説明

ランピング時の磁気共鳴撮像システムの動作のためのシステム及び方法

【課題】コスト及び複雑性を増加させない磁気共鳴撮像(MRI)システムのランピングを提供すること。
【解決手段】ランピング時に磁気共鳴撮像(MRI)を動作させるためのシステム及び方法を提供する。一方法(30)は、マグネットランピング時にMRIシステムの冷媒容器内の圧力を低下させるステップ(32)を含む。本方法はさらに、マグネットランピングが終了した後に冷媒容器内の圧力を通常の動作圧レベルまで戻すステップ(38)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示している主題は、全般的には磁気共鳴撮像(MRI)システムに関し、またさらに詳細にはMRIシステムのランピング(ramping)に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導マグネットを有する従来のMRIシステムでは超伝導マグネットを形成する超伝導ワイヤの巻き線は、マグネットを臨界温度未満に維持するためにヘリウム容器を用いて極低温冷却されている。例えば超伝導マグネットの巻き線は、超伝導動作のための臨界温度未満の温度を維持するために液体ヘリウム浴または液体ヘリウム容器内に浸漬されている。
【0003】
MRIシステムを付勢させたとき、また具体的には超伝導マグネットを付勢させたとき(一般にランピングと呼ぶ)、導体上のローレンツ力が上昇し、これにより局在性の摩擦加熱につながる可能性があるようなワイヤの僅かな移動が生じる。発生した熱がコイルの局在的部分に過熱を生じさせ、巻き線の導体(または、ワイヤ)が超伝導特性を失い通常の抵抗性状態に遷移するゾーンである常態ゾーン(normal zone)が生成される可能性がある。この常態ゾーンはジュール熱や熱伝導のために巻き線全体に広がり、クエンチ事象を生じさせることになる。このクエンチには、マグネット巻き線をその中に浸漬させている冷媒浴から脱出したヘリウムの急速なボイルオフが伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第2005/111159 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クエンチがあるごとに、これに続いてマグネットの再充填及び再ランピングを行うことは、費用が高くつくと共に時間の無駄である。超伝導マグネットの導体は、局在性加熱の点からの常態ゾーン伝播を回避するために十分な安定度マージンを提供するように指定される。ランピング中の巻き線に関する安定度マージンは、例えば巻き線を形成するワイヤの臨界電流の増加、高導電率安定器材料の追加、あるいはワイヤの冷却の改良によって上昇させることが可能である。しかしこれらの方法によると、MRIシステムに対するコスト及び複雑性が増加する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々な実施形態に従った磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステムを制御するための方法を提供する。本方法は、マグネットランピング時にMRIシステムの冷媒容器内の圧力を低下させるステップと、マグネットランピングが終了した後に冷媒容器内の圧力を通常の動作圧レベルまで戻すステップと、を含む。
【0007】
別の実施形態では、その内部に液体冷媒を有する容器と該容器内部にある超伝導マグネットとを含んだ磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステムを提供する。この容器は、超伝導マグネットのランピング時に容器内部の圧力レベルを低下させかつ通常のマグネット動作中はその圧力レベルを通常の動作圧レベルまで戻すために容器から冷媒をポンピングするように構成された真空ポンプに対して着脱式に接続されるように構成されている。
【0008】
さらに別の実施形態では、磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステムをランピングさせるためのキットを提供する。本キットは、MRIマグネットシステムの超伝導マグネットのランピング時に容器内部の圧力レベルを低下させかつその後に圧力レベルを通常のレベルまで戻すように容器から冷媒をポンピングするために、真空ポンプと該真空ポンプをMRIマグネットシステムの容器に接続するように構成させたコネクタとを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】様々な実施形態による磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステムをランピングさせるための方法の流れ図である。
【図2】様々な実施形態をこれと連携して実現し得るようなMRIマグネットシステムを表した図である。
【図3】様々な実施形態によるマグネット付勢過程のタイムラインを表した図である。
【図4】様々な実施形態に従って形成した冷媒容器に関するマルチチェンバシステムの一実施形態を表した図である。
【図5】様々な実施形態に従って形成した冷媒容器に関するマルチチェンバシステムの一実施形態を表した図である。
【図6】様々な実施形態に従って形成した冷媒容器に関するマルチチェンバシステムの一実施形態を表した図である。
【図7】様々な実施形態に従って形成した冷媒容器に関するマルチチェンバシステムの別の実施形態を表した図である。
【図8】様々な実施形態に従って形成した冷媒容器に関するマルチチェンバシステムの別の実施形態を表した図である。
【図9】様々な実施形態に従って形成した冷媒容器に関するマルチチェンバシステムの別の実施形態を表した図である。
【図10】様々な実施形態に従って形成した冷媒容器に関するマルチチェンバシステムの一実施形態を表した図である。
【図11】様々な実施形態に従って形成した冷媒容器に関するマルチチェンバシステムの一実施形態を表した図である。
【図12】様々な実施形態に従って形成した冷媒容器に関するマルチチェンバシステムの一実施形態を表した図である。
【図13】超伝導マグネットシステムに関する温度マージン対動作温度を表したグラフである。
