説明

ラセミ体シタロプラムジオール(racemiccitalopramdiol)および/またはS−もしくはR−シタロプラムジオールの製造方法、およびラセミ体シタロプラム、R−シタロプラムおよび/またはS−シタロプラムを製造するために、上記ジオールを使用する方法。

以下の記載において、シタロプラムジオールは、遊離塩基および/または酸付加塩としての4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを意味する。
本発明は、エナンチオマーのうちの一方を50%よりも多く有する、R−およびS−シタロプラムジオールの非ラセミ体混合物を、S−またはR−シタロプラムジオールで富化された留分およびR−シタロプラムジオール:S−シタロプラムジオールの比が1:1に等しいか、またはR−およびS−シタロプラムジオールの最初の混合物におけるR−シタロプラムジオール:S−シタロプラムジオールの比よりも1:1に近いRS−シタロプラムジオールを含む留分に分離することからなる、ラセミ体シタロプラムジオールおよび/またはR−またはS−シタロプラムジオールの製造方法に関する。上記方法は、i) RS−シタロプラムジオールを、最初の非ラセミ体混合物の溶液から沈殿させる、またはR−もしくはS−シタロプラムジオールを最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤に溶解させ、RS−シタロプラムジオールの残留物を残す、および、ii) 形成された残留物/沈殿物を最終の溶液相から分離して、引き続き反復、再結晶化、精製、単離ならびに遊離塩基および塩間の転化のうち任意の工程を行うことを特徴とする。本発明はまた、上記方法に引き続いて行われる閉環を含む、RS−シタロプラム、S−シタロプラム、R−シタロプラム(すべてが遊離塩基および/または酸付加塩としての)の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R−およびS−シタロプラムジオール化合物(R- およびS-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4´-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル)の最初の非ラセミ混合物を、ラセミ体シタロプラムジオールの留分およびS−ジオール またはR−ジオールで富化された留分に分離することにより、ラセミ体シタロプラムジオールおよびR−またはS−シタロプラムジオールを製造する方法に関する。本発明はまた、上記のように単離したシタロプラムジオールを、医薬調合物に含まれる、対応するラセミ体シタロプラムおよび/またはS−もしくはR−シタロプラムの生成のために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シタロプラムは数年来上市されている公知の効うつ薬であり、以下の式、
【0003】
【化1】

【0004】
で表される。
【0005】
シタロプラムは特許文献1に開示されているように、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4´-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル(ラセミ体シタロプラムジオール)の閉環により製造される。シタロプラム製品は、R−およびS−エナンチオマーのラセミ混合物である。
【0006】
さらに、シタロプラムのS−エナンチオマー(エスシタロプラム)は、選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)型の効うつ薬として有用である。エスシタロプラムは、特許文献2に記載されているように、S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4´-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル (S-ジオール)の閉環により立体配置を保持しながら製造される。エスシタロプラム製品において、S−シタロプラムと比較したR−シタロプラムの量は3%未満でなくてはならない。
さらに、50%を超えるR−ジオールを有するR−およびS−ジオールの混合物から、50%を超えるS−エナンチオマーとともに、R−およびS−シタロプラムの混合物を製造する方法は、特許文献3に記載されている。
【0007】
上述のように、上記のエナンチオマー純度を有するラセミ体シタロプラムおよびエスシタロプラムの生成物が、医薬調合物の製造に必要であり、ラセミ体シタロプラムおよびエスシタロプラム生成物は、RS−ジオールおよびR−ジオールおよび/またはS−ジオールの閉環により製造することができる。結果として、ラセミ体ジオールおよび対応するエナンチオマー的に純粋なS−ジオールの生成物を製造する方法が求められる。
【0008】
R−またはS−ジオール生成物を製造および精製する方法は有用である。上記製造方法は、例えば特許文献2に記載のエナンチオ選択的合成、古典的な分割および特許文献4に記載のクロマトグラフ分離(chromatographic separation)に関連する。S−ジオール生成物が上記条件を満たすには、使用される特定の工程および条件に依存するS−ジオール生成物のエナンチオマー純度を改善しなければならない。
【特許文献1】米国特許第4,650,884号明細書。
【特許文献2】欧州特許第0 347 066号明細書。
【特許文献3】特許出願公開(WO)第03000672号明細書。
【特許文献4】特許出願公開(WO)第03006449号明細書。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
驚くべきことに、本発明の製造方法を用いることにより、高価であるが一見したところ使い物にならないR−ジオールが混ざっているS−ジオール生成物(S-diol product being contaminated with R-diol)を簡単に、エナンチオマー純度に関して上記条件を満たす2つの価値ある生成物、ラセミ体ジオールおよびS−ジオールに転化することができる。
【0010】
さらに、本発明の製造方法を用いることによって、高価であるが一見したところ使い物にならないS−ジオールが混ざっているR−ジオール生成物を簡単に、エナンチオマー純度に関して上記条件を満たす価値ある生成物、ラセミ体ジオールおよびR−ジオールに転化することができる。
【0011】
特に本発明は、エナンチオマーのうちの一方を50%よりも多く有する、R−およびS−4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4´-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルの最初の非ラセミ混合物を、S−ジオールまたはR−ジオールで富化された留分、ならびにR−ジオール:S−ジオールの比が1:1に等しいか、またはR−およびS−ジオールの最初の混合物におけるR−ジオール:S−ジオールの比よりも1:1に近いRS−ジオールを含む留分に分離する方法を提供する。
【0012】
本発明の製造方法は重要かつ有用であり、なぜなら特に、エナンチオマー純度に関する上記条件を満たさないR−およびS−ジオールの混合物を、エナンチオマー純度に関して上記条件を満たす2つの価値ある生成物、RS−ジオールおよびS−ジオール(またはR−ジオール)に変換するための、使いやすく、安価で、効果的な方法を提供するからである。
【0013】
もう1つの態様において、本発明は、シタロプラム およびエスシタロプラムの製造において使用される中間体を製造するための、使いやすく、安価で、効果的な方法を提供する。
【0014】
本発明により、それぞれの販売認可条件を満たすラセミ体シタロプラムおよびエスシタロプラムの製造方法は、方法の簡易性および試薬および資源の利用に関して、さらに合理的で経済的なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
このように本発明は、エナンチオマーのうちの一方を50%よりも多く有する、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を、S−ジオールまたはR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩で富化された留分およびR−ジオール:S−ジオールの比が1:1に等しいか、またはR−およびS−ジオールの最初の混合物におけるR−ジオール:S−ジオールの比よりも1:1に近いRS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を含む留分に分離することからなる、ラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩および/またはR−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の製造方法であって、
i) R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物の溶液から、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を沈殿させるか、または
