ランプ内で使用するための電極
本発明は、チャンバー31を取り囲む石英ガラス製外包体30を備えたランプ3で使用するための電極1であって、チャンバー31内に延設される先端部と、石英ガラス製外包体30の封止部33内に埋設される基部とを含み、その基部が、実質的に滑らかな凹面状の複数のチャネル2であって、当該電極の本体周囲に配されたチャネル2を含んでおり、1つのチャネル2のチャネル深さdchが、当該電極の直径Deに対し、好ましくは最大8%、より好ましくは最大5%、最も好ましくは最大3%の深さであることを特徴とする電極1を開示する。本発明はさらに、石英ガラス製外包体30内部にチャンバー11を備えたランプ3で使用するための、電極1の製造方法であって、電極の本体周囲に複数のチャネル2を形成し、1つのチャネル2が、チャネル側壁62と、実施的に凹面状のチャネル床部60とを含み、かつ1つのチャネル2のチャネル深さdchが、電極2の直径Deに対し、好ましくは最大8%、より好ましくは最大5%、最も好ましくは最大3%の深さとなるようになすべく、電極1の本体から材料を除去する工程を含むことを特徴とする製造方法を開示する。本発明はまた、かかる電極1を含むランプ3、およびかかるランプ3の製造方法も開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ内で使用するための電極、およびかかる電極の製造方法に関するものである。本発明はさらに、ランプ、およびランプの製造方法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体放電ランプやハロゲンランプのようなランプでは、ランプの本体は、石英ガラスで作られ、充填物を有するチャンバーまたはバーナーを内包したものとされることが多い。高輝度放電(HID)ランプのようなランプの場合、充填ガスまたは充填物は、様々な金属塩に加えて、不活性ガスを含み得る。通常はランプの封止部内に埋設されている電極は、ランプのスイッチ投入時および動作中においてその電極を流れる高電流のため、非常に高温となり得る。そのような高温の電極は、石英ガラスをも加熱し得る。石英ガラスと電極の金属線との熱膨張係数の違いは、それら2つが、加熱/冷却中において異なる率で膨張/収縮することを意味する。これらの異なる膨張および収縮率により生じる既知の問題として、石英ガラスにクラック(ひび)が生じることが知られている。これは、石英ガラスは、金属よりも膨張および収縮の度合いが低いためである。ランプの寿命中において、それらのクラックは拡大し得る。たとえば、複数の小さなクラックが拡がりかつ結合して、封止部分に、クラックで取り囲まれた「ビーズ」状の領域を形成する可能性がある。また、1つまたは複数の小さなクラックが、半径方向外側に向けて広がる1つのクラックに発展するかもしれず、かかるクラックは「半径方向拡張クラック」またはREC(radially extending crack)として知られている。ビーズ状のクラックも、RECに発展する可能性がある。かかるクラックは、最終的にはランプの破損、あるいは最悪のケースではランプの爆発に繋がる怖れもある。
【0003】
長い寿命と性能の信頼性は非常に重要な要素であり、とりわけ車載用の目的で用いられる気体放電ランプの場合には重要であるので、封止部のクラックに起因するランプ破損の問題に対する解決策を探すため、多くの取組みがなされてきている。いくつかの取組みでは、封止部内に封止される領域内において、電極周りにコイルを巻き付けることが提案されている。かかる技術は、時間も費用もかかるものであるので、実用的でない。1つのアプローチとして、米国特許出願公開2007/0103081号には、クラックが制御された態様で拡大していくようになす処理が施された、電極が記載されている。この文献は、ランプの動作中におけるビーズ状のクラックの拡大をわざと許容するための電極の処理、たとえば電極内に深いピットを形成すること、または電極の本体周りに深い溝を形成することによる処理を教示している。しかしながら、観測結果から、かかる電極内の溝は、高い割合での電極の破損の発生と因果関係があることが分かっており、そのような電極の破損は製造工程中においてさえも起こり得る。そのため、このタイプの電極の処理は、望ましい生産効率の観点からも、ランプの長寿命化の観点からも、あまり有利ではない。
【0004】
