説明

ラベル式情報媒体

【課題】不正な剥離や貼り替えを検知可能であり、かつ、改ざんが困難であるラベル式情報媒体を提供する。
【解決手段】ICタグラベル10は、基材20の法線方向から見たときに、アンテナ部22の外周側にアンテナ部22を囲むように形成されてICチップ21に接続された導体であって電圧を印加することにより破断を検知可能とする破断検知回路部23と、少なくとも前記破断検知回路部23に形成され、略一様に分布する複数の微細な孔mからなる易破断部70とを備えるものとした。易破断部70の孔mは、その径が破断検知回路部23の幅より小さく、かつ、第1接合層30を貫通しないものであり、易破断部70は、少なくとも一部が基材20の外周に接する位置に形成されているものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップを搭載したラベル式情報媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、ICチップを備えたタグ(ラベル式情報媒体)を商品等の貼付対象物に貼付することにより、貼付対象物の在庫の管理等を効率よく、正確に行う技術が提案、実現されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のデータキャリアは、ICチップのアンテナの外周に切り欠きやミシン目等が設けられた導体からなる易破断性の回路を有しており、商品等にデータキャリアが貼付された後にデータキャリアが剥離されると、その導体が破断する。これにより、特許文献1のデータキャリアはデータキャリアの不正な貼り替えを検知できるという機能を有している。
【特許文献1】特開2006−39643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような切り欠きやミシン目は、目視によってその位置や形状等が確認できるため、不正にデータキャリアを剥離しようとする者が、ミシン目や切り欠き等を避けるように工具等を用いて不正に剥離する恐れがあった。
また、特許文献1のように、易破断性の回路を有する場合に、不用意にミシン目等を形成すると、ミシン目のピッチによっては導体が切断され、破断検知機能が発揮されない場合があるという問題があった。
【0004】
本発明の課題は、不正な剥離や貼り替えを検知可能であり、かつ、改ざんが困難であるラベル式情報媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、基材(20)と、前記基材の一方の面に設けられ、外部機器と非接触で通信可能なアンテナ部(22)と、前記アンテナ部に接続され、前記アンテナ部を介して通信する情報を管理するICチップ(21)と、前記基材の一方の面側又は他方の面側に形成された接合層(30)と、前記基材の法線方向から見たときに、前記アンテナ部の外周側に前記アンテナ部を囲むように形成されて前記ICチップに接続された導体であって、電圧を印加することにより破断を検知可能とする破断検知回路部(23)と、少なくとも前記破断検知回路部に形成され、略一様に分布する複数の微細な孔(m)からなる易破断部(70)と、を備えるラベル式情報媒体(10)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のラベル式情報媒体において、前記孔(m)の径は、前記破断検知回路部(23)の幅より小さいこと、を特徴とするラベル式情報媒体(10)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のラベル式情報媒体において、前記基材の外周を一端とする切り込み部(C1)を有すること、を特徴とするラベル式情報媒体(10)である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のラベル式情報媒体において、前記孔(m)は、前記接合層(30)を貫通しないこと、を特徴とするラベル式情報媒体(10)である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のラベル式情報媒体において、前記孔(m)の径は、0.1mmから0.3mmの範囲内であること、を特徴とするラベル式情報媒体(10)である。