説明

ラミネート形電池

【課題】 内圧が異常に上昇した際に特定箇所が優先的に開放して安全性を確保でき、かつ貯蔵性も良好なラミネート形電池を提供する。
【解決手段】 シート状正極とシート状負極とセパレータとを有する電極体を、少なくとも金属層と熱融着樹脂層とを積層した金属ラミネートフィルムで構成された外装体に収容したラミネート形電池であって、外装体の周縁部における熱シール部では、重ね合わされた金属ラミネートフィルムのいずれか一方の金属ラミネートフィルムの有する金属層に、片面から他面まで貫通する部分が設けられており、前記貫通する部分をベント部としたことを特徴とするラミネート形電池により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内圧が異常に上昇した際の安全性が良好なラミネート形電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、電池の用途が拡大するにつれて、高容量化や、高エネルギー密度化、高出力化といった電池の特性向上を目的とした開発が盛んに行われている。特に、自動車用途などの高出力、高容量が要求される用途への電池の適用も求められるようになっており、例えばリチウムイオン二次電池の適用が検討されている。
【0003】
こうした用途へ適用される電池の外装体には、形状自由度が高く軽量であるといった利点から、金属ラミネートフィルムで構成されるラミネートフィルム外装体が使用される場合が多い。
【0004】
ところで、円筒形や角形の金属容器(電池缶)を外装体とする電池では、例えば、電池内圧が異常に上昇した場合の安全性を確保するために、金属容器の一部を薄肉にするなどしてベント部を設けることが通常である。
【0005】
これに対し、ラミネートフィルム外装体を用いたラミネート形電池は、ラミネートフィルム外装体の強度が円筒形や角形の金属容器(電池缶)に比べると小さく、また、金属ラミネートフィルムの有する熱融着樹脂を熱融着させて封止することから、金属容器を有する電池に比べて耐圧力性が低く、内圧のわずかな上昇で膨らんだり、開封したりする。そのため、ラミネート形電池ではベント部の設置は特に必要がない、といった考えもあった。
【0006】
しかしながら、近年の機器では、充放電の管理や安全性の確保のために、精密な回路を電池近傍に設置する機会が増えており、これらの回路や基板に電池内部の電解液などが付着すると、腐食によって機器の誤動作や発火などに至る虞がある。このようなことから、ラミネート形電池においても、ベントを設けて、仮に内部からの液漏れやガス漏れが発生しても、電池近傍に配置された回路や基板の存在しない方向に導く工夫が必要となっている。特に最近の電池では、高容量化に伴って各発電要素が増量されており、また、高負荷特性が要求される用途に対応するために、液状の電解液をゲル化などさせずに、そのまま用いることも行われるようになっていることから、ベントの必要性が増している。
【0007】
従来から、ラミネート形電池にベントを設ける技術は多数提案されており、例えば、ラミネートフィルム外装体の熱シール部の一部を打ち抜いたり切り欠いたりする方法や(例えば、特許文献1)、ラミネートフィルム外装体を構成する上下の金属ラミネートフィルムの熱融着樹脂層間に薄片やフッ化リチウムを配置したり、熱融着樹脂層の一部を薄くしたりして、熱シール部の一部の強度を下げる方法が知られている(例えば、特許文献2〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−351431号公報
【特許文献2】特開2001−250526号公報
【特許文献3】特許第4178436号公報
【特許文献4】特許第3638765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ラミネート形電池の耐久性を考慮した場合、長期間電池が貯蔵されたような場合に、電池の内容物(発電要素)を良好な状態に維持する機能も備えていることが求められる。ところが、前記の技術のように、ラミネートフィルム外装体に係る熱シール部の一部を打ち抜いたり切り欠いたりした場合は、熱シール部に幅の狭い部分が形成されることになり、また、ラミネートフィルム外装体に係る熱シール部の一部の強度を低下させることでベント機能を持たせた場合には、熱シール部の信頼性が損なわれる虞がある。そのため、これらの技術により得られるラミネート形電池では、ラミネートフィルム外装体の熱シール部における水分や溶媒の透過性が高くなってしまい、外部から水分が侵入したり、内部の電解液溶媒が蒸発したりして、貯蔵性が低下する虞がある。
