説明

ラジコン制御による競技用タイマー

【課題】ケーブルに接続される制約をなくした各種競技用タイマー装置を提供する。
【解決手段】車、飛行機などの汎用ラジコン制御器の制御動作(前進、後退など)を行うモータへの正転、逆転動作の出力を変換回路で変換して、モータ駆動の代わりに競技用タイマーのスイッチ動作を行わせる。このことにより、ラジコン制御器からの送信により競技用タイマーの制御が行われ、ケーブル接続の制約もなく、ラジコン制御装置を流用して安価に競技用タイマーを製作できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な形態で使われているラジコンのモーター駆動方法を利用し、変換回路を使うことによりスイッチの動作をさせ、競技用タイマー装置におけるラジコン制御を利用可能にする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種競技の中には時間計測のためのタイマー装置が必要な場合がある。その表示装置は1台であったり2台以上使って観客や選手に残り時間を知らせている。たとえばアーチェリー競技における行射時間、バスケットボール競技での24秒ルールなどがあり、それを実現するために表示装置とそれを制御する装置が必要である。
【0003】
時間表示装置と、それを制御する制御装置の間には、信号を伝えるためにケーブルが使われている。そのため、1台、あるいは2台以上の表示装置と制御装置を接続するケーブル類が競技場に配置されている。
【0004】
アーチェリー競技の場合は、大会の内容により様々な時間を計る必要がある。一般的に3射2分、6射4分、団体競技では9射3分である。行射中の弓具不具合発生時の持ち時間は、残りの矢の本数で決まり、1本40秒、2本80秒、3本120秒、4本160秒、5本200秒、6本240秒と決められている。さらにシューティングラインに並ぶまでの時間が20秒以内である。これらの時間をストップウォッチやタイマー装置を使って大会運営を行う。また、ブザー2回でシューティングラインへ移動し、ブザー1回で行射を始め、矢取りの合図はブザー3回と決められている。
【0005】
この時間を計る方法はストップウオッチでも機械式、電気式表示装置でも構わない。従来のアーチェリー競技用タイマーは、まれに専用競技会場に固定設置された大型のものもあるが、通常は持ち運びできる市販品を使う。これらのタイマー装置はタイマー表示部と制御装置をケーブルで接続して使用している。表示部分には外でも認識しやすい磁気反転式表示素子、あるいはLED(発光ダイオード)が使われている。
【0006】
バスケットボール競技の場合は、平成13年よりの新ルールにより、ボールを保持したチームは24秒以内にショットしなければならいという24秒ルールができたため、競技残り時間や得点表示の掲示板の他に、24秒タイマーが必要になり、それは別に配置される場合が多い。それにより会場に配置されたケーブル類が以前よりも多くなっている。さらに、選手がタイマーにぶつかって一部壊れた状態で使われている場合もある。通常は競技場内にスタンド付きで立っていて、吊り下げられるようにできる構造になっていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上の競技用タイマーによれば、競技場内に、表示装置と制御装置を接続するケーブル類が必要になっている。バッテリーを使わない場合には電源ケーブル類も配置されている。ケーブルで接続されていることにより、制御装置を動かすにはケーブルの長さに制限される。
【0008】
アーチェリー競技の場合、90m、70m、50m、30mなどの各距離を移動する時にはタイマー表示装置の位置も動かす必要がある。その度にケーブル類も移動させている。そのため大きな大会以外では使用されず、県内大会レベルではストップウオッチと笛を使って大会運営を行っている。
【0009】
そこで本発明は、軽量で持ち運びを容易にし、接続ケーブル類を競技場に配置しないで済むラジコン制御装置を使い、手軽に競技用タイマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、第1発明は、ラジコン制御で使われているモーター駆動方式を利用し、変換回路を使ってスイッチの動作をさせ、ラジコン制御装置の複数の制御動作(前進後退、速度変化など)を競技用タイマーの複数の制御動作(スタート、リセットなど)に対応させた制御に利用することを発明した。
【0011】
