施例】
【0026】
実施例1 光還元法による白金コロイドの合成
シュレンクチューブにα−3,3−diethoxypropyl−ω−mercaptopolyoxyethylene水溶液(10.2mg/ml)24.5mlと塩化白金酸カリウム水溶液(0.01mmol/ml)500μlを入れ、真空ポンプによる脱気とアルゴンガスパージを3回繰り返した。次いで、攪拌しながら、ウシオ電機製UI501Cにより500Wの出力で溶液に紫外光・可視光を2時間照射した。紫外可視光の照射によって、ナノ粒子が生成したことを透過型電子顕微鏡CARL ZEISS社製LEO922で測定した(図1)。
【0027】
比較例1
α−3,3−diethoxypropyl−ω−mercaptopolyoxyethylene水溶液(10.2mg/ml)の代わりに、精製水を用いたこと以外は実施例1と同じ方法で調製したところ、光照射過程および照射完了後に沈殿が精製した。
【0028】
実施例2 実施例1の光還元法で合成した白金コロイドのラジカル捕捉能
5、5−dimethyl−1−pyrolline−N−oxide(DMPO)15μlとhypoxanthine(HPX)(5mM、精製水で調製) 50μlとdiethylenetriaminepentaacetic acid(DTPA)(5.5mM、精製水で調製)、35μlと実施例1の白金コロイド水溶液50μlをこの順番に混合し、最後にxanthine oxidase(XOD)(0.40U/ml、pH7.4の100mMリン酸緩衝液で調製)50μlを添加して、1分後に日本電子データ社JE−RE1Xで電子スピン共鳴法により、ラジカル捕捉能を測定した。マーカーは固体マンガンを使用し、測定条件は中心磁場336mT、掃引幅5mT、モジュレーション幅0.079mT、ゲイン1000倍、時定数0.1、掃引時間1分、出力5mW、周波数9.438GHzとした(図2)。
【0029】
比較例2
白金コロイド水溶液の代わりに、精製水を添加したこと以外は実施例2と同様に操作した(図2)。
【0030】
比較例3
白金コロイド水溶液の代わりに、α−3,3−diethoxypropyl−ω−mercaptopolyoxyethylene水溶液(10.2mg/ml)を添加したこと以外は実施例2と同様に操作した(図2)。
【0031】
実施例3 アルコール還元法による白金コロイドの調製
表1に記載の重量のAcetal−PEG−SH,Acetal−PEG−PAMA,PAA,またはMeO−PEG−b−PEPAを精製水12mlに溶解し,塩化白金酸カリウム水溶液(0.01mmol/ml)500μlおよびエタノール12.5mlを混合し、30分間攪拌した。そして、2時間加熱還流した。加熱還流後、”↓”のサンプルは沈殿を生じ,”○”のサンプルは黄白金ナノ粒子の生成を示す茶褐色の溶液となった。
【表1】

【0032】
実施例4 実施例3のエタノール還元法で合成した白金コロイドのラジカル捕捉能
DMPO15μlとHPX50μlとDTPA35μlと表1の”○”印の白金コロイド水溶液50μlをこの順番に混合し、最後にXOD100μlを添加して、1分後に日本電子データ社JE−RE1Xで電子スピン共鳴法により、ラジカル捕捉能を測定した。マーカーは固体マンガンを使用し、測定条件は中心磁場336mT、掃引幅5mT、モジュレーション幅0.079mT、ゲイン16000倍、時定数0.1、掃引時間1分、出力20mW、周波数9.438GHzとした。IC50値(発生したOラジカルの50%量を除去するのに必要としたラジカル捕捉剤の量)をK. Mitsuta, Y. Mizuta, M. Kohno, M. Hiramatsu and A. Mori, Bull. Chem. Soc, Jpn., 63,187 (1990)に記載の方法によって算出し,表2に示した。表2に記載のごとく実施例3の方法によって合成した白金コロイドはラジカル捕捉能があることがわかる。一方,白金ナノ粒子を含まないポリマーのみの水溶液にはラジカル捕捉能がなかった。これらの実験事実から白金ナノ粒子の金属表面でラジカルの捕捉反応がおこっていることが示唆される。
【表2】

