説明

ラジカル重合性不飽和樹脂組成物及びそれを用いた成形品

【課題】成形品として大きな引張伸び率及び引張強度を示す高靭性硬化物が得られるラジカル重合性不飽和樹脂組成物及びそれを用いた成形品の提供。
【解決手段】炭酸エステルと脂肪族或いは脂環式ジオールから得られ、数平均分子量900〜3000のポリカーボネートジオール(a)と、ジイソシアネート(b)を反応させて末端イソシアネート基含有カーボネート化合物(c)を得、該化合物(c)と1個の水酸基及び1個のメタクリロイル基を有するメタクリル化合物(d)を反応させ得られるメタクリロイル基含有ポリカーボネート骨格含有ウレタン樹脂(A)と、不飽和基を1個有するラジカル重合性不飽和単量体(B)を含むラジカル重合性不飽和樹脂組成物;係る樹脂組成物を硬化及び成形してなる成形品であって、硬化物のJIS−K−7113試験の引張応力−破断歪み曲線から算出される吸収エネルギーが0.015(J/mm)以上である成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高靭性を有する成形品を提供できる成形用ラジカル重合性不飽和樹脂組成物及びそれを用いた成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靭性に優れるラジカル重合性不飽和樹脂組成物としては、ビニルエステルオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等と、マレイン酸エステル及び/又はフマル酸エステルオリゴマー、及び重合性モノマーからなるものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−10771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、こうした樹脂硬化物の物性は、引張強度が大きくかつ引張伸び率も大きいといったものではなく、引張試験の応力−歪み曲線で囲まれる面積の小さいものであり、高靭性のものは得られていなかった。例えば特許文献1実施例8のもので引張強度30MPa、伸び率44%程度であるから、約30×44=1320でしかなく、応力−歪み曲線で囲まれる面積は、さらに小さいものとなる。これは高靭性の成形品と言えるものではなかった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、成形品として、大きな引張伸び率及び大きな引張強度を示す硬化物が得られるラジカル重合性不飽和樹脂組成物であって、高い靭性、即ち、大きな吸収エネルギーを有する硬化物を与えることができるラジカル重合性不飽和樹脂組成物及びそれを用いた成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、炭酸エステルと脂肪族或いは脂環式ジオールから得られ、数平均分子量が900〜3000であるポリカーボネートジオール(a)と、ジイソシアネート(b)とを反応させて末端イソシアネート基含有カーボネート化合物(c)を得、次いで該化合物(c)と1個の水酸基及び1個のメタクリロイル基を含有するメタクリル化合物(d)を反応させて得られるメタクリロイル基を有するポリカーボネート骨格含有ウレタン樹脂(A)と、不飽和基を1個有するラジカル重合性不飽和単量体(B)とを含むことを特徴とするラジカル重合性不飽和樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、かかるラジカル重合性樹脂組成物を硬化及び成形してなる成形品であって、前記ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物のJIS−K−7113による引張試験の引張応力−破断歪み曲線から算出される吸収エネルギーが、0.015(J/mm)以上であることを特徴とする成形品を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、高靭性を有する成形品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において高靭性とは、次の方法で本発明の樹脂組成物を硬化物としてJIS−K−7113の引張試験により求められた吸収エネルギー(J/mm)が0.015J/mm以上であることを意味するものである。簡略的には、JIS−K−7113の引張試験による試験片第1号の引張強度(Mpa)の値と引張伸び率(%)の値を掛けた値が、2000以上、好ましくは3000以上であることを意味する。
(注型板、試験片の作成)
30cm×30cmの2枚のガラス板に離型剤を塗布し、合成ゴム製チューブをガラス板の間に挟み、スペーサーを用い隙間3mmとなる様調整し、硬化剤と硬化促進剤とを入れた樹脂組成物を流し込み、室温で1日硬化させ、硬化後、ガラス板ごと乾燥機に入れ、120℃×2時間で完全硬化を行い、冷却後、ガラス板を外して、平滑な厚さ3mmの注型板を得る。これから、JIS−K−7113の引張試験の試験片第1号に切り出す。
(引張試験)
前記試験片を用い、試験機器:オートグラフAG−I(島津製作所製)を使用してJIS−7113の引張試験方法で、引張強度、引張伸び率を測定する。吸収エネルギーは、エネルギー算出解析ソフト:TRPEZIUM2を使用して算出する。
<吸収エネルギー(J/mm)の算出法>
前記引張試験中の荷重を変位で積分した値(破断までの応力歪み曲線から算出される面積に相当)を、「試験片の厚み(mm)×標線間距離(50mm)×ネック中心幅(mm)」で割った値(単位体積あたりの値)とする。
