説明

ラビング布及びその製造方法並びにラビング布製織用の筬

【課題】パイル糸が、地組織の緯糸の長さ方向に均一且つ安定状態で傾斜した、耐久性に優れるラビング布を提供する。
【解決手段】経糸2と緯糸3により織成された地組織5と該地組織5の表面6で傾斜状態に突設された多数のパイル糸7からなるラビング布である。パイル糸7は、緯糸3に係止され且つ緯糸3の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した突出状態となるように、地組織5に製織工程で織り込まれている。傾斜したパイル糸7の根元部分が、隣り合う同一繊度の経糸2,2で挾持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶パネル製造用のラビング布に関するものであり、又、該ラビング布の製造方法に関するものである。更に、該ラビング布を製織するために用いて好適なラビング布製織用の筬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの製造工程において、液晶分子を所望方向に配向するためにラビング処理が行なわれている。
【0003】
ラビング処理とは、液晶を挾持する基板上に形成されたポリイミド樹脂等からなる配向膜の表面を、パイル糸が織り込まれたラビング布を回転ローラの外周面にその周方向に巻き付けてなるラビングロールを回転状態にして擦り、その回転方向に沿った微細な溝を形成する処理である。
【0004】
かかるラビングロールを形成するために用いるラビング布は、前記のように、回転ローラの外周面に巻き付けて使用されるものであるが、ラビング処理の均一性を向上させるために、ラビングロールの回転方向に沿ってパイル糸を予め傾斜させておくのが好適である。そのための手段として登録実用新案第3032820号公報においては、パイル糸を地組織の経糸の長さ方向に所定角度傾斜させてなるラビング布が提案されている。
【0005】
ところで近年、液晶パネルは益々大型化が進んでおり、それに伴って、長さのより大なるラビングロールが要望されている。長さの大なるラビングロールを形成するためには、ラビングロールの回転方向に沿って傾斜したパイル糸を具える幅広のラビング布が必要となる。この場合、経糸の長さ方向を回転ローラの回転方向に合わせて巻き付けることによって所望長さのラビングロールを形成せんとするときは、織り幅の大なるラビング布が必要となる。しかしながら、織り幅の大なるラビング布を製織することは織機の構造上限界があって対応しきれない問題があった。
【0006】
そこで、パイル糸を地組織の緯糸の長さ方向に所要角度傾斜させてなるラビング布が、特開2002−148628号公報や特開2006−241638号公報で提案されている。かかる構成のラビング布を用いるときは、該ラビング布を、その緯糸の長さ方向を回転ローラの回転方向に向け、その経糸の長さ方向を回転ローラの軸線方向に向けて該回転ローラの外周面に巻き付けると、パイル糸が該回転ローラの回転方向に沿って傾斜するようになされた長尺のラビングロールを形成できた。
【0007】
図20は、特開2002−148628号公報が開示するラビング布の製造方法を説明する説明図である。該製造方法は、先ず、針状に形成した多数のステンレス線を表面に設けたブラシ状回転ベルトaを該ステンレス線がパイル糸をブラッシングする(なでる)ように回転させることによって、該ステンレス線によりパイル糸を緯糸の長さ方向に傾斜させる。その後、パイル糸の傾斜状態を保持させる形態安定加工を施すのであるが、これは、含浸樹脂の硬化によってパイル糸の傾斜状態を保持させたり、パイル糸をポリエステル等の合成繊維を用いて形成した場合には乾熱セット処理等を施してパイル糸の傾斜状態を保持させるものであった。
【0008】
しかしながら、かかる形態安定加工によってパイルを緯糸方向に傾斜させる加工処理は、あくまでも、平面状地組織にパイル糸が直立状態に織成された基布に後処理を施すことにより、該パイル糸を、その弾性力に逆らって傾斜状態に強制的に曲げ弾性変形させ、該傾斜状態を形態安定加工で保持させるものであるに過ぎず、そのため、パイル糸の弾性力によって該パイル糸の傾斜状態が戻り易い傾向にあった。かかることから、パイル糸の傾斜方向が不均一になりやすい問題があり、又、パイル糸の傾斜状態が不安定化しやすい問題があった。又、特にパイル糸が綿糸等の非合成繊維である場合は、前記乾熱セット処理によってはパイルを傾斜状態に安定加工させることができなかった。
【0009】
又、特開2006−241638号公報が開示するラビング布は、図21に示すように、製織工程において、地組織に直立状態に織成されたパイル糸bを、太い経糸cと細い経糸dの太さの差に応じて緯糸eの長さ方向に傾斜状態に押し倒す構成のものであるが、必ずしも均一状態に傾斜させることができなかったし、パイル糸bの弾性力によって該パイル糸の傾斜状態が戻り易い傾向にあった。
【0010】
又、ブラッシング等の後加工や繊度の異なる経糸でパイル糸を傾斜状態に挾持する前記従来のラビング布にあっては、突出長さが短いパイル糸(例えば1.0〜1.3mm程度の突出長さのもの)を所要の傾斜状態に曲げ変形させようとしても該パイル糸の弾性力の作用によって曲げ変形させ難かった。
