説明

ラビリンチュラ菌門の微生物におけるタンパク質作製

本発明は、ラビリンチュラ菌門の組換え細胞および微生物、ならびに異種タンパク質作製におけるそれらの使用に関する。組換え宿主細胞および微生物からポリペプチドを効率的に作製するための、および任意でそれらから分泌させるための、新規のプロモーター、ターミネーター、およびシグナル配列も、本発明に包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ラビリンチュラ菌門(Labyrinthulomycota)の組換え細胞および微生物、ならびに異種タンパク質作製におけるそれらの使用に関する。組換え宿主細胞および微生物からのポリペプチドの効率的な作製のための、そして任意で分泌のための、新規のプロモーター、ターミネーター、およびシグナル配列も、本発明に包含される。
【背景技術】
【0002】
背景技術
バイオテクノロジーおよび分子生物学の進歩は、微生物細胞、植物細胞、および動物細胞におけるタンパク質の作製を可能にした。それらの多くは、以前には、ヒトおよびその他の動物の組織、血液、または尿からの抽出によってのみ入手可能であった。今日市販されている生物製剤は、典型的には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のような哺乳動物細胞、または酵母もしくは大腸菌(E.coli)の細胞株のような微生物細胞のいずれかにおいて製造されている。
【0003】
微生物の発酵を介したタンパク質の作製には、植物細胞および動物細胞の培養のような既存の系と比べて、いくつかの利点がある。例えば、微生物発酵に基づく過程は、(i)高濃度のタンパク質の迅速な作製;(ii)(GMP(Good Manufacturing Practice)条件のような)無菌のよく制御された作製条件を使用する能力;(iii)より単純な発酵およびより少ない不純物を可能にする、単純な化学的に明確な増殖培地を使用する能力;(iv)混入するヒトまたは動物の病原体の欠如;ならびに(v)(例えば、発酵培地からの単離を介した)タンパク質回収の容易さ:を与えることができる。さらに、発酵設備の構築は、典型的には、細胞培養設備より安価である。
【0004】
米国特許出願公開第2003/0166207号(現在の米国特許第7,001,772号)(特許文献1)は、シゾキトリウム(Schizochytrium)属のメンバーを含むヤブレツボカビ類(traustochytrids)を形質転換するために適している組換え構築物の最初の開示であった。この公開は、とりわけ、アセト乳酸合成酵素、アセト乳酸合成酵素のプロモーター領域およびターミネーター領域、αチューブリンプロモーター、ポリケチド合成酵素(PKS)系由来のプロモーター、ならびに脂肪酸不飽和化酵素プロモーターについてのシゾキトリウムの核酸配列およびアミノ酸配列を開示した。いずれも、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2006/0275904号(特許文献2)および第2006/0286650号(特許文献3)は、その後、アクチン、伸長因子1アルファ(ef1α)、およびグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(gadph)のプロモーターおよびターミネーターについてのシゾキトリウムの配列を開示した。
【0005】
例えば、異なる時点で、またはある種の増殖条件の下で、または化学的もしくは環境的な刺激に応答して、ディファレンシャルに発現される調節制御因子を含む、ヤブレツボカビ類微生物におけるタンパク質の発現のための付加的な調節制御因子の同定が、引き続き必要とされている。シゾキトリウムおよびその他のヤブレツボカビ類のような、ラビリンチュラ菌門およびヤブレツボカビ(Thraustochytriales)目の微生物からのタンパク質の分泌を効率的に指図することができる分泌シグナル配列の同定も、必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0166207号(現在の米国特許第7,001,772号)
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0275904号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0286650号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、SEQ ID NO:3のポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。
【0008】
本発明は、SEQ ID NO:4のポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。
【0009】
本発明は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド配列はSEQ ID NO:2を含む。
【0010】
本発明は、SEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド配列はSEQ ID NO:38を含む。
【0011】
本発明は、SEQ ID NO:42のポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド配列はSEQ ID NO:43を含む。
【0012】
本発明は、SEQ ID NO:44のポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:45のポリヌクレオチド配列を含む。
【0013】
本発明は、SEQ ID NO:46のポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。
【0014】
本発明は、前記のポリヌクレオチド配列のいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。
【0015】
本発明は、前記の単離された核酸分子のいずれかを含む組換え核酸分子にも関する。いくつかの態様において、組換え核酸分子はベクターである。
【0016】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に機能的に連結されている。いくつかの態様において、タンパク質は分泌シグナルに機能的に連結されている。
【0017】
本発明は、前記の単離された核酸分子もしくは組換え核酸分子のいずれかまたはそれらの組み合わせを含む宿主細胞にも関する。いくつかの態様において、宿主細胞はヤブレツボカビ目のメンバーである。いくつかの態様において、宿主細胞は、シゾキトリウムまたはヤブレツボカビ(Thraustochytrium)である。
【0018】
本発明は、タンパク質を作製するため、タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に機能的に連結された前記の単離された核酸分子のいずれかを含むヤブレツボカビ目の組換え微生物を培地中で培養することを含む、タンパク質の作製の方法にも関する。いくつかの態様において、タンパク質は、単離されたヤブレツボカビ目バイオマスから回収される。いくつかの態様において、タンパク質は微生物内に蓄積する。いくつかの態様において、タンパク質は微生物の膜内に蓄積する。いくつかの態様において、タンパク質は培養培地から回収される。いくつかの態様において、タンパク質は分泌される。
【0019】
本発明は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。
【0020】
本発明は、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。
【0021】
本発明は、(a)プロテアーゼ活性を有する酵素により宿主細胞を前処理すること、および(b)電気穿孔により核酸分子を宿主細胞へ導入すること:を含む、宿主細胞を形質転換する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】シゾキトリウムNa/Pi-IIIb2トランスポータータンパク質シグナルペプチドアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を示す。
【図2】SEQ ID NO:1のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:2)を示す。
【図3】シゾキトリウムPUFA PKS OrfCプロモーター領域ポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:3)を示す。
【図4】シゾキトリウムPUFA PKS OrfCターミネーター要素-1ポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:4)を示す。
【図5】pSchizEのプラスミドマップを示す。
【図6】pCO0001とも命名されているpSchiz-sGのプラスミドマップを示す。
【図7】pSchiz-sGrのプラスミドマップを示す。
【図8】pSchiz-cGのプラスミドマップを示す。
【図9】シゾキトリウム細胞の細胞質および小胞体(ER)におけるeGFP発現を示す。図9A、9C、および9Eは、蛍光顕微鏡写真である。図9B、9D、および9Fは、光学顕微鏡写真である。図9Aおよび9Bは、pSchiz-sGrにより形質転換された細胞の同一視野を示す。図9Cおよび9Dは、pSchiz-cGにより形質転換された細胞の同一視野を示す。図9Eおよび9Fは、pSchiz-Eにより形質転換された細胞の同一視野を示す。
【図10】図10Aは、pSchiz-sGrにより形質転換されたシゾキトリウム細胞における、ERにターゲティングされたeGFPと、核酸特異的な染料4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)との複合蛍光位置決定を示す。図10Bおよび10Cは、複合顕微鏡写真の作成において使用されたeGFP(ER染色)およびDAPI(核染色)をそれぞれ示す。図10Dは、同一視野の光学顕微鏡写真を示す。図10Aに示されるように、ER膜が細胞の各核を包囲しており、各細胞は複数個の核を含有することができる。1個の細胞の1個の核の関連する特色が示される。
【図11】4つのシゾキトリウム形質転換体クローンからの無細胞上清試料および無細胞抽出物試料のウエスタンブロットおよび対応するクーマシー染色SDS-PAGEゲルを示す。「sup」および「cyto」とは、それぞれ、無細胞上清および無細胞抽出物をさす。「sG」とは、pSchiz-sGにより形質転換された細胞からの試料をさす。「sGr」とは、pSchiz-sGrにより形質転換された細胞からの試料をさす。「cG」とは、pSchiz-cGにより形質転換された細胞からの試料をさす。「vec(-)」とは、pSchiz-E10により形質転換された細胞からの試料をさす。「GFP(+)」とは、精製された組換えGFP標準物(Clontech,Mountain View,CA)をさす。無細胞上清タンパク質試料3μgおよび無細胞抽出物タンパク質試料1μgがゲルに負荷された。各試料対と組換えGFP標準物と分子量マーカーとの間には、空のレーンが見出される。
【図12】シゾキトリウムSec1タンパク質トランスポータータンパク質の最初の30アミノ酸を示す。アミノ酸1〜20は、シグナルペプチド配列(SEQ ID NO:37)を構成する。
【図13】SEQ ID NO:37のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:38)を示す。
【図14】pCL0001とも命名されているpSchiz-Cpt-s1eGFPのプラスミドマップを示す。
【図15】図15Aは、異なる発酵条件(図15において定義されるような「B26」、「B27」、または「B28」発酵条件)の下で増殖したシゾキトリウムの3つの培養物からの、分泌型eGFPタンパク質についてのウエスタンブロットを示し、図15Bは、対応するクーマシー染色SDS-PAGEゲルを示す。レーン1〜19には、示された量のタンパク質が負荷された。LH=発酵時間(h)。図15Aのレーン20には、精製された組換えGFP標準物10ngが負荷され、図15Bのレーン20には、0.5μgが負荷された;シゾキトリウムに由来するeGFPバンドは、リンカー配列を含有しているため、対照バンドよりわずかに大きい。
【図16】pSchiz-Cpt-s1κbhのプラスミドマップを示す。
【図17】シゾキトリウムによるκ抗体サブユニットの分泌についてのウエスタンブロットを示す。L=無細胞抽出物;S=無細胞上清。
【図18】図18Aは、κ抗体サブユニットの発現についてのウエスタンブロットを示す。培養上清試料が入手されたインキュベーション時間が、図18Aの上に示される。「wt」とは「野生型」(即ち、形質転換されていない)シゾキトリウムをさす。「+cptS1κ」とは、ヒトκ抗体断片をコードするコドン最適化された遺伝子、ORFCプロモーターおよびターミネーター、ならびにSec1シグナルペプチドをコードする配列を含有しているベクターにより形質転換されたシゾキトリウムをさす。図18Bは、cptS1κにより形質転換されたシゾキトリウムの培養上清における、(Bradfordに従ってアッセイされた)全タンパク質および(ELISAを介してアッセイされた)抗体鎖κの蓄積を示す。
【図19】シゾキトリウムEF1ショートプロモーターポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:42)を示す。
【図20】シゾキトリウムEF1ロングプロモーターポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:43)を示す。
【図21】シゾキトリウム60Sショートプロモーターポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:44)を示す。
【図22】シゾキトリウム60Sロングプロモーターポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:45)を示す。
【図23】シゾキトリウムSec1プロモーターポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:46)を示す。
【図24】pAB0011のプラスミドマップを示す。
【図25】pAB0018のプラスミドマップを示す。
【図26】pAB0022のプラスミドマップを示す。
【図27】それぞれ、EF1プロモーター(ショートバージョン)、EF1プロモーター(ロングバージョン)、60Sプロモーター(ショートバージョン)、60Sプロモーター(ロングバージョン)、SEC1プロモーター、およびOrfCプロモーターにより駆動されるeGFP遺伝子を含有している発現ベクターにより形質転換されたシゾキトリウムの培養物から採取された無細胞上清試料におけるeGFPについてのウエスタンブロットを示す。
【図28】OrfCプロモーター(pCL0001-4)またはEF1-Lプロモーター(AB0018-9およびAB0018-10)のいずれかにより駆動されるeGFP発現に関連した形質転換体細胞株の蛍光顕微鏡検を示す。
【図29】過メチル化N-グリカンのNSI-フル(full)MS分析により決定されたような、ネイティブシゾキトリウム分泌型タンパク質上に検出されたN-グリカン構造を示す。
【図30】過メチル化N-グリカンのNSI-全イオンマッピング(Total Ion Mapping)により決定されたような、ネイティブシゾキトリウム分泌型タンパク質上に検出されたN-グリカン構造を示す。
【図31】pCL0076とも命名されているpSchiz-EPCT(+)-s1Suc2_CL0076のプラスミドマップを示す。
【図32】スクロース-SSFMで増殖したpCL0076により形質転換されたシゾキトリウムsp.ATCC20888の培養物からの細胞ペレットの乾燥重量(g/L)を示す。形質転換体は、1-1、1-3、1-24、3-1、3-2、3-5、3-21、4-1、4-24、および4-31と呼ばれる。「対照」とは、グルコース-SSFMで増殖した野生型シゾキトリウムsp.ATCC20888細胞をさす。
【図33】スクロース-SSFMで増殖したpCL0076により形質転換されたシゾキトリウムsp.ATCC20888の培養物からの細胞ペレットにおける(乾燥バイオマスの重量%として表された)脂肪含有量を示す。形質転換体は、1-1、1-3、1-24、3-1、3-2、3-5、3-21、4-1、4-24、および4-31と呼ばれる。「対照」とは、グルコース-SSFMで増殖した野生型シゾキトリウムsp.ATCC20888細胞をさす。
【図34】スクロース-SSFMで増殖したpCL0076により形質転換されたシゾキトリウムsp.ATCC20888の培養物についての経時的に測定された細胞ペレットの乾燥重量(g/L)を示す。形質転換体は1-3および3-5と呼ばれる。「対照」とは、グルコース-SSFMで増殖した野生型シゾキトリウムsp.ATCC20888細胞をさす。
【図35】スクロース-SSFMで増殖した2つの形質転換体の培養物からの細胞ペレットにおける(乾燥バイオマスの重量%として表された)脂肪含有量を示す。形質転換体は1-3および3-5と呼ばれる。「対照」とは、グルコース-SSFMで増殖した野生型シゾキトリウムsp.ATCC20888細胞をさす。
【図36】pCL0076により形質転換され、スクロース-SSFMにおける2日間または7日間の増殖の後に採集された、シゾキトリウム株B76-32の培養物からの細胞ペレットの乾燥重量(g/L)を示す。「2118*」とは、グルコース-SSFMで増殖した野生型シゾキトリウムsp.ATCC20888細胞のサブアイソレート(sub-isolate)をさす。「B76-32**」とは、グルコース-SSFMで増殖したB76-32親株をさす。
【図37】pCL0076により形質転換され、スクロース-SSFMにおける2日間または7日間の増殖の後に採集された、シゾキトリウム株B76-32の培養物からの細胞ペレットの脂肪含有量を示す。各試料についての右側のカラムは、乾燥バイオマスの重量%としての脂肪含有量を示す。各試料についての左側のカラムは、18以下の炭素(薄い灰色)または20以上の炭素(中程度の灰色)を含むアシル基から構成された全脂肪の%を示す。「2118*」とは、グルコース-SSFMで増殖した野生型シゾキトリウムsp.ATCC20888細胞のサブアイソレートをさす。「B76-32**」とは、グルコース-SSFMで増殖したB76-32親株をさす。
【図38】図38Aは、インベルターゼタンパク質についてのウエスタンブロットを示し、図38Bは、対応するクーマシー染色SDS-PAGEゲルを示す。S.セレビシエ(cerevisiae)インベルターゼ対照、およびpCL0076形質転換体1〜3の3日培養物の無細胞上清が、ウエスタンブロットの上に示されるように、それぞれ、5μg、2.5μg、1.25μg、および0.625μgの量で負荷された。
【図39】図39Aは、スクロース濃度の関数としての反応速度により図示されたインベルターゼ活性アッセイを示す。図39Bは、KmおよびVmaxを計算するために使用された標準的なラインウィーバーバークプロットを示す。
【図40A】図40Aは、過メチル化N-グリカンのNSI-全イオンマッピングにより決定されたようなシゾキトリウム分泌型タンパク質上に検出されたN-グリカン構造を示す。
【図40B】図40Bは、過メチル化N-グリカンのNSI-全イオンマッピングにより入手されたグリカン種の表を示す。
【図41A】図41Aおよび図41Bは、SignalPアルゴリズムの使用に基づくシゾキトリウムにネイティブの予測シグナル配列を示す。例えば、Bendsten et al.,J,Mol.Biol.340:783-795(2004);Nielsen and Krogh,Proc.Int.Conf.Intell.Syst.Mol.Biol.6:122-130(1998);Nielsen et al.,Protein Engineering 12:3-9(1999);Emanuelsson et al.,Nature Protocols 2:953-971(2007)を参照のこと。
【図41B】図41Aおよび図41Bは、SignalPアルゴリズムの使用に基づくシゾキトリウムにネイティブの予測シグナル配列を示す。例えば、Bendsten et al.,J,Mol.Biol.340:783-795(2004);Nielsen and Krogh,Proc.Int.Conf.Intell.Syst.Mol.Biol.6:122-130(1998);Nielsen et al.,Protein Engineering 12:3-9(1999);Emanuelsson et al.,Nature Protocols 2:953-971(2007)を参照のこと。
【図42】シゾキトリウムについてのコドン使用頻度表を示す。
【図43】pCL0120のプラスミドマップを示す。
【図44】クロコウジカビ(Aspergillus niger)由来の成熟Suc1インベルターゼ(GenBankアクセッション番号S33920)に融合した、シゾキトリウム由来のSec1シグナルペプチドをコードする、コドン最適化された核酸配列(SEQ ID NO:75)を示す。
【図45】pCL0137とも命名されているpCL0137_EPCT(+)-s1Suc1のプラスミドマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
シゾキトリウム、ヤブレツボカビ、およびその他のヤブレツボカビ類のようなラビリンチュラ菌門のメンバーは、従来の分泌経路を通してポリペプチドをプロセシングすることができる真核生物である。これらの微生物は、CHO細胞より少数の多量分泌型タンパク質を産生し、従って、シゾキトリウムの使用はCHO細胞より有利であることが認識されている。さらに、大腸菌とは異なり、シゾキトリウムのようなラビリンチュラ菌門のメンバーは、ある種のタンパク質の生物学的活性のために必要とされるN結合型グリコシル化のようなタンパク質グリコシル化を実施する。シゾキトリウムのようなヤブレツボカビ類が示すN結合型グリコシル化は、酵母グリコシル化より密接に哺乳動物グリコシル化パターンに類似していることが決定されている。
【0024】
組換えタンパク質の効率的な作製には、(i)選択された宿主細胞を形質転換する方法、(ii)形質転換体を選択するための選択マーカー、および(iii)特定の宿主細胞において機能する調節要素を含む発現カセット:も含まれる。そのような調節要素には、ポリヌクレオチド配列の発現を制御するために重要なプロモーター配列およびターミネーター配列が含まれる。本発明によると、調節要素、調節制御要素、および調節配列という用語は、交換可能に使用され得、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、シグナル配列、リボソーム結合部位、リプレッサー結合部位、ステムループ、およびイントロンスプライス部位である配列および/または分子を含むが、これらに限定されない。培養培地へのタンパク質分泌が望まれる場合には、タンパク質の分泌を指図する(シグナル配列、分泌シグナルペプチド、またはリーダー配列としても公知である)シグナルペプチドも、利用され得る。
【0025】
宿主細胞
本発明は、ラビリンチュラ菌門の微生物である宿主細胞におけるタンパク質の作製に関する。いくつかの態様において、ラビリンチュラ菌門の宿主細胞は、タンパク質作製のためのバイオ工場として使用される。
【0026】
いくつかの態様において、ラビリンチュラ菌門の組換え宿主細胞は、シゾキトリウムまたはヤブレツボカビのようなヤブレツボカビ類である。本発明によると、「ヤブレツボカビ類」という用語は、ヤブレツボカビ(Thraustochytriaceae)科を含むヤブレツボカビ目の任意のメンバーをさし、「ラビリンチュラ類(labyrinthulid)」という用語は、ラビリンチュラ(Labyrinthulaceae)科を含むラビリンチュラ(Labyrinthulales)目の任意のメンバーをさす。ラビリンチュラ科のメンバーは、以前には、ヤブレツボカビ目のメンバーであると見なされていたが、そのような生物の分類学的分類のより最近の修正において、ラビリンチュラ科は、ラビリンチュラ目のメンバーであると見なされるようになった。ラビリンチュラ目およびヤブレツボカビ目の両方が、ラビリンチュラ菌門のメンバーであると見なされている。分類学理論家は、現在、一般に、ストラメノパイル系統の藻類または藻類様の原生生物と共にこれらの微生物の群の両方を配置している。ヤブレツボカビ類およびラビリンチュラ類の現在の分類学的配置は、以下のように要約され得る:
界:ストラメノパイル界(Stramenopila)(クロミスタ界(Chromista))
門:ラビリンチュラ菌門(不等毛類(Heterokonta))
綱:ラビリンチュラ菌綱(Labyrinthulomycetes)(Labyrinthulae)
目:ラビリンチュラ目
科:ラビリンチュラ科
目:ヤブレツボカビ目
科:ヤブレツボカビ科
【0027】
本発明の目的のため、ヤブレツボカビ類として記載される株には、以下の生物が含まれる:目:ヤブレツボカビ目;科:ヤブレツボカビ科;属:ヤブレツボカビ属(種:アルジメンタレ(arudimentale)、アウレウム(aureum)、ベンチコラ(benthicola)、グロボスム(globosum)、キンネイ(kinnei)、モチブム(motivum)、ムルチルジメンタレ(multirudimentale)、パキデルマム(pachydermum)、プロリフェルム(proliferum)、ロゼウム(roseum)、ストリアツム(striatum))、ウルケニア(Ulkenia)属(種:アモエボイデア(amoeboidea)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、ミヌタ(minuta)、プロフンダ(profunda)、ラジアタ(radiata)、サイレンズ(sailens)、サルカリアナ(sarkariana)、シゾチトロプス(schizochytrops)、ビスルゲンシス(visurgensis)、ヨーケンシス(yorkensis))、シゾキトリウム属(種:アグレガツム(aggregatum)、リムナセウム(limnaceum)、マングロベイ(mangrovei)、ミヌツム(minutum)、オクトスポルム(octosporum))、ジャポノチトリウム(Japonochytrium)属(種:マリヌム(marinum))、アプラノチトリウム(Aplanochytrium)属(種:ハリオチジス(haliotidis)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、プロフンダ(profunda)、ストッキノイ(stocchinoi) )、アルソルニア(Althornia)属(種:クロウチイ(crouchii))、またはエリナ(Elina)属(種:マリサルバ(marisalba)、シノリフィカ(sinorifica))。本発明の目的のため、ウルケニア属内に記載された種は、ヤブレツボカビ属のメンバーであると見なされるであろう。アウランチアコチトリウム(Aurantiacochytrium)およびオブロゴスポラ(Oblogospora)は、本発明におけるラビリンチュラ菌門に包含される二つの付加的な属である。
【0028】
ラビリンチュラ類として本発明において記載される株には、以下の生物が含まれる:目:ラビリンチュラ目、科:ラビリンチュラ科、属:ラビリンチュラ属(種:アルゲリエンシス(algeriensis)、コエノシスティス(coenocystis)、チャットニイ(chattonii)、マクロシスティス(macrocystis)、マクロシスティス・アトランティカ(macrocystis atlantica)、マクロシスティス・マクロシスティス(macrocystis macrocystis)、マリナ(marina)、ミヌタ、ロスコフェンシス(roscoffensis)、バルカノビイ(valkanovii)、ビテリナ(vitellina)、ビテリナ・パシフィカ(vitellina pacifica)、ビテリナ・ビテリナ(vitellina vitellina)、ゾプフィ(zopfii))、ラビリンツロイデス(Labyrinthuloides)属(種:ハリオチジス(haliotidis)、ヨーケンシス )、ラビリントミクサ(Labyrinthomyxa)属(種:マリナ)、ジプロフリス(Diplophrys)属(種:アルケリ(archeri))、ピロソルス(Pyrrhosorus)属(種:マリヌス(marinus))、ソロジプロフリス(Sorodiplophrys)属(種:ステルコレア(stercorea))、またはクラミドミクサ(Chlamydomyxa)属(種:ラビリンツロイデス、モンタナ(montana))(ただし、ピロソルス、ソロジプロフリス、またはクラミドミクサの正確な分類学的配置については現在コンセンサスが存在しない)。
【0029】
ラビリンチュラ菌門の宿主細胞には、寄託された株PTA-10212、PTA-10213、PTA-10214、PTA-10215、PTA-9695、PTA-9696、PTA-9697、PTA-9698、PTA-10208、PTA-10209、PTA-10210、PTA-10211、(寄託者により「ウルケニアSAM2179」と命名された)SAM2179として寄託された微生物、(U.ビスルゲンシス、U.アモエボイダ(amoeboida)、U.サルカリアナ、U.プロフンダ、Uラジアタ、U.ミヌタ、およびウルケニアsp.BP-5601のような前ウルケニア種を含み)、トラウストチトリウム(Thraustochytrium)ストリアツム、トラウストチトリウム・アウレウム、トラウストチトリウム・ロゼウムを含む任意のヤブレツボカビ種;ならびに任意のジャポノチトリウム種が含まれるが、これらに限定されない。ヤブレツボカビ目の株には、トラウストチトリウムsp.(23B)(ATCC20891);トラウストチトリウム・ストリアツム(シュネイダー(Schneider))(ATCC24473);トラウストチトリウム・アウレウム(ゴールドステイン(Goldstein))(ATCC34304);トラウストチトリウム・ロゼウム(ゴールドステイン)(ATCC28210);およびジャポノチトリウムsp.(L1)(ATCC28207)が含まれるが、これらに限定されない。シゾキトリウムには、シゾキトリウム・アグレガツム、シゾキトリウム・リマシヌム(limacinum)、シゾキトリウムsp.(S31)(ATCC20888)、シゾキトリウムsp.(S8)(ATCC20889)、シゾキトリウムsp.(LC-RM)(ATCC18915)、シゾキトリウムsp.(SR 21)、寄託された株ATCC28209、および寄託されたシゾキトリウム・リマシヌム株IFO32693が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、宿主細胞はシゾキトリウムまたはヤブレツボカビである。シゾキトリウムは、連続分裂によっても、最終的に遊走子を放出する遊走子嚢の形成によっても複製することができる。しかしながら、ヤブレツボカビは、遊走子嚢を形成し、次いで、それが遊走子を放出することによってのみ複製する。いくつかの態様において、本発明の宿主細胞は組換え宿主細胞である。
【0030】