【0033】
比較例4 アルコール還元法による白金コロイドの調製
α−3,3−diethoxypropyl−ω−mercaptopolyoxyethylene水溶液として、濃度を(0.0104mg/ml)とした以外は実施例3と同じ手順で合成した。比較例4においては、還流中に黒色の沈殿が生じ、分散安定な白金コロイド溶液は得られなかった。比較例における白金イオンとα−3,3−diethoxypropyl−ω−mercaptopolyoxyethyleneのモル比は白金イオン:α−3,3−diethoxypropyl−ω−mercaptopolyoxyethylene=1:0.0005である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【0035】
【図1】 図1は実施例1に透過型電子顕微鏡の写真を示す。
【0036】
【図2】 図2は実施例2、比較例2、および比較例3に記載の電子スピン共鳴スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコール誘導体が金属粒子表面に結合してなるラジカル化合物捕捉能を有するラジカル捕捉剤。
【請求項2】
前記請求項1に記載のラジカル捕捉剤であって金属粒子が末端に金属と共有結合およびまたはイオン結合およびまたは配位結合およびまたは疎水結合およびまたは水素結合で結合する基を有するポリエチレングリコールまたはグラフトポリマーによって分散安定化された分散安定な金属コロイドラジカル捕捉剤。
【請求項3】
前記請求項1に記載のラジカル捕捉剤であって、ポリエチレングリコール誘導体が少なくとも、ポリエチレングリコール誘導体R−PEG−R’−SXおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG−S−S−PEG−R’およびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG/PAMAおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG−NYおよびまたはR−PEG−R’−Z(R、R’、R、およびRは、アセタール、アルデヒド、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、活性エステルアジド基、ビオチン基、単糖、オリゴ糖、アミノ酸、核酸、アリル基、ビニルベンジル基、メタクリロイル基およびアクリロイル基からなる群から選択される官能基であり、PEGは−(CHCHO)−であり、Xは水素またはピリジルチオ基であり、PEG/PAMAはポリエチレングリコールと下記構造式化1で表されるメタクリル酸ポリマーとのブロックポリマーであり、NYは下記構造式化2で表されるアミン誘導体セグメントを示し、Zは環状アミン誘導体または環状スルフィド誘導体またはデンドリマーを示す)からなる群から選択された少なくとも1種類以上が金属粒子表面に結合してなる金属コロイドラジカル捕捉剤。
【化1】

(化1のmは1〜10の任意の整数、nは1〜100の任意の整数を示す)
【化2】

(化2のnは1〜30の任意の整数を示す)
【請求項4】
金属イオンが、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群より選択された少なくとも1種類以上の金属イオンである前記金属コロイドラジカル捕捉剤。
【請求項5】
溶媒が、水および有機溶媒からなる群から選択された1種類以上の溶媒である前記金属コロイドラジカル捕捉剤。
【請求項6】
ポリエチレングリコール誘導体の量が、金属イオンの量に対して、モル比で”金属イオンのモル量”:”ポリエチレングリコール誘導体のモル量”=1:0.001〜1:100の範囲である金属コロイドラジカル捕捉剤。
【請求項7】
ポリエチレングリコール誘導体R−PEG−R’−SXおよびまたはR−PEG−S−S−PEG−Rおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG/PAMAおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG−NYおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG−R’−Zと金属塩を含む溶液に紫外線およびまたは可視光線を照射することによって金属イオンを還元することを特徴とする前記の金属コロイドラジカル捕捉剤の製造方法。
【請求項8】
ポリエチレングリコール誘導体R−PEG−R’−SXおよびまたはR−PEG−S−S−PEG−Rおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG/PAMAおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG−NYおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG−R’−Zおよび金属イオンに対して酸化およびまたは還元不活性なガスでパージされた環境下で調製することを特徴とする前記金属コロイドラジカル捕捉剤の製造方法。
【請求項9】
ポリエチレングリコール誘導体R−PEG−R’−SXおよびまたはR−PEG−S−S−PEG−Rおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG/PAMAおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG−NYおよびまたはポリエチレングリコール誘導体R−PEG−R’−Zと金属塩とアルコールを含む溶液を加熱して金属イオンを還元することを特徴とする前記金属コロイドラジカル捕捉剤の製造方法。
【請求項10】
前記ポリエチレングリコール誘導体が金属表面に吸着してなる金属コロイドを含有することを特徴とする医薬品およびまたは食品およびまたは化粧品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−151943(P2006−151943A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117507(P2005−117507)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(597059085)
【Fターム(参考)】