説明

ラベル付き油用容器

【課題】 本発明は、耐油性に優れ、更に、衝撃が加わった際に亀裂を生じ難い熱収縮性筒状ラベルが装着されたラベル付き油用容器を提供することを課題とする。
【解決手段】 可撓性のある角型胴部21を有する油用容器2と、ポリエステル系フィルム及びポリスチレン系フィルムを有する積層フィルムで構成され、且つポリエステル系フィルムを外面にして筒状に成形された熱収縮性筒状ラベル3と、を備え、熱収縮性筒状ラベルが、油用容器2の角型胴部21に熱収縮装着されているラベル付き油用容器。この熱収縮性筒状ラベル3の容器接触面は容器胴部21に対する静摩擦係数が0.3以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油(特に食用油)を封入する容器に熱収縮性筒状ラベルが装着されたラベル付き油用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食用油などは、金属缶に封入されて販売されてきたが、近年、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの可撓性のある合成樹脂成形容器に封入されて販売されることも多い。
かかる合成樹脂製容器には、商品名などを付与するため、熱収縮性筒状ラベルが熱収縮装着されている。
このようなラベル付き油用容器としては、特開2002−284173公報記載のように、ポリエチレンテレフタレート製容器に、非晶性オレフィン系重合体の表面層とプロピレン系重合体の中間層とで構成された熱収縮性筒状ラベルが装着されたものが知られている。
【0003】
しかしながら、上記公報記載の容器は、筒状ラベルの表面層が耐油性に劣るため、油の付着によって白化を生じる。また、筒状ラベルの材料コストが高いなどの問題点を有する。
また、ポリスチレン系フィルムからなる熱収縮性筒状ラベルを用いることも知られているが、これは耐油性に劣るため、油の付着によって、白化、微細なクラックや穴あきなどを生じる虞がある。
この点、耐油性に優れている点で、油用容器に装着する熱収縮性筒状ラベルとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、ポリエチレンテレフタレートを「PET」と記す場合がある)からなる筒状ラベルを用いることも考えられる。
しかしながら、PETフィルム製の筒状ラベルは、比較的高い温度で急激に収縮するので装着時に皺が生じ易いという問題点がある。
また、PETフィルム製の筒状ラベルは、周方向に裂け易いので、PET製筒状ラベルを装着後、油用容器に衝撃が加わった際、筒状ラベルに亀裂が入り易いという問題点がある。特に、筒状ラベルを装着する油用容器の胴部が、可撓性のある角型胴部(横断面略長方形など)である場合、ラベル付き油用容器を落下などさせた際、ラベルに亀裂が入りやすい。
この亀裂発生は、次のような事項が原因と考えられる。可撓性のある角型胴部を有する容器に熱収縮性筒状ラベルを装着すると、周方向に熱収縮した筒状ラベルは、角型胴部の角部間に存するパネル面に接触(又は非常に小さい間隙を有して対面)する。この状態で落下などして容器に衝撃が加わると、パネル面が撓み、この撓みが筒状ラベルに伝わる。PETフィルム製の熱収縮性筒状ラベルは、周方向に裂け易い性質を有する上、パネル面の撓みが伝わることで、PETフィルム製の熱収縮性筒状ラベルに亀裂が生じるものと考えられる。特に、近年、容器の薄型軽量化が進み、容器が変形しやすくなっていることから、上記問題が生じやすい。
【0004】
【特許文献1】特開2002−284173公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、耐油性に優れた筒状ラベルが装着され、該装着されたラベルに亀裂が生じ難いラベル付き油用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、可撓性のある角型胴部を有する油用容器と、ポリエステル系フィルム及びポリスチレン系フィルムを有する積層フィルムで構成され、且つポリエステル系フィルムを外面にして筒状に成形された熱収縮性筒状ラベルと、を備え、熱収縮性筒状ラベルが、油用容器の角型胴部に熱収縮装着されているラベル付き油用容器を提供する。
【0007】
上記ラベル付き油用容器は、装着された熱収縮性筒状ラベルの外面がポリエステル系フィルムで構成されているので、容器内の油がラベルに付着しても、ラベルの白化などを防止できる。