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のラベル式情報媒体において、前記基材(20)の法線方向から見たときに、前記易破断部(70)が形成されている領域は、少なくとも一部が前記基材の外周に接すること、を特徴とするラベル式情報媒体(10)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)ラベル式情報媒体は、基材の法線方向から見たときに、アンテナ部の外周側にアンテナ部を囲むように形成されてICチップに接続された導体であって、電圧を印加することにより破断を検知可能とする破断検知回路部と、少なくとも破断検知回路部に形成され、略一様に分布する複数の微細な孔からなる易破断部とを備える。従って、貼付対象物からラベル式情報媒体を剥離しようとした場合に、易破断部によって破断検知回路部が破断し、外部機器との通信の際にその破断が検知可能であるので、ラベル式情報媒体の不正な剥離を容易に判別することができる。また、剥離によって破断検知回路部が破断するので、ラベル式情報媒体の不正な改ざん等を防止できる。さらに、易破断部は、一様に分布する複数の微細な孔であるので、第三者に認識されにくく、不正に剥離しようとする者に対して不正な剥離を抑止する効果等が得られる。
【0007】
(2)孔の径は、破断検知回路部の幅より小さいので、易破断部の孔によって破断検知回路部が断線することがなく、破断検知回路部の導通を確保することができる。
【0008】
(3)基材の外周を一端とする切り込み部を有するので、ラベル式情報媒体を貼付対象物から剥離しようとした場合に、切り込み部によって易破断部の孔間の破断が誘発され、破断検知回路部の破断をより生じやすくすることができる。よって、ラベル情報媒体の不正な剥離を検知する作用をより高めることができる。
【0009】
(4)孔は、接合層を貫通しないので、接合層を貫通させて孔を形成した場合に生じやすいバリや凹み等が発生しない。従って、接合層の貼付対象物への接着強度を高めることができる。
【0010】
(5)孔の径は、0.1mmから0.3mmの範囲内であるので、易破断部の隣接する孔間の破断が生じやすく、破断検知回路部の破断がより生じやすくなり、不正な剥離を検知する効果をより高めることができる。また、孔の径を0.1mmから0.3mmの範囲内とすると、易破断部の存在を視認しにくいので、不正に剥離しようとする第三者に対して不正な剥離を抑止する効果を有する。
【0011】
(6)基材の法線方向から見たときに、易破断部が形成されている領域は、少なくとも一部が基材の外周に接する。一般にラベル等は外周側から剥離されるので、易破断部が形成されている領域の少なくとも一部が基材の外周に接するように形成されることにより、ラベル式情報媒体が剥離にともなって、破断検知回路部が易破断部によって破断されやすくなる。従って、不正な剥離を検知する効果をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面等を参照しながら、本発明のラベル式情報媒体の実施形態について詳細に説明する。
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の明細書中では、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、一般的に、これらは、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、板、シート、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、シート状の部材は、フィルム状の部材や板状の部材としてもよい。なお、このフィルム等といった文言は、部材の厚さに関するものであり、その部材の材質を限定するものではない。
さらに、本明細書中に記載する各部材の材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0013】
(実施形態)
図1は、本実施形態のICタグラベル10を示す図である。図1(a)は、ICタグラベル10の平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す矢印A−A断面でのICタグラベル10の断面図を示している。
図2は、箱200に貼付されたICタグラベル10を示す図である。
ICタグラベル10は、図1に示すように、基材20、第1接合層30、剥離紙40、第2接合層50、保護層60等を備えたラベル式情報媒体である。本実施形態のICタグラベル10は、シート状であり、ICタグラベルの厚み方向から見た形状が、略矩形形状である。
