説明

ラミネート電池およびその製造方法

【課題】引出端子の曲げ容易性と曲げ部の信頼性を確保できる端子構造を持ったラミネート電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ラミネートケース2の金属箔との絶縁のため、および折り曲げ部の補強のために、引出端子の折り曲げ部およびラミネートケース2の熱溶着部を横切る部分を含むように絶縁樹脂3で引出端子1の根元部分を覆う。このとき、引出端子1の折り曲げ線5に沿って切り欠き部6を設けることで折り曲げ易く、かつ絶縁樹脂3で覆われているので折り曲げ部が切れにくいラミネート電池を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラミネート電池およびその製造方法に関し、特に、信頼性の高い端子構造を持つ小型のラミネート電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルスチールカメラなどの携帯機器用の電源として、高容量化、小型化の要求によりリチウムイオン電池が用いられている。また、電動アシスト自転車や電動工具の電源としても、高エネルギー密度で、メモリー効果の無いリチウムイオン電池が用いられている。これらの携帯機器あるいは電源においては、小型化が要求され、それに伴いリチウムイオン電池も小型化、薄型化の設計が要求されてきている。
【0003】
近年さらに、複数の平板状の正極電極および負極電極をセパレータを介して積層し、それぞれに接続した集電用タブを並列に接続し、電池のエネルギー密度からも有利であるラミネート外装材(金属箔と樹脂膜のラミネート材)を用いた積層型リチウムイオン電池が使用されるようになってきている。
【0004】
図5は、従来のラミネート電池(ラミネート材で外装された電池)の端子部の絶縁構造を示す平面図であり、1は引出端子、2はラミネートケース、3は絶縁樹脂、4は熱溶着部(封止部)、5は端子の折り曲げ線である。ラミネート電池の端子部はあらかじめ引出端子1に加工された樹脂材(絶縁樹脂3)と共に熱溶着され電池外部に樹脂材(絶縁樹脂3)が突出するように配置され電池端面のラミネート材の金属箔との絶縁が確保されている。また、特許文献1で提案されているような電池を用いる場合においても、正負極の引出端子を回路基板や保護素子または直列や並列に電池を接続し電池パックとする際には、引出端子を折り曲げて実装をしないと電池パックの小型化が実現できない。
【0005】
このような曲げを行う場合、樹脂部材で覆われた部分は弾性強度が高いため樹脂部材の端で引出端子が折れ曲ってしまい、樹脂部で曲げることは困難であった。図5の例では端子の折り曲げ線5に沿って折り曲げられる。このように樹脂部(絶縁樹脂3)の端で引出端子1を曲げた際には引出端子1の曲げ強度が低いために切断してしまう可能性があり信頼性に問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−21387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すでに説明したように、従来のラミネート電池においては、正負極の引出端子を外部で溶接する際、小型化を達成するために引出端子を折り曲げる必要があり、端子部の曲げ易さと曲げ部の信頼性を確保する点で問題があった。
【0008】
そこで本発明の課題は、引出端子の曲げ容易性と曲げ部の信頼性を確保できる端子構造を持ったラミネート電池およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のラミネート電池は、正極および負極の電極がセパレータを介して対向するように積層されてなる素電池の積層体から導出された正極および負極の集電タブが、ラミネート外装材の外部に引き出された引出端子の一端に溶接され、前記引出端子の前記ラミネート外装材の溶着部を横切る部分を含むように樹脂材で被覆されてなる端子絶縁部が形成されたラミネート電池において、前記端子絶縁部は絶縁のためと折り曲げ時の端子補強のために、前記引出端子の折り曲げ予定部を覆うように前記ラミネート外装材から所定量だけ露出して形成され、前記折り曲げ予定部の折り曲げ線に沿って前記引出端子および/または前記樹脂材に切り欠き部もしくは欠損部が形成されたことを特徴とする。
【0010】
前記端子絶縁部の引出端子に切り欠き部もしくは欠損部が設けられ、その大きさは一定値以上の電流が流れた時に溶断するように調整されるとよい。
【0011】
前記端子絶縁部の樹脂材の幅方向の両側に切り欠き部もしくは欠損部が設けられてもよい。
【0012】
前記端子絶縁部の樹脂材は電池封止に用いられるラミネート外装材と一体化していてもよい。
【0013】
前記素電池の積層体の積層構造を捲回型とするとよい。
【0014】