【0010】
このようなことから、ラミネート形電池では、その貯蔵性の低下を可及的に抑制しつつ、電池内圧が異常に上昇した際には、特定箇所のみが開封できるような技術の開発が求められる。
【0011】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内圧が異常に上昇した際に特定箇所が優先的に開放して安全性を確保でき、かつ貯蔵性も良好なラミネート形電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成し得た本発明のラミネート形電池は、少なくとも金属層と熱融着樹脂層とを積層した金属ラミネートフィルムを外装体とし、前記外装体の内部に、正極外部端子が接続されたシート状正極と負極外部端子が接続されたシート状負極とセパレータとを有する電極体を収容したラミネート形電池であって、前記外装体は、2枚の金属ラミネートフィルムにより構成されているか、または1枚の金属ラミネートフィルムを二つ折りにして構成されており、前記正極外部端子および前記負極外部端子が外部に引き出された状態で、前記外装体の周縁部が熱シールされており、前記外装体の周縁部における熱シール部では、重ね合わされた金属ラミネートフィルムのいずれか一方の金属ラミネートフィルムの有する金属層に、片面から他面まで貫通する部分が設けられており、前記貫通する部分をベント部としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内圧が異常に上昇した際に特定箇所が優先的に開放して安全性を確保でき、かつ貯蔵性も良好なラミネート形電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のラミネート形電池の一例を模式的に表す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および図2に、本発明のラミネート形電池の一例を模式的に示す。図1は、ラミネート形電池1の平面図であり、図2は図1のA−A線断面の要部拡大図である。なお、図2では、図面が複雑になることを避けるため、シート状正極の正極合剤層と集電体、およびシート状負極の負極合剤層と集電体を区別していない。
【0016】
ラミネート形電池1では、複数のシート状正極6と複数のシート状負極7とがセパレータ8を介して積層された積層電極体、および電解液(図示しない)が、平面視で矩形の外装体2内に収容されている。そして、外装体2からは、正極外部端子3および負極外部端子4が引き出されている。正極外部端子3および負極外部端子4は、いずれも平面状で、外装体2内において、それぞれ、シート状正極6、シート状負極7と直接またはリード体などを介して接続している。なお、図1では、正極外部端子3および負極外部端子4が、外装体2の同一辺から引き出されている例を示しているが、本発明の電池においては、正極外部端子と負極外部端子とは、それぞれ外装体の異なる辺から引き出されていてもよい。
【0017】
外装体2は、電池内側となる面に熱融着樹脂層を有する金属ラミネートフィルム20により構成されている。より具体的には、外装体2に係る金属ラミネートフィルム20は、電池外側から順に、外装樹脂層21、金属層22および熱融着樹脂層23が積層されて構成されており、その熱シール部(図2中左側)では、上側の金属ラミネートフィルム20に係る熱融着樹脂層23と、下側の金属ラミネートフィルム20に係る熱融着樹脂層23とが、熱シールされて一体化し、これにより外装体2内が密閉されている。
【0018】
そして、図1および図2に示す電池では、外装体2の周縁部における熱シール部において、重ね合わされた金属ラミネートフィルム20、20のうちの一方の金属ラミネートフィルム(図1および図2では、上側の金属ラミネートフィルム20)の有する金属層22に、片面から他面まで貫通する部分5が設けられており、かかる部分をベント部としている。
【0019】
すなわち、外装体2の熱シール部における前記の貫通する部分5が形成された箇所は、他の箇所よりも金属層22部分の強度が小さくなる。そのため、ラミネート形電池の内圧が異常に上昇した際には、前記の貫通する部分5が形成された箇所で、強度の小さな熱融着樹脂層が破壊されて内圧が開放されることから、これがベント部として機能する。
【0020】
しかも、本発明の電池では、例えば、前記のような、外装体に係る熱シール部の一部を切り欠いたり打ち抜いたりした場合と異なり、熱シール部に幅の狭い部分が形成されることはない。そのため、本発明の電池では、ベント部の形成に伴う熱シール部における水分や電解液溶媒の透過性の増大を可及的に抑制できる。