本発明の宿主細胞のための有効な培養条件には、タンパク質の産生および/または組換えを許容する有効な培地、バイオリアクタ、温度、pH、および酸素の条件が含まれるが、これらに限定されない。有効な培地とは、ヤブレツボカビ目細胞、例えば、シゾキトリウム宿主細胞が典型的に培養される任意の培地をさす。そのような培地には、典型的には、同化可能な炭素源、窒素源、およびリン酸源を有し、さらに、適切な塩、ミネラル、金属、およびビタミンのようなその他の栄養素を有する水性培地が含まれる。適当な培地および培養条件の非限定的な例は、実施例セクションに開示される。ヤブレツボカビ目微生物にとって適当な非限定的な培養条件は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,340,742号にも記載されている。本発明の細胞は、従来の発酵バイオリアクタ、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、およびペトリ皿において培養され得る。培養は、組換え細胞にとって適切な温度、pH、および酸素含有量で実施され得る。いくつかの態様において、本発明のラビリンチュラ菌門宿主細胞は、選択マーカーをコードする核酸配列を含む組換えベクターを含有している。いくつかの態様において、選択マーカーは、形質転換された微生物の選択を可能にする。優性選択(dominant selection)マーカーの例には、例えば、SEQ ID NO:5により表される「ブレオマイシン結合タンパク質」をコードするストレプトアロテイクス・ヒンダスタヌス(Steptoalloteichus hindustanus)由来のSh ble遺伝子のような、抗菌活性または殺真菌活性を有する化合物を分解する酵素が含まれる。いくつかの態様において、優性選択マーカーをコードする核酸配列には、SEQ ID NO:6のポリヌクレオチド配列の変異バージョンのようなヤブレツボカビ類アセト乳酸合成酵素配列が含まれる。いくつかの態様において、アセト乳酸合成酵素は、スルホニル尿素化合物、イミダゾリノン系阻害剤、および/またはピリミジニルオキシ安息香酸類(pyrimidinyl oxybenzoates)による阻害に対して耐性となるよう修飾されるか、変異させられるか、またはその他の様式で選択される。いくつかの態様において、アセト乳酸合成酵素は、天然に存在するアセト乳酸合成酵素のホモログである。いくつかの態様において、アセト乳酸合成酵素を含む組換えベクターによりトランスフェクトされたヤブレツボカビ類微生物は、スルホニル尿素化合物、イミダゾリノン系阻害剤、および/またはピリミジニルオキシ安息香酸類に対する低下した感受性を有する。いくつかの態様において、組換えベクターは、以下の位置のうちの一つまたは複数におけるアミノ酸の欠失、挿入、または置換により、SEQ ID NO:7と異なるアミノ酸配列を含むアセト乳酸合成酵素タンパク質をコードする核酸配列を含む:116G、117A、192P、200A、251K、358M、383D、592V、595W、または599F。いくつかの態様において、変異型アセト乳酸合成酵素タンパク質は、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、およびSEQ ID NO:10:からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、組換えベクターは、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、またはSEQ ID NO:10と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であって、かつ少なくともヤブレツボカビ類において優性選択マーカーとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、組換えベクターは、少なくともヤブレツボカビ類において優性選択マーカーとして機能するSEQ ID NO:7の機能的断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、組換えベクターは、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびSEQ ID NO:13からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0031】
本発明によると、「形質転換」という用語は、外来性の核酸分子(即ち、組換え核酸分子)が微生物細胞に挿入され得る任意の方法をさすために使用される。微生物系において、「形質転換」という用語は、微生物による外来性の核酸の取得による遺伝性の変化を記載するために使用され、「トランスフェクション」という用語と本質的に同義である。ラビリンチュラ菌門宿主細胞へ外来性の核酸分子を導入するための適当な形質転換技術には、微粒子銃、電気穿孔、微量注入、リポフェクション、吸着、感染、および原形質融合が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、組換えベクターを含む、外来性の核酸分子は、静止期の微生物細胞へ導入される。いくつかの態様において、組換えベクターを含む、外来性の核酸分子は、対数増殖期の微生物細胞へ導入される。いくつかの態様において、組換えベクターを含む、外来性の核酸分子は、600nmで1.5〜2の光学密度に到達した時、細胞へ導入される。
【0032】
本発明は、(a)プロテアーゼ活性を有する酵素により宿主細胞を前処理すること、および(b)電気穿孔により宿主細胞へ核酸分子を導入すること:を含む、宿主細胞を形質転換する方法にも関する。いくつかの態様において、宿主細胞は、電気穿孔前に酵素前処理を行った後の方が、酵素前処理を行わない場合よりも、高い効率で形質転換される。酵素には、カタツムリアセトン粉末、プロテアーゼIX、プロテアーゼXIV、スルファターゼ、βグルクロニダーゼ、およびそれらの組み合わせに関連した酵素活性が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、宿主細胞は、約0.05mg/ml、約0.1mg/ml、約0.15mg/ml、約0.2mg/ml、約0.25mg/ml、約0.3mg/ml、約0.4mg/ml、約0.5mg/ml、約0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、または約1mg/mlの、カタツムリアセトン粉末、プロテアーゼIX、プロテアーゼXIV、またはそれらの組み合わせにより前処理される。いくつかの態様において、宿主細胞は、約0.05mg/ml〜約1mg/ml、約0.1mg/ml〜約1mg/ml、約0.1mg/ml〜約0.5mg/ml、または約0.05mg/ml〜約0.5mg/mlの、カタツムリアセトン粉末、プロテアーゼIX、プロテアーゼXIV、またはそれらの組み合わせにより処理される。いくつかの態様において、宿主細胞は、0.05X、0.1X、0.2X、0.3X、0.4X、0.5X、0.6X、0.7X、0.8X、0.9X、または1Xの、スルファターゼ、βグルクロニダーゼ、またはそれらの組み合わせにより処理される。いくつかの態様において、宿主細胞は、約0.05X〜約0.1X、約0.1X〜約1X、約0.1X〜約0.5X、または約0.05X〜約0.5Xの、スルファターゼ、βグルクロニダーゼ、またはそれらの組み合わせにより処理される。いくつかの態様において、プロテアーゼ前処理には、上記濃度のいずれかにおける、プロテアーゼIX、プロテアーゼXIV、カタツムリアセトン粉末、スルファターゼ、βグルクロニダーゼ、またはそれらの組み合わせによる前処理が含まれる。いくつかの態様において、電気穿孔は、0.1cmまたは0.2cmのキュベットギャップ距離で、約100V〜約500Vの電位で行われる。いくつかの態様において、電気穿孔は、0.1cmまたは0.2cmのキュベットギャップ距離で、約100V、150V、200V、250V、300V、350V、400V、450V、または500Vの電位で行われる。
【0033】
本発明のいくつかの態様において、宿主細胞は、グリコシル化に関与するものを含む、炭水化物の輸送および/または合成に関連した生合成経路に関与する遺伝子を導入するかまたは欠失させるために遺伝学的に修飾される。例えば、宿主細胞は、グリコシル化パターンをヒトのものにより密接に類似させるため、内在性グリコシル化遺伝子を欠失させ、かつ/またはヒトもしくは動物のグリコシル化遺伝子を挿入することにより、修飾され得る。酵母におけるグリコシル化の修飾は、例えば、米国特許第7,029,872号、ならびに米国公開第2004/0171826号、第2004/0230042号、第2006/0257399号、第2006/0029604号、および第2006/0040353号に見出され得る。本発明の宿主細胞には、遺伝子発現を増加させるかまたは調節するためにRNAウイルス要素が利用される細胞も含まれる。
【0034】
発現系
いくつかの態様において、宿主細胞におけるタンパク質の発現のために使用される本発明の発現系は、藻類細胞において活性である調節制御要素を含む。いくつかの態様において、本発明の発現系は、ラビリンチュラ菌門細胞において活性である調節制御要素を含む。いくつかの態様において、本発明の発現系は、ヤブレツボカビ類において活性である調節制御要素を含む。いくつかの態様において、本発明の発現系は、シゾキトリウムまたはヤブレツボカビにおいて活性である調節制御要素を含む。様々なプロモーターを含む、多くの藻類の調節制御要素が、多数の多様な種において活性を有する。従って、本発明の局面として開示される新規の調節配列は、それらが単離された細胞と同一である細胞型において利用されてもよいし、またはそれらが単離された細胞とは異なる細胞型において利用されてもよい。そのような発現カセットの設計および構築は、当業者に公知の標準的な分子生物学技術を使用する。例えば、Sambrook et ah,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd editionを参照のこと。
【0035】
いくつかの態様において、ラビリンチュラ菌門細胞におけるタンパク質作製のために使用される発現系は、ラビリンチュラ菌門配列に由来する調節要素を含む。いくつかの態様において、ラビリンチュラ菌門細胞においてタンパク質を作製するために使用される発現系は、非ラビリンチュラ菌門藻類配列に由来する配列を含む、非ラビリンチュラ菌門配列に由来する調節要素を含む。いくつかの態様において、本発明の発現系は、ラビリンチュラ菌門宿主細胞において機能的なプロモーター配列、ターミネーター配列、および/またはその他の調節配列に関連している、タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。誘導可能配列が使用されてもよいし、または常時活性型配列が使用されてもよい。適当な調節制御要素には、本明細書に記載された核酸分子に関連した調節制御要素のいずれかも含まれる。
【0036】
本発明は、宿主細胞におけるタンパク質の発現のための発現カセットにも関する。本発明は、宿主細胞におけるタンパク質の発現のための発現カセットを含む前記の宿主細胞のいずれかにも関する。いくつかの態様において、発現系は、宿主細胞において機能的であるような方式で機能的に連結された、少なくともプロモーター、コーディング配列、およびターミネーター領域のような遺伝要素を含有している発現カセットを含む。いくつかの態様において、発現カセットは、本明細書に記載されるような本発明の単離された核酸分子のうちの少なくとも一つを含む。いくつかの態様において、発現カセットの遺伝要素は、全て、単離された核酸分子に関連した配列である。いくつかの態様において、制御配列は誘導可能配列である。いくつかの態様において、タンパク質をコードする核酸配列は、宿主細胞のゲノムに組み込まれる。いくつかの態様において、タンパク質をコードする核酸配列は、宿主細胞のゲノムに安定的に組み込まれる。
【0037】
いくつかの態様において、発現すべきタンパク質をコードする単離された核酸配列は、いずれも宿主細胞において機能的であるプロモーター配列および/またはターミネーター配列に機能的に連結される。発現すべきタンパク質をコードする単離された核酸配列が機能的に連結されるプロモーター配列および/またはターミネーター配列には、タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド配列に機能的に連結された、本発明の新規の核酸配列、発行された米国特許第7,001,772号に開示された調節配列、米国公開第2006/0275904号および第2006/0286650号に開示された調節配列、または形質転換される宿主細胞において機能的なその他の調節配列を含むが、これらに限定されない、任意のプロモーター配列および/またはターミネーター配列が含まれ得る。いくつかの態様において、タンパク質をコードする核酸配列は、翻訳効率を最大限にするため、特定のラビリンチュラ菌門宿主細胞のためにコドン最適化される。
【0038】
本発明は、本発明の発現カセットを含む組換えベクターにも関する。組換えベクターには、プラスミド、ファージ、およびウイルスが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、組換えベクターは直鎖化されたベクターである。いくつかの態様において、組換えベクターは発現ベクターである。本明細書において使用されるように、「発現ベクター」という語句は、コードされた産物(例えば、関心対照のタンパク質)の産生のために適しているベクターをさす。いくつかの態様において、作製すべき産物をコードする核酸配列は、組換え核酸分子を作製するため、組換えベクターへ挿入される。作製すべきタンパク質をコードする核酸配列は、核酸配列がベクター内の調節配列(例えば、ヤブレツボカビ目プロモーター)に機能的に連結され、それにより、組換え微生物における核酸配列の転写および翻訳が可能となる様式で、ベクターへ挿入される。いくつかの態様において、本明細書に記載された選択可能マーカーのいずれかを含む、選択可能マーカーが、本発明の組換え核酸分子が成功裡に導入された組換え微生物の選択を可能にする。
【0039】
いくつかの態様において、本発明の組換え宿主細胞により産生されるタンパク質には、治療用タンパク質が含まれるが、これに限定されない。「治療用タンパク質」には、本明細書において使用されるように、動物およびヒトにおける疾患、状態、または障害の処置または防止のために有用なタンパク質が含まれる。「処置する」および「処置」という用語は、いずれも、望まれない生理学的状態、疾患、もしくは障害を防止するかもしくは減速(減弱)させること、または有益なもしくは所望の臨床的結果を入手することを目的とする、治療的処置、および予防的または防止的な措置の両方をさす。本発明の目的のため、有益なまたは所望の臨床的結果には、状態、疾患、もしくは障害に関連した症状もしくは兆候の軽減;状態、疾患、もしくは障害の程度の縮小;状態、疾患、もしくは障害の安定化(即ち、状態、疾患、もしくは障害が悪化しない);状態、疾患、もしくは障害の発症もしくは進行の遅延;状態、疾患、もしくは障害の寛解;状態、疾患、もしくは障害の(部分的であってもよいし完全であってもよく、検出可能であってもよいし検出不可能であってもよい)緩解;または状態、疾患、もしくは障害の増強もしくは改善が含まれるが、これらに限定されない。処置には、過度の副作用を伴わない臨床的に有意な応答の誘発が含まれる。処置には、処置を受けない場合の予想生存期間と比較した生存期間の延長も含まれる。
【0040】
ある種の態様において、治療用タンパク質には、生物学的活性を有するタンパク質、例えば、酵素、抗体、または抗原性タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。ある種の態様において、治療用タンパク質には、プロテインA、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、アプロチニン、ヒトαアンチトリプシン、親油性タンパク質、ヒト血清アルブミン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、胃リパーゼ、ラクトフェリン/リゾチーム、インベルターゼ、(VEGFモノクローナル抗体(AVASTIN(登録商標))およびHER2モノクローナル抗体(HERCEPTIN(登録商標))を含むが、これらに限定されない)抗体、ヒトワクチン、動物ワクチン、および動物治療薬:が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
いくつかの態様において、本発明の組換え宿主細胞により産生されるタンパク質には、産業用酵素が含まれるが、これに限定されない。産業用酵素には、食品、医学的製品、化学的製品、機械的製品、およびその他の工業製品を含む、製品の製造、調製、保存、栄養動員(mutrient mobilization)、または加工において使用される酵素が含まれるが、これらに限定されない。産業用酵素には、αアミラーゼ、αガラクトシダーゼ、βアミラーゼ、セルロース、βグルカナーゼ、デキストラナーゼ、デキストリナーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ/ペントサナーゼ、キシラナーゼ、インベルターゼ、ラクターゼ、ナリンギナーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼ、酸性プロテイナーゼ、アルカリプロテアーゼ、ブロメライン、パパイン、ペプシン、アミノペプチダーゼ、エンドペプチターゼ(トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、エラスターゼ)、レンネット/レンニン/キモシン、スブチリシン、サーモリシン、アミノアシラーゼ、グルタミナーゼ、リゾチーム、ペニシリンアシラーゼ、トリグリセリダーゼ、ホスホリパーゼ、プレガストリック(pregastric)エステラーゼ、フィターゼ、アミダーゼ、イソメラーゼ、アルコール脱水素酵素、アミノ酸オキシダーゼ、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アセト乳酸デカルボキシラーゼ、アスパラギン酸βデカルボキシラーゼ、ヒスチダーゼ、シクロデキストリン糖転移酵素、フロマーゼ、フィターゼ、およびキモシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
いくつかの態様において、本発明の組換え宿主細胞により産生されるタンパク質には、栄養要求性マーカー、(例えば、抗菌活性を分解する酵素のような)優性選択マーカー、または形質転換選択に関与する別のタンパク質、レポーターとして機能するタンパク質、タンパク質グリコシル化に関与する酵素、および細胞代謝に関与する酵素が含まれる。
【0043】
本発明の態様のいずれかにおいて、本発明の宿主細胞により産生されるタンパク質は、「出力タンパク質」または「異種出力タンパク質」であり得る。「出力タンパク質」または「異種出力タンパク質」とは、本明細書において使用されるように、そのタンパク質を産生する宿主細胞の代謝の修飾には関与せず、後の単離のため、宿主細胞により産生される異種組換えタンパク質をさす。本明細書において定義されるように、「出力タンパク質」には、レポーター遺伝子によりコードされたタンパク質は含まれない。
【0044】
本発明の組換え宿主細胞により産生される異種出力タンパク質には、Zeocin耐性遺伝子(例えば、ストレプトアロテイクス・ヒンダスタヌス由来のble遺伝子)および大腸菌ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(npt)のような選択可能マーカー、およびトランスポゾンTn5、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)由来のブラストサイジンデアミナーゼ(bsdR)、ヤブレツボカビT23B由来のPUFA合成酵素ORFA、ヤブレツボカビT23B由来のPUFA合成酵素ORFB、ヤブレツボカビT23B由来のPUFA合成酵素ORFC、オワンクラゲ(Aequorea victoria)由来の合成eGFP、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびアラキドン酸(ARA)からなる群より選択される脂肪酸の合成に関連したタンパク質をコードするネイティブ遺伝子、脂肪酸合成酵素、脂肪酸不飽和化酵素、脂肪酸伸長酵素、ポリケチド合成酵素複合体に関連したタンパク質およびリン脂質またはトリアシルグリセロール分子への脂肪酸の取り込みに関連したタンパク質、ω-3脂肪酸不飽和化酵素、ポリエン脂肪酸イソメラーゼ、HMG-CoA合成酵素、HMG-CoA還元酵素、スクアレン合成酵素、フィトエン合成酵素、フィトエン不飽和化酵素、カロテノイドシクラーゼ、カロテノイドヒドロキシラーゼ、カロテノイドケトラーゼ、ビタミンEおよびリポ酸、イソプレノイド生合成経路に関連したタンパク質、ならびに多価不飽和脂肪酸またはカロテノイドの宿主細胞による産生に関与する酵素は含まれない。
【0045】
いくつかの態様において、本発明の宿主細胞により産生されるタンパク質は、産業的な規模で作製される。産業的な規模には、100L以上、1,000L以上、10,000L以上、または100,000L以上のサイズの曝気発酵槽で増殖した微生物からのタンパク質の作製が含まれる。いくつかの態様において、産業的な規模の作製は、撹拌式の曝気発酵槽においてなされる。
【0046】
いくつかの態様において、本発明の宿主細胞により産生されるタンパク質は、細胞内に蓄積してもよいし、または、可溶性タンパク質として、細胞から、例えば、培養培地へ分泌されてもよい。
【0047】
いくつかの態様において、本発明により作製されるタンパク質は、細胞、細胞が増殖した培養培地または発酵培地から回収される。いくつかの態様において、タンパク質は、可溶性タンパク質として培養培地から回収される分泌型タンパク質である。いくつかの態様において、タンパク質はシグナルペプチドを含む分泌型タンパク質である。
【0048】
いくつかの態様において、本発明により作製されるタンパク質は、小胞体への保持を指図するか、細胞外分泌を指図するか、またはその他のオルガネラもしくは細胞コンパートメントへそれを差し向けるターゲティングシグナルを含む。いくつかの態様において、タンパク質はシグナルペプチドを含む。いくつかの態様において、タンパク質は、Na/Pi-IIb2トランスポーターシグナルペプチドまたはSec1輸送タンパク質を含む。いくつかの態様において、シグナルペプチドは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:37のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドを含むタンパク質は、培養培地へ分泌される。いくつかの態様において、シグナルペプチドは、分泌過程の間にタンパク質から切断され、成熟型のタンパク質をもたらす。
【0049】
いくつかの態様において、本発明の宿主細胞により産生されるタンパク質は、グリコシル化される。いくつかの態様において、本発明により作製されるタンパク質のグリコシル化パターンは、酵母または大腸菌において産生されるタンパク質より密接に哺乳動物グリコシル化パターンに類似している。いくつかの態様において、本発明のラビリンチュラ菌門宿主細胞により産生されるタンパク質は、N結合型グリコシル化パターンを含む。治療目的のために使用されるグリコシル化タンパク質は、グリコシル化パターンが、対象生物に見出されるグリコシル化パターンと類似している場合、抗グリコフォーム免疫応答を促進する可能性がより低い。反対に、対象生物に特徴的でない結合または糖を有するグリコシル化タンパク質は、抗原性である可能性がより高い。エフェクター機能も、特定のグリコフォームによりモジュレートされ得る。例えば、IgGは、Fc領域グリコフォーム上の末端シアル酸の欠如または存在と相関して、それぞれ、炎症促進反応または抗炎症反応を媒介することができる(Kaneko et al,Science 313(5787):670-3(2006))。
【0050】
本発明は、タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を発現するのに十分な条件の下で、本発明の組換えラビリンチュラ菌門宿主細胞を培養することを含む、組換えタンパク質を作製する方法にさらに関する。いくつかの態様において、組換えタンパク質は、宿主細胞から分泌され、培養培地から回収される。いくつかの態様において、細胞から分泌されるタンパク質は、分泌シグナルペプチドを含む。作製のために使用されるベクターおよび宿主系に依って、本発明の組換えタンパク質は、組換え細胞内に残存してもよいし、発酵培地へ分泌されてもよいし、二つの細胞膜の間の空間へ分泌されてもよいし、または細胞膜の外表面に保持されてもよい。本明細書において使用されるように、「タンパク質を回収すること」という語句は、タンパク質を含有している発酵培地を収集することをさし、付加的な分離または精製の工程を必ずしも暗示しない。本発明の方法により作製されたタンパク質は、アフィニティクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、コンカナバリンAクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、および分画可溶化のような(これらに限定されない)多様な標準的なタンパク質精製技術を使用して、精製され得る。いくつかの態様において、本発明の方法により作製されたタンパク質は、「実質的に純粋な」型で単離される。本明細書において使用されるように、「実質的に純粋な」とは、商業的な製品としてのタンパク質の有効な使用を可能にする純度をさす。いくつかの態様において、組換えタンパク質は、細胞内に蓄積し、細胞から回収される。いくつかの態様において、本法の宿主細胞はヤブレツボカビ類である。いくつかの態様において、本法の宿主細胞はシゾキトリウムまたはヤブレツボカビである。いくつかの態様において、組換えタンパク質は、治療用タンパク質、食物酵素、または産業用酵素である。いくつかの態様において、組換えラビリンチュラ菌門宿主細胞は、シゾキトリウムであり、組換えタンパク質は、分泌シグナル配列を含む治療用タンパク質である。
【0051】
いくつかの態様において、本発明の組換えベクターは、ターゲティングベクターである。本明細書において使用されるように、「ターゲティングベクター」という語句は、宿主細胞内の内在性遺伝子を欠失させるかまたは不活化するために使用される特定の核酸分子を、組換え細胞へ送達するために使用される(即ち、特異的遺伝子破壊またはノックアウト技術のために使用される)ベクターをさす。そのようなベクターは、「ノックアウト」ベクターとしても公知である。いくつかの態様において、ターゲティングベクターの一部分は、宿主細胞における標的遺伝子(即ち、欠失または不活化の標的とされた遺伝子)の核酸配列に相同な核酸配列を有する。いくつかの態様において、ベクターに挿入される核酸分子(即ち、インサート)は、標的遺伝子に相同である。いくつかの態様において、ベクターインサートの核酸配列は、標的遺伝子およびインサートが相同的組換えを受け、それによって(即ち、内在性標的遺伝子の少なくとも一部分の変異または欠失により)内在性標的遺伝子が欠失、不活化、または減弱を受けるよう、標的遺伝子と結合するよう設計される。
【0052】
単離された核酸分子
本発明は、組換え宿主細胞における遺伝子発現を調節し、かつ/またはタンパク質分泌を指図するために使用され得る、単離された核酸分子またはポリヌクレオチド配列にも関する。本明細書に記載された核酸配列は、プロモーター、終結配列、およびシグナルペプチドをコードする核酸配列を含み、相同タンパク質または異種タンパク質の転写および/または分泌を調節するために利用され得る。
【0053】
本発明によると、単離された核酸分子とは、その天然環境から除去された(即ち、ヒトの操作を受けた)核酸分子である。ここで、天然環境とは、自然界においてその核酸分子が見出されるゲノムまたは染色体である。従って、「単離された」とは、核酸分子が精製されている程度を必ずしも反映せず、自然界においてその核酸分子が見出されるゲノム全体または染色体全体を、分子が含まないことを示す。単離された核酸分子には、DNA、RNA(例えば、mRNA)、またはDNAもしくはRNAのいずれかの誘導体(例えば、cDNA)が含まれ得る。「核酸分子」という語句は、物理的な核酸分子を主としてさすが、「核酸配列」または「ポリヌクレオチド配列」という語句は、核酸分子のヌクレオチド配列を主としてさし、これらの語句は、特に、タンパク質をコードすることができる核酸分子、ポリヌクレオチド配列、または核酸配列に関して、交換可能に使用される。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)または化学合成を使用して作製される。単離された核酸分子には、天然の対立遺伝子バリアント、ならびにコードされたペプチドまたはタンパク質の配列、機能、および/または生物学的活性に対する所望の効果を提供するような様式で、ヌクレオチドの挿入、欠失、置換、および/または反転を有する修飾された核酸分子を含むが、これらに限定されない、天然の核酸分子およびそれらのホモログが含まれる。
【0054】
本発明のプロモーター配列、ターミネーター配列、シグナルペプチド配列、またはその他の配列の核酸配列相補鎖とは、本発明のプロモーター配列、ターミネーター配列、シグナルペプチド配列、またはその他の配列を含む鎖に相補的な核酸鎖の核酸配列をさす。本発明の配列を含有している二本鎖DNAは、一本鎖DNAと、その一本鎖DNAの相補鎖である配列を有する相補的な鎖とを含むことが認識されるであろう。従って、本発明の核酸分子は、二本鎖または一本鎖のいずれかであり得、本発明の配列および/または本発明の配列の相補鎖と共に「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件の下で安定的なハイブリッドを形成する核酸分子を含む。相補的な配列を推定する方法は、当業者に公知である。
【0055】
「タンパク質」という用語には、単鎖ポリペプチド分子も含まれるし、個々の構成ポリペプチドが共有結合性または非共有結合性の手段により連結されている多重ポリペプチド複合体も含まれる。「ポリペプチド」という用語には、2アミノ酸以上の長さであり、典型的には、5個より多い、10個より多い、または20個より多いアミノ酸を有するペプチドが含まれる。
【0056】
本発明の新規核酸分子は、それらが機能的である任意の微生物において利用され得る。いくつかの態様において、核酸分子はラビリンチュラ菌門の組換え微生物において利用される。いくつかの態様において、組換え核酸分子はヤブレツボカビ目の組換え微生物において利用される。いくつかの態様において、組換え核酸分子はシゾキトリウムまたはヤブレツボカビの微生物において利用される。本明細書において使用されるように、組換え微生物は、組換え技術を使用して、その正常な(即ち、野生型の、または天然に存在する)型から修飾された(即ち、変異または変化させられた)ゲノムを有する。本発明に係る組換え微生物には、微生物における所望の効果を提供するような様式で、核酸分子が挿入、欠失、または修飾を有する(即ち、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、置換、および/または反転により変異させられた)微生物が含まれ得る。本明細書において使用されるように、遺伝子発現、遺伝子の機能、または遺伝子産物(即ち、遺伝子によりコードされたタンパク質)の機能の減少をもたらす遺伝学的修飾は、遺伝子の不活化(完全もしくは部分的)、欠失、妨害、阻止、またはダウンレギュレーションとも呼ばれる。例えば、そのような遺伝子によりコードされたタンパク質の機能の減少をもたらす遺伝子の遺伝学的修飾は、遺伝子の完全な欠失(即ち、遺伝子が組換え微生物に存在せず、従って、タンパク質が組換え微生物に存在しない)、タンパク質の不完全な翻訳もしくは不翻訳をもたらす遺伝子の変異(例えば、タンパク質が発現されない)、またはタンパク質の天然の機能を減少させるかもしくは排除する遺伝子の変異(例えば、活性、例えば、酵素活性もしくは酵素作用が減少しているかもしくは全くないタンパク質が発現される)の結果であり得る。遺伝子の発現または機能の増加をもたらす遺伝学的修飾は、遺伝子の増幅、過剰産生、過剰発現、活性化、増強、付加、またはアップレギュレーションとも呼ばれる。
【0057】
プロモーター
本発明は、プロモーターである新規の調節制御要素にも関する。本発明のプロモーターは、関連するコーディング領域の転写を指図するDNAの領域である。
【0058】
いくつかの態様において、プロモーターはラビリンチュラ菌門の微生物に由来する。いくつかの態様において、プロモーターは、(寄託者により「ウルケニアSAM2179」と命名された)SAM2179として寄託された微生物、ウルケニア属もしくはヤブレツボカビ属の微生物、またはシゾキトリウムを含むが、これらに限定されない、ヤブレツボカビ類に由来する。シゾキトリウムには、シゾキトリウム・アグリガツム、シゾキトリウム・リマシヌム、シゾキトリウムsp.(S31)(ATCC20888)、シゾキトリウムsp.(S8)(ATCC20889)、シゾキトリウムsp.(LC-RM)(ATCC18915)、シゾキトリウムsp.(SR 21)、寄託されたシゾキトリウム株ATCC28209、および寄託されたシゾキトリウム株IFO32693が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明のプロモーターは、少なくともヤブレツボカビ類においてプロモーター活性を有することができ、天然に存在するプロモーターの全長プロモーター配列およびその機能性断片、融合配列、ならびにホモログを含む。プロモーター活性のために必要とされる最小配列を決定するためには、制限酵素を使用して本発明の核酸分子を消化し、続いて、適切なアッセイを行うことができる。そのような断片は、それ自体、個々に、本発明の態様を表す。プロモーターのホモログは、少なくとも1個、2個、3個、または数個のヌクレオチドの欠失、挿入、反転、置換、および/または誘導体化を有する点で、天然に存在するプロモーターと異なる。プロモーターのホモログは、少なくともヤブレツボカビ類においてプロモーターとしての活性を保持し得るが、活性は、増加していてもよいし、減少していてもよいし、またはある種の刺激に対して依存性にされていてもよい。本発明のプロモーターは、発生のおよび組織特異的な調節制御または発現を付与する一つまたは複数の配列要素を含み得る。
【0060】
いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、PUFA PKS OrfCプロモーター(「PKS OrfCプロモーター」)を含む。本発明のPKS OrfCプロモーターは、OrfCコーディング領域の上流に(5'領域の方向に)天然に位置し、OrfC転写を指図するDNAの領域である。いくつかの態様において、PKS OrfCプロモーターは、SEQ ID NO:3により表されるポリヌクレオチド配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:3と少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であって、かつ少なくともヤブレツボカビ類においてプロモーター活性を有する(即ち、少なくともPUFA PKS OrfC配列のために基底プロモーター転写活性を有する)ポリヌクレオチド配列を含む。相同性(または同一性%)は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500ヌクレオチドの配列に、または配列全体に見出され得る。
