ラビング装置およびラビング方法
【課題】ラビングステージに液晶表示素子基板の真空吸着機能を備える構成において、ラビングステージ上で液晶表示素子基板の旋回を可能にするとともに、アライメント調整により正確な位置決めをしてラビングステージに固定することが可能となるようにする。
【解決手段】ラビング装置におれるラビングステージの中央に、前記液晶表示素子基板の中央部を吸着し、該液晶表示素子基板を旋回する機能を有するアライメントヘッドと、前記液晶表示素子基板の中央部以外の部分を吸着または浮揚する機能を有する空圧テーブルを前記アライメントヘッドの外周を囲うように備える。
【解決手段】ラビング装置におれるラビングステージの中央に、前記液晶表示素子基板の中央部を吸着し、該液晶表示素子基板を旋回する機能を有するアライメントヘッドと、前記液晶表示素子基板の中央部以外の部分を吸着または浮揚する機能を有する空圧テーブルを前記アライメントヘッドの外周を囲うように備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(液晶パネル)製造工程において用いられるラビング装置およびラビング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配向膜が形成された液晶表示素子基板(ガラス基板)の前記配向膜の表面に施すラビング処理は、液晶表示素子基板をラビングステージ上に配置して行う。この場合、ラビング処理による配向膜の表面の配向溝は所定の方向に形成されるようにするため、ラビングステージ上に配置される液晶表示素子基板は、ラビングローラーに対して指定の角度が維持されるようにしなければならない。
【0003】
このようにして行われる液晶パネルの製造プロセスにおけるラビング工程では、液晶分子の分布を均一に、且つ液晶分子の配向を配向溝に沿って所定の方向に配列し、液晶パネルの全面に亘って均一な画像品質が得られるようにしなければならない。したがって、配向膜の全面を均一な条件下でラビング処理することにより、配向膜の全面に配向溝を均一に形成することが重要となる。
【0004】
かかるラビング処理装置の一例して、複数の液晶表示素子基板を連続してラビング処理する場合において、処理する基板毎にラビングステージ上の異なる位置に位置決めする位置決め機構を備え、この位置決め後の液晶表示素子基板をラビングステージ上に吸着保持する保持機構である吸着孔(ピンホール)により真空吸着する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−257105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラビングステージ上に配置された液晶表示素子基板の角度は、0°、90°、180°、270°が一般的であった。ところが、近年の多岐に亘る製品需要の要望からラビング処理の方向が360°の全方向からの角度が可能で、且つ高い角度精度およびラビングステージの面精度が要求されているに至っている。
【0007】
しかしながら、従来のラビング処理では、その前工程で液晶表示素子基板の角度を設定してロボットなどの搬送手段によりラビングステージへ液晶表示素子基板を搬入するようにしているため、位置ずれを完全に無くすことができず、液晶表示素子基板の角度の精度保証が困難であり、その上、旋回させて位置決めするための専用装置が必要であるが、ラビングステージを旋回するということは、旋回を許容する機構を介してラビングステージを配置する構成となることによる構造的要因により面振れが必ず発生する。
【0008】
また、処理する液晶表示素子基板の大型化に伴って駆動源の大型化、電力の増加や機構要素の重量増加によりラビングステージの駆動負荷が増大して生産性の低下に繋がる問題があった。このような問題の傾向は液晶表示素子基板も大型化していることから顕著となっており、重要な解決課題となっている。
【0009】
即ち、大型の液晶表示素子基板は一辺が2mに及ぶものもあり、その厚さは、0.6〜0.7mmと極めて薄いものであるが、このような剛性の乏しい液晶表示素子基板をラビングステージ上で平面性を保つとともに、液晶表示素子基板は、ラビングローラーに対して指定の角度精度(±0.05°〜±0.01°)を達成しラビング処理を行わなければならない。しかしながら、液晶表示素子基板は大型になるほど平面性を保つのが困難であり、ラビングステージ上への搬入そして定位置への固定も困難なものとなる。
【0010】
そこで、液晶表示素子基板のラビングステージへ搬入し固定する手段として、特許文献1に開示されているような、ラビングステージに複数の吸着孔を形成し、この吸着孔から圧縮空気を噴出させ、この圧縮空気上に液晶表示素子基板を搬入することにより圧縮空気がいわゆるエアーベアリングとなってラビングステージとの接触を避けながらラビングステージ上に液晶表示素子基板を搬入することができる。
【0011】
図19は、ラビングステージ上に液晶表示素子基板Wが搬入され、圧縮空気AがラビングステージSTから噴出している状態を示す。前記圧縮空気Aは液晶表示素子基板Wの外周から外部へ噴き出すので、この部分の空気の流速が早く空気抵抗が低いことと、重力の作用が相俟って液晶表示素子基板Wの外周は下方へ降下する一方、液晶表示素子基板Wの中央部は、空気の流速が遅くなることから空気溜まりの状態となり、剛性が乏しく撓み易い液晶表示素子基板Wは、同図に示すように中央が突出する湾曲状態を呈することになる。
【0012】
かかる状態でラビングの方向へ位置決めするために、外部からの機械的手段により液晶表示素子基板Wを旋回させると、この液晶表示素子基板Wの最も降下している角隅部分(エッジ)がラビングステージSTに接触してしまう可能性がある。また、図19に示す状態は液晶表示素子基板Wが浮揚(フローティング)しており、圧縮空気による空気層がエアーベアリングとなっていることから、僅かな外力によっても液晶表示素子基板Wは移動してしまい、液晶表示素子基板WをラビングステージST上の定位置に定めるのは甚だ困難である。
【0013】
この液晶表示素子基板WのラビングステージST上への位置決めは、圧縮空気Aが噴出している間に実行されなければならない。何故ならば、圧縮空気Aが供給されていない状態では、液晶表示素子基板WとラビングステージSTとの接触抵抗が、圧縮空気Aが存在する場合に比べて格段に大きくなることから、薄く大型である液晶表示素子基板WをラビングステージST上で機械的に旋回させ、アライメントにより正確に位置決めして固定することは到底できない。