【0011】
【特許文献1】特開2002−148628号公報
【特許文献2】特開2006−241638号公報
【特許文献3】実用新案登録第3032820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、前記ブラッシングや樹脂加工のような不安定な加工工程に頼らずして、パイル糸が地組織の緯糸の長さ方向に均一且つ安定状態で傾斜して耐久性に優れるラビング布の提供を課題とするものである。
【0013】
又本発明は、パイル糸が地組織の緯糸の長さ方向に均一且つ安定状態で傾斜して耐久性に優れるラビング布を効率的に量産し得るラビング布の製造方法の提供を課題とするものである。
【0014】
又本発明は、パイル糸が地組織の緯糸方向に均一且つ安定状態で傾斜して耐久性に優れるラビング布を製織するために用いる筬の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係るラビング布は、経糸と緯糸により織成された地組織と該地組織の表面で傾斜状態に突設された多数のパイル糸からなるラビング布であって、該パイル糸は、前記緯糸に係止され且つ該緯糸の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した突出状態となるように、前記地組織に製織工程で織り込まれており、傾斜した突出状態にある該パイル糸の根元部分が、隣り合う経糸で挾持されていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明に係るラビング布の製造方法は、経糸と緯糸により織成された地組織と該地組織の表面で突設された多数の傾斜状態のパイル糸とからなるラビング布の製造方法であって、該パイル糸を、前記緯糸に係止させ且つ該緯糸の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した突出状態となるように、前記地組織に織り込み、傾斜した突出状態にあるパイル糸の根元部分を、隣り合う経糸で挾持することを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係るラビング布の製造方法の具体的な態様の一つは、上下の地組織を織成する下の地経糸と上の地経糸とパイル経糸を、緯糸の延長方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した筬羽の所要の筬羽間に形成された傾斜間隙に通し、該下の地経糸と該上の地経糸と該パイル経糸を該傾斜間隙の傾斜方向で上下動させるものとし、該下の地経糸と下の緯糸との交錯によって前記下の地組織を織成すると共に、前記上の地経糸と上の緯糸との交錯によって前記上の地組織を織成し、該上下の地組織間をパイル経糸で連結するように該パイル経糸を該上下の地組織に織り込み、その後、上下の地組織間を連結する前記パイル経糸を、その上下中間部位で切断することを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係るラビング布の製造方法の具体的な態様の他は、上下の地組織を織成する下の地経糸と上の地経糸とパイル経糸を、緯糸の延長方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した筬羽の所要の筬羽間に形成された傾斜間隙に通し、該下の地経糸と下の緯糸との交錯によって前記下の地組織を織成すると共に、前記上の地経糸と上の緯糸との交錯によって前記上の地組織を織成し、該パイル経糸を、前記下の地組織を構成する、製織方向に順に並置された第1の下の緯糸と第2の下の緯糸と第3の下の緯糸に順次織り込むと共に、前記上の地組織を構成する、製織方向に順に並置された第1の上の緯糸と第2の上の緯糸と第3の上の緯糸に順次織り込み、これを製織方向に繰り返すことによって上下の地組織間をパイル経糸で連結し、その後、上下の地組織間を連結する前記パイル経糸を、その上下中間部位で切断するラビング布の製造方法である。そして前記パイル経糸は、前記第1の下の緯糸の下を潜り抜けて後、前記傾斜間隙を上方向に案内され、その後、前記第2の下の緯糸の上を越えて後、前記傾斜間隙を下方向に案内され、その後、前記第3の下の緯糸の下を潜り抜けて後、前記傾斜間隙を上方向に案内され、その後、前記第1の上の緯糸の上を越えて後、前記傾斜間隙を下方向に案内され、その後、該第2の上の緯糸の下を潜り抜けて後、前記傾斜間隙を上方向に案内され、その後、前記第3の上の緯糸の上を越えて後、前記傾斜間隙を下方向に案内され、その後、前記第3の下の緯糸とは別異の第1の下の緯糸の下を潜り抜けて後、前記傾斜間隙を上方向に案内されることを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係るラビング布の製造方法の具体的な態様のその他は、上下の地組織を織成する下の地経糸と上の地経糸とパイル経糸を、緯糸の延長方