説明

ラッシングレール用プラグ及びそれを備えた貨物車両

【課題】ラッシングレールとその背後の壁面との間の隙間を利用することなく、ラッシングレールの所定の係止孔を閉塞するように取り付けることができ、ラッシングレールが単体であっても、荷箱の側壁内面に配設されてなる状態であっても、ラッシングレールに容易に取り付けられ得るようにしたプラグの構造を提供する。
【解決手段】ラッシングレール20における、係止孔22の所定のものを閉塞して、その使用を不可と為すプラグ24であって、弾性を有する板材にて構成されて、係止孔22の開口幅よりも大なる大きさの板状頭部28と、その対応する二つの端部からそれぞれ垂下する、湾曲乃至は屈曲した二つの板状脚部30,30とを備え、それら板状脚部30,30の湾曲乃至は屈曲部位に、係止孔22開口部のラッシングレール端縁部が係合せしめられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッシングレール用プラグ及びそれを備えた貨物車両に係り、特に、荷箱の側壁内面に積荷の荷動き防止用として取り付けられる、積荷保持部材の端部が係止せしめられる長孔形状の細長な係止孔の多数が配置されてなるラッシングレールにおいて、かかる係止孔の所定のものを効果的に閉塞して、その使用を不可と為すプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、バン型車両やウイング車、トラック、ウイングトレーラー、コンテナ等の荷箱においては、その内部空間内に積み込まれた積荷が、車両の走行等によって、荷動きしないように、その側壁内面にラッシングレールが取り付けられ、このラッシングレールに設けられた多数の長孔形状の細長な係合溝に対して、ラッシングベルトや仕切り棒等の積荷保持部材の端部が係止せしめられて、この積荷保持部材にて積荷が移動しないように、固定、保持され得るようになっている。
【0003】
例えば、バン型車両においては、図1に示される如く、荷箱2の両側の側壁4,4の内面には、車両前後方向に延びるラッシングレール6が、ここでは、互いに平行な二列の配列形態において、それぞれ、両側壁4,4間において相対向して位置するように、配設されている。また、そのようなラッシングレール6には、良く知られているように、積荷保持部材の端部が係止せしめられる長孔形状の細長な係止孔8の多数が、車両前後方向に所定の間隔を隔てて、多数配設されているのである。同様に、ウイング車にあっても、図2に示される如く、その荷箱10の側壁を構成する、左右のあおり12及びウイング14のそれぞれの内面に、車両前後方向に延びるラッシングレール6が配設されており、また、そのようなラッシングレール6にも、長孔形状の係止孔8の多数が設けられて、積荷保持部材が取り付けられ、積荷の有効な固定を行うようになっている。
【0004】
そして、それら荷箱2,10の側壁内面に配設されるラッシングレール6は、一般に、図3に示される如く、高さの低いハット形の横断面形状を呈する金属板材の成形製品であって、そのハット形横断面形状の頂部平坦部6aに、I型等の形状の細長な長孔形状の係止孔8が、ラッシングレール6の長手方向に所定間隔を隔てて、多数設けられている。また、このようなラッシングレール6に対して、その係止孔8に、ラッシングベルト16の端部に設けられた係止金具18が嵌め込まれて、係止されることにより、それらラッシングレール6とラッシングベルト16との連結が実現されることとなるのであり、そして、ラッシングベルト16の他方の端部に設けられた係止金具18が、他方の側壁内面に設けられたラッシングレール6の係止孔8に係止せしめられることによって、ラッシングベルト16が荷箱2,10の横方向に張り渡されて、荷箱2,10内に積載された積荷が、車両の走行等によって移動しないように、位置固定に保持され得るようになっているのである。なお、かかるラッシングレール6は、その両側のフランジ部6b,6bにおいて、リベットや接着剤等によって側壁内面に固設されるようになっている。
【0005】
ところで、かくの如く、荷箱2,10の側壁内面に前後方向に配設されるラッシングレール6においては、図3に示される如く、その継ぎ目Cからの距離Dが短い係止孔8や、ラッシングレール6の端部に位置したり、中間柱等によって分断された端部の近くに位置する、係止孔8に対して、ラッシングベルト16の端部の係止金具18を係止せしめて、取り付けたりすると、積荷からラッシングベルト16に加わる力によって、ラッシングレール6の変形や破損等が惹起される恐れがあるところから、従来から、それらの部位に存在する係止孔8には、ラッシングベルト16の取付けが不可とされて、そのような係止孔8は使用しないこととされてきている。