【0014】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、ラビングステージに液晶表示素子基板の真空吸着機能を備える構成において、ラビングステージ上で液晶表示素子基板の旋回を可能にするとともに、アライメント調整により正確な位置決めをしてラビングステージに固定することが可能となるようにしたラビング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで本発明は、以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、表面に配向膜が形成された液晶表示素子基板をラビングステージ上に配置し、前記液晶表示素子基板に対してラビングローラーを回転させながら所定方向へ相対的に移動させ、前記液晶表示素子基板の表面にラビング処理を施すようにしたラビング装置であり、前記ラビングステージの中央には、前記液晶表示素子基板の中央部を吸着し、該液晶表示素子基板を旋回する機能を有するアライメントヘッドと、前記液晶表示素子基板の中央部以外の部分を吸着または浮揚する機能を有する空圧テーブルを前記アライメントヘッドの外周を囲うように備えるようにする。
【0016】
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、アライメントヘッドおよび空圧テーブルの表面に多孔質材が配設されているようにする。
【0017】
請求項3記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、空圧テーブルが複数の空気室ユニットを一体化して構成されているようにする。
【0018】
請求項4記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、アライメントヘッドが面振れ修正機能を備えるようにする。
【0019】
請求項5記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、アライメントヘッドが平面移動可能となるようにする。
【0020】
請求項6記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、空圧テーブル内で液晶表示素子基板を支持する昇降ロッドが上下動するようにする。
【0021】
請求項7記載の発明では、上記請求項1記載の発明において、液晶表示素子基板の中央部の吸着時にはアライメントヘッドを空圧テーブルから上昇させ、該空圧テーブルによる液晶表示素子基板の吸着に対応して前記アライメントヘッドを降下して空圧テーブルの表面とアライメントヘッドの表面が一致するようにする。
【0022】
請求項8記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、空圧テーブルの上部にアライメントカメラを設け、液晶表示素子基板のアライメントマークまたは液晶表示素子基板の角隅部を検出してアライメントが実行されるようにする。
【0023】
請求項9記載の発明では、上記請求項1−8のいずれかに記載のラビング装置により液晶表示素子基板の表面に形成した配向膜にラビング処理がなされるラビング方法となるようにする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表面に配向膜が形成された液晶表示素子基板を、真空吸着機能を備えたラビングステージ上に配置し、前記液晶表示素子基板に対してラビングローラーを回転させながら所定方向へ相対的に移動させ、前記液晶表示素子基板の表面にラビング処理を行うようにしたラビング装置において、配置された液晶表示素子基板の旋回が可能となり、アライメントにより正確な位置決めをしてラビングステージに固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のラビング装置の外観を示す図である。
【図2】本発明のラビング装置の構成の概要を示す図である。
【図3】本発明のラビング装置の空気室ユニットの構成を示す図である。
【図4】本発明のラビング装置の空圧テーブルの構成を示す図である。
【図5】本発明のラビング装置のアライメントヘッドの構成を示す図である。
【図6】本発明のラビング装置のアライメントヘッドの構成を示す図である。
【図7】本発明のラビング装置の空気室ユニットと昇降ロッドの構成を示す図である。
【図8】本発明のラビング装置の昇降ロッドの構成を示す図である。
【図9】本発明のラビング装置の昇降ロッドの機能を説明する模式図である。
【図10】本発明のラビング装置の昇降ロッドの機能を説明する模式図である。
【図11】本発明のラビング装置の昇降ロッドの機能を説明する模式図である。
【図12】本発明のラビング装置の昇降ロッドの機能を説明する模式図である。
【図13】本発明のラビング装置における基板配置状態を説明する図である。
【図14】本発明のラビング装置におけるアライメント処理を説明する図である。
【図15】本発明のラビング装置における処理の流れを説明する図である。
【図16】本発明のラビング装置における処理の流れを説明する図である。
【図17】本発明のラビング装置における処理の流れを説明する図である。
【図18】本発明のラビング装置の作用効果を説明する図である。
【図19】従来のラビング装置における不具合の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のラビング装置の構成の外観を示す斜視図であり、図2に構成の概要を示す。同図においてラビングステージ1の側部にラビングローラーRが配置され、対向する側部から搬送手段により液晶表示素子基板Wがラビングステージ1上に搬入される。搬入された液晶表示素子基板Wは、後述する機構手段により旋回され、所定の角度でラビングステージ1上に配置され、液晶表示素子基板W上をラビングローラーRが回転しながら移動し、液晶表示素子基板Wの配向膜の表面に配向溝を形成する。
【0027】
前記ラビングステージ1は、液晶表示素子基板Wのラビングステージ1への配置調整を行うアライメントヘッド2を中央に備え、その外周を囲う空圧テーブル3を主体に構成されている。この空圧テーブル3は、空気室の表面から圧縮空気の噴出あるいは外気を吸引する真空引きが行われるように構成されたもので、液晶表示素子基板Wが中型以下の大きさである場合は単一構造とすることができるが、液晶表示素子基板Wの一辺が2mに及ぶような大型である場合は、空圧テーブル3は複数のユニットで構成するのが望ましい。
【0028】
即ち、大型の液晶表示素子基板Wに対応する空圧テーブル3を単一構造とした場合、その空気室内に空気圧の偏在が生じ、表面からの圧縮空気の噴出の程度に偏りが生じる。これにより、液晶表示素子基板Wを浮揚した場合の水平性が保てなくなり、傾斜方向に移動し易くなり位置精度を正確に保てなくなる要因となる。また、空圧テーブル3の表面材を一枚の単板で構成した場合、空気室の空気の吸引で表面材が空気の吸引方向へ撓んでしまい、ラビング処理に悪影響を及ぼすことになる。
【0029】
そこで本発明では、ラビング処理の対象となる液晶表示素子基板Wが大型である場合にも対応できるように、空圧テーブル3を複数のユニットで構成するようにした。さらに、図18に示すように、後述するアライメントヘッド2により液晶表示素子基板Wの中央部を吸着し、且つ、ラビングステージ1からの浮上量と同一高さに上昇させ、液晶表示素子基板Wを浮上した場合の水平性を保つことが可能となるようにするとともに、従来必要であった人為的操作を排除して液晶表示素子基板WのX−Y−θ方向の自動調整が可能となるようにした。
【0030】
