説明

ラミネートフィルム

【課題】基材にシーラント層を積層してラミネートフィルムを製造する際に、基材に印刷を施した場合でも優れたラミネート強度を有する、ガスバリア性ラミネートフィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも、基材、インキ層、接着剤層、およびシーラント層がこの順に積層されたラミネートフィルムであって、該インキ層がシランカップリング剤を含有し、該接着剤層を形成する接着剤がエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を主成分とするものであり、かつ該エポキシ樹脂組成物が硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物中にキシリレンジアミンに由来する骨格構造が特定割合以上含有されることを特徴とするラミネートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラミネートフィルムに関する。詳しくは各種ガスの遮蔽に優れた接着剤を用いた内容物の保存を目的とした食品や医薬品などの包装材料に使用されるラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、包装材料としてその強度、商品保護性、作業適性、印刷等による宣伝効果等の理由から、異種のポリマー材料を組み合わせた複合フレキシブルフィルムが主流になってきている。このような複合フィルムは一般には、商品保護の役割を有する外層となる熱可塑性プラスチックフィルム層などとシーラント層となる熱可塑性プラスチックフィルム層などからなり、これらの貼り合わせには、ラミネートフィルムに接着剤を塗布してシーラント層を接着させるドライラミネート法や、必要に応じてラミネートフィルムにアンカーコート剤を塗布した後、シーラント層となる溶融プラスチックフィルムを圧着してラミネートフィルムにする押出しラミネート法が行なわれている。
【0003】
また、これらの方法で使用する接着剤は、接着性能が高い点から、一般には水酸基等の活性水素含有基を有する主剤とイソシアネート基を有する硬化剤からなる二液型ポリウレタン系接着剤が主流となっている(特許文献1〜2参照。)。
【0004】
しかしながらこれらの二液型ポリウレタン系接着剤は、一般にその硬化反応がそれほど速いものではないことから、十分な接着性を確保するために張り合わせ後に1日〜5日間の長時間におよぶエージングによる硬化促進を行う必要があった。また、イソシアネート基を有する硬化剤を使用することから、硬化後に未反応のイソシアネート基が残存した場合、この残存イソシアネート基は大気中の水分と反応して二酸化炭素を発生することからラミネートフィルム内に気泡が発生する等の問題があった。これらの問題を解決する方法として、ポリウレタン系接着剤、およびエポキシ系ラミネート用接着剤が提案されている(特許文献3〜4参照。)。
【0005】
しかし、上述の各ポリウレタン系接着剤やエポキシ系ラミネート用接着剤のガスバリア性は高くなく、ガスバリア性が要求される包装材料用途では、ポリビニリデンクロライド(PVDC)コート層、ポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミドフィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着したフィルム層などの各種ガスバリア層と可撓性ポリマーフィルム層などのシーラント層とを、接着剤層やアンカーコート層などの接着層を介して接着する必要があり(特許文献5参照。)、ラミネートフィルムの製造コストを上昇させ、ラミネート作業工程を複雑にしていた。これらの問題を解決する方法として、ガスバリア性ラミネート用接着剤が提案されている(特許文献6参照。)。
【0006】
しかしながら上記ガスバリア性ラミネート用接着剤は、接着剤を塗布する側の基材に印刷が施された場合、インキ層上で接着剤層の剥離の発生やインキ凝集力が低下することがあり、ラミネートフィルムのラミネート強度が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−51574号公報
【特許文献2】特開平9−316422号公報
【特許文献3】特開2000−154365号公報
【特許文献4】国際公開第99/60068号パンフレット
【特許文献5】特開平10−71664号公報
【特許文献6】特開2002−256208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記問題点を解決し、基材に印刷を施した場合でも優れたラミネート強度を有するガスバリア性ラミネートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、基材に塗布するインキ層にシランカップリング剤を添加した上で、ガスバリア性接着剤を使用してシーラントフィルムを積層することにより、ガスバリア性を有し、接着性に優れたラミネートフィルムを経済的、かつ作業性が有利に得られることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、少なくとも、基材、インキ層、接着剤層、およびシーラント層がこの順に積層されたラミネートフィルムであって、該インキ層がシランカップリング剤を含有し、かつ該接着剤層を形成する接着剤がエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を主成分とするものであり、かつ該エポキシ樹脂組成物が硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物中に(1)式に示される骨格構造が40重量%以上含有されることを特徴とするラミネートフィルムに関するものである。
【0011】
【化1】

【発明の効果】
【0012】
本発明のラミネートフィルムはガスバリア性に加え、接着性に優れており、非ハロゲン系ガスバリア材料として様々な用途に応用される。また、該ラミネートフィルムは、基材に印刷が施された場合でも優れたラミネート強度を有し、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明におけるラミネートフィルムは少なくとも、基材、インキ層、接着剤層、およびシーラント層がこの順に積層されたものである。ラミネートフィルムを製袋する際には、基材層は袋外面、シーラント層は袋内面に用いられる。
【0014】