また、上記ラベル付き油用容器は、角型胴部のパネル面に熱収縮性筒状ラベルが接触(又は非常に小さい間隙を有して対面)しているが、該熱収縮性筒状ラベルは、ポリスチレン系フィルムが積層された積層フィルムからなるので、衝撃などによって角型胴部のパネル面が撓み、これが筒状ラベルに伝わっても、筒状ラベルの亀裂発生を防止できる。
【0008】
さらに、本発明の好ましい態様では、上記熱収縮性筒状ラベルの容器接触面は、ポリエチレンテレフタレートフィルムに対する静摩擦係数が0.3以下とされている上記ラベル付き油用容器を提供する。
【0009】
ここで、静摩擦係数は、2つの物体が接している面の摩擦度合いを表すものであるため、物体が異なると静摩擦係数の数値も異なり得る。この点に鑑み、「熱収縮性筒状ラベルの容器接触面の、油用容器に対する静摩擦係数」の特定方法として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基準とするものであって、熱収縮性筒状ラベルが装着される油用容器がポリエチレンテレフタレート製であるという限定的な解釈をしてはならない。
この静摩擦係数は、下記に示す測定方法によって測定された数値を言う。
熱収縮性筒状ラベルを80mm×100mm(幅×長さ)に切り取り、二軸延伸のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、A1101#100の未処理面)を100mm×300mm(幅×長さ)に切り取り、熱収縮性筒状ラベルの容器接触面をこのフィルムに重ね、JIS K 7125に準じて、引張りスピード100mm/分、温度23±2℃、湿度50±5%で、静摩擦係数を測定する。
【0010】
上記熱収縮性筒状ラベルの容器接触面は、静摩擦係数が0.3以下とされているので、油用容器に対する滑り性に優れている。このように筒状ラベルが油用容器に対して滑りやすいことから、ラベル付き油用容器の角型胴部のパネル面が撓んでも、この撓みが筒状ラベルに伝わり難く、熱収縮性筒状ラベルの亀裂発生を確実に防止できる。
【0011】
さらに、本発明の好ましい態様では、上記角型胴部は、周方向に於いて長辺と短辺を有し、角型胴部の上下に間隔を開けて、胴部よりも周長さの小さい第1縮小部及び第2縮小部が形成されており、上記熱収縮性筒状ラベルが、第1縮小部及び第2縮小部に至って熱収縮装着されている上記ラベル付き油用容器を提供する。
【0012】
一般に、長辺と短辺を有する角型胴部の上下に縮小部が2ヶ所設けられ、両縮小部に至るまで熱収縮性筒状ラベルが熱収縮装着されているラベル付き容器は、落下などで衝撃が加わった際、筒状ラベルの亀裂が特に発生し易い。
この点、上記ラベル付き油用容器は、筒状ラベルがポリスチレン系フィルムを積層した積層フィルムからなるので、長辺と短辺を有する角型胴部の第1縮小部及び第2縮小部に至るまで熱収縮性筒状ラベルが熱収縮装着されていても、該筒状ラベルの亀裂発生を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るラベル付き油用容器は、油が筒状ラベルに付着しても、ラベルの白化などを防止できる。さらに、本発明のラベル付き油用容器は、落下衝撃などによる熱収縮性筒状ラベルの亀裂発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。尚、便宜上、筒状ラベルの「内面」とは、装着される容器に近い側の面を指し、「外面」とは、容器に離れる側の面を指す。
図1及び図2に於いて、1は、可撓性のある角型胴部21を有する油用容器2と、ポリエステル系フィルム及びポリスチレン系フィルムが積層された熱収縮性筒状ラベル3と、を備え、熱収縮性筒状ラベル3が、ポリエステル系フィルムを外側にして角型胴部21に熱収縮装着されているラベル付き油用容器を示す。
【0015】
油用容器2は、例えば、図2に示すように、底面部22、この上方に続くコーナ部23、このコーナ部23に続く角型胴部21、この胴部21から次第に細くなる肩部24が形成され、更に、この肩部24の上方の注出口を開閉するキャップ25が取り付けられている。
具体的には、角型胴部21の下端部と底面部22の周縁部の間には、下方側(底面部側)に向かうに従い周長さが小さくなるコーナ部23(第1縮小部に相当する)が形成されている。従って、該コーナ部23の周長さは、角型胴部21の周長さよりも小さくなっている。一方、角型胴部21の上端に形成された肩部24(第2縮小部に相当する)は、上方側に向かうに従い周長さが小さくなるように(つまり小径に)形成されている。該肩部24も同様に、角型胴部21の周長さより小さくなっている。