【0014】
このICタグラベル10は、図2に示すように、書類や商品等を梱包、保管梱包する箱200の一対の開閉蓋201(201a,201b)に貼付されることにより、商品の在庫管理等を行うと共に、箱200を封印してその封印状態を管理することができる。
基材20は、ICタグラベル10のベースとなるシート状の部材である。本実施形態では、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製のシート状の部材を用いている。基材20の材質としては、ポリイミドや、ポリプロピレン等の樹脂を適宜選択して用いてもよいし、紙を用いてもよい。
本実施形態の基材20は、一方の面にアンテナ部22が配置され、他方の面にICチップ21及び破断検知回路部23が設けられているが、アンテナ部22及びICチップ21を、基材20の同じ面に設け、他方の面に破断検知回路部23を設けてもよい。
【0015】
ICチップ21は、その内部に不図示のCPU(中央処理装置)やメモリを備え、アンテナ部22及び破断検知回路部23が接続されている。ICチップ21は、アンテナ部22を介して、不図示の外部装置(リーダライタ等)と情報を送受信したり、破断検知回路部23の状態を判断したりする機能を有する。本実施形態のICチップ21は、その内部に備えたメモリに、箱200に保管されている商品等に関する固有情報が記録されている。
【0016】
このICチップ21は、それ自体で電源を備えておらず、リーダライタ等からアンテナ部22を介して受信した電波に基づいて生成された電力により、起動する。そして、ICチップ21は、破断検知回路部23に電圧を印加し、破断検知回路部23の電圧値と印加した電圧値とが一致しているか否かを検知する。
一致していないと検知した場合には、破断検知回路部23が破断された状態である、すなわち、ICタグラベル10が剥離されたと判断し、その情報をリーダライタ等に送信する。一方、一致していると検知した場合には、破断検知回路部23が破断されていない状態である、すなわち、ICタグラベル10には異常が発生していないと判断し、その情報をリーダライタ等に送信する。
なお、本実施形態では、上述のように、ICチップ21が破断検知回路部23の電圧値を検知して破断検知回路部23の破断の有無を判断する例を示したが、これに限らず、例えば、破断検知回路部23の抵抗値等を検知して破断検知回路部23の破断の有無を判断するものとしてもよい。
【0017】
アンテナ部22は、基材20の片面に、略環状に形成されたアンテナコイルであり、ICチップ21に接続されている。本実施形態のアンテナ部22は、端部22aが基材20を貫通して基材20の他方の面に配置されたICチップ21に接続されている。このアンテナ部22は、ICタグラベル10(基材20)の表面の法線方向(ICタグラベル10の厚み方向)から見たときに、ICチップ21が環状の内側に位置するように、ICチップ21を囲むように配置されている。
また、アンテナ部22は、アルミニウムや銅等の金属箔をエッチングやメッキすることにより形成されている。
アンテナ部22は、リーダライタからICチップ21に電源電力やコマンドの基となる電波を受信したり、受信したコマンドに基づいて箱200の内容物に関する固有情報等をリーダライタ側へ電波にのせて送信したりする非接触通信に使用される。
また、アンテナ部22は、ICチップ21が判断した破断検知回路部23の状態(破断の有無)、すなわち、ICタグラベル10が剥離されたか否かについての情報も、リーダライタへ送信する。
【0018】
破断検知回路部23は、基材20の一方の面に、基材20の表面の法線方向(ICタグラベル10の厚み方向)から見たときに、アンテナ部22の外周側にアンテナ部22を囲むように形成され、ICチップ21に接続された導体である。破断検知回路部23には、易破断部70が形成されている。この易破断部70の詳細については後述する。
本実施形態の破断検知回路部23は、図1(b)に示すように、基材20のアンテナ部22が形成された面とは反対側の面に、アンテナ部22の外周側及び内周側に位置するように設けられている。本実施形態では、破断検知回路部23は、アンテナ部22の外周側に設けられている部分での幅w(図3(a)参照)が約1mmであり、アンテナ部22と同じ材料を用いて、エッチング等により形成されている。
【0019】