また、本発明のラミネート電池の製造方法は、前記ラミネート電池の製造方法であって、前記引出端子の前記折り曲げ線に沿って切り欠き部もしくは欠損部を形成する加工の後、前記樹脂材で被覆する絶縁加工を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のラミネート電池の製造方法は、前記ラミネート電池の製造方法であって、前記端子絶縁部に切り欠き部もしくは欠損部を形成する加工を前記ラミネート外装材による封止の後、前記引出端子の折り曲げの前に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ラミネート電池の正負極の引出端子を保護素子に接続する際、あるいは引出端子どうしを直列もしくは並列に接続する際に、折り曲げが容易であり、さらに折り曲げ後の引出端子部の信頼性を確保しながら電池パックの小型化が実現できる。また、引出端子に設ける切り欠き部の大きさを調整することにより電流ヒューズの機能を付加することも出来るので安全性の高いラミネート電池およびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1〜4は本発明のラミネート電池の引出端子部の構造を説明する図であり、図1は本発明の実施の形態に係る端子折り曲げ線の位置を示す平面図、図2は本発明の実施の形態1での引出端子折り曲げ部を示す平面図、図3は本発明の実施の形態2での引出端子折り曲げ部を示す平面図、図4は本発明の実施の形態3での引出端子折り曲げ部を示す平面図である。
【0019】
図2において5は端子の折り曲げ線であり、絶縁樹脂3は引出端子1の折り曲げ部を覆う形で形成されている。また、端子を折り曲げ易いように切り欠き部6が設けられている。さらに、切り欠き部6の大きさを調整することで、異常な大電流が流れた場合には、この部分が溶断し電流が遮断する機能を付加することが出来る。ところで絶縁樹脂3は図2のように熱溶着部4の内側の端を越えて伸びている方が好ましいが、熱溶着部4の内側の端まで伸びていなくても端子の折り曲げ性や信頼性は確保することが出来る。また、引出端子1を絶縁樹脂3で被覆してから、ラミネートケース2の熱溶着による封止を行うのではなく、ラミネートケース2の熱溶着前のラミネート部材と一体に絶縁樹脂3が形成されていてもよい。
【0020】
このような切り欠き部あるいは欠損部は、図3の欠損部7のように丸穴として設置してもよく、他に折り曲げ線5での引出端子1の断面積が小さくなる構造であれば形状はどのようなものでも良い。
【0021】
さらに、図4に切り欠き部8として示すように、切り欠き部を絶縁樹脂3に設けても本発明の効果は維持できる。
【0022】
次に本発明の実施の形態のラミネート電池の製造について具体的に説明する。まず、アルミニウム箔からなる正極集電体上に、正極集電体から引き出された正極集電タブ上を除き、リチウムイオンを吸蔵、放出するLiMn2O4等の正極活物質を塗布して正極集電タブが引き出された正極電極を形成する。また、銅箔からなる負極集電体上に、負極集電体から引き出された負極集電タブ上を除き、リチウムイオンを吸蔵、放出するグラファイト等の負極活物質を塗布して負極集電タブが引き出された負極電極を形成する。正負極集電タブは正極電極あるいは負極電極をそれぞれ接続し、さらに外部電極端子となる正負極の引出端子と接続するためのものである。正負極集電タブは正負極集電体を使用する場合には厚さは集電体と同じにするとよい。幅については用途により異なるが大電流に耐えられる断面積があればよい。
【0023】
正極電極、負極電極を形成した後、正極集電タブが引き出された正極電極と、負極集電タブが引き出された負極電極とを、ポリプロピレンもしくはポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層構造の多孔質膜セパレータを介して積層して素電池となる積層体を作製する。このとき、素電池である積層体の積層構造を捲回型(ジェリーロール型)にした方が小型化には適しているが、単位セルを平面上に積層した素電池を用いることもできる。
【0024】
積層体より出ている正極集電タブと負極集電タブを、それぞれ金属テープ材の正極引出端子および負極引出端子に超音波溶接あるいは抵抗溶接等の手段により接続する。
【0025】
このように引出端子を接続した積層体を、アルミニウム箔等の金属薄膜の両面に合成樹脂製フィルムを積層したラミネート材を用いて外装する。すなわち、引出端子の一部を露出させ素電池をラミミネートケースに入れ各辺を熱溶着し、最後の辺を溶着する前に電解液を入れ真空中で熱溶着し、積層型リチウムイオン電池を完成させる。このとき、引出端子の外部接続の際の折り曲げ容易性と信頼性の確保のために、端子部を次のように作製する。
【0026】
上記のように、素電池の積層体から引き出された正極集電タブおよび負極集電タブが引出端子に溶接されているが、この引出端子が電池外部で折り曲げ可能なように、すなわち折り曲げ時に引出端子とラミネート材の金属薄膜とショートしないように、端子部を絶縁加工する。さらに、樹脂絶縁部において折り曲げ易くするために、折り曲げようとする引出端子部に切り欠き部を設ける。
【0027】
この切り欠き部加工を行う時点は、(1)引出端子となる金属テープ材に切り欠き部を設け、その周辺部に絶縁樹脂を形成する場合と、(2)ラミネート材による外装が終了し、ラミネート電池の実装のために引出端子を折り曲げる前に、切り欠き部加工を行う場合がある。ところで、この絶縁樹脂は引出端子の絶縁・補強とラミネート外装材の封止部の溶着に寄与する。
【実施例】
【0028】
次に、本発明の実施例を挙げて、引出端子の折り曲げ部について詳述する。