【0016】
角型胴部21の横断面に於ける外形状は、図3に示すように矩形状に形成されている。
該矩形状の角型胴部21は、主として4つのパネル面211,212を直交方向に組み合わせた基本態様からなり、隣合うパネル面211,212の接続部分に生じる直角部を面取するように、隣合うパネル面211,212の間にコーナー面213が形成されている。このコーナー面213は、各パネル面211,…よりも幅(胴部21の周方向に於ける長さ)が狭く、各パネル面211に対して所定の角度(例えば略45度)を以て一体的に形成されている。かかるパネル面211,…及びコーナー面213は、肩部24にまで形成されている。
4つのパネル面211,…のうちコーナー面213を介して隣合うパネル面211,212は、一方のパネル面211の幅(同上)が、他方のパネル面212の幅よりも長く形成されている。従って、角型胴部21の横断面外形状は、周方向に於いて長辺と短辺を有する長方形に形成されている。
また、角型胴部21のパネル面211,…及びコーナー面213には、装着された熱収縮性筒状ラベル3の最内面が接触(又は非常に小さい間隙を有して対面)している。尚、パネル面211,…及びコーナー面213の補強のため、本発明の油用容器2として、該パネル面211,…及びコーナー面213に公知のリブ形状(凹凸形状)が形成されているものを用いることもでき、この場合、パネル面211,…及びコーナー面213に形成されたリブの凸面に、熱収縮性筒状ラベル3が接触(又は非常に小さい間隙を有して対面)している。
【0017】
この油用容器2は、少なくとも角型胴部21が可撓性を有する。このような可撓性のある油用容器2としては、例えば、比較的薄肉の合成樹脂成形品などが挙げられる。
尚、可撓性とは、指で押して簡単に撓む程度の性質で、例えば、合成樹脂成形容器(例えばPET製のボトル型成形容器など)の場合、角型胴部21の肉厚が、0.1〜1.5mm程度に形成されたものが挙げられる。
油用容器2を構成する樹脂材料は、従来公知のものを用いることができ特に限定されず、例えば、PETなどのポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系などの熱可塑性樹脂などを用いることができ、特に、ポリエステル系の樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
次に、熱収縮性筒状ラベル3は、熱収縮性フィルムを含むラベル基材の両側端部を重ね合わせ、該重ね合わせ部分を接着した構成からなる。該熱収縮性筒状ラベル3は、油用容器2の角型胴部21を含み、角型胴部21の上下に形成されたコーナ部23及び肩部24に至って熱収縮装着されている。
熱収縮性筒状ラベル3を構成するラベル基材5は、中間層51の両面に外面層52及び内面層53が積層された積層フィルムからなり、フィルム自体は透明なものが好ましい。
中間層51は、ポリスチレン系フィルムで構成され、外面層52及び内面層53は、ポリエステル系フィルムから構成されている。
中間層51の厚みは、特に限定されないが、通常、15〜60μm程度、好ましくは20〜50μm程度であり、外面層52及び内面層53は、通常、1〜30μm程度、好ましくは3〜10μm程度である。
【0019】
ポリスチレン系フィルムの材料としては、例えば、スチレン、メチルスチレンなどの変性スチレンのポリマー、スチレンモノマーと他の共重合性モノマー(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸アルキルエステル等のアクリル酸エステル類など)の共重合体などのスチレン系樹脂(以下、PSと略記する場合がある)が挙げられる。中でも、耐衝撃性、適度な剛性及び自然収縮率が低い等の点から、スチレン−ブタジエン共重合体を含むポリマーを用いることが好ましい。