第1接合層30は、基材20の片面側に形成され、ICタグラベル10を箱200等の貼付対象物に貼付するための接合層である。
本実施形態の第1接合層30は、基材20のアンテナ部22側の面(保護層60側とは反対側の面)の略全面に、粘着剤を塗布して形成されている。
剥離紙40は、第1接合層30の基材20とは反対側に、剥離可能に積層された部材であり、易剥離性を有している。この剥離紙40は、ICタグラベル10が箱200等に貼付される前の第1接合層30の接合面31(貼付対象物に接する面)を保護する機能を有する。
本実施形態では、表面にシリコン樹脂等がコーティングされた剥離紙40を用いているが、これに限らず、例えば、易剥離性を有する樹脂製のフィルム等を用いてもよい。
本実施形態のICタグラベル10は、図1に示すように、この剥離紙40が積層された状態で使用者に提供される。
【0020】
第2接合層50は、基材20の第1接合層30とは反対側の面の略全面に粘着剤を塗布することにより形成された層である。第2接合層50は、保護層60を基材20に接着する機能を有する。
保護層60は、第2接合層50の基材20とは反対側、すなわち、ICタグラベル10の最も表面となる位置に設けられた層である。この保護層60は、基材20に設けられたICチップ21等を保護するために設けられている。本実施形態では、保護層60として、略透明な樹脂製のフィルム状の部材を用いている。
【0021】
易破断部70は、少なくとも破断検知回路部23に形成され、一様に分布する複数の微細な孔mからなる部分である。
図3は、易破断部70を説明する図である。図3(a)は、易破断部70の拡大図であり、図3(b)は、易破断部70が形成されている領域でのICタグラベル10の断面の拡大図であり、図3(c)は、易破断部70の孔mの深さに関して説明する図である。なお、理解を容易にするために、図3(b)では、剥離紙40を省略して示し、図3(c)では、剥離紙40を省略し、基材20、第2接合層50、保護層60を1つの層として模式的に示している。
易破断部70が形成されている領域は、基材20の法線方向から見たときに、少なくとも一部が基材20の外周20aに接するように設けられている。本実施形態の易破断部70は、図1(a)に示すように、基材20の外周20aに沿って基材20の端部に形成されており、アンテナ部22及びICチップ21が設けられている基材20の内側の領域には形成されていない。易破断部70が形成された領域内には、破断検知回路部23が含まれている。
【0022】
この易破断部70は、ICタグラベル10を剥離しようとした場合に、孔m間の破断が発生しやすく、かつ、隣接する他の孔m間の破断を連鎖的に誘発する作用を有する。そのため、ICタグラベル10を剥離すると、易破断部70の孔m間の破断によって破断検知回路部23が断絶され、ICタグラベル10が不正に剥離されたことを検知することができる。
易破断部70の孔mの径(径は孔mの長径とする)は、破断検知回路部23の導通を確保し、孔mによる導通の遮断を防止するために、破断検知回路部23の幅よりも孔mの径が小さいことが好ましく、0.1〜0.3mmの範囲内であることが好ましく、孔mと孔mとの間隔(図3(a)及び後述の図5(a)中に示す、アンカット部uの寸法)は、0.3〜2.0mmの範囲であることが必要であり、0.3〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。アンカット部uが2.0mmより大きい場合には、破断が生じ難く、容易に破断が生じるためには、1.0mm以下であることが好ましい。この孔mの径及びアンカット部uの寸法は、上記の範囲内で、破断検知回路部23の幅の寸法によって適宜選択できる。
【0023】
易破断部70は、上述の範囲内の径を有する孔m及びアンカットが一様に分布することにより、易破断部70が視認しにくくなるので、不正に剥離しようとする者が易破断部70を避けて剥離しようとすることが困難となり、不正な剥離を抑止することができる。なお、本実施形態の孔mの径は、0.3mmであり、アンカット部uの寸法は、0.3mmである。
本実施形態の易破断部70は、図3(a)に示すように、互い違いに、すなわち、任意の列の孔mの中心が、列に直交する方向において、隣接する列の孔m間に位置するように(所謂、千鳥状に)、一様に規則的に形成されている。このように形成することにより、ICタグラベル10を箱200から引き剥がそうとする力によって、孔m間の破断がさらに生じやすくなるという効果が得られる。