第2発明は、ラジコンカーなどの場合は、前進、後退、右折、左折の動作が基本になっており、この動作を行うために左右のモーターを正転、逆転させている。そのモーターの出力を利用し、モータの数と制御に必要な動作の数に合わせて、フォトカプラ、あるいはそれと同じ働きをする素子とダイオードなどによるブリッジ回路を使い、スイッチの動作に変換して利用する発明であり、モーター1個の正転・逆転動作を変換することにより、1つ、あるいは2つのスイッチの動作をさせることができる。
【0012】
第3発明は、ラジコン飛行機などの場合、右旋回、左旋回を行うために、モーターを2個使って、左右のモータの回転数の差を利用している場合と、主モーターが1個で速度を変え、フラップや方向舵などの動きを使って右旋回、左旋回などの動作を行わせる場合がある。このモーターの回転数の変化を実現するために、モーターにかかる電圧を変化させている。
【0013】
それがアナログ電圧の変化の場合には、A/D(アナログ→デジタル)変換回路を使うことにより、電圧の変化がデジタルデータに変換されるため、スイッチ動作に変換することができる。
【0014】
また、このモーターの回転数がPWM(Pulse width modulation)制御を使っている場合には、平滑回路でアナログ電圧に変換後にA/D変換装置を使うことにより、スイッチの動作に変換することができる。
【0015】
なお、ラジコン飛行機などの場合、推進用の主モーターの他に、フラップや方向舵など羽根を動かす部分に使われているモーターもあるが、それも回転数変化が制御できる場合には、同じようにA/D変換することでスイッチとして利用できる。回転数制御ではなく、モーターの正転、逆転動作の場合には第2発明を使いスイッチの動作をさせることができる。
【0016】
この第3発明では、数段階の電圧変化の信号が送信機から送られ、受信機ではそれを電圧の変化、あるいはPWM信号としてモーターへ送っているので、その変化をA/D変換することにより、数段階のモーター回転数変化を、数個のスイッチ動作に変換できるようにする発明である。
【0017】
第4発明は、モーターの回転数制御にPWM制御を使っている場合のスイッチへの変換方法であるが、第3発明と異なり、PWMのONの時間、あるいはOFFの時間を、PICやH8などのワンチップマイコンを使ってカウントし、パルス幅の変化を調べることで、複数のスイッチとして利用する。送信機から数段階の電圧変化の信号が送信され、受信機はそれをPWM信号としてモーターへ送る。そのパルス幅の違いをカウントすることにより、数段階のモーター回転数変化を、複数のスイッチ動作に変換できるようにする発明である。
【0018】
つまりPICやH8などのワンチップマイコンには、多くの入力端子と複数のA/Dコンバータが内蔵されているので、第2発明、第3発明、第4発明を利用する場合には、単独でも、複数の発明を混在させても競技用タイマーのスイッチとして使うことができる。
【0019】
第5発明は、上記第2発明、第3発明、第4発明、あるいは複数を使うことで、ラジコン制御を可能とするアーチェリー競技用タイマー装置を製作する発明である。さらに、表示部にLEDを使用することにより軽量化、低消費電力を実現し、バッテリーでも駆動できるようになる。
【0020】
第6発明は、上記第2発明、第3発明、第4発明、あるいは複数を使うことで、ラジコン制御を可能とするバスケットボール競技用24秒タイマー装置を製作する発明である。さらに、表示部にLEDを使用することにより軽量化、低消費電力を実現し、バッテリーでも駆動できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
第1発明により、これまで有線で提供されていた各種競技用タイマー装置を無線化することで、競技場内に制御用ケーブル類が無くなり、表示部を容易に移動できるようになる。
【0022】
第2、第3、第4発明を利用することで、専用のラジコン装置を用意する必要がなく、一般に出回っている汎用のラジコン装置あるいは業務用ラジコン装置などを利用して、競技用タイマーを製作することを可能にする。
【0023】
第5発明により、これまで有線で提供されていたアーチェリー競技用タイマー装置を、ラジコン制御装置を使うことで、表示部と制御部をケーブルで接続する必要がなくなり、90m、70m、50m、30mと距離が変わっても容易にタイマー表示部を移動可能となる。
【0024】
