ラッチ装置
【課題】 ストライカー等の取付位置精度を大幅に緩和でき、それにより取付操作性を向上したり作動不良を生じないようにして、品質向上と用途拡大を図る。
【解決手段】第1部材8側のラッチ本体1に対応して第2部材9に取り付けられ、前記ラッチ本体1の前挿入口43より差し込まれて該ラッチ本体内で解除可能に係止されるストライカー20を有したラッチ装置において、前記ストライカー20を第2部材9に取り付けられるベース23に対し摺動位置調整可能に起立保持したこと特徴としている。
【解決手段】第1部材8側のラッチ本体1に対応して第2部材9に取り付けられ、前記ラッチ本体1の前挿入口43より差し込まれて該ラッチ本体内で解除可能に係止されるストライカー20を有したラッチ装置において、前記ストライカー20を第2部材9に取り付けられるベース23に対し摺動位置調整可能に起立保持したこと特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材(例えば、箱状基体)側のラッチ本体に対応して第2部材(例えば、蓋体)に取り付けられ、前記ラッチ本体の前挿入口より差し込まれて該ラッチ本体内で解除可能に係止されるストライカーを有したラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラッチ装置は、ロックや係止装置と称されることもあり、ストライカーを係脱するラッチ本体が図10に例示したような操作釦を有した係止機構から、図11に例示したような操作釦を有しない係止機構などもある。ここで、図10のラッチ装置は、特許文献1に開示されているもので、ストライカー(係合突起)52が箱状基体50の前面に突出状態に取り付けられるとともに、ラッチ本体53が蓋体51の対応部に設けられている。ストライカー52は、先端径大部の存在により形成された凹部52aを有している。ラッチ本体53は、蓋体51の内面に取り付けられたブラケット54と、ブラケット54内に拡開可能に保持されている略コ形のフック部材55と、フック部材55の中間部を押圧操作する操作釦56とからなる。以上の構造では、同(a)のごとくストライカー52がブラケット54の開口54aからフック部材55の内側に弾性的に差し込まれ、フック部材55の両端に凹部52aを弾性係合した状態でラッチ本体53に係止される。この係止は、同(b)のごとく操作釦56を押操作すると、フック部材55が両端側を拡開変形されて凹部52aとの噛み合いを解除する。
【0003】
図11のラッチ装置は、特許文献2に開示されているもので、ラッチ本体70が基体60に取り付けられて、蓋体61が開から閉位置に回動されたとき、蓋体61に取り付けられたストライカー62を係止し、該係止を蓋体61の更なる押し操作により係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構からなる。すなわち、ラッチ本体70は、ケース71と、ラッチ部材72と、ばね部材75と、ピン部材76と、板ばね77とからなる。ラッチ部材72は、ハート形カム溝73及び弾性係止部74を有し、ケース71に対しばね部材75によりケース突出方向へ付勢移動されている。ピン部材76は、基端がケース内底面に保持された状態で、先端がカム溝73に突出されている。板ばね77は、ケース71に装着され、一端側が開口71aからピン部材76を押圧して、カム溝73に対するピン部材76の圧接力を確保する。カム溝73は、同(a)において、下側から左上側へ延びる誘導溝73aと、誘導溝73aの上側に位置して左右に別れている係止用誘導溝73b及び解除用誘導溝73dと、誘導溝73b,73dの間にあって下側にある係止溝73cと、誘導溝73dから下側へ延びる復帰溝73eとを有している。係止部74は先端に爪部74aを有している。そして、ラッチ部材72は、ストライカー62により押されると、係止部74がケース71内に弾性変位しつつ引き込まれ、爪部74aがストライカー62の爪部62aを抜け止めし、ピン部材76の先端が係止溝73cに係止される。該係止は、ラッチ部材72がストライカー62により再び押されると、ピン部材76の先端が誘導溝73dから復帰溝73eに入って解除される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−73617号公報
【特許文献2】特開2001−262915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、従来のラッチ装置は、係止機構として色々なタイプがあるが、何れの構造でもストライカーとラッチ本体とは関係付けられてそれぞれ取り付けられる。すなわち、ストライカーは、例えば、第1部材(蓋体及び基体の一方)側のラッチ本体に対応して第2部材(蓋体及び基体の他方)に所定の精度で取り付けられる。この取付精度は、例えば、装置が小型になるほど高くなり位置調整に時間と手間がかかる。また、使用態様によっては、ストライカーがラッチ本体に対し被取付部材の熱変形などに起因して正規位置からずれ、取付位置を変更しなければならないこともある。なお、対策としては、ラッチ本体のストライカー用前挿入口を相対的に大きく設定し、ストライカーの取付位置精度を緩和し易くしているが、設計上の制約がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、以上のような問題を解消し、ストライカー等の取付位置精度を大幅に緩和でき、それにより取付操作性を向上したり作動不良を生じないようにして、品質向上と用途拡大を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、第1部材側のラッチ本体に対応して第2部材に付設されて、前記ラッチ本体の前挿入口より差し込まれて該ラッチ本体内で解除可能に係止されるストライカーを有したラッチ装置において、前記ストライカーを前記第2部材に取り付けられるベースに対し摺動位置調整可能に起立保持したことを特徴としている。
【0008】
以上の発明は、ストライカーの位置精度を取付後にも調整できるようにし、それによってストライカーとラッチ本体との精度だしに煩わされたり作動不良を解消できるようにする。また、以上の発明は次のように具体化されることが好ましい。