【0024】
ここで、易破断部70の孔mの分布状態について詳細に説明する。
図5は、易破断部70の孔mの分布状態を説明する図である。理解を容易にするために、図5では、孔mは、白抜きの楕円で示している。図5(a)は、孔mが縦と横との間隔が等しい正方格子の交点に形成されている例を示し、図5(b)は、本実施形態の易破断部70と同様に、孔mの列を1つおきに正方格子の半ピッチ分ずらして形成された、いわゆる千鳥状に形成されている例を示している。
図5(a)及び(b)に示す例では、いずれも孔mは一様に形成されていると言え、第三者が孔m及び易破断部70を視認しにくいという効果が得られる。
【0025】
図5(c)は、縦方向の間隔に対し横方向の間隔が2倍となっている格子の交点に孔mが形成されている例を示している。図5(c)に示すように、格子の縦横比が1:2程度の場合、第三者には、孔mの分布状態が一般的なミシン目のようには見えず、孔mが一様に形成されていると言える。
なお、格子の縦横比が1:3を超える(縦方向の間隔に対し横方向の間隔が3倍より大きくなる)と、第三者にとって孔mがミシン目として認識されやすくなる。従って、格子の交点に孔mを形成するとき、格子の縦横比が1:3であることが、孔mが一様に分布する場合の限界であると言える。
図5(d)は、縦と横の間隔が等しい正方格子の内側に、孔mを1つずつランダムな位置に形成している例を示している。孔mをこのような配置で形成した場合、孔mは、ミシン目としては認識されず、全体として孔mが一様に分布して形成された形態となり、目立ちにくく、第三者にも認識され難い。
【0026】
易破断部70を形成する孔mが分布している一様さの度合いは、近接する孔mを最短の距離で結んで図示のような孔mを頂点とする三角形の網目を形成し、その網目の各辺(L1、L2、L3、・・Ln)の長さの分布の標準偏差の値の大小を用いて評価することができる。そして、この標準偏差の値が大きければ、孔mとその孔に隣接する孔mとの距離のばらつきが大きく、不均一となっている可能性が大きい。この孔m間の距離の不均一が方向性を持つと、ミシン目等のように孔mが視覚的に目立ってしまう。
具体的には、孔mの平面形状の重心を孔mの中心Pとして、孔mの中心Pから隣接する孔mの中心P1までの距離をL1とし、以下同様にL2、L3、・・・Lnを求め、L1からLnの平均値(La)で割ってスケーリングした孔mと孔mとの距離の標準偏差で評価する。
以下の表1は、孔mの中心間距離の分布を評価した表である。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示す、サンプル1は、図5(a)に示すように、正方格子の交点に孔mを形成した例であり、サンプル2は、図5(b)に示すように、千鳥状に孔mを形成した例であり、サンプル3は、図5(c)に示すように、縦横比1対2である格子の交点に孔mを配置した例である。サンプル4は、縦横比1対3である格子の交点に孔mを配置した例であり、サンプル5は、縦横比1対4である格子の交点に孔mを配置した例である。サンプル5は、図5(e)に示すように、正方格子の内側に孔mが1つずつランダムに配置されているが、極端に孔m間の距離が大きくなるように配置した参考例である。なお、表1に示す孔mの分布評価は、一例として、孔m数12個で23箇所の距離の分布を評価している。
表1に示すように、サンプル1の標準偏差σは0.168であり、サンプル2の標準偏差σは0.055である。また、サンプル3の標準偏差σは0.334であり、サンプル4の標準偏差σは0.458である。これらの例はいずれも孔mが規則的に一様に分布する場合である。
【0029】
一方、サンプル5では、格子の縦横比が1:4であるため、孔mが一様に分布するとは言い難く、その標準偏差σは0.533である。また、サンプル6では、図5(e)からも明らかなように、孔mが一様に分布するとは言い難く、その標準偏差σは0.565である。
以上の事から、孔mと孔mとの間の距離をその平均値で割ってスケーリングした値の標準偏差σが0.46以下であれば孔は一様に分布すると言える。従って、孔mと孔mとの間の標準偏差σが0.46以下であれば、孔mが一様に分布すると言えるので、孔mは、規則的に形成されても、ランダムに形成されてもよい。
なお、本実施形態の孔mは、図3(a)に示すように、サンプル2と同様に千鳥状に形成されているので、その標準偏差σは0.46以下であり、一様に分布していると言える。