【図14】様々な実施形態に従って形成したマルチチェンバシステムをその内部で実現させ得るMRIシステムの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した要約、並びにある種の実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むことによってさらに十分な理解が得られよう。これらの図面が様々な実施形態の機能ブロックからなる図を表している場合も、必ずしもこれらの機能ブロックがハードウェア間で分割されることを意味するものではない。したがって例えば、1つまたは複数の機能ブロックを単一のハードウェアの形で実現させることも、複数のハードウェアの形で実現させることもあり得る。こうした様々な実施形態は図面に示した配置や手段に限定されるものではないことを理解すべきである。
【0011】
本明細書で使用する場合、単数形で「a」や「an」の語を前に付けて記載した要素や工程は、これに関する複数の要素や工程も排除していない(こうした排除を明示的に記載している場合を除く)と理解すべきである。さらに、「一実施形態」に対する言及は、記載した特徴を同様に組み込んでいる追加的な実施形態の存在を排除すると理解されるように意図したものではない。さらに特に明示的に否定する記述をしない限り、ある具体的な性状を有する1つまたは複数の構成要素を「備える(comprising)」または「有する(having)」実施形態は、こうした構成要素で当該性状を有しない追加的な構成要素も含むことがある。
【0012】
様々な実施形態は、例えばスタートアップ時にMRIシステムの超伝導マグネットのコイルまたは巻き線を付勢させることによって、磁気共鳴撮像(MRI)システムをランプアップするためのシステム及び方法を提供する。超伝導マグネットの巻き線をその内部に配置させる冷媒容器の圧力を低下させるために超伝導マグネットシステムは真空下でポンピングされる。少なくとも1つの実施形態を実施することによって、少なくとも幾つかの実施形態の技術的効果は容器内部にある冷媒(例えば、ヘリウム)の温度が低下することであり、これにより例えば摩擦性の外乱に耐えるようにまたクエンチングの可能性を低下させるようにランピング中の超伝導マグネットの安定度が高まる。さらに、少なくとも1つの実施形態を実施することによって、銅安定器の追加、臨界電流の上昇あるいは超伝導マグネットのコイルまたは巻き線の含浸などの導体に対する安定度の向上努力が不要となることがある。
【0013】
図1には、MRIシステムまたより具体的にはMRIマグネットシステムをランピングするための方法30を表している。具体的には方法30は、MRIシステムのマグネットシステムのランピング時に冷媒容器の圧力を低下させるステップ(32)を含む。本明細書で使用する場合にランピング(ramping)とは一般に、超伝導マグネットのコイルまたは巻き線の付勢を含むMRIシステムのスタートアップを意味している。冷媒容器内の圧力を低下させるような冷媒に対するランピング前ポンプダウンの実行(これについては以下でさらに詳細に説明する)などにより圧力の低下をランピングの前に開始させ、これにより温度の対応した低下を得ることもあることに留意すべきである。例えばその冷媒がヘリウムであるような一実施形態では、ランピング前及び/またはランピング中に冷媒容器の中からヘリウムガスがポンピングして出される。本明細書でより詳細に説明しているように、冷媒容器に関しては、(i)熱的に接続されたポンプダウンチェンバ、(ii)液圧式接続の(hydraulically connected)変位チェンバ、(iii)冷媒ポンプを伴うチェンバなどの様々なポンピング構成及び機構を設けることがあり得る。これらの構成及び機構は単に例示であって、冷媒容器内の圧力の低下を可能にさせるような適当な任意の方法またはシステムを使用し得ることに留意すべきである。
【0014】
幾つかの実施形態ではヘリウム容器内のヘリウムは、液体ヘリウムがヘリウムIIと呼ぶ状態にある液体ヘリウムのラムダ(λ)点未満にあるような超流体温度(例えば、約1.8ケルビン(K))までポンピングダウンされる。しかしヘリウム容器は、超流体温度と比べてより高いまたはより低い別の温度までポンピングダウンされることもある。ランピングの完了後まで(例えば、マグネットシステムが通常動作モードすなわち永続的動作モードに入る時点まで)容器はこのより低いポンピングダウンされた圧力レベルに維持される。
【0015】
冷媒容器の圧力の低下は、MRIシステムの一部を図示している図2にその全体を示したMRIマグネットシステム40と連携して実施されることがある。MRIマグネットシステム40は、液体ヘリウムなどの液体冷媒を保持している容器42を含む。したがってこの実施形態による容器42は、ヘリウム圧力容器と呼ぶこともあるヘリウム容器である。容器42は真空容器44により囲繞されると共に、任意選択ではこの内部及び/またはこれらの間に熱シールド(図示せず)を含むことがあり、この熱シールドは例えば熱隔絶用の放射シールドとすることがある。コールドヘッドスリーブ48(例えば、ハウジング)内部においてこの真空容器44を通過するようにして、様々な実施形態においてクライオクーラとするコールドヘッド46が延びている。したがってコールドヘッド46の低温端部は、真空容器44内部の真空に影響を及ぼすことなくコールドヘッドスリーブ48内部に位置決めすることができる。コールドヘッド46は、1つまたは複数のフランジ及びボルト、あるいは当技術分野で周知の別の手段など適当な任意の手段を用いてコールドヘッドスリーブ48内部に挿入されかつ確保されている。さらに真空容器44の外部に、コールドヘッド46のモータ50が設けられている。
【0016】
ヘリウム容器42の内部には様々な実施形態において超伝導コイルとしている1つまたは複数のマグネットコイル52が設けられていると共に、これがMRI画像データを収集するために本明細書でより詳細に説明しているようにしてMRIシステムの動作時に制御を受けている。さらにMRIシステムの動作時に、MRIマグネットシステム40のヘリウム容器42内部にある液体ヘリウムによって、周知のようなコイルアセンブリとして構成し得るような超伝導マグネットコイル52が冷却される。超伝導マグネットコイル52は通常の動作中(または、永続的状態にあるとき)には超伝導温度(例えば、4.2K)まで、かつ本明細書でより詳細に説明しているようなマグネットシステム40のランピング中ではこれより低い温度(例えば、超流体温度)まで冷却される。
【0017】
システム動作中における冷却過程は、ボイルオフしたヘリウムガスをヘリウム再凝縮システム54により液体に再凝縮させてヘリウム容器42に戻すことを含むことがある。ボイルオフしたヘリウムは、ヘリウム容器42を再凝縮システム54に接続している気体通路56を通過させることがあること、また再凝縮させたヘリウムは通路58を通してヘリウム容器まで戻すことがあることに留意すべきである。