・前記ベースは、上下面を貫通した窓部を形成しているとともに、前記窓部と対応して組み付けられたケースを有し、前記ストライカーの基端側を前記ケース内に摺動可能に配置し、前記ストライカーの先端側を前記窓部から外へ突出している構成である(請求項2)。
・前記ストライカーは、基端側が前記ケースの対向部に設けられた板バネ部を介して弾性保持され、前記板バネ部の弾性力に抗して摺動される構成である(請求項3)。
・前記ストライカーは、前記ラッチ本体の前挿入口を形成している左右又は上下の一方向における位置ずれを前記ベースに対する摺動位置調整により修正し、他方向における位置ずれを前記前挿入口の開口幅寸法を大きく設定することで吸収される(請求項4)。
・前記ラッチ本体は、前記ストライカーを最初の押し操作により係止し、次の押し操作により前記ストライカーを係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構からなる構成である(請求項5)。
【発明の効果】
【0009】
・請求項1の発明では、例えば、ストライカーが第2部材にベースを介して取り付けられた後、ベースに対して摺動して位置調整可能なことから、従来構造に比べストライカー及びラッチ本体の取付精度を緩和して取付操作性を向上したり、ラッチ本体に対するストライカーの位置が長期使用などよって狂った場合に簡単に修正できる。
・請求項2の発明では、ストライカー、ベース、ケースによりユニット化されているため取扱性、取付性並びにストライカーの摺動保持特性などを確保し易くなる。
・請求項3の発明では、ストライカーが板バネ部を介して弾性保持されるため位置調整後の不用意な摺動を防止できる。
・請求項4の発明では、形態例にて述べると、ストライカーがラッチ本体側前挿入口に対する左右の位置精度をベースに対する摺動調整により確保し、上下の位置精度を前挿入口の上下方向の開口幅寸法により吸収される。
・請求項5の発明は、係止機構の一例としてラッチ本体がプッシュ・プッシュ係止機構からなることを特定したものである。但し、本発明はプッシュ・プッシュ係止機構以外でも差し支えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1はラッチ装置の使用例を示す模式図である。図2はラッチ装置を断面した作動図で、(a)は係止解除状態を示し、(b)は係止状態を示している。図3はラッチ本体の分解構成図である。図4はラッチ本体を係止状態で示し、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は断面図である。図5はストライカー組立体を示す分解構成図である。図6はストライカー組立体を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面図である。図7はストライカー組立体のベースを示し、(a)は上面図、(b)は下面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。図8はストライカー組立体のケースを示し、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(a)のD−D線断面図である。図9はストライカーを示し、(a)は正面図、(b)は(a)のE−E線断面図である。以下の説明では、構造及び組立を詳述した後、使用例及び作動に言及する。
【0011】
(構造)形態例のラッチ装置は、ラッチ本体1及びストライカー組立体2からなり、図1に例示されるように、ラッチ本体1が箱状基体8側に取り付けられ、ストライカー組立体2がそのラッチ本体1に対応して蓋体9の対応部に取り付けられ、ストライカー組立体2を構成しているストライカー20がラッチ本体1の前挿入口より差し込まれて該ラッチ本体内で解除可能に係止される。なお、ラッチ本体1及びストライカー組立体2は、図10の配置と同様に、ラッチ本体1を蓋体9に取り付け、ストライカー組立体2を基体8に取り付けるようにしてもよい。
【0012】
(ラッチ本体)ラッチ本体1は、例えば、蓋体9が開方向へ回動付勢されている態様において、蓋体9を該付勢力に抗して閉方向へ押すと、閉位置でラッチ組立体2のストライカー20を介して係止し、更に蓋体9を同方向へ押して手を離すと係止解除されるプッシュ・プッシュ係止機構である。構成部材は、図3に示されるように、前側又は上側を開口したケース3と、ケース3に配置されるカム溝5付きのラッチ部材4と、ラッチ部材4に枢支されたラッチ爪46と、ラッチ部材4をケース3から突出する方向へ付勢するばね部材6と、略U形のピン部材7とを有している。
【0013】
ここで、ケース3は、図3と図4のごとく内部が前後壁30,31と、両側壁32と、底壁33とで区画形成され、一端側つまり前開口した筒形となっており、又、両側壁32が取付部37を有し図1のごとく基体8側の対応取付部に取付部37を当ててねじ等で装着される。なお、前壁30には、左右中間に位置してラッチ部材4の摺動範囲を規制する規制溝30aと、内面両側に突設されてラッチ部材4に枢支されるラッチ爪46を係止方向へ回動可能にする張出部38とが設けられている。後壁31の内面には、上下方向に延びている不図示のガイド凹部とともに、規制用縦リブ39がピン部材7に対応して突設されている(図2参照)。両側壁32の内面には、上下方向に延びているガイド凹部32aが対向して設けられている。一方、底壁33には、前両側に貫通された型抜き穴34aと、後両側に貫通されたピン挿通穴34bと、前記ピン挿通穴の間に小スリットを介し区画形成された弾性挟持片と、ピン受け部と、前側内面に突出されたばね用支持軸35などが設けられている。そして、この構造では、ピン部材7が前記挟持片などを介し枢支され、ばね部材6が支持軸35に保持される。つまり、ばね部材6はコイルばねであり、下側が支持軸35に支持され、上側がラッチ部材4の対応小筒部内に配置される。ピン部材7は、U形中間部7aと、U形両側部7bと、各両側部の自由端側を内側に折り曲げた先端7cとで形成されている。
【0014】