図3は、空圧テーブル3を構成するための空気室ユニット31の構造の例を示すもので、同図に示すように、方形筺状体31aの上面の開放部に通気板31bの外周を接着などの適宜手段により固定する。前記通気板31bは、例えば、金属、セラミック、カーボンなどによる多孔質(ポーラス)のものを採用し、両面間の空気の流通が円滑に行われるようにする。一方、方形筺状体31aの底部には送気パイプ31cを設け、圧縮空気の空気室31dへの供給と空気室31d内の空気を吸引する真空引きが可能となるようにしている。
【0031】
以上のように構成された空気室ユニット31は、図4に示すように側辺同士を接合して適宜手段で結合し、一体化された空圧テーブル3が完成する。なお、この空圧テーブル3は装置本体に配設された基盤12に固定され、位置の安定が保たれるようにしている。本発明の空圧テーブル3は以上のように構成されていることから、各空気室ユニット31への圧縮空気の供給を個々に調節することができる。したがって、例えば重力の影響を受けて撓み易い液晶表示素子基板Wの外周の角隅部が位置する空気室ユニット31へ相対的に圧縮空気を多く供給することにより、全体の水平性を維持することができ、液晶表示素子基板Wの角隅部の空圧テーブル3との接触を回避することができる。
【0032】
つぎに、アライメントヘッド2の構成について説明する。図5に示すように円形筺状体21aの上面の開放部に通気板21bの外周を接着などの適宜手段により固定する。この通気板21bも前記通気板31bと同様に多孔質のものを採用し、空気室21cと外部の空気の流通が円滑に行われるようにする。そして、前記円形筺状体21aは台座4を介してダイレクトドライブモーター5に固定され、開口部が空気室21cに臨む送気パイプ6が前記ダイレクトドライブモーター5の中心空間から配設されている。このようにアライメントヘッド2はダイレクトドライブモーター5上に載置された状態となっているので、このダイレクトドライブモーター5を駆動することによりアライメントベッド2が回転する。
【0033】
ここで、上記のようにアライメントヘッドを構成すると、少なからず面振れが発生する可能性がある。一般にラビングステージ上の液晶表示素子基板の許容される平面度は20〜40μであり、配向膜前面に亘ってラビング処理の均一性を向上させるためには、前記平面度を保つ必要がある。したがって、アライメントヘッド2を旋回させることによる面振れを補正するための機構を備えるようにした。
【0034】
即ち、前記ダイレクトドライブモーター5は、テーブル板7に載置固定されており、さらにこのテーブル板7には図5、図6に示す3点支持機構、即ち円周端に各々が120°の角度で離間して配置されたボールジョイント8を介してスクリュージャッキ機構9に連結されている。このスクリュージャッキ機構9のスクリュー9aの端部は、サーボモーター10により回転され、ナット部9bの昇降に伴ってテーブル板7が昇降する。これによりアライメントヘッド2の表面の360°方向の面振れ補正角度調整が可能となる。
【0035】
なお、前記サーボモーター10は、電動機構などの適宜手段によりX−Y軸方向に移動可能となるようにしたスライドテーブル11に固定されていることから、全体がX−Y軸方向に移動し、アライメントヘッド2の平面移動が可能となる。このスライドテーブル11の移動調整は、図1に示すアライメントカメラ13、14により液晶表示素子基板Wの角隅部またはマーキングを検知した信号に基づいて制御回路を作動して行われる。
【0036】
つぎに、ラビングステージ1上に搬入される液晶表示素子基板Wを確保し、また、ラビング処理の完了した液晶表示素子基板Wの搬出が可能となるようにするための機構について説明する。液晶表示素子基板Wはラビングステージ1と接触しないように浮上させた状態で搬入し、ラビングステージ1上に配置しなければならない。そこで、ラビングステージ1の所定の位置で上下動する複数の昇降ロッド15を設けるようにした。この昇降ロッド15は、図7に示すように方形筺状体31aの底板と通気板31bの昇降ロッド15の貫通位置に通孔31a−1、31b−1を形成するとともに、この通孔間に気密状態が保たれるようにリングスペーサー16を配置固定し、このリングスペーサー16内で昇降ロッドが上下動するようにしてある。
【0037】
前記昇降ロッド15は、図8に示すように中空のパイプ状であって、その先端に通気孔15a−1を形成した柔軟性を有する吸着パット15aを備える。一方、通気孔15bが形成された昇降ロッド15の後端は送気管17内に臨み、送気管17により外部の空気が吸着パット15aから吸引され真空引きが可能となるようにしている。このように構成された複数の昇降ロッド15は、図9に示すように送気管17に配設され、サーボモーター18とスクリュージャッキ機構19で上下動する昇降棹20により上下動するようにしている。
【0038】
本発明のラビング装置は以上のように構成されており、かかる構成において液晶表示素子基板Wにラビング処理を施す場合の流れについて、図15〜図17を参照して以下に説明する。図1に示すように装置外部に準備された液晶表示素子基板Wは、搬送手段(図示省略)によりラビングステージ1上へ搬入されるが、この搬入が開始される以前にサーボモーター17を作動し、図10に示すように昇降ロッド15を所定の高さまで上昇させておく(ステップS1)。
【0039】
昇降ロッド15の上昇が確認されると、搬送手段が作動して液晶表示素子基板Wの搬入が開始され、昇降ロッド15の吸着パット15a上に図11、図13に示すように配置され(ステップS2)、吸着パット15aによる真空吸着が開始される(ステップS3)。これにより、液晶表示素子基板Wが昇降ロッド15により仮固定された状態となり、液晶表示素子基板Wの位置ズレを防止する機能を果たす。かかる状態で昇降ロッド15を降下し(ステップS4)、図12に示すようにアライメントヘッド2および空圧テーブル3の表面と液晶表示素子基板Wの裏面を接触させる。
【0040】
液晶表示素子基板Wの裏面にアライメントヘッド2の表面が接触すると、送気パイプ6から空気室21cの空気の吸引、即ち真空引きが開始され、アライメントヘッド2は液晶表示素子基板Wの中央部を真空吸着し(ステップS5)、これと同時に吸着パット15aによる真空吸着を解除して昇降ロッド15を降下させる(ステップS6)。
【0041】
そして、空圧テーブル3により液晶表示素子基板Wの全面を真空吸着して固定し(ステップS7)、アライメントカメラ13,14を作動して液晶表示素子基板Wの角隅部またはアライメントマークを検出し、液晶表示素子基板Wの位置ズレ量を計測する(ステップS8)。この計測により液晶表示素子基板Wの設定された所定位置との誤差が生じている場合は、その補正量を加味した必要回転角度を算出する。
【0042】
つぎに、アライメントヘッド2による液晶表示素子基板Wの中央部の真空吸着を継続した状態において、空圧テーブル3の全ての空気室ユニット31の通気板31bから圧縮空気を噴射する(ステップS9)。これにより、空圧テーブル3に対応する部分の液晶表示素子基板Wは空圧テーブル3上に浮上することになるので、この浮上に相当する高さまでアライメントヘッド2を上昇させる(ステップS10)。
【0043】