【0008】
本発明において、メタクリロイル基を有するカーボネート骨格含有ウレタン樹脂(A)は、分子中に少なくとも1個、好ましくは2個のメタクリロイル基を有するものであり、樹脂骨格中にカーボネート結合を5〜15個有するものであることが好ましい。この範囲であればより充分な高靭性が得られる。かかる樹脂は、炭酸エステルと脂肪族或いは脂環式ジオールから得られ且つ数平均分子量が900〜3000であるポリカーボネートジオール(a)と、ジイソシアネート、好ましくは脂環式あるいは脂肪族ジイソシアネート(b)とを反応して末端イソシアネート基含有カーボネート化合物(c)を得、次いで該化合物(c)と1個の水酸基及び1個のメタクリロイル基とを有するメタクリル化合物(d)を反応して得られる。前記反応は、前記(b)のイソシアネート基と前記(a)の水酸基との当量比(b/a=NCO/OH)が1.5〜2となるように各化合物を反応せしめ、末端イソシアネート基含有カーボネート化合物(c)を得、次いで、前記(c)のイソシアネート基と前記(d)の水酸基とをほぼ当量(NCO/OH=1/1)となるように反応せしめることが好ましい。
【0009】
前記ポリカーボネートジオール(a)とは、炭酸エステルと脂肪族或いは脂環式ジオールから得られ、数平均分子量が900〜3000、好ましくは1000〜2000の範囲のものであり脂肪族或いは脂環式ジオールとは、例えば、1,6−ヘキサンカーボネートジオール、1,4−シクロヘキサンカーボネートジオール等が挙げられる。数平均分子量が900より小さいとカーボネートに由来する特性が得られにくく、数平均分子量が3000より大きいと、ジイソシアネート(b)との反応における反応液及び得られた末端イソシアネート基含有カーボネート化合物(c)の粘度が上がり、実用上作業において問題がある。これらポリカーボネートジオール(a)は、公知の方法で製造でき、例えば、脂肪族2価アルコールと炭酸ジメチル又は炭酸ジエチル等の炭酸エステルとのエステル交換反応、アルキレン基を有する環状炭酸エステルの開環反応、ホスゲンと2価アルコールとの反応等により得られたカーボネートジオールを用いることができる。2価アルコールは、任意の構造を有するものが用いることができ、一例を挙げれば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール等を用いることができる。また、ポリカーボネートジオール(a)は、市販品を用いても良い。
また、ポリカーボネートジオール(a)と、従来より知られているポリオキシプロピレンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシメチレンジオール等のポリエーテルポリオール或いは、多価アルコールと多塩基性カルボン酸との縮合物であるポリエステルポリオールとを本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできるが、その割合はジオール(a)として、ポリカーボネートジオールを、好ましくは高靭性の点から90質量%以上含むものである。
【0010】
また、前記ポリカーボネートジオール(a)の水酸基価は、50〜135KOHmg/gであることが好ましい。
【0011】
前記ジイソシアネート(b)としては、例えば、2、4−トリレンジイソシアネート、その異性体又はこれら異性体の混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等を挙げることができ、これらを単独で又は2種以上併用して使用することができる。上記ジイソシアネートのうち脂環式あるいは脂肪族ジイソシアネートが好ましく、脂肪族炭化水素からなるイソシアネートであるイソホロンジイソシアネート等は、得られる成形品の耐候性変色の観点から、特に好ましく用いられる。
【0012】
前記1個の水酸基及び1個のメタクリロイル基とを含有するメタクリル化合物(d)としては、水酸基を1個含有するメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレートの様な水酸基を1個有するメタクリレート類が挙げられ;さらに、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等の様な水酸基を2個有するアルコールのモノメタクリレート類;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の様な3個以上の水酸基を有するアルコールのメタクリレート類を部分的に少量加えることができる。
【0013】
本発明における、メタクリロイル基を有するカーボネート骨格含有ウレタン樹脂(A)の製造方法は、好ましい製造方法を挙げれば、先ずジイソシアネート(b)と数平均分子量900〜3000の範囲の前記ポリカーボネートジオール(a)とを、NCO/OH=2〜1.5の条件で反応させ、末端イソシアネート基含有カーボネート化合物(c)を生成させ、次いでそれに1個の水酸基と1個のメタクリロイル基とを含有するメタクリル化合物(d)をイソシアネート基に対して水酸基がほぼ当量となるように反応させる方法が挙げられる。この際、ポリカーボネートジオール(a)は、前記(a)+(b)+(c)の合計量に対して、好ましくは55質量%〜85質量%となる範囲で用いられる。この範囲であればラジカル重合性不飽和単量体(B)と硬化した際により充分な高靭性が得られる。
【0014】