他のアプローチとして、封止部内における電極本体と石英ガラスとの間の接触個所を最小限に抑えるという思想に基づいたアプローチがある。たとえば、国際公開2008/032247号には、電極周囲に走る溝の傍らに、ブラシ毛状の突起が螺旋状に設けられるよう処理された電極により、ランプの動作中において極端な温度に最も曝されやすい封止部内の重要個所において、石英ガラスと電極との分離がもたらされた構成が記載されている。しかしながら、このタイプの電極もまた、望ましくないレベルの高い破損率と因果関係を有し、より短い寿命、および望ましくないレベルの低い生産効率を結果としてもたらす。その理由は、必要とされる程度の不活性ガスの高圧をランプ内で実現するには、製造中において、冷却工程が必要なためである。冷却は、たとえば封止部(またはランプ全体)を液体窒素浴に浸すことにより、素早く行われる。このことは、封止部において、石英ガラスと電極との双方が収縮することを意味するが、電極の方がより収縮割合が大きい。石英ガラスと電極とは、重要領域の両側において封止部内で密着しているため、電極が収縮する間、電極には軸方向の力がかかる。要するに、溝が形成された領域は、両端が固く保持されると同時に、収縮を余儀なくされる。電極本体に設けられた比較的深い溝により、電極は、ノッチを有し伸長性のある物体であるかのような挙動を呈する。このことは、冷却中において、この溝が電極本体のクラックまたは破損個所に発展する結果を招くことが多く、ランプが使用に堪えないものとなってしまう。電極本体に設けられたあらゆる深いピットまたは溝は、冷却中における破損の可能性を高めるので、米国特許出願公開2007/0103081号についても同様のことがいえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の1つの目的は、上記に概要を述べた寿命および生産効率に関連する問題を軽減するような、改善された電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、請求項1記載の電極、かかる電極の請求項8記載の製造方法、請求項12記載のランプ、およびかかるランプの請求項14記載の製造方法によって達成される。
【0007】
本発明によれば、チャンバーを取り囲む石英ガラス製外包体を備えたランプで使用するための電極であって、チャンバー内に延設される先端部と、石英ガラス製外包体の封止部内に埋設される基部とを含む電極において、上記の基部が、実質的に滑らかな凹面状の複数のチャネルであって、当該電極の本体周囲に配されたチャネルを含み、1つのチャネルのチャネル深さが、当該電極の直径に対し、最大8%、好ましくは最大5%、最も好ましくは最大3%の深さであることが特徴とされる。
【0008】
ここで、「当該電極の本体周囲に配された」との表現は、電極の長尺方向に沿った配置ではなく、電極周囲に周回状または螺旋状にチャネルが配されていることを意味するものと理解されたい。さらに、1つのチャネルが、電極周囲を複数回「包み込む」ように電極本体周囲に配されている場合も、ランプの側方に沿った任意の点から見れば、電極が複数のチャンルを含んでいるように見えるので、そのような1つのチャネルも、本願の文脈では「複数のチャネル」と捉えられるものとする。本願の文脈で「滑らかな」との用語は、チャネルの床部が、いかなる「ピット」または「穴」も有さず、そのような窪みまたはより深い領域によるチャネル床部の断絶が実質的にないことを意味する。
【0009】
本発明に係る方法の1つの明白な利点は、電極本体に形成されたチャネルにより、製造時の冷却工程中において、電極が、ノッチを有する伸長性のある物体として作用せず、したがって破断応力の形態の重大な負荷に曝されないことが保障される点である。これは、浅い凹面上の形状であるチャネル形状が、冷却中において電極にかかる三軸方向の応力に対する、電極材料の耐性を増大させるためである。これは、幅が狭く急傾斜のピッチ状とされた溝が、その溝の最深部に集中させられる三軸方向の応力のため、より破損しやすい傾向を示す、従来技術に係る溝を有する電極とは対照的である。本発明に係る電極の別の利点は、チャネル深さが比較的浅いため、チャネルの直径の減り具合が最小限に抑えられ、電極の「コア」が、依然として、冷却中において加わる力に耐えるのに十分な大きさとされる点である。これは、深い溝、または追加のピットもしくは穴といったような深さの不均一性を有する溝を持つ、従来技術に係る電極とは対照的である。これらのタイプの電極では、電極の細いコアは、上記のような力に耐えるのに十分な大きさでないことが多いので、製造時の冷却工程中において電極が破損する可能性がある。