前記ステップ10の状態に至ると、液晶表示素子基板Wと空圧テーブル3との間には空気層が形成され、エアーベアリング作用により液晶表示素子基板Wが遊動し易くなるが、アライメントヘッド2による真空吸着は継続されているので、液晶表示素子基板Wの定位置は保たれることになる。かかる状態においてダイレクトドライブモーター5を駆動すると、液晶表示素子基板Wが空圧テーブル3に接触することなく旋回し、図14に例示するように液晶表示素子基板WをラビングローラーRに対して設定された相対角度の位置関係となるようにすることができる(ステップS11)。なお、液晶表示基板Wの旋回量は、ステップS8で測定した位置ズレ補正量を含むようにする。
【0044】
このようにして液晶表示素子基板Wの旋回を完了すると、空圧テーブル3からの圧縮空気の噴射を中断し、液晶表示基板Wの中央部を真空吸着した状態を維持してアライメントヘッド2を降下し、空圧テーブル3の表面と液晶表示素子基板Wの裏面を接触させる(ステップS12)。この状態で、アライメントヘッド2の旋回に伴って面振れが生じている場合は、上述した3点支持機構によりその修正を行う(ステップS13)。
【0045】
前記の修正が完了すると、空圧テーブル3から空気の吸引が開始され、液晶表示素子基板Wの真空吸着が行われる(ステップS14)。これにより液晶表示素子基板Wがラビングステージ1上の正確な位置に固定され、ラビングローラーRによるラビング処理が実行される(ステップS15)。
【0046】
このようにして液晶表示素子基板Wのラビング処理が完了すると、アライメントヘッド2による真空吸着は継続した状態で、空圧テーブル3から圧縮空気を噴射する(ステップS16)。これにより液晶表示素子基板Wが浮上するので、この浮上量に相当する高さまでアライメントヘッド2を上昇し(ステップS17)、液晶表示素子基板Wを搬入時の初期位置に戻るようにアライメントヘッド2を旋回する(ステップ18)。
【0047】
液晶表示素子基板Wが初期位置に達すると、昇降ロッド15が上昇し(ステップと19)、その先端の吸着パット15aを液晶表示素子基板Wの裏面に接触させ、真空吸着を開始する(ステップS20)。その後、空圧テーブル3からの圧縮空気の噴射を中断するとともに、アライメントヘッド2による真空吸着を解除して液晶表示素子基板Wの浮上相当を降下する(ステップS21)。
【0048】
このようにして液晶表示素子基板Wは昇降ロッド15により支持され、更に昇降ロッド15を上昇し(ステップS22)、ラビングステージ1から液晶表示素子基板Wを搬出して処理を完了する(ステップS23)。
【0049】
以上の説明から明らかなように本発明のラビング装置によれば、液晶表示素子基板Wの空圧テーブル3上における旋回を、空圧テーブル3上に噴出する圧縮空気による空気層で接触を回避しながら行われるので、液晶表示素子基板Wに損傷を与えることがない。また、空圧テーブル3上に搬入された液晶表示素子基板Wは、その中央がアライメントヘッド2により真空吸着されて保持されるが、この中心部以外は噴出する圧縮空気により浮上する状態となるので、液晶表示素子基板Wの全体を空圧テーブル3上でどのような角度にも旋回させることができる。
【0050】
しかも、空圧テーブル3は旋回することなく定位置に固定した状態とすることができるので、空圧テーブル3により面振れが発生する可能性は皆無であることから正確に水平性を維持することができ、所定の角度で液晶表示素子基板Wを真空吸着により空圧テーブル3上に確実に保持してラビング処理を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のラビング装置について、大型の液晶表示素子基板を対象とする実施例に基づいて説明したが、液晶表示素子基板が中型あるいは小型のものを対象として本発明を実施したラビング装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・・・・ラビングステージ
2・・・・・・アライメントヘッド
3・・・・・・空圧テーブル
31・・・・・空気室ユニット
4・・・・・・台座
5・・・・・・ダイレクトドライブモーター
6・・・・・・送気パイプ
7・・・・・・テーブル板
8・・・・・・ボールジョイント
9・・・・・・スクリュージャッキ機構
10・・・・・サーボモーター
11・・・・・スライドテーブル
13・14・・アライメントカメラ
15・・・・・昇降ロッド
16・・・・・リングスペーサー
17・・・・・送気管
18・・・・・サーボモーター
19・・・・・スクリュージャッキ機構
20・・・・・昇降棹
R・・・・・・ラビングローラー
W・・・・・・液晶表示素子基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(液晶パネル)製造工程において用いられるラビング装置およびラビング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配向膜が形成された液晶表示素子基板(ガラス基板)の前記配向膜の表面に施すラビング処理は、液晶表示素子基板をラビングステージ上に配置して行う。この場合、ラビング処理による配向膜の表面の配向溝は所定の方向に形成されるようにするため、ラビングステージ上に配置される液晶表示素子基板は、ラビングローラーに対して指定の角度が維持されるようにしなければならない。
【0003】
このようにして行われる液晶パネルの製造プロセスにおけるラビング工程では、液晶分子の分布を均一に、且つ液晶分子の配向を配向溝に沿って所定の方向に配列し、液晶パネルの全面に亘って均一な画像品質が得られるようにしなければならない。したがって、配向膜の全面を均一な条件下でラビング処理することにより、配向膜の全面に配向溝を均一に形成することが重要となる。
【0004】
かかるラビング処理装置の一例して、複数の液晶表示素子基板を連続してラビング処理する場合において、処理する基板毎にラビングステージ上の異なる位置に位置決めする位置決め機構を備え、この位置決め後の液晶表示素子基板をラビングステージ上に吸着保持する保持機構である吸着孔(ピンホール)により真空吸着する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−257105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラビングステージ上に配置された液晶表示素子基板の角度は、0°、90°、180°、270°が一般的であった。ところが、近年の多岐に亘る製品需要の要望からラビング処理の方向が360°の全方向からの角度が可能で、且つ高い角度精度およびラビングステージの面精度が要求されているに至っている。
【0007】
しかしながら、従来のラビング処理では、その前工程で液晶表示素子基板の角度を設定してロボットなどの搬送手段によりラビングステージへ液晶表示素子基板を搬入するようにしているため、位置ずれを完全に無くすことができず、液晶表示素子基板の角度の精度保証が困難であり、その上、旋回させて位置決めするための専用装置が必要であるが、ラビングステージを旋回するということは、旋回を許容する機構を介してラビングステージを配置する構成となることによる構造的要因により面振れが必ず発生する。