【0018】
マグネットは通常の動作中は低い圧力レベルを要求することがないため、マグネットランピングが完了したか否か(すなわち、マグネットシステムがもはやランピング動作モードにないこと)に関して34において判定が実施される。例えば、マグネットシステムが通常動作モードすなわち永続的動作モードにあるか否かに関して判定が実施されることがある。この判定は、超伝導マグネットに対して付勢電流が加えられているか否かに基づいて実施されることがある。
【0019】
マグネットシステムが依然としてランピング動作モードにあると34において判定された場合、36においてその低い圧力レベルが維持される。例えば、そのヘリウムが超流体温度におけるヘリウムII状態となるように冷媒容器の圧力が維持される。マグネットシステムがもはやランピング動作モードにないと34において判定された場合、冷媒容器を38において通常の圧力に戻している。この圧力は、冷媒容器に対して液体冷媒を戻すまたは追加することによって上昇させることがある。幾つかの実施形態ではランピング動作モード後に、約4.5K(例えば、4.2K)の通常の動作温度を得るように冷媒容器内の圧力を周囲環境圧力まであるいは周囲環境圧力に近い圧力(例えば、周囲環境より4psi上)まで戻すことによってマグネットシステムを通常動作モードすなわち永続的動作モードにしている。
【0020】
したがって様々な実施形態では、ランピング中にのみ冷媒容器圧力を低下させている。コールドヘッドにより通常の動作中にゼロボイルオフの再凝縮を提供しているが、コールドヘッドは低い温度(圧力)で実質的に低下するような限られた容量を有する。このコールドヘッドの容量は、冷媒レベルを一定とした低圧力体制を通常のMRIスキャナ動作中に連続して維持するには不十分である。ランピングの開始時に例えば液体冷媒の超流体温度が提供されるように冷媒容器内の圧力を低下させるために、ランピングの前にも圧力低下を提供することがあることに留意すべきである。
【0021】
マグネット通電過程の一実施形態を表している図3のタイムライン70に示したように、72において冷媒のランピング前ポンプダウンが実行されており、この実施形態ではこれがランピング動作モードに先立って実施されるように表している。真空過程を含み得る事前ポンピングによって圧力が低下し、このために冷媒の温度が低下する。この事前ポンピングは、システムランピング手順を開始させる前に冷媒を超流体温度まで低下させることがある。この事前ポンピングは3K、2.5K、その他などのより低い別の温度を提供するように冷媒圧力を低下させることがある。
【0022】
その後、容器圧力はランピング動作モードの一部またはすべてにわたってこの低いレベルに維持され、これにより温度が低レベルに維持される。マグネットシステムが通常すなわち持続(永続的)動作モードに入った後などランピング動作モードの終了時点で、ランピング後ポンピング(あるいは、容器充填法などの別の方法)を実行し(本明細書でより詳細に説明しているように)冷媒の圧力またしたがって温度を通常の動作圧及び温度まで回復させる。冷媒容器圧力の通常の動作圧への復帰、及び/または冷媒容器圧力を通常の動作圧まで戻す処理の開始は、ランピングの終了前(例えば、ランピング終了のある所定時間前)に実施されること、ランピングの終了時点で実施されること、あるいはランピングの終了後(例えば、ランピング終了のある所定時間後)に実施されることがあり得ることに留意すべきである。
【0023】
一実施形態では図2に示すように、ヘリウム容器42にポンプ60(例えば、真空ポンプ)を接続し、ヘリウムガスをヘリウム容器42から出すように直接ポンピングすることが可能である。ポンプ60は適当な任意のポンプとすることができると共に、ヘリウム容器42への接続ための接続手段は一般にヘリウム(すなわち、冷媒)の転送を気体形態と液体形態のいずれにおいても可能とするような任意の通路としている。したがって、ヘリウムをヘリウム容器42から出すようにポンピングすると、ヘリウム容器42内のヘリウムの液位が低下し、これによりヘリウム容器内の圧力、したがってその温度が低下する。ヘリウム容器42からポンピングされる液体の量は、例えば容器の大きさや所望のまたは要求される圧力低下に基づく、あるいはヘリウム容器42内のヘリウムの温度検知デバイス(図示せず)による計測に従った目下の温度低下などの冷媒の目下の温度に基づくような所定の量とし得ることに留意すべきである。
【0024】
ポンプ60は、ヘリウム容器42からポンピングした液体ヘリウムの蓄積が可能な任意のタイプのコンテナとし得る蓄積ユニット62に接続されている。幾つかの実施形態では、ヘリウム容器42からポンピングされた液体ヘリウムを一時的に蓄積ユニット62内に蓄積し、次いでこれをランピング後にヘリウム容器42を通常の動作圧(例えば、概ね周囲環境圧力)まで回復させるために再使用する(例えば、ヘリウム容器42内に戻すように放出またはポンピングさせる)ことがある。ポンピング後のヘリウム容器42内のヘリウムのレベル低下が所望のまたは要求されるレベルになければ、ヘリウム容器42内の圧力を通常の動作圧まで回復させてサブ冷却の(sub−cooled)ヘリウムは放置し、これにポンピング前に再度(約4.2Kにある)ヘリウムを追加することがあることに留意すべきである。この再ポンピング過程は反復して実行させることがある。
【0025】
ポンピング動作を制御するために(例えば、本明細書でより詳細に説明しているようにランピング中にヘリウム容器42内部の圧力レベルを制御するために)ポンプ60に対して制御器61を接続させている。例えば制御器61は、ヘリウム容器42内の温度と圧力のそれぞれを計測するような温度検知デバイス(図示せず)または圧力検知デバイス(図示せず)に接続させることがある。したがって制御器61は、ランピング中にヘリウム容器内に圧力低下をもたらすようにポンプ60を制御することがある。制御器61は、本明細書に記載した方法30などの過程や方法のうちの1つまたは幾つか実行するように構成されることがある。
【0026】