本発明における基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム;ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシレンアジパミド(N-MXD6)などのポリアミド系フィルム;ポリ乳酸などの生分解性フィルム;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム;ポリアクリロニトリル系フィルム;ポリ(メタ)アクリル系フィルム;ポリスチレン系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系フィルム;ポリビニルアルコール系フィルム;カートンなどの紙類;アルミや銅などの金属箔が挙げられる。また、これらの基材として用いられる各種材料にポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂やポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物系樹脂、アクリル系樹脂などの各種ポリマーによるコーティングを施したフィルム;シリカ、アルミナ、アルミなどの各種無機化合物あるいは金属を蒸着させたフィルム;無機フィラーなどを分散させたフィルム;酸素捕捉機能を付与したフィルムなどが使用できる。また、コーティングする各種ポリマーについても無機フィラーを分散させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどが挙げられるが、モンモリロナイトなどの層状珪酸塩が好ましく、またその分散方法としては例えば押出混錬法や樹脂溶液への混合分散法など従来公知の方法が使用できる。酸素捕捉機能を付与させる方法としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等を含む組成物を少なくとも一部に使用する方法等が挙げられる。
これらのフィルム材料の厚さとしては10〜300μm程度、好ましくは10〜100μm程度が実用的であり、プラスチックフィルムの場合は一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよい。
【0015】
尚、本発明においては、上記基材、インキ層、接着剤層、およびシーラント層以外の層として、ポリオレフィン、ポリエステルなど、上記フィルム材料を積層(例えば、接着剤層とシーラント層の間など)してもよい。各種材料を積層するに際して、接着剤層を複数としてもよい。また、本発明における接着剤以外の接着剤を併用してもよい。
【0016】
本発明におけるインキ層は、アゾ系、フタロシアニン系、イソインドリノン系などの有機顔料;二酸化チタン、カーボンブラック、炭酸カルシウムなどの無機顔料;ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、アクリル変性ウレタンウレア樹脂等のポリウレタン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂;ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン系樹脂;ポリアミド系樹脂;塩素化ポリプロピレン樹脂等の塩素化オレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ニトロセルロース系樹脂、ゴム系樹脂等のバインダー樹脂;水、メタノール、2-プロパノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンなどの溶剤等から形成される従来のポリマーフィルムへの印刷層に用いられてきたインキにより形成される。インキ層の形成には、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機等の従来のポリマーフィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷設備が同様に適用され得る。
【0017】
インキ層を形成するインキは1液硬化タイプでも2液硬化タイプでも良いが、2液硬化タイプの場合、硬化剤としてポリイソシアネートを使用することが望ましい。具体的には、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族ポリイソシアネート、またはヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)などの脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0018】
また、本発明におけるインキ層はシランカップリング剤を含有する。シランカップリング剤としては、一般に市販されているものが使用できるが、中でもチッソ(株)、東レ・ダウコーニング(株)、信越化学工業(株)等から入手しうるN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’-ビス[3-トリメトキシシリル]プロピル]エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤等の有機官能基を有するものが望ましい。中でもイソシアネート系シランカップリング剤が好ましい。これらを添加する場合には、インキ顔料および樹脂等の固形分総量100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲が好ましい。
【0019】
溶剤で希釈したインキ(塗工液)は、そのザーンカップ(No.3)粘度が5〜30秒(25℃)の範囲となるような濃度で希釈され得る。ザーンカップ(No.3)粘度が5秒未満ではインキが被塗物に十分塗布されず、ロールの汚染などの原因となる。またザーンカップ(No.3)粘度が30秒を超えると、インキがロールに十分移行せず、均一なインキ層を形成するのは困難となる。たとえばグラビア印刷機ではザーンカップ(No.3)粘度はその使用中に10〜20秒(25℃)であることが好ましい。
【0020】
また、インキを塗布後の溶剤乾燥温度は20℃から140℃までの様々なものであってよいが、溶剤の沸点に近く、被塗物への影響が及ばない温度が望ましい。乾燥温度が20℃未満ではフィルム中に溶剤が残存し、接着不良や臭気の原因となる。また乾燥温度が140℃を超えると、ポリマーフィルムの軟化などにより、良好な外観のフィルムを得るのが困難となる。例えばインキを延伸ポリプロピレンフィルムに塗布する際は、40℃〜120℃が望ましい。
尚、基材上のインキ層は、連続的(全面印刷)でも断続的(部分印刷)であってもよい。
【0021】