【0021】
なお、前記貫通する部分5を通じた水分の侵入や電解液溶媒の蒸発の懸念もあるが、外装体を構成する金属ラミネートフィルムの、熱シール部となることが予定される箇所に、フィルム全体を貫通する部分を予め形成しておき、この金属ラミネートフィルムを用いてラミネート形電池を製造することで、図2に示すように、外装体2の熱シール時に溶融した熱融着樹脂の一部が侵入すると考えられ、これによって、前記貫通する部分5の開口が封鎖されて水分の侵入や電解液溶媒の蒸発が抑制される。
【0022】
更に、前記貫通する部分5が形成された箇所では、他方の金属ラミネートフィルム20(貫通する部分5が形成された金属ラミネートフィルム20とは別の金属ラミネートフィルム20)には金属層22に貫通する部分が形成されていない。そのため、熱シール部のうち、貫通する部分5が形成された箇所における強度の低下を可及的に抑制できる。
【0023】
本発明の電池では、前記の各作用によって、内圧が異常に上昇した際に特定箇所が優先的に開放して安全性を確保でき、かつ貯蔵性も良好なものとすることができる。
【0024】
外装体の熱シール部において、一方の金属ラミネートフィルムに係る金属層に形成する片面から他面まで貫通する部分の形状については、特に制限はなく、例えば、平面視で、直線状、曲線状、直線と曲線とを組み合わせた形状のいずれであってもよい。より具体的には、例えば、平面視で、直線状の筋や溝、円、楕円状などが挙げられる。なお、前記貫通する部分の形状が、平面視で直線状の場合、外装体の幅方向(図2中、aの長さの方向)に略垂直(垂直を含む)であることが好ましい。
【0025】
なお、前記貫通する部分は、外装体の熱シール部の内端から、1mm以上外側の箇所に形成されていることが好ましく、2mm以上外側の箇所に形成されていることがより好ましい。すなわち、図2中、aの長さが、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。前記貫通する部分の形成箇所が、外装体の熱シール部の内端に近すぎると、水分や電解液溶媒の透過を防ぐ機能が低下する虞があり、電池の使用期間(寿命)にもよるが、信頼性(貯蔵性)の向上効果が小さくなることがある。
【0026】
図1および図2では、前記貫通する部分を1個設けた例を示しているが、本発明の電池は、前記貫通する部分を複数(例えば、2個、3個、4個など)有していてもよい。ただし、電池の生産性などを考慮すると、前記貫通する部分の数は少ない方が好ましく、1個であることがより好ましい。
【0027】
前記貫通する部分の平面視での総長さ(前記貫通する部分が複数ある場合は、その合計長さ。前記貫通する部分の平面視での総長さについて、以下同じ。)は、ベント部としての作用をより有効に発揮させる観点から、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。ただし、前記貫通する部分の平面視での総長さが長すぎると、電池の信頼性向上効果が小さくなる虞がある。よって、前記貫通する部分の平面視での総長さは、50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましい。
【0028】
また、前記貫通する部分の幅(図2中、bの長さ)は、あまり広すぎると、電池の信頼性向上効果が小さくなる虞があることから、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。一方、前記貫通する部分の幅の下限値については特に制限はなく、形成可能な幅であればよいが、具体的には、例えば、カッターなどで切り込みを入れただけの場合のように、実質的に0mmであってもよい。
【0029】
本発明の電池では、正極外部端子や負極外部端子と、外装体の熱融着樹脂層との間に、熱融着樹脂層に含まれる熱融着樹脂と同種の樹脂を含有する接着層を設け、この接着層を介して、正極外部端子や負極外部端子と外装体(その熱融着樹脂層)とを接着することができる。正極外部端子や負極外部端子が引き出されている辺は、通常熱シール部の強度が小さくなりやすいが、このような方法によって正極外部端子や負極外部端子が引き出されている辺の熱シール部の強度を高めることができる。
【0030】
外装体の周縁部の熱シール部の幅は、5〜20mmとすることが好ましい。
【0031】
ラミネート形電池を構成するシート状正極は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤からなる層(正極合剤層)を、集電体の片面または両面に形成したものが使用できる。