制御器61は、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサの一部として実現させることができる。このコンピュータやプロセッサは、コンピュータ処理デバイス、入力デバイス、表示ユニット、及び例えばインターネットにアクセスするためのインタフェースを含むことがある。このコンピュータやプロセッサは、マイクロプロセッサを含むことがある。このマイクロプロセッサは、通信バスと接続させることがある。このコンピュータやプロセッサはさらにメモリを含むことがある。このメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)や読出し専用メモリ(ROM)を含むことがある。このコンピュータやプロセッサはさらに、ハードディスクドライブ、あるいはフロッピー(商標)ディスクドライブ、光ディスクドライブその他などの着脱式の記憶ドライブとし得る記憶デバイスを含むことがある。この記憶デバイスはさらに、コンピュータプログラムその他の命令をコンピュータやプロセッサにロードするための別の同様の手段とすることがある。
【0027】
本明細書で使用する場合、「コンピュータ」または「モジュール」という用語は、マイクロコントローラを用いたシステム、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、及び本明細書に記載した機能を実行可能な別の任意の回路やプロセッサを含めプロセッサベースまたはマイクロプロセッサベースの任意のシステムを含むことができる。上述の例は単に例示であり、またしたがっていかなる意味においても「コンピュータ」という用語の定義及び/または意味を限定することを意図していない。
【0028】
このコンピュータやプロセッサは、入力データを処理するために1つまたは複数の記憶素子内に格納された1組の命令を実行する。この記憶素子はさらに、所望によりまたは必要に応じて、データやその他の情報も記憶することがある。この記憶素子は情報ソースの形態とすることや、処理装置内部にある物理的な記憶素子とすることがある。
【0029】
この命令の組は、様々な実施形態の方法や過程などの指定の動作を実行するように処理装置としてのコンピュータまたはプロセッサに指令するための様々なコマンドを含むことがある。この命令の組はソフトウェアプログラムの形態とすることがある。このソフトウェアは、システムソフトウェアやアプリケーションソフトウェアなど様々な形態とすることがある。さらにこのソフトウェアは、個別のプログラムまたはモジュール、より大きなプログラムの内部のプログラムモジュール、あるいはプログラムモジュールの一部分からなる集合体の形態とすることがある。このソフトウェアはさらに、オブジェクト指向プログラミングの形態をしたモジュール型プログラミングを含むことがある。処理装置による入力データの処理は、オペレータコマンドに応答すること、以前の処理結果に応答すること、あるいは別の処理装置が発した要求に応答することがある。
【0030】
本明細書で使用する場合、「ソフトウェア」と「ファームウェア」という用語は置き換え可能であり、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ及び不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含めコンピュータによって実行するためにメモリ内に記憶された任意のコンピュータプログラムを含む。上述のメモリタイプは単に例示であり、またしたがってコンピュータプログラムの記憶に使用可能なメモリのタイプを限定するものではない。
【0031】
再度図2を参照すると、ポンプ60(及び本明細書に記載したポンプの別の実施形態)は可搬式真空ポンプなどの真空ポンプとし得ることに留意すべきである。この真空ポンプ及び圧力制御ユニットはマグネットのランピング時に現地で使用されることがあり、この際にこれらは例えば、ポンプ60、容器42、真空容器44や、ポンプ60、容器42及び真空容器44を任意に組み合わせたものの一部を形成するコネクタ63(接続ラインを含むことがある補完的接続配列など)を含み得るMRIマグネットシステム40に接続するためのキットとして設けられることや、あるいは単独の構成要素として設けられることもある。
【0032】
別の実施形態も企図される。例えば幾つかの実施形態では、マルチチェンバ(例えば、2チェンバ)システムが提供される。マルチチェンバシステムによれば液位低下を緩和することができる。以下で記載するがこれらのマルチチェンバシステムは、(i)図4〜6に示すような熱的に接続されたポンプダウンチェンバ、(ii)図7〜9に示すような液圧接続式の変位チェンバ、あるいは(iii)図10〜12に示すような冷媒ポンプを有するチェンバなどの異なるポンピング構成及び配列を有することがある。図4〜12はマルチチェンバシステムを表した簡略ブロック図であることに留意すべきである。
【0033】
図4〜6は、MRIマグネットシステム向けの冷媒容器として使用し得るマルチチェンバシステム80の軸方向断面図を表している。具体的にはマルチチェンバシステム80は、その各々が1つの単独の容器または容器チェンバを画定している2つの単独のチェンバ(すなわち、第1のチェンバ82と第2のチェンバ84)を含む。第1のチェンバ82は、1つまたは複数のコイル86(第1のチェンバ82内部の液体ヘリウム88に浸漬させた超伝導コイル)を含む。コイル86はMR撮像を可能とさせるような適当な任意の方式で構成しかつ提供し得ることに留意すべきである。
【0034】
図4に示すように第1のチェンバ82は初めはヘリウム88で完全には満たされていないことがあり、液体ヘリウム88を包含しない領域90(例えば、空隙)を含んでいる。第1のチェンバ82内のヘリウム88の量は様々とすることができ、また幾つかの実施形態では第1のチェンバ82が完全に満たされることがある。
【0035】
マルチチェンバシステム80はさらに、第2のチェンバ84に接続させたポンプ92を含む。ポンプ92は、第2のチェンバ84内へ及び/または第2のチェンバ84から冷媒をポンピングするように構成されている。
【0036】
マルチチェンバシステム80に関する図4〜6は、熱的に接続ポンプダウンチェンバを用いた様々な実施形態による冷媒容器内の圧力を低下させる過程を表している。この過程は以下のことを含むのが一般である。
【0037】
1.ポンプ92によるポンプダウンの前に、図4に示すようにチェンバ82と84の両方を温度(T)=4.2Kで圧力(p)が約100キロパスカル(kPa)の液体冷媒(例えば、液体ヘリウム)で満たす。
【0038】