本発明の接着剤層を形成する接着剤は、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を主成分とし、該エポキシ樹脂組成物が硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物中に上記(1)式の骨格構造が40重量%以上、好ましくは45重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有されることを特徴としている。エポキシ樹脂硬化物中に上記(1)式の骨格構造が高いレベルで含有されることにより、高いガスバリア性が発現する。本発明によれば、23℃、60%RHにおける酸素透過係数1が.0ml・mm/m・day・MPa以下の酸素バリア性を有する接着剤層を得ることもできる。以下に、エポキシ樹脂組成物の主成分であるエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤について説明する。
【0022】
本発明におけるエポキシ樹脂は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物または複素環式化合物のいずれであってもよいが、高いガスバリア性の発現を考慮した場合には芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましく、上記(1)式の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂がより好ましい。具体例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基および/またはグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
更に、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することが特に好ましい。
【0023】
また、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0024】
前記エポキシ樹脂は、アルコール類、フェノール類およびアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。メタキシリレンジアミンは4つのアミノ水素を有するので、モノ−、ジ−、トリ−およびテトラグリシジル化合物が生成する。グリシジル基の数はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0025】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、副生するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、約80〜4000であり、約200〜1000であることが好ましく、約200〜500であることがより好ましい。
【0026】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、または複素環式化合物のいずれであってもよく、ポリアミン類、フェノール類、酸無水物、またはカルボン酸類などの一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、ラミネートフィルムの使用用途およびその用途における要求性能に応じて選択することが可能である。
具体的には、ポリアミン類としてはエチレジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン;メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環式アミン;ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族アミンが挙げられる。また、これらを原料とするエポキシ樹脂、ポリアミン類とモノグリシジル化合物との変性反応物、ポリアミン類とエピクロロヒドリンとの変性反応物、ポリアミン類と炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの変性反応物、ポリアミン類と少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応により得られたアミドオリゴマー、ポリアミン類、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物、および一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応により得られたアミドオリゴマーもエポキシ樹脂硬化剤として使用できる。
【0027】
フェノール類としてはカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの多価フェノール、およびレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
また、酸無水物またはカルボン酸類としてはドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(メチル)テトラヒドロ無水フタル酸、(メチル)ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、およびこれらのカルボン酸などが使用できる。
【0028】
高いガスバリア性の発現を考慮した場合には、芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤が好ましく、上記(1)式の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤がより好ましい。
具体的にはメタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン、およびこれらを原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との反応生成物、炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの反応生成物、エピクロロヒドリンとの反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などを使用することがより好ましい。
【0029】