【0008】
また、処理する液晶表示素子基板の大型化に伴って駆動源の大型化、電力の増加や機構要素の重量増加によりラビングステージの駆動負荷が増大して生産性の低下に繋がる問題があった。このような問題の傾向は液晶表示素子基板も大型化していることから顕著となっており、重要な解決課題となっている。
【0009】
即ち、大型の液晶表示素子基板は一辺が2mに及ぶものもあり、その厚さは、0.6〜0.7mmと極めて薄いものであるが、このような剛性の乏しい液晶表示素子基板をラビングステージ上で平面性を保つとともに、液晶表示素子基板は、ラビングローラーに対して指定の角度精度(±0.05°〜±0.01°)を達成しラビング処理を行わなければならない。しかしながら、液晶表示素子基板は大型になるほど平面性を保つのが困難であり、ラビングステージ上への搬入そして定位置への固定も困難なものとなる。
【0010】
そこで、液晶表示素子基板のラビングステージへ搬入し固定する手段として、特許文献1に開示されているような、ラビングステージに複数の吸着孔を形成し、この吸着孔から圧縮空気を噴出させ、この圧縮空気上に液晶表示素子基板を搬入することにより圧縮空気がいわゆるエアーベアリングとなってラビングステージとの接触を避けながらラビングステージ上に液晶表示素子基板を搬入することができる。
【0011】
図19は、ラビングステージ上に液晶表示素子基板Wが搬入され、圧縮空気AがラビングステージSTから噴出している状態を示す。前記圧縮空気Aは液晶表示素子基板Wの外周から外部へ噴き出すので、この部分の空気の流速が早く空気抵抗が低いことと、重力の作用が相俟って液晶表示素子基板Wの外周は下方へ降下する一方、液晶表示素子基板Wの中央部は、空気の流速が遅くなることから空気溜まりの状態となり、剛性が乏しく撓み易い液晶表示素子基板Wは、同図に示すように中央が突出する湾曲状態を呈することになる。
【0012】
かかる状態でラビングの方向へ位置決めするために、外部からの機械的手段により液晶表示素子基板Wを旋回させると、この液晶表示素子基板Wの最も降下している角隅部分(エッジ)がラビングステージSTに接触してしまう可能性がある。また、図19に示す状態は液晶表示素子基板Wが浮揚(フローティング)しており、圧縮空気による空気層がエアーベアリングとなっていることから、僅かな外力によっても液晶表示素子基板Wは移動してしまい、液晶表示素子基板WをラビングステージST上の定位置に定めるのは甚だ困難である。
【0013】
この液晶表示素子基板WのラビングステージST上への位置決めは、圧縮空気Aが噴出している間に実行されなければならない。何故ならば、圧縮空気Aが供給されていない状態では、液晶表示素子基板WとラビングステージSTとの接触抵抗が、圧縮空気Aが存在する場合に比べて格段に大きくなることから、薄く大型である液晶表示素子基板WをラビングステージST上で機械的に旋回させ、アライメントにより正確に位置決めして固定することは到底できない。
【0014】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、ラビングステージに液晶表示素子基板の真空吸着機能を備える構成において、ラビングステージ上で液晶表示素子基板の旋回を可能にするとともに、アライメント調整により正確な位置決めをしてラビングステージに固定することが可能となるようにしたラビング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで本発明は、以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、表面に配向膜が形成された液晶表示素子基板をラビングステージ上に配置し、前記液晶表示素子基板に対してラビングローラーを回転させながら所定方向へ相対的に移動させ、前記液晶表示素子基板の表面にラビング処理を施すようにしたラビング装置であり、前記ラビングステージの中央には、前記液晶表示素子基板の中央部を吸着し、該液晶表示素子基板を旋回する機能を有するアライメントヘッドと、前記液晶表示素子基板の中央部以外の部分を吸着または浮揚する機能を有する空圧テーブルを前記アライメントヘッドの外周を囲うように備えるようにする。
【0016】
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、アライメントヘッドおよび空圧テーブルの表面に多孔質材が配設されているようにする。
【0017】
請求項3記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、空圧テーブルが複数の空気室ユニットを一体化して構成されているようにする。
【0018】
請求項4記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、アライメントヘッドが面振れ修正機能を備えるようにする。
【0019】
請求項5記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、アライメントヘッドが平面移動可能となるようにする。
【0020】
請求項6記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、空圧テーブル内で液晶表示素子基板を支持する昇降ロッドが上下動するようにする。
【0021】
請求項7記載の発明では、上記請求項1記載の発明において、液晶表示素子基板の中央部の吸着時にはアライメントヘッドを空圧テーブルから上昇させ、該空圧テーブルによる液晶表示素子基板の吸着に対応して前記アライメントヘッドを降下して空圧テーブルの表面とアライメントヘッドの表面が一致するようにする。
【0022】
請求項8記載の発明では、上記請求項1記載のラビング装置において、空圧テーブルの上部にアライメントカメラを設け、液晶表示素子基板のアライメントマークまたは液晶表示素子基板の角隅部を検出してアライメントが実行されるようにする。
【0023】
請求項9記載の発明では、上記請求項1−8のいずれかに記載のラビング装置により液晶表示素子基板の表面に形成した配向膜にラビング処理がなされるラビング方法となるようにする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表面に配向膜が形成された液晶表示素子基板を、真空吸着機能を備えたラビングステージ上に配置し、前記液晶表示素子基板に対してラビングローラーを回転させながら所定方向へ相対的に移動させ、前記液晶表示素子基板の表面にラビング処理を行うようにしたラビング装置において、配置された液晶表示素子基板の旋回が可能となり、アライメントにより正確な位置決めをしてラビングステージに固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のラビング装置の外観を示す図である。
【図2】本発明のラビング装置の構成の概要を示す図である。
【図3】本発明のラビング装置の空気室ユニットの構成を示す図である。
【図4】本発明のラビング装置の空圧テーブルの構成を示す図である。