また、ポリエステル系フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のほか、各種共重合ポリエステルなどが挙げられる。中でも、耐油性に優れていることからポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましく、良好な熱収縮性を得るために、通常、共重合成分を含むものが用いられる。共重合ポリエステルとしては、例えば、テレフタル酸及びエチレングリコールを、それぞれジカルボン酸成分及びジオール成分の主成分として用い、共重合成分として、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、フタル酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、スチルベンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸など)、脂肪族ジカルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸など)、脂環式ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸など)等のジカルボン酸成分、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分を用いた共重合ポリエステルなどが挙げられる。
【0020】
上記ラベル基材5は、公知の製法、例えば、共押出法などにより製造できる。共押出法では、上記ポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂とを、Tダイを備えた合流方式フィードブロック2種3層型の押出機を用いて、溶融押出し、冷却後、延伸処理をすることにより、熱収縮性のラベル基材5を得ることができる。延伸処理は、通常、80〜100℃程度の温度で、幅方向(筒状ラベルとした場合に周方向。以下同様)に2.0〜8.0倍、好ましくは2.5〜5.0倍程度延伸することにより行われる。さらに、縦方向(幅方向と直交する方向。以下同様)にも、例えば1.5倍以下の低倍率で延伸処理を行ってもよい。得られたフィルムは、一軸延伸フィルム又は主延伸方向と直交する方向に若干延伸された二軸延伸フィルムとなる。
また、ラベル基材5は、幅方向に於ける熱収縮率が、例えば90℃の温水中に10秒間浸漬した際、約30%以上、好ましくは約40%以上、特に好ましくは60%以上に形成される。尚、縦方向の熱収縮率は、0.1〜15%、好ましくは1〜10%程度のものが例示される。
但し、熱収縮率(%)=[{(幅方向(又は縦方向)の元の長さ)−(幅方向(又は縦方向)の浸漬後の長さ)}/(幅方向(又は縦方向)の元の長さ)]×100。
【0021】
さらに、ラベル基材5の内面には、商品名、絵柄などの意匠表示の表された意匠印刷層54が設けられている。この意匠印刷層54は、グラビア印刷法などの公知の印刷法にて設けられ、商品名などの意匠表示を美麗に見せるために、該意匠印刷層54の内面に、二酸化チタンなどの白色顔料を含む白色インキをベタ印刷した白ベタ印刷層(図示せず)が設けられている。
【0022】
さらに、筒状ラベル3の油用容器2に対する静摩擦係数を0.3以下とするため、白ベタ印刷層の内面に、滑り処理層55が設けられている。該滑り処理層55の内面が、筒状ラベル3の最内面(容器接触面)を構成し、該容器接触面は、油用容器2に対する静摩擦係数が0.3以下とされている。
滑り処理層55は、白ベタ印刷層の内面を覆うように、白ベタ印刷層の内面に重ねるように設けられ、さらに、白ベタ印刷層が設けられていない領域(意匠印刷層54のみが設けられている領域や、意匠印刷層54が設けられておらず、ラベル基材5が露出した領域)にも設けることが好ましい。従って、滑り処理層55は、筒状ラベル3の最内面全体にベタ状に設けることが好ましい。このように筒状ラベル3の最内面全体に透明な滑り処理層55をベタ状に設けることにより、部分的に意匠印刷が施されていない領域(ラベル基材5のフィルムが露出した透明部分)の透明性を確保しつつ、良好な滑り性を付与できる。
【0023】
かかる滑り処理層55としては、実質的に顔料を含まないメジウムインキ(透明インキ)を塗工することなどが例示される。このインキは、実質的に顔料を含まず、例えば、水又は水とアルコールに、アクリル樹脂、アクリル共重合体、ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、水性ポリアミド樹脂などを分散させたエマルジョンなどの水性のものや、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコールなどの溶剤に、ロジン、ケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル−ウレタン共重合体、ポリエステル樹脂などを溶解させた溶剤型のものなどが例示される。特に、容器2とのブロッキング防止や滑り性を考慮すると、アクリル系樹脂、アクリル系樹脂とニトロセルロース系樹脂を主成分とするメジウムインキを用いることが好ましい。