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した筬羽の所要の筬羽間に形成された傾斜間隙に通し、該下の地経糸と下の緯糸との交錯によって前記下の地組織を織成すると共に、前記上の地経糸と上の緯糸との交錯によって前記上の地組織を織成し、前記パイル経糸は、下の緯糸の下を潜り抜けて後、前記傾斜間隙を上方向に案内され、その後、上の緯糸の上を越えて後、前記傾斜間隙を下方向に案内され、その後、前記下の緯糸とは別異の下の緯糸の下を潜り抜け、前記傾斜間隙を上方向に案内され、その後、前記上の緯糸とは別異の上の緯糸の上を越えて後、前記傾斜間隙を下方向に案内され、これを繰り返すことによって上下の地組織間をパイル経糸で連結し、その後、上下の地組織間を連結する前記パイル経糸を、その上下中間部位で切断することを特徴とするものである。
【0020】
前記ラビング布は、傾斜した突出状態にある前記パイル糸の根元部分を挾持する隣り合う経糸を同一繊度に設定するのがよい。
【0021】
前記ラビング布の製造方法において、傾斜した突出状態にある前記パイル糸の根元部分を挾持する隣り合う経糸を同一繊度に設定するのがよい。
【0022】
本発明に係るラビング布製造用の筬は、各筬羽が、緯糸方向で見て同一方向に同一角度で傾斜しており、隣り合う筬羽間に、糸を通すための傾斜間隙が形成されていることを特徴とするものである。各筬羽は、5〜30度の角度に傾斜させるのがよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係るラビング布は、パイル糸が、地組織の緯糸に係止され且つ該緯糸の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した突出状態となるように製織工程で織り込まれており、該傾斜した突出状態にあるパイル糸の根元部分が、隣り合う経糸で挾持された構成を有する。
【0024】
従って本発明に係るラビング布によるときは、パイル糸が、緯糸の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜しているため、従来の短尺の回転ローラに対してはもとより、長尺の回転ローラに対しても、該ラビング布を、パイル糸が該回転ローラの回転方向に沿って傾斜するようにその外周面に巻き付けることができ、ラビングロールの長尺化の要請、即ち、液晶パネルの大型化の要請に応じ得るのは元より、次のような特別な効果を奏する。
【0025】
即ち本発明に係るラビング布は、パイル糸が、傾斜した突出状態に製織工程で織り込まれている。従って、地組織に直立状態に織成されたパイル糸を該パイル糸の弾性力に逆らって傾斜状態に強制的に曲げ弾性変形させ、該傾斜状態を樹脂加工等の後加工で保持させてなる従来のラビング布や、地組織に直立状態に織成されたパイル糸を、繊度の異なる2種類の経糸間で挾持することによって緯糸の長さ方向に傾斜状態に押し倒してなる従来のラビング布とは異なり、その傾斜状態が自然で安定しており、傾斜状態が不均一化したり、パイル糸の弾性力によってパイル糸の傾斜状態が戻り易い等の問題を発生させる恐れがない。
【0026】
特に、該パイル糸の傾斜状態を同一繊度の経糸で挟持状態で保持するときは、該ラビング布を回転ローラに巻き付けて形成されたラビングロールによるラビング処理において、該傾斜状態のパイル糸がへたりにくく耐久性により優れる。従って、高品質液晶パネルを歩留り良く製造し得るラビングロールを提供できることになる。
【0027】
(2) 本発明に係るラビング布の製造方法として、緯糸の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した筬羽の所要の筬羽間に形成された傾斜間隙に、経糸とパイル経糸を通し、該経糸とパイル経糸を該傾斜間隙で上下移動させる構成を採用するときは、パイル経糸を、製織工程において緯糸の長さ方向に無理なく均一に傾斜させることができ、この織り込まれた傾斜状態のパイル糸の根元部分を、隣り合う経糸で確実に挾持して保持できることとなる。かかることから本発明の製造方法によるときは、均一に傾斜し且つ傾斜状態が安定しているパイル糸を具備する前記高品質のラビング布を、従来のような後処理を要することなく効率的に量産できることになる。
【0028】
又、ブラッシング等の後加工や繊度の異なる経糸でパイル糸を傾斜状態に挾持する前記従来のラビング布にあっては、突出長さが短いパイル糸(例えば1.0〜1.3mm程度の突出長さのもの)を所要の傾斜状態に曲げ変形させようとしても該パイル糸の弾性力の作用によって曲げ変形させ難かったのであるが、製織工程でパイル糸を傾斜状態に織り込む本発明によるときは、かかる突出長さの短いパイル糸であっても、該パイル糸が所要の傾斜状態に安定状態で均一に突設されてなるラビング布を提供可能である。
【0029】
(3) 又本発明に係る筬は、前記ラビング布の製造方法を実施するために用いて好適である。
【実施例1】
【0030】