第6発明により、これまで有線で提供されていたバスケットボール競技用タイマー装置を、ラジコン制御装置を使うことで、表示部と制御部をケーブルで接続する必要がなくなり、競技場に制御用ケーブルを配置しないで済む。ケーブル類が無いことで吊り下げることも容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は第1発明の考え方を示す。ラジコン制御で使われているモーター駆動方式を利用し、変換回路を使ってスイッチの動作をさせ、ラジコン制御装置の複数の制御動作(前進後退、速度変化など)を競技用タイマーの複数の制御動作(スタート、リセットなど)に対応させる説明図である。
【0026】
図2、図3に、第2発明の電気回路図を示す。モーターの正転、逆転用出力をスイッチに変換するためのブリッジ回路図である。図2は、1つのモーター出力を、2つのフォトカプラあるいはそれと同等の働きをする素子と、2つのダイオードあるいはそれと同等の働きをする素子を使ってブリッジ回路を構成している。これにより2つのスイッチの動作を作ることができる。図3はスイッチが1つだけ必要な場合の回路図である。これらはラジコンが駆動可能なモーターの数だけ作ることができる。
【0027】
図4、図5に第3発明の電気回路図を示す。モーターの回転数制御をA/D変換するブロック回路図である。図4はモーター回転数制御のための出力がアナログの場合、ワンチップマイコンなどに内蔵のA/D変換機能を使ってスイッチの動作に変換するブロック回路図を示す。図5はモーター出力として出てくるPWM信号を平滑し、ワンチップマイコンなどに内蔵のA/D変換機能を使ってスイッチの動作に変換するブロック回路図を示す。
【0028】
図6に第4発明の電気回路図を示す。モーター出力として出てくるPWM信号を、ワンチップマイコンなどの入力端子に接続し、PWMのONの時間、あるいはOFFの時間をカウントし、パルス幅の違いをカウントすることで、複数のスイッチとして利用するブロック回路図を示す。
【0029】
図7は、第5発明のアーチェリー競技用タイマー装置を示す。表示部は、プリント板に必要な文字の大きさになるようにLEDを配置して製作し、カメラ用三脚などの上に設置することで、選手、観客に見やすい高さにする。スピーカーは本体の横に配置してもよいし、本体に内蔵してもよい。本体内部には表示部用制御回路、ラジコン受信部、スイッチへの変換回路、スピーカー用アンプ回路などが入っている。電源はACアダプター、またはバッテリーを使用する。送信機にはラジコン送信機と電池、スタート、リセット、矢取りなどのスイッチ類が配置されている。
【0030】
図8に第6発明のバスケットボール競技で使用される24秒タイマーの製作例を示す。バスケットボール競技の場合には残り時間、得点、タイムアウト時間、24秒ルールなどのための様々なタイマーが使われているが、図8にはバスケットボール競技で使用される24秒タイマーの製作例を示す。三脚などを使わないで下に置いても良いし吊り下げてもよい。
【0031】
図9にアーチェリー競技用表示部本体の回路図を示す。ダイナミックドライブ制御のLED表示部、ラジコン受信部とスイッチへの変換部、スピーカー用アンプ回路などが含まれている。スイッチの名称を変えることで、バスケットボール競技などの他のタイマーにも使うことができる。
【0032】
図10にはアーチェリー競技用タイマーの場合の送信機の構成を示している。スイッチの名称を変えることで、バスケットボール競技などの他のタイマーにも使用することができる。
【0033】
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、一般に出回っている汎用のラジコン装置あるいは業務用ラジコン装置のモーター制御動作を利用することで、各種競技用タイマー装置をラジコン制御で動かすことができる。軽量化により運搬が容易で、小さな大会の時にも気軽に大会運営を行うことができる。あるいは普段の練習にも気軽に使うことができる。
【0034】
デジタル表示でカウントダウンするため、残り時間の把握が容易となる。特にアーチェリー競技の県内大会レベルでは、これまでは笛とストップウオッチを使っていたので、残り時間30秒前の合図があるだけで、自分の勘で残り時間を推測することが必要だった。デジタル表示があることで、残り時間を有効に利用でき、落ち着いてシューティングに専念できるようになる。
【0035】
バスケットボール競技の場合には、競技場内のケーブル類がなくなることで、選手がケーブルを気にしないでプレーできるようになり、ケーブル類が無いことで配置も自由にできるようになる。