また、滑り性を良くするために、ワックス類やシリコーン、シリカなどの微粒子や各種滑剤が添加される。尚、必要に応じて、増粘剤、消泡剤、防かび剤、水溶化剤などの各種添加剤が混合されていてもよい。
尚、筒状ラベル3には、必要に応じて、分断用ミシン目(図示せず)が縦方向に形成されていてもよい。
【0024】
上記熱収縮性筒状ラベル3を、油用容器2の肩部24からコーナ部23にかけて外嵌し、80〜100℃程度のスチームトンネルで加熱することにより、該筒状ラベル3は、周方向に大きく熱収縮すると共に、縦方向にも僅かに熱収縮する。これにより油用容器2の肩部24、角型胴部21及びコーナ部23に、熱収縮性筒状ラベル3が熱収縮装着されたラベル付き油用容器1を得ることができる。
油用容器2に封入する油としては、特に限定されず、キャノーラ油、なたね油、べに花油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油などの食用油などが例示される。
【0025】
上記ラベル付き油用容器1は、筒状ラベル3の最外面がポリエステル系フィルムからなるので、容器内の油がこれに付着しても、筒状ラベル3の白化などを防止できる。
また、上記ラベル付き油用容器1は、熱収縮性筒状ラベル3がポリスチレン系フィルムの積層フィルムからなるので、落下などで衝撃が加わっても、筒状ラベル3の亀裂を防止できる。
【0026】
具体的には、上記のように角型胴部21が、例えば、長方形状などのように長辺と短辺を有する場合、落下などの際、長辺のパネル面211の撓み量が大きくなる。さらに、角型胴部21の上下に、胴部21よりも縮径した肩部24及びコーナ部23(縮小部)が2箇所設けられ、この縮小部に至るまで筒状ラベル3が熱収縮装着されると、該筒状ラベル3のうち角型胴部21に対面する領域は、引張られた状態となる。かかるラベル付き容器1に衝撃が加わると、角型胴部21のパネル面211が大きく撓み、この大きな撓みが緊張状態の筒状ラベル3に伝わる結果、筒状ラベル3に亀裂が生じやすい。
この点、本発明のラベル付き油用容器1は、熱収縮性筒状ラベル3としてポリスチレン系フィルムの積層フィルムを用いることにより、落下などで衝撃が加わった際、熱収縮性筒状ラベル3の亀裂発生を防止できる。
【0027】
また、上記熱収縮性筒状ラベル3の容器接触面は、静摩擦係数が0.3以下とされているので、油用容器2に対する滑り性に優れている。このように筒状ラベル3が油用容器2に対して滑りやすいことから、ラベル付き油用容器1に衝撃が加わり、角型胴部21のパネル面211が撓んだ際、この撓みが筒状ラベル3に伝わり難く、従って、熱収縮性筒状ラベル3の亀裂発生を確実に防止できる。
【0028】
次に、本発明の変形例を示す。以下、主として上記実施形態と異なる構成及び作用効果について説明し、同様の構成などについては、その説明を省略し、図番を援用することがある。
上記実施形態では、縮小部が角型胴部21の上下端に形成されている油用容器2を例示したが、例えば、図5に示すように、角型胴部21の中途部に第1縮小部25が設けられている油用容器2に本発明を適用することもできる。尚、この図示した油用容器2は、肩部24が第2縮小部に相当し、少なくとも該第2縮小部24から第1縮小部25にかけて熱収縮性筒状ラベル3が熱収縮装着されてラベル付き油用容器1が構成される。縮小部を有する油用容器に本発明を適用する場合、該油用容器2は、角型胴部21の上下に間隔を開けて、少なくとも2ヶ所の縮小部が設けられていればよい。もっとも、本発明のラベル付き油用容器1は、このような縮小部が形成されていない油用容器2に上記熱収縮性筒状ラベル3が熱収縮装着されたもので構成されていてもよい。
【0029】
さらに、上記実施形態では、横断面長方形状の角型胴部21を有する油用容器2を例示しているが、例えば、コーナー面213を介して横断面正方形状に形成された角型胴部21を有する油用容器2や、横断面六角形状などに形成された角型胴部21を有する油用容器2などに本発明を適用することもできる。
また、コーナー面213が曲面状に形成された油用容器2などに本発明を適用することもできる。
【0030】