図1は本発明に係るラビング布1を説明する斜視図と、織り構造を説明する模式図であり、経糸2と緯糸3により織成された地組織5と、該地組織5の表面6で突設された多数のカットされたパイル糸7からなる起毛層9を有している。該パイル糸7は、図1〜3に示すように、前記緯糸3に引っ掛かった状態で係止され且つ該緯糸3の長さ方向で見て同一方向に同一角度θ1(図3)で傾斜した突出状態となるように、前記地組織5に製織工程で織り込まれており、該パイル糸7は、その根元から傾斜する織り構造を有している。そして、図3に示すように、傾斜した突出状態にある該パイル糸7の根元部分10が、隣り合う同一繊度(太さ)の経糸2,2で強固に挾持されている。かかることからパイル糸7には、製織された状態で既に、緯糸3の長さ方向で見て同一方向に同一角度で均一に傾斜する傾斜癖が付けられており、その傾斜した突出状態が該隣り合う同一繊度の経糸2,2で安定的に保持されている。
【0031】
前記地組織5は、パイルを織り込むことのできるものであれば特に限定されず、例えば、経糸2と緯糸3により平織りされたものや、綾織、朱子織等の織物組織を用いることができる。そして、該緯糸3、該経糸2、該パイル糸7として、長繊維の場合は、例えば30〜150デニールのレーヨン繊維糸を用いることができる。又紡績糸の場合は、例えば、綿番手双糸40番手や綿番手双糸60番手、綿番手双糸80番手の綿糸を用いることができる。その他、ラビング処理に支障のない限り、種々の長繊維糸、短繊維糸を用いることができる。又、該経糸2、緯糸3、パイル糸7は、ラビング処理に支障のない限り、夫々の素材を違えてもよい。
【0032】
又、製造されたラビング布1の経糸密度は例えば18〜30本/cmに設定し、緯糸密度は例えば30〜45本/cmに設定し、単位面積当りのパイル糸7の本数は例えば270〜300本/cm2 に設定する。そして該パイル糸7は、例えば図1に示すようにW字形で地組織5に織り込んだり、例えば図4〜5の織り構造模式図に示すように、V字形乃至U字形(図4〜5においてはV字形)で地組織5に織り込むことができる。
【0033】
又前記パイル糸7の長さは、例えば1.8〜3.5mm、好ましくは2.0〜2.5mmに設定できる。又、前記地組織5の平面に直角の垂線8に対するパイル糸7の軸芯11の傾斜角度(図3にθ1で示す)は、ラビング処理の種々の条件を考慮して所要に設定されるものであり、5〜30度、好ましくは10〜15度に設定できる。
【0034】
その具体的な一実施例を説明すれば、地組織5は、経糸2として、100デニールのレーヨン繊維糸を用い、緯糸3として、100デニールのレーヨン繊維糸を用いて、経糸密度24本/cm、緯糸密度40本/cmで平織りに織られている。又パイル糸7として、100デニールのレーヨン繊維糸を用い、単位面積当たりのパイル糸7の本数が640本/cm2 となるように周知の織機、例えばシャットル織機やレピア織機により、例えば図1に示すW字形で前記地組織5に織り込まれている。又前記パイル糸7の長さは1.8mmに設定されており、前記地組織5の平面に直角の垂線8に対するパイル糸7の軸芯11の傾斜角度θ1は10度に設定されている。
【0035】
その具体的な他の実施例を説明すれば、地組織5は、経糸2として、綿繊維からなる綿番手双糸40番手の紡績糸を用い、緯糸3として、綿繊維からなる綿番手双糸40番手の紡糸を用い、経糸密度18本/cm、緯糸密度30本/cmで平織りに織られている。又パイル糸として、綿繊維からなる綿番手双糸40番手の紡績糸を用い、単位面積当たりのパイル糸の本数が270本/cm2 となるように周知の織機、例えばシャットル織機やレピア織機により、例えば図4〜5に示すV字形で前記地組織5に織り込まれている。又前記パイル糸7の長さは2.5mmに設定されており、前記地組織5の平面に直角の垂線8に対するパイル糸7の軸芯11の傾斜角度θ1は10度に設定されている。
【0036】
図6〜7は、本発明に係るラビング布1におけるパイル糸7のその他の織り込み状態を示す組織図である。又図8は、上下の地組織5,5の他の態様を、パイル糸の織り込み状態と共に示す組織図である。
【0037】
なお本実施例においては、前記地組織5の裏面12(図1(A))に、アクリル系エマルジョン等の樹脂でコーティング処理を施すことにより該裏面を平滑化している。図9は、かかる構成を有するラビング布1を、その緯糸3の長さ方向を回転ローラ(例えばローラ長さが4m)13の回転方向に向け、その経糸2の長さ方向を回転ローラの軸線方向に向けて該回転ローラ13の外周面15に巻き付けたラビングロール16を示す断面図である。本実施例においては、前記のように地組織5の裏面12を平滑化しているため、ラビング布1を回転ローラ13の外周面15に巻き付けたときの巻き付けの容易性と巻き付け状態の安定性向上が図られる。図10は、該ラビングロール16を用いて、配向膜の表面17をラビング処理している状態を示す説明図である。
【0038】
かかる構成を有するラビング布1を製造する製造方法は、前記パイル糸7を、前記緯糸3に係止させると共に該緯糸3の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した突出状態となるように前記地組織5に織り込み、その後、該傾斜した突出状態にあるパイル糸7の根元部分10を、隣り合う同一繊度(太さ)の経糸2,2で挾持する工程を経るものである。