【0006】
このため、従来にあっては、ラッシングレール6の継ぎ目Cからの寸法Dが一定以下となる係止孔8や、レール端部等からの距離が一定以下の係止孔8に対しては、ラッシングベルト16の取付けを不可とするために、そのような係止孔8に対して使用禁止のステッカーやシールを貼付して、かかる係止孔8を覆蓋する等の対策が講じられているのであるが、その貼付には、手間が掛かり、また貼付の上手下手の個人差も発生するものであった他、そのようなステッカーやシールは、積荷との接触によって剥れ易く、また破損や破れ等の問題も惹起されて、その効果は、十分なものではなかったのである。
【0007】
また、特開2006−168544号公報(特許文献1)においては、インサート材として、コンテナの壁面と、その壁面に設置されるレール部材(ラッシングレール)との間に形成される隙間に配置され、幅又は長さの寸法が、かかるレール部材に形成された孔部の幅又は長さの寸法よりも大きい形状に形成された底部と、この底部から突出し、レール部材の孔部に嵌り込んで、かかる孔部を閉塞し得る突出部とを有する形状のものが、明らかにされている。しかしながら、そのようなインサート材は、レール部材と壁面との間に形成される隙間に配置されるものであるところから、その取付けは、レール部材を取り付ける時に一緒に組み込むようにしなければならず、レール部材を取り付けた後でのインサート材の取付けは困難となる等の取付け作業性において制限を受けるものであり、更には、その取扱い性においても、面倒であるものであった。しかも、レール部材の背面側に壁が存在しないと、インサート材の支持が出来ず、そのために、インサート材が脱落して、その本来の機能を奏し得なくなる等の問題も内在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−168544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かくの如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、ラッシングレールの係止孔に対して、容易に且つ効果的に取り付け得て、その使用を不可と為すプラグを提供することにあり、また、他の解決課題とするところは、ラッシングレールとその背後の壁面との間の隙間を利用することなく、ラッシングレールの所定の係止孔を閉塞するように取り付けることができ、従って、ラッシングレールが、その配設前の単体状態であっても、また、荷箱の側壁内面に配設されてなる状態であっても、その如何に拘わらず、ラッシングレールに容易に取り付けられ得るようにしたプラグの構造を提供することにあり、更に、本発明は、そのようなプラグを備えてなる貨物車両を提供することをも、その課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、そのような課題を解決するために、荷箱の側壁内面に積荷の荷動き防止用として取り付けられる、積荷保持部材の端部が係止せしめられる長孔形状の係止孔の多数が配設されてなるラッシングレールにおいて、かかる係止孔の所定のものを閉塞して、その使用を不可と為すプラグにして、前記係止孔の開口幅よりも大なる大きさの幅をもって延びる長手の板状頭部と、該板状頭部の対応する二つの端部からそれぞれ垂下する、湾曲乃至は屈曲した二つの弾性を有する板状脚部とを備え、該二つの板状脚部を前記所定の係止孔内に嵌入して、それら板状脚部の湾曲乃至は屈曲部位を、前記ラッシングレールにおける該所定の係止孔の開口縁部に係合せしめることによって、該所定の係止孔の開口が閉塞されるようにしたことを特徴とするラッシングレール用プラグを、その要旨とするものである。
【0011】
なお、この本発明に従うラッシングレール用プラグの望ましい態様の一つによれば、前記板状頭部と前記二つの板状脚部とが、弾性を有する所定厚さの板状体が屈曲せしめられてなる形態において、一体的に形成されていると共に、該二つの板状脚部がそれぞれ波形形状に湾曲乃至は屈曲させられて、それら板状脚部の波形形状の谷部に、前記所定の係止孔両側のラッシングレール開口縁部が係合せしめられるように構成されている。
【0012】