【0061】
本発明は、SEQ ID NO:3にハイブリダイズするか、またはSEQ ID NO:3と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、SEQ ID NO:3、またはSEQ ID NO:3と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチド配列に完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本発明のPKS OrfCプロモーターには、ホモログの核酸配列が、天然に存在するPKS OrfCプロモーターの核酸配列の相補鎖と、中、高、または極高ストリンジェンシー条件(下記)の下でハイブリダイズすることができるよう、天然に存在するPKS OrfCプロモーター配列と十分に類似しているPKS OrfCプロモーターホモログが含まれる。いくつかの態様において、本発明のPUFA PKS OrfCプロモーター配列は、SEQ ID NO:3の相補鎖と、中、高、または極高ストリンジェンシー条件の下でハイブリダイズする。
【0062】
いくつかの態様において、本発明のプロモーターには、ATCCアクセッション番号PTA-9615で寄託されているようなpCL0001のOrfCプロモーターが含まれる。
【0063】
いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子には、EF1ショートプロモーター(「EF1ショート」もしくは「EF1-S」プロモーター)またはEF1ロングプロモーター(「EF1ロング」もしくは「EF1-L」プロモーター)が含まれる。本発明のEF1ショートプロモーターまたはEF1ロングプロモーターは、EF1コーディング領域の上流に(5'領域の方向に)天然に位置し、EF1転写を指図するDNAの領域である。いくつかの態様において、EF1ショートプロモーターは、SEQ ID NO:42により表されるポリヌクレオチド配列を有する。いくつかの態様において、EF1ロングプロモーターは、SEQ ID NO:43により表されるポリヌクレオチド配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:42またはSEQ ID NO:43と少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であって、かつ少なくともヤブレツボカビ類においてプロモーター活性を有する(即ち、少なくとも、それぞれ、EF1ショートプロモーター配列またはEF1ロングプロモーター配列のために基底プロモーター転写活性を有する)ポリヌクレオチド配列を含む。相同性(または同一性%)は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、もしくは少なくとも500ヌクレオチドの配列に、または配列全体に見出され得る。
【0064】
本発明は、SEQ ID NO:42および/もしくはSEQ ID NO:43にハイブリダイズするか、またはSEQ ID NO:42および/もしくはSEQ ID NO:43と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、SEQ ID NO:42もしくはSEQ ID NO:43、またはSEQ ID NO:42もしくはSEQ ID NO:43と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチド配列に完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本発明のEF1ショートプロモーターまたはEF1ロングプロモーターには、ホモログの核酸配列が、それぞれ、天然に存在するEF1ショートプロモーターおよび/またはEF1ロングプロモーターの核酸配列の相補鎖に、中、高、または極高ストリンジェンシー条件(下記)の下でハイブリダイズすることができるよう、それぞれ、天然に存在するEF1ショートプロモーター配列および/またはEF1ロングプロモーター配列に十分に類似しているEF1ショートプロモーターホモログまたはEF1ロングプロモーターホモログが含まれる。いくつかの態様において、本発明のEF1ショートプロモーター配列および/またはEF1ロングプロモーター配列は、それぞれ、SEQ ID NO:42および/またはSEQ ID NO:43の相補鎖に、中、高、または極高ストリンジェンシー条件の下でハイブリダイズする。
【0065】
いくつかの態様において、本発明のプロモーターには、ATCCアクセッション番号PTA-9616で寄託されているようなpAB0018のEF1ロングプロモーターが含まれる。
【0066】
いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子には、60Sショートプロモーター(「60Sショート」もしくは「60S-S」プロモーター)または60Sロングプロモーター(「60Sロング」もしくは「60S-L」プロモーター)が含まれる。本発明の60Sショートプロモーターまたは60Sロングプロモーターは、60Sコーディング領域の上流に(5'領域の方向に)天然に位置し、60S転写を指図するDNAの領域である。いくつかの態様において、60Sショートプロモーターは、SEQ ID NO:44により表されるポリヌクレオチド配列を有する。いくつかの態様において、60Sロングプロモーターは、SEQ ID NO:45により表されるポリヌクレオチド配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子には、SEQ ID NO:44またはSEQ ID NO:45と少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であって、かつ少なくともヤブレツボカビ類においてプロモーター活性を有する(即ち、少なくとも、それぞれ、60Sショートプロモーター配列または60Sロングプロモーター配列のために基底プロモーター転写活性を有する)ポリヌクレオチド配列が含まれる。相同性(または同一性%)は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、もしくは少なくとも500ヌクレオチドの配列に、または配列全体に見出され得る。
【0067】
本発明は、SEQ ID NO:44および/もしくはSEQ ID NO:45にハイブリダイズするか、またはSEQ ID NO:44および/もしくはSEQ ID NO:45と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、SEQ ID NO:44および/もしくはSEQ ID NO:45、またはSEQ ID NO:44および/もしくはSEQ ID NO:45と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチド配列に完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本発明の60Sショートプロモーターまたは60Sロングプロモーターには、ホモログの核酸配列が、それぞれ、天然に存在する60Sショートプロモーターおよび/または60Sロングプロモーターの核酸配列の相補鎖に、中、高、または極高ストリンジェンシー条件(下記)の下でハイブリダイズすることができるよう、それぞれ、天然に存在する60Sショートプロモーターおよび/または60Sロングプロモーター配列に十分に類似している60Sショートプロモーターホモログまたは60Sロングプロモーターホモログが含まれる。いくつかの態様において、本発明の60Sショートプロモーター配列および/または60Sロングプロモーター配列は、それぞれ、SEQ ID NO:44および/またはSEQ ID NO:45の相補鎖に、中、高、または極高ストリンジェンシー条件の下でハイブリダイズする。
【0068】
いくつかの態様において、本発明のプロモーターには、ATCCアクセッション番号PTA-9614で寄託されているようなpAB0011の60Sロングプロモーターが含まれる。
【0069】
いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子には、Sec1プロモーター(「Sec1プロモーター」)が含まれる。本発明のSec1プロモーターは、Sec1コーディング領域の上流に(5'領域の方向に)天然に位置し、Sec1転写を指図するDNAの領域である。いくつかの態様において、Sec1プロモーターは、SEQ ID NO:46により表されるポリヌクレオチド配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:46と少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であって、かつ少なくともヤブレツボカビ類においてプロモーター活性を有する(即ち、少なくともSec1配列のために基底プロモーター転写活性を有する)ポリヌクレオチド配列を含む。相同性(または同一性%)は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、もしくは少なくとも500ヌクレオチドの配列に、または配列全体に見出され得る。
【0070】
本発明は、SEQ ID NO:46にハイブリダイズするか、またはSEQ ID NO:46と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、SEQ ID NO:46、またはSEQ ID NO:46と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチド配列に完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本発明のSec1プロモーターには、ホモログの核酸配列が、天然に存在するSec1プロモーターの核酸配列の相補鎖に、中、高、または極高ストリンジェンシー条件(下記)の下でハイブリダイズすることができるよう、天然に存在するSec1プロモーター配列に十分に類似しているSec1プロモーターホモログが含まれる。いくつかの態様において、本発明のSec1プロモーター配列は、SEQ ID NO:46の相補鎖に、中、高、または極高ストリンジェンシー条件の下でハイブリダイズする。
【0071】
いくつかの態様において、本発明のプロモーターには、ATCCアクセッション番号PTA-9613で寄託されているようなpAB0022のSec1プロモーターが含まれる。
【0072】
ターミネーター
本発明は、転写ターミネーターである新規の調節制御要素にも関する。本発明のターミネーター領域は、転写のためのゲノムDNA内の遺伝子配列の末端を特徴付ける遺伝子配列のセクションである。
【0073】
いくつかの態様において、ターミネーター領域はラビリンチュラ菌門の微生物に由来する。いくつかの態様において、ターミネーター領域はヤブレツボカビ類に由来する。いくつかの態様において、ターミネーター領域はシゾキトリウムまたはヤブレツボカビに由来する。シゾキトリウムには、シゾキトリウム・アグリガツム、シゾキトリウム・リマシヌム、シゾキトリウムsp.(S31)(ATCC20888)、シゾキトリウムsp.(S8)(ATCC20889)、シゾキトリウムsp.(LC-RM)(ATCC18915)、シゾキトリウムsp.(SR 21)、寄託された株ATCC28209、および寄託された株IFO32693が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
本発明のターミネーター領域は、少なくともヤブレツボカビ類においてターミネーター活性を有することができ、天然に存在するターミネーター領域の全長ターミネーター配列およびその機能性断片、融合配列、ならびにホモログを含む。ターミネーターのホモログは、少なくとも1個または少数(1個または少数に限定されない)ヌクレオチドの欠失、挿入、反転、置換、および/または誘導体化を有する点で、天然に存在するターミネーターと異なる。いくつかの態様において、本発明のターミネーターのホモログは、少なくともヤブレツボカビ類においてターミネーター領域としての活性を保持するが、活性は、増加していてもよいし、減少していてもよいし、またはある種の刺激に対して依存性にされていてもよい。
【0075】
いくつかの態様において、本発明には、PUFA PKS OrfC遺伝子のターミネーター領域(「PKS OrfCターミネーター領域」)を含む単離された核酸分子が含まれる。本発明のPKS OrfCターミネーター領域は、転写のためのゲノムDNA内のOrfC遺伝子配列の末端を特徴付ける遺伝子配列のセクションである。いくつかの態様において、ターミネーター領域は、SEQ ID NO:4により表されるポリヌクレオチド配列を有する。SEQ ID NO:4に開示されたターミネーター領域は、ヤブレツボカビ類微生物に由来する天然に存在する(野生型)ターミネーター配列であり、具体的には、シゾキトリウムPKS OrfCターミネーター領域であり、「OrfCターミネーター要素1」と呼ばれる。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:4と少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であって、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともPUFA PKS OrfCターミネーター領域として機能するポリヌクレオチド配列を含む。相同性(または同一性%)は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、もしくは少なくとも200ヌクレオチドの配列に、または配列全体に見出され得る。
【0076】
本発明は、SEQ ID NO:4にハイブリダイズするか、またはSEQ ID NO:4と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子にも関する。いくつかの態様において、単離された核酸分子には、SEQ ID NO:4、またはSEQ ID NO:4と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチド配列に完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子が含まれる。いくつかの態様において、本発明のPKS OrfCターミネーター領域には、ホモログの核酸配列が、天然に存在するPKS OrfCターミネーター領域の核酸配列の相補鎖に、中、高、または極高ストリンジェンシー条件(下記)の下でハイブリダイズすることができるよう、天然に存在するPUFA PKS OrfCターミネーター領域に十分に類似しているPKS OrfCターミネーター領域ホモログが含まれる。いくつかの態様において、PKS OrfCターミネーター領域配列は、SEQ ID NO:4の相補鎖に、中、高、または極高ストリンジェンシー条件の下でハイブリダイズする。
【0077】
いくつかの態様において、本発明のターミネーターには、ATCCアクセッション番号PTA-9614で寄託されているようなpAB0011のOrfCターミネーター領域が含まれる。
【0078】
シグナルペプチド
本発明は、シグナルペプチドをコードする新規の核酸分子にも関する。
【0079】
いくつかの態様において、本発明は、ラビリンチュラ菌門の微生物に由来する分泌型タンパク質のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。いくつかの態様において、微生物はヤブレツボカビ類である。いくつかの態様において、微生物はシゾキトリウムまたはヤブレツボカビである。
【0080】
本発明のシグナルペプチドは、ヤブレツボカビ類において分泌シグナル活性を有することができ、天然に存在するシグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。シグナルペプチドのホモログは、少なくとも1個または少数(1個または少数に限定されない)アミノ酸の欠失(例えば、ペプチドまたは断片のようなタンパク質の短縮バージョン)、挿入、反転、置換、ならびに/または(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミトイル化、アミド化、および/もしくはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加による)誘導体化を有する点で、天然に存在するシグナルペプチドと異なる。いくつかの態様において、シグナルペプチドのホモログは少なくともヤブレツボカビ類においてシグナルとしての活性を保持するが、活性は、増加していてもよいし、減少していてもよいし、またはある種の刺激に対して依存性にされていてもよい。
【0081】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、Na/Pi-IIb2トランスポータータンパク質シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。Na/Pi-IIb2トランスポータータンパク質シグナルペプチドは、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともNa/Pi-IIb2トランスポータータンパク質のためにシグナルターゲティング活性を有することができ、天然に存在するNa/Pi-IIb2トランスポータータンパク質シグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。いくつかの態様において、Na/Pi-IIb2トランスポータータンパク質シグナルペプチドは、SEQ ID NO:1により表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、Na/Pi-IIb2トランスポータータンパク質シグナルペプチドは、SEQ ID NO:15により表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:15と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列をコードし、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともNa/Pi-IIb2トランスポータータンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともNa/Pi-IIb2トランスポータータンパク質のためにシグナルペプチドとして機能する、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:15の機能性断片を含む単離されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子はSEQ ID NO:2を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:2;(ii)SEQ ID NO:2と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;(iii)SEQ ID NO:1をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(vi)SEQ ID NO:15をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:2;(ii)SEQ ID NO:2と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;(iii)SEQ ID NO:1をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(vi)SEQ ID NO:15をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。
【0082】
本発明は、Na/Pi-IIb2トランスポーターシグナルペプチドアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、以下のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:(i)SEQ ID NO:1、(ii)SEQ ID NO:15、および(iii)少なくともヤブレツボカビ類において少なくともNa/Pi-IIb2トランスポーターのためにシグナル配列として機能する、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:15と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO:15の最初の20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35アミノ酸残基(即ち、この配列のC末端にある最後の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18アミノ酸が欠失しているSEQ ID NO:15)を含む。SEQ ID NO:15のC末端に位置する18アミノ酸は、成熟Na/Piトランスポータータンパク質の一部であると予測され、シグナル配列の切断部位は、SEQ ID NO:15の35番目のアミノ酸残基と36番目のアミノ酸残基との間に存在すると予測される。しかしながら、成熟Na/Piトランスポータータンパク質の18アミノ酸(即ち、SEQ ID NO:15の最後の18アミノ酸残基)の一部または全部を含むシグナルペプチドが利用され得、本発明により企図される。本発明によると、単離されたポリペプチドは、その天然環境から除去された(即ち、ヒトの操作を受けた)ポリペプチドであり、例えば、精製されたタンパク質、精製されたペプチド、部分精製されたタンパク質、部分精製されたペプチド、組換え作製されたタンパク質またはペプチド、および合成的に作製されたタンパク質またはペプチドを含み得る。従って、「単離された」とは、ポリペプチドが精製されている程度を反映しない。いくつかの態様において、本発明の単離されたNa/Pi-IIb2トランスポーターシグナルペプチドは組換え作製される。
【0083】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、α-1,6-マンノシルトランスフェラーゼ(ALG12)シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。ALG12シグナルペプチドは、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともALG12タンパク質のためにシグナルターゲティング活性を有することができ、天然に存在するALG12シグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。いくつかの態様において、ALG12シグナルペプチドは、SEQ ID NO:59により表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:59と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列をコードし、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともALG12タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともALG12タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能する、SEQ ID NO:59の機能性断片を含む単離されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子はSEQ ID NO:60を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:60;(ii)SEQ ID NO:60と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(iii)SEQ ID NO:59をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:60;(ii)SEQ ID NO:60と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(iii)SEQ ID NO:59をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。
【0084】
本発明は、ALG12シグナルペプチドアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、以下のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:(i)SEQ ID NO:59および(ii)少なくともヤブレツボカビ類において少なくともALG12タンパク質のためにシグナル配列として機能する、SEQ ID NO:59と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO:59の最初の24、25、26、27、28、29、30、31、または32アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本発明の単離されたALG12シグナルペプチドは組換え作製される。
【0085】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、結合免疫グロブリンタンパク質(binding immunoglobulin protein/BiP)シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。BiPシグナルペプチドは、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともBiPタンパク質のためにシグナルターゲティング活性を有することができ、天然に存在するBiPシグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。いくつかの態様において、BiPシグナルペプチドは、SEQ ID NO:61により表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:61と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列をコードし、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともBiPタンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともBiPタンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するSEQ ID NO:61の機能性断片を含む単離されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子はSEQ ID NO:62を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:62;(ii)SEQ ID NO:62と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(iii)SEQ ID NO:61をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:62、(ii)SEQ ID NO:62と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列、および(iii)SEQ ID NO:61をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。
【0086】
本発明は、BiPシグナルペプチドアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、以下のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:(i)SEQ ID NO:61および(ii)少なくともヤブレツボカビ類において少なくともBiPタンパク質のためにシグナル配列として機能する、SEQ ID NO:61と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO:61の最初の23、24、25、26、27、28、29、30、または31アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本発明の単離されたBiPシグナルペプチドは組換え作製される。
【0087】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、α-1,3-グルコシダーゼ(GLS2)シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。GLS2シグナルペプチドは、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともGLS2タンパク質のためにシグナルターゲティング活性を有することができ、天然に存在するGLS2シグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。いくつかの態様において、GLS2シグナルペプチドは、SEQ ID NO:63により表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:63と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列をコードし、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともGLS2タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともGLS2タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するSEQ ID NO:63の機能性断片を含む単離されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子はSEQ ID NO:64を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:64;(ii)SEQ ID NO:64と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(iii)SEQ ID NO:63をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:64、(ii)SEQ ID NO:64と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列、および(iii)SEQ ID NO:63をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。
【0088】
本発明は、GLS2シグナルペプチドアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、以下のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:(i)SEQ ID NO:63および(ii)少なくともヤブレツボカビ類において少なくともGLS2タンパク質のためにシグナル配列として機能する、SEQ ID NO:63と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO:63の最初の30、31、32、33、34、35、36、37、または38アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本発明の単離されたGLS2シグナルペプチドは組換え作製される。