【0039】
その具体的な製造方法の一例を、前記パイル糸7がカットされたパイル糸である図1に示すラビング布1を製造する場合について説明する。
【0040】
基本的な構成は、図11〜12、図13に示すように、隣り合う筬羽19,19間に傾斜間隙20(図14)が形成されてなる筬21を用い、該傾斜間隙20に通された下の地経糸30、上の地経糸31と下の緯糸39、上の緯糸40により上下の地組織5a,5bを、上下に所定の間隔を開けて織成するものである。そして、該上下の地組織5a,5bの間を往復するようにパイル経糸32を該上下の地組織5a,5bに織り込んだ後、該上下の地組織5a,5b間の中間部位で該パイル経糸32を製織中にカッタ22で切断する。これにより、上下の地組織の表面6,6に、緯糸3の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜するようにパイル糸7が織り込まれてなるラビング布1を製造するものである。
【0041】
以下、この製造方法を具体的に説明する。図14は前記筬21を示す拡大図であり、例えば、上下長さが105mmで、幅が4mm、厚さが0.2mmである筬羽19を、例えば0.57mmの間隔をおいて、緯糸3の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜する如く平行状態に配設し、各筬羽19の上下端23,25を上下の固定プレート26,27に固定する。この筬羽19の垂直線29に対する傾斜角度θ2は5〜30度に設定され、本実施例においては例えば10度に設定される。これにより、隣り合う筬羽19,19間に、10度の角度で傾斜した前記傾斜間隙20が形成されることになる。なお、前記角度が5度よりも小さいとパイル糸の明確な傾斜角度が得られなくなって好ましくなく、又、30度を越えると、製織時における傾斜筬羽と糸との摩擦が大きくなり、糸の切断等のトラブルが発生しやすく、安定製織に支障をきたすようになって好ましくない。
【0042】
かかる構成の筬21は従来筬と同様に、図11に矢印で示すように前後方向に揺動運動を行う。そして、該筬21の揺動運動に伴い、図示しないヘルドの上下動によって上の地経糸30と下の地経糸31の開口運動が行なわれる。
【0043】
図15は、図1に示すラビング布1を製造し得るように前記傾斜間隙20に地経糸とパイル経糸を通した状態を示す説明図である。なお図15においては、説明の便宜上、該傾斜間隙20の上下長さを短く設定している。
【0044】
本実施例においては、隣り合う傾斜間隙20,20を一組とし、2本の下の地経糸30,30と2本の上の地経糸31,31と4本のパイル経糸32,32,32,32を通すために用いている。説明の便宜上、前記傾斜間隙20を、図15に示すように、左側に存する第1の傾斜間隙20aと右側に存する第2の傾斜間隙20bと区別する。そして図13に示すように、前記2本の下の地経糸30,30を、左側に存する第1の下の地経糸30aと右側に存する第2の下の地経糸30bと区別し、前記2本の上の地経糸31,31を、左側に存する第1の上の地経糸31aと右側に存する第2の上の地経糸31bと区別する。又、前記4本のパイル経糸32,32,32,32を、左から右に向けて順に、第1のパイル経糸32a、第2のパイル経糸32b、第3のパイル経糸32c、第4のパイル経糸32dと区別する。その上で、第1の傾斜間隙20a、第2の傾斜間隙20bにおける糸の挿通状態と各糸の上下動作を説明すれば次のようである。
【0045】
図15の左側部分において、前記第1の下の地経糸30aを前記第1の傾斜間隙20aの下側部分33に通し、前記第1の上の地経糸31aを該第1の傾斜間隙20aの上側部分35に通す。該第1の下の地経糸30aは、図15の左側部分に矢印F1に示すように、前記下側部分33で斜めに上下移動する。又、該第1の上の地経糸31aは、図15の左側部分に矢印F2で示すように、前記上側部分35で斜めに上下移動する。そして図15に示すように、上下に位置する該地経糸31a,30aの右側に位置させて、前記第1のパイル経糸32aと前記第2のパイル経糸32bを右方に向けてこの順序で前記第1の傾斜間隙20aに通す。該第1のパイル経糸32aと該第2のパイル経糸32bは、図15の左側部分に矢印F3、F4で示すように、該第1の傾斜間隙20aの略全長に亘る状態で斜めに上下移動する。
【0046】
又、図15の右側部分において、前記第2の下の地経糸30bを前記第2の傾斜間隙20bの下側部分36に通し、前記第2の上の地経糸31bを該第1の傾斜間隙20aの上側部分37に通す。該第2の下の地経糸30bは、図15の右側部分に矢印F5で示すように、前記下側部分36で斜めに上下移動する。又、該第2の上の地経糸31bは、図15の右側部分に矢印F6で示すように、前記上側部分37で斜めに上下移動する。そして、上下に位置する該地経糸31b,30bの右側に位置させて、前記第3のパイル経糸32cと前記第4のパイル経糸32dを右方に向けてこの順序で前記第2の傾斜間隙20bに通す。該第3のパイル経糸32cと前記第4のパイル経糸32dは、図15の右側部分に矢印F7、F8で示すように、該第2の傾斜間隙20bの略全長に亘る状態で斜めに上下移動する。