また、上記実施形態では、熱収縮性筒状ラベル3のラベル基材5は、PETフィルムの外面層/PSフィルムの中間層/PETフィルムの内面層の3層フィルムからなるが、例えば、PETフィルムの外面層/PSフィルムの内面層の2層構造の積層フィルムで構成されていてもよい。また、PETフィルムやPSフィルム以外に、他の材料からなるフィルム層が積層された積層フィルムを用いることもできる。少なくとも熱収縮性筒状ラベル3の外面にPETフィルムが位置し、且つPSフィルムが積層されていれば、その層構成は、上記で示した各例に限定されるものではない。
尚、熱収縮性筒状ラベル3に用いる積層フィルムは、上記実施形態のように共押出しにて一体成形されたものに限られず、各フィルムを接着剤にて積層したものを用いてもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を説明し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
ポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名:EMBRACE)と、ポリスチレン系樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:アサフレックス825。スチレン80モル%及びブタジエン20モル%の共重合体)とを、合流方式がフィールドブロック2種3層型の押出機を用いてTダイから共押出し、次いで90℃で縦方向(MD方向)に1.1倍延伸した後、95℃で幅方向(TD方向)に5倍でテンター延伸し、更に、80〜90℃でヒートセットすることにより、PET外面層/PS中間層/PET内面層の三層構造の厚さ45μm(中間層の厚さ、27μm、外面層及び内面層の厚さ:各9μm)の積層フィルムを得た。
このフィルムの幅方向の熱収縮率(90℃の温水中に10秒間浸漬)は67%、縦方向の熱収縮率は2%であった。
【0033】
(参考例1)
厚さ50μmのポリスチレン系樹脂製の熱収縮性フィルム(シーアイ化成(株)製、商品名:BS55S)を準備した。
【0034】
(参考例2)
厚さ45μmのポリエステル系樹脂製の熱収縮性フィルム(東洋紡績(株)製、商品名:S7042)を準備した。
【0035】
(参考例3)
参考例1のポリスチレンフィルムの一方面に、アクリル樹脂及びニトロセルロースを主成分とするメジウムインキ(大日精化工業(株)製、商品名:STR耐熱CSメジウム)を、乾燥厚3μm程度となるように塗工した。
【0036】
(耐油性試験1)
実施例1及び参考例1〜3の各フィルムから、50mm×50mmに切り出した試験片を3枚準備した。該試験片を台紙上に貼り付け、この試験片の表面に、注射器を用いて なたね油(Jオイルミルズ製、商品名:健康キャノーラ油)を間隔をあけて3ヶ所に0.1mlずつ滴下した。但し、参考例3のフィルムは、メジウムインキ面に油を滴下した。
このものを23±2℃、24時間保管した後、台紙から外して水洗し、油を滴下した面の状態を目視によって観察した。その結果を表1に示す。表1に於いて、フィルム表面に変化が見られない場合を「○」で、滴下部に白化が生じた場合を「△」で、白化に加えて穴開きが生じたの場合を「×」で示している。
(耐油性試験2)
23±2℃、48時間保管したこと以外は上記耐油性試験1と同様にして、各例のフィルムの滴下面の状態を目視によって観察した。その結果を表1に示す。
(耐油性試験3)
40±2℃、24時間保管したこと以外は上記耐油性試験1と同様にして、各例のフィルムの滴下面の状態を目視によって観察した。その結果を表1に示す。
(耐油性試験4)
40±2℃、48時間保管したこと以外は上記耐油性試験1と同様にして、各例のフィルムの滴下面の状態を目視によって観察した。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例2)
実施例1で得られた3層フィルムを用いて筒状ラベルを作製した。
尚、この筒状ラベルの最内面(ポリエステル系フィルム一面)の静摩擦係数を測定(測定法は下記の通り)したところ、0.32であった。
静摩擦係数…フィルムを80mm×100mm(幅×長さ)に切り取り、二軸延伸のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、A1101#100の未処理面)を100mm×300mm(幅×長さ)に切り取り、フィルムのメジウムインキ面をこのPETフィルムに重ね、JIS K 7125に準じて、引張りスピード100mm/分、温度23±2℃、湿度50±5%で、メジウムインキ面の静摩擦係数を測定する。