【0032】
正極活物質としては、例えば、本発明のラミネート形電池がリチウムイオン二次電池の場合、リチウムイオンを吸蔵・放出できる活物質が使用される。このような正極活物質の具体例としては、例えば、Li1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMnやその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などが挙げられる。前記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoOやLiNi1−xCox−yAl(0.1≦x≦0.3、0.01≦y≦0.2)などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiMn5/12Ni5/12Co1/6、LiNi3/5Mn1/5Co1/5など)などを例示することができる。
【0033】
正極の集電体としては、アルミニウム箔やアルミニウム合金箔が好適である。集電体の厚みは、電池の大きさや容量にもよるが、例えば、0.01〜0.02mmであることが好ましい。
【0034】
正極を作製するにあたっては、前記の正極活物質と、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、繊維状炭素などの導電助剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのバインダなどを含む正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤を用いて均一に分散させたペースト状やスラリー状の組成物を調製し(バインダは、溶剤に溶解していてもよい)、この組成物を正極集電体上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理により正極合剤層の厚みや密度を調整する方法が採用できる。ただし、本発明に係る正極の作製方法は前記の方法に限られず、他の方法を採用しても構わない。
【0035】
シート状正極における正極合剤層の厚みは、片面あたり、30〜100μmとすることが好ましい。また、正極合剤層における各構成成分の含有量は、正極活物質:90〜98質量%、導電助剤:1〜5質量%、バインダ:1〜5質量%とすることが好ましい。
【0036】
正極外部端子には、使用機器との接続の容易さなどの関係から、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のものを用いることが好ましい。正極外部端子の厚みは、50〜300μmが好適である。すなわち、正極外部端子の厚みを50μm以上にすることによって、正極外部端子溶接時の切断の防止、並びに引っ張りおよび折り曲げによる断裂の防止を図ることができる。また、正極外部端子の厚みを300μm以下にすることによって、外装体の熱シール部に厚み方向の隙間が生じるのを防止することができる。なお、前記の通り、外装体の周縁部のうち、正極外部端子が引き出された辺における熱シール部の強度を高めるために、外装体と正極外部端子との間に接着層を介在させることができるが、正極外部端子における熱シール部に位置することが予定される箇所に、予め前記接着層を設けてもよい。
【0037】
シート状正極と正極外部端子の接続は、シート状正極の集電体と正極外部端子とを直接接続することで行ってもよいが、例えば、アルミニウム製のリード体を介してシート状正極の集電体と正極外部端子とを接続することで行うこともできる。アルミニウム製のリード体の厚みは、正極外部端子と同様に、50〜300μmであることが好ましい。このようなリード体は、特に正極集電体であるアルミニウム箔が薄く、正極外部端子と直接接続するには強度が不足するような場合に用いることが好ましい。
【0038】
シート状正極における集電体または該集電体に接続したアルミニウム製のリード体と、正極外部端子との接続方法としては、例えば、抵抗溶接、超音波溶接、レーザー溶接、カシメ、導電性接着剤による方法など、各種の方法を採用することができるが、超音波溶接が特に適している。
【0039】