【0047】
かかる第1の傾斜間隙20a、第2の傾斜間隙20bにおける各糸の挿通状態と、前記筬21の所要の筬打ち運動と、上の地経糸、下の地経糸の開口運動と、所要の緯入れによって、図13に示すように、前記1、第2の下の地経糸30a,30bと下の緯糸39との交錯により下の地組織5bが織成されると共に、前記第1、第2の上の地経糸31a,31bと上の緯糸40との交錯によって上の地組織5aが織成される。
【0048】
そして前記パイル経糸32の織り込み状態は、これを例えば前記第1のパイル経糸32aに代表させて説明すれば、図13に示すようにW字形で上下の地組織5a,5bに織り込まれる。これをより具体的に説明すれば、図16に示すように、隣り合う下の地経糸30a,30b間で、第1の下の緯糸39aの下を潜り抜けて後、前記第1の傾斜間隙20aを上方向に案内され、その後、該第1の下の緯糸39aに隣り合う第2の下の緯糸39bの上を越えて後、該第1の傾斜間隙20aを下方向に案内され、その後、該第2の下の緯糸39bに隣り合う第3の下の緯糸39cの下を潜り抜けて後、該第1の傾斜間隙20aを上方向に案内され、その後、第1の上の緯糸40aの上を越え、該第1の傾斜間隙20aを下方向に案内され、その後、該第1の上の緯糸40aに隣り合う上の緯糸40bの下を潜り抜けて後、該第1の傾斜間隙20aを上方向に案内され、その後、該第1の上の緯糸40bに隣り合う第2の上の緯糸40cの上を越えて後、該第1の傾斜間隙20aを下方向に案内され、その後、前記第3の下の緯糸39cとは別異の、該第3の下の緯糸39cから4本目の第1の下の緯糸39aの下を潜り抜けて後、該第1の傾斜間隙20aを上方向に案内され、その後、該第1の下の緯糸39aに隣り合う第2の下の緯糸39bの上を越えて後、該第1の傾斜間隙20aを下方向に案内され、その後、該第2の下の緯糸39bに隣り合う第3の下の緯糸39cの下を潜り抜けて後、該第1の傾斜間隙20aを上方向に案内され、その後、前記第3の上の緯糸40cとは別異の、該第3の上の緯糸40cから4本目の第1の上の緯糸40aの上を越えて後、該第1の傾斜間隙20aを下方向に案内され、これが繰り返されることによって、パイル経糸32aが上下の地組織5a,5bに順次織り込まれ、上下の地組織5a,5b間が該パイル経糸32aで連結された状態となる。
【0049】
その後、製織中において、上下の地組織5a,5b間を連結する該パイル経糸32が、その上下中間部位(図11においては中央部位)で、緯糸方向に往復動する前記カッタ22で切断される。これにより、図11に示すように、地組織の緯糸に係止されて傾斜したパイル糸7を有する上下2枚のラビング布1,1が製造されることになる。該上下のラビング布1,1は、図示しないビームに巻き取られる。
【0050】
なお、図11においては中央部位で切断しているが、稍上側又は稍下側の中間部位で切断することもある。このように切断すれば、長さの異なるパイル糸が突設されてなる2種類のラビング布を同時に製造できることになる。
【0051】
図17は、図4に示すラビング布1の製造工程を示すものであり、第1、第2の下の地経糸30a,30b、第1、第2の上の地経糸31a,31b、第1、第2、第3、第4のパイル経糸32a,32b,32c,32dの第1、第2の傾斜間隙20a,20bにおける挿通状態は図15について説明したところと同様である。
【0052】
かかる第1の傾斜間隙20a、第2の傾斜間隙20bにおける各糸の挿通状態と、前記筬21の所要の筬打ち運動と、上の地経糸、下の地経糸の開口運動と、所要の緯入れによって、前記1、第2の下の地経糸30a,30bと下の緯糸39との交錯により下の地組織5bが織成されると共に、前記第1、第2の上の地経糸31aと上の緯糸40との交錯によって上の地組織5aが織成される。
【0053】
そして前記パイル経糸32の織り込み状態は、これを例えば前記第1のパイル経糸32aに代表させて説明すれば、図17に示すようにV字形で上下の地組織5a,5bに織り込まれる。これをより具体的に説明すれば、図18に示すように、隣り合う下の地経糸30a,30b間で、下の緯糸39aの下を潜り抜けて後、前記第1の傾斜間隙20aを上方向に案内され、その後、上の緯糸40aの上を越え、該第1の傾斜間隙20aを下方向に案内され、その後、前記下の緯糸39aとは別異の、該下の緯糸39aから2本目の下の緯糸39bの下を潜り抜け、該第1の傾斜間隙20aを上方向に案内され、その後、前記上の緯糸40aとは別異の、該上の緯糸40aから2本目の上の緯糸40bの上を越え、該第1の傾斜間隙20aを下方向に案内され、これが繰り返されることによって、パイル糸7が上下の地組織5a,5bに順次織り込まれ、上下の地組織5a,5b間が該パイル経糸32aで連結された状態となる。
【0054】