R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤中に、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を溶解させて、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を含んでなる残留物を残し;
ii) 形成された上記残留物/沈殿物を最終の溶液相から分離し;
iia) 上記の残留物/沈殿物が結晶質である場合には、場合により、それを1回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオールを形成させ;
iib) 上記の残留物/沈殿物が結晶質でない場合には、場合により、工程i) およびii) を結晶質の残留物/沈殿物が得られるまで繰り返し、そして場合により、この結晶質の残留物/沈殿物を1回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオールを形成させ;
iii) 最終の溶液相を、場合により、さらに精製に付して、この最終の溶液相からS−ジオールまたはR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を単離させ;
iv) 得られるジオールの遊離塩基を、場合により、それの酸付加塩に転化するか、または得られるジオールの酸付加塩を、場合により、それ以外の酸付加塩に転化するか、または得られるジオールの酸付加塩を、場合により、対応する遊離塩基に転化させる;
ことを特徴とする、上記製造方法に関する。
【0016】
従って、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を得ることにより、最終の溶液相はS−またはR−ジオール遊離塩基のいずれかおよび/または酸付加塩で富化されたものとなる。残りのR−またはS−ジオールおよび/または酸付加塩は、その後以下の記載のように最終の溶液相から単離することができる。
【0017】
特定の実施態様において、本発明は上述の方法を用いるラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の製造方法に関する。
【0018】
もう1つの特定の実施態様においては、本発明は上述の方法を用いるS−ジオール (または R-ジオール)遊離塩基および/または酸付加塩の製造方法に関する。
【0019】
さらにもう1つの特定の実施態様において、本発明は、製造したラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩および/またはS−ジオール(またはR−ジオール)遊離塩基および/または酸付加塩を、以下に記載の方法を用いて、ラセミ体シタロプラムおよび/またはS−シタロプラム(または R-シタロプラム)遊離塩基および/または酸付加塩の製造に使用する方法に関する。
(発明の詳細な説明)
本明細書において用いられる場合はいつでも、「S−ジオール」および「S−シタロプラムジオール」という語句は、S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル) ベンゾニトリルを意味する。
本明細書において用いられる場合はいつでも、「R−ジオール」および「R−シタロプラムジオール」という語句は、R-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル) ベンゾニトリルを意味する。
【0020】
本明細書において用いられる場合はいつでも、「RS−ジオール」という語句は、R−およびS−ジオールの0.5:1.5または0.9:1.1または0.95:1.05または0.98:1.02または0.99:1.01混合物、および好ましくは1:1のR−およびS−ジオール比率をもつ混合物のような、R−およびS−ジオールの混合物を意味する。
本明細書において用いられる場合はいつでも、「ジオールエナンチオマー」および「ジオール異性体」という語句は、S−またはR−ジオールのどちらか一方を意味する。
【0021】
本明細書において用いられる場合はいつでも、「ラセミ体ジオール」という語句は、R−およびS−ジオールの1:1混合物を意味する。「ジオールの非ラセミ体混合物」という語句は、1:1以外の比率でR−およびS−ジオールを含む混合物を意味する。
【0022】
本明細書において用いられる場合はいつでも、「シタロプラムエナンチオマー」および「シタロプラム異性体」という語句は、S−またはR−シタロプラムのどちらか一方を意味する。
【0023】
本明細書において用いられる場合はいつでも、「ラセミ体シタロプラム」という語句は、R−およびS−シタロプラムの1:1混合物を意味する。「非ラセミ体シタロプラム」という語句は、1:1以外の比率でR−およびS−シタロプラムを含む混合物を意味する。
【0024】
本明細書で用いられる場合には、「沈殿」という語句は、R−およびS−ジオールの最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤中に、結晶、非結晶固体または油状物またはそれらの混合物の形態で、沈殿物を形成することを意味する。本明細書においては、沈殿物は油状物、非結晶固体または結晶またはそれらの混合物でよい。
【0025】
本明細書で用いられる場合には、「残留物」という語句は、R−またはS−ジオールの最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤中に、R−またはS−ジオールを溶解させた後に残っている残留物を示す。上記残留物は、結晶、非結晶固体または油状物またはその混合物の形態でよい。
【0026】
ここで用いられる場合には、「残留物/沈殿物」という語句は、上記で定義した沈殿物または残留物のどちらか一方を示す。
【0027】
ここで用いられる場合には、「母液」という語句は、沈殿物から除去または分離後に残っている溶剤を意味する。
【0028】
ここで用いられる場合には、「R−またはS−ジオールの選択的な溶解から生じる有機および/または水相」という語句は、R−またはS−ジオールの最初の非ラセミ体混合物からのR−またはS−ジオールが溶解している相を示す。
【0029】
ここで用いられる場合には、「最終の溶液相」という語句は、上記で定義されたR−またはS−ジオールの選択的な溶解から生じる、母液または有機および/または水相を示す。
【0030】
既に述べたように、シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩および/またはエスシタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩の上記製造方法は、医薬的用途としては許容されないR−およびS−シタロプラム遊離塩基 および/または酸付加塩の混合物を生じてもよい。本発明により、驚くほど効率的な、ラセミ体シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩およびR−またはS−シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩の製造に用いるための、ラセミ体ジオールおよびR−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の製造方法が見出された。
【0031】
この新しい方法は、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物の、ラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の留分、およびR−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の留分への分離に関する。ラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の留分は、溶剤から油状物、非結晶固体または結晶形態でまたはそれらの混合物として沈殿し、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩は最終の溶液相から単離される。その後、ラセミ体シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩およびR−またはS−シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩が、対応するラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩および R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩から、閉環によって形成する。
【0032】