【0036】
「他の実施形態」
図3、図4、図5、図6の実施形態では、汎用のラジコンカー、ラジコン飛行機などを改造する仕組みを表しているが、モーター制御をするラジコンを対象としているので、他の形態、たとえば船や戦車、ロボットなどのラジコン制御装置を使っても可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】汎用ラジコン装置を使って競技用タイマーに利用するしくみである。
【図2】モーターの正転、逆転出力をスイッチ2個に変換する電気回路図である。
【図3】モーターの正転、逆転出力をスイッチ1個に変換する電気回路図である。
【図4】モーターの回転数制御を、A/D変換してスイッチに変換するブロック回路図である。
【図5】モーターの回転数制御を平滑してから、A/D変換してスイッチに変換するブロック回路図である。
【図6】モーターのPWM回転数制御のパルス幅をカウントしてスイッチに変換するブロック回路図である。
【図7】アーチェリー競技用タイマーの全体図である。
【図8】バスケットボール競技用24秒タイマーの全体図である。
【図9】アーチェリー競技用タイマーの場合の表示部本体の電気回路図である。
【図10】アーチェリー競技用タイマーの場合の送信機の構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 LED表示器 2 三脚など
3 スピーカー 4 アンテナ
5 送信機 6 フォトカプラなど


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の運動(駆動)を実現(達成)するために、被制御体をラジコン制御により制御するラジコン制御装置を用いて制御する競技用タイマーであって、前記ラジコン制御装置が備えている複数の制御動作(前進後退、速度変化など)の一つを当該競技用タイマーの複数の制御動作(スタート、リセットなど)の一つに対応させて制御可能としたことを特徴とした競技用タイマー
【請求項2】
ラジコン制御装置(車など)を用いて、制御動作(前進、後退など)を行うモーターへの、正転、逆転動作のための出力を利用し、変換回路で変換し、モーター駆動の代わりにスイッチの動作をさせ、請求項1の競技用タイマーの動作(スタート、リセットなど)を実現するための方法。
【請求項3】
ラジコン制御装置(飛行機など)を用いて、制御動作がモーター回転数の変化を行っている場合、そのモーターの回転数を変えるための出力を利用し、変換回路で変換し、モーター駆動の代わりにスイッチの動作をさせ、請求項1の競技用タイマーの動作(スタート、リセットなど)を実現するための方法。
【請求項4】
ラジコン制御装置を用いて、制御動作がPWM(Pulse width modulation)制御によりモーター回転数の変化を行っている場合、そのモーターの回転数を変えるための出力のONまたはOFFの時間を測定して、値の変化を複数の制御動作に変換し、モーター駆動の代わりにスイッチの動作をさせ、請求項1の競技用タイマーの動作(スタート、リセットなど)を実現するための方法。
【請求項5】
請求項1の競技用タイマーで、請求項2又は3、4あるいは複数を用いて、ラジコンで制御することを特徴とする、アーチェリー競技で使用するための競技用タイマーで、汎用ラジコン制御装置の制御動作を利用して、競技時間をカウントダウンし、競技者に残り時間を知らせるアーチェリー競技用タイマー
【請求項6】
請求項1の競技用タイマーで、請求項2又は3、4あるいは複数を用いて、ラジコンで制御することを特徴とする、バスケットボール競技で使用するための競技用タイマーで、汎用ラジコン制御装置の制御動作を利用して、24秒ルールに対応したカウントダウンを行い、競技者に残り時間を知らせるバスケットボール競技用24秒タイマー


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−225585(P2007−225585A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116245(P2006−116245)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願変更の表示】意願2006−1128(D2006−1128)の変更
【原出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(306000094)
【Fターム(参考)】