ラミネート形電池を構成するシート状負極には、例えば、本発明のラミネート形電池がリチウムイオン二次電池の場合、リチウムイオンを吸蔵・放出できる活物質を含有するものが使用される。このような負極活物質としては、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物(LiTi12など)、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(正極に係る導電助剤として例示した炭素材料など)やバインダ[PVDF、スチレンブタジエンゴム(SBR)のようなゴム系バインダとカルボキシメチルセルロース(CMC)との混合バインダなど]などを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたもの、または、前記の各種合金やリチウム金属の箔を集電体表面に積層したものなどが、シート状負極として用いられる。
【0040】
例えば、負極合剤層を有するシート状負極とする場合、前記の負極活物質と前記のバインダと、必要に応じて黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電助剤などを含む負極合剤を、NMPなどの溶剤を用いて均一に分散させたペースト状やスラリー状の組成物を調製し(バインダは、溶剤に溶解していてもよい)、この組成物を負極集電体上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理により負極合剤層の厚みや密度を調整する方法が採用できる。ただし、本発明に係るシート状負極の作製方法は前記の方法に限られず、他の方法を採用しても構わない。
【0041】
負極の集電体としては、銅箔が好適である。集電体の厚みは、電池の大きさや容量にもよるが、例えば、0.05〜0.02mmであることが好ましい。
【0042】
シート状負極における負極合剤層の厚みは、片面あたり、30〜100μmとすることが好ましい。また、負極合剤層における各構成成分の含有量は、負極活物質:90〜98質量%、バインダ:1〜5質量%とすることが好ましい。また、負極に導電助剤を用いる場合には、負極合剤層中の導電助剤の含有量は、1〜5質量%とすることが好ましい。
【0043】
負極外部端子には、ニッケル、ニッケルメッキをした銅、ニッケル−銅クラッドなどの金属の箔やリボンなどが好ましい。また、負極外部端子の厚みは、正極外部端子と同様に50〜300μmが好ましい。すなわち、負極外部端子の厚みを50μm以上にすることによって、負極外部端子溶接時の切断の防止、並びに引っ張りおよび折り曲げによる断裂の防止を図ることができる。また、負極外部端子の厚みを300μm以下にすることによって、外装体の熱シール部に厚み方向の隙間が生じるのを防止することができる。なお、前記の通り、外装体の周縁部のうち、負極外部端子が引き出された辺における熱シール部の強度を高めるために、外装体と負極外部端子との間に接着層を介在させることができるが、負極外部端子における熱シール部に位置することが予定される箇所に、予め前記接着層を設けてもよい。
【0044】
シート状負極と負極外部端子の接続は、シート状負極の集電体と負極外部端子とを直接接続することで行ってもよいが、例えば、銅製のリード体を介してシート状負極の集電体と負極外部端子とを接続することで行うこともできる。銅製のリード体の厚みは、負極外部端子と同様に、50〜300μmであることが好ましい。このようなリード体は、特に負極集電体である銅箔が薄く、負極外部端子と直接接続するには強度が不足するような場合に用いることが好ましい。
【0045】
シート状負極における集電体または該集電体に接続した銅製のリード体との接続方法としては、例えば、抵抗溶接、超音波溶接、レーザー溶接、カシメ、導電性接着剤による方法など、各種の方法を採用することができるが、超音波溶接が特に適している。
【0046】
本発明のラミネート形電池では、前記のシート状正極と前記のシート状負極とを、セパレータを介して積層した積層電極体や、セパレータを介して重ね合わせた後、渦巻き状に巻回した巻回電極体として使用することができる。なお、積層電極体や巻回電極体では、シート状正極やシート状負極を、必要に応じて複数枚使用することができる。また、巻回電極体の場合には、必要に応じて横断面が扁平状となるように成形してもよい。
【0047】
ラミネート形電池に係るセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの融合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどで構成された多孔質フィルムや不織布が挙げられる。セパレータの厚みは10〜50μmであることが好ましく、空孔率は30〜70%であることが好ましい。また、多孔質フィルムと不織布とを重ねるなど、複数枚のセパレータを用いることにより、短絡を防止する効果を高め、電池の信頼性をより向上させることができる。
【0048】