本発明のラジカル重合性不飽和樹脂組成物は、前記カーボネート骨格含有ウレタン樹脂(A)と、不飽和基を1個有するラジカル重合性不飽和単量体(B)とを含む。具体的には、例えば、前記カーボネート骨格含有ウレタン樹脂(A)は、前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)に溶解される。前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ビニルナフタレン、エチルビニルエーテル、メチルビニール、ケトンメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、1−ビニルイミダゾール、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフィリルメタクリレート、カルビトールメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、1,3−ブタンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、メトキシジエチレングリコールジメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリメタクリレートを挙げることができる。これらは単独で使用しても良く、本発明の効果を損なわない範囲で2種類以上組み合わせて使用しても良い。なかでもメタクリル系単量体を含むものが好ましい。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、前記カーボネート骨格含有ウレタン樹脂(A)90〜10質量部と、前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)10〜90質量部を相互溶解したものが好ましく、前記カーボネート骨格含有ウレタン樹脂(A)80〜20質量部と、前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)20〜80質量部を相互溶解したものがより好ましい。
【0016】
また、本発明のラジカル重合性不飽和樹脂組成物を硬化させる際に空気による硬化阻害を防ぐ目的で、前記(d)成分の一部として水酸基含有アリルエーテル化合物を併用して用いることもできる。水酸基含有アリルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多価アルコール類のアリルエーテル化合物等が挙げられ、水酸基を1個有するアリルエーテル化合物が好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物には、重合禁止剤を添加するのが好ましく、該重合禁止剤としては、例えば、トリハイドロキノン、ハイドロキノン、1,4−ナフトキノン、パラベンゾキノン、トルハイドロノン、p−tert−ブチルカテコール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、樹脂組成物中10〜1000ppmが好ましい。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、通常使用されている公知の硬化剤を添加して硬化する。例えば、硬化剤としては、熱硬化剤から選択される1種類以上のものが挙げられる。硬化剤の使用量は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0019】
熱硬化剤としては、例えば、有機過酸化物が挙げられる。具体的には、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の公知の物が挙げられ、混練条件、養生温度等で適宜選択される。
【0020】
また、本発明の樹脂組成物に、硬化促進剤としてナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルトなどの有機金属塩を併用することが出来る。
【0021】
本発明の樹脂組成物には、一般的に知られている不飽和ポリエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、ビニルエステルウレタン樹脂、ポリイソシアネート、ポリエポキシド、アクリル樹脂類、アルキッド樹脂類、尿素樹脂類、メラニン樹脂類、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体、ポリジエン系エラストマー、飽和ポリエステル類、飽和ポリエーテル類;ニトロセルローズ、セルローズアセテートブチレートなどのセルローズ誘導体;アマニ油、桐油、大豆油、ヒマシ油、エポキシ化油等の油脂類;等、他の慣用の天然および合成高分子化合物を添加できる。
【0022】
また、本発明の樹脂組成物にガラス繊維、炭素繊維、有機繊維、金属繊維等を強化材として5〜70質量%添加して成形物とすることができる。これら繊維強化材は、有機繊維強化材との併用が、環境面からも好ましい。
本発明の樹脂組成物は、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、シリカパウダー、コロイダルシリカ、アスベスト粉、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ガラス粉、ガラスビーズ、砕砂等の充填剤を配合して、パテ、シーリング剤、接着剤、ライニング材として使用することができる。また布、クラフト紙への含浸補強を行う材料としても有効である。さらにステアリン酸亜鉛、チタン白、亜鉛華、その他各種顔料安定剤、難燃剤等の他の添加剤を添加することもできる。
【0023】