本発明のもう1つの態様により、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物は、S−ジオールまたはR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩で富化された留分、およびRS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を含む留分に分離され、該留分においては、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶剤とともに混合することにより、および好ましくは、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を溶剤に溶解させ、続いて、溶解しないRS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩残留物を、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の選択的な溶解および上記溶剤からのR−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の単離から生じる有機および/または水相から分離することにより、R−ジオール:S−ジオールの比率が1:1に等しいかまたはR−およびS−ジオールの最初の混合物におけるR−ジオール:S−ジオールの比よりも1:1に近くなっている。
【0033】
本発明の実施態様において用いられる溶剤は、好ましくは、R−ジオール:S−ジオールの比率が1:1に等しいかまたはR−およびS−ジオールの最初の混合物におけるR−ジオール:S−ジオールの比よりも1:1に近いRS―ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の混合物を残留物として残し、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を溶解させる任意の溶剤である。有用な溶剤は、RS−ジオール遊離塩基および/またはRS−ジオール酸付加塩の沈殿において言及したような溶剤である。
【0034】
本発明の方法において使用される、R−およびS− ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物は、油状物、非結晶固体または結晶形態またはそれらの混合物でよい。
【0035】
工程i)で形成される上記残留物/沈殿物は、油状物、非結晶固体または結晶形態またはそれらの混合物でよい。工程i)で形成される上記残留物/沈殿物は、結晶形態であるのが好ましい。
【0036】
本発明の1つの実施態様において、本発明の方法において使用されるR−およびS− ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物は、50%を超えるS−ジオール、またはさらに好ましくは70%を超えるS−ジオールまたは最も好ましくは90%を超えるS−ジオールを含む。
【0037】
本発明のもう1つの実施態様において、本発明の方法において使用されるR−およびS− ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物は、99.5%未満のS−ジオール、または99%未満のS−ジオール、または98%未満のS−ジオールのような99.9%未満のS−ジオールを含む。
【0038】
従って、R−およびS− ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物は、50%−98%のS−ジオール、または50%−99%のS−ジオール、または50%−99.5%のS−ジオール、または50%−99.9%のS−ジオール、または70%−98%のS−ジオール、または70%−99%のS−ジオール、または70%−99.5%のS−ジオール、または70%−99.9%のS−ジオール、または90%−98%のS−ジオール、または90%−99%のS−ジオール、または90%−99.5%のS−ジオール、または90%−99.9%のS−ジオールを含む。
【0039】
本発明のもう1つの実施態様において、本発明の方法において使用されるR−およびS− ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物は、50%を超えるR−ジオール、またはさらに好ましくは70%を超えるR−ジオールまたは最も好ましくは90%を超えるR−ジオールを含む。
【0040】
本発明のさらにもう1つの実施態様により、本発明の方法において使用されるR−およびS− ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物は、99.5%未満のR−ジオール、または99%未満のR−ジオール、または98%未満のR−ジオールのような99.9%未満のR−ジオールを含む。
【0041】
従って、R−およびS− ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物は、50%−98%のR−ジオール、または50%−99%のR−ジオール、または50%−99.5%のR−ジオール、または50%−99.9%のR−ジオール、または70%−98%のR−ジオール、または70%−99%のR−ジオール、または70%−99.5%のR−ジオール、または70%−99.9%のR−ジオール、または90%−98%のR−ジオール、または90%−99%のR−ジオール、または90%−99.5%のR−ジオール、または90%−99.9%のR−ジオールを含む。
【0042】
上記方法は、R−およびS−ジオールのラセミ体混合物が得られるまで、および/またはR−またはS−ジオールの所望のエナンチオマー純度が得られるまで、繰り返すことができる。
【0043】
本発明の1つの実施態様において、上記残留物/沈殿物のRS−ジオールは、遊離塩基および/または酸付加塩の形態であり、そしてそれとは関係なく、最終の溶液相のR−またはS−ジオール は、遊離塩基および/または酸付加塩の形態である。
【0044】
従って、上記残留物/沈殿物に含まれるRS−ジオールが遊離塩基の形態である時は、最終の溶液相に含まれるR−またはS−ジオールは遊離塩基、酸付加塩、または遊離塩基および酸付加塩の混合物の形態でよい。さらに、上記残留物/沈殿物に含まれるRS−ジオールが酸付加塩の形態である時は、従って、最終の溶液相に含まれるR−またはS−ジオールは遊離塩基、酸付加塩、または遊離塩基および酸付加塩の混合物の形態でよい。最終的に、上記残留物/沈殿物に含まれるRS−ジオールが遊離塩基および酸付加塩の混合物である時は、従って、最終の溶液相に含まれるR−またはS−ジオールは、遊離塩基、酸付加塩、または遊離塩基および酸付加塩の混合物の形態でよい。
【0045】
本発明の方法において使用されるR−およびS− ジオールの最初の非ラセミ体混合物は、遊離塩基、塩、または遊離塩基および塩の混合物として存在することができる。
【0046】
さらに、当業者に公知の方法により、得られるジオールの遊離塩基は、場合によりその酸付加塩に転化され、または、得られるジオールの酸付加塩は、場合により他の酸付加塩に転化され、または、得られるジオールの酸付加塩は、場合により対応する遊離塩基に転化される。
【0047】
RS−ジオール遊離塩基の沈殿は、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の非ラセミ体混合物を、場合により熱を利用して、適切な溶剤中に得るかまたは溶解し、そしてその後に上記溶液を冷却することによりまたは常温(ambient temperature)以下まで冷却することによって実施される。沈殿物はその後、好ましくは濾過またはデカンテーション(decanting)により母液から分離される。
【0048】
RS−ジオール遊離塩基の残留物は、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤中に、選択的に溶解させることにより形成させることができる。残留物はその後、R−またはS−ジオールの選択的な溶解により生じる有機および/または水相から分離される。
【0049】
上記残留物/沈殿物が結晶質である場合には、場合により、結晶を一回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオール遊離塩基を形成させる。その後、ラセミ体シタロプラム遊離塩基を、ラセミ体ジオール遊離塩基の閉環により形成させる。ラセミ体シタロプラムの遊離塩基は、場合によりその酸付加塩、好ましくは臭化水素酸塩に転化される。
【0050】
形成する上記残留物/沈殿物が油状物または非結晶固体の場合には、工程i) およびii)を、結晶質生成物が得られるまで繰り返すことができる。得られた結晶を、場合により一回以上再結晶化させてラセミ体ジオール遊離塩基を形成させる。ラセミ体シタロプラム遊離塩基を、ラセミ体ジオール遊離塩基の閉環により形成させる。ラセミ体シタロプラムの遊離塩基は、場合によりその酸付加塩、好ましくは臭化水素酸塩に転化される。
【0051】
本発明により製造されるRS-ジオール遊離塩基は、場合によりその酸付加塩に転化される。
【0052】
最終の溶液相から分離される油相は、場合により従来の精製過程に付される。
【0053】