高いガスバリア性およびインキ層、シーラント層、その他の層との良好な接着性を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(A)および(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物を用いることが特に好ましい。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
【0030】
前記(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体が好ましい。
【0031】
また、前記(C)の炭素数1〜8の一価のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などが挙げられ、また、それらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物なども使用することができる。これらは上記多官能性化合物と併用してポリアミン(メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン)と反応させてもよい。反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高い酸素バリア性および他のフィルム材料への良好な接着強度が得られる。
【0032】
前記 (A)および(B)、または(A)、(B)および(C)の反応モル比は、(A)に含有されるアミノ基の数に対する(B)に含有される反応性官能基の数の比、または(A)に含有されるアミノ基の数に対する(B)および(C)に含有される反応性官能基の合計数の比として、0.3〜0.97の範囲が好ましい。0.3より少ない比率では、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基が生成せず、高いレベルのガスバリア性および接着性が発現しない。また、エポキシ樹脂硬化剤中に残存する揮発性分子の割合が高くなり、得られる硬化物からの臭気発生の原因となる。また、エポキシ基とアミノ基の反応により生成する水酸基の硬化反応物中における割合が高くなるため、高湿度環境下での酸素バリア性が著しく低下する要因となる。一方、0.97より高い範囲ではエポキシ樹脂と反応するアミノ基の量が少なくなり優れた耐衝撃性や耐熱性などが発現せず、また各種有機溶剤あるいは水に対する溶解性も低下する。
得られる硬化物の高いガスバリア性、高い接着性、臭気発生の抑制および高湿度環境下での高い酸素バリア性を特に考慮する場合には、ポリアミン成分に対する多官能性化合物のモル比が0.6〜0.97の範囲がより好ましい。より高いレベルの接着性の発現を考慮した場合には、本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤中に、該硬化剤の全重量を基準として、少なくとも6重量%のアミド基が含有されることが好ましい。
【0033】
本発明における接着剤を使用して作製したラミネートフィルムは、ラミネート直後(エージング前)に300mm/minの剥離速度でのラミネート強度(初期粘着力)が30g/15mm以上であることが好ましく、40g/15mm以上であることがより好ましく、50g/15mm以上であることが特に好ましい。この初期粘着力が十分でない場合、ラミネートフィルムのトンネリングやフィルムを巻き取る際の巻きズレなどの問題が発生する。
【0034】
高い初期粘着力の発現を考慮した場合には、成分(A)に含有されるアミノ基の数に対する(B)に含有される反応性官能基の数の比、および成分(A)に含有されるアミノ基の数に対する(B)および(C)に含有される反応性官能基の合計数の比を0.6〜0.97、好ましくは0.8〜0.97、特に好ましくは0.85〜0.97の範囲として得られた高平均分子量のオリゴマーをエポキシ樹脂硬化剤として使用することが好ましい。より好ましいエポキシ樹脂硬化剤は、メタキシリレンジアミン(成分(A))と、アクリル酸、メタクリル酸および/またはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物(成分(B))との反応生成物であり、メタキシリレンジアミンに含有されるアミノ基に対するアクリル酸、メタクリル酸および/またはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物に含有される反応性官能基の数の比は0.8〜0.97の範囲が好ましい。
【0035】
本発明で使用する接着剤は上記エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ組成物を含む。接着剤中のエポキシ組成物の含有量は少なくとも51重量%(100%を含む)であるのが好ましい。エポキシ組成物中のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合は、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂硬化物を得る場合の標準的な配合範囲でよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素数の比(活性水素/エポキシ比)が0.5〜5.0の範囲になるように配合する。0.5より少ない範囲では残存する未反応のエポキシ基が、得られる硬化物のガスバリア性を低下させる原因となり、また5.0より多い範囲では残存する未反応のアミノ基が、得られる硬化物の耐湿熱性を低下させる原因となる。得られる硬化物のガスバリア性および耐湿熱性を特に考慮する場合には、0.8〜3.0の範囲がより好ましく、0.8〜2.0の範囲がさらに好ましい。
また、得られる硬化物の高湿度環境下での高い酸素バリア性の発現を考慮した場合には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素数の比は0.8〜1.4の範囲が好ましい。
【0036】
接着剤には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレア系樹脂等の熱硬化性樹脂をエポキシ組成物全量(エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の合計重量、以下同様)に対して0.1〜49重量%混合してもよい。
【0037】
接着剤には、各種基材またはインキ層の表面への湿潤性を向上させるために、必要に応じてシリコンあるいはアクリル系化合物といった湿潤剤を添加しても良い。適切な湿潤剤としては、ビックケミー社から入手しうるBYK325、BYK331、BYK333、BYK350、BYK345、BYK347、BYK348、BYK361N、BYK380N、BYK381などがある。これらを添加する場合には、エポキシ組成物全量に対して0.01〜2.0重量%の範囲が好ましい。