【0029】
(実施例1)本実施例での引出端子部は図2の形状であり、正極の引出端子1は幅10mm、厚さ0.2mmのアルミニウム製であり、負極の引出端子1は幅10mm、厚さ0.2mmの銅製である。折り曲げ部は、引出端子上での厚さが0.1mmの絶縁樹脂3で被覆した。封止用の熱溶着部4は9mmの幅で設けた。絶縁樹脂3の露出部について長さは13mm、幅は17mmであり、切り欠き部6は半楕円(長径5mm、短径3mm)形状で、絶縁樹脂3の先端から6mmだけ内側に設けた。実際の作製では、まず、引出端子1に切り欠き部6を設け、次に絶縁樹脂3で被覆した。
【0030】
このような端子部の構造ゆえに、折り曲げ線5に沿った折り曲げが容易になり、また、絶縁樹脂3により被覆された部分で引出端子1を折り曲げたので、折り曲げ後の高信頼性が得られた。
【0031】
(実施例2)本実施例での引出端子部は図3の形状であり、2つの半楕円形状の切り欠き部6(図2)に代えて、1つの円形穴の欠損部7を設けたこと以外は実施例1と同様に作製した。その欠損部7の直径は5mmであり、絶縁樹脂3の先端から6mm内側に中心を持つようにした。実際の作製では、まず、引出端子1に打ち抜きにより円形の欠損部7を形成し、その後、絶縁樹脂3で引出端子1の折り曲げ部を被覆した。本実施例2においても、折り曲げの容易性と折り曲げ後の強度的な信頼性で、実施例1に匹敵する効果が得られた。なお、電池作製後、絶縁樹脂3により被覆された引出端子1に円形の打ち抜き加工を行い、絶縁樹脂3と引出端子1の両方に欠損部を設け、その後、折り曲げを行ってもよい。
【0032】
(実施例3)本実施例での引出端子部は図4の形状であり、絶縁樹脂3の幅方向の両側に半楕円形状の切り欠き部8が形成されている。このとき、絶縁樹脂の寸法は、幅(縦)17mm、横24mm、厚さ0.1mmである。なお、切り欠き部8の半楕円の寸法は、長径5mm、短径3mmであり、ラミネートケースの封止を終えた後、引出端子の外部接続の際の折り曲げの前に形成した。本実施例3においても、端子の折り曲げが容易で、折り曲げ後の機械的強度の信頼生が高い端子構造が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る端子折り曲げ線の位置を示す平面図。
【図2】本発明の実施の形態1の引出端子折り曲げ部を示す平面図。
【図3】本発明の実施の形態2の引出端子折り曲げ部を示す平面図。
【図4】本発明の実施の形態3の引出端子折り曲げ部を示す平面図。
【図5】従来のラミネート電池の端子部の絶縁構造を示す平面図。
【符号の説明】
【0034】
1 引出端子
2 ラミネートケース
3 絶縁樹脂
4 熱溶着部(封止部)
5 折り曲げ線
6、8 切り欠き部
7 欠損部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極の電極がセパレータを介して対向するように積層されてなる素電池の積層体から導出された正極および負極の集電タブが、ラミネート外装材の外部に引き出された引出端子の一端に溶接され、前記引出端子の前記ラミネート外装材の溶着部を横切る部分を含むように樹脂材で被覆されてなる端子絶縁部が形成されたラミネート電池において、前記端子絶縁部は絶縁のためと折り曲げ時の端子補強のために、前記引出端子の折り曲げ予定部を覆うように前記ラミネート外装材から所定量だけ露出して形成され、前記折り曲げ予定部の折り曲げ線に沿って前記引出端子および/または前記樹脂材に切り欠き部もしくは欠損部が形成されたことを特徴とするラミネート電池。
【請求項2】
前記端子絶縁部の引出端子に切り欠き部もしくは欠損部が設けられ、その大きさは一定値以上の電流が流れた時に溶断するように調整されたことを特徴とする請求項1記載のラミネート電池。
【請求項3】
前記端子絶縁部の樹脂材は電池封止に用いられるラミネート外装材と一体化していることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のラミネート電池。
【請求項4】
前記素電池の積層体の積層構造を捲回型としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のラミネート電池。
【請求項5】
請求項1または2記載のラミネート電池の製造方法であって、前記引出端子の前記折り曲げ線に沿って切り欠き部もしくは欠損部を形成する加工の後、前記樹脂材で被覆する絶縁加工を行うことを特徴とするラミネート電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−74387(P2012−74387A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248835(P2011−248835)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2006−167372(P2006−167372)の分割
【原出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(310010081)NECエナジーデバイス株式会社 (112)
【Fターム(参考)】