2.図5に示すように第2のチェンバ84に対してp2が約5kPaでT2が約1.8Kになるまでポンプダウンを実行する(この際、第1と第2のチェンバ82と84の間のバリア(壁)が伝導性であるために第2のチェンバ84の温度(T2)は第1のチェンバ82の温度(T1)とほぼ同じになる)。ポンプダウンとこれに続く温度の低下によって液体ヘリウムの状態がHe_IからHe_IIに変化する。マグネットは、1.8K(p1が約100kPaにおいてはサブ冷却)にあるHe_II状態のコイル86でランピングを受ける。図5に示すように、第2のチェンバ84内のヘリウム88の体積は、ポンプ92によってヘリウムをポンピングし出すことによって減少している。
【0039】
3.マグネットが持続モードにある場合に図6に示すように、ヘリウム88の温度はマルチチェンバシステム80によって形成されるクライオスタット内への熱リークのために徐々に(p2→約130kPaとなりかつ2つのチェンバ82及び84の温度は概ね等しく(T1≒T2→4.5K)なるまで)上昇する。したがって、クライオクーラ動作(例えば、コールドヘッド46(図2参照)動作)に伴って平衡状態が回復される。第2のチェンバ84内の液体ヘリウム88はより低い体積レベルに維持されることがあり、あるいは再充填されることがあることに留意すべきである。
【0040】
したがって熱的に接続した2つのチェンバ82及び84は、小さい方のチェンバ(すなわち、第2のチェンバ84)に対してポンプダウンが実行されるように設けられている。様々な実施形態では、第2のチェンバ84内の圧力は第1のチェンバ82よりかなり小さい(例えば、5kPa対100kPaという)圧力レベルまで低下する。第1のチェンバ82内にあるマグネットのコイル86は周囲温度に近いサブ冷却のHe_II状態にある。ヘリウム88のレベルまたは体積は回復されるが、ヘリウム蒸気の一部はポンプダウン中に失われることがあることに留意すべきである。
【0041】
図7〜9は、MRIマグネットシステム向けの冷媒容器として使用し得るマルチチェンバシステム100の軸方向断面図を表している。具体的にはマルチチェンバシステム100は、その各々が1つの単独の容器または容器チェンバを画定している2つの単独のチェンバ(すなわち第1のチェンバ102と第2のチェンバ104)を含む。第1及び第2のチェンバ102及び104はギャップ106によって分離させることがある。第1のチェンバ102は、第1のチェンバ102内部の液体ヘリウム110内に浸漬させた超伝導コイルであるような1つまたは複数のコイル108を含む。コイル108はMR撮像を可能にさせるような適当な任意の方式で構成されかつ提供されることに留意すべきである。
【0042】
図7に示すように、第1のチェンバ102は最初にヘリウム110で完全に満たされていないことがあり、また液体ヘリウムを包含しない領域112(例えば、空隙)を含んでいる。第1のチェンバ102のヘリウムの量は様々とすることができ、また幾つかの実施形態では第1のチェンバ102が完全に満たされることがある。
【0043】
マルチチェンバシステム100はさらに、第2のチェンバ104に接続させたポンプ114を含む。ポンプ114は第2のチェンバ104内へ及び/または第2のチェンバ104から冷媒をポンピングするように構成されている。さらに第1と第2のチェンバ102と104の間にバルブ116が設けられており、これによって第1と第2のチェンバ102と104を連絡するように結合させ、これによりこれらの間の流れを許容したり防止したりすることができる。
【0044】
マルチチェンバシステム100に関する図7〜9は、液圧接続の変位チェンバを用いた様々な実施形態による冷媒容器内の圧力を低下させるための過程を表している。この過程は以下のことを含むのが一般である。
【0045】
1.ポンプ114によるポンプダウンの前に、図7に示すようにチェンバ102と104の両方を温度T=4.2Kでpが約100kPaの液体冷媒(例えば、液体ヘリウム)で満たす。バルブ116は開放状態であることに留意すべきである。
【0046】
2.図8に示すようにチェンバ102及び104の両方に対してp1=p2が約5kPaでありかつT1=T2が約1.8Kになるまでポンプダウンを実行する。マグネットは、Tが1.8Kでpが約5kPaにあるHe_II状態のコイル108でランピングを受ける。
【0047】
3.次いで第2のチェンバ104に対して、例えばバルブ116を開くことによってヘリウム110を押し出し第1のチェンバ102内のヘリウム110のレベルを回復するように圧力が加えられる(例えば、液圧式に加えられる)。この圧力を図9の矢印で表している。その後にマグネットは、Tが1.8Kでpが約5kPaにあるHe_II状態のコイル108でランピングを受ける。
【0048】
マグネットが持続モード(図示せず)にあるとき、ヘリウム110の温度及び圧力はマルチチェンバシステム100により形成されたクライオスタットへの熱リークのために徐々に(p→約130kPaにかつT→4.5Kになるまで)上昇する。したがって、クライオクーラ動作(例えば、コールドヘッド46(図2参照)動作)に伴って平衡状態が回復される。
【0049】
したがって、その各々の中の冷媒レベルが同時に低下するような液圧式チェンバ配列が提供される。ポンプダウンを実行した後、第2のチェンバ104内の圧力は上昇し、これにより残りのヘリウム110が押し出されるため第1のチェンバ102内のヘリウム110のレベルすなわち体積が回復される。ヘリウム110のレベルすなわち体積は回復するが、ヘリウム蒸気の一部はポンプダウン中に失われることがあることに留意すべきである。したがって、一方のチェンバからのポンピングをヘリウム110のレベル低下を伴わずにもう一方のチェンバがサブ冷却となるようにすることによって圧力を低下させている。
【0050】
図10〜12は、MRIマグネットシステム向けの冷媒容器として使用し得るマルチチェンバシステム120の軸方向断面図を表している。具体的にはマルチチェンバシステム120は、その各々が1つの単独容器または容器チェンバを画定している2つの単独のチェンバ(すなわち、第1のチェンバ122と第2のチェンバ124)を含む。第1及び第2のチェンバ122及び124はギャップ126によって分離させることがある。第1のチェンバ122は、この内部にある液体ヘリウム130内に浸漬させた超伝導コイルであるような1つまたは複数のコイル128を含む。コイル128はMR撮像を可能にさせるような適当な任意の方式で構成されかつ提供されることに留意すべきである。
【0051】
図10に示すように、第1のチェンバ122は最初にヘリウム130で完全に満たされていないことがあり、また液体ヘリウムを包含しない領域132(例えば、空隙)を含んでいる。第1のチェンバ122内のヘリウム量は様々とすることができ、また幾つかの実施形態では第1のチェンバ122が完全に満たされることがある。