【0030】
図3(b)に戻って、易破断部70の孔mは、破断検知回路部23だけでなく、基材20、第2接合層50、保護層60を貫通するように形成されているが、第1接合層30は、貫通していない。
易破断部70の孔mは、抜き刃300等を用いて形成されるが、図3(c)に示すように、仮に、抜き刃300を保護層60側から刺し込んで第1接合層30を貫通させると、第1接合層30の剥離紙40側表面(接合面31)には、抜き刃300によってバリ30bと呼ばれる突出した部分が生じてしまう。易破断部70は、複数の微細な孔mが一様に分布している状態であるので、孔mが第1接合層30を貫通してしまうと、第1接合層30の接合面31は、複数のバリ30bによって平面性が失われ、接着強度が低下してしまう。
また、仮に、抜き刃300を剥離紙40側から刺し込んで第1接合層30を貫通させ、孔mを形成すると、第1接合層30の接合面31には、抜き刃300に起因した複数の不図示の凹みが発生してその平面性が失われ、第1接合層30の接着強度が低下してしまう。
そこで、易破断部70の孔mは、図3(b)に示すように、保護層60、第2接合層50、基材20及び破断検知回路部23を貫通しているが、第1接合層30は貫通していない形態(厚み方向において基材20側のみに形成される形態)とした。
【0031】
切り込みC1は、基材20の外周を一端とする切り込みであり、図1(a)に示すように、基材20の外周に沿って複数形成されている。本実施形態の切り込みC1は、基材20を法線方向から見たときに、基材20の外周から内周側へ向かって形成されているが、破断検知回路部23には形成されていない(図1(a)及び図3(a)参照)。
また、本実施形態の切り込みC1は、保護層60、第2接合層50、基材20を切断しているが、第1接合層30を切断しておらず、第1接合層30の厚み方向において、基材20側から途中まで切断している形態となっている。
【0032】
ICタグラベル10の箱200への貼付方法を説明する。
商品等が箱200に梱包された後に、使用者は、ICタグラベル10にリーダライタ等を用いてICチップ21内のメモリに商品等の固有情報を記憶させる。そして、使用者は、ICタグラベル10から剥離紙40を剥離し、図2に示すように、箱200の一対の開閉蓋201(201a,201b)の合わせ目をまたぐように貼付し、箱200を封印する。このとき、ICタグラベル10の一方の長手方向の一方の両端部は、一対の開閉蓋201a,201bのそれぞれに位置している。
このとき、第1接合層30は、易破断部70の孔m、切り込みC1が貫通、切断していないので、接合面の平面性が高く、十分な接着強度を発揮できる。
【0033】
次に、ICタグラベル10の動作について説明する。
ICタグラベル10は、アンテナ部22を介してリーダライタ等から電波を受信すると、その電波に基づいてICチップ21が起動して受信した電波から商品の固有情報を送信する旨のコマンドを読み出す。そして、ICチップ21は、読み出したコマンドに基づいて商品の固有情報をアンテナ部22によりリーダライタ等に送信する。
また、ICチップ21は、破断検知回路部23に電圧を印加して、破断検知回路部23の破断の有無を検知する。
ICチップ21は、破断検知回路部23が破断していると検知すると、ICタグラベル10は剥離されたと判断し、その判断情報をアンテナ部22によりリーダライタ等に送信する。また、破断検知回路部23が破断していないと検知すると、ICタグラベル10には異常がないと判断し、その判断情報をアンテナ部22によりリーダライタ等に送信する。
このような検知動作を行うことにより、仮に、悪意ある第三者が箱200に貼付されたICタグラベル10を不正に剥離して、箱200の中身である商品をすり換えた後に再び開閉蓋101にICタグラベル10が貼付したとしても、ICタグラベル10が剥がされることにより破断検知回路部23が破断されるので、リーダライタ等の外部機器とICタグラベル10とが通信を行うことにより、破断検知回路部23が破断していることを検知できる。
従って、使用者は、箱200が不正に開封されたことを容易に判別することができる。
【0034】
本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(1)ICタグラベル10は、破断検知回路部23に易破断部70が形成されているので、箱200に貼付された後に剥離されると、破断検知回路部23が破断し、不正な剥離を容易に検知することができる。また、易破断部70によって破断検知回路部23が破断するので、ICタグラベル10の改ざんを防止できる。