ラッチ部材4は、ケース3内に摺動可能に配置されること、ケース3内に押し込められたときストライカー20をラッチ爪37を介して係止可能にすること、ピン部材7がトレースするハート形カム溝5を有していることが必須となる。この例では、略矩形容器状の前部41及び該前部41に連結された後部42とからなる。前部41は、図4のごとく内部43が長い対向面43b,43c及びその両側面(短い対向面)並びに幅細の底面43aで区画されている。内部43は、対向面43b,43cが外側に向かって間隔を大にする傾斜面となっていて、後述するストライカー20が進入したときに案内されながら底面43aに当接し易くなっている。また、対向面43cと底面43aとの間は、所定大の開口45に形成され、該開口45から後述するラッチ爪46の先端が内部43に出没される。なお、前部41には、前縁両側の鍔部41aと、両側に位置してケース側ガイド凹部32aに摺動自在に嵌合するリブ41bとが設けられている。
【0015】
後部42には、前記小筒部の長手方向にカム溝用板部44が一体化されている。前記小筒部は、板部44と反対側筒部分に突設されて規制溝30aに嵌合される突起42aと、突起42aの上側を切り欠いてラッチ爪46の板部分49と嵌合する不図示の欠如部と、両側に付設されてラッチ爪47の軸部48aを枢支する軸穴42bとを有している。カム溝用板部44の両側にはハート形のカム溝5がそれぞれ設けられている。両側のカム溝5は、同形であり、凸状カム島の周囲に沿って、図2(a)のごとく左側から右側へ延びる誘導溝5aと、誘導溝5aの右側に位置して上下に別れている係止用誘導溝5b及び解除用誘導溝5dと、誘導溝5b,5dの間に位置した凹状係止溝5cと、誘導溝5dから左側へ延びる復帰溝5eなどからなり、又、各溝5a〜5eの溝底面が略平面となっている。なお、符号41cは、板部44及び前部41に連続して設けられて、不図示のケース側ガイド凹部に摺動自在に嵌合するリブである。
【0016】
これに対し、ラッチ爪46は、爪部47及び支持部48からなり、図2のごとく爪部47を開口45内に位置した状態で、全体が前記小筒部側に配置される。つまり、支持部48は、爪部47の両下側に延びている片部からなり、各片部にあって上下中間に対向して設けられた軸部48aと、下端に対向して設けられた凸部48bとを有している。また、前記両片部の間には上述した板部分49が突出されている。
【0017】
(組立等)以上の各部材は次のような要領で組み付けられる。まず、ラッチ爪46がラッチ部材4に取り付けられる。この作業では、図3の状態から各軸部48aを対応する軸穴42bに押し込める。すると、ラッチ爪46は、軸部48aを支点として、所定範囲だけ回動可能に枢支され、爪部47が図2(a)のごとく開口45内に収まった解除状態と、図2(b)のごとく開口45内から突出されてストライカー20の凹部22bと係合する係止状態とに回動切換可能となる。次に、以上のラッチ爪46付きのラッチ部材4はケース2内に組み付けられる。この作業では、予め、ばね部材6を支持軸35に軸装し、ピン部材7を底壁33に揺動可能に保持した状態にしてそれぞれケース3内に配置しておくことが好ましい。ピン部材7は、両側の先端7cを各ピン挿通穴34bからケース内に挿入してから、中間部7aが不図示のピン受け部に対し弾性的に挟持される。この状態では、ピン部材7がケース2内に揺動可能に起立保持され、又、U形両側部7bが規制用縦リブ39と対応内壁面との間に位置規制されている。そして、ラッチ部材4は、ケース3に対し、リブ41b等を対応するガイド凹部32a等に位置合わせした状態で押し込められると、突起42aが規制溝30aに落ち込んで嵌合されたときに、ケース2に対し抜け止めされて組み付けられる。なお、ラッチ部材4の押し込み過程では、ばね部材6の上側が前記小筒部内に入り、又、ピン部材7の両先端7cが対応するカム溝5の溝入口(復帰溝5eより左側へ延びる溝)に入る。
【0018】
(ストライカー組立体)この組立体2は、図5〜図9に示されるように、ラッチ本体1に係脱されるストライカー20と、取付用ベース23と、ベース23に組み付けられるケース26とからなり、ストライカー20をベース23及びケース26との間に摺動位置調整可能に保持したものである。なお、ストライカー20、ベース23、ケース26は全て樹脂成形品であるが、樹脂以外であっても差し支えない。このうち、ストライカー20は、略矩形の板部21に係合突部22を立設している。板部21は、摺動板であり、上面片側に位置した段差21aと、下面にって摺動方向に延びている2本の凹部21bとを形成している。係合突部22は、ラッチ爪46の爪部47と係脱する凹部22bを先端22aの手前に形成している。
【0019】
ベース23は、概略片状からなり、長手方向の中間部に開設された窓部23aと、長手方向の両端部に穿設された取付穴23bと、下面に一体化されて長手方向の片側に張り出した状態に設けられている装着部24と、装着部24にあって窓部23aの両側に突設されている係止部25とを有している。窓部23aは、装着部24の略中心部に矩形穴として形成され、かつ下側が装着部24の下面に突出した矩形の下枠部24aで縁取りされている。下枠部24aには、係合突部22を窓部23aから突出した状態で、板部21の段差21aに摺動自在に嵌合されるリブ24bが設けられている。両係止部25は、揺動片であり、先端に爪25aを形成している。
【0020】
ケース26は、概略円形キャップ状であり、板部21が摺動可能に配置される大きさとなっている。端面壁27には、スリット27a,27aで両側を区画し、かつ中心部を内側凸形状にした板バネ部29が設けられている。符号28は、装着部24に重ねられる端面側に設けられている小壁部である。該小壁部28には、各係止部25に対応した凹部28aが設けられ、該凹部28aに爪25aが係止される。符号27bは小壁部28を形成するための型抜き用の切り欠き部である。
【0021】
(組立等)以上の各部材は次のような要領で組み付けられる。ストライカー20は、板部21がケース26内にあって、両凹部21bの間に位置した部分を板バネ部29上に保持するよう配置される。その状態から、ケース26に対しベース23を取り付けるようにする。すなわち、ベース23は、ストライカー20の係合突部22を窓部23aに挿通した状態で、ケース26に対し各係止部25を対応する凹部28aに弾性的に押し込む。すると、ケース26は、ベース23に対し爪25aと凹部28aとの係合を介して組み付けられる。この組立状態では、ストライカー20は、板部21がベース側装着部24とケース側板バネ部27bとの間に摺動可能に弾性保持される。この保持構造において、ストライカー20は、摺動方向が段差21aに嵌合しているリブ24bにより規制され、かつ、摺動範囲が係合突部22を挿通している窓部23aにより規制される。