【0010】
本発明に係る、(石英ガラス製外包体内部にチャンバーを備えた)ランプで使用するための電極の製造方法は、電極の本体周囲に実質的に滑らかな凹面状の複数のチャネルを形成し、チャネルのチャネル深さが、電極の直径に対し最大8%、より好ましくは最大5%、最も好ましくは最大3%の深さとなるようになすべく、電極の本体から材料を除去する工程を含む。ここで、「材料を除去する」との表現は、チャネルから、チャネル側方に沿った領域へと、材料を物理的に移動させることを意味する場合もあるし、たとえば蒸発させられることにより、電極材料が実際に電極本体から除去されることを意味する場合もある。
【0011】
本発明に係るランプは、チャンバーを取り囲む石英ガラス製外包体と、同チャンバー内に延設されるように配された電極の対とを含み、各電極が、石英ガラス製外包体の封止部内に、部分的に埋設されたランプである。
【0012】
本発明に係るランプの製造方法は、溶融された石英ガラスの外包体を形成する工程と、第1の電極の一部を封止部内に埋設するように、第1の封止部を形成する工程と、溶融された石英ガラス内のチャンバーに、充填物を導入する工程と、上記の第1の封止部を冷却する工程と、第2の電極の一部を埋設してかつチャンバー内に充填物を封止するように、第2の封止部を形成する工程とを含む。
【0013】
HIDランプのようなランプの製造においては、1つ目の電極が封止部内において挟持され、その状態でチャンバー内に充填物が導入された上で、チャンバーが封止される。第1の封止された挟持部を冷却することで、チャンバー内の充填物の体積は減少させられる。その後に、第2の電極を埋設し、それと同時にチャンバーの体積を所望の寸法に合わせて減らすために、第2の挟持部を形成することができる。ランプが完成すると、充填物が融解し、それに準じて圧力が増大する。
【0014】
ここで列挙した各工程は、ここに書かれた順序で行われる必要はなく、任意の適切な順序で行われ得る。本発明に係る方法の利点は、本発明に従って電極本体の周囲に配されたチャネルの幾何学形状が、充填物を封止するために封止部が高速または低速で冷却され得る冷却工程中において、異なる冷却率の結果として生じるチャネル内の三軸方向の応力に、電極がうまく耐えられるようになす点である。したがって、冷却中においてクラックが生じる電極の数を大幅に減らすことができるので、この方法は、有利なより高い生産効率およびより長い寿命に繋がる。
【0015】
従属請求項および以下の説明は、本発明のとりわけ有利な実施形態および特徴を説明している。
【0016】
電極の先端部は任意の適切な形状を有するものとされ得るが、以下の説明は、本発明を何ら限定するものではないが、電極本体は実質的にロッド状の形状であり、電極はタングステンのような適切な材料で作られていることを想定した説明となっている。
【0017】
冷却中において電極にかかる軸方向応力は、上記で述べたように、チャネルの傍らにおいて方向がそらされる。したがって、より平坦なチャネル断面は、これらの力のそらし方を改善することに繋がり得る。そのため、本発明に係る電極の1つの好ましい実施形態では、 チャネル幅とチャネル深さとの比が、最大8:1、より好ましくは最大5:1、最も好ましくは最大2:1とされる。
【0018】
チャネル床部は実質的に凹面状であるので、チャネル床部の幾何学形状は、半径または直径によって規定され得る。たとえば、かかるチャネル床部を含むチャネル部分は、円から切り出したセグメントの形状に従っていてもよい。比較的平坦な曲率を有するチャネル床部は、電極にかかる三軸方向の応力に、最もよく耐えることができ得る。したがって、本発明に係る電極のさらなる好ましい実施形態では、チャネル幅と、チャネルの床部の直径との比が、最大10:1、より好ましくは最大2.0:1、最も好ましくは最大1:1とされる。
【0019】