ラミネート形電池に係る電解液としては、本発明のラミネート形電池がリチウムイオン二次電池の場合、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(BL)などの高誘電率溶媒や、直鎖状の、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)などの低粘度溶媒などの有機溶媒に、LiPF、LiBFなどの溶質を溶解した溶液(非水電解液)が挙げられる。なお、電解液溶媒には、前記の高誘電率溶媒と、低粘度溶媒との混合溶媒を使用することがより好ましい。前記の溶液に、PVDFやゴム系の材料、脂環エポキシやオキセタン系の三次元架橋構造を有する材料などを混合して固化し、ポリマー電解液としてもよい。
【0049】
ラミネート形電池の外装体は、金属ラミネートフィルムで構成されたものであり、かかる金属ラミネートフィルムとしては、少なくとも金属層と熱融着樹脂層とを有していればよく、これらの層のみを有する2層構造のものでもよいが、図2に示すような、外装樹脂層/金属層/熱融着樹脂層からなる3層構造の金属ラミネートフィルムが、より好ましく使用される。
【0050】
なお、金属ラミネートフィルムにおいて、前記貫通する部分は、金属層のみを片面から他面まで貫通していればよいが、例えば、外装樹脂層も有する3層構造の金属ラミネートフィルムを用いる場合、生産が容易となるため、外装樹脂層においても、金属層に形成された前記貫通する部分に相当する位置に、片面から他面まで貫通する部分が設けられていてもよい。
【0051】
金属ラミネートフィルムにおける金属層としてはアルミニウムフィルム、ステンレス鋼フィルムなどが、熱融着樹脂層としては変性ポリオレフィンフィルム(変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムなど)などが挙げられる。また、金属ラミネートフィルムが外装樹脂層を有する場合、その外装樹脂層としては、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム(PETフィルムなど)などが挙げられる。
【0052】
金属ラミネートフィルムにおいては、金属層の厚みが10〜150μmであることが好ましく、熱融着樹脂層の厚みが20〜100μmであることが好ましい。また、金属ラミネートフィルムが外装樹脂層を有する場合、その厚みは、20〜100μmであることが好ましく、
【0053】
外装体の形状については特に制限はないが、例えば、平面視で、3角形、4角形、5角形、6角形、7角形、8角形などの多角形であることが挙げられ、平面視で4角形(矩形または正方形)が一般的である。
【0054】
なお、本発明のラミネート形電池では、1枚の金属ラミネートフィルムを二つ折りにして構成した外装体を用いてもよく、また、2枚の金属ラミネートフィルムを重ねて構成した外装体を用いてもよい。
【0055】
本発明のラミネート形電池は、自動車用途などの高出力、高容量の電池が要求される用途を始めとして、各種電子機器の電源用途など、従来から知られているラミネート形電池(特にラミネート形のリチウムイオン二次電池)が使用されている各種用途と同様の用途に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0057】
実施例1
<正極の作製>
LiCoO:96質量部、アセチレンブラック:2質量部、およびPVDF:2質量部を混合し、更にNMPを加えて正極合剤含有ペーストを調製した。得られた正極合剤含有ペーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥後、プレス処理を施して正極合剤層を形成し、シート状正極を得た。得られたシート状正極の正極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり60μmであった。その後、得られたシート状正極を、正極合剤層の形成部分が幅105mm、長さ200mmとなり、更に集電タブとなる正極集電体の露出部も含む形状に裁断した。
【0058】
<負極の作製>
黒鉛:98質量%に、SBR:1.5質量%およびCMC:0.5質量%を加えて混合し、更に水を加えて負極合剤含有ペーストを調製した。得られた負極合剤含有ペーストを、厚みが10μmの銅箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥後、プレス処理を施して負極合剤層を形成し、シート状負極を得た。得られたシート状負極の負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり60μmであった。その後、得られたシート状負極を、負極合剤層の形成部分が幅110mm、長さ205mmとなり、更に集電タブとなる負極集電体の露出部も含む形状に裁断した。