また、本発明にあっては、望ましくは、前記板状頭部及び前記二つの板状脚部は、全体として逆U字状乃至は門型の横断面形状を呈する、弾性を有する板材の屈曲形態において構成されており、更に他の望ましい態様によれば、前記板状脚部の波形形状が、三つの山部と二つの谷部とからなり且つそれら山部と谷部とを交互に配することによって構成される一方、 該二つの谷部の間に位置する中央の山部が、該板状脚部の自由端側に位置せしめられる下方の山部よりも低い高さにおいて、形成されており、加えて、別の望ましい態様によれば、前記係止孔の直線状の開口部分を与える両側の前記ラッシングレール部位が、それぞれ内側に湾曲せしめられ、その湾曲端部位において、前記板状脚部の波形形状の谷部に係合せしめられるようになっている。
【0013】
さらに、本発明に従うラッシングレール用プラグの他の望ましい態様によれば、前記板状頭部が、その横断面形状において、外方に凸なる円弧形状を呈する膨出部として、形成されていると共に、前記ラッシングレールが、所定の板材を屈曲せしめてなるハット形の横断面形状において形成され、且つ該ハット形横断面形状の頂部平坦部に、前記係止孔が設けられており、そして、該係止孔の長手方向の両端に位置する該ラッシングレール端縁部に対して、該膨出部の円弧形状における少なくとも頂部が当接し得るように構成されている。
【0014】
そして、本発明にあっては、有利には、前記板材が、樹脂製であるものである。
【0015】
また、本発明にあっては、ラッシングレールに配設された多数の長孔形状の係止孔の所定のものが、上述せる如き構成のプラグにて閉塞されて、その使用が不可とされている荷箱を備えた貨物車両をも、その要旨としている。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に従うラッシングレール用プラグにあっては、その二つの板状脚部が、ラッシングレールにおける所定の係止孔の開口部内に弾性的に嵌入せしめられて、それら二つの板状脚部の湾曲乃至は屈曲部位、例えば波形形状の谷部を、ラッシングレールにおける係止孔開口縁部に係合されるようにすることによって、かかる係止孔がプラグにて閉塞されるようになっているところから、プラグは、係止孔の開口部に効果的に引っかかって、係止されることとなり、そのために、嵌り易くて、抜け難い特徴があることに加えて、プラグの上部を構成する板状頭部が、係止孔の開口幅よりも大なる大きさとされているところから、プラグを係止孔に押し込んでも、その入り込み量が規制され、以て、プラグは、挿通されることなく、係止孔の開口部に効果的に係止、保持されることとなるのである。
【0017】
また、本発明に従うラッシングレール用プラグは、ラッシングレールの係止孔に対して表面側から係止・保持されるものであるところから、ラッシングレールが配設前の単体状態であっても、その係止孔に係止させることが可能となるのであり、そのため、従来の如き、ラッシングレールの背面側において壁面との間に形成される隙間を利用して、そこに収容した形態において、取り付けるようにした形態のものとは異なり、ラッシングレールに対するプラグの取付け作業性が簡単に且つ容易となるのであって、ラッシングレール単体に対しても、またラッシングレールの設置に際しても、その状態の如何を問わず、プラグの取付けが可能となって、その取付け作業性や取扱い性が効果的に向上され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】バン型車両におけるラッシングレールの配設形態を説明するための車両後方からの視図である。
【図2】ウイング車におけるラッシングレールの配設形態を説明するためのウイング及びあおりの開放状態での斜視説明図である。
【図3】ラッシングレールとそれに対するラッシングベルトの取り付け形態を示す斜視説明図である。
【図4】ラッシングレールとその係止孔に嵌入せしめられる本発明に従うプラグの一例を示す斜視説明図である。
【図5】図4に示されるプラグの横断面形状を示す断面説明図である。
【図6】図4に示されるプラグをラッシングレールの係止孔内に嵌入せしめてなる形態を示す斜視部分説明図である。
【図7】図6に示される本発明に従うプラグの嵌入状態を示す断面説明図であって、(a)は、図6におけるA−A断面説明図であり、(b)は、図6におけるB−B断面説明図である。
【図8】異なる種類のラッシングレールに対するプラグの嵌入形態を説明するための図7(a)に対応する断面説明図である。
【図9】ラッシングレールの係止孔に嵌入せしめられる本発明に従うプラグの他の一例を示す斜視説明図である。