動作中において非常に熱くなる埋設された電極を有する石英ガラス製ランプの場合には、ランプの動作中において、電極の高い温度が石英ガラスを応力に曝し、封止部内のクラックを結果としてもたらすことが知られている。まず、たとえば箔またはコイル内に電極を包むことによって電極と石英ガラスとの間の接触面積を減らそうとすることにより、封止部内のクラックの拡がりを回避しようとする試みがなされた。しかしながら、本発明に係る電極およびランプへと繋がる実験では、石英ガラス中の極めて小さなクラックは実際には好ましいことが分かった。なぜならば、かかる極めて小さなクラックは、後段的に、電極が急激に膨張する際にガラスにかかる力のいくらかを吸収する作用をなし、したがってガラスからいくらかの応力を取り除き、大きなクラックが偶発的に拡大するのを実際には防止するためである。この理由のため、このタイプの微小クラックは、「緩和クラック」と呼ぶことができる。製造時の冷却工程中において緩和クラックをうまく「成長」させるためには、電極内におけるチャネル形成のされ方が重要な役割を果たすことが分かった。そのため、本発明に係る電極の1つの好ましい実施形態では、電極の表面と1つのチャネルとの間の移行部分において、電極材料が、複数のブラシ毛状の突起を形成するように堆積される。かかる突起または房状物は、所望の微小クラックの形成に有利に働き得る。
【0020】
本発明に係る電極の別の特に好ましい実施形態では、チャネルの側方に形成されるブラシ毛状の突起に代えて、電極の材料が、チャネルの側方に低いリッジを形成するように堆積される。実験では、この低いリッジは、製造時の冷却工程中における緩和クラックの制御された成長を可能とする、非常に良好な結果を与えることが示された。好ましくは、かかるリッジは、電極の表面と1つのチャネルとの間の移行部分において、最大20μm、より好ましくは最大10μm、最も好ましくは最大6μmの高さを有する。この材料は、チャネル形成の際に材料を移動させることにより堆積され得る。たとえば、チャネル形成工程の結果、電極材料が加熱され溶融状態に移行するのであれば、その溶融された材料が、チャネルの外縁に沿って堆積され、その後冷却および硬化されてもよい。好ましくは、電極の表面とチャネルとの間の移行部分が、わずかにラウンド状とされたリッジの形状を有するものとなるように、材料が滑らかに堆積される。
【0021】
チャネルは、様々な態様で、電極本体の周囲に配置され得る。たとえば、ロッド状の電極の場合には、各チャネルが電極本体の円形の周囲上に存在することとなるよう、互いに隣接する一連のチャネルが平行に配置されてもよい。その場合、明らかなことであるが、チャネルの中心に沿って取られた断面で計測される電極の厚みは、チャネル深さの2倍分だけ減少させられる。そのため、本発明の1つの好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのチャネルが、電極の本体周囲に螺旋状に配されるように、チャネルが形成される。かかる螺旋状のチャネルは、任意の適切な回数だけ、電極周囲を包み込むことができる。いずれの視点からみても、かかる螺旋状のチャネルは、たとえ1つのチャネルであっても、複数のチャネルであるかのように見える。明らかなことであるが、2つ以上の螺旋状のチャネルが、「ネスト状」に張り巡らされてもよい。電極表面にクロスハッチ状のパターンが与えられる場合の別のタイプの配置では、チャネル同士が交差またはクロスオーバーするように、互いに反対方向に走る複数のチャネルが包含された配置さえ採用され得る。
【0022】
上記で既に述べた理由のため、封止部内の電極本体に沿った重要領域では、石英ガラスと電極との間の接触面積を減らすことが望ましいが、一方で、電極が石英ガラスによりしっかりと保持されることを保障することも望ましい。そのため、本発明の1つのさらに好ましい実施形態では、電極の基部が、複数のチャネルを備えるように処理されたチャネル領域を含むものとされ、そのチャネル領域の少なくとも一端の側方に、電極の表面が実質的に滑らかである処理されていない領域が存在させられる。この滑らかな領域では、石英ガラスは、電極表面に十分強固に密着することができる。滑らかな領域およびチャネル領域の長さは、使用されるガラスのタイプ、電極材料、および目的のランプのタイプにより左右され得る。これらすべての要素が、ランプの動作中において到達され得る温度に寄与し、したがってガラスが受ける応力に寄与する。
【0023】