本発明の樹脂組成物から成形品を得る方法は、特に限定されないが、具体的一例を挙げれば、所謂、ハンドレイアップ、スプレーアップ成形、RTM(レジントランスファーモールディング)成形、連続成形、引き抜き成形等の各種成形法を挙げることができる。また、各種基材フィルムの上に塗布し、更にその上に各種基材フィルムを重ね併せ、熱或いは光により硬化させる方法、さらに、パテ、接着剤に於いては、ハケ、コテ等にて成形する方法を挙げることもできる。
本発明の樹脂組成物は、用途を限定するものではなく、例えば、トップコート、ゲルコート、パテ、接着剤、ライニング材等の被覆材に用いてもよいが、特に該樹脂組成物を、硬化物の高靭性から、成形用途に用いるのが好ましい。得られる成形品としては、例えば、室内成形品、電気電子部品、ボート部材、自動車部材、自動2輪車部材、屋内部材、バスタブ、防水パン、キッチンカウンター、洗面カウンター、洗面化粧台、各種人造大理石成形品、セパレート板、波板、平板、ライニング材、土木建築材等が挙げられる。
【0024】
本発明の樹脂組成物が硬化及び成形されてなる成形品は、先に述べたように、JIS−K−7113による引張試験の引張応力−破断歪み曲線から算出される吸収エネルギーが、0.015(J/mm)以上であることを特徴とし、高靭性を有するものである。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また以下において「部」とは、「質量部」を示す。
【0026】
(合成例1)メタクリロイル基を有するポリカーボネート骨格含有ウレタン樹脂の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた1リットルの四つ口フラスコに、ポリカーボネートジオール(宇部興産製UH−CARB100、数平均分子量1000)を510部仕込み、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)を222部加え、発熱を抑制しながら80℃で4時間反応させた。NCO当量が理論値とほぼ同じ732となり安定したので40℃迄冷却し、2ーヒドロキシエチルメタクリレートを137部加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.037部添加し、空気雰囲気下90℃で7時間反応させた。NCO%が0.3質量%以下となったので、ハイドロキノン0.05部を加え、メタクリロイル基を有するポリカーボネート骨格含有ウレタン樹脂を得た。
【0027】
(合成例2)メタクリロイル基を有するポリカーボネート骨格含有ウレタン樹脂の調製
合成例1と全く同一の反応装置に、ポリカーボネートジオール(宇部興産製UH−CARB100、数平均分子量1000)を510部仕込み、次にトリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す)を174部加え、発熱に注意しながら80℃で4時間保持した。NCO等量が理論値とほぼ同じ684となり安定したので40℃迄冷却し、空気雰囲気下で2−ヒドロキシエチルメタクリレートを137部加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.037部添加し、90℃で5時間反応させた。NCO%が0.3質量%以下となったので、ハイドロキノンを0.049部加え、メタクリロイル基を有するポリカーボネート骨格含有ウレタン樹脂を得た。
【0028】
(合成例3)ポリエーテル骨格含有ウレタンアクリレート樹脂組成物の調製
ポリプロピレングリコール(数平均分子量700、商品名アクトコールDiol−700、三井化学製)を701部、TDIを296部、IPDIを67部仕込み、窒素雰囲気中で反応温度を80℃に保持し、5時間後理論NCO当量532を確認した。30℃迄冷却し、2ーヒドロキシエチルメタクリレートを273部仕込み、窒素雰囲気中において80℃で4時間反応し、NCO%が0.3質量%以下になったので、ハイドロキノンを0.08部加え、ポリエーテル骨格含有ウレタンアクリレート樹脂組成物を得た。
【0029】
(合成例4)不飽和ポリエステルの調製
窒素ガス導入管、還流コンデンサ、攪拌機を備えた2Lのガラス製フラスコに、プロピレングリコール608部、無水マレイン酸392部、無水フタル酸592部を仕込み、窒素気流下、加熱を開始した。内温200℃にて、常法にて脱水縮合反応を行い、ガードナー粘度がQ〜R(ソリッド/スチレン=70/30質量比率で希釈し、ソリッドの縮合度を確認)、酸価が24KOHmg/gになったところで、180℃まで冷却し、トルハイドロキノン0.09部を添加した。さらに150℃まで冷却し、不飽和ポリエステルソリッドを得た。
【0030】
(実施例1)
合成例1により得られたウレタン樹脂200部をスチレン108部に加熱溶解させ、ラジカル重合性不飽和樹脂組成物を得、更に促進剤として8%オクテン酸コバルト0.6部を添加して均一になる様混合し、ラジカル硬化剤パーメックN(商品名、日本油脂社製)を3部添加して混合し、下記注型板強度評価法に従い、樹脂を流し込み、硬化させ、透明な樹脂硬化物の物性評価を行った。
【0031】
(実施例2)
合成例1で得られたウレタン樹脂を用いる代わりに、合成例2で得られたウレタン樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得、該硬化物の物性評価を行った。
【0032】
(実施例3)
合成例1で得られたウレタン樹脂200部をメチルメタクリレート108部に加熱溶解させ、ラジカル重合性不飽和樹脂組成物を得、更に促進剤として8%オクテン酸コバルト0.6部を添加して均一になる様混合し、ラジカル硬化剤328E(商品名、日本油脂社製)を3部添加して混合し、下記注型板強度評価法に従い、樹脂を流し込み、硬化及び硬化物の物性評価を行った。