【図10】図9に示されるプラグをラッシングレールの係止孔内に嵌入せしめてなる形態を示す平面説明図である。
【図11】図10におけるX−X断面説明図である。
【図12】図10におけるY−Y断面説明図である。
【図13】ラッシングレールに形成される係止孔の異なる例を示す正面部分説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施形態の一つについて、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0020】
まず、図4には、ラッシングレール20と、このラッシングレール20に設けられた係止孔22の所定のものに対して嵌め込まれて、その開口を閉塞せしめるプラグ24とが、斜視図の形態において、拡大して示されている。
【0021】
そこにおいて、ラッシングレール20は、SSやSUS等からなる鉄板や、Al又はその合金からなるアルミ板等の金属板を用いて、それを成形して得られたものであって、従来と同様な形状を有し、ここでは、図示の如く、高さの低いハット形の横断面形状において形成されている。そして、そのハット形横断面形状の頂部平坦部20aには、長孔形状の細長な係止孔22が、ラッシングレール20の長手方向に所定の間隔を隔てて、互いに平行となる配置形態において、多数設けられているのである。また、係止孔22は、従来と同様な細長な長孔形状を有するものであって、ここでは、図4から明らかな如く、上下に拡大部を設けたI字形状を呈していると共に、その直線状の開口部分を与える両側のラッシングレール部位が、それぞれ、内側に湾曲せしめられて、湾曲部26,26として、形成されている。なお、このラッシングレール20は、その幅方向両側に設けられたフランジ部20b,20b、換言すれば、ハット形横断面形状におけるつば部に相当する部位において、従来と同様にして、荷箱(2,10)の側壁内面に、リベットやボルト、接着剤等にて位置固定に配設されるようになっている。
【0022】
また、プラグ24は、図5に拡大して示されているように、全体として逆U字状乃至は門型の横断面形状を呈する一体成形品であって、弾性を有する板材の屈曲形態のものとして構成されており、図5において紙面に垂直な方向において、所定長さに渡って延びる、所定長さの長手の形状を有している。なお、そのようなプラグ24の長さとしては、係止孔22を閉塞する目的から、かかる係止孔22の長さに可及的に近くなるように、選定されることとなる。そして、かかるプラグ24は、ラッシングレール20に設けられた係止孔22の開口幅(ここでは、I字形状の直線状部分の幅)よりも大なる大きさの幅を有する板状頭部28と、この板状頭部28の両側端部からそれぞれ垂下する、波形形状に湾曲乃至は屈曲した二つの板状脚部30,30とから構成されている。また、板状頭部28の幅は、基本的には、両側の湾曲部26,26を除く、頂部平坦部20a,20a間の距離よりも小さくなるように設定されることとなる。
【0023】
そして、そこで、板状頭部28は、その横断面形状において、外方に凸なる円弧形状を呈する膨出部として形成されている一方、二つの板状脚部30,30は、それぞれ、三つの山部30aと二つの谷部30bとからなり、それら山部30aと谷部30bとを交互に配することによって、波形形状において構成されているのである。そして、二つの谷部30b,30bの間に位置する中央の山部30aが、板状頭部28側の山部30aの高さよりも低くされていることは勿論、脚部の自由端側に位置せしめられる下方の山部30aよりも低い高さにおいて、形成されているのである。なお、ここでは、プラグ24は、樹脂にて構成され、その二つの波形形状を呈する板状脚部30が、樹脂弾性を有するように構成されている。そして、かかるプラグ24が、ラッシングレール20に設けられた複数の係止孔22のうち所定のもの、換言すれば、ラッシングベルトや仕切り棒等の積荷保持部材の端部を係止せしめることが回避されるべき、継ぎ目近くの係止孔やラッシングレール端部近くの係止孔等に対して、その二つの板状脚部30,30をその自由端側から嵌入せしめることによって、図6に示される如く係止させられ、これにより、目的とする係止孔22がプラグ24にて閉塞せしめられるようにするのである。
【0024】