チャネルは、様々な方法で形成され得る。たとえば、チャネルは適切な切削機器を用いて切削形成され得る。しかしながら、電極ロッドは非常に細く壊れやすいため、電極を不必要に機械的な力に曝さないことが好ましい。そのため、本発明の特に好ましい1つの実施形態では、電極の材料を除去するため、またはチャネルから材料を移動させてチャネルと電極の外表面との間の境目に沿ってリッジもしくはブラシ毛状の突起を形成するために、電極の表面に向けてレーザービームを発することにより、チャネルが形成される。レーザービームは、チャネルの所望の深さを上限としてのみ材料が除去されるように、発せられることが好ましい。好ましくは、電極の表面に所望の螺旋状のチャネルが形成されるように、レーザービームが電極に向けて発せられている間、電極が回転されつつ水平移動される。
【0024】
レーザーの動作パラメータは、電極の材料が溶融状態に移行するレートを左右する。たとえば、高いパワーおよび高いパルス周波数を使うと、チャネルから材料が飛び散るように出ていく結果を招き得る。これは、ブラシ毛状の突起を形成したい場合には、望ましいかもしれない。
【0025】
あるいは、レーザービームを発生させるためのレーザーの動作パラメータは、電極材料を除去することにより形成されるチャネルの床部が、実質的に滑らかになるよう選択されてもよい。当業者であれば、所望の効果を達成するためにどのようにレーザーをセットアップすべきか分かるであろう。レーザーの動作パラメータを適切に選択することにより、電極材料を溶融状態に移行させると同時に、溶融された材料が「穏やかに」側方に押し出され、電極表面とチャネルとの間の移行領域に沿って低いリッジ状に堆積することを保障するよう、レーザービームを発生させることができる。10nsから80nsの範囲内のパルス持続時間と、10kHzと70kHzとの間の周波数とを有するパルスレーザービームを生成するように、Qスイッチ半導体レーザーを動作させることにより、好ましい結果を得ることができる。
【0026】
このように形成されたチャネルは、動作中において極めて高い電極温度に達するようなランプに利用するのに、特に適している。なぜならば、製造段階の冷却中において形成された緩和クラックが、ランプの寿命中において生じるビーズ状クラックまたはRECクラックに起因する破損から、ランプを守るためである。そのため、本発明に係るランプの1つの好ましい実施形態は、気体放電ランプとされ、電極が、200μmから500μmの範囲の直径を有するタングステンのロッドを含み、当該ランプ内において、電極の先端部がチャンバーの両側から同チャンバー内に延設され、かつ、電極の本体周囲に配されたチャネルが封止部内に封止されるように、各電極の他端が当該ランプの封止部内に埋設されるよう、電極が配される。
【0027】
本発明に係るランプを製造するには、充填物が封止部内に封止され、電極が石英ガラス内に埋設されなくてはならない。HIDランプでは、電極は、チャンバーの両側から同チャンバー内に突出し、2つの封止部が形成される。一方、ハロゲンランプでは、両方の電極が同じ側からチャンバー内に入り、単一の封止部内に埋設される。バーナーまたはチャンバー内の充填ガスが高圧下にあるHIDランプでは、製造工程中において途中まで完成したランプを液体窒素に曝露することにより、チャンバー内の充填物が凍結されることが好ましい。この液体窒素への曝露は、冷却されるべき部分に向けて液体窒素を発することによって行われてもよいし、液体窒素の「浴」に冷却されるべき部分を短時間浸けるまたは浸す形式によって行われてもよい。封止された挟持部を液体窒素で冷却することにより、充填物の不活性ガスが凍結し、結果として体積がより小さくなる。第2の挟持部を形成した後、充填物の不活性ガスは気体状態に戻る。こうすることにより、バーナー内における必要な充填ガス圧(通常は10から20barの範囲内)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】石英ガラス製ランプの封止部内に配された従来技術の電極と、冷却中に生じるタイプの封止部の種々のクラックとを示した図
【図2】従来技術の電極における溝部分の拡大概略図
【図3】ノッチを有する伸長性のある物体の模式図
【図4】製造時の冷却工程中において破損が生じた後の、図2の電極の溝部分の拡大図
【図5】本発明に係る電極の第1の実施形態の拡大概略図
【図6a】図5の電極の断面図
【図6b】本発明に係る電極の第2の実施形態の断面図
【図7】従来技術に係る溝を有する電極の、330倍の走査電子顕微鏡画像
【図8】従来技術に係る電極の溝の、1500倍の走査電子顕微鏡画像