【0052】
マルチチェンバシステム120はさらに、第1と第2のチェンバ122と124の間にバルブ136を接続させて有するポンプ134を含む。ポンプ134は、第1のチェンバ122から第2のチェンバ124まで冷媒をポンピングするように構成されている。さらに第1と第2のチェンバ122と124の間にバルブ138が設けられており、これによって第1と第2のチェンバ122と124を連絡するように結合させ、これによりこれらの間の流れを許容したり防止したりすることができる。
【0053】
マルチチェンバシステム120に関する図10〜12は、冷媒ポンプを備えたチェンバを用いた様々な実施形態による冷媒容器内の圧力を低下させるための過程を表している。この過程は以下のことを含むのが一般である。
【0054】
1.ポンプ134によるポンプダウンの前に、図10に示すように第2のチェンバ124を空にすると共に、第1のチェンバ122はT=4.2Kでpが約100kPaの液体冷媒(例えば、液体ヘリウム)で満たす。バルブ136及び138は閉鎖状態であることに留意すべきである。
【0055】
2.図11に示すように、ポンプ134は(バルブ136が開放状態のときに)第1のチェンバ122から第2のチェンバ124まで液体ヘリウム130をポンピングする。第1のチェンバ122はp1が約5kPaでありかつT1が約1.8Kであり、一方第2のチェンバ124はp2が約100kPaでありかつT2が約4.2Kである。第1のチェンバ122に対して追加のポンピングを実行することもあることに留意すべきである。マグネットは、1.8KでHe_II状態のコイル128でランピングを受ける。
【0056】
3.図12に示すようにマグネットが持続モードにあるとき、マルチチェンバシステム100により形成されたクライオスタットへの熱リークのために温度が徐々に(p2→約130kPaにかつT1≒T2→4.5Kになるまで)上昇する。したがって、クライオクーラ動作(例えば、コールドヘッド46(図2参照)動作)に伴って平衡状態が回復される。バルブ138を開けることによってヘリウム110が第2のチェンバ124から第1のチェンバ124に変位し、第1のチェンバ122内のヘリウム130の体積すなわちレベルを上昇させることがある。

したがって、閉鎖型ヘリウム配列が提供される。マルチチェンバシステム120はBarber−Nicholsポンプとし得るような液体ヘリウムポンプ134により示した内部冷凍を使用することがあり、またバルブ138に示したようなJoule−Thomson(JT)バルブを含むことがある。一実施形態では、第1のチェンバ122から第2のチェンバ124内へ液体ヘリウム130を連続してポンピングしている。ヘリウム130のうちの一部は、再度冷凍させるように第1のチェンバ122まで転送して戻されることがある。
【0057】
冷媒容器の体積を低減してランピング前のより高速なポンプダウンを可能にするために空間充填物(図示せず)を使用することもあることに留意すべきである。
【0058】
したがって様々な実施形態では、マグネットシステムランピング中にMRIシステムの冷媒容器内の圧力が低下し、これにより温度が低下する。ランピングの後にマグネットシステムが通常動作モードすなわち永続的モードで動作すると、冷媒容器は周囲環境また概ね周囲環境圧力に復帰する。したがって様々な実施形態で、例えばヘリウムI/ヘリウムII(He_I/He_II)マグネットシステムを提供することができる。
【0059】
図13には、超伝導マグネットシステムに関する温度マージン(垂直軸で示す)と動作温度(水平軸で示す)のグラフ140を示している。グラフ140において、プロット142は温度マージンを意味しまたプロット144は動作温度を意味しており、ここでライン146はラムダ点に対応し、ライン148はランピング状態に対応し、またライン149は通常の動作状態に対応している。グラフ140により以下のことが例証される。
【0060】
1.導体は、ドリフト駆動の限界である4.49K(p=4psi)において(n=45と仮定)動作電流/臨界電流(Iop/Ic)=80%を有する。
【0061】
2.動作温度(Top)が低下すると、この導体に関するIc及びΔTmargが上昇する。
【0062】
3.ΔTmargは0.7Kから3.2Kに変化し、一方Iop/Icは75%から42%に変化する。
【0063】
4.Top=4.2Kでは、3.2Kのマージンを達成することは(ゼロ電流であっても)不可能である。
【0064】
幾つかの実施形態についてMRIシステムの超伝導マグネットと連携させて説明しているが、様々な実施形態を超伝導マグネットを有する任意のタイプのシステムと連携して実現し得ることに留意すべきである。この超伝導マグネットは、別のタイプの医用撮像デバイス並びに医用以外の撮像デバイスにおいても実現することができる。
【0065】
したがってこれらの様々な実施形態は、MRIシステムの超伝導マグネットなどの異なるタイプの超伝導マグネットと連携して実現することができる。例えばこの様々な実施形態は、図13に示したMRIシステム150と一緒に使用するための超伝導マグネットにおいて実現することができる。システム150を単一モダリティの撮像システムとして例証しているが、この様々な実施形態はマルチモダリティ撮像システム内であるいはこうしたシステムと一緒に実現し得ることを理解されたい。システム150はMRI撮像システムとして例証していると共に、システム150はコンピュータ断層(CT)、陽電子放出断層(PET)、単一光子放出コンピュータ断層(SPECT)及び超音波システムなどの異なるタイプの医用撮像システム、あるいは画像(特に人間を対象とした画像)の作成が可能な別の任意のシステムと組み合わせることができる。さらにこの様々な実施形態は人を対象とした撮像のための医用撮像システムに限定されるものではなく、人以外の物体、手荷物、その他を撮像するための獣医学や非医用システムも含むことができる。
【0066】
図14を参照するとMRIシステム150は、撮像部分152と、プロセッサその他のコンピュータデバイスや制御器デバイスを含み得る処理部分154と、を含むのが一般的である。MRIシステム150は、マグネットコイル支持構造上に支持し得るコイルまたは巻き線から形成した超伝導マグネット158をガントリ156の内部に含んでいる。ヘリウム容器42(図2参照)と同様に構成し得るようなヘリウム容器160(クライオスタットとも呼ぶ)は、(超伝導コイル52(図2参照)と同様の)超伝導マグネット158を囲繞すると共に、液体ヘリウムで満たされている。本明細書でより詳細に説明しているようにランピング時おいて液体ヘリウムを使用して超伝導マグネット158を冷却すると共に、その温度を低下させることがある。