本発明により製造されるRS−ジオール遊離塩基は、S−ジオール(またはR−ジオール)を少し過剰に含んでいてもよい。従って、ラセミ体ジオールを得るために、RS−ジオール遊離塩基の工程i) および ii) (特に結晶化)を一回以上繰り返す必要がある。最終の溶液相は一緒にプール(pooled)され、そしてここに含まれるジオールエナンチオマーは以下に記載されるように単離される。
RS−ジオール遊離塩基を含む上記残留物/沈殿物を得るために適した溶剤は、非極性溶剤例えば、ヘプタンもしくはヘキサンのようなアルカン、トルエン、ベンゼンおよびキシレンのような芳香族炭化水素、アセトニトリルのような極性溶剤、メタノールおよびイソ−プロピルアルコールのようなアルコール、またはメチルイソブチルケトンのようなケトン、またはそれらの混合物である。
【0054】
好ましい実施態様において、RS−ジオールの遊離塩基は工程i)で得られ、好ましくは結晶形態で得られる。
【0055】
もし必要な場合には、ラセミ体結晶質ジオール遊離塩基でシーディング(seeding)することにより結晶化を開始させることができる。
【0056】
RS−ジオール酸付加塩の沈殿は、R−およびS−ジオール遊離塩基または酸付加塩の非ラセミ体混合物を、もし必要ならば、熱を利用して、そして例えば固体、液体、溶液としてまたは気体として酸を添加することにより、適切な溶剤中に得るかまたは溶解することによって実施される。
【0057】
RS−ジオール酸付加塩の沈殿に使用される酸は、R−およびS−エナンチオマーの混合物を沈殿させる、および遊離塩基または酸付加塩としてジオールのR−またはS−ジオールエナンチオマーのいずれかで富化された母液を残す、酸である。
【0058】
RS−ジオール酸付加塩の沈殿に使用される酸は、
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物が適当な溶剤に得られたか、または、溶解された後に添加されるか;および/または
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物が溶解する間および/または溶解する前の溶剤中に存在するか;および/または
・溶剤に溶解する間および/または溶解する前の、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物中に存在する;
ことができる。
【0059】
RS−ジオール酸付加塩の残留物は、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を、もし必要な場合は、例えば固体、液体、溶液としてまたは気体、またはそれらの混合物として酸を添加することにより、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤中に選択的に溶解させることによって形成させる。
【0060】
工程i) で形成される残留物に含まれるRS−ジオール酸付加塩の酸性部分は、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩のいずれかの選択的な溶解を許容して、RS−ジオール酸付加塩で富化された不溶物質を残す酸である
残留物のRS−ジオール酸付加塩を形成させるのに使用される酸は、
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶剤と混合させる前に、その溶剤中に存在するか;および/または
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物とともに、溶剤と混合するか;および/または
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶剤と混合した後に、溶剤と混合するか;および/または
・溶剤と混合する間および/または混合する前に、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物中に存在する;
ことができる。
【0061】
R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物から、RS−ジオール酸付加塩の残留物/沈殿物を形成させるのに適した酸は、塩酸、臭化水素酸および硫酸のような無機酸またはシュウ酸、p−トルエンスルホン酸、 メタンスルホン酸および酢酸のような有機酸である。臭化水素酸、塩酸 およびシュウ酸が好ましい酸である。これらの酸が使用されると、RS−ジオールの臭化水素酸塩、塩酸塩またはシュウ酸塩が形成され、好ましくは結晶形態で形成される。適切に、10当量までの酸が使用される。従って:
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物に含まれるS−およびR−ジオール1molに付き、0.2−0.4mol、または、0.4−0.6mol、または、0.9−1.1mol、または、1.8−2.2molの酸のような0.2−10molの酸が使用され;および/または
・残留物/沈殿物中に含まれるRS−ジオール1molに付き、0.4−0.6mol、または0.9−1.1mol、または1.8−2.2molのような0.3−4.0molの酸が使用される。
【0062】
溶液のイオン強度を増加させるために、RS-ジオール酸付加塩が工程i)で得られる前、間または後に、NaClのような塩が溶液に添加されてもよい。所望の効果を得るために添加する塩の量を調節する方法は、当業者により知られている。
【0063】
R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物からの、RS−ジオール酸付加塩の残留物/沈殿物の形成に適した溶剤は、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、THF、イソ−プロピルアルコールのようなアルコール、アセトニトリル、ならびにアセトンおよびメチルイソブチルケトンのようなケトン、および水のような極性および非極性溶剤である。
【0064】
工程i)で形成される上記残留物/沈殿物が結晶質の場合には、該結晶は最終の溶液相から、好ましくは濾過またはデカンテーション(decanting)により分離される。結晶は場合により、溶剤に結晶を、好ましくは加熱により溶解させ溶液を冷却することにより、または常温以下に冷却することにより、再結晶化される。ラセミ体シタロプラムは閉環により、結晶質のラセミ体ジオール酸付加塩から形成する。ラセミ体シタロプラムはその薬学的に許容される塩、好ましくはHBr塩に転化されてもよい。
【0065】
工程i)で形成される上記残留物/沈殿物が結晶質でなく、非結晶または油状物、またはそれらの混合物の場合には、結晶質の生成物が得られるまで、工程i) およびii)を繰り返すことができる。得られる結晶は、場合により上記のように1回以上再結晶化される。ラセミ体シタロプラムは閉環により、結晶質のラセミ体ジオール酸付加塩から形成する。ラセミ体シタロプラムはその薬学的に許容される塩、好ましくはHBr塩に転化されてもよい。
【0066】
最終の溶液相から分離される油相は、場合により従来の精製過程に付される。
【0067】
従って、本発明により製造されるRS−ジオール酸付加塩は、S−ジオール(またはR−ジオール)を少し過剰に含むことができる。従って、ラセミ体混合物を得るために、1回以上のRS−ジオール酸付加塩の沈殿(特に結晶化)を繰り返す必要がある。最終の溶液相は一緒にプール(pooled)され、ここに含まれるジオールエナンチオマーは以下のように単離される。
【0068】
もし必要な場合には、RS−ジオール酸付加塩の結晶化を、ラセミ体結晶質ジオール酸付加塩でシーディングすることによって開始させる。
【0069】
本発明により製造されるRS-ジオール酸付加塩は、場合により、他の酸付加塩または対応する遊離塩基に転化される。
【0070】
本発明の好ましい実施態様において、RS−ジオールの遊離塩基またはRS−ジオールの塩酸塩、臭化水素塩またはシュウ酸塩が、好ましくは結晶質の形態で、工程i)、iia)およびiib)において得られる。
【0071】
最終の溶液相、その抽出物、またはR−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩で富化された相は、溶剤の蒸発の前に、従来の精製過程(活性炭、クロマトグラフィー等による処理のような)に付され、および/または、さらに1回以上、ジオールエナンチオマー生成物のエナンチオマー純度を改善するために、本発明によるRS−ジオール遊離塩基またはRS−ジオール 酸付加塩の沈殿に付される。
【0072】
R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩は、溶剤の蒸発のような従来の方法を用いて、または最終の溶液相が酸性の場合には、塩基性化に続く相の分離により、またはR−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の抽出に続く溶剤の蒸発により、最終の溶液相から単離される。
【0073】
最終の溶液相、その抽出物、またはR−もしくはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩で富化された相は、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩からの単離前に、従来の精製過程(活性炭、クロマトグラフィー等による処理のような)に付される。R−またはS−ジオールを、当業者に公知の方法によって適切に、リン酸塩またはシュウ酸塩として沈殿させる。