【図9】本発明に係るチャネルを有する電極の、330倍の走査電子顕微鏡画像
【図10】本発明に係る電極のチャネルの、1500倍の走査電子顕微鏡画像
【図11】本発明に係る気体放電ランプを示した図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の他の目的および特徴は、添付の図面と共に考慮される以下の詳細な説明より明らかとなる。しかしながら、添付の図面は、純粋に説明目的で描かれたものであり、本発明の範囲を規定するものではない点を理解されたい。図面全体を通じて、類似の番号は類似のものを指す。図中の各要素は、必ずしも正しい縮尺で描かれてはいない。
【0030】
図1は、放電チャンバー41を有する、石英ガラス製の気体放電ランプ40を示している。2つの電極42が、放電チャンバー41内に突出しており、ランプ40の封止部43内に埋設されている。電極42の、封止部43内に埋設されている側の端部は、モリブデン箔47に接続されており、このモリブデン箔47はさらに引込線48に接続されている。動作中においては、電極42の先端同士の間に放電アークが確立され、電極42を電流が流れることができるように、引込線48間に電圧が印加される。電極42は、動作中において非常に熱くなり、これにより封止部43内の石英ガラスもまた熱くなる。電極を構成する金属と石英ガラスとの熱膨張挙動の違いの結果、冷却工程中だけでなく、ランプ40の寿命中においても、クラック44、45、46が封止部43内で生じ得る。最初は、小さなクラック44が生じ得る。ランプの使用経過年数が進むと共に、いくつかのより小さなビーズ状のクラック45が、半径方向に拡張するクラック46に発展し得る。とりわけ、45、46で示すようなより大きなタイプのクラックは、ランプ40の破損に繋がり得る。
【0031】
図2は、従来技術の電極50の拡大概略図である。この電極50は、封止部のモリブデン箔と放電チャンバーとの間の領域54において、いくつかの比較的深い溝51を周囲に有するよう、処理されている。この種の既知の従来技術に係る電極50では、かかる溝51の深さは、電極の直径の約10%とされる。この溝51の目的は、動作中において温度が上昇した際に、膨張する電極50により加わる機械的応力を軽減することである。溝が形成された領域54の水平方向両側にある領域55、56では、電極50の本体は滑らかな態様のままとされており、石英ガラスに密着している。しかしながら、上記の導入部で説明したように、かかる溝51は、製造中において望ましくない副作用をもたらす。実際には、深い溝51の存在のため、電極50は、冷却中においてノッチを有する伸長性のある物体としての挙動を示し、ノッチ51に結果として生じる三軸方向の応力に耐えることができない。製造時の冷却段階中において電極50に加わる力が、図3に模式的に示されている。この図において、ノッチ31を有し伸長性を有する物体30は、軸Aeに沿って加わる軸方向負荷FAに曝される。ノッチ31は、実際上物体30を弱くしてしまう。軸方向の力FAが十分強い場合には、ノッチ31は、ノッチ31の底点33を起点として、物体30の本体内のクラック32に発展してしまい、物体30が破損してしまう。この挙動は、当業者には知られており、グリフィスの基準で説明される。このグリフィスの基準は、堅いが脆い材料に関し、ノッチを有し伸長性のある物体のノッチの深さを、臨界的な張力(すなわち物体が破損するときの張力)と関連付ける。ほとんどの金属は、冷却時において堅いが脆い材料としての挙動を示すので、この基準は、上記のような電極50が冷却中に破損する傾向を説明するのにも、適用することができる。図4は、製造時の冷却工程中において破損が生じた後の、図2の電極50の拡大図を示している。軸方向の負荷FAは、電極50の軸Aeに沿って当該電極50に加えられた。この負荷FAは、溝を有する領域54の両側の領域55、56における石英ガラスと電極50の表面との間の密着力FQによるものであり、この密着力FQは、電極50が収縮する間、当該電極の領域55、56を、万力のようなグリップ態様で事実上保持していた力である。溝51が軸方向の力FAに耐えることができなかったため、溝51は、電極50の本体を走るクラック52へと発展してしまい、電極50(したがってその電極50を有するランプ)を使用に堪えないものとしてしまった。
【0032】