【0038】
接着剤には、塗布直後の各種基材またはインキ層に対する粘着性を向上させるために、必要に応じてキシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、エポキシ組成物全量に対して0.01〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0039】
接着剤には、接着剤層のガスバリア性、耐衝撃性、耐熱性などの諸性能を向上させるために、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤を添加しても良い。フィルムの透明性を考慮した場合には、無機フィラーは平板状であることが好ましい。これらを添加する場合には、エポキシ組成物全量に対して0.01〜10.0重量%の範囲が好ましい。
【0040】
また、接着剤には、必要に応じて、酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0041】
さらに、接着剤層の各種基材、インキ層、シーラント層、その他の層に対する接着性を向上させるために、該樹脂組成物中にシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を添加しても良い。カップリング剤としては、一般に市販されているものが使用できるが、中でもチッソ(株)、東レ・ダウコーニング(株)、信越化学工業(株)等から入手しうるN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’-ビス[3-トリメトキシシリル]プロピル]エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤、東レ・ダウコーニング(株)製のSH−6026、Z−6050等のアミノシラン系カップリング剤、信越化学工業(株)製のKP−390、KC−223等のアミノ基含有アルコキシシラン等の本発明のガスバリア性樹脂組成物と反応しうる有機官能基を有するものが望ましい。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の総量100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲が好ましい。
【0042】
上記接着剤から形成された接着剤層は、各種基材、インキ層、シーラント層、その他の層に対する好適な接着性能に加え、低湿度条件から高湿度条件に至る広い範囲において高いガスバリア性を示す。したがって、本発明のラミネートフィルムは、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミド(N−MXD6)フィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着したフィルム層などの一般に使用されているガスバリア性材料を使用することなく非常に高いガスバリア性を有する。これら従来のガスバリア性材料を上記接着剤を介してシーラント層に貼り合わせることにより、ガスバリア性さらに向上させることもできる。
【0043】
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、ポリビニルアルコールコートフィルム、無機フィラーを分散させたポリビニルアルコールコートフィルム、メタキシレンアジパミド(N−MXD6)フィルムなどのガスバリア性フィルムは、高湿度条件下では、そのガスバリア性が低下するという欠点があるが、上記接着剤を介してこれらのガスバリア性フィルムを貼り合わせると、この欠点を解消することができる。
【0044】
さらに、上記接着剤から形成された接着剤層は、靭性、耐湿熱性に優れることから、耐衝撃性、耐煮沸処理性、耐レトルト処理性などに優れたガスバリア性ラミネートフィルムが得ることができる。
シーラント層の材料としては可撓性ポリマーを使用することが好ましい。良好なヒートシール性の発現を考慮すると、低密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。シーラント層の厚さは、好ましくは10〜300μm程度、より好ましくは10〜100μm程度である。シーラント層の表面には火炎処理やコロナ放電処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0045】
以下、本発明のラミネートフィルムの製造方法について説明する。
基材上にインキ層を形成する場合は、膜切れやはじきなどの欠陥が生じないように、必要に応じて、基材表面に火炎処理やコロナ放電処理などの表面処理が施すことが好ましい。インキ層は、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機等の従来のポリマーフィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷設備により形成される。インキ層は、連続的(全面印刷)でも断続的(部分印刷)であってもよい。インキ層の厚さは好ましくは0.01〜10μm程度、より好ましくは0.1〜5μm程度である。
【0046】
接着剤層は、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、押出しラミネート等公知のラミネート法により形成することができる。
【0047】
接着剤は、有機溶剤および/または水で希釈した約5重量%程度のエポキシ組成物濃度の塗布液として又は希釈することなくインキ層を施した基材フィルムに塗布される。エポキシ組成物濃度および温度は、前記エポキシ樹脂硬化物が得られるように、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤などの種類および量、ラミネート方法などに応じて選択される。
【0048】
有機溶剤としては、接着剤を溶解するあらゆる溶剤が使用し得る。例えばトルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトンなどの非水溶性系溶剤;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノールなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール類;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。
【0049】