具体的には、プラグ24の二つの板状脚部30,30を、係止孔22内に押し込むようにして、プラグ24を嵌入せしめることにより、それら板状脚部30,30の波形形状の谷部30b,30bに、係止孔22両側のラッシングレール端縁部、ここでは、湾曲部26,26の端縁部が、図7(a)に示される如く係合せしめられ、以て、かかるプラグ24にて係止孔22が閉塞されるようになっているのである。しかも、そのようなプラグ24が係止孔22内に係止・保持された状態において、プラグ24は、図7(b)に示される如く、係止孔22内において、プラグ24の長手方向の端面と係止孔22の長手方向の開口端面とが近接して、相対向して位置させられているところから、プラグ24は、また、係止孔22の長手方向においても、その自由な移動が制限され、ずれ難くなるように係止されるようになっているのである。
【0025】
このように、ラッシングレール20における所定の係止孔22内に嵌め込まれて、それを閉塞するプラグ24にあっては、単に、それの二つの板状脚部30,30を係止孔22内に嵌入せしめるだけで、その目的が有効に達成されることとなるところから、プラグ24の嵌込み作業が容易となることに加えて、かかるプラグ24による係止孔22の閉塞操作を、極めて簡単に、且つ容易に実施することが可能となったのであり、以て、ラッシングレール20における所定の係止孔22が使用されないようにすることを、容易に実現し得ることとなったのである。
【0026】
また、そのようなラッシングレール20の係止孔22内に嵌め込まれたプラグ24は、その板状頭部28がラッシングレール20の頂部平坦部20aの面よりも外方に突出しないように、係止孔22内に嵌め込むことが出来るところから、積荷に接触することも殆どないことに加えて、二つの板状脚部30,30における波形形状の谷部30b,30bに対して、係止孔22両側のラッシングレール端縁部(26,26)を係合せしめることによって、係止されて保持されることとなるところから、プラグ24が係止孔22内にしっかりと係止されて(引っかかって)、係止孔22内に深く入り込むような動きや、係止孔22から抜け出すような動きが、効果的に阻止せしめられ得ることとなる。
【0027】
しかも、プラグ24は、その両側の波形形状の二つの板状脚部30,30において、係止孔22両側のラッシングレール端縁部(26,26)に係止せしめられるものであるところから、ラッシングレール20の背後に、それを収容せしめるための隙間や、それを保持するための壁面が必要とされるものでは決してなく、そのために、ラッシングレール20単体に対してプラグ24を嵌入せしめた形態において、取り扱うことが出来るという特長を有しており、従来の如く、ラッシングレールの荷箱側壁内面への配設時に、同時に、プラグを取り付けなければならないという制約も全く解消され得、以て、プラグ24の取付け作業性が一段と改善され得ることとなったのである。
【0028】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0029】
例えば、上述した実施形態においては、プラグ24の両側の板状脚部30,30が、それぞれ、二つの谷部30b,30bを上下に有する波形形状において形成されているが、それら谷部30bの係止対象となるものは、プラグ24が適用されるラッシングレール20における係止孔22両側の湾曲部26の湾曲形態に応じて、種々変化せしめられ得るものであって、例示の如き二つの谷部30bを有するプラグ24は、そのような湾曲形態の異なる湾曲部26を有する二種類のラッシングレール20に対して用いられ得るように、構成されたものである。
【0030】
すなわち、図7においては、SSやSUS等の鉄製のラッシングレール20に対して、プラグ24を適用した場合の例が示されているのであり、そこでは、係止孔22両側の湾曲の程度が小さな湾曲部26が、プラグ24の上方側、換言すれば板状頭部28側の谷部30bに対して、その先端部において係合せしめられるようになっているのである。そして、そのようなプラグ24の板状脚部30における下方側、換言すれば、自由端側に位置する谷部30bに対しては、図8に示される如く、ラッシングレール20がアルミ製とされている場合において、その湾曲部26が大きく形成されることとなるところから、そのような湾曲部26の先端部が係合せしめられて、プラグ24を係止・保持するようになっているのである。
【0031】