【0089】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、α-1,3-1,6-マンノシダーゼ様シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。α-1,3-1,6-マンノシダーゼ様シグナルペプチドは、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様タンパク質のためにシグナルターゲティング活性を有することができ、天然に存在するα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様シグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。いくつかの態様において、α-1,3-1,6-マンノシダーゼ様シグナルペプチドは、SEQ ID NO:65により表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:65と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列をコードし、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するSEQ ID NO:65の機能性断片を含む単離されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子はSEQ ID NO:66を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:66;(ii)SEQ ID NO:66と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(iii)SEQ ID NO:65をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:66、(ii)SEQ ID NO:66と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列、および(iii)SEQ ID NO:65をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。
【0090】
本発明は、α-1,3-1,6-マンノシダーゼ様シグナルペプチドアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、以下のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:(i)SEQ ID NO:65および(ii)少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様のためにシグナル配列として機能する、SEQ ID NO:65と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO:65の最初の24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、または34アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本発明の単離されたα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様シグナルペプチドは組換え作製される。
【0091】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、α-1,3-1,6-マンノシダーゼ様#1シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。α-1,3-1,6-マンノシダーゼ様#1シグナルペプチドは、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様#1タンパク質のためにシグナルターゲティング活性を有することができ、天然に存在するα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様#1シグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。いくつかの態様において、α-1,3-1,6-マンノシダーゼ様#1シグナルペプチドは、SEQ ID NO:67により表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:67と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列をコードし、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様#1ポリペプチドのためにシグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様#1タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するSEQ ID NO:67の機能性断片を含む単離されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子はSEQ ID NO:68を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:68;(ii)SEQ ID NO:68と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(iii)SEQ ID NO:67をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:68、(ii)SEQ ID NO:68と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列、および(iii)SEQ ID NO:67をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。
【0092】
本発明は、α-1,3-1,6-マンノシダーゼ様#1シグナルペプチドアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、以下のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:(i)SEQ ID NO:67および(ii)少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様#1のためにシグナル配列として機能する、SEQ ID NO:67と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO:67の最初の23、24、25、26、27、28、または29アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本発明の単離されたα-1,3-1,6-マンノシダーゼ様#1シグナルペプチドは組換え作製される。
【0093】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、α-1,2-マンノシダーゼ様シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。α-1,2-マンノシダーゼ様シグナルペプチドは、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,2-マンノシダーゼ様タンパク質のためにシグナルターゲティング活性を有することができ、天然に存在するα-1,2-マンノシダーゼ様シグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。いくつかの態様において、α-1,2-マンノシダーゼ様シグナルペプチドは、SEQ ID NO:69により表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:69と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列をコードし、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,2-マンノシダーゼ様タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,2-マンノシダーゼ様タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するSEQ ID NO:69の機能性断片を含む単離されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子はSEQ ID NO:70を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:70;(ii)SEQ ID NO:70と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(iii)SEQ ID NO:69をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:70、(ii)SEQ ID NO:70と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列、および(iii)SEQ ID NO:69をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。
【0094】
本発明は、α-1,2-マンノシダーゼ様シグナルペプチドアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、以下のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:(i)SEQ ID NO:69および(ii)少なくともヤブレツボカビ類において少なくともα-1,2-マンノシダーゼ様タンパク質のためにシグナル配列として機能する、SEQ ID NO:69と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO:69の最初の26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本発明の単離されたα-1,2-マンノシダーゼ様シグナルペプチドは組換え作製される。
【0095】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、βキシロシダーゼ様シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。βキシロシダーゼ様シグナルペプチドは、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともβキシロシダーゼ様タンパク質のためにシグナルターゲティング活性を有することができ、天然に存在するβキシロシダーゼ様シグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。いくつかの態様において、βキシロシダーゼ様シグナルペプチドは、SEQ ID NO:71により表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:71と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列をコードし、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともβキシロシダーゼ様タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともβキシロシダーゼ様タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するSEQ ID NO:71の機能性断片を含む単離されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子はSEQ ID NO:72を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:72;(ii)SEQ ID NO:72と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(iii)SEQ ID NO:71をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:72、(ii)SEQ ID NO:72と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列、および(iii)SEQ ID NO:71をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。
【0096】
本発明は、βキシロシダーゼ様シグナルペプチドアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、以下のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:(i)SEQ ID NO:71および(ii)少なくともヤブレツボカビ類において少なくともβキシロシダーゼ様タンパク質のためにシグナル配列として機能する、SEQ ID NO:71と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO:71の最初の24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本発明の単離されたβキシロシダーゼ様シグナルペプチドは組換え作製される。
【0097】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、カロテン合成酵素シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。カロテン合成酵素シグナルペプチドは、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともカロテン合成酵素タンパク質のためにシグナルターゲティング活性を有することができ、天然に存在するカロテン合成酵素シグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。いくつかの態様において、カロテン合成酵素シグナルペプチドは、SEQ ID NO:73により表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:73と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列をコードし、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともカロテン合成酵素タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともカロテン合成酵素タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するSEQ ID NO:73の機能性断片を含む単離されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子はSEQ ID NO:74を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:74;(ii)SEQ ID NO:74と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(iii)SEQ ID NO:73をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:74、(ii)SEQ ID NO:74と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列、および(iii)SEQ ID NO:73をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。
【0098】
本発明は、カロテン合成酵素シグナルペプチドアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、以下のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:(i)SEQ ID NO:73および(ii)少なくともヤブレツボカビ類において少なくともカロテン合成酵素タンパク質のためにシグナル配列として機能する、SEQ ID NO:73と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO:73の最初の15、16、17、18、19、20、21、29、30、31、32、33、または34アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本発明の単離されたカロテン合成酵素シグナルペプチドは組換え作製される。
【0099】
いくつかの態様において、単離された核酸分子は、Sec1タンパク質(Sec1)シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。Sec1シグナルペプチドは、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともSec1タンパク質のために分泌シグナル活性を有することができ、天然に存在するSec1シグナルペプチドの全長ペプチドおよびその機能性断片、融合ペプチド、ならびにホモログを含む。いくつかの態様において、Sec1シグナルペプチドはSEQ ID NO:37により表される。いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:37と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列をコードし、かつ少なくともヤブレツボカビ類において少なくともSec1タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、少なくともヤブレツボカビ類において少なくともSec1タンパク質のためにシグナルペプチドとして機能するSEQ ID NO:37の機能性断片を含む単離されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子はSEQ ID NO:38を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:38;(ii)SEQ ID NO:38と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列;および(iii)SEQ ID NO:37をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、以下のもののいずれかに完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む:(i)SEQ ID NO:38、(ii)SEQ ID NO:38と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列、および(iii)SEQ ID NO:37をコードする核酸配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列。
【0100】
本発明は、Sec1シグナルペプチドアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドにも関する。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、以下のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:(i)SEQ ID NO:37および(ii)少なくともヤブレツボカビ類において少なくともSec1のためにシグナル配列として機能する、SEQ ID NO:37と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列。いくつかの態様において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO:37の最初の18または19アミノ酸残基(即ち、この配列のC末端にある最後の1または2アミノ酸が欠失しているSEQ ID NO:37)を含む。いくつかの態様において、本発明の単離されたSec1シグナルペプチドは組換え作製される。
【0101】
いくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、タンパク質をコードする核酸配列の5'末端に機能的に連結された、本発明のOrfCプロモーター、EF1ショートプロモーター、EF1ロングプロモーター、60Sショートプロモーター、60Sロングプロモーター、Sec1プロモーター、PKS OrfCターミネーター領域、Na/Pi-IIb2トランスポータータンパク質シグナルペプチドをコードする配列、またはSec1輸送タンパク質シグナルペプチドをコードする配列を含む。本発明は、タンパク質をコードする核酸配列の5'末端に機能的に連結された、本発明のOrfCプロモーター、EF1ショートプロモーター、EF1ロングプロモーター、60Sショートプロモーター、60Sロングプロモーター、Sec1プロモーター、PKS OrfCターミネーター領域、Na/Pi-IIb2トランスポータータンパク質シグナルペプチドをコードする配列、またはSec1輸送タンパク質シグナルペプチドをコードする配列を含む、組換えベクター(発現ベクターを含むが、これに限定されない)、発現カセット、および宿主細胞も包含する。
【0102】
前記の本発明の単離された核酸分子(例えば、OrfCプロモーター、EF1ショートプロモーター、EF1ロングプロモーター、60Sショートプロモーター、60Sロングプロモーター、Sec1プロモーター、PKS OrfCターミネーター領域、Na/Pi-IIb2トランスポータータンパク質シグナルペプチドをコードする配列、またはSec1輸送タンパク質シグナルペプチドをコードする配列を含む核酸分子)のいずれかを含む組換えベクター(発現ベクターを含むが、これに限定されない)、発現カセット、宿主細胞、および微生物も、本発明に包含され、ベクターおよび/または発現カセットを宿主細胞および組換え微生物へ導入する方法も、本発明に包含される。適当なベクターおよび発現カセットは、適切な調節配列、ターミネーター断片、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、およびその他の配列を適宜含有するよう選択されてもよいしまたは構築されてもよい。ベクター、発現カセット、および宿主細胞に関するさらなる詳細は、本明細書に示される。
【0103】
本明細書において使用されるように、特記しない限り、同一性(%)(および同一%)との言及は、以下のものを使用して実施される相同性の評価をさす:(1)デフォルトによりクエリー配列が低複雑度領域(low complexity regions)についてフィルタリングされる、標準的なデフォルトパラメータを用いた、アミノ酸検索にはblastpを使用し、核酸検索にはblastnを使用した、BLAST 2.0 Basic BLAST相同性検索(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるAltschul,S.,et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)を参照のこと);(2)下記パラメータを使用したBLAST 2アラインメント;および/または(3)標準的なデフォルトパラメータを用いたPSI-BLAST(Position-Specific Iterated BLAST)。BLAST 2.0 Basic BLASTとBLAST 2との間の標準パラメータのいくつかの違いのため、二つの特定の配列が、BLAST 2プログラムを使用した場合には有意な相同性を有するとして認識されるが、それらの配列の一方をクエリー配列として使用してBLAST 2.0 Basic BLASTにおいて実行された検索は上位のマッチにおいて第2の配列を同定しないことがあり得ることに注意すること。さらに、PSI-BLASTは、配列ホモログを探索するための高感度の手段である「プロファイル」検索の自動化された使い易いバージョンを提供する。プログラムは、まず、gapped BLASTデータベース検索を実施する。PSI-BLASTプログラムは、データベース探索の次のラウンドのためのクエリー配列に取って代わる位置特異的スコア行列(position-specific score matrix)を構築するため、戻された有意なアラインメントからの情報を使用する。従って、同一率は、これらのプログラムのいずれか一つを使用することにより決定され得ることが理解されるべきである。
【0104】
二つの特定の配列は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるTatusova and Madden,FEMS Microbiol.Lett.174:247-250(1999)に記載されたようなBLAST 2 sequenceを使用して相互に整列化され得る。BLAST 2 sequenceアラインメントは、得られたアラインメントへのギャップ(欠失および挿入)の導入を可能にする、二つの配列の間のGapped BLAST検索(BLAST 2.0)を実施するため、BLAST 2.0アルゴリズムを使用して、blastpまたはblastnにおいて実施される。いくつかの態様において、BLAST 2 sequenceアラインメントは、以下のような標準デフォルトパラメータを使用して実施される。
0 BLOSUM62マトリックスを使用したblastnの場合:
マッチリワード(Reward for match)=1
ミスマッチペナルティ(Penalty for mismatch)=-2
オープンギャップ(Open gap)ペナルティ(5)およびエクステンションギャップ(extension gap)ペナルティ(2) ギャップx_ドロップオフ(gap x_dropoff)(50) 期待値(expect)(10) ワードサイズ(word size)(11) フィルター(オン)。
0 BLOSUM62マトリックスを使用したblastpの場合:
オープンギャップペナルティ(11)およびエクステンションギャップペナルティ(1) ギャップx_ドロップオフ(50) 期待値(10) ワードサイズ(3) フィルター(オン)。
【0105】
本明細書において使用されるように、ハイブリダイゼーション条件とは、類似している核酸分子を同定するために核酸分子が使用される標準的なハイブリダイゼーション条件をさす。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるSambrook J.and Russell D.(2001)Molecular cloning:A laboratory manual,3rd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New Yorkを参照のこと。さらに、ヌクレオチドのミスマッチの変動する程度を許容するハイブリダイゼーションを達成するための適切なハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を計算するための式は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるMeinkoth et al.,Anal.Biochem.138,267-284(1984)に開示されている。
【0106】
より具体的には、中ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件および洗浄条件とは、本明細書において言及されるように、ハイブリダイゼーション反応においてプローブとして使用されている核酸分子との少なくとも約70%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容する条件(即ち、ヌクレオチドの約30%以下のミスマッチを許容する条件)をさす。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件および洗浄条件とは、本明細書において言及されるように、ハイブリダイゼーション反応においてプローブとして使用されている核酸分子との少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容する条件(即ち、ヌクレオチドの約20%以下のミスマッチを許容する条件)をさす。極高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件および洗浄条件とは、本明細書において言及されるように、ハイブリダイゼーション反応においてプローブとして使用されている核酸分子との少なくとも約90%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容する条件(即ち、ヌクレオチドの約10%以下のミスマッチを許容する条件)をさす。上述のように、当業者は、例えば、ヌクレオチドミスマッチのこれらの特定のレベルを達成するための適切なハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を計算するため、Meinkothらの式を使用することができる。そのような条件は、DNA:RNAハイブリッドが形成されているのか、それともDNA:DNAハイブリッドが形成されているのか、に依って、変動するであろう。DNA:DNAハイブリッドについて計算された融解温度は、DNA:RNAハイブリッドのものより10℃低い。特定の態様において、DNA:DNAハイブリッドについてのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、適切な洗浄条件による、約20℃〜約35℃(比較的低いストリンジェンシー)、約28℃〜約40℃(比較的高いストリンジェンシー)、および約35℃〜約45℃(さらに高いストリンジェンシー)の温度での6×SSC(0.9M Na+)のイオン強度でのハイブリダイゼーションが含まれる。特定の態様において、DNA:RNAハイブリッドについてのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、類似のストリンジェンシーの洗浄条件による、約30℃〜約45℃、約38℃〜約50℃、および約45℃〜約55℃の温度での、6×SSC(0.9M Na+)のイオン強度でのハイブリダイゼーションが含まれる。これらの値は、約100ヌクレオチド超の分子、0%ホルムアミド、および約40%のG+C含量についての融解温度の計算に基づく。あるいは、Tmは、Sambrookらに示されるように経験的に計算されてもよい。一般に、洗浄条件は、可能な限りストリンジェントであるべきであり、選ばれたハイブリダイゼーション条件にとって適切であるべきである。例えば、ハイブリダイゼーション条件には、特定のハイブリッドの計算されたTmよりおよそ20〜25℃低い塩条件および温度条件の組み合わせが含まれ得、洗浄条件には、典型的には、特定のハイブリッドの計算されたTmよりおよそ12〜20℃低い塩条件および温度条件の組み合わせが含まれる。DNA:DNAハイブリッドで使用するために適しているハイブリダイゼーション条件の一例には、約42℃での6×SSC(50%ホルムアミド)での2〜24時間のハイブリダイゼーション、それに続く、約2×SSCでの室温での1回または複数回の洗浄、それに続く、より高い温度およびより低いイオン強度での付加的な洗浄(例えば、約0.1×〜0.5×SSCでの約37℃での少なくとも1回の洗浄、それに続く、約0.1×〜0.5×SSCでの約68℃での少なくとも1回の洗浄)が含まれる。
【0107】
本発明の概要を説明したが、本明細書に提供される例を参照することにより、さらなる理解が入手され得る。これらの例は、例示を目的とするものに過ぎず、限定的なものではない。
【実施例】
【0108】
実施例1
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchizEの構築
a.p07074#6の構築:
pSP73ベクター(Promega、acc#X65333)を、XbaIおよびリョクトウヌクレアーゼにより消化し、次いで、精製し、ライゲートし、ベクターp070604#3を作出した。次いで、p070604#3を、SphI、HpaI、およびリョクトウヌクレアーゼによりさらに消化し、次いで、精製し、再ライゲートし、ベクターp070704#6を作出した。
b.pSchiz1の構築:
WO02/083869に開示されたようなpTUBzeo11-2ベクターを、BamHIにより消化し、シゾキトリウムαチューブリンプロモーター、ble遺伝子、およびSV40ターミネーター領域を含有している1122塩基対(bp)の断片を放出させた。この断片をゲル精製し、予めBamHIにより消化されたベクターpYES2/CT(Invitrogen)へライゲートした。次いで、得られた構築物を、αチューブリンプロモーターを含有している540bpの断片を放出させるため、SmaI、SphI、およびリョクトウヌクレアーゼにより消化した。断片を、予めBamHI、SmaI、およびリョクトウリガーゼにより消化されたpUC19(Genbankアクセッション番号L09137)へライゲートし、pSchiz1を作出した。
【0109】
c.pSchiz2の構築:
別の反応において、ライゲーションのためのNcoIおよびPciIの制限部位(イタリック体で示される)を組み入れられた以下のプライマーを使用して、pTUBzeo11-2からSV40ターミネーターをコードするアンプリコンを生成するため、PCRを使用した。