【0033】
(比較例1)
合成例3で得られたウレタン樹脂200部をスチレン108部に加熱溶解させ、ラジカル重合性樹脂組成物を得、更に促進剤として8%オクテン酸コバルト0.6部を添加して均一になる様混合し、ラジカル硬化剤パーメックN(商品名、日本油脂社製)を3部添加して混合し、下記注型板強度評価法に従い、樹脂を流し込み、硬化及び硬化物の物性評価を行った。
【0034】
(比較例2)
合成例3で得られたウレタン樹脂200部をメチルメタクリレート108部に加熱溶解させ、ラジカル重合性樹脂組成物を得、更に促進剤としてパラトルイジンEO付加物0.6部を添加して均一になる様混合し、ラジカル硬化剤50%ベンゾイルパーオキサイド(商品名、日本油脂社製)を6部添加して混合し、下記注型板強度評価法に従い、樹脂を流し込み、硬化及び硬化物の物性評価を行った。
【0035】
(比較例3)
合成例4で得られたポリエステル樹脂200部をスチレン108部に加熱溶解させ、ラジカル重合性樹脂組成物を得、更に促進剤として8%オクテン酸コバルト0.6部を添加して均一になる様混合し、ラジカル硬化剤パーメックN(商品名、日本油脂社製)を3部添加して混合し、下記注型板強度評価法に従い、樹脂を流し込み、硬化及び硬化物の物性評価を行った。
【0036】
各種成形品の基本となる注型板の物性を測定して、靭性の評価を行った。
(注型板強度物性評価)
注型板の作成は以下のように行った。すなわち、30cm×30cm大の2枚のガラス板に離型剤を塗布し、合成ゴム製チューブをガラス板の間に挟み、スペーサーを用い隙間3mmとなる様調整し、実施例、比較例で示された各樹脂組成物を流し込み、室温で1日硬化させ、硬化後、ガラス板ごと乾燥機に入れ、120℃、2時間で完全硬化を行い、冷却後、ガラス板を外して、平滑な厚さ3mmの成形品を得た。得られた注型板から試験片を切削し、該試験片を用いて順次JIS−K−7113の試験方法で引張試験を行い、物性を測定した。
具体的には、前記試験片を用い、試験機器:オートグラフAG−I(島津製作所製)を使用してJIS−7113の引張試験方法で、引張強度、引張伸び率を測定した。そして、縦軸に引張応力、横軸に破断歪みをプロットして得られる引張応力−破断歪み曲線と、横軸との間の面積を、「試験片の厚み(mm)×標線間距離(50mm)×ネック中心幅(mm)」で割った値(単位体積あたりの値)を算出し、吸収エネルギー(J/mm)とした。吸収エネルギーの算出には、エネルギー算出解析ソフト:TRPEZIUM2を使用した。
吸収エネルギー値が、0.015以上の場合を○、0.015未満を×として総合評価判定を行った。結果を表1及び2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
上表から判るように、本発明の樹脂組成物から得られる注型板は、引張強度、引張伸び率のバランスに優れ、従来にない所謂、高靭性特性を示していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、高靭性成形品を必要とする医療分野、電気電子分野、機械分野、土木建築分野等、幅広い分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸エステルと脂肪族或いは脂環式ジオールから得られ、数平均分子量が900〜3000であるポリカーボネートジオール(a)と、ジイソシアネート(b)とを反応させて末端イソシアネート基含有カーボネート化合物(c)を得、
次いで該化合物(c)と1個の水酸基及び1個のメタクリロイル基を含有するメタクリル化合物(d)を反応させて得られるメタクリロイル基を有するポリカーボネート骨格含有ウレタン樹脂(A)と、不飽和基を1個有するラジカル重合性不飽和単量体(B)とを含むことを特徴とするラジカル重合性不飽和樹脂組成物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A)1分子中のカーボネート結合数が、5〜15個である請求項1に記載のラジカル重合性不飽和樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリカーボネートジオール(a)の水酸基価が、50〜135KOHmg/gである請求項1又は2に記載のラジカル重合性不飽和樹脂組成物。
【請求項4】
前記ジイソシアネート(b)が、脂環式あるいは脂肪族ジイソシアネートである請求項1〜3のいずれか一項に記載のラジカル重合性不飽和樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のラジカル重合性樹脂組成物を硬化及び成形してなる成形品であって、前記ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物のJIS−K−7113による引張試験の引張応力−破断歪み曲線から算出される吸収エネルギーが、0.015(J/mm)以上であることを特徴とする成形品。

【公開番号】特開2008−56823(P2008−56823A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236600(P2006−236600)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(505273017)ディーエイチ・マテリアル株式会社 (17)
【Fターム(参考)】