このように、例示のプラグ24は、材質の異なる二種類のラッシングレール20に対して、適用可能となっているのであるが、単に、一種類のラッシングレールのみに適用されるプラグにおいては、谷部30bを一つだけ設けた構造とすることも可能であり、更に、三種類或いはそれ以上の種類のラッシングレールに適用するために、谷部30bを必要数設けてなる構造のプラグとすることが可能である。特に、例示の如き構造のプラグ24においては、図7と図8の対比から明らかな如く、湾曲形状の異なる湾曲部26を有するラッシングレール20に対応させ、それぞれの湾曲部26の先端部が、上方の谷部30bと下方の谷部30bにそれぞれ有効に係合し得るように、それら二つの谷部30b,30bの間に位置する中央の山部30aの高さが、板状脚部30の自由端側に位置せしめられる下方の山部30aの高さよりも低くなるように、形成されているのである(図5参照)。
【0032】
また、上例のプラグ24は樹脂製とされて、その樹脂ばね(弾性)の作用にて、板状脚部30が、ラッシングレール20の係止孔22における両側のラッシングレール端縁部にしっかりと係合せしめられるようになっているのであるが、かかるプラグ24の材質を金属製として、その金属ばね(弾性)の作用にて、またゴム製として、そのゴム弾性の作用にて、同様な係合状態を実現するようにすることも可能である。
【0033】
さらに、例示のプラグ24にあっては、その板状頭部が、その横断面形状において外方に凸なる円弧形状を呈する膨出部として形成され、これによって、対向する係止孔22の開口端面に当接し得るようにして、プラグ24の長手方向における移動が効果的に規制され得るようになっているが、かかる板状頭部28を、平坦な板状部にて構成することも、可能であり、そして、そのような平坦な板状部が係止孔22の対向する開口端面に当接し得るように構成することも可能である。
【0034】
更にまた、例示のプラグ24は、その左右の二つの板状脚部30,30が、それぞれ独立して分離した形態において形成されているが、これとは異なり、それら二つの板状脚部30,30の先端部を相互に連結せしめて、プラグ24が全体として筒状形状を呈するような構造とすることも可能である。
【0035】
加えて、例示のプラグ24にあっては、その幅方向の両側に、それぞれ、板状脚部30,30が設けられているが、本発明にあっては、これとは異なり、プラグの長手方向の対応する両端部に、それぞれ、本発明に従う、湾曲乃至は屈曲した二つの弾性を有する板状脚部を設けてなる構造も採用可能であり、その一例が、図9〜図12に示されている。
【0036】
すなわち、図9〜図12に示されるプラグ32においては、弾性を有する金属板材にて構成され、その板状頭部34の長手方向の両端部からそれぞれ垂下せしめられた二つの板状脚部36,36が、それぞれ、外方に凸なる、くの字形状を呈するように、屈曲せしめられて構成されている一方、その長手方向に直角な方向、換言すれば幅方向の両端部には、それぞれ、長さの短い垂下部38,38が、形成されている。そして、このプラグ32が、ラッシングレール20の係止孔22内に嵌入せしめられることにより、プラグ32の長手方向において垂下する、くの字状の板状脚部36,36は、それぞれ、内側に弾性的に撓み、更に、係止孔22の開口部を通過した後は、原形に復帰して、係止孔22の長手方向両端部の縁部に係合して、固定されるようになるのである。また、プラグ32の幅方向の両端部の垂下部38,38は、図11に示される如く、それらの先端部が、ラッシングレール20の係止孔22の幅方向両側の湾曲部26,26に当接することにより、そのようなプラグ32の係止孔22内への入り込みが、規制されるようになっている。
【0037】
従って、かかるプラグ32の構成によれば、その長手方向両端部の屈曲した板状脚部36と、係止孔22の長手方向両端縁部との係合による引き込み作用と、その幅方向の垂下部38,38と、係止孔22の幅方向の湾曲部26,26との当接による入り込み規制作用とによって、プラグ32が、係止孔22内に効果的に係止・保持されるようになっているのである。
【0038】
一方、ラッシングレール20にあっても、その形状としては、公知の各種の形状が適宜に採用され得るものであることは、言うまでもないところであり、そして、そのようなラッシングレール20に形成される複数の係止孔22としては、例示のI字形状を呈するものの他、例えば、図13に示される如き、I字形状の長孔形状の係止孔の2つが交差するように組み合わされて、十字形状を呈する係止孔40等の各種の形状のものも、採用可能である。なお、かかる図13に示されるラッシングレール20においては、I字形状の係止孔22と十字形状の係止孔40とが交互に配列されており、その十字形状の係止孔40においては、I字形状の孔が直角に交差した形態とされているところから、図3に示される如きラッシングベルト16の係止金具18が、縦方向のI字形状の孔部分に係止せしめられる場合の他、横方向のI字形状の孔部分に係止されて、積荷の固定が行われ得るようになることは、従来と同様である。
