説明

ラノリンの植物性代替品

【課題】ラノリンと比べてかなり安いラノリン代替品を提供する。
【解決手段】ポリオールエステル5〜20重量%と、ペトロラタムとを含有するラノリン代替品とを含み、ポリオールエステルの前記重量がペトロラタムの重量に基づくラノリン代替品。該ラノリン代替品は、薬剤、革の仕上げ用組成物、石鹸、洗剤、化粧品組成物、例えば、美顔クリーム、ティシュペーパー、ヘアセット剤、日焼け止め剤などの一成分としてラノリンを含有するすべての製品において、ラノリン代替品として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラノリンの植物性代替品に関する。
【背景技術】
【0002】
ラノリンは、羊毛脂の精製によって得られる製品である。羊毛脂は、羊毛の溶媒処理によって得られる粗グリースである。
ラノリンは、含水形では水を25〜30%含有する帯黄色ないし灰色の半固体であり、無水形では茶色がかった黄色の半固体である。ラノリンは、高級脂肪酸のコレステロールエステルを含有する。
【0003】
ラノリンは、薬剤、革の仕上げ用組成物、石鹸および洗剤、美顔クリーム、ティッシュペーパー、ヘアセット剤、日焼け止め剤等の一成分として使用される。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、ラノリンを含有しない、植物性物質から得られるラノリン代替組成物に関する。本発明のラノリン代替組成物は、
A)植物ステロール脂肪酸エステル、好ましくはダイズステロール脂肪酸エステルを50〜95重量%、好ましくは85〜95重量%と、
B)ポリグリセリルジポリヒドロキシ脂肪酸エステル、好ましくはジポリヒドロキシステアリン酸エステルを1〜10重量%、好ましくは3〜5重量%と、
C)ポリグリセリルジ脂肪酸エステル、好ましくはジイソステアリン酸エステルを1〜10重量%、好ましくは3〜5重量%と、
D)グリセリル脂肪酸エステル、好ましくはオレイン酸エステルを0.25〜2重量%、好ましくは0.8〜1.2重量%とを含む。
【0005】
その組成物は、上記成分の他に、任意に、
E)マイクロクリスタリンワックスと、
F)ポリエチレングリコール植物ステロール、好ましくはPEG−5ダイズステロールと、
G)ペトロラタム/鉱油のうちの1種または複数種を含む、他の適合性(compatible)成分を含有し得る。
【0006】
発明の詳細な説明
実施例以外において、または別の箇所で示される場合、本明細書において使用される成分の量または反応条件を表すすべての数字は、「約」という用語によってすべての場合に修飾されることを理解されたい。
【0007】
本発明のラノリン代替組成物が上記に示される任意の成分のうちの1種または複数種を含有する場合、任意の成分は、100重量%として表される、成分A)〜D)を合わせた重量に対して、以下の量:
E)マイクロクリスタリンワックス−0〜40重量%、好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは30〜35重量%、
F)ポリエチレングリコール植物ステロール−0〜60重量%、好ましくは1〜60重量%、さらに好ましくは45〜50重量%、
G)ペトロラタム/鉱油−0〜300重量%、好ましくは1〜300重量%、さらに好ましくは250〜300重量%、で存在し得る。
【0008】
成分A)〜D)ならびに任意の成分E)〜F)のパーセンテージは、完成製品に望まれる性能特性、例えば吸水率、ヨウ素価、融点等に応じて異なる。
成分A)は、その脂肪酸部位が、炭素原子6〜22個、好ましくは炭素原子16〜18個を含有する、飽和またはオレフィン不飽和、直鎖または分枝鎖脂肪酸から誘導される、いずれかの植物ステロール脂肪酸エステルであり得る。好ましいステロールは、スチグマステロールとシトステロール(ジヒドロスチグマステロール)との混合物であるダイズステロールである。