【図5】本発明のラビング装置のアライメントヘッドの構成を示す図である。
【図6】本発明のラビング装置のアライメントヘッドの構成を示す図である。
【図7】本発明のラビング装置の空気室ユニットと昇降ロッドの構成を示す図である。
【図8】本発明のラビング装置の昇降ロッドの構成を示す図である。
【図9】本発明のラビング装置の昇降ロッドの機能を説明する模式図である。
【図10】本発明のラビング装置の昇降ロッドの機能を説明する模式図である。
【図11】本発明のラビング装置の昇降ロッドの機能を説明する模式図である。
【図12】本発明のラビング装置の昇降ロッドの機能を説明する模式図である。
【図13】本発明のラビング装置における基板配置状態を説明する図である。
【図14】本発明のラビング装置におけるアライメント処理を説明する図である。
【図15】本発明のラビング装置における処理の流れを説明する図である。
【図16】本発明のラビング装置における処理の流れを説明する図である。
【図17】本発明のラビング装置における処理の流れを説明する図である。
【図18】本発明のラビング装置の作用効果を説明する図である。
【図19】従来のラビング装置における不具合の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のラビング装置の構成の外観を示す斜視図であり、図2に構成の概要を示す。同図においてラビングステージ1の側部にラビングローラーRが配置され、対向する側部から搬送手段により液晶表示素子基板Wがラビングステージ1上に搬入される。搬入された液晶表示素子基板Wは、後述する機構手段により旋回され、所定の角度でラビングステージ1上に配置され、液晶表示素子基板W上をラビングローラーRが回転しながら移動し、液晶表示素子基板Wの配向膜の表面に配向溝を形成する。
【0027】
前記ラビングステージ1は、液晶表示素子基板Wのラビングステージ1への配置調整を行うアライメントヘッド2を中央に備え、その外周を囲う空圧テーブル3を主体に構成されている。この空圧テーブル3は、空気室の表面から圧縮空気の噴出あるいは外気を吸引する真空引きが行われるように構成されたもので、液晶表示素子基板Wが中型以下の大きさである場合は単一構造とすることができるが、液晶表示素子基板Wの一辺が2mに及ぶような大型である場合は、空圧テーブル3は複数のユニットで構成するのが望ましい。
【0028】
即ち、大型の液晶表示素子基板Wに対応する空圧テーブル3を単一構造とした場合、その空気室内に空気圧の偏在が生じ、表面からの圧縮空気の噴出の程度に偏りが生じる。これにより、液晶表示素子基板Wを浮揚した場合の水平性が保てなくなり、傾斜方向に移動し易くなり位置精度を正確に保てなくなる要因となる。また、空圧テーブル3の表面材を一枚の単板で構成した場合、空気室の空気の吸引で表面材が空気の吸引方向へ撓んでしまい、ラビング処理に悪影響を及ぼすことになる。
【0029】
そこで本発明では、ラビング処理の対象となる液晶表示素子基板Wが大型である場合にも対応できるように、空圧テーブル3を複数のユニットで構成するようにした。さらに、図18に示すように、後述するアライメントヘッド2により液晶表示素子基板Wの中央部を吸着し、且つ、ラビングステージ1からの浮上量と同一高さに上昇させ、液晶表示素子基板Wを浮上した場合の水平性を保つことが可能となるようにするとともに、従来必要であった人為的操作を排除して液晶表示素子基板WのX−Y−θ方向の自動調整が可能となるようにした。
【0030】
図3は、空圧テーブル3を構成するための空気室ユニット31の構造の例を示すもので、同図に示すように、方形筺状体31aの上面の開放部に通気板31bの外周を接着などの適宜手段により固定する。前記通気板31bは、例えば、金属、セラミック、カーボンなどによる多孔質(ポーラス)のものを採用し、両面間の空気の流通が円滑に行われるようにする。一方、方形筺状体31aの底部には送気パイプ31cを設け、圧縮空気の空気室31dへの供給と空気室31d内の空気を吸引する真空引きが可能となるようにしている。
【0031】
以上のように構成された空気室ユニット31は、図4に示すように側辺同士を接合して適宜手段で結合し、一体化された空圧テーブル3が完成する。なお、この空圧テーブル3は装置本体に配設された基盤12に固定され、位置の安定が保たれるようにしている。本発明の空圧テーブル3は以上のように構成されていることから、各空気室ユニット31への圧縮空気の供給を個々に調節することができる。したがって、例えば重力の影響を受けて撓み易い液晶表示素子基板Wの外周の角隅部が位置する空気室ユニット31へ相対的に圧縮空気を多く供給することにより、全体の水平性を維持することができ、液晶表示素子基板Wの角隅部の空圧テーブル3との接触を回避することができる。
【0032】
つぎに、アライメントヘッド2の構成について説明する。図5に示すように円形筺状体21aの上面の開放部に通気板21bの外周を接着などの適宜手段により固定する。この通気板21bも前記通気板31bと同様に多孔質のものを採用し、空気室21cと外部の空気の流通が円滑に行われるようにする。そして、前記円形筺状体21aは台座4を介してダイレクトドライブモーター5に固定され、開口部が空気室21cに臨む送気パイプ6が前記ダイレクトドライブモーター5の中心空間から配設されている。このようにアライメントヘッド2はダイレクトドライブモーター5上に載置された状態となっているので、このダイレクトドライブモーター5を駆動することによりアライメントベッド2が回転する。
【0033】
ここで、上記のようにアライメントヘッドを構成すると、少なからず面振れが発生する可能性がある。一般にラビングステージ上の液晶表示素子基板の許容される平面度は20〜40μであり、配向膜前面に亘ってラビング処理の均一性を向上させるためには、前記平面度を保つ必要がある。したがって、アライメントヘッド2を旋回させることによる面振れを補正するための機構を備えるようにした。
【0034】
即ち、前記ダイレクトドライブモーター5は、テーブル板7に載置固定されており、さらにこのテーブル板7には図5、図6に示す3点支持機構、即ち円周端に各々が120°の角度で離間して配置されたボールジョイント8を介してスクリュージャッキ機構9に連結されている。このスクリュージャッキ機構9のスクリュー9aの端部は、サーボモーター10により回転され、ナット部9bの昇降に伴ってテーブル板7が昇降する。これによりアライメントヘッド2の表面の360°方向の面振れ補正角度調整が可能となる。
【0035】
なお、前記サーボモーター10は、電動機構などの適宜手段によりX−Y軸方向に移動可能となるようにしたスライドテーブル11に固定されていることから、全体がX−Y軸方向に移動し、アライメントヘッド2の平面移動が可能となる。このスライドテーブル11の移動調整は、図1に示すアライメントカメラ13、14により液晶表示素子基板Wの角隅部またはマーキングを検知した信号に基づいて制御回路を作動して行われる。
【0036】