【0039】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0040】
2,10 荷箱 4 側壁
6,20 ラッシングレール 6a,20a 頂部平坦部 8,22,40 係止孔 12 あおり
14 ウイング 16 ラッシングベルト
24,32 プラグ 26 湾曲部
28,34 板状頭部 30,36 板状脚部
30a 山部 30b 谷部
38 垂下部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷箱の側壁内面に積荷の荷動き防止用として取り付けられる、積荷保持部材の端部が係止せしめられる長孔形状の係止孔の多数が配設されてなるラッシングレールにおいて、かかる係止孔の所定のものを閉塞して、その使用を不可と為すプラグにして、
前記係止孔の開口幅よりも大なる大きさの幅をもって延びる長手の板状頭部と、該板状頭部の対応する二つの端部からそれぞれ垂下する、湾曲乃至は屈曲した二つの弾性を有する板状脚部とを備え、該二つの板状脚部を前記所定の係止孔内に嵌入して、それら板状脚部の湾曲乃至は屈曲部位を、前記ラッシングレールにおける該所定の係止孔の開口縁部に係合せしめることによって、該所定の係止孔の開口が閉塞されるようにしたことを特徴とするラッシングレール用プラグ。
【請求項2】
前記板状頭部と前記二つの板状脚部とが、弾性を有する所定厚さの板状体が屈曲せしめられてなる形態において、一体的に形成されていると共に、該二つの板状脚部がそれぞれ波形形状に湾曲乃至は屈曲させられて、それら板状脚部の波形形状の谷部に、前記所定の係止孔両側のラッシングレール開口縁部が係合せしめられるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のラッシングレール用プラグ。
【請求項3】
前記板状頭部及び前記二つの板状脚部が、全体として逆U字状乃至は門型の横断面形状を呈する、弾性を有する板材の屈曲形態において構成されている請求項2に記載のラッシングレール用プラグ。
【請求項4】
前記板状脚部の波形形状が、三つの山部と二つの谷部とからなり且つそれら山部と谷部とを交互に配することによって構成される一方、 該二つの谷部の間に位置する中央の山部が、該板状脚部の自由端側に位置せしめられる下方の山部よりも低い高さにおいて、形成されている請求項2又は請求項3に記載のラッシングレール用プラグ。
【請求項5】
前記係止孔の直線状の開口部分を与える両側の前記ラッシングレール部位が、それぞれ内側に湾曲せしめられ、その湾曲端部位において、前記板状脚部の波形形状の谷部に係合せしめられるようになっている請求項2乃至請求項4の何れか一つに記載のラッシングレール用プラグ。
【請求項6】
前記板状頭部が、その横断面形状において、外方に凸なる円弧形状を呈する膨出部として、形成されていると共に、前記ラッシングレールが、所定の板材を屈曲せしめてなるハット形の横断面形状において形成され、且つ該ハット形横断面形状の頂部平坦部に、前記係止孔が設けられており、そして、該係止孔の長手方向の両端に位置する該ラッシングレール端縁部に対して、該膨出部の円弧形状における少なくとも頂部が当接し得るように構成されている請求項2乃至請求項5の何れか一つに記載のラッシングレール用プラグ。
【請求項7】
前記板材が、樹脂製である請求項3乃至請求項6の何れか一つに記載のラッシングレール用プラグ。
【請求項8】
ラッシングレールに配設された多数の長孔形状の係止孔の所定のものが、請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載のプラグにて閉塞されて、その使用が不可とされている荷箱を備えた貨物車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−254090(P2010−254090A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105293(P2009−105293)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)
【Fターム(参考)】