図19は、図5に示すラビング布1の製造工程を示す説明図であり、第1のパイル経糸32aに代表させて図示されている。図18に示す場合と異なるのは、下の緯糸39aとは別異の下の緯糸39bが、該下の緯糸から4本目に設定されており、又、上の緯糸40aとは別異の上の緯糸40bが、該上の緯糸40aから4本目に設定されている点であり、その他の構成は図18に基づいて説明したところと同様である。
【実施例2】
【0055】
本発明は、前記実施例で示したもの限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0056】
(1) 本発明の製造方法で用いる前記筬21を構成する筬羽19の傾斜角度は、これを大きくすればするほど、ラビング布1のパイル糸7の傾斜角度を大きく設定できる。そして該パイル糸7の傾斜角度は、種々のラビング条件を考慮して好適に設定されるものである。
【0057】
(2) 前記傾斜間隙20に通すパイル経糸32の本数や該パイル経糸32の織り込み組織、又、該傾斜間隙20に通す経糸2の本数や地組織5の組織は、例えば図1、図4〜5、図6、図7〜8に示すもののように、ラビング布の用途に応じて設計されたパイル糸の密度や、地組織の経糸密度、緯糸密度等を考慮して所要に設定する。
【0058】
(3) 前記傾斜間隙20に糸をどのように通すかは、ラビング布の製織に支障がない限り、従来製織における場合と同様である。
【0059】
(4) 本発明に係る製造方法は、前記傾斜間隙20を有する筬21を用いて構成することの他、該パイル糸を、前記緯糸に係止させ且つ該緯糸の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した突出状態となるように、前記地組織に織り込む、各種手段を採用し、且つ、傾斜した突出状態にあるパイル糸の根元部分を、隣り合う経糸で挾持する手段を採用して構成できる。
【0060】
(5) 傾斜した突出状態にある前記パイル糸の根元部分を挾持する隣り合う経糸は、繊度が異なることもある。又本発明において、同一繊度とは、糸の製造上における繊度のバラツキの範囲を含むものである。
【0061】
(6) なお、本発明に係る筬は、前記したラビング布の製織用に用いられる他、ベルベット製織一般に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係るラビング布を説明する部分斜視図と、パイル糸をW字形で織り込んだ織り構造を説明する説明図である。
【図2】ラビング布を緯糸方向で見た断面図である。
【図3】ラビング布を経糸方向で見た断面図である。
【図4】パイル糸をV字形で織り込んだ織り構造を説明する斜視図である。
【図5】パイル糸をV字形で織り込んだラビング布の織り構造の他の態様を説明する斜視図である。
【図6】パイル糸をW字形で織り込んだラビング布の織り構造の他の態様を説明する斜視図である。
【図7】パイル糸をV字状で織り込んだラビング布の織り構造のその他の態様を説明する斜視図である。
【図8】パイル糸をV字状で織り込んだラビング布の織り構造のその他の態様を説明する斜視図である。
【図9】ラビングロールを説明する断面図である。
【図10】ラビングロールによるラビング処理工程を説明する断面図である。
【図11】ラビング布の製造工程を説明する側面図である。
【図12】ラビング布の製造工程を説明する側面図である。
【図13】パイル糸をW字形に織り込んでなるラビング布の製造工程を説明する斜視図である。
【図14】傾斜間隙を有する筬を説明する斜視図と部分正面図である。
【図15】傾斜間隙に通された糸の配置状態とその上下動作を説明する説明図である。
【図16】パイル糸をW字形に織り込んでなるラビング布を製造する製造工程における、パイル経糸の織成状態を説明する斜視図である。
【図17】パイル糸をV字形に織り込んでなるラビング布の製造工程を説明する斜視図である。
【図18】パイル経糸をV字状に織り込んでなるラビング布を製造する製造工程における、パイル経糸の織成状態を説明する斜視図である。
【図19】パイル経糸をV字状に織り込んでなるラビング布を製造する製造工程における、パイル経糸の織成状態のその他の態様を説明する斜視図である。
【図20】パイル糸が緯糸の長さ方向に傾斜した従来のラビング布の製造方法の一例を説明する説明図である。
【図21】パイル糸が緯糸の長さ方向に傾斜した従来のラビング布の製造方法の他の例を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ラビング布
2 経糸
3 緯糸
5 地組織
7 パイル糸
10 パイル糸の根元部分
11 パイル糸の軸芯
13 回転ローラ
16 ラビングロール
20 傾斜間隙
21 筬
30 上の地経糸
31 下の地経糸
32 パイル経糸
39 下の緯糸
40 上の緯糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸により織成された地組織と該地組織の表面で傾斜状態に突設された多数のパイル糸からなるラビング布であって、該パイル糸は、前記緯糸に係止され且つ該緯糸の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した突出状態となるように、前記地組織に製織工程で織り込まれており、傾斜した突出状態にある該パイル糸の根元部分が、隣り合う経糸で挾持されていることを特徴とするラビング布。