【0067】
ヘリウム容器160の外側表面と超伝導マグネット158の内側表面を囲繞して熱隔絶体162が設けられている。超伝導マグネット158の内部には複数の磁場傾斜コイル164が設けられており、またこの複数の磁場傾斜コイル164の内部にはRF送信コイル166が設けられている。幾つかの実施形態ではそのRF送信コイル166を送信/受信コイルに置き換えることがある。ガントリ156内部の構成要素によって撮像部分152の全体が形成される。超伝導マグネット158を円筒形状としているが、別の形状としたマグネットも使用可能であることに留意すべきである。
【0068】
処理部分154は、制御器168、主磁場制御170、傾斜磁場制御172、メモリ174、表示デバイス176、送信−受信(T−R)スイッチ178、RF送信器180及び受信器182を含むのが一般的である。
【0069】
動作時において撮像しようとする患者やファントームなどの対象物体は、適当な支持体(例えば、患者テーブル)上においてボア184内に配置させる。超伝導マグネット158は、ボア184を横断して均一な静主磁場B0を発生させる。ボア184内及び対応する患者内における電磁場の強度は、主磁場制御170を介して制御器168により制御されており、この制御器168はさらに超伝導マグネット158に対する付勢電流の供給も制御している。
【0070】
超伝導マグネット158内部のボア184内で磁場B0に対して直交する3つの方向x、y及びzのうちの任意の1つまたは幾つかの方向で磁場傾斜の印加を可能とさせるように、1つまたは複数の傾斜コイル素子を含む磁場傾斜コイル164が設けられている。磁場傾斜コイル164は傾斜磁場制御172により付勢されると共に、さらに制御器168によって制御されている。
【0071】
複数のコイルを含み得るRF送信コイル166は、磁気パルスの送信、及び/または任意選択でRF受信コイルとして構成した表面コイルなどの受信コイル素子も設けられている場合に、患者からのMR信号の同時検出を行うように配列させている。RF受信コイルは任意のタイプまたは構成とすること(例えば、単独の受信表面コイルとすること)ができる。この受信表面コイルはRF送信コイル166内部に設けたRFコイルからなるアレイとすることができる。
【0072】
RF送信コイル166及び受信表面コイルは、RF送信器180または受信器182のうちの一方に対してそれぞれT−Rスイッチ178によって選択的に相互接続させている。RF送信器180及びT−Rスイッチ178は、RF送信器180によってRF磁場パルスまたは信号を発生させ、患者内に磁気共鳴を励起するためにこれが患者に選択に印加されるように制御器168によって制御を受ける。RF励起パルスを患者に印加している間に、受信表面コイルを受信器182から切断するようにさらにT−Rスイッチ178を起動させている。
【0073】
RFパルスの印加に続いてT−Rスイッチ178を再度起動させ、RF送信コイル166をRF送信器180から切断すると共に、受信表面コイルを受信器182に接続させている。受信表面コイルは、患者内の励起原子核から生じたMR信号を検出すなわち検知するように動作すると共に、このMR信号を受信器182に伝達する。検出したこれらのMR信号は次いで制御器168に伝達している。制御器168はプロセッサ(例えば、画像再構成プロセッサ)を含んでおり、これにより例えば、患者画像を表した信号を発生させるためのMR信号に対する処理が制御される。
【0074】
画像を表す処理済み信号はさらに、画像の視覚表示を提供するために表示デバイス176に送られる。具体的にはこのMR信号は、観察可能な画像を得るようにフーリエ変換されたk空間を満たしまたは形成している。画像を表す処理済み信号は次いで表示デバイス176に送られる。
【0075】
上の記述は例示であって限定でないことを理解されたい。例えば上述の実施形態(及び/または、その態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。さらに、具体的な状況や材料を様々な実施形態の教示に適応させるように本趣旨を逸脱することなく多くの修正を実施することができる。本明細書に記載した材料の寸法及びタイプが様々な実施形態のパラメータを規定するように意図していても、これらは決して限定ではなく単なる例示である。上の記述を検討することにより当業者には別の多くの実施形態が明らかとなろう。様々な実施形態の範囲はしたがって、添付の特許請求の範囲、並びに本請求範囲が規定する等価物の全範囲を参照しながら決定されるべきである。添付の特許請求の範囲では、「を含む(including)」や「ようになった(in which)」という表現を「を備える(comprising)」や「であるところの(wherein)」という対応する表現に対する平易な英語表現として使用している。さらに添付の特許請求の範囲では、「第1の」、「第2の」及び「第3の」その他の表現を単にラベル付けのために使用しており、その対象に対して数値的な要件を課すことを意図したものではない。さらに、添付の特許請求の範囲の限定は手段プラス機能形式で記載しておらず、また35 U.S.C.§112、第6パラグラフに基づいて解釈されるように意図したものでもない(ただし、本特許請求の範囲の限定によって「のための手段(means for)」の表現に続いて追加的な構造に関する機能排除の記述を明示的に用いる場合を除く)。
【0076】
この記載では、様々な実施形態(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む様々な実施形態の実施を可能にするために例を使用している。様々な実施形態の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、その例が本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、その例が本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0077】
30 方法
32 マグネットシステムのランピング時に冷媒容器の圧力を低下させる
34 マグネットが持続モードにあるか?