【0110】
得られたアンプリコンを、NcoIおよびPciIにより消化し、付着末端を露出させた。次いで、この265bp断片を予めNcoIにより消化されたpSchiz1へライゲートした。pSchiz2と命名された得られたプラスミドは、αチューブリンプロモーター、それに続くSV40ターミネーターを含有していた。
【0111】
d.pSchiz3の構築:
別の反応において、いずれかの末端にSmaI部位(イタリック体で示される)を付加するために設計された以下のプライマーを使用して、pYES2/CTからマルチクローニング部位(MCS)を増幅するため、PCRを使用した。

【0112】
次いで、得られたMCSアンプリコンを、SmaIにより消化し、予めNcoIおよびリョクトウヌクレアーゼにより消化されたpSchiz2へライゲートした。pSchiz3と命名された得られたベクターは、αチューブリンプロモーター、SV40ターミネーター、およびpYES2/CT MCSを含有していた。
【0113】
e.pSchiz0.5#4の構築
αチューブリンプロモーター、pYES2/CT MCS、およびSV40ターミネーター領域からなるMCSカセットをコードするアンプリコンを生成するため、以下のプライマーおよび鋳型としてのpSchiz3を用いたPCRを使用した。

【0114】
これらのプライマーは、MCSカセットアンプリコンの末端にBglIIおよびSalIの制限部位(イタリック体で示される)を付加するために設計された。得られたPCR断片を、BglIIおよびSalIにより消化し、予めBglIIおよびSalIにより消化されたp070704#6へライゲートし、pSchiz0.5#4を生成した。
【0115】
f.pSchizEの構築
米国特許第7,001,772号に記載されるようなベクターpMON50203を鋳型として使用して、ALS遺伝子(そのプロモーター領域およびターミネーター領域を含む)をコードする4776bpのアンプリコンを生成するため、PCRを使用した。NdeIおよびBglIIの制限部位(イタリック体で示される)を含有している以下のプライマーを、このPCR反応のために使用した。

【0116】
次いで、得られたALSアンプリコンをBglIIおよびNdeIにより消化した。pSchiz0.5#4を、BglIIおよびNdeIにより同様に消化し、より大きな3171bpのバンドをゲル精製し、精製されたALS PCRアンプリコンにライゲートした。pSchizEと命名された得られたベクターを、配列決定により確証したところ、それは、ALS遺伝子(プロモーター領域およびターミネーター領域を含む)、それに続くシゾキトリウムαチューブリンプロモーター、pYES2/CT MCS、およびSV40ターミネーター領域を含有している発現カセットを含有していた(図5を参照のこと)。
【0117】
実施例2
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchiz-sGの構築
eGFPの発現および分泌は、pSchiz-sGを使用して達成された(図6を参照のこと)。このプラスミドは、pCO0001とも命名され、2008年11月18日にAmerican Type Culture Collection,Patent Depository(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209)に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-9617を与えられた。このベクターは、(i)シゾキトリウムαチューブリンプロモーター配列、それに続く(ii)eGFPをコードする配列に融合した、成熟トランスポータータンパク質のN末端部分の断片が付着しているシゾキトリウムNa/Piトランスポーターシグナル配列(SEQ ID NO:15)をコードする配列、それに続く(iii)MCSの残りおよび(iv)SV40ターミネーター領域を含有している。このベクターは、選択可能マーカーとしてシゾキトリウムALS遺伝子も含有している。ベクターは、下記のように構築された。
【0118】
シグナルペプチドをコードするために選ばれた配列(SEQ ID NO:2)は、シゾキトリウムESTライブラリーから単離されたNa/Piトランスポーターに由来した。eGFPを含有しているプラスミドpPha-T1-eGFP(Apt et al.,J.Cell Sci.115:4061-4069(2002))およびシグナル配列を付加するために設計された三つのプライマーを使用したPCRにより、シグナルペプチドおよびeGFPをコードするヌクレオチド配列を融合させた。一次PCR反応は、鋳型としてのeGfp含有プラスミド、eGfpの3'末の小さなプライマー(以下にイタリック体で示されるSpeI部位を含有しているプライマーsec.Gfp3'Spe)、ならびにeGfpの5'末およびシグナル配列の3'末に隣接している100bpのプライマー(プライマーsec.Gfp5'1b,sec)を利用した。プライマー配列は以下の通りであった。

【0119】
二次PCR反応においては、一次PCRのアンプリコン産物を鋳型として使用した。シグナル配列の残りが組み入れられた第2の100bpの5'プライマー(sec.Gfp5'Bam)と共に、同じ3'プライマーを使用した。第2の5'プライマー配列は、BamHI部位(以下にイタリック体で示される)を含有しており、以下の通りであった。

【0120】
この二次PCR反応から得られたPCR産物は、クローニングのためのBamHIおよびSpeIの部位を含有していた。
【0121】
二次PCR反応のアンプリコンおよびpSchizEの両方を、BamHIおよびSpeIにより消化し、相互にライゲートし、ベクターpSchiz-sGを作出した。
【0122】
実施例3
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchiz-sGrの構築
pSchiz-sGrベクターは、αチューブリンプロモーター、ER保留シグナルをコードする配列を含むeGFPヌクレオチド配列、SV40ターミネーター領域、および変異型ALS選択可能マーカーを含む。
【0123】
一般的なER保留シグナルアミノ酸配列HDELを戻し翻訳し、この保留シグナルをコードする配列(SEQ ID NO:14)を、実施例2からのpSchiz-sGを鋳型として使用したPCRにより、eGFPと融合させた。オリゴヌクレオチドプライマーは、一方のプライマーには、終止コドン(文字囲で示される)とインフレームのHDELコーディング配列(以下のss.eGfpHELD3'RVプライマー配列の下線部の逆相補鎖)+BamHI部位(イタリック体で示される)を含み、他方のプライマーにはEcoRV部位(イタリック体)を含むように設計された。