【0022】
(使用例)以上説明したラッチ装置は、前述した図1に例示されるように、ラッチ本体1が箱状基体8の内前側に取り付けられ、ストライカー組立体2がそのラッチ本体1に対応して蓋体9に取り付けられる。この取付操作において、従来のラッチ装置では、ラッチ本体とストライカーとは所定の取付位置精度を充足しなければならず煩わしい作業となっていた。ところが、形態のラッチ装置では、ラッチ本体1とストライカー組立体2とは互いの取付位置精度を緩和しても、ストライカー組立体2を取り付けた後、ストライカー20をベース23に対して矢印方向に摺動することで、ラッチ本体1に対するストライカー20の最終的な位置精度を充足できるため、又、ストライカー20が左右の位置精度をベース23に対する摺動調整により確保し、上下の位置精度をラッチ部材4の前挿入口、つまり前部側の内部43の形状(長方形の長い辺形状)により吸収できるため、取付不良で再度取付操作したり取付操作に煩わされることもなくなる。また、例えば、長期使用により互いの位置精度が狂った場合にも、ストライカー20をベース23に対し位置調整することにより簡単に修正できる。これにより、形態のラッチ装置は、取付操作性を大幅に改善したり信頼性を向上できる。
【0023】
(作動)図2(a)はラッチ本体1の解除状態を示している。すなわち、ラッチ本体1は、ラッチ部材4がばね部材6により付勢移動(この移動は突起42aが規制溝30aの右端面に当たることで規制される)され、又、ラッチ爪46が爪部47を開口45内に入る方向へ回動(この回動は凸部48bが張出部38の最も高くなった箇所に乗り上げることで行われる)されている。そして、蓋体9が付勢力に抗して閉方向へ回動された場合、ラッチ部材4は、ストライカー20によりばね部材6の付勢力に抗して図2の左方向へ押され、ラッチ爪46が軸部48aを支点として回動され、爪部47が凹部22bに係合してストライカー20を抜け止めする。また、ラッチ部材4は図2(b)の係止位置で係止される。つまり、ピン部材7の各先端7cは、ラッチ部材4の左方向移動により上記した誘導溝5aから係止用誘導溝5bに入り、ラッチ部材4に対する押圧力を解放したときに、係止溝5cに係止される。この係止により、蓋体9は閉位置に保持される。図2(b)から(a)に切り換えるときは蓋体9を基体8側へ一旦押し、該押し力を解放する(押した手を離す)。すると、ラッチ部材4も左方向へ摺動され、ピン部材7の各先端7cは、上記した係止溝5cから解除用誘導溝5d、復帰溝5eを経て再び溝入口に戻り、同時に、ラッチ爪46が当初の解除位置に切り換えられる。なお、蓋体9は、ストライカー20の凹部22bがラッチ爪46の爪部47から解放されると、不図示の付勢手段により自動的に開位置へ回動切り換えられる。これらは、従来のプッシュ・プッシュ係止機構と同様である。
【0024】
なお、本発明は、以上の形態例に何ら制約されるものではなく、特にラッチ本体1の方はプッシュ・プッシュ係止機構に限られない。また、ストライカー20をベース23に対し摺動位置調整可能に保持する構造もこの形態を参考にして、更に変形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】発明形態例のラッチ装置の使用例を示す模式構成図である。
【図2】上記ラッチ装置を係止解除及び係止状態で示す作動図である。
【図3】上記ラッチ装置のラッチ本体側を示す分解構成図である。
【図4】上記ラッチ本体を係止状態で示す図である。
【図5】上記ラッチ装置のストライカー組立体を示す分解構成図である。
【図6】上記ストライカー組立体の細部を示す図である。
【図7】上記ストライカー組立体のベースを示す図である。
【図8】上記ストライカー組立体のケースを示す図である。
【図9】上記ストライカーを示す図である。
【図10】特許文献1のラッチ装置を示す図である。
【図11】特許文献2のラッチ装置を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1…ラッチ本体(プッシュ・プッシュ係止機構)
2…ストライカー組立体
3…ケース
4…ラッチ部材(41は前部、43は前挿入部に相当する内部)
5…カム溝
6…ばね部材
7…ピン部材
8…箱状基体(第1部材)
9…蓋体(第2部材)
20…ストライカー(21は板部、22は係合突部)
23…取付用ベース(23aは窓部、25は係止部)
26…ケース(29は板バネ部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材(例えば、箱状基体)側のラッチ本体に対応して第2部材(例えば、蓋体)に取り付けられ、前記ラッチ本体の前挿入口より差し込まれて該ラッチ本体内で解除可能に係止されるストライカーを有したラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラッチ装置は、ロックや係止装置と称されることもあり、ストライカーを係脱するラッチ本体が図10に例示したような操作釦を有した係止機構から、図11に例示したような操作釦を有しない係止機構などもある。ここで、図10のラッチ装置は、特許文献1に開示されているもので、ストライカー(係合突起)52が箱状基体50の前面に突出状態に取り付けられるとともに、ラッチ本体53が蓋体51の対応部に設けられている。ストライカー52は、先端径大部の存在により形成された凹部52aを有している。ラッチ本体53は、蓋体51の内面に取り付けられたブラケット54と、ブラケット54内に拡開可能に保持されている略コ形のフック部材55と、フック部材55の中間部を押圧操作する操作釦56とからなる。以上の構造では、同(a)のごとくストライカー52がブラケット54の開口54aからフック部材55の内側に弾性的に差し込まれ、フック部材55の両端に凹部52aを弾性係合した状態でラッチ本体53に係止される。この係止は、同(b)のごとく操作釦56を押操作すると、フック部材55が両端側を拡開変形されて凹部52aとの噛み合いを解除する。