【0059】
<電池の組み立て>
前記のシート状正極10枚と、前記のシート状負極11枚とを、セパレータ(厚みが25μmのポリオレフィン微孔性フィルム)を介して積層し、積層電極体とした。なお、積層電極体の両端は、いずれも負極となるように積層した。次に、前記の積層電極体に係る各シート状正極の集電タブをアルミニウム製の正極外部端子に超音波溶接し、更に各シート状負極の集電タブを銅製の負極外部端子に超音波溶接した。なお、正極外部端子および負極外部端子には、外装体の熱シール部に位置することが予定される箇所の両面に、外装体の熱融着樹脂層を構成する樹脂と同じ変性ポリオレフィンにより構成された接着層を配した。
【0060】
ポリエステルフィルム/アルミニウムフィルム/変性ポリオレフィンフィルムからなる厚み150μmの三層構造の金属ラミネートフィルム(矩形で、サイズ130mm×230mm)を用意した。そして、金属ラミネートフィルムにおける変性ポリオレフィンフィルム層上に前記の積層電極体を、正極外部端子および負極外部端子の一部が図1に示すように金属ラミネートフィルムの同一辺から突出するように置き、積層電極体を包むように金属ラミネートフィルムを二つ折りにした。なお、金属ラミネートフィルムには、図1の金属層を貫通する部分5に相当する箇所の、上側に位置する金属ラミネートフィルムの係るアルミニウムフィルム(アルミニウムフィルムおよびポリエステルフィルム)に、片面から他面まで貫通する部分を予め形成しておいた。前記貫通する部分は、幅(図2中bの長さ)1mmで平面視での長さが10mmの直線の溝状であり、その形成位置および方向は、外装体の熱シール部の内端から3mmの箇所(図2中aの長さが3mm)で、熱シール部の幅方向に垂直な方向とした。
【0061】
その後、正極外部端子および負極外部端子を引き出した辺および図1中右側の縦辺の二辺、ならびに折り畳み端を有する辺を熱シールして外装体とし、70℃で15時間真空乾燥した。その後、図1中左側の縦辺から非水電解液を注入し、減圧状態で前記の縦辺を熱シールして封止した。なお、非水電解液には、ECとDECを体積比で1対3に混合した溶媒にLiPFを濃度1.0mol/lで溶解した溶液を用いた。また、外装体の熱シール幅は、いずれも10mmとした。
【0062】
前記封止後の外装体(積層電極体および非水電解液を収容した外装体)について、24時間エージングし、その後、0.1Cの電流値で1時間充電し、続いて総充電時間を4時間とする定電流−定電圧充電(定電流充電:0.5C、定電圧充電:4.2V)を実施することで化成処理を行って、前記貫通する部分をベント部とするラミネート形リチウムイオン二次電池を得た。
【0063】
実施例2
外装体を構成する上側の金属ラミネートフィルムにおけるアルミニウムフィルム(およびポリエステルフィルム)の貫通する部分の形状を、平面視での長さが10mmの直線の筋状とした以外は、実施例1と同様にしてラミネート形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0064】
実施例3
外装体を構成する上側の金属ラミネートフィルムにおけるアルミニウムフィルム(およびポリエステルフィルム)の貫通する部分の形状を、平面視で、直径が5mmの円形とした以外は、実施例1と同様にしてラミネート形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0065】
比較例1
外装体を構成する上側の金属ラミネートフィルムにおけるアルミニウムフィルム(およびポリエステルフィルム)に、貫通する部分を形成しなかった以外は、実施例1と同様にしてラミネート形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0066】
比較例2
実施例1の電池における前記貫通する部分の形成箇所に相当する位置に、外装体を構成する上側の金属ラミネートフィルムおよび下側の金属ラミネートにおけるアルミニウムフィルム(およびポリエステルフィルム)に、片面から他面まで貫通する部分を、実施例1の電池における前記貫通する部分と同じ形状で形成した以外は、実施例1と同様にしてラミネート形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0067】