【0074】
最終の溶液相に残るS−またはR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩のエナンチオマー純度(所望の異性体と両異性体の合計との比率)が、使用される特定の条件しだいで、97−98%と高くまたはさらに高くなる(すなわち、より良い)ということが明らかになった。
【0075】
従って、本発明により製造されるS−ジオール(またはR−ジオール)遊離塩基および/または酸付加塩は、R−ジオール(またはS−ジオール)遊離塩基および/または酸付加塩を少量含むことができる。1つの実施態様において、この少しの量は3%未満、さらに好ましくは2%未満、最も好ましくは、1%未満でよい(少量に含まれる異性体および両異性体の合計との間の比率)。
【0076】
R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩は、上記のように、上記溶剤または最終の溶液相から精製および単離される。
【0077】
1つの実施態様において、R−ジオール遊離塩基または酸付加塩が得られる。
【0078】
もう1つの実施態様において、S−ジオール遊離塩基または酸付加塩が得られる。
【0079】
R−またはS−ジオール遊離塩基が得られると、それは場合によりその酸付加塩に転化される。R−またはS−ジオール酸付加塩が得られると、それは場合により、他の酸付加塩または対応する遊離塩基に転化される。
【0080】
エナンチオマーとして純粋なR−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を、ラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を得るために、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の非ラセミ体混合物と混合する。そして、ラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩が、1回以上のラセミ体ジオール遊離塩基および/またはその酸付加塩の沈殿、それに続く上記のような再結晶化によって得られる。
R−またはS−シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩は、対応するR−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩から、閉環により立体配置を保持したまま形成する。S−シタロプラム (またはR−シタロプラム)遊離塩基および/または酸付加塩は、場合により、その酸付加塩、好ましくはシュウ酸塩に転化され、そして場合により再結晶化される。
【0081】
R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の閉環は、特許文献2に記載されているように、塩基性の環境中、例えば塩化トシル(tosyl-chloride)の存在下で、不安定なエステル中間体を経て行われる。そして、閉環反応は、立体化学を保持したまま進行する。その後、最初のジオールと実質上エナンチオマー純度が等しい、R−またはS−シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩が得られる。
【0082】
得られるラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の閉環は、特許文献1に記載されているように、酸性の環境下で、または、上記記載のように不安定なエステルを経て行われる。それによって、ラセミ体シタロプラムが得られる。
【0083】
このように得られたエナンチオマーとして純粋なR−またはS−シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩を、ラセミ体シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩を得るために、R−およびS−シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩の非ラセミ体混合物と混合する。そして、ラセミ体 シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩を、1回以上のシタロプラム 遊離塩基またはその酸付加塩の沈殿、それに続く上記のような再結晶化によって得ることができる。
【0084】
本発明の1つの特定の実施態様は、エナンチオマーのうちの一方を50%よりも多く有する、R−およびS−ジオールの最初の非ラセミ体混合物を、S−ジオールまたはR−ジオールで富化された留分およびR−ジオール:S−ジオールの比が1:1に等しいか、またはR−およびS−ジオールの最初の混合物におけるR−ジオール:S−ジオールの比よりも1:1に近いRS−ジオールを含む留分に分離することからなる、ラセミ体ジオール遊離塩基または酸付加塩および/またはR−またはS−ジオール遊離塩基または酸付加塩の製造方法であって、
i) RS−ジオールを、溶剤から遊離塩基またはその酸付加塩として沈殿させるか;
ii) 形成された沈殿物を母液から分離し;
iia) 沈殿物が結晶質である場合には、場合により、それを1回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオールを形成させ;
iib) 沈殿物が結晶質でない場合には、工程i) およびii)を、結晶質の沈殿物が得られるまで繰り返し、そして場合により、この結晶質の沈殿物を、1回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオールを形成させるか;
iii) 母液を、場合により、さらに精製に付して、この母液からS−ジオールまたはR−ジオールを単離させるか;
iv) 得られるジオールの遊離塩基を、場合によりそれの酸付加塩に転化させ、または得られるジオールの酸付加塩を、場合によりそれ以外の酸付加塩に転化させ、または得られるジオールの酸付加塩を、場合により対応する遊離塩基に転化させる;
ことを特徴とする、上記製造方法に関する。
【0085】
本発明のもう1つの特定の実施態様は、エナンチオマーのうちの一方を50%よりも多く有する、R−およびS−ジオールの最初の非ラセミ体混合物を、S−ジオールまたはR−ジオールで富化された留分およびR−ジオール:S−ジオールの比が1:1に等しいか、またはR−およびS−ジオールの最初の混合物におけるR−ジオール:S−ジオールの比よりも1:1に近いRS−ジオールを含む留分に分離することからなる、ラセミ体ジオール遊離塩基または酸付加塩および/またはR−またはS−ジオール遊離塩基または酸付加塩の製造方法であって、
i) 溶剤から、RS−ジオールを遊離塩基またはその酸付加塩として沈殿させるか;または
R−またはS−ジオールの最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤中に、R−またはS−ジオール遊離塩基または酸付加塩を溶解させて、残留物を残し;
ii) 形成された沈殿物を母液から分離し;
iia) 沈殿物が結晶質である場合には、場合により、それを1回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオールを形成させ;
iib) 沈殿物が結晶質でない場合には、工程i) およびii)を、結晶質の沈殿物が得られるまで繰り返し、そして場合により、結晶質の沈殿物を、1回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオールを形成させる;
iii) 母液を、場合によりさらに精製に付して、この母液からS−ジオールまたはR−ジオールを単離させ;
iv) 得られたジオールの遊離塩基を、場合によりその酸付加塩に転化させ、または場合により、得られたジオールの酸付加塩を、それ以外の酸付加塩に転化させ、または場合により、得られたジオールの酸付加塩を、対応する遊離塩基に転化させる;
ことを特徴とする、上記製造方法に関する。
【0086】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0087】
以下の実施例において、光学純度はキラルSCFC(超臨界流体クロマトグラフィー(super critical fluid chromatography))HPLCにより測定された。
(実施例1)
ラセミ体ジオールの沈殿による、塩酸塩としてのS−ジオールの精製。
方法の概要:
R−およびS−ジオール (以下の表で定義するような)(10 g)の混合物をトルエン(60 mL)に溶解させた。塩酸水溶液(32 mL, 1 M)を添加し、ある場合には、固体の塩化ナトリウムを添加した(水中のNaCl濃度がおよそ1 Mになるまで)。上記混合物を一晩攪拌し、濾過した。残留物を乾燥させて、いくらかのS−ジオール塩酸塩が混ざっているラセミ体ジオール塩酸塩の結晶を得た。母液をアンモニア水溶液によりpH>9まで塩基性化し、そしてトルエン層を分離した。水相をもう一度トルエンで洗浄し、混合したトルエン抽出物を
、硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧下で蒸発させることにより、少量のR−ジオールが混ざっているS−ジオールを主に得た。詳細は表を参照のこと。物質の回収はほぼ定量的であり、それぞれのサンプル間における重量の配分も期待通りである。
【0088】
【表1】

【0089】
以下の実施例において、光学活性はキラルHPLCによって測定した。
(実施例2)
ラセミ体ジオール遊離塩基の沈殿によるS−ジオールの精製
室温のS−ジオールのアセトニトリル溶液(500 mL, 約 50 - 55重量%, S:R比 95.72:4.28)を、攪拌しながら−14℃まで冷却した。
上記混合物は温度が2℃下がるごとに、ほぼラセミ体であるジオール (S:R比 約60:40)の種を生じる(seeded with almost-racemic diol)。16時間後に、混合物を濾過し、そしてフィルターケーキを乾燥させた。フィルターケーキ(filter cake)の解析から、S:R比が57.97:42.03であることが示された。母液の解析から、S:R比が98.065:1.935であることが示された。
(実施例3)
ラセミ体ジオール遊離塩基の沈殿によるS−ジオールの精製
室温のS−ジオールのアセトニトリル溶液(500 mL, 約 50 - 55重量%, S:R比95.72:4.28)を、攪拌しながら1℃/hの割合で冷却し、−10℃まで冷却した。上記混合物は温度が5℃下がるごとに、ほぼラセミ体であるジオール (S:R比 約60:40)の種を生じる。−10℃で40時間経った後に、混合物を濾過し、そしてフィルターケーキを乾燥させた。フィルターケーキの解析から、S:R比が59.19:40.81であることが示された。母液の解析から、S:R比が98.52:1.48であることが示された。
(実施例4)
ラセミ体ジオールの沈殿による、塩酸塩としてのS−ジオールの精製
方法の概要:
R−およびS−ジオール (以下の表で定義するような)(1g)の混合物をトルエン(10 mL)に溶解させた。塩酸水溶液(1.0 当量;以下の表で定義される濃度)を添加し、固体の塩化ナトリウムを添加した(水中のNaCl濃度がおよそ1または2 Mになるまで;下記の表参照)。混合物を一晩攪拌し、濾過した。残留物を乾燥させて、いくらかのS−ジオール塩酸塩が混ざっているラセミ体ジオール塩酸塩の結晶を得た。母液をアンモニア水溶液によりpH>9まで塩基性化し、そしてトルエン層を分離した。水相をもう一度トルエンで洗浄し、混合したトルエン抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧下で蒸発させることにより、少量のR−ジオールが混ざっているS−ジオールを主に得た。詳細は表を参照のこと。物質の回収はほぼ定量的であり、それぞれのサンプル間における重量の配分も期待通りである。
【0090】
【表2】

【0091】
(実施例5)
ラセミ体ジオールの沈殿による、p−トルエンスルホニル(p-toluenesulfonyl)、メタンスルホニル(methanesulfonyl)または酢酸塩としてのS−ジオールの精製
方法の概要:
R−およびS−ジオール (以下の表で定義するような)(1g)の混合物をトルエンまたはエーテル(10 mL;以下の表に記載)に溶解させた。NaCl水溶液(1 M, 3 mL)を添加した。酸(以下の表で定義するような)を適当量、液体として添加した。混合物を一晩攪拌し、濾過またはデカントテーション(decanted)を行った。残留物を乾燥させて、油状物または固体を得た。母液をアンモニア水溶液によりpH>9まで塩基性化し、そしてトルエンまたはエーテル層を分離した。水相をもう一度トルエンまたはエーテルで洗浄し、混合した有機抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧下で蒸発させることにより、主に固体または油状物を得た。詳細は表を参照のこと。物質の回収はほぼ定量的であり、それぞれのサンプル間における重量の配分も期待通りである。
【0092】
【表3】

【0093】
(実施例6)
水不存在下でのラセミ体ジオール塩の沈殿による、S−ジオールの精製
方法の概要:
R−およびS−ジオール (以下の表で定義するような)(1g)の混合物をトルエンまたはエーテル(10 mL;以下の表に記載)に溶解させた。酸(以下の表で定義するような)を適当量、固体として添加した。混合物を一晩攪拌し、濾過した。残留物を乾燥させて、油状物または固体を得た。水を母液に添加し、母液をアンモニア水溶液によりpH>9まで塩基性化し、そしてトルエンまたはエーテル層を分離した。水相をもう一度トルエンまたはエーテルで洗浄し、混合した有機抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧下で蒸発させることにより、主に固体または油状物を得た。詳細は表を参照のこと。物質の回収はほぼ定量的であり、それぞれのサンプル間における重量の配分も期待通りである。
【0094】
【表4】

【0095】
(実施例7)
いくつかの溶剤を用いた水不存在下でのラセミ体ジオール塩の沈殿による、S−ジオールの精製
方法の概要:
R−およびS−ジオール (以下の表で定義するような)(1g)の混合物を溶剤(10 mL;以下の表に記載)に溶解させた。酸(以下の表で定義するような)を適当量、固体として添加した。混合物を一晩攪拌し、もし沈殿物が形成している場合には濾過またはデカンテーションを行った。沈殿物が形成している場合には、残留物を乾燥させて、油状物または固体を得た。母液を、蒸発させ、そして残留物をエーテルおよび水の混合物中に回収した。この混合物をアンモニア水溶液によりpH>9まで塩基性化して、そしてエーテル層を分離した。水相をもう一度エーテルで洗浄し、混合したエーテル抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧下で蒸発させることにより、主に固体または油状物を得た。詳細は表を参照のこと。物質の回収はほぼ定量的であり、それぞれのサンプル間における重量の配分も期待通りである。
【0096】
【表5】

【0097】
(実施例8)
ラセミ体ジオールシュウ酸塩の沈殿による、S−ジオールの精製
方法の概要:
R−およびS−ジオール (以下の表で定義するような)(1g)の混合物をトルエン(10 mL;以下の表に記載)に溶解させた。NaCl水溶液(1 M, 3 mL)を添加し、シュウ酸(以下の表で定義するような)を適当量、固体として添加した。混合物を一晩攪拌し、もし沈殿物が形成している場合には濾過またはデカンテーションを行った。沈殿物が形成している場合には、残留物を乾燥させて、油状物または固体を得た。母液をアンモニア水溶液によりpH>9まで塩基性化して、そしてエーテル層を分離した。水相をもう一度トルエンで洗浄し、混合したトルエン抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧下で蒸発させることにより、主に固体または油状物を得た。詳細は表を参照のこと。物質の回収はほぼ定量的であり、それぞれのサンプル間における重量の配分も期待通りである。
【0098】
【表6】

【0099】
(実施例9)
ラセミ体ジオール塩酸塩の水中での沈殿による、S−ジオールの精製
方法の概要:
R−およびS−ジオール (以下の表で定義するような)(1g)の混合物を、HCl水溶液(1当量;表中の濃度参照)とともに攪拌した。混合物を一晩攪拌し、NaCl濃度が1MとなるまでNaClを添加した(固体として)。上記混合物をろ過し、個体を得た。母液に水およびエーテルを添加し、アンモニア水溶液によりpH>9まで塩基性化して、そしてエーテル層を分離した。水相をもう一度エーテルで洗浄し、混合したエーテル抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧下で蒸発させることにより、主に固体または油状物を得た。詳細は表を参照のこと。物質の回収はほぼ定量的であり、それぞれのサンプル間における重量の配分も期待通りである。
【0100】
【表7】

【0101】
(実施例10)
水中におけるS−ジオール塩酸塩の選択的な溶解による、S−ジオールの精製
方法の概要:
R−およびS−ジオール塩酸塩(17.7 : 82.3; 5.5 g)の混合物を、NaCl水溶液(1 M, 12 mL)とともに攪拌した。混合物を一晩攪拌し、ろ過して個体を得た。母液に水およびエーテルを添加し、アンモニア水溶液によりpH>9まで塩基性化し、そしてエーテル層を分離した。水相をもう一度エーテルで洗浄し、混合したエーテル抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧下で蒸発させることにより、主に固体または油状物を得た。濾過からの残留物は、R−ジオールおよびS−ジオールを1.0:99.0の比率で含んでいた。濾過のワークアップ(work-up)からの生成物は、R−ジオールおよびS−ジオールを38.8:61.2の比率で含んでいた。物質の回収はほぼ定量的であり、それぞれのサンプル間における重量の配分 も期待通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エナンチオマーのうちの一方を50%よりも多く有する、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を、S−ジオールまたはR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩で富化された留分およびR−ジオール:S−ジオールの比が1:1に等しいか、またはR−およびS−ジオールの最初の混合物におけるR−ジオール:S−ジオールの比よりも1:1に近いRS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を含む留分に分離することからなる、ラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩および/またはR−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の製造方法であって、
i) R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物の溶液から、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を沈殿させるか、または
R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤中に、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を溶解させて、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を含んでなる残留物を残し;
ii) 形成された上記残留物/沈殿物を最終の溶液相から分離し;
iia) 上記の残留物/沈殿物が結晶質である場合には、場合により、それを1回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオールを形成させ;
iib) 上記の残留物/沈殿物が結晶質でない場合には、場合により、工程i) およびii) を結晶質の残留物/沈殿物が得られるまで繰り返し、そして場合により、この結晶質の残留物/沈殿物を1回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオールを形成させ;
iii) 最終の溶液相を、場合により、さらに精製に付して、この最終の溶液相からS−ジオールまたはR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を単離させ;
iv) 得られるジオールの遊離塩基を、場合により、それの酸付加塩に転化するか、または得られるジオールの酸付加塩を、場合により、それ以外の酸付加塩に転化するか、または得られるジオールの酸付加塩を、場合により、対応する遊離塩基に転化させる;
ことを特徴とする、上記製造方法。
【請求項2】
i) R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物から、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を沈殿させるか、または
R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤中に、R−またはS−ジオール遊離塩基 および/または酸付加塩を溶解させて、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を含んでなる残留物を残し;
ii) 形成された上記残留物/沈殿物を最終の溶液相から分離し;そして
iii) 最終の溶液相を、場合により、さらに精製に付して、この最終の溶液相からS−ジオールまたはR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を単離させる;
ことを特徴とする、S−またはR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を製造する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
製造されるジオールがS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩である、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
製造されるジオールがR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩である、請求項2記載の製造方法。
【請求項5】
i) R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物の溶液から、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を沈殿させるか;または
R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤中に、R−またはS−ジオールを溶解させて、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を含んでなる残留物を残し;
ii) 形成された上記残留物/沈殿物を最終の溶液相から分離し;
iia) 上記の残留物/沈殿物が結晶質である場合には、場合により、それを1回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオールを形成させ;
iib) 上記の残留物/沈殿物が結晶質でない場合には、工程i) およびii) を、結晶質の残留物/沈殿物が得られるまで繰り返し、そして場合により、この結晶質の残留物/沈殿物を、1回以上再結晶化させて、ラセミ体ジオールを形成させる;
ことを特徴とする、ラセミ体ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を製造する、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
エナンチオマーのうちの一方を50%よりも多く有する、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物が、50%を超えるS−ジオール、より好ましくは70%を超えるS−ジオール、最も好ましくは90%を超えるS−ジオールを含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項7】
エナンチオマーのうちの一方を50%よりも多く有する、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物が、50%を超えるR−ジオール、より好ましくは70%を超えるR−ジオール、最も好ましくは90%を超えるR−ジオールを含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項8】
残留物/沈殿物のRS−ジオール中のR−ジオール:S−ジオールの比率が、0.5:1.5または0.9:1.1または0.95:1.05または0.99:1.01または0.98:1.02または好ましくは1:1である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項9】
残留物/沈殿物に含まれるRS−ジオールが遊離塩基および/またはそれの酸付加塩の形態にあり、そしてそれとは無関係に、最終の溶液相に含まれるR−またはS−ジオールが遊離塩基 および/またはそれの酸付加塩の形態にある、請求項1〜8のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項10】
RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物の溶液から沈殿させる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項11】
工程i)において、RS−ジオールを塩として沈殿させるために使用される酸が、R−およびS−エナンチオマーの混合物を沈殿させて、ジオール遊離塩基および/または酸付加塩のS−またはR−エナンチオマーのいずれかで富化された母液を残す酸である、請求項1〜10のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項12】
上記の酸が、
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物が適当な溶剤に得られたか、または、溶解された後に添加されるか;および/または
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物が溶解する間および/または溶解する前の溶剤中に存在するか;および/または
・溶剤に溶解する間および/または溶解する前の、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物中に存在する;