【0003】
図11のラッチ装置は、特許文献2に開示されているもので、ラッチ本体70が基体60に取り付けられて、蓋体61が開から閉位置に回動されたとき、蓋体61に取り付けられたストライカー62を係止し、該係止を蓋体61の更なる押し操作により係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構からなる。すなわち、ラッチ本体70は、ケース71と、ラッチ部材72と、ばね部材75と、ピン部材76と、板ばね77とからなる。ラッチ部材72は、ハート形カム溝73及び弾性係止部74を有し、ケース71に対しばね部材75によりケース突出方向へ付勢移動されている。ピン部材76は、基端がケース内底面に保持された状態で、先端がカム溝73に突出されている。板ばね77は、ケース71に装着され、一端側が開口71aからピン部材76を押圧して、カム溝73に対するピン部材76の圧接力を確保する。カム溝73は、同(a)において、下側から左上側へ延びる誘導溝73aと、誘導溝73aの上側に位置して左右に別れている係止用誘導溝73b及び解除用誘導溝73dと、誘導溝73b,73dの間にあって下側にある係止溝73cと、誘導溝73dから下側へ延びる復帰溝73eとを有している。係止部74は先端に爪部74aを有している。そして、ラッチ部材72は、ストライカー62により押されると、係止部74がケース71内に弾性変位しつつ引き込まれ、爪部74aがストライカー62の爪部62aを抜け止めし、ピン部材76の先端が係止溝73cに係止される。該係止は、ラッチ部材72がストライカー62により再び押されると、ピン部材76の先端が誘導溝73dから復帰溝73eに入って解除される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−73617号公報
【特許文献2】特開2001−262915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、従来のラッチ装置は、係止機構として色々なタイプがあるが、何れの構造でもストライカーとラッチ本体とは関係付けられてそれぞれ取り付けられる。すなわち、ストライカーは、例えば、第1部材(蓋体及び基体の一方)側のラッチ本体に対応して第2部材(蓋体及び基体の他方)に所定の精度で取り付けられる。この取付精度は、例えば、装置が小型になるほど高くなり位置調整に時間と手間がかかる。また、使用態様によっては、ストライカーがラッチ本体に対し被取付部材の熱変形などに起因して正規位置からずれ、取付位置を変更しなければならないこともある。なお、対策としては、ラッチ本体のストライカー用前挿入口を相対的に大きく設定し、ストライカーの取付位置精度を緩和し易くしているが、設計上の制約がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、以上のような問題を解消し、ストライカー等の取付位置精度を大幅に緩和でき、それにより取付操作性を向上したり作動不良を生じないようにして、品質向上と用途拡大を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、第1部材側のラッチ本体に対応して第2部材に付設されて、前記ラッチ本体の前挿入口より差し込まれて該ラッチ本体内で解除可能に係止されるストライカーを有したラッチ装置において、前記ストライカーを前記第2部材に取り付けられるベースに対し摺動位置調整可能に起立保持したことを特徴としている。
【0008】
以上の発明は、ストライカーの位置精度を取付後にも調整できるようにし、それによってストライカーとラッチ本体との精度だしに煩わされたり作動不良を解消できるようにする。また、以上の発明は次のように具体化されることが好ましい。
・前記ベースは、上下面を貫通した窓部を形成しているとともに、前記窓部と対応して組み付けられたケースを有し、前記ストライカーの基端側を前記ケース内に摺動可能に配置し、前記ストライカーの先端側を前記窓部から外へ突出している構成である(請求項2)。
・前記ストライカーは、基端側が前記ケースの対向部に設けられた板バネ部を介して弾性保持され、前記板バネ部の弾性力に抗して摺動される構成である(請求項3)。
・前記ストライカーは、前記ラッチ本体の前挿入口を形成している左右又は上下の一方向における位置ずれを前記ベースに対する摺動位置調整により修正し、他方向における位置ずれを前記前挿入口の開口幅寸法を大きく設定することで吸収される(請求項4)。
・前記ラッチ本体は、前記ストライカーを最初の押し操作により係止し、次の押し操作により前記ストライカーを係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構からなる構成である(請求項5)。
【発明の効果】
【0009】
・請求項1の発明では、例えば、ストライカーが第2部材にベースを介して取り付けられた後、ベースに対して摺動して位置調整可能なことから、従来構造に比べストライカー及びラッチ本体の取付精度を緩和して取付操作性を向上したり、ラッチ本体に対するストライカーの位置が長期使用などよって狂った場合に簡単に修正できる。
・請求項2の発明では、ストライカー、ベース、ケースによりユニット化されているため取扱性、取付性並びにストライカーの摺動保持特性などを確保し易くなる。
・請求項3の発明では、ストライカーが板バネ部を介して弾性保持されるため位置調整後の不用意な摺動を防止できる。
・請求項4の発明では、形態例にて述べると、ストライカーがラッチ本体側前挿入口に対する左右の位置精度をベースに対する摺動調整により確保し、上下の位置精度を前挿入口の上下方向の開口幅寸法により吸収される。