つぎに、ラビングステージ1上に搬入される液晶表示素子基板Wを確保し、また、ラビング処理の完了した液晶表示素子基板Wの搬出が可能となるようにするための機構について説明する。液晶表示素子基板Wはラビングステージ1と接触しないように浮上させた状態で搬入し、ラビングステージ1上に配置しなければならない。そこで、ラビングステージ1の所定の位置で上下動する複数の昇降ロッド15を設けるようにした。この昇降ロッド15は、図7に示すように方形筺状体31aの底板と通気板31bの昇降ロッド15の貫通位置に通孔31a−1、31b−1を形成するとともに、この通孔間に気密状態が保たれるようにリングスペーサー16を配置固定し、このリングスペーサー16内で昇降ロッドが上下動するようにしてある。
【0037】
前記昇降ロッド15は、図8に示すように中空のパイプ状であって、その先端に通気孔15a−1を形成した柔軟性を有する吸着パット15aを備える。一方、通気孔15bが形成された昇降ロッド15の後端は送気管17内に臨み、送気管17により外部の空気が吸着パット15aから吸引され真空引きが可能となるようにしている。このように構成された複数の昇降ロッド15は、図9に示すように送気管17に配設され、サーボモーター18とスクリュージャッキ機構19で上下動する昇降棹20により上下動するようにしている。
【0038】
本発明のラビング装置は以上のように構成されており、かかる構成において液晶表示素子基板Wにラビング処理を施す場合の流れについて、図15〜図17を参照して以下に説明する。図1に示すように装置外部に準備された液晶表示素子基板Wは、搬送手段(図示省略)によりラビングステージ1上へ搬入されるが、この搬入が開始される以前にサーボモーター17を作動し、図10に示すように昇降ロッド15を所定の高さまで上昇させておく(ステップS1)。
【0039】
昇降ロッド15の上昇が確認されると、搬送手段が作動して液晶表示素子基板Wの搬入が開始され、昇降ロッド15の吸着パット15a上に図11、図13に示すように配置され(ステップS2)、吸着パット15aによる真空吸着が開始される(ステップS3)。これにより、液晶表示素子基板Wが昇降ロッド15により仮固定された状態となり、液晶表示素子基板Wの位置ズレを防止する機能を果たす。かかる状態で昇降ロッド15を降下し(ステップS4)、図12に示すようにアライメントヘッド2および空圧テーブル3の表面と液晶表示素子基板Wの裏面を接触させる。
【0040】
液晶表示素子基板Wの裏面にアライメントヘッド2の表面が接触すると、送気パイプ6から空気室21cの空気の吸引、即ち真空引きが開始され、アライメントヘッド2は液晶表示素子基板Wの中央部を真空吸着し(ステップS5)、これと同時に吸着パット15aによる真空吸着を解除して昇降ロッド15を降下させる(ステップS6)。
【0041】
そして、空圧テーブル3により液晶表示素子基板Wの全面を真空吸着して固定し(ステップS7)、アライメントカメラ13,14を作動して液晶表示素子基板Wの角隅部またはアライメントマークを検出し、液晶表示素子基板Wの位置ズレ量を計測する(ステップS8)。この計測により液晶表示素子基板Wの設定された所定位置との誤差が生じている場合は、その補正量を加味した必要回転角度を算出する。
【0042】
つぎに、アライメントヘッド2による液晶表示素子基板Wの中央部の真空吸着を継続した状態において、空圧テーブル3の全ての空気室ユニット31の通気板31bから圧縮空気を噴射する(ステップS9)。これにより、空圧テーブル3に対応する部分の液晶表示素子基板Wは空圧テーブル3上に浮上することになるので、この浮上に相当する高さまでアライメントヘッド2を上昇させる(ステップS10)。
【0043】
前記ステップ10の状態に至ると、液晶表示素子基板Wと空圧テーブル3との間には空気層が形成され、エアーベアリング作用により液晶表示素子基板Wが遊動し易くなるが、アライメントヘッド2による真空吸着は継続されているので、液晶表示素子基板Wの定位置は保たれることになる。かかる状態においてダイレクトドライブモーター5を駆動すると、液晶表示素子基板Wが空圧テーブル3に接触することなく旋回し、図14に例示するように液晶表示素子基板WをラビングローラーRに対して設定された相対角度の位置関係となるようにすることができる(ステップS11)。なお、液晶表示基板Wの旋回量は、ステップS8で測定した位置ズレ補正量を含むようにする。
【0044】
このようにして液晶表示素子基板Wの旋回を完了すると、空圧テーブル3からの圧縮空気の噴射を中断し、液晶表示基板Wの中央部を真空吸着した状態を維持してアライメントヘッド2を降下し、空圧テーブル3の表面と液晶表示素子基板Wの裏面を接触させる(ステップS12)。この状態で、アライメントヘッド2の旋回に伴って面振れが生じている場合は、上述した3点支持機構によりその修正を行う(ステップS13)。
【0045】
前記の修正が完了すると、空圧テーブル3から空気の吸引が開始され、液晶表示素子基板Wの真空吸着が行われる(ステップS14)。これにより液晶表示素子基板Wがラビングステージ1上の正確な位置に固定され、ラビングローラーRによるラビング処理が実行される(ステップS15)。
【0046】
このようにして液晶表示素子基板Wのラビング処理が完了すると、アライメントヘッド2による真空吸着は継続した状態で、空圧テーブル3から圧縮空気を噴射する(ステップS16)。これにより液晶表示素子基板Wが浮上するので、この浮上量に相当する高さまでアライメントヘッド2を上昇し(ステップS17)、液晶表示素子基板Wを搬入時の初期位置に戻るようにアライメントヘッド2を旋回する(ステップ18)。
【0047】
液晶表示素子基板Wが初期位置に達すると、昇降ロッド15が上昇し(ステップと19)、その先端の吸着パット15aを液晶表示素子基板Wの裏面に接触させ、真空吸着を開始する(ステップS20)。その後、空圧テーブル3からの圧縮空気の噴射を中断するとともに、アライメントヘッド2による真空吸着を解除して液晶表示素子基板Wの浮上相当を降下する(ステップS21)。
【0048】
このようにして液晶表示素子基板Wは昇降ロッド15により支持され、更に昇降ロッド15を上昇し(ステップS22)、ラビングステージ1から液晶表示素子基板Wを搬出して処理を完了する(ステップS23)。
【0049】
以上の説明から明らかなように本発明のラビング装置によれば、液晶表示素子基板Wの空圧テーブル3上における旋回を、空圧テーブル3上に噴出する圧縮空気による空気層で接触を回避しながら行われるので、液晶表示素子基板Wに損傷を与えることがない。また、空圧テーブル3上に搬入された液晶表示素子基板Wは、その中央がアライメントヘッド2により真空吸着されて保持されるが、この中心部以外は噴出する圧縮空気により浮上する状態となるので、液晶表示素子基板Wの全体を空圧テーブル3上でどのような角度にも旋回させることができる。
【0050】