(2)易破断部70の孔mは、その径が0.1〜0.3mmと微細であり、略一様に分布しているので、孔m間の破断が生じやすく、かつ、易破断部70を視認しにくい。従って、不正な剥離を検知する効果を高めることができ、また、不正な剥離を抑止する効果を有する。
(3)易破断部70の孔m及び切り込みC1は、第1接合層30を貫通及び切断していないので、第1接合層30の接合面31の平面性を保つことができ、第1接合層30の貼付対象物への接着強度を高めることができる。
【0035】
(4)切り込みC1が、基材20の外周を一端として形成されているので、ICタグラベル10を箱200から剥離しようとしたときに、切り込みC1によって基材20が破断され、これに誘発されて易破断部70の孔m間の破断が生じ、破断検知回路部23が破断される。従って、ICタグラベル10の不正な剥離を検知する効果をさらに高めることができる。
(5)破断検知回路部23は、基材20のアンテナ部22とは反対側の面に形成されているので、破断検知回路部23とアンテナ部22との距離を離すことができ、リーダライタ等と通信したときに、リーダライタ等から発せられる電波(磁気)によって破断検知回路部23がアンテナ部22に影響を与えて、ICタグラベル10とリーダライタとの通信不良が生じることを防止することができる。
また、破断検知回路部23は、アンテナ部22の外周側にアンテナ部22を囲むように形成されているので、ICタグラベル10の外周のあらゆる方向からの剥離を検知することができる。
【0036】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)図4は、変形形態のICタグラベルを示す図である。図4(a)は、易破断部70が基材20の略全面に形成された変形形態のICタグラベル10−2を示している。図4(b)は、易破断部70のより内側に切り込みC2が形成されたICタグラベル10−3を示している。なお、前述した実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
本実施形態では、易破断部70は、基材20の法線方向から見たときに、基材20の外周に沿って周回するように形成され、アンテナ部22等が配置される基材20の内側には易破断部70が形成されていない例を示したが、これに限らず、図4(a)に示すように基材20の略全面に形成してもよい。このように形成することにより、ICタグラベル10−2を不正に剥離した場合には、ICタグラベル10−2全体が復元不能に破断するので、目視によっても不正に剥離されたことが判別できる。また、アンテナ部22も破断するので、通信も行えなくなり、それによっても不正な剥離の有無を判別できる。
なお、易破断部70を基材20の略全面に形成する場合には、ICチップ等を破損する恐れがあるため、ICチップ21が設けられる領域には孔mを形成しないようにすることが好ましい。
【0037】
また、図4(b)に示すように、基材20の法線方向から見たときに、易破断部70の内側に切り込みC2を形成してもよい。
切り込みC2は、アンテナ部22を囲むようにアンテナ部22と破断検知回路部23との間に形成された切り込みである。この切り込みC2は、第1接合層30を切断していてもよいし、切り込みC1と同様に厚み方向において第1接合層30の基材20側の一部を切断する形態としてもよい。この切り込みC2により、ICタグラベル10−3を剥離した場合に基材20が破断されてICタグラベル10−3が修復不能に破断するので、ICタグラベル10−3の不正な剥離が容易に視認でき、かつ、ICタグラベル10−3の改ざんを防止できる。
【0038】
(2)本実施形態では、保護層60には、印字等が施されていない例を示したが、これに限らず、例えば、保護層60のいずれかの面に、「封印」等の文字や絵柄、模様等を印刷して意匠性や視認性を高めてもよい。また、保護層60のいずれかの面に、箱200に梱包された商品等の固有情報に関する情報に関連付けられたバーコード等を印刷により設けた場合には、管理の利便性を向上させることができる。
【0039】