この筒状ラベルを、図2に示すような周長さが次第に小さくなった肩部及びコーナ部と角型胴部を有するPET製容器(なたね油が封入されたもの。角型胴部の周長さ220mm、同縦長さ200mm、角型胴部のパネル面の長辺の幅50mm、同短辺の幅30mm、同肉厚0.30mm。容量450g)の肩部からコーナ部にかけて外嵌し、90℃のスチームトンネルに5秒間曝して熱収縮させ、ラベル付き油用容器を作製した。同ラベル付き容器30個を、その容器底面を下にして段ボールケースの底面に並べて詰め、この段ボールで包装された包装体を3ケース作製した。
【0039】
(実施例3)
実施例1で得られた3層フィルムの内面層に、参考例3で用いたメジウムインキを乾燥厚3μm程度となるように塗工した。このメジウムインキ面の静摩擦係数を測定(測定法は同じ)したところ、0.24であった。
このフィルムを、メジウムインキ面が内側となるように筒状に成形して筒状ラベルを作製した。この筒状ラベルを用い、それ以外は実施例2と同様にして、ラベル付き容器30個を詰めた包装体を、3ケース作製した。
【0040】
(比較例1)
参考例1で作製したフィルムを用いて筒状ラベルを作製し、それ以外は実施例2と同様にして、包装体を3ケース作製した。
尚、この筒状ラベルの最内面(参考例1のフィルムの一面)の静摩擦係数を測定(測定法は同じ)したところ、0.28であった。
【0041】
(比較例2)
参考例2で作製したフィルムを用いて筒状ラベルを作製し、それ以外は実施例2と同様にして、包装体を3ケース作製した。
尚、この筒状ラベルの最内面(参考例2のフィルムの一面)の静摩擦係数を測定(測定法は同じ)したところ、0.35であった。
【0042】
(落下試験)
実施例2、3及び比較例1、2の3ケースの包装体について、1mの高さから包装体の底面を下にしてコンクリート面に5回落下させた後、各包装体からラベル付き容器を取り出し、ラベルの亀裂を目視によって確認した。その結果を表2に示す。尚、結果は、包装体1ケース当たりの亀裂発生数の平均個数で示している。
但し、実施例2では、ラベルに亀裂は発生していないものの、亀裂発生の兆候が見受けられたものが、3ケース(つまり、ラベル付き容器90本)の中で1本確認された。
【0043】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)は、ラベル付き油用容器を示す正面図、(b)は、同側面図。
【図2】図1のA−A線縦断面図。
【図3】図1のB−B線横端面図。
【図4】熱収縮性筒状ラベルの一部分を示す縦断面図。
【図5】ラベル付き油用容器の変形例を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0045】
1…ラベル付き油用容器、2…油用容器、21…角型胴部、211,212…角型胴部のパネル面、23…コーナ部(第1縮小部)、24…肩部(第2縮小部)、3…熱収縮性筒状ラベル、5…ラベル基材、51…中間層、52…外面層、53…内面層、54…意匠印刷層、55…滑り処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のある角型胴部を有する油用容器と、ポリエステル系フィルム及びポリスチレン系フィルムを有する積層フィルムで構成され且つポリエステル系フィルムを外面にして筒状に成形された熱収縮性筒状ラベルと、を備え、熱収縮性筒状ラベルが、油用容器の角型胴部に熱収縮装着されていることを特徴とするラベル付き油用容器。
【請求項2】
前記熱収縮性筒状ラベルの容器接触面は、ポリエチレンテレフタレートフィルムに対する静摩擦係数が0.3以下とされている請求項1記載のラベル付き油用容器。
【請求項3】
前記角型胴部は、周方向に於いて長辺と短辺を有し、角型胴部の上下に間隔を開けて、胴部よりも周長さの小さい第1縮小部及び第2縮小部が形成されており、前記熱収縮性筒状ラベルが、第1縮小部及び第2縮小部に至って熱収縮装着されている請求項1又は2記載のラベル付き油用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−182234(P2007−182234A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380687(P2005−380687)
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】