接着剤は、塗布液のザーンカップ(No.3)粘度が5〜30秒(25℃)の範囲となるように溶剤で希釈される。ザーンカップ(No.3)粘度が5秒以下では塗布液がインキ層を施した基材フィルムに十分塗布されず、ロールの汚染などの原因となる。またザーンカップ(No.3)粘度が30秒以上では、接着剤がロールに十分移行せず、均一な接着剤層を形成するのは困難となる。たとえばドライラミネートではザーンカップ(No.3)粘度はその使用中に10〜20秒(25℃)であることが好ましい。
【0050】
本発明における塗布液を調製する際に塗布液の泡立ちを抑えるために、塗布液の中に、シリコンあるいはアクリル系化合物といった消泡剤を添加しても良い。適切な消泡剤としては、ビック・ケミー社から入手しうるBYK019、BYK052、BYK065、BYK066N、BYK067N、BYK070、BYK080、などがあげられるが、特にBYK065が好ましい。また、これら消泡剤を添加する場合には、塗布液中のエポキシ組成物全量に対して0.01重量%〜3.0重量%の範囲が好ましく、0.02重量%〜2.0重量%がより好ましい。
【0051】
また、溶剤を使用した場合、塗布液を塗布した後の溶剤除去温度は20〜140℃の範囲で、かつ、溶剤の沸点に近く、被塗物への影響が及ばない温度が望ましい。除去温度が20℃以上であると、ラミネートフィルム中の溶剤残存量が少なく、接着不良や臭気の発生が避けられる。また除去温度が140℃以下であると、ポリマーフィルムが軟化することなく、良好な外観のラミネートフィルムが得られる。例えば、基材として延伸ポリプロピレンフィルムを使用した場合は、40〜120℃が好ましい。
【0052】
接着剤を塗布する際の塗装形式としては、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機等の従来のポリマーフィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷設備やロール塗布やスプレー塗布、エアナイフ塗布、浸漬、はけ塗り、ダイコーティングなどの塗装形式のいずれも使用され得る。印刷機またはロール塗布が好ましい。例えば、グラビアインキをポリマーフィルムに塗布する場合と同様のグラビア印刷機あるいはロールコートおよび設備が適用され得る。
【0053】
続いて、各ラミネート方法での具体的な操作について説明する。
ドライラミネート法の場合には、インキ層を施した基材フィルムに前記塗布液をグラビアロールなどのロールにより塗布後、溶剤を除去し、直ちにその表面にシーラント層をニップロールにより、好ましくは20〜120℃、より好ましくは40〜100℃で貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。塗布液の溶剤としては、接着剤に対する溶解能が良く、比較的沸点が低い、炭素数3以下のアルコールを含む溶剤であることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびn−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上を主成分とする溶剤が例示される。さらに、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応を遅延させ、塗布液の急激な増粘を抑える効果があるエステル基、ケトン基、アルデヒド基のいずれかの官能基を有するカルボニル系溶剤を含む混合液であることが好ましい。カルボニル系溶剤としては、比較的沸点が低い、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドからなる群から選ばれる1種以上の化合物が例示される。残留溶剤量が少ないラミネートフィルムを得るために、カルボニル系溶剤の含有量は、全溶剤中の20重量%以下が好ましい。ラミネートフィルムの残留溶剤量が多い場合、悪臭の原因となるため、残留溶剤量は7mg/m以下が好ましい。7mg/mより多い場合は、フィルムから異臭が感じられる原因となる。臭気の発生をより確実に防ぐには、5mg/m以下がより好ましく、3mg/m以下がさらに好ましい。
【0054】
シーラント層をラミネートした後、必要に応じて20〜60℃で一定時間エージングを行ない、硬化反応を完了することが望ましい。該エージングにより、十分な反応率でエポキシ樹脂硬化物が形成され、高いガスバリア性が発現する。エージングが20℃以下もしくはエージングなしでは、エポキシ樹脂組成物の反応率が低く、十分なガスバリア性及び接着力が得られない。また60℃以上のエージングはポリアミドを含む基材上またはシーラント層のブロッキングや添加剤の溶出などの問題が起こり得る。
【0055】
ドライラミネート法においては、上記と逆の順序で各層を形成しラミネートフィルムを製造することもできる。すなわち、接着剤は、インキ層を施した基材フィルムだけではなく、シーラント層を形成するポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系フィルム、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体系フィルムに塗布液を塗布し、乾燥して接着剤層を形成した後、インキ層を形成した後に、延伸ポリプロピレン、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材を貼りあわせる事により、ラミネートフィルムを製造することができる。
【0056】
インキ層を施した基材フィルムを塗布した基材をニップロールにより貼り合せる場合、ニップロール温度は20〜120℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
【0057】
ノンソルベントラミネート法の場合には、インキ層を施した基材フィルムに予め40℃〜100℃程度に加熱しておいた接着剤を、40℃〜120℃に加熱したグラビアロールなどのロールにより塗布後、直ちにその表面にシーラント層を貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。この場合もドライラミネート法の場合と同様にラミネート後に必要に応じて一定時間のエージングを行うことが望ましい。
【0058】
押出しラミネート法の場合には、インキ層を施した基材フィルムに接着剤塗布液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、20〜140℃で溶剤の除去、硬化反応を行なった後に、押出し機により溶融させたシーラント層材料をラミネートすることによりラミネートフィルムを得ることができる。