しかも、空圧テーブル3は旋回することなく定位置に固定した状態とすることができるので、空圧テーブル3により面振れが発生する可能性は皆無であることから正確に水平性を維持することができ、所定の角度で液晶表示素子基板Wを真空吸着により空圧テーブル3上に確実に保持してラビング処理を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のラビング装置について、大型の液晶表示素子基板を対象とする実施例に基づいて説明したが、液晶表示素子基板が中型あるいは小型のものを対象として本発明を実施したラビング装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・・・・ラビングステージ
2・・・・・・アライメントヘッド
3・・・・・・空圧テーブル
31・・・・・空気室ユニット
4・・・・・・台座
5・・・・・・ダイレクトドライブモーター
6・・・・・・送気パイプ
7・・・・・・テーブル板
8・・・・・・ボールジョイント
9・・・・・・スクリュージャッキ機構
10・・・・・サーボモーター
11・・・・・スライドテーブル
13・14・・アライメントカメラ
15・・・・・昇降ロッド
16・・・・・リングスペーサー
17・・・・・送気管
18・・・・・サーボモーター
19・・・・・スクリュージャッキ機構
20・・・・・昇降棹
R・・・・・・ラビングローラー
W・・・・・・液晶表示素子基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に配向膜が形成された液晶表示素子基板をラビングステージ上に配置し、前記液晶表示素子基板に対してラビングローラーを回転させながら所定方向へ相対的に移動させ、前記液晶表示素子基板の表面にラビング処理を施すようにしたラビング装置であり、
前記ラビングステージの中央には、前記液晶表示素子基板の中央部を吸着し、該液晶表示素子基板を旋回する機能を有するアライメントヘッドと、前記液晶表示素子基板の中央部以外の部分を吸着または浮揚する機能を有する空圧テーブルを前記アライメントヘッドの外周を囲うように備えたことを特徴とするラビング装置。
【請求項2】
前記アライメントヘッドおよび空圧テーブルの表面に多孔質材が配設されていることを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項3】
前記空圧テーブルが複数の空気室ユニットを一体化して構成されていることを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項4】
前記アライメントヘッドが面振れ修正機能を備えていることを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項5】
前記アライメントヘッドが平行移動可能となるようにしたことを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項6】
前記空圧テーブル内で液晶表示素子基板を支持する昇降ロッドが上下動するようにしたことを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項7】
前記液晶表示素子基板の中央部の吸着時にはアライメントヘッドを空圧テーブルから上昇させ、該空圧テーブルによる液晶表示素子基板の吸着に対応して前記アライメントヘッドを降下して空圧テーブルの表面とアライメントヘッドの表面が一致するようにしたことを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項8】
前記空圧テーブルの上部にアライメントカメラを設け、液晶表示素子基板のアライメントマークまたは液晶表示素子基板の角隅部を検出してアライメントが実行されるようにしたことを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項9】
請求項1−8のいずれかに記載のラビング装置により液晶表示素子基板の表面に形成した配向膜にラビング処理がなされるようにしたことを特徴とするラビング方法。
【請求項1】
表面に配向膜が形成された液晶表示素子基板をラビングステージ上に配置し、前記液晶表示素子基板に対してラビングローラーを回転させながら所定方向へ相対的に移動させ、前記液晶表示素子基板の表面にラビング処理を施すようにしたラビング装置であり、
前記ラビングステージの中央には、前記液晶表示素子基板の中央部を吸着し、該液晶表示素子基板を旋回する機能を有するアライメントヘッドと、前記液晶表示素子基板の中央部以外の部分を吸着または浮揚する機能を有する空圧テーブルを前記アライメントヘッドの外周を囲うように備えたことを特徴とするラビング装置。
【請求項2】
前記アライメントヘッドおよび空圧テーブルの表面に多孔質材が配設されていることを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項3】
前記空圧テーブルが複数の空気室ユニットを一体化して構成されていることを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項4】
前記アライメントヘッドが面振れ修正機能を備えていることを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項5】
前記アライメントヘッドが平行移動可能となるようにしたことを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項6】
前記空圧テーブル内で液晶表示素子基板を支持する昇降ロッドが上下動するようにしたことを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項7】
前記液晶表示素子基板の中央部の吸着時にはアライメントヘッドを空圧テーブルから上昇させ、該空圧テーブルによる液晶表示素子基板の吸着に対応して前記アライメントヘッドを降下して空圧テーブルの表面とアライメントヘッドの表面が一致するようにしたことを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項8】
前記空圧テーブルの上部にアライメントカメラを設け、液晶表示素子基板のアライメントマークまたは液晶表示素子基板の角隅部を検出してアライメントが実行されるようにしたことを特徴とする請求項1記載のラビング装置。
【請求項9】
請求項1−8のいずれかに記載のラビング装置により液晶表示素子基板の表面に形成した配向膜にラビング処理がなされるようにしたことを特徴とするラビング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−114044(P2013−114044A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260398(P2011−260398)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(399041561)常陽工学株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(399041561)常陽工学株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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