ことができる、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
R−および/またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶解している溶剤中に、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を溶解させて、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を含んでなる残留物を残す、請求項1〜9のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項14】
工程i) で形成される残留物に含まれるRS−ジオール酸付加塩の酸性部分が、R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩のいずれかの選択的な溶解を許容して、RS−ジオール酸付加塩で富化された不溶物質を残す酸である、請求項1〜9および13のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項15】
上記の酸が、
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶剤と混合させる前に、その溶剤中に存在するか;および/または
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物とともに、溶剤と混合するか;および/または
・R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物を溶剤と混合した後に、溶剤と混合するか;および/または
・溶剤と混合する間および/または混合する前に、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物中に存在する;
ことができる、請求項13記載の製造方法。
【請求項16】
RS−ジオール酸付加塩が、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、 THF、 水、 イソ−プロピルアルコールのようなアルコール、 アセトニトリル、およびアセトンおよびメチルイソブチルケトンのようなケトン、あるいはそれらの混合物からなる群から選択される溶剤中の、R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物から得られる、請求項1〜15のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項17】
工程i)で使用される酸が、HCl、 HBr、 H2SO4、 p-トルエンスルホン酸、 メタンスルホン酸、 酢酸またはシュウ酸である、請求項1〜16のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項18】
工程i)で使用される酸が、HCl、 HBr、 またはシュウ酸であり、それによって、RS−ジオールの臭化水素酸塩、塩酸塩またはシュウ酸塩が形成され、好ましくはそれが結晶形態にある、請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
R−およびS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩の最初の非ラセミ体混合物に含まれるS−およびR−ジオール1molに付き、0.2−0.4mol、または0.4−0.6mol、または0.9−1.1molまたは1.8−2.2molの酸のような0.2−10molの酸が使用される、請求項1〜18のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項20】
残留物/沈殿物中に含まれるRS−ジオール1molに付き、 0.4−0.6mol、または0.9−1.1mol、または1.8−2.2molのような0.3−4.0molの酸が使用される、請求項1〜18のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項21】
RS−ジオールの遊離塩基が工程i)で得られ、好ましくはそれらが結晶形態である、請求項1〜10および13のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項22】
ヘプタンまたはヘキサンのようなアルカン、トルエン、ベンゼンおよびキシレンのような芳香族炭化水素、アセトニトリルのような極性溶剤、メタノールおよびイソ−プロピルアルコールのようなアルコールおよびメチルイソブチルケトンのようなケトン、またはそれらの混合物からなる群から選ばれる溶剤中のR−およびS−ジオールの最初の非ラセミ体混合物からRS−ジオール遊離塩基が得られる、請求項1〜10、13および21のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項23】
最終の溶液相からS−ジオールまたは(R−ジオール)を単離する前に、この最終の溶液相に工程i) および ii)に記載されたようなRS−ジオールの分離をさらに1つ以上受けさせる、請求項1〜22のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項24】
溶剤を蒸発させることによってS−ジオール(またはR−ジオール)を最終の溶液相から単離する、請求項1〜4および6〜23のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項25】
最終の溶液相が酸性であり、そしてこの最終の溶液相の塩基性化、それに続く相分離または溶剤を用いる抽出とそれに続く溶剤の蒸発によって、S−ジオール(またはR−ジオール)が最終の溶液相から単離される、請求項1〜4および6〜24のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項26】
R−またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を沈殿させることによって、好適にはR−またはS−ジオールのリン酸塩またはシュウ酸塩を沈殿させることによって、S−ジオール(またはR−ジオール)遊離塩基および/または酸付加塩が最終の溶液相から単離される、請求項1〜4および6〜24のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項27】
得られるS−ジオール(またはR−ジオール)が、3%未満、より好ましくは2%未満、または最も好ましくは1%未満のような少量の反対のエナンチオマーを含む、請求項1〜4および6〜26のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項28】
シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩および/またはR−シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩および/またはS−シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩を製造するために、請求項1〜27のいずれか1つに記載された方法によって製造されたRS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩および/またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩および/またはR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を使用する方法。
【請求項29】
請求項1から27のいずれか1つに記載された方法およびそれに続く閉環によって、RS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩および/またはS−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩および/またはR−ジオール遊離塩基および/または酸付加塩を製造することを含む、シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩および/またはS−シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩および/またはR−シタロプラム遊離塩基および/または酸付加塩の製造方法。

【公表番号】特表2006−511559(P2006−511559A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561086(P2004−561086)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/DK2003/000907
【国際公開番号】WO2004/056754
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】