【0009】
成分B)は、その脂肪酸部位が、炭素原子6〜22個、好ましくは炭素原子16〜18個、最も好ましくは炭素原子18個を含有する、ポリヒドロキシ飽和またはオレフィン不飽和、直鎖または分枝鎖脂肪酸から独立して誘導される、いずれかのポリグリセリルジポリヒドロキシ脂肪酸エステルであり得る。ポリグリセリル部位は、グリセリル基2〜12個、好ましくは2個を含有する。それぞれのポリヒドロキシ脂肪酸部位は、ヒドロキシ基2〜8個を含有し得る。好ましい化合物は、それぞれの脂肪酸部位が同一である化合物である。
【0010】
成分C)は、それぞれの脂肪酸部位が、炭素原子6〜22個、好ましくは炭素原子16〜18個、最も好ましくは炭素原子18個を含有する、飽和または不飽和、直鎖または分枝鎖脂肪酸から独立して誘導される、いずれかのポリグリセリルジ脂肪酸エステルであり得る。好ましい化合物は、それぞれの脂肪酸部位が同一である化合物である。ポリグリセリル部位は、グリセリル基2〜12個、好ましくは3個を含有する。
【0011】
成分D)は、その脂肪酸部位が、炭素原子6〜22個、好ましくは炭素原子16〜18個を含有する、飽和またはオレフィン不飽和、直鎖または分枝鎖脂肪酸から独立して誘導され、最も好ましくはオレイン酸から誘導される、いずれかのグリセリル脂肪酸モノ、ジ、またはトリエステルであり得る。
【0012】
成分E)は、通常のワックスよりもかなり小さな結晶性構造により特徴付けられる、分枝鎖パラフィンで通常構成されるワックスである、マイクロクリスタリンワックスである。
【0013】
成分F)は、エチレングリコール基を2〜10個、好ましくは5個含有するポリエチレングリコール植物ステロールである。その植物ステロールはダイズステロールであることが好ましい。
【0014】
成分G)は、ペトロラタム、ワセリン10〜70重量%と、白色鉱油30〜90重量%との混合物であり、液体炭化水素の混合物である。
【0015】
本発明の組成物は、温度50〜100℃、好ましくは70〜75℃で成分を共に混合することによって製造することができる。
【0016】
ポリオールエステルおよびペトロラタムを含有する組成物をラノリン代替品として用いることができることもまた発見されている。かかる組成物は、ペトロラタムの重量に対して、ポリオールエステルを5〜20重量%、好ましくは8〜10重量%含有する。
【0017】
上記のラノリン代替品は、上記の成分のみからなるか、あるいはそれと適合性である1種または複数種のその他の成分、例えば上記に示す成分A)〜F)のうちの1つまたは複数を、成分のラノリン様特性を変化させない量で含有し得る。
【0018】
ポリオールエステルは、ソルビタン脂肪酸エステルおよびアルキルグリコシドエステルのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0019】
そのソルビタン脂肪酸エステルは、直鎖または分枝鎖であり得るC4〜C22、好ましくはC6〜C18アルキルまたはアルケニル脂肪酸のエステルである。例としては、限定されないが、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、およびトリステアリン酸ソルビタンが挙げられる。
【0020】
アルキルグリコシドエステルは、そのサッカリドが炭素原子5〜6個を含有する、還元(reducing)サッカリドまたは多糖のC2〜C20アルキルまたはアルケニルカルボン酸エステルであり、好ましくは、炭素原子1〜20個を含有するアルキルまたはアルケニルラジカルもまた含有するグルコシドまたはポリグルコシドのエステルである。
【0021】
アルキルグリコシドエステルは式I:

(R1は、C1〜C20アルキルまたはアルケニル基であり、R2は、C3〜C21アルキルまたはアルケニル基であり、好ましくは植物性脂肪酸から誘導され、aは、1〜4、好ましくは2〜4の整数であり、Zは、炭素原子5または6個、好ましくは6個を含有するサッカリド残基であり、bは1〜6の数である)を有する。
【0022】
式Iの好ましい化合物はジオレイン酸メチルグルコシドである。
本発明の組成物は、限定されないが、薬剤、革の仕上げ用組成物、石鹸、洗剤、化粧品組成物、例えば美顔クリーム、ティシュペーパー、ヘアセット剤、日焼け止め剤などの一成分としてラノリンを含有するすべての製品において、かなり安いラノリン代替品として使用することができる。
【0023】
本発明は、限定されないが、以下の実施例によって説明されるだろう。
実施例1
温度70〜75℃で攪拌しながら、均一になるまで以下の成分を共に混合した:
成分 重量%
ダイズステロールC18飽和脂肪酸エステル 91.00
2−ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル(1) 4.00
3−ジイソステアリン酸ポリグリセリル(2) 4.00
オレイン酸グリセリル 1.00
【0024】
(1)ペンシルバニア州アンブラーのコグニス社ケア・ケミカルズ(Cognis Corp., Care Chemicals, Ambler, PA)によりDEHYMULS(登録商標)PGPHとして市販されている。
(2)ペンシルバニア州アンブラーのコグニス社ケア・ケミカルズによりLAMEFORM(登録商標)TGIとして市販されている。
(3)ペンシルバニア州アンブラーのコグニス社ケア・ケミカルズによりMONOMULS(登録商標)90−018 として市販されている。
Liebermann−Burkhart試験によって、羊毛脂由来のラノリンの存在について、上記の組成物を試験した。この試験はポジティブであり、つまり、この非ラノリン組成物は、動物ラノリンとのその類似性の点で固有である。
【0025】
実施例2
温度70〜75℃で均一になるまで以下の成分を共に混合することによって、組成物を製造した:
成分 重量%
実施例1の組成物 22.00
マイクロクリスタリンワックス(1) 7.00
PEG−5ダイズステロール(2) 10.70
ペトロラタム/鉱油(3) 60.30
【0026】
(1)ペンシルバニア州アンブラーのコグニス社ケア・ケミカルズ(Cognis Corp., Care Chemicals, Ambler, PA)によりマイクロクリスタリンワックスR191365として市販されている。
(2)ペンシルバニア州アンブラーのコグニス社ケア・ケミカルズにより、ポリエチレングリコールであるGENEROL(登録商標)122E−5PEGとして市販されている。
(3)ペンシルバニア州アンブラーのコグニス社ケア・ケミカルズによりOP7Y(商標)として市販されている。
【0027】
Liebermann−Burkhart試験によって、ラノリンの存在についてポジティブに、上記の組成物を試験した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)ポリオールエステル5〜20重量%と、
II)ペトロラタムとを含有するラノリン代替品とを含み、
ポリオールエステルの前記重量がペトロラタムの重量に基づくラノリン代替品。
【請求項2】
ポリオールエステルの前記重量が8〜12%である請求項1に記載のラノリン代替品。
【請求項3】
前記ポリオールエステルが、ソルビタン脂肪酸エステルおよびアルキルグリコシドエステルのうちの1種または複数種である請求項1又は2に記載のラノリン代替品。
【請求項4】
前記ポリオールエステルが、C4〜C22アルキルまたはアルケニル脂肪酸のソルビタン脂肪酸エステルである請求項1から3のいずれか1つに記載のラノリン代替品。
【請求項5】
前記脂肪酸が炭素原子6〜18個を含有する請求項4に記載のラノリン代替品。
【請求項6】
前記ポリオールエステルが、式I:

(式中、R1は、C1〜C20アルキルまたはアルケニル基であり、R2は、C3〜C21アルキルまたはアルケニル基であり、aは、1〜4の整数であり、Zは、炭素原子5個ないし6個を含有するサッカリド残基であり、bは、1〜6の数である)
で表されるアルキルグリコシドエステルである請求項1〜5のいずれか1つに記載のラノリン代替品。

【公開番号】特開2009−197236(P2009−197236A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103651(P2009−103651)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【分割の表示】特願2003−585655(P2003−585655)の分割
【原出願日】平成15年4月11日(2003.4.11)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】