(3)本実施形態では、第1接合層30の接合面にはインキ層等が形成されていない例を示したが、これに限らず、例えば、第1接合層30の接合面31の一部に、溶剤等に対して溶けやすい可溶性インキや、温度変化によって不可逆的に変色する示温性インキ等を用いて「封印」等の文字を形成した情報インキ層を設けてもよい。可溶性イン基による情報インキ層等を設けた場合には、溶剤等を用いて不正にICタグラベルを剥離しようとした場合に、情報インキ層が溶解して文字が判読不能となるので、不正な剥離の痕跡が残すことができる。また、示温性インキを用いて情報インキ層を設けた場合には、温風を当てる等して不正にICタグラベルを剥離しようとした場合に、情報インキ層が不可逆に変色するので、不正な剥離の痕跡を残すことができる。
【0040】
(4)本実施形態において、剥離紙40が積層されたICタグラベル10が図1に示すような単体で使用者に提供される形態を示したが、これに限らず、例えば、ロール状の剥離紙40の長手方向に沿って、複数のICタグラベルが連続して等間隔に剥離可能に積層された形態で使用者に提供してもよい。
【0041】
(5)本実施形態において、第1接合層30及び第2接合層50は、粘着剤を塗布して形成される例を示したが、これに限らず、例えば、接着剤を塗布して形成してもよいし、粘着性又は接着性を有するシート状等の部材を用いて形成してもよい。
【0042】
(6)本実施形態では、保護層60と第2接合層50とは別体である例を示したが、これに限らず、例えば、保護層60及び第2接合層50として、例えば片面に粘着剤や接着剤が塗布された樹脂製のシート状の部材等を用いてもよい。
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施形態のICタグラベル10を示す図である。
【図2】箱200に貼付されたICタグラベル10を示す図である。
【図3】易破断部70を説明する図である。
【図4】変形形態のICタグラベルを示す図である。
【図5】易破断部70の孔mの分布状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0044】
10 ICタグラベル
20 基材
21 ICチップ
22 アンテナ部
23 破断検知回路部
30 第1接合層
40 剥離紙
50 第2接合層
60 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面に設けられ、外部機器と非接触で通信可能なアンテナ部と、
前記アンテナ部に接続され、前記アンテナ部を介して通信する情報を管理するICチップと、
前記基材の一方の面側又は他方の面側に形成された接合層と、
前記基材の法線方向から見たときに、前記アンテナ部の外周側に前記アンテナ部を囲むように形成されて前記ICチップに接続された導体であって、電圧を印加することにより破断を検知可能とする破断検知回路部と、
少なくとも前記破断検知回路部に形成され、略一様に分布する複数の微細な孔からなる易破断部と、
を備えるラベル式情報媒体。
【請求項2】
請求項1に記載のラベル式情報媒体において、
前記孔の径は、前記破断検知回路部の幅より小さいこと、
を特徴とするラベル式情報媒体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のラベル式情報媒体において、
前記基材の外周を一端とする切り込み部を有すること、
を特徴とするラベル式情報媒体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のラベル式情報媒体において、
前記孔は、前記接合層を貫通しないこと、
を特徴とするラベル式情報媒体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のラベル式情報媒体において、
前記孔の径は、0.1mmから0.3mmの範囲内であること、
を特徴とするラベル式情報媒体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のラベル式情報媒体において、
前記基材の法線方向から見たときに、前記易破断部が形成されている領域は、少なくとも一部が前記基材の外周に接すること、
を特徴とするラベル式情報媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−245280(P2009−245280A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92623(P2008−92623)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】