上記ラミネート法およびその他の一般的なラミネート法は必要に応じて組み合わせることも可能である。
【0059】
本発明における接着剤を塗布、乾燥、貼り合わせ、熱処理した後のラミネートフィルム中の接着剤層の最終的な厚さは、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜10μmが実用的である。上記範囲内であると、ガスバリア性および接着性を低下させることなく均一な厚みの接着剤層を形成することができる。
【0060】
本発明のラミネートフィルムは優れたラミネート強度を有する。300mm/minの剥離強度で測定したラミネート強度は、基材やシーラント層の材質により異なるが、例えば、基材が延伸ポリプロピレンの場合は、80g/15mm以上が好ましく、100g/15mm以上がより好ましく、特に好ましくは120g/15mm以上である。基材が延伸ナイロンやポリエチレンテレフタラートの場合は、シーラント層が低密度ポリエチレンであれば600g/15mm以上が好ましく、700g/15mm以上がより好ましく、特に好ましくは800g/15mm以上であり、シーラント層が無延伸ポリプロピレンであれば300g/15mm以上が好ましく、400g/15mm以上がより好ましく、特に好ましくは500g/15mm以上である。
【0061】
本発明のラミネートフィルムは食品や医薬品などの保護を目的とする多層包装材料として使用することができる。保存物の種類、使用環境、使用形態に応じて多層包装材料の層構成を変更してもよい。例えば、本発明のラミネートフィルムをそのまま多層包装材料として使用することもできるし、必要に応じて酸素吸収層や熱可塑性樹脂フィルム層、紙層、金属箔層などの任意の層を本発明のラミネートフィルムにさらにラミネートさせることもできる。前記任意層は、本発明における接着剤を用いてラミネートさせても良いし、他の接着剤やアンカーコート剤を用いてラミネートさせても良い。
【0062】
本発明のラミネートフィルムは前記任意層を形成した後または形成することなく、折り曲げあるいは重ね合わせによって2つのシーラント層を対向させ、しかる後、その周辺端部をヒートシールして包装用袋にすることができる。ヒートシール形態は、例えば、側面シール、二方シール、三方シール、封筒貼りシール、合掌貼りシール(ピローシール)、平底シール、角底シール、ガゼットシール等から、内容物、使用環境、使用形態に応じて選ばれる。その他、例えば、自立性包装用袋(スタンディングパウチ)等にすることもできる。ヒートシール方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法が挙げられる。
【0063】
前記包装用袋に内容物を充填した後、その開口部をヒートシールすることで、本発明のラミネートフィルムを使用した包装製品を製造することができる。保存される内容物としては、米菓、豆菓子、ナッツ類、ビスケット・クッキー、ウェハース菓子、マシュマロ、パイ、半生ケーキ、キャンディ、スナック菓子などの菓子類、パン、スナックめん、即席めん、乾めん、パスタ、無菌包装米飯、ぞうすい、おかゆ、包装もち、シリアルフーズなどのステープル類、漬物、煮豆、納豆、味噌、凍豆腐、豆腐、なめ茸、こんにゃく、山菜加工品、ジャム類、ピーナッツクリーム、サラダ類、冷凍野菜、ポテト加工品などの農産加工品、ハム類、ベーコン、ソーセージ類、チキン加工品、コンビーフ類などの畜産加工品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練製品、かまぼこ、のり、佃煮、かつおぶし、塩辛、スモークサーモン、辛子明太子などの水産加工品、桃、みかん、パイナップル、りんご、洋ナシ、さくらんぼなどの果肉類、コーン、アスパラガス、マッシュルーム、玉ねぎ、人参、大根、じゃがいもなどの野菜類、ハンバーグ、ミートボール、水産フライ、ギョーザ、コロッケなどを代表とする冷凍惣菜、チルド惣菜などの調理済食品、バター、マーガリン、チーズ、クリーム、インスタントクリーミーパウダー、育児用調整粉乳などの乳製品、液体調味料、レトルトカレー、ペットフードなどの食品類が挙げられる。また、タバコ、使い捨てカイロ、医薬品、化粧品などの包装材料としても使用され得る。
【実施例】
【0064】
以下に本発明の実施例を紹介するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0065】
各測定および評価は以下の方法で行った。
(1)酸素透過係数 (ml・mm/(m・day・MPa))
酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN10/50A)を使用して、接着剤層の酸素透過係数を23℃、相対湿度60%の条件下で測定した。
(2)ラミネート強度(g/15mm)
JISK−6854に指定されている方法を用い、ラミネートフィルムのラミネート強度をT型剥離試験により300mm/minの剥離速度で測定した。
(3)ヒートシール強度(kg/15mm)
2枚のラミネートフィルムのシーラント層同士を、東洋精機製作所(株)製熱傾斜ヒートシール機(Type HG−100)を用い、2kg/cm、1秒、150℃にてヒートシールし、ラミネート強度と同様の方法によりヒートシール部の強度を測定した。
(4)残留溶剤量(mg/m
ラミネートフィルム片(25cm×1cm)200枚を三角フラスコに入れ、80℃で30分加熱した後、フラスコ内空気の溶剤濃度をGC分析した。結果から、ラミネートフィルム1m当たりの残留溶剤量を算出した。
【0066】
<製造例1>
エポキシ樹脂硬化剤A
反応容器に1モルのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93モルのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で160℃まで昇温した。100℃まで冷却し、固形分濃度が70重量%になるようにメタノールを加え、メタノールで希釈したエポキシ樹脂硬化剤Aを得た。エポキシ樹脂硬化剤A中のアミド基の含有率(固形分基準)は21重量%であった。
【0067】
<製造例2>
エポキシ樹脂硬化剤B
反応容器に1モルのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93モルのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で160℃まで昇温した。100℃まで冷却し、固形分濃度が70重量%になるようにエタノールを加え、エタノールで希釈したエポキシ樹脂硬化剤Bを得た。エポキシ樹脂硬化剤B中のアミド基の含有率(固形分基準)は21重量%であった。