【0124】
得られたPCR産物を、BamHIおよびEcoRVにより消化し、BamHIおよびEcoRVにより(実施例1に記載された)pSchizEを消化することにより得られた、より大きな断片にライゲートした。得られたベクターを、pSchiz-sGrと命名した(図7を参照のこと)。
【0125】
実施例4
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchiz-cGの構築
比較対照として、蛍光タンパク質が細胞質に蓄積するような様式で、eGFPを発現するpSchiz-cGベクターを構築した。pSchiz-cGプラスミドは、シゾキトリウムOrfCプロモーター、eGFPをコードするポリヌクレオチド配列、SV40ターミネーター領域、および変異型シゾキトリウムALS選択可能マーカーを含む。
【0126】
まず、シゾキトリウムORFC上流の2000bpの配列を、シゾキトリウムsp.ATCC20888のゲノムDNAから、以下のプライマーを用いてPCR増幅した。

【0127】
prREZ15プライマーおよびprREZ16プライマーは、それぞれ、KpnI配列およびBamHI配列(イタリック体)を含有していた。得られたアンプリコンを、BamHIおよびKpnIにより消化し、ゲル精製した。
【0128】
次に、シゾキトリウムORFC下流の1985bpの配列を、シゾキトリウムsp.ATCC20888のゲノムDNAから、以下のプライマーを用いてPCR増幅した。

【0129】
prREZ17プライマーおよびprREZ18プライマーは、それぞれ、BamHI配列およびXbaI配列(イタリック体)を含有していた。得られたアンプリコンを、BamHIおよびXbaIにより消化し、ゲル精製した。
【0130】
次に、ベクターpBluescript SK(+)(Stratagene、acc#X52328)を、KpnIおよびXbaIにより消化し、ゲル精製した。このベクターおよび上で生成された二つのアンプリコンを、全て同時にライゲートし、ベクターpREZ22を作製した。
【0131】
次いで、ベクターpSchizE(実施例1)を、BamHIにより消化し、リョクトウヌクレアーゼにより処理し、カラム精製し、XbaIにより消化し、次いで、ゲル精製した。次いで、以下のプライマーを用いたPCRを、(鋳型pPha-T1-eGFPを使用して)eGFPコーディング領域を含有しているアンプリコンを生成するため、実施した。

【0132】
次いで、このアンプリコンをXbaIにより消化し、上記のpSchizEの断片にライゲートし、ベクターpSchizE-eGFPを作出した。
【0133】
次いで、ORFCのプロモーターをコードするアンプリコンを生成するため、鋳型としてpREZ22を用いたPCRを使用した。各々、KpnI制限配列(イタリック体で示される)を含有している以下のプライマーを、このPCRのために使用した。

【0134】
次いで、このアンプリコンをKpnIにより消化した。次いで、pSchizE-eGFPベクターもKpnIにより消化し、2個の断片を生成した。より大きい断片(7554bp)を、ゲル精製し、上記のKpnI消化されたアンプリコンにライゲートし、シゾキトリウムORFCプロモーター配列、それに続くeGFP配列およびSV40ターミネーター領域を含有しているpSchiz-cGベクター(図8を参照のこと)を作製した。
【0135】
実施例5
シゾキトリウムの形質転換およびその後のタンパク質発現
他に示されない限り、全てのベクターおよび構築物を、特定の培養規模にとって適切なQiagenキット(Valencia,CA)を使用したプラスミド精製のため、大腸菌UltraMax DH5-α FT化学処理コンピテントセル(Invitrogen,Carlsbad,CA)において繁殖させた。
【0136】
シゾキトリウムsp.ATCC番号20888の培養物を、10g/Lグルコース、0.8g/L (NH4)2SO4、5g/L Na2SO4、2g/L MgSO4・7H2O、0.5g/L KH2PO4、0.5g/L KCl、0.1g/L CaCl2・2H2O、0.1M MES(pH6.0)、0.1%PB26金属、および0.1%PB26ビタミン(v/v)からなるM2B培地で増殖させた。PB26ビタミンは、50mg/mLビタミンB12、100μg/mLチアミン、および100μg/mLパントテン酸Caからなっていた。PB26金属は、pH4.5に調整されており、3g/L FeSO4・7H2O、1g/L MnCl2・4H2O、800mg/mL ZnSO4・7H2O、20mg/mL CoCl2・6H2O、10mg/mL Na2MoO4・2H2O、600mg/mL CuSO4・5H2O、および800mg/mL NiSO4・6H2Oからなっていた。PB26ストック溶液は別々に濾過滅菌され、加圧減菌の後、ブロスへ添加された。グルコース、KH2PO4、およびCaCl2・2H2Oは、塩沈殿および炭水化物カラメル化を防止するため、混合する前に、各々、ブロス成分の残りとは別に加圧減菌された。全ての培地成分が、Sigma Chemical(St.Louis,MO)から購入された。シゾキトリウムの培養物を対数期まで増殖させ、ベクターpSchiz-E1(実施例1)、pSchiz-sG(実施例2)、pSchiz-sGr(実施例3)、またはpSchiz-cG(実施例4)を使用して、Biolistic(商標)particle bombarder(BioRad,Hercules,CA)により形質転換した。Biolistic(商標)形質転換法は、以前に記載されたのと本質的に同一であった(Apt et al.,J.Cell.Sci.115(Pt 21):4061-9(1996)および米国特許第7,001,772号を参照のこと)。20g/L寒天(VWR,West Chester,PA)、10μg/mL Sulfometuron methyl(SMM)(Chem Service,Westchester,PA)を含有している固形M2B培地で、27℃での2〜6日間のインキュベーションの後、一次形質転換体を選択した。全ての一次形質転換体を、SMMを含む新鮮なM2Bプレートへ手動で移した。
【0137】
一次形質転換体コロニーを、蛍光顕微鏡検および光学顕微鏡検により分析した。50mLのM2B-SMM液体培地に接種するためにも、一次形質転換体コロニーを使用した。2〜5日間の27℃でのインキュベーションの後、15分間の5500×gでの遠心分離により培養物を採集した。Centriprep(商標)重力式コンセントレーター(Millipore,Billerica,MA)を使用して、無細胞上清を100倍濃縮し、細胞ペレットを水で洗浄し、液体窒素で凍結させた後、ペレット重量の2倍の(50mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、1mM EDTA、5%グリセロール、および1mM新鮮フェニルメチルスルホニルフルオリドからなる)溶解緩衝液およびペレット重量の2倍の0.5mmガラスビーズ(Sigma,St.Louis,MO)に再懸濁させた。次いで、細胞ペレット混合物を、3時間(h)、最大スピードで、マルチチューブボルテックスミキサー(VWR,Westchester,PA)で4℃でボルテックスすることにより溶解した。次いで、細胞溶解物を4℃で10分間5500×gで遠心分離した。上清を保持し、4℃で10分間5500×gで再遠心分離した。得られた上清を、本明細書において、「無細胞抽出物」として定義する。無細胞上清および無細胞抽出物の両方のタンパク質を、Bradfordアッセイキット(Sigma,St.Louis,MO)により定量化し、4〜12%ポリアクリルアミドBis-Trisゲル(Bio-Rad,Hercules,CA)へ負荷する前に、製造業者の説明(Bio-Rad,Hercules,CA)に従い、XT試料緩衝液との混合物として煮沸した。
【0138】
SDS-PAGEゲルを、クーマシー色素により染色するか、またはウエスタンブロッティングによりPVDFへ転写した。ブロッティングの後、PVDF膜を、トリス緩衝生理食塩水(TBS)(Sigma,St.Louis,MO)により濯ぎ、2時間室温で5%無脂肪粉乳(NFDM)を含むTBSにより処理した。関心対象のタンパク質に特異的な一次抗体を、製造業者の説明に従い、5%NFDM-TBSで希釈した。必要な場合には、この溶液を除去し、一次抗体に特異的なアルカリホスファターゼ標識二次抗体が添加された新鮮な5%NFDM-TBSと交換した。二次抗体を使用しない場合には、一次抗体がアルカリホスファターゼにより標識されていた。次いで、抗体により処理されたPVDFを、TBSにより濯ぎ、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸/ニトロブルーテトラゾリウム溶液(BCIP/NBT)(KPL,Gaithersburg,MD)により処理した。
【0139】
図9に示されるように、pSchizGrにより形質転換されたシゾキトリウムは、ERにおけるeGFP局在を示したが(図10も参照のこと)、pSchizcGにより形質転換されたシゾキトリウムは、細胞質全体にeGFPを提示した。pSchizE(空ベクター対照)により形質転換されたシゾキトリウムは、eGFPの発現を提示しなかった。図11に示されるように、pSchiz-sGにより形質転換されたシゾキトリウムについては、無細胞上清試料(即ち、細胞外)にも無細胞抽出物にもeGFPが検出された。pSchiz-sGrにより形質転換されたシゾキトリウムは、無細胞抽出物にeGFPを含有し、より少ない程度に、無細胞上清にも含有していた。最後に、pSchizcGにより形質転換されたシゾキトリウムは、ほぼ排他的に無細胞抽出物にeGFPを含有していた。
【0140】
実施例6
Sec1シグナルペプチドの同定
シゾキトリウムのゲノム配列は、当技術分野の標準的な技術を使用して、以前に生成され、組み立てられ、BLAST検索のためにフォーマットされた。窒素過剰(N-replete)条件の下で増殖したシゾキトリウムの培養物から、上清を濃縮し、SDS-PAGEで実行した。主要な分泌型タンパク質バンドをゲルから切り出し、アミノ酸配列決定のために使用した。入手されたアミノ酸配列のシゾキトリウムゲノムとのBLAST比較(アルゴリズム−tBLASTn、低複雑度フィルタリング−オフ、期待値−1000、行列−PAM30、ギャップなしのアラインメント(Ungapped Alignment)−オン)により、対応するORFが同定された。ORFの5'部分を、SignalPアルゴリズムを使用して分析した。例えば、Bendsten et al.,J,Mol.Biol.340:783-795(2004);Nielsen and Krogh,Proc.Int.Conf.Intell.Syst.Mol.Biol.6:122-130(1998);Nielsen et al.,Protein Engineering 12:3-9(1999);Emanuelsson et al.,Nature Protocols 2:953-971(2007)を参照のこと。Sec1タンパク質の5'領域が、この分析により、分泌シグナルとして同定された。図12(SEQ ID NO:37を含む)および図13(SEQ ID NO:38)を参照のこと。
【0141】
実施例7
シゾキトリウムベクターpSchiz-Cptの構築
pSchiz-Cptベクターは、OrfCプロモーターおよびOrfCターミネーターならびにALS選択可能マーカーを含有している。簡単に説明すると、このベクターは、まずpSchizEプラスミドをKpnI/XbaIにより消化し、得られた6.89kbの断片をゲル精製することにより構築された。この消化は、pSchizEプラスミドからのチューブリンプロモーターおよびポリリンカーの大部分の除去ももたらした;ALSコーディング配列は完全なままであった。得られた6.8kbのSchizE骨格へ、シゾキトリウムOrfCの上流の2kbの配列+シゾキトリウムOrfCの下流の2kbの配列を含有しており、BamHI部位が上流セグメントと下流セグメントとを分離している4kbのKpnI/XbaI断片をライゲートした。4kbのKpnI/XbaI断片は、プラスミドpREZ22(実施例4を参照のこと)から切り出された。6.8kbのpSchizE骨格と4kbのKpnI/XbaI断片とのライゲーションにより、pSchiz-Cptを得た。
【0142】
実施例8
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchizCpt-s1eGFPの構築
pSchizCpt-s1eGFPプラスミドは、シゾキトリウムOrfCプロモーター、eGFPをコードする配列に先行するSec1シグナル配列、ならびにOrfCターミネーターおよび変異型シゾキトリウムALS選択可能マーカー配列を含む。図14を参照のこと。このプラスミドは、pCL0001とも命名され、2008年11月18日にAmerican Type Culture Collection,Patent Depository(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209)に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-9615を与えられた。
【0143】
実施例9
発酵槽におけるシゾキトリウムによるeGFPの発現および分泌
シゾキトリウムの細胞を、実施例5に記載されたようにして、pSchizCpt-s1eGFP(実施例8を参照のこと)により形質転換した。SMMに対して耐性の細胞株を、M2B寒天プレートで単離し、振とうフラスコ内の(10μg/ml SMMを含有している)M2B液体培養物へ移し、150rpmで振とうしながら27.5℃でインキュベートした。72〜168hの培養の後、培養物を、遠心分離(10分間5000×g)により採集し、CentriprepコンセントレーターおよびMicroconコンセントレーター(MWCO 10000)を使用して、無細胞上清を濃縮した(およそ250倍)。試料(1〜7μl)を、SDS-PAGEで実行し、分離されたタンパク質をPVDF膜に移した。ブロッキングされ洗浄された膜を、ウサギ抗eGFP IgG(Biovision)により探索し、アルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(fc)(Promega)による探索およびBCIP/NBT試薬による処理により、反応性のタンパク質バンドを可視化した。最も多量のeGFPを発現する細胞株を選択した。
【0144】
高産生細胞株のうちの一つを、2.0L(ワーキング容量)の発酵槽で培養した。整流装置付きの接種フラスコは、150mlのHD1培地を含有しており、200rpmで振とうしながら24〜48h、29.5℃でインキュベートされた。接種培養物を、以下のものを含有している発酵槽に接種するために使用した:50g/Lグルコース、13.62g/L Na2SO4、0.72g/L K2SO4、0.56g/L KCl、2.27g/L MgSO4・7H2O、1.8g/L KH2PO4、17.5g/L (NH4)2SO4、0.19g/L CaCl2・2H2O、51.5mg FeSO4・7H2O、3.1g/L MnCl2・4H2O、6.2g/L ZnSO4・7H2O、0.04mg CoCl2・6H2O、0.04mg Na2MoO4、2.07g/L CuSO4・5H2O、2.07g/L NiSO4・6H2O、9.75mgチアミン、0.16mgビタミンB12、および3.33mgパントテン酸カルシウム。培養の間、温度は29.5℃であり、dO2%は20%に制御され、グルコース濃度は、初期レベルがこの範囲に入った後、15〜20g/Lに維持され、pHは6.5に維持された。試料は、分析のため、間隔を置いて、無菌的に取り出された。
【0145】
(0.5〜5.0μgの全タンパク質を含有している)無細胞上清の未濃縮試料を、SDS-PAGEにより分離し、タンパク質をPVDF膜に移した。ブロッキングされ洗浄された膜を、上記のように、分泌型eGFPについて探索した。図15を参照のこと。
【0146】
実施例10
シゾキトリウムタンパク質発現ベクターpSchizCpt-s1κbhの構築
pSchizCpt-s1κbhプラスミドは、シゾキトリウムOrfCプロモーター、IgGκサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列に先行するSec1シグナル配列、ならびにOrfCターミネーター領域および変異型シゾキトリウムALS選択可能マーカー配列を含む(図16を参照のこと)。この発現ベクターは以下のように作成された:
【0147】
5'Sec1分泌シグナル配列を含む、図42のコドン使用頻度表を使用してBlue Heron Biotechnologiesにより対応するアミノ酸配列から作製されたIgGのκ鎖をコードする再合成(コドン最適化)された遺伝子を、プラスミドpSchiz-CptのorfCプロモーターとorfCターミネーターとの間にクローニングした。簡単に説明すると、ベクターpSchiz-Cptを、酵素の製造業者の説明(New England Biolabs)に従い、BamHIおよびアルカリホスファターゼにより消化した。BglII(NEB)により消化され、以下のプライマー:

およびSec1シグナルペプチドのためのポリヌクレオチド配列、それに続くκポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:41)を含有している合成最適化DNA分子を保有しているBlue Heron Biotechnologiesにより提供された鋳型を使用して作出されたアンプリコンに、これをライゲートした。得られた細菌形質転換体コロニーを、発現のため適切に整列したベクターインサートについてスクリーニングした。(pSchizCPT-s1κbhと名付けられた)1個のクローンを、さらなる分析、配列の確認、およびシゾキトリウムの形質転換のために選び出した。
【0148】
実施例11
シゾキトリウムによる抗体サブユニットκの発現および分泌
形質転換体細胞株の生成
シゾキトリウムsp.ATCC20888を、24h、27℃で50mlのM2B培地を含有している250mlの振とうフラスコで培養した。吸光度を600nmで測定し、1の吸光度値を有する培養物1mlと等価な容量を、5分間8,000×gで遠心分離した。細胞ペレットを100μlのM2Bに懸濁させ、M2B寒天プレート上の直径2cmの円内に播種した。
【0149】
播種されたシゾキトリウム細胞を含有しているプレートの区域に、1100Psiの圧力で、(XbaIにより直鎖化された)pSchizCptS1κによりコーティングされたM10ビーズを撃ち込んだ。
【0150】
撃ち込みの後、M2Bプレートを27℃で16hインキュベートし、シゾキトリウムが播種されたプレートの中心で増殖中のコロニーを選び出し、10μg/ml SMMを含有しているM2Bプレート上に播種した。24〜72hの後、20個のコロニーを選び出し、25ml培養管内の10mg/ml SMMを含有している5ml M2Bへ接種した。培養管を、72h、135rpmで27℃でインキュベートした。
【0151】
κ発現の検出
上記からの最も不明瞭な振とうフラスコ培養物のうちの10を、発現分析のために選択した。250mlフラスコ内の10μg/ml SMMを含有している50mlのM2Bに、試験管培養物からの0.5mlを接種した。培養物を、24時間135rpmで振とうしながら27℃でインキュベートし、その後、細胞ペレットおよび無細胞上清を10分間の5500×gでの遠心分離により分離した。
【0152】
細胞ペレットを40ml dH2Oに懸濁させ、10分間5500×gで遠心分離し、次いで、その湿重量の2倍の抽出緩衝液に懸濁させた。ペレット湿重量の2倍のガラスビーズを添加し、チューブを4℃で3時間振とうした。得られた細胞ホモジネートを、10分間5000×gで遠心分離し、上清を無細胞抽出物として保持した。
【0153】
無細胞上清を、10000MWのカットオフを有するCentriprepコンセントレーターおよびMicroconコンセントレーター(Amicon)を使用して、およそ50mlから>200μlへと濃縮した。
【0154】
選択された各形質転換体についてタンパク質(無細胞抽出物および濃縮された無細胞上清)3μgを、およそ45分間(色素前線がゲルの下端からちょうど流れ出すまで)、200VでMOPSランニング緩衝液を用いて4〜12%Bis Tris SDS PAGE(xt criterion,BioRad)で実行した。タンパク質バンドを、90分間、70Vで、Nupage転写緩衝液を使用してPVDF膜に転写した。膜を5%(w/v)粉乳を含む0.1%トゥイーン20含有TBSによりブロッキングし、アルカリホスファターゼ標識抗ヒトκIgG(Sigma)を使用したウエスタンブロットを介して、抗体サブユニットκの局在位置を決定した。陽性バンドをBCIP/NBTホスファターゼ基質(KPL)により可視化した。
【0155】
抗体サブユニットκは、主に、上記のように培養された振とうフラスコ培養物からの無細胞上清に明白に検出可能であった(図17を参照のこと)。真正κ標準物と識別不可能なMWを有するκタンパク質の無細胞上清への出現は、κサブユニットが分泌され、適切な翻訳後修飾(Sec1分泌シグナルの切断)を受けることと一致していた。
【0156】
実施例12
発酵槽におけるシゾキトリウムによる抗体サブユニットκの発現
培養
最も多量の細胞外κサブユニットを発現すると考えられた二つのクローン(1および3)を、2.0L(ワーキング容量)の発酵槽で培養した。整流装置付き接種フラスコは、150mlのHD1培地を含有しており、200rpmで振とうしながら24〜48時間29.5℃でインキュベートされた。接種培養物を、以下のものを含有している発酵槽に接種するために使用した:50g/Lグルコース、13.62g/L Na2SO4、0.72g/L K2SO4、0.56g/L KCl、2.27g/L MgSO4・7H2O、1.8g/L KH2PO4、17.5g/L (NH4)2SO4、0.19g/L CaCl2・2H2O、51.5mg FeSO4・7H2O、3.1g/L MnCl2・4H2O、6.2g/L ZnSO4・7H2O、0.04mg CoCl2・6H2O、0.04mg Na2MoO4、2.07g/L CuSO4・5H2O、2.07g/L NiSO4・6H2O、9.75mgチアミン、0.16mgビタミンB12、および3.33mgパントテン酸カルシウム。培養の間、温度は29.5℃であり、dO2%は20%に制御され、グルコース濃度は、初期レベルがこの範囲に入った後、15〜20g/Lの間に維持され、pHは6.5に維持された。試料は、分析のため、間隔を置いて無菌的に取り出された。
【0157】
κ発現の検出
無細胞上清を濃縮することなく分析し、タンパク質標準物としてBSAを用いたBradford(Sigma Bradford Reagent)の方法を使用して、全タンパク質を決定した。上記の振とうフラスコ培養物について記載されたのと同様に、κサブユニット発現を確認するためのウエスタン分析を実施した。
【0158】
κ発現の定量化は、いずれも製造業者の説明に従って、Human Kappa-B+F Elisa Quantification Kit(Bethyl Laboratories Inc.)およびFluoro Omegaプレートリーダ(BMG Labtech)を使用して実施された。図18を参照のこと。
【0159】
実施例13
pAB0011発現ベクターの構築
2015bp長のアンプリコンを作出するため、シゾキトリウムsp.ATCC20888から抽出されたgDNAを鋳型として使用して、以下のプライマーを用いて、PCRを実施した:

【0160】
アンプリコンをゲル精製し、以下のプライマーを用いたその後のPCRのための鋳型として使用した:

【0161】
得られた1017bpのアンプリコンを精製し、KpnIおよびBamHIにより消化し、予め精製されKpnIおよびBamHIにより消化されたpSchiz-CPT(+)-s1GFP(6h)にライゲートした。ライゲーション産物を大腸菌を形質転換するために使用し、得られたコロニーからプラスミドを精製し、制限消化によりスクリーニングした。予想される制限消化パターンを有し、60Sロングプロモーターを含む一つのプラスミドクローン(#4.1)を、サンガー配列決定により確証し、シゾキトリウムの形質転換のためpAB0011と名付けた。図24を参照のこと。ベクターpAB0011は、2008年11月18日にAmerican Type Culture Collection,Patent Depository(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209)に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-9614を与えられた。
【0162】
実施例14
pAB0018発現ベクターの構築
2268bp長のアンプリコンを作出するため、シゾキトリウムsp.ATCC20888から抽出されたgDNAを鋳型として使用して、以下のプライマーを用いて、PCRを実施した:

【0163】
このアンプリコンをゲル精製し、以下のプライマーを用いたその後のPCRのための鋳型として使用した:

【0164】
得られた1060bpのアンプリコンを精製し、KpnIおよびBamHIにより消化し、予め精製されKpnIおよびBamHIにより消化されたpSchiz-CPT(+)-s1GFP(6h)にライゲートした。ライゲーション産物を大腸菌を形質転換するために使用し、得られたコロニーからプラスミドを精製し、制限消化によりスクリーニングした。予想される制限消化パターンを有し、EF-1ロングプロモーターを含有している一つのプラスミドクローン(#6.1)を、サンガー配列決定により確証し、シゾキトリウムの形質転換のためpAB0018と名付けた。図25を参照のこと。ベクターpAB0018は、2008年11月18日にAmerican Type Culture Collection,Patent Depository(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209)に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-9616を与えられた。
【0165】
実施例15
pAB0022発現ベクターの構築
シゾキトリウム培養物の無細胞上清を、SDS-PAGEにより分析し、これから、Sec1p(Sec1タンパク質)と名付けられた単一のタンパク質バンドを、均質になるまで精製するために選択した。このタンパク質のペプチド断片配列を質量分析技術を使用して同定し、BLASTアルゴリズム(tBLASTn、ギャップなしのアラインメント、低複雑度フィルタリングオフ、期待値=10000、行列=PAM30)(ftp://ncbi.nlm.nih.gov/blast)を使用して、シゾキトリウム全ゲノム配列の概念的翻訳に相関させた。ペプチド配列全てをコードする一つのオープンリーディングフレームを同定し、Sec1g(Sec1遺伝子)と名付けた。開始ATGの上流の推定プロモーター配列も同定し合成した(Blue Heron Biotechnologies)。合成Sec1gプロモーターを含有しているベクターを、以下のプライマーを用いたPCRのために鋳型として使用した:

【0166】
得られた1438bpのアンプリコンを精製し、KpnIおよびBamHIにより消化し、予め精製されKpnIおよびBamHIにより消化されたpSchiz-CPT(+)-s1GFP(6h)にライゲートした。ライゲーション産物を大腸菌を形質転換するために使用し、得られたコロニーからプラスミドを精製し制限消化によりスクリーニングした。予想される制限消化パターンを有し、Sec1プロモーターを含有している一つのプラスミドクローン(#8.1)を、サンガー配列決定により確証し、シゾキトリウムの形質転換のためpAB0022と名付けた。図26を参照のこと。ベクターpAB0022は、2008年11月18日にAmerican Type Culture Collection,Patent Depository(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209)に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-9613を与えられた。
【0167】
実施例16
異種遺伝子の転写
伸長因子1(EF1)および60Sリボソーム単位をコードする遺伝子のためのプロモーターを、シゾキトリウムにおける異種遺伝子の転写のためのプロモーターとして選択した。シゾキトリウムのゲノム配列を検索し、両遺伝子について発表されている配列と相同性を示す遺伝子を同定した。各プロモーターについて二つのバージョン(一つはショート、一つはロング)を、PCRを介してクローニングした。
【0168】
SEC1遺伝子の発現を駆動するプロモーターも、シゾキトリウムにおける異種遺伝子の転写のためのプロモーターとして選択した。SEC1遺伝子はシゾキトリウム培養物で今までのところ同定された唯一のネイティブ分泌型グリコシル化タンパク質をコードするため、このプロモーターは、分泌型グリコシル化タンパク質の産生のために最も適している増殖期へと異種タンパク質の発現を合わせることができた。
【0169】
S1eGFP構築物を含有しているベクターcpt(+)(即ち、OrfCプロモーターにより発現が駆動される、N末端にSEC1分泌シグナルを含むeGFP遺伝子−ベクターCL0001)を、OrfCプロモーターを切り出し、この要素を以下の配列のうちの一つに交換するために修飾した:
EF1プロモーター(ショートバージョン)=ベクターAB0015由来のEF1-S
EF1プロモーター(ロングバージョン)=ベクターAB0018由来のEF1-L
60Sプロモーター(ショートバージョン)=ベクターAB0010由来の60S-S
60Sプロモーター(ロングバージョン)=ベクターAB0011由来の60S-L
SEC1プロモーター=ベクターAB0022由来のSec1
【0170】
シゾキトリウムsp.20888を、以前に記載されたような微粒子銃を介して五つのベクターの各々により形質転換した。各形質転換について10個の生存可能細胞株を、分析のため、ランダムに選択した。CL0001による形質転換を、五つのベクターの各々について対照として実施した。CL0001による形質転換については、5個の生存可能細胞株を、分析のため、ランダムに選択した。
【0171】
形質転換体細胞株を、200rpmで連続的に振とうしながら29.5℃で72h、50ml M2Bを含有している250ml振とうフラスコで培養した。バイオマスを、10分間の5000×gでの遠心分離により除去し、無細胞上清をCentriprepコンセントレーター(MWCO 10000)を使用して、およそ1mlへと濃縮した。無細胞上清試料のタンパク質濃度を、Bradfordの方法を使用して測定した。
【0172】
無細胞上清のアリコートを、還元条件下でSDSアクリルアミドゲル(XT Criterion)で分離し、分離されたタンパク質バンドをPVDF膜に転写した。eGFPをAP標識抗eGFP抗体を使用して検出し、NCIP/NBT試薬を使用して可視化した。
【0173】
eGFPを発現し分泌する細胞株を決定するため、最大量の濃縮上清(7μl)を各レーンで分離した(表1)。eGFP発現のレベルは、プロモーター間で変動し、個々のプロモーターについても細胞株間で変動したが、(比較された6つのプロモーターについて分析された55の細胞株のうち)33の細胞株が、eGFPを発現することが示された(示されないデータ)。
【0174】
(表1)検出可能な量の分泌型eGFPを発現する各形質転換からの細胞株の数

【0175】
全ての細胞株が分泌型eGFPを発現したのではなかったが、少なくとも、細胞株のおよそ半分は、検出可能なレベルのeGFPを産生し、各プロモーターはeGFPの発現を指図することができた。
【0176】
eGFPを発現し分泌することが見出された細胞株を、相対的なプロモーター強度を比較するため、さらに分析した。eGFPを発現することが決定された各培養物の無細胞上清からのタンパク質を、SDSアクリルアミドゲルに負荷し、各レーン1μgにノーマライズした。タンパク質を電気泳動により分離し、分離されたタンパク質をPVDF膜に転写し、上記のように、AP標識抗eGFP抗体を使用して、eGFPについて探索した。図27を参照のこと。eGFPについての一次スクリーニングにおいて負荷された上清タンパク質の量は、図27を生成した実験において使用された量のおよそ10倍であった。従って、実験のために負荷されたタンパク質レベルにおいては、いくつかの試料について検出レベル未満であったため、異種eGFPタンパク質は、図27の全てのレーンにおいて明白ではない。1μgタンパク質/レーンの負荷で、OrfCプロモーターからの分泌型eGFPの発現は、検出可能な範囲未満であった。しかしながら、その他のプロモーターの全てにより駆動されたeGFPの発現/分泌は、生成された細胞株のうちの少なくともいくつかにおいて検出可能であった。これは、選択されたプロモーターEF1、60S、およびSEC1が、全て、OrfCプロモーターと比較して「強力な」プロモーターであったことを証明した。特に、EF1-L形質転換体からのある種の細胞株における分泌型eGFPの発現は、その他のプロモーター構築物のいずれよりも明白に大きく、このことから、このプロモーターが試験されたプロモーターの中で最も強力であることが示された。
【0177】
EF1-Lプロモーターの強度の確認は、蛍光顕微鏡検の下で、典型的なOrfC形質転換体CL0001-4と比較して、EF1-L形質転換体細胞株AB0018-9およびAB0018-10における発現を観察することにより、入手された。図28を参照のこと。CL0001-4細胞株は、中程度の蛍光(Fluo:ISO 200 1.1 sec panes)を示したが、AB0018-9細胞株およびAB0018-10細胞株は、細胞内eGFPの実質的な蓄積を示す明白な蛍光を示した。
【0178】
実施例17
シゾキトリウムにおけるグリコシル化プロファイル
ネイティブシゾキトリウムタンパク質のN-グリコシル化を決定した。シゾキトリウムは、哺乳動物および昆虫のグリコシル化経路と共通の工程を共有することが見出され、酵母に特徴的な過マンノシル化経路を利用することは観察されなかった。図29および図30は、シゾキトリウム分泌型タンパク質の質量分析により検出されたグリカン構造を示す。特に、特徴的なピークは、m/z1580のGlcNAc2Man5、m/z1785のGlcNAc2Man6、およびm/z1991のGlcNAc2Man7について観察された。
【0179】
実施例18
電気穿孔によるシゾキトリウムの形質転換
シゾキトリウムsp.ATCC20888細胞を、29℃で48h、200rpmのシェーカー上で、M50-20培地(米国公開第2008/0022422号を参照のこと)で増殖させた。細胞を新鮮な培地で100倍希釈し、一夜増殖させた。細胞を遠心分離し、2 OD600単位の最終濃度で、1Mマンニトールおよび10mM CaCl2(pH5.5)に再懸濁させた。5mLの細胞を、0.25mg/mLプロテアーゼXIV(Sigma Chemical)と混合し、4h、シェーカー上でインキュベートした。細胞を、10%氷冷グリセロールにより2回洗浄し、500μLの冷10%グリセロールに再懸濁させた。90μLを、予冷された0.2cmギャップのエレクトロポレーションキュベット(Biorad 165-2086)に分注した。10μlのDNA(1〜5μg)をキュベットに添加し、穏和に混合し、氷上で維持した。200オーム(抵抗)、25μF、および0V〜500V(0.1cmキュベットギャップ距離の場合)または500V(0.2cmのキュベットギャップ距離の場合)の範囲の電位で、組換えベクターを細胞に電気穿孔した。0.5mLの培地をキュベットに直ちに添加した。次いで、細胞を4.5mLのM50-20培地に移し、シェーカー上で100rpmで2〜3hインキュベートした。細胞を遠心分離し、0.5mLの培地に再懸濁させ、(必要であれば)適切な選択を有する2〜5枚のM2Bプレートへ播種し、29℃でインキュベートした。
【0180】
表2は、異なる酵素の組み合わせによる前処理の後に生成されたシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換体の数を示す(300Vおよび0.1cmキュベットギャップ距離のパラメータ)。
【0181】
表3は、異なる酵素の組み合わせおよび電位による前処理の後に生成されたシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換体の数を示す(0.1cmキュベットギャップ距離)。
【0182】
表4は、異なる電気穿孔キュベットギャップ距離を使用して生成されたシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換体の数を示す。細胞は0.25mg/mLプロテアーゼXIVにより前処理された。
【0183】
表5は、異なる電気穿孔電位を使用して生成されたシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換体の数を示す。細胞は、0.1mg/mLカタツムリアセトン粉末+0.25mg/mLプロテアーゼXIVにより前処理された(0.1cmキュベットギャップ距離)。
【0184】
(表2)異なる酵素の組み合わせによる前処理の後に生成されたシゾキトリウム形質転換体

【0185】
(表3)異なる酵素の組み合わせおよび電位による前処理の後に生成されたシゾキトリウム形質転換体

【0186】
(表4)(0.25mg/mLプロテアーゼXIVにより前処理された)異なる電気穿孔キュベットギャップ距離を使用して生成されたシゾキトリウム形質転換体

【0187】
(表5)(0.1mg/mLカタツムリアセトン粉末+0.25mg/mLプロテアーゼXIVにより前処理された)異なる電気穿孔電位を使用して生成されたシゾキトリウム形質転換体