・請求項5の発明は、係止機構の一例としてラッチ本体がプッシュ・プッシュ係止機構からなることを特定したものである。但し、本発明はプッシュ・プッシュ係止機構以外でも差し支えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1はラッチ装置の使用例を示す模式図である。図2はラッチ装置を断面した作動図で、(a)は係止解除状態を示し、(b)は係止状態を示している。図3はラッチ本体の分解構成図である。図4はラッチ本体を係止状態で示し、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は断面図である。図5はストライカー組立体を示す分解構成図である。図6はストライカー組立体を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面図である。図7はストライカー組立体のベースを示し、(a)は上面図、(b)は下面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。図8はストライカー組立体のケースを示し、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(a)のD−D線断面図である。図9はストライカーを示し、(a)は正面図、(b)は(a)のE−E線断面図である。以下の説明では、構造及び組立を詳述した後、使用例及び作動に言及する。
【0011】
(構造)形態例のラッチ装置は、ラッチ本体1及びストライカー組立体2からなり、図1に例示されるように、ラッチ本体1が箱状基体8側に取り付けられ、ストライカー組立体2がそのラッチ本体1に対応して蓋体9の対応部に取り付けられ、ストライカー組立体2を構成しているストライカー20がラッチ本体1の前挿入口より差し込まれて該ラッチ本体内で解除可能に係止される。なお、ラッチ本体1及びストライカー組立体2は、図10の配置と同様に、ラッチ本体1を蓋体9に取り付け、ストライカー組立体2を基体8に取り付けるようにしてもよい。
【0012】
(ラッチ本体)ラッチ本体1は、例えば、蓋体9が開方向へ回動付勢されている態様において、蓋体9を該付勢力に抗して閉方向へ押すと、閉位置でラッチ組立体2のストライカー20を介して係止し、更に蓋体9を同方向へ押して手を離すと係止解除されるプッシュ・プッシュ係止機構である。構成部材は、図3に示されるように、前側又は上側を開口したケース3と、ケース3に配置されるカム溝5付きのラッチ部材4と、ラッチ部材4に枢支されたラッチ爪46と、ラッチ部材4をケース3から突出する方向へ付勢するばね部材6と、略U形のピン部材7とを有している。
【0013】
ここで、ケース3は、図3と図4のごとく内部が前後壁30,31と、両側壁32と、底壁33とで区画形成され、一端側つまり前開口した筒形となっており、又、両側壁32が取付部37を有し図1のごとく基体8側の対応取付部に取付部37を当ててねじ等で装着される。なお、前壁30には、左右中間に位置してラッチ部材4の摺動範囲を規制する規制溝30aと、内面両側に突設されてラッチ部材4に枢支されるラッチ爪46を係止方向へ回動可能にする張出部38とが設けられている。後壁31の内面には、上下方向に延びている不図示のガイド凹部とともに、規制用縦リブ39がピン部材7に対応して突設されている(図2参照)。両側壁32の内面には、上下方向に延びているガイド凹部32aが対向して設けられている。一方、底壁33には、前両側に貫通された型抜き穴34aと、後両側に貫通されたピン挿通穴34bと、前記ピン挿通穴の間に小スリットを介し区画形成された弾性挟持片と、ピン受け部と、前側内面に突出されたばね用支持軸35などが設けられている。そして、この構造では、ピン部材7が前記挟持片などを介し枢支され、ばね部材6が支持軸35に保持される。つまり、ばね部材6はコイルばねであり、下側が支持軸35に支持され、上側がラッチ部材4の対応小筒部内に配置される。ピン部材7は、U形中間部7aと、U形両側部7bと、各両側部の自由端側を内側に折り曲げた先端7cとで形成されている。
【0014】
ラッチ部材4は、ケース3内に摺動可能に配置されること、ケース3内に押し込められたときストライカー20をラッチ爪37を介して係止可能にすること、ピン部材7がトレースするハート形カム溝5を有していることが必須となる。この例では、略矩形容器状の前部41及び該前部41に連結された後部42とからなる。前部41は、図4のごとく内部43が長い対向面43b,43c及びその両側面(短い対向面)並びに幅細の底面43aで区画されている。内部43は、対向面43b,43cが外側に向かって間隔を大にする傾斜面となっていて、後述するストライカー20が進入したときに案内されながら底面43aに当接し易くなっている。また、対向面43cと底面43aとの間は、所定大の開口45に形成され、該開口45から後述するラッチ爪46の先端が内部43に出没される。なお、前部41には、前縁両側の鍔部41aと、両側に位置してケース側ガイド凹部32aに摺動自在に嵌合するリブ41bとが設けられている。
【0015】
後部42には、前記小筒部の長手方向にカム溝用板部44が一体化されている。前記小筒部は、板部44と反対側筒部分に突設されて規制溝30aに嵌合される突起42aと、突起42aの上側を切り欠いてラッチ爪46の板部分49と嵌合する不図示の欠如部と、両側に付設されてラッチ爪47の軸部48aを枢支する軸穴42bとを有している。カム溝用板部44の両側にはハート形のカム溝5がそれぞれ設けられている。両側のカム溝5は、同形であり、凸状カム島の周囲に沿って、図2(a)のごとく左側から右側へ延びる誘導溝5aと、誘導溝5aの右側に位置して上下に別れている係止用誘導溝5b及び解除用誘導溝5dと、誘導溝5b,5dの間に位置した凹状係止溝5cと、誘導溝5dから左側へ延びる復帰溝5eなどからなり、又、各溝5a〜5eの溝底面が略平面となっている。なお、符号41cは、板部44及び前部41に連続して設けられて、不図示のケース側ガイド凹部に摺動自在に嵌合するリブである。
【0016】
これに対し、ラッチ爪46は、爪部47及び支持部48からなり、図2のごとく爪部47を開口45内に位置した状態で、全体が前記小筒部側に配置される。つまり、支持部48は、爪部47の両下側に延びている片部からなり、各片部にあって上下中間に対向して設けられた軸部48aと、下端に対向して設けられた凸部48bとを有している。また、前記両片部の間には上述した板部分49が突出されている。
【0017】