【0068】
<実施例1>
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製;TETRAD−X)を50重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aを104重量部、メタノールを258重量部、酢酸エチルを29重量部となるように配合し、よく攪拌して得た混合液(メタノール/酢酸エチル=9/1、固形分濃度;35重量%)にシリコン系消泡剤(ビック・ケミー社製;BYK065)を0.05重量部加え、よく攪拌し、ザーンカップ(No.3)粘度14秒(25℃)の接着剤を得た。
大日精化工業(株) NT-ハイラミック701R白(T)/ NT-ハイラミックハードナー(ハードナーは白インキ100部に対し5部添加)に、シランカップリング剤として信越化学工業(株)製KBE-9007(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)をインキ固形分に対して5部添加し、白インキを得た。厚み15μmの延伸6-ナイロンフィルム(東洋紡績(株)製ハーデンN1102)の上面全体に白インキを印刷し、このフィルムの印刷面側に、接着剤を100線/cm、深さ100μmグラビアロールを使用して塗布し、60℃(入り口付近)〜90℃(出口付近)の乾燥オーブンで乾燥して接着剤層を形成した。厚み40μmの直鎖状ポリエチレンフィルム(東セロ(株)製T.U.X.MC−S)を70℃に加熱したニップロールにより接着剤層に貼り合わせ、巻取り速度130m/minで巻取り、ロールを40℃で4日間エージングすることによりラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムについてそのガスバリア性、ラミネート強度を評価した。結果を表1に示す。接着剤層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式の骨格構造の含有率は62.0重量%であった。
【0069】
<実施例2>
厚み15μmの延伸6-ナイロンフィルムの代わりに、厚み12μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製エステルフィルムE5100)を使用した以外は実施例1と同様の方法でラミネートフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0070】
<実施例3>
厚み15μmの延伸6-ナイロンフィルムの代わりに、厚み20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製パイレンP2161)を使用した以外は実施例1と同様の方法でラミネートフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0071】
<実施例4>
接着剤混合液にチッソ(株)製S330を3重量部添加してよく撹拌し、厚み15μmの延伸6-ナイロンフィルムの代わりに、厚み12μmのシリカ蒸着ポリエステルフィルム(三菱樹脂(株)製テックバリアL)を使用した以外は実施例1と同様の方法でラミネートフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0072】
<実施例5>
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製;TETRAD−X)を50重量部、エポキシ樹脂硬化剤Bを104重量部、エタノールを258重量部、酢酸エチルを29重量部となるように配合し、よく攪拌して得た混合液(エタノール/酢酸エチル=9/1、固形分濃度;35重量%)にシリコン系消泡剤(ビック・ケミー社製;BYK065)を0.05重量部加え、よく攪拌し、ザーンカップ(No.3)粘度15秒(25℃)の接着剤を用いた以外は実施例1と同様の方法でラミネートフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0073】
<比較例1>
インキにシランカップリング剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてラミネートフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0074】
<比較例2>
インキにシランカップリング剤を添加しなかったこと以外は実施例2と同様にしてラミネートフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0075】
<比較例3>
インキにシランカップリング剤を添加しなかったこと以外は実施例3と同様にしてラミネートフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0076】
<比較例4>
インキにシランカップリング剤を添加しなかったこと以外は実施例4と同様にしてラミネートフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材、インキ層、接着剤層、およびシーラント層がこの順に積層されたラミネートフィルムであって、該インキ層がシランカップリング剤を含有し、かつ該接着剤層を形成する接着剤がエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を主成分とするものであり、かつ該エポキシ樹脂組成物が硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物中に(1)式に示される骨格構造が40重量%以上含有されることを特徴とするラミネートフィルム。
【化1】

【請求項2】
前記シランカップリング剤がイソシアネート系シランカップリング剤である請求項1記載のラミネートフィルム。
【請求項3】
前記接着剤層が酸素透過係数1.0ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下の酸素バリア性を有する請求項1記載のラミネートフィルム。
【請求項4】
ドライラミネート法により製造されたものである請求項1記載のラミネートフィルム。

【公開番号】特開2010−269515(P2010−269515A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123011(P2009−123011)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】