実施例1〜3および比較例1、2のラミネート形リチウムイオン二次電池について、以下の各評価を行った。これらの結果を、前記貫通する部分の形状などとともに表1に示す。
【0068】
<ベント部の作動圧力測定>
実施例1〜3および比較例1、2の電池(非水電解液を注入した辺を熱シールする前の電池)について、非水電解液を注入した辺から圧縮空気を流入させることで外装体内に圧力をかけ、外装体が開封したときの圧力を測定した。
【0069】
<貯蔵試験>
実施例1〜3および比較例1、2の電池の内部抵抗値を測定した後、各電池を60℃、相対湿度90%の雰囲気中に20日間放置し、その後に内部抵抗値を測定した。そして、貯蔵後の内部抵抗値から貯蔵前の内部抵抗値を引き、その値を貯蔵前の内部抵抗値で除して百分率で表したものを、「内部抵抗増」とした。
【0070】
【表1】

【0071】
表1から明らかなように、前記貫通する部分を形成した実施例1〜3のラミネート形リチウムイオン二次電池は、ベント部の作動圧力測定時における開封圧力が比較的低く、しかも前記貫通する部分の形成箇所で開封しており、前記貫通する部分がベント部として良好に機能した。また、実施例1〜3の電池は、貯蔵試験による内部抵抗増も比較的低く抑えられており、貯蔵特性も良好である。更に、実施例1〜3の電池については、放電特性も調べ、いずれも良好な容量、負荷特性、および充放電サイクル特性を有していることも確認した。
【0072】
これに対し、前記貫通する部分を形成していない比較例1の電池は、ベント部の作動圧力測定時における開封圧力が高く、また、一定箇所で外装体が開封しない。更に、外装体の上側の金属ラミネートフィルムだけでなく、下側の金属ラミネートフィルムにも前記貫通する部分を形成した比較例2の電池は、貯蔵試験による内部抵抗増が大きく、貯蔵特性が劣っている。
【符号の説明】
【0073】
1 ラミネート形電池
2 外装体
5 金属ラミネートフィルムに係る金属層の片面から他面まで貫通する部分
6 シート状正極
7 シート状負極
8 セパレータ
20 金属ラミネートフィルム
21 外装樹脂層
22 金属層
23 熱融着樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも金属層と熱融着樹脂層とを積層した金属ラミネートフィルムを外装体とし、前記外装体の内部に、正極外部端子が接続されたシート状正極と負極外部端子が接続されたシート状負極とセパレータとを有する電極体を収容したラミネート形電池であって、
前記外装体は、2枚の金属ラミネートフィルムにより構成されているか、または1枚の金属ラミネートフィルムを二つ折りにして構成されており、
前記正極外部端子および前記負極外部端子が外部に引き出された状態で、前記外装体の周縁部が熱シールされており、
前記外装体の周縁部における熱シール部では、重ね合わされた金属ラミネートフィルムのいずれか一方の金属ラミネートフィルムの有する金属層に、片面から他面まで貫通する部分が設けられており、前記貫通する部分をベント部としたことを特徴とするラミネート形電池。
【請求項2】
金属ラミネートフィルムの有する金属層における、片面から他面まで貫通する部分の形状が、平面視で、直線状、曲線状または直線と曲線とを組み合わせた形状である請求項1に記載のラミネート形電池。
【請求項3】
金属ラミネートフィルムの有する金属層における、片面から他面まで貫通する部分の、平面視での総長さが、3〜50mmである請求項1または2に記載のラミネート形電池。
【請求項4】
金属ラミネートフィルムの有する金属層における、片面から他面まで貫通する部分が、平面視で直線状であり、外装体の熱シール部の幅方向に略垂直な方向に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のラミネート形電池。
【請求項5】
金属ラミネートフィルムの有する金属層における、片面から他面まで貫通する部分の形状が、平面視で円または楕円状である請求項1〜3のいずれかに記載のラミネート形電池。
【請求項6】
金属ラミネートフィルムの有する金属層における、片面から他面まで貫通する部分が、熱シール部の内端から1mm以上外側に形成されている請求項1〜5のいずれかに記載のラミネート形電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−108538(P2011−108538A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263607(P2009−263607)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】