【請求項2】
経糸と緯糸により織成された地組織と該地組織の表面で突設された多数の傾斜状態のパイル糸とからなるラビング布の製造方法であって、該パイル糸を、前記緯糸に係止させ且つ該緯糸の長さ方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した突出状態となるように、前記地組織に織り込み、傾斜した突出状態にあるパイル糸の根元部分を、隣り合う経糸で挾持することを特徴とするラビング布の製造方法。
【請求項3】
上下の地組織を織成する下の地経糸と上の地経糸とパイル経糸を、緯糸の延長方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した筬羽の所要の筬羽間に形成された傾斜間隙に通し、該下の地経糸と該上の地経糸と該パイル経糸を該傾斜間隙の傾斜方向で上下動させるものとし、該下の地経糸と下の緯糸との交錯によって前記下の地組織を織成すると共に、前記上の地経糸と上の緯糸との交錯によって前記上の地組織を織成し、該上下の地組織間をパイル経糸で連結するように該パイル経糸を該上下の地組織に織り込み、その後、上下の地組織間を連結する前記パイル経糸を、その上下中間部位で切断することを特徴とするラビング布の製造方法。
【請求項4】
上下の地組織を織成する下の地経糸と上の地経糸とパイル経糸を、緯糸の延長方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した筬羽の所要の筬羽間に形成された傾斜間隙に通し、該下の地経糸と下の緯糸との交錯によって前記下の地組織を織成すると共に、前記上の地経糸と上の緯糸との交錯によって前記上の地組織を織成し、該パイル経糸を、前記下の地組織を構成する、製織方向に順に並置された第1の下の緯糸と第2の下の緯糸と第3の下の緯糸に順次織り込むと共に、前記上の地組織を構成する、製織方向に順に並置された第1の上の緯糸と第2の上の緯糸と第3の上の緯糸に順次織り込み、これを製織方向に繰り返すことによって上下の地組織間をパイル経糸で連結し、その後、上下の地組織間を連結する前記パイル経糸を、その上下中間部位で切断するラビング布の製造方法であって、
前記パイル経糸は、前記第1の下の緯糸の下を潜り抜けて後、前記傾斜間隙を上方向に案内され、その後、前記第2の下の緯糸の上を越えて後、前記傾斜間隙を下方向に案内され、その後、前記第3の下の緯糸の下を潜り抜けて後、前記傾斜間隙を上方向に案内され、その後、前記第1の上の緯糸の上を越えて後、前記傾斜間隙を下方向に案内され、その後、該第2の上の緯糸の下を潜り抜けて後、前記傾斜間隙を上方向に案内され、その後、前記第3の上の緯糸の上を越えて後、前記傾斜間隙を下方向に案内され、その後、前記第3の下の緯糸とは別異の第1の下の緯糸の下を潜り抜けて後、前記傾斜間隙を上方向に案内されることを特徴とするラビング布の製造方法。
【請求項5】
上下の地組織を織成する下の地経糸と上の地経糸とパイル経糸を、緯糸の延長方向で見て同一方向に同一角度で傾斜した筬羽の所要の筬羽間に形成された傾斜間隙に通し、該下の地経糸と下の緯糸との交錯によって前記下の地組織を織成すると共に、前記上の地経糸と上の緯糸との交錯によって前記上の地組織を織成し、前記パイル経糸は、下の緯糸の下を潜り抜けて後、前記傾斜間隙を上方向に案内され、その後、上の緯糸の上を越えて後、前記傾斜間隙を下方向に案内され、その後、前記下の緯糸とは別異の下の緯糸の下を潜り抜け、前記傾斜間隙を上方向に案内され、その後、前記上の緯糸とは別異の上の緯糸の上を越えて後、前記傾斜間隙を下方向に案内され、これを繰り返すことによって上下の地組織間をパイル経糸で連結し、その後、上下の地組織間を連結する前記パイル経糸を、その上下中間部位で切断することを特徴とするラビング布の製造方法。
【請求項6】
傾斜した突出状態にある前記パイル糸の根元部分を挾持する隣り合う経糸は同一繊度であることを特徴とする請求項1記載のラビング布。
【請求項7】
傾斜した突出状態にある前記パイル糸の根元部分を挾持する隣り合う経糸は同一繊度であることを特徴とする請求項2記載のラビング布の製造方法。
【請求項8】
ラビング布を製織するための筬であって、各筬羽が、緯糸方向で見て同一方向に同一角度で傾斜しており、隣り合う筬羽間に、糸を通すための傾斜間隙が形成されていることを特徴とするラビング布製織用の筬。
【請求項9】
前記筬羽は、5〜30度の角度に傾斜していることを特徴とする請求項8記載のラビング布製織用の筬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−175392(P2009−175392A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13419(P2008−13419)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(502101319)北陸ベルベット株式会社 (1)
【Fターム(参考)】