【0188】
実施例19
シゾキトリウムにおけるインベルターゼの発現
ベクターpAB0018をBamHIおよびNdeIにより消化し、838bp長および9879bp長の2個の断片を得た。9879bpの断片を寒天ゲルにおける標準的な電気泳動技術により分画し、市販のDNA精製キットを使用して精製し、シゾキトリウムのSec1タンパク質のネイティブ分泌シグナルをコードするポリヌクレオチド配列、それに続く、シゾキトリウムにおける発現のためにコドン最適化された、サッカロミセス・セレビシエの成熟インベルターゼタンパク質(SUC2)をコードする合成配列を含む配列(SEQ ID NO:57)にライゲートした(図42を参照のこと)。Sec1シグナルペプチドおよびサッカロミセス・セレビシエインベルターゼタンパク質をコードする配列を含有している融合配列を、シゾキトリウムベクターpSchizに挿入し、続いて、BamHIおよびNdeIにより消化して、SEQ ID NO:57を得た。
【0189】
ライゲーション産物を、製造業者のプロトコルを使用して、市販されているコンピテントDH5α E.coliセル(Invitrogen)の株を形質転換するために使用した。得られたクローンのいくつかを繁殖させ、それらのプラスミドを抽出し、精製した。次いで、ライゲーションが、期待されたプラスミドベクターを生成したことを確認するため、これらのプラスミドを制限消化またはPCRによりスクリーニングした。SEQ ID NO:57とのライゲーションに起因する一つのそのようなプラスミドベクターを、サンガー配列決定により確証し、pCL0076(SEQ ID NO:58)と名付けた。図31を参照のこと。
【0190】
シゾキトリウムsp.ATCC20888およびB76-32と名付けられた遺伝学的に修飾されたシゾキトリウム誘導体の培養物を、10g/Lグルコース、0.8g/L (NH4)2SO4、5g/L Na2SO4、2g/L MgSO4・7H2O、0.5g/L KH2PO4、0.5g/L KCl、0.1g/L CaCl2・2H2O、0.1M MES(pH6.0)、0.1%PB26金属、および0.1%PB26ビタミン(v/v)からなるM2B培地で増殖させた。PB26ビタミンは、50mg/mLビタミンB12、100μg/mLチアミン、および100μg/mLパントテン酸Caからなっていた。PB26金属は、pH4.5に調整されており、3g/L FeSO4・7H2O、1g/L MnCl2・4H2O、800mg/mL ZnSO4・7H2O、20mg/mL CoCl2・6H2O、10mg/mL Na2MoO4・2H2O、600mg/mL CuSO4・5H2O、および800mg/mL NiSO4・6H2Oからなっていた。PB26ストック溶液は、別々に濾過滅菌され、加圧減菌の後にブロスに添加された。グルコース、KH2PO4、およびCaCl2・2H2Oは、塩沈殿および炭水化物カラメル化を防止するため、混合する前に、各々、ブロス成分の残りとは別に加圧減菌された。全ての培地成分がSigma Chemical(St.Louis,MO)から購入された。株B76-32は、米国特許第7,211,418号ならびに米国特許公開第2008/0022422号および第2008/0026434号に従って操作されたシゾキトリウムsp.ATCC20888の誘導体である。
【0191】
シゾキトリウムsp.ATCC20888およびB76-32の培養物を、対数期まで増殖させ、下記のような酵素前処理を含む電気穿孔を使用して、ベクターpCL0076により形質転換した。
【0192】
酵素前処理を含む電気穿孔−細胞を30℃で2日間200rpmのシェーカー上で50mLのM50-20培地(米国公開第2008/0022422号を参照のこと)で増殖させた。細胞をM2B培地(以下のパラグラフを参照のこと)で100倍希釈し、対数増殖期中期(1.5〜2.5のOD600)に到達するよう、一夜(16〜24h)培養した。細胞を約3000×gで5分間50mLコニカルチューブで遠心分離した。上清を除去し、細胞を2 OD600単位の最終濃度に達するよう、適当な容量の1Mマンニトール(pH5.5)に再懸濁させた。5mLの細胞を25mL振とうフラスコへ分注し、10mM CaCl2(1.0Mストック、濾過滅菌)および0.25mg/mLプロテアーゼXIV(10mg/mLストック、濾過滅菌;Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を補足した。フラスコを30℃および約100rpmで4hシェーカー上でインキュベートした。プロトプラスト化の程度を決定するため、細胞を顕微鏡下でモニタリングし、単細胞を望んだ。細胞を、丸底チューブ(即ち、14mL Falcon(商標)チューブ、BD Biosciences,San Jose,CA)で、約2500×gで5分間遠心分離した。上清を除去し、細胞を5mLの氷冷10%グリセロールにより穏和に再懸濁させた。細胞を、丸底チューブで約2500×gで5分間再遠心分離した。上清を除去し、細胞を広口径ピペットチップを使用して、500μLの氷冷10%グリセロールにより穏和に再懸濁させた。90μLの細胞を、予冷されたエレクトロポレーションキュベット(Gene Pulser(登録商標)キュベット−0.1cmギャップまたは0.2cmギャップ、Bio-Rad,Hercules,CA)へ分注した。1μg〜5μgのDNA(10μL以下の容量)をキュベットに添加し、ピペットチップにより穏和に混合し、5分間氷上に置いた。細胞を、200オーム(抵抗)、25μF(キャパシタンス)、および250V(0.1cmギャップの場合)もしくは500V(0.2cmギャップ)のいずれかで電気穿孔した。0.5mLのM50-20培地をキュベットに直ちに添加した。次いで、細胞を25mL振とうフラスコ内の4.5mLのM50-20培地に移し、シェーカー上で30℃および約100rpmで2〜3hインキュベートした。細胞を丸底チューブで約2500×gで5分間遠心分離した。上清を除去し、細胞ペレットを0.5mLのM50-20培地に再懸濁させた。細胞を、(必要であれば)適切な選択を有する適切な数(2〜5枚)のM2Bプレートに播種し、30℃でインキュベートした。
【0193】
形質転換体を、M2B+SMM培地での増殖のため選択するか、またはMSFM+スクロースへ播種することによるスクロースでの増殖のため直接選択した。MSFM+スクロース選択については、1〜2週後、コロニーを、新鮮なスクロース含有培地へいくつかのパスにより再播種した。インベルターゼの発現は、スクロースを唯一の炭素源として増殖したヤブレツボカビ類コロニーのための選択可能マーカーとして使用され得ることが決定された。
【0194】
以下の実験のため、一次形質転換体を、27℃で2〜6日間のインキュベーションの後、20g/L寒天(VWR,West Chester,PA)および10μg/mL SMM(Chem Service,Westchester,PA)を含有している固形M2B培地での増殖のため選択した。全ての一次形質転換体を、SMMを含む新鮮なM2Bプレートに手動で移した。1週後、コロニーを、SMMを含まないMSFMおよび5g/Lスクロースに移した。1週後、最大コロニーを、新鮮なMSFM/スクロース培地プレートに移した。スクロースで増殖するシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換体のうちの10個を、さらなる特徴決定のため選択し、それぞれ、1-1、1-3、1-24、3-1、3-2、3-5、3-21、4-1、4-24、および4-31と名付けた。スクロースで増殖するB76-32形質転換体のうちの9個を、さらなる特徴決定のため選択し、B76-32#2、#12、#19、326、#30、#39、#42、#56、および#61と名付けた。
【0195】
スクロースで増殖するコロニー(1-1、1-3、1-24、3-1、3-2、3-5、3-21、4-1、4-24、4-31)を、接種ループを使用してプレートから除去し、5mLのスクロース培地を含有している培養管へ移し、シェーカー上で29℃で4日間増殖させた。2mLのこの培養物を、250mlフラスコ内の50mLの培地(MSFMまたはSSFM)へ接種するために使用し、200rpmのシェーカー上で29℃で増殖させた。
【0196】
親株シゾキトリウムsp.ATCC20888の対照フラスコを、グルコース含有培地を使用する以外は同様に増殖させた。細胞を7日後に採集した。細胞を遠心分離し、50%イソプロパノール:蒸留水混合物により洗浄した。ペレット化された細胞を凍結乾燥させ、計量し、脂肪酸メチルエステル(FAME)分析を実施した。シゾキトリウムsp.ATCC20888またはB76-32のCL0076形質転換体の増殖および脂肪含有量を、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国公開第2008/0022422号に以前に記載されたような重量測定および誘導体化された油のガスクロマトグラフィによりアッセイした。結果は表6〜9に示される。形質転換体および親株の振とうフラスコ培養物からのペレットの乾燥重量および脂肪含有量が、図32〜37に示される。
【0197】
SSFM培地:50g/Lグルコースまたはスクロース、13.6g/L Na2SO4、0.7g/L K2SO4、0.36g/L KCl、2.3g/L MgSO4・7H2O、0.1M MES(pH6.0)、1.2g/L (NH4)2SO4、0.13g/L グルタミン酸ナトリウム、0.056g/L KH2PO4、および0.2g/L CaCl2・2H2O。ビタミンは、0.16g/LビタミンB12、9.7g/Lチアミン、および3.3g/Lパントテン酸Caからなるストックから、1mL/Lで添加された。微量金属は、pH2.5に調整された、1g/Lクエン酸、5.2g/L FeSO4・7H2O、1.5g/L MnCl2・4H2O、1.5g/L ZnSO4・7H2O、0.02g/L CoCl2・6H2O、0.02g/L Na2MoO4・2H2O、1.0g/L CuSO4・5H2O、および1.0g/L NiSO4・6H2Oからなるストックから、2mL/Lで添加された。
【0198】
修飾SFM(MSFM)培地:10g/Lグルコースまたはスクロース、25.0g/L NaCl、1.0g/L KCl、0.2g/L (NH4)2SO4、5g/L、5.0g/L MgSO4・7H2O、0.1g/L KH2PO4、0.3g/L CaCl2・2H2O、0.1M HEPES(pH7.0)、0.1%PB26金属、および0.1%PB26ビタミン(v/v)。ビタミンは、0.16g/L ビタミンB12、9.7g/Lチアミン、および3.3g/Lパントテン酸Caからなるストックから、2mL/Lで添加された。金属は、pH2.5に調整された、1g/Lクエン酸、5.2g/L FeSO4・7H2O、1.5g/L MnCl2・4H2O、1.5g/L ZnSO4・7H2O、0.02g/L CoCl2・6H2O、0.02g/L Na2MoO4・2H2O、1.0g/L CuSO4・5H2O、および1.0g/L NiSO4・6H2Oからなるストックから、2mL/Lで添加された。
【0199】
表6は、グルコースを含むMSFM、フルクトースを含むMSFM、スクロースを含むMSFM、または炭素源が添加されていないMSFMで増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888の増殖および脂肪レベルを示す。
【0200】
表7は、グルコースを含むMSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888(対照)およびスクロースを含むMSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換細胞株についての乾燥重量および脂肪酸(%)を示す。
【0201】
表8は、グルコースを含むSSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888(対照)およびスクロースを含むSSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換細胞株についての乾燥重量および脂肪酸(%)を示す。
【0202】
表9は、グルコースを含むSSFM培地で増殖したシゾキトリウムB76-32(対照)およびスクロースを含むSSFM培地で増殖したシゾキトリウムB76-32形質転換細胞株についての乾燥重量および脂肪酸(%)を示す。
【0203】
(表6)グルコースを含むMSFM、フルクトースを含むMSFM、スクロースを含むMSFM、または炭素源が添加されていないMSFMで増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888の増殖および脂肪レベル

DW=乾燥重量
FA=脂肪酸
【0204】
(表7)スクロースを含むMSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換細胞株

DW=乾燥重量
FA=脂肪酸
【0205】
(表8)スクロースを含むSSFM培地で増殖したシゾキトリウムsp.ATCC20888形質転換細胞株

DW=乾燥重量
FA=脂肪酸
【0206】
(表9)スクロースを含むSSFM培地で増殖したB76-32形質転換細胞株

DW=乾燥重量
FA=脂肪酸
【0207】
イムノブロッティング−3日間SSFMで増殖した50mL振とうフラスコ培養物の無細胞上清(米国公開第2008/0022422号を参照のこと)を、培養物を5000×gで遠心分離した後、収集した。培養上清を、SDS-PAGEのために直接使用するか、または10kDaより重い全ての成分の濃縮を許容する透過膜を装備した市販されているコンセントレーターを使用して、50〜100倍濃縮した。全タンパク質濃度をBradfordアッセイ(Biorad)により測定した。次いで、標準的なイムノブロッティング法(Sambrook et al.)に従い、イムノブロット分析により、インベルターゼの発現を確証した。簡単に説明すると、タンパク質(0.625μg〜5μg)を、bis-trisゲル(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)上でのSDS-PAGEにより分離した。次いで、タンパク質をクーマシーブルー(SimplyBlue Safe Stain,Invitrogen)により染色するか、またはポリフッ化ビニリデン膜に転写し、サッカロミセス・セレビシエインベルターゼ(Sigma)の純粋調製物を注射されたウサギに由来するインベルターゼ抗血清(Open Biosystems)を用いて、インベルターゼタンパク質の存在について探索した。その後、膜を、アルカリホスファターゼとカップリングしたマウス抗ウサギ二次抗体(Promega)と共にインキュベートした。次いで、膜を、製造業者の説明(KPL,Gaithersburg,MD)に従って、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸/ニトロブルーテトラゾリウム溶液(BCIP/NBT)により処理した。一例が図38に提示される。抗インベルターゼイムノブロットおよび対応するクーマシーブルー染色ゲルが、それぞれ、パネルAおよびBに提示される。クローン1〜3の培養上清に見られた4本の主要なバンドのうち、1本のみが抗インベルターゼ抗血清と反応することが示された。タンパク質の同一性をペプチド配列分析により確認した。
【0208】
機能アッセイ−酵素EC 3.2.1.26は、スクロースのフルクトースおよびグルコースへの加水分解を触媒するインベルターゼ型スクラーゼである。スクラーゼ活性を、スクロースからのフルクトースおよびグルコースの遊離の速度により測定した。発酵ブロス上清にスクロースを添加することにより粗くアッセイを実施し、グルコース/フルクトース含有量をHPLCにより測定した。
【0209】
シゾキトリウム株B76-32#3を、29℃で、50mL振とうフラスコにおいて、ODが約4に達するまで、(スクロースを含む)MSFMで増殖させた。細胞を、4500×gで15分間スピンし、上清中のインベルターゼ活性を測定した。変動する容量の発酵ブロスに0.1Mスクロースを添加し、最終容量を1mLに調整することにより、インベルターゼをアッセイした。反応物を3分間55℃でインキュベートした。10分間100℃で反応を終結させ、次いで、HPLCによるグルコース、フルクトース、およびスクロースの決定からなる分析まで凍結させた。HPLCは、Liu et al.,Food Sci.28:293-296(2007)に記載された方法の変法を使用して実施された。簡単に説明すると、単糖および二糖をLuna NH2カラムを用いたHPLCを使用して分離し、RID(屈折率検出器)を使用して検出した。保持時間を標準物のものと比較することにより、同定を実施した。定量化は外部標準較正によった。スクロース濃度の関数としての反応速度が、図39Aに示される。標準的なラインウィーバーバークプロットから、Km(33.4mM)およびVmax(6.8mMグルコース/分)を計算した。図39Bを参照のこと。
【0210】
グリコシル化分析−上清タンパク質を、4〜12%bis-trisゲル(Invitrogen)上でのSDS-PAGEにより分離した。次いで、タンパク質をクーマシーブルー(SimplyBlue Safe Stain,Invitrogen)により染色した。染色された関心対象のタンパク質をゲルから切り出し、より小さな片(およそ1mm3)へと切断し、色が透明になるまで、40mM重炭酸アンモニウム(AmBic)および100%アセトニトリルにより交互に脱染した。脱染されたゲルを、1h、55℃で、10mM DTTを含む40mM AmBicで再膨潤させた。DTT溶液を、55mMヨードアセトアミド(IAM)と交換し、45分間暗所でインキュベートした。インキュベーションの後、40mM AmBicおよび100%アセトニトリルにより交互に2回洗浄した。脱水したゲルを、まず、45分間、氷上で、トリプシン溶液(トリプシンを含む40mM AmBic)で再膨潤させ、タンパク質消化を37℃で一夜実施した。上清をもう一つのチューブへ移した。ペプチドおよび糖ペプチドを、20%アセトニトリルを含む5%ギ酸、50%アセトニトリルを含む5%ギ酸、次いで80%アセトニトリルを含む5%ギ酸により連続的にゲルから抽出した。試料溶液を、乾燥させ、1本のチューブへ合わせた。抽出されたトリプシン消化物を、C18 sep-pakカートリッジに通し、(塩およびSDSのような)汚染物質を除去するため、5%酢酸により洗浄した。ペプチドおよび糖ペプチドを、20%イソプロパノールを含む5%酢酸、40%イソプロパノールを含む5%酢酸、および100%イソプロパノールにより連続的に溶出させ、スピードバキューム(speed vacuum)コンセントレーターで乾燥させた。乾燥した試料を合わせ、次いで、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)により再生し、トリプシンを不活化するため、5分間100℃で加熱した。トリプシン消化物を、N-グリカンを放出するため、37℃で一夜、PNGase Fと共にインキュベートした。消化の後、試料をC18 sep-pakカートリッジに通し、炭水化物画分を5%酢酸により溶出させ、凍結乾燥により乾燥させた。放出されたN結合型オリゴ糖を、Anumula and Taylor,Anal Biochem.203:101-108(1992)の方法に基づき過メチル化し、質量分析によりプロファイリングした。質量分析は、Complex Carbohydrates Research Center(Aoki K et al.,J.Biol.Chem.282:9127-42(2007))で開発された方法に従って実施された。質量分析はNSI-LTQ/MSnを使用することにより決定された。簡単に説明すると、過メチル化グリカンを、1mM NaOHを含む50%メタノールに溶解させ、0.4μL/分の一定の流速で装置(LTQ,Thermo Finnigan)へ直接注入した。MS分析を陽イオンモードで実施した。全イオンマッピング自動MS/MS分析(35衝突エネルギー)のため、500〜2000のm/z範囲を、前のウィンドウに2質量単位だけオーバーラップする連続的な2.8質量単位ウィンドウでスキャンした。
【0211】
グリカンを示すフラグメントイオンの存在を調査するため、全イオンマッピングを実施した。m/z500からm/z2000までの全てのMS/MSデータを採取し、生データを手動で分析した。NSI-全イオンマッピングにより入手された種のクロマトグラムおよび表は、図40Aおよび図40Bに示される。このクロマトグラムをスキャンフィルターにより処理した;m/z139のニュートラルロスは高マンノース型グリカンの特徴である。全イオンマッピングは、この試料が、長いマンノース鎖を有する一連の高マンノース型グリカンを含有していることを明らかにした。これらの結果は、実施例17と同一の方法論により決定されたような、ネイティブシゾキトリウム分泌型タンパク質上に検出されたN-グリカン構造に類似している(図30を参照のこと)。
【0212】
実施例20
シゾキトリウムにおけるクロコウジカビインベルターゼの発現
ベクターpAB0018(ATCCアクセッション番号PTA-9616)を、HindIIIにより消化し、リョクトウヌクレアーゼにより処理し、精製し、次いで、KpnIによりさらに消化して、様々なサイズの4個の断片を生成した。2552bpの断片を、寒天ゲルにおける標準的な電気泳動技術により単離し、市販のDNA精製キットを使用して精製した。次いで、PmeIおよびKpnによるpAB0018の第2の消化を実施した。この消化物から6732bpの断片を単離し、精製し、2552bpの断片にライゲートした。次いで、ライゲーション産物を、製造業者のプロトコルを使用して、市販されているコンピテントDH5-α E.coliセル(Invitrogen)の株を形質転換するために使用した。ライゲーションが、期待されたプラスミド構造を生成したことを確認するため、アンピシリン耐性クローンからのプラスミドを繁殖させ、精製し、次いで、制限消化またはPCRによりスクリーニングした。一つの確証されたプラスミドをpCL0120と名付けた。図43を参照のこと。
【0213】
真菌クロコウジカビ由来の成熟型Suc1インベルターゼタンパク質(GenBankアクセッション番号S33920)を、図42のシゾキトリウムコドン使用頻度表を使用して、シゾキトリウムにおける発現のためにコドン最適化した(Blue Heron Biotechnology,Bothell,WAにより実施されたコドン最適化)。コドン最適化された配列を合成し、得られたポリヌクレオチド配列を、内在性シグナルペプチドの代わりにN末端リーダーとしてシゾキトリウムSec1シグナルペプチド(「Sec1 ss」)をコードするポリヌクレオチド配列と融合させた。得られた「s1Suc1」核酸配列のコーディング領域(SEQ ID NO:75)は、図44に示される。このコドン最適化されたs1Suc1ポリヌクレオチドを、標準的な技術に従い、挿入およびライゲーションのため、5'制限部位BamHIおよび3'制限部位NdeIを使用して、ベクターpCL0120へクローニングした。得られたベクターpCL0137のプラスミドマップは、図45に示される。野生型株シゾキトリウムsp.ATCC20888を、このベクターにより形質転換し、得られたクローンを、SMMを含有している固形SSFM培地で選択した。次いで、SMM耐性クローンを、増殖についてアッセイするため、唯一の炭素源としてスクロースを含有しているSSFM固形培地に再播種した。形質転換実験に依り、SMM耐性一次形質転換体の50%〜90%が、スクロース培地上で増殖可能であった。
【0214】
本明細書に記載された様々な局面、態様、およびオプションの全てを、全ての任意のバリエーションで組み合わせることが可能である。
【0215】
本明細書中に言及された全ての刊行物、特許、および特許出願が、あたかも、個々の刊行物、特許、または特許出願が、各々、参照により組み入れられると具体的に個々に示されたかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:3のポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
SEQ ID NO:4のポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項3】
SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチド配列がSEQ ID NO:2を含む、請求項3記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
SEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチド配列がSEQ ID NO:38を含む、請求項5記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
SEQ ID NO:42のポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項8】
SEQ ID NO:43のポリヌクレオチド配列を含む、請求項7記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
SEQ ID NO:44のポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項10】
SEQ ID NO:45のポリヌクレオチド配列を含む、請求項9記載の単離された核酸分子。
【請求項11】
SEQ ID NO:46のポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項記載のポリヌクレオチド配列に完全に相補的なポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項記載の単離された核酸分子またはそれらの組み合わせを含む、組換え核酸分子。
【請求項14】
ベクターである、請求項13記載の組換え核酸分子。
【請求項15】
単離された核酸分子が、タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に機能的に連結されている、請求項13または14記載の組換え核酸分子。
【請求項16】
タンパク質が分泌シグナルに機能的に連結されている、請求項15記載の組換え核酸分子。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか一項記載の単離された核酸分子、請求項13〜16のいずれか一項記載の組換え核酸分子、またはそれらの組み合わせを含む、宿主細胞。
【請求項18】
ヤブレツボカビ(Thraustochytriales)目のメンバーである、請求項17記載の宿主細胞。
【請求項19】
シゾキトリウム(Schizochytrium)またはヤブレツボカビ(Thraustochytrium)である、請求項18記載の宿主細胞。
【請求項20】
タンパク質を作製するため、タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に機能的に連結された請求項1〜12のいずれか一項記載の単離された核酸分子を含むヤブレツボカビ目の組換え微生物を、培地中で培養する工程
を含む、タンパク質の作製のための方法。
【請求項21】
タンパク質が、単離されたヤブレツボカビ目バイオマスから回収される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
タンパク質が微生物内に蓄積する、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
タンパク質が微生物の膜内に蓄積する、請求項20〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
タンパク質が培養培地から回収される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
タンパク質が分泌される、請求項20記載の方法。
【請求項26】
SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項27】
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項28】
(a)プロテアーゼ活性を有する酵素により宿主細胞を前処理する工程、および
(b)電気穿孔により核酸分子を宿主細胞へ導入する工程
を含む、宿主細胞を形質転換する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40A】
image rotate

【図40B】
image rotate

【図41A】
image rotate

【図41B】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate


【公表番号】特表2012−520676(P2012−520676A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500857(P2012−500857)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/027352
【国際公開番号】WO2010/107709
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508004410)マーテック バイオサイエンシーズ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】