(組立等)以上の各部材は次のような要領で組み付けられる。まず、ラッチ爪46がラッチ部材4に取り付けられる。この作業では、図3の状態から各軸部48aを対応する軸穴42bに押し込める。すると、ラッチ爪46は、軸部48aを支点として、所定範囲だけ回動可能に枢支され、爪部47が図2(a)のごとく開口45内に収まった解除状態と、図2(b)のごとく開口45内から突出されてストライカー20の凹部22bと係合する係止状態とに回動切換可能となる。次に、以上のラッチ爪46付きのラッチ部材4はケース2内に組み付けられる。この作業では、予め、ばね部材6を支持軸35に軸装し、ピン部材7を底壁33に揺動可能に保持した状態にしてそれぞれケース3内に配置しておくことが好ましい。ピン部材7は、両側の先端7cを各ピン挿通穴34bからケース内に挿入してから、中間部7aが不図示のピン受け部に対し弾性的に挟持される。この状態では、ピン部材7がケース2内に揺動可能に起立保持され、又、U形両側部7bが規制用縦リブ39と対応内壁面との間に位置規制されている。そして、ラッチ部材4は、ケース3に対し、リブ41b等を対応するガイド凹部32a等に位置合わせした状態で押し込められると、突起42aが規制溝30aに落ち込んで嵌合されたときに、ケース2に対し抜け止めされて組み付けられる。なお、ラッチ部材4の押し込み過程では、ばね部材6の上側が前記小筒部内に入り、又、ピン部材7の両先端7cが対応するカム溝5の溝入口(復帰溝5eより左側へ延びる溝)に入る。
【0018】
(ストライカー組立体)この組立体2は、図5〜図9に示されるように、ラッチ本体1に係脱されるストライカー20と、取付用ベース23と、ベース23に組み付けられるケース26とからなり、ストライカー20をベース23及びケース26との間に摺動位置調整可能に保持したものである。なお、ストライカー20、ベース23、ケース26は全て樹脂成形品であるが、樹脂以外であっても差し支えない。このうち、ストライカー20は、略矩形の板部21に係合突部22を立設している。板部21は、摺動板であり、上面片側に位置した段差21aと、下面にって摺動方向に延びている2本の凹部21bとを形成している。係合突部22は、ラッチ爪46の爪部47と係脱する凹部22bを先端22aの手前に形成している。
【0019】
ベース23は、概略片状からなり、長手方向の中間部に開設された窓部23aと、長手方向の両端部に穿設された取付穴23bと、下面に一体化されて長手方向の片側に張り出した状態に設けられている装着部24と、装着部24にあって窓部23aの両側に突設されている係止部25とを有している。窓部23aは、装着部24の略中心部に矩形穴として形成され、かつ下側が装着部24の下面に突出した矩形の下枠部24aで縁取りされている。下枠部24aには、係合突部22を窓部23aから突出した状態で、板部21の段差21aに摺動自在に嵌合されるリブ24bが設けられている。両係止部25は、揺動片であり、先端に爪25aを形成している。
【0020】
ケース26は、概略円形キャップ状であり、板部21が摺動可能に配置される大きさとなっている。端面壁27には、スリット27a,27aで両側を区画し、かつ中心部を内側凸形状にした板バネ部29が設けられている。符号28は、装着部24に重ねられる端面側に設けられている小壁部である。該小壁部28には、各係止部25に対応した凹部28aが設けられ、該凹部28aに爪25aが係止される。符号27bは小壁部28を形成するための型抜き用の切り欠き部である。
【0021】
(組立等)以上の各部材は次のような要領で組み付けられる。ストライカー20は、板部21がケース26内にあって、両凹部21bの間に位置した部分を板バネ部29上に保持するよう配置される。その状態から、ケース26に対しベース23を取り付けるようにする。すなわち、ベース23は、ストライカー20の係合突部22を窓部23aに挿通した状態で、ケース26に対し各係止部25を対応する凹部28aに弾性的に押し込む。すると、ケース26は、ベース23に対し爪25aと凹部28aとの係合を介して組み付けられる。この組立状態では、ストライカー20は、板部21がベース側装着部24とケース側板バネ部27bとの間に摺動可能に弾性保持される。この保持構造において、ストライカー20は、摺動方向が段差21aに嵌合しているリブ24bにより規制され、かつ、摺動範囲が係合突部22を挿通している窓部23aにより規制される。
【0022】
(使用例)以上説明したラッチ装置は、前述した図1に例示されるように、ラッチ本体1が箱状基体8の内前側に取り付けられ、ストライカー組立体2がそのラッチ本体1に対応して蓋体9に取り付けられる。この取付操作において、従来のラッチ装置では、ラッチ本体とストライカーとは所定の取付位置精度を充足しなければならず煩わしい作業となっていた。ところが、形態のラッチ装置では、ラッチ本体1とストライカー組立体2とは互いの取付位置精度を緩和しても、ストライカー組立体2を取り付けた後、ストライカー20をベース23に対して矢印方向に摺動することで、ラッチ本体1に対するストライカー20の最終的な位置精度を充足できるため、又、ストライカー20が左右の位置精度をベース23に対する摺動調整により確保し、上下の位置精度をラッチ部材4の前挿入口、つまり前部側の内部43の形状(長方形の長い辺形状)により吸収できるため、取付不良で再度取付操作したり取付操作に煩わされることもなくなる。また、例えば、長期使用により互いの位置精度が狂った場合にも、ストライカー20をベース23に対し位置調整することにより簡単に修正できる。これにより、形態のラッチ装置は、取付操作性を大幅に改善したり信頼性を向上できる。
【0023】