36 低下した圧力を維持する
38 冷媒容器を通常の圧力レベルに戻す
40 MRIマグネットシステム
42 ヘリウム容器
44 真空容器
46 コールドヘッド
48 コールドヘッドスリーブ
50 モータ
52 マグネットコイル
54 ヘリウム再凝縮システム
56 通路
58 通路
60 ポンプ
61 制御器
62 蓄積ユニット
70 タイムライン
72 圧力(真空)及び冷媒温度を低下させるための冷媒に対してランピング前ポンプダウンをする
80 マルチチェンバシステム
82 チェンバ
84 チェンバ
86 コイル
88 ヘリウム
90 領域
92 ポンプ
100 マルチチェンバシステム
102 チェンバ
104 チェンバ
106 ギャップ
108 コイル
110 ヘリウム
112 領域
114 ポンプ
116 バルブ
120 マルチチェンバシステム
122 チェンバ
124 チェンバ
126 ギャップ
128 コイル
130 ヘリウム
132 領域
134 液体ヘリウムポンプ
136 バルブ
138 バルブ
140 グラフ
142 プロット
144 プロット
146 ライン
148 ライン
149 ライン
150 MRIシステム
152 撮像部分
154 処理部分
156 ガントリ
158 超伝導マグネット
160 ヘリウム容器
162 熱隔絶
164 磁場傾斜コイル
166 RF送信コイル
168 制御器
170 主磁場制御
172 傾斜磁場制御
174 メモリ
176 表示デバイス
178 T−Rスイッチ
180 RF送信器
182 受信器
184 ボア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステムを制御するための方法(30)であって、
マグネットランピング時にMRIシステムの冷媒容器内の圧力を低下させるステップ(32)と、
マグネットランピングが終了した後に冷媒容器内の圧力を通常の動作圧レベルまで戻すステップ(38)と、
を含む方法(30)。
【請求項2】
圧力を低下させる前記ステップ(32)は真空ポンプを用いて気体を冷媒容器から出すようにポンピングするステップを含む、請求項1に記載の方法(30)。
【請求項3】
圧力を戻す前記ステップ(38)は冷媒容器に気体を追加するステップを含む、請求項1に記載の方法(30)。
【請求項4】
圧力を低下させる前記ステップ(32)はマグネットランピング前に気体を冷媒容器から出すようにポンピングするステップを含む、請求項1に記載の方法(30)。
【請求項5】
前記冷媒容器は2つのチェンバを備えると共に、圧力を低下させる前記ステップ(32)は、チェンバのうちの一方内の圧力をもう一方のチェンバと比べて大幅に低い圧力レベルまで低下させるステップ、チェンバのうちの一方からの冷媒液体をもう一方のチェンバが冷媒液位を低下させることなくサブ冷却となるようにポンピングするステップ、及び一方のチェンバから液体冷媒をポンピングして出した後にもう一方のチェンバに対して圧力を加え冷媒液体を排出させて該一方のチェンバ内の冷媒液位を回復するステップのうちの1つを含む、請求項1に記載の方法(30)。
【請求項6】
前記冷媒容器は2つのチェンバを備えると共に、圧力を低下させる前記ステップ(32)は、熱接続されたポンプダウンチェンバ、液圧式接続の変位チェンバ、及び冷媒ポンプを有するチェンバのうちの1つから液体冷媒をポンピングして出すステップを含む、請求項1に記載の方法(30)。
【請求項7】
液体冷媒をその内部に有する容器(42)と、
前記容器内部にある超伝導マグネット(52)と、を備える磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステム(40)であって、前記容器は、超伝導マグネットのランピング時に該容器内部の圧力レベルを低下させかつ通常のマグネット動作中はその圧力レベルを通常の動作圧レベルまで戻すために該容器から冷媒をポンピングするように構成された真空ポンプ(60)に対して着脱式に接続されるように構成されている、磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステム(40)。
【請求項8】
前記容器(42)は、複数のチェンバ(82/84、102/104、122/124)を備えると共に、さらに該チェンバのうちの一方からの冷媒液体をもう一方のチェンバが冷媒液位を低下させることなくサブ冷却となるようにポンピングすること、一方のチェンバから液体冷媒をポンピングして出すこと、及びその後もう一方のチェンバに対して圧力を加え冷媒液体を排出させて該一方のチェンバ内の冷媒液位を回復させることのうちの1つによって圧力レベルを低下させるように構成された制御器(61)を備える、請求項7に記載のMRIマグネットシステム(40)。
【請求項9】
前記容器(42)はバルブ(116)により相互接続させた2つのチェンバ(102、104)を備えており、かつ該2つのチェンバのうちの小さい方のチェンバ(104)内の圧力レベルは該2つのチェンバのうちの大きい方のチェンバ(102)と比べて大幅に大きく低下される、請求項7に記載のMRIマグネットシステム(40)。
【請求項10】
前記容器(42)は、真空ポンプにより相互接続させた2つのチェンバを備える、請求項7に記載のMRIマグネットシステム(40)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−30071(P2012−30071A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163773(P2011−163773)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】