(作動)図2(a)はラッチ本体1の解除状態を示している。すなわち、ラッチ本体1は、ラッチ部材4がばね部材6により付勢移動(この移動は突起42aが規制溝30aの右端面に当たることで規制される)され、又、ラッチ爪46が爪部47を開口45内に入る方向へ回動(この回動は凸部48bが張出部38の最も高くなった箇所に乗り上げることで行われる)されている。そして、蓋体9が付勢力に抗して閉方向へ回動された場合、ラッチ部材4は、ストライカー20によりばね部材6の付勢力に抗して図2の左方向へ押され、ラッチ爪46が軸部48aを支点として回動され、爪部47が凹部22bに係合してストライカー20を抜け止めする。また、ラッチ部材4は図2(b)の係止位置で係止される。つまり、ピン部材7の各先端7cは、ラッチ部材4の左方向移動により上記した誘導溝5aから係止用誘導溝5bに入り、ラッチ部材4に対する押圧力を解放したときに、係止溝5cに係止される。この係止により、蓋体9は閉位置に保持される。図2(b)から(a)に切り換えるときは蓋体9を基体8側へ一旦押し、該押し力を解放する(押した手を離す)。すると、ラッチ部材4も左方向へ摺動され、ピン部材7の各先端7cは、上記した係止溝5cから解除用誘導溝5d、復帰溝5eを経て再び溝入口に戻り、同時に、ラッチ爪46が当初の解除位置に切り換えられる。なお、蓋体9は、ストライカー20の凹部22bがラッチ爪46の爪部47から解放されると、不図示の付勢手段により自動的に開位置へ回動切り換えられる。これらは、従来のプッシュ・プッシュ係止機構と同様である。
【0024】
なお、本発明は、以上の形態例に何ら制約されるものではなく、特にラッチ本体1の方はプッシュ・プッシュ係止機構に限られない。また、ストライカー20をベース23に対し摺動位置調整可能に保持する構造もこの形態を参考にして、更に変形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】発明形態例のラッチ装置の使用例を示す模式構成図である。
【図2】上記ラッチ装置を係止解除及び係止状態で示す作動図である。
【図3】上記ラッチ装置のラッチ本体側を示す分解構成図である。
【図4】上記ラッチ本体を係止状態で示す図である。
【図5】上記ラッチ装置のストライカー組立体を示す分解構成図である。
【図6】上記ストライカー組立体の細部を示す図である。
【図7】上記ストライカー組立体のベースを示す図である。
【図8】上記ストライカー組立体のケースを示す図である。
【図9】上記ストライカーを示す図である。
【図10】特許文献1のラッチ装置を示す図である。
【図11】特許文献2のラッチ装置を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1…ラッチ本体(プッシュ・プッシュ係止機構)
2…ストライカー組立体
3…ケース
4…ラッチ部材(41は前部、43は前挿入部に相当する内部)
5…カム溝
6…ばね部材
7…ピン部材
8…箱状基体(第1部材)
9…蓋体(第2部材)
20…ストライカー(21は板部、22は係合突部)
23…取付用ベース(23aは窓部、25は係止部)
26…ケース(29は板バネ部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材側のラッチ本体に対応して第2部材に付設されて、前記ラッチ本体の前挿入口より差し込まれて該ラッチ本体内で解除可能に係止されるストライカーを有したラッチ装置において、前記ストライカーを前記第2部材に取り付けられるベースに対し摺動位置調整可能に起立保持したことを特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
前記ベースは、上下面を貫通した窓部を形成しているとともに、前記窓部と対応して組み付けられたケースを有し、前記ストライカーの基端側を前記ケース内に摺動可能に配置し、前記ストライカーの先端側を前記窓部から外へ突出している請求項1に記載のラッチ装置。
【請求項3】
前記ストライカーは、基端側が前記ケースの対向部に設けられた板バネ部を介して弾性保持され、前記板バネ部の弾性力に抗して摺動される請求項1又は2に記載のラッチ装置。
【請求項4】
前記ストライカーは、前記ラッチ本体の前挿入口を形成している左右又は上下の一方向における位置ずれを前記ベースに対する摺動位置調整により修正し、他方向における位置ずれを前記前挿入口の開口幅寸法を大きく設定することで吸収される請求項1から3の何れかに記載のラッチ装置。
【請求項5】
前記ラッチ本体は、前記ストライカーを最初の押し操作により係止し、次の押し操作により前記ストライカーを係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構からなる請求項1から4の何れかに記載のラッチ装置。
【請求項1】
第1部材側のラッチ本体に対応して第2部材に付設されて、前記ラッチ本体の前挿入口より差し込まれて該ラッチ本体内で解除可能に係止されるストライカーを有したラッチ装置において、前記ストライカーを前記第2部材に取り付けられるベースに対し摺動位置調整可能に起立保持したことを特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
前記ベースは、上下面を貫通した窓部を形成しているとともに、前記窓部と対応して組み付けられたケースを有し、前記ストライカーの基端側を前記ケース内に摺動可能に配置し、前記ストライカーの先端側を前記窓部から外へ突出している請求項1に記載のラッチ装置。
【請求項3】
前記ストライカーは、基端側が前記ケースの対向部に設けられた板バネ部を介して弾性保持され、前記板バネ部の弾性力に抗して摺動される請求項1又は2に記載のラッチ装置。
【請求項4】
前記ストライカーは、前記ラッチ本体の前挿入口を形成している左右又は上下の一方向における位置ずれを前記ベースに対する摺動位置調整により修正し、他方向における位置ずれを前記前挿入口の開口幅寸法を大きく設定することで吸収される請求項1から3の何れかに記載のラッチ装置。
【請求項5】
前記ラッチ本体は、前記ストライカーを最初の押し操作により係止し、次の押し操作により前記ストライカーを係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構からなる請求項1から4の何れかに記載のラッチ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−214105(P2006−214105A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25786(P2005−25786)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
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