図5は、400μmの直径Deを有する、本発明に係る電極1の拡大概略図である。この図は、電極の表面上に螺旋状に刻まれた、U字型のチャネル2を明確に示している。図6aは、図5の電極1の断面を示しており、この図ではチャネル2の幾何学形状がより明確に示されている。ここで、チャネル2は、30μmのチャネル幅wchと、20μmのチャネル深さdchを有している。チャネルの壁は、チャネルの床部60に向かって徐々に傾いており、チャネルの床部60は、7.5μmの半径rchの曲面とされている。ここで、チャネル幅wchとチャネル深さdchとの比は、30:20すなわち1.5:1であり、チャネル幅wchとチャネル直径2rchとの比は、30:15すなわち2:1である。チャネル深さdchと電極直径Deとの比は20:400である。すなわち、チャネル深さは、電極直径の5%に過ぎない。ここで示した寸法は単なる例であり、当然ながら、他の寸法も可能である。たとえば、400μmの直径を有する電極に対し、チャネル深さが6μmであれば、チャネル深さdchと電極の直径Deとの比は、6:400、すなわち約1.5%となる。冷却中における破損に対する電極の耐性を高めるためには、各寸法が、上記で既に述べたような関係を満足していることのみが重要である。図6bは、本発明に係る電極1の別の実施形態を示している。この実施形態では、電極1の材料が、レーザー処理工程において変換または変形させられ、チャネル2と電極の外表面との間の移行部分に沿って、ブラシ毛状またはブラシ状の一連の突起63が設けられている。
【0033】
図7は、従来技術に係る溝を有する電極70の、330倍の走査電子顕微鏡画像を示している。溝71は、電極70の表面より、レーザービームによって「掘り開かれて」いる。電極70の材料は、溝71を形成するように移動させられ、図8(1つの溝71の1500倍の画像)に示すように、溝71の両側にはっきりと盛り上がった壁72を形成するよう堆積されている。さらに、溝71は、はっきりと見て取れる「ピット」73または深い穴73を有する。これらのピット73はいずれも、電極70が製造中に冷却される際に、電極70がノッチを有する伸長性のある物体としての挙動を示す事態を招き得る。そして、上記で述べたような電極70の破損に寄与し、電極70が製造工程を問題なく終えることを阻みかねない。
【0034】
これに対し、図9は、本発明に係るチャネル2を有する電極1の、やはり330倍の走査電子顕微鏡画像を示している。この画像は、図7および8に示した従来技術に係る溝を有する電極と異なり、チャネル2が滑らかに形成されており、チャネル2の底面すなわち床部にピットや特筆すべき凹凸が存在しないことを、明確に示している。このことは、本発明に係る電極1に存在する1つのチャネル2の1500倍の画像である、図10により詳細に示されている。この画像はまた、チャネル2の両側に存在する、望ましい構成である低いリッジ61を示している。チャネルの床部62は、滑らかすなわち均一であることが明らかに見て取れる。チャネルの床部には、ノッチとして作用し得る「ピット」、「穴」またはその他の類似の不均一さが実質的に存在しないので、チャネル2の存在により、この本発明の電極1は、製造時の冷却中において破損を被る可能性がずっと低くなる。したがって、生産効率を向上させることができる。
【0035】
図11は、石英ガラスの外包体30から作られており、放電チャンバー31内に先端が延設されている1対の電極1を有する、本発明に係る気体放電ランプ3を示している。各電極1の基部は、封止部33内で保持されている。上記で述べた任意の技術を用いて作られたチャネル2は、この図では単に傾斜した平行な複数の線として描かれているが、浅く、かつ実質的に凹面状のチャネル2である。製造時の冷却工程中において、石英ガラスと、電極を構成する金属とは、異なるレートで冷却され得る。したがって、異なる収縮率で収縮させられ得る。チャネル2の好適な幾何学形状は、この図では明確さのために拡大して示してある微小クラック34すなわち緩和クラック34を、制御された態様で形成することを可能にする。これらの緩和クラック34は、結果的にRECを招くような、偶発的な大きなビーズ状クラックの形成を、防止または抑制する。
【0036】
以上、図面および上記の説明において、本発明を詳細に図解および説明してきたが、かかる図解および説明は、説明目的または例示目的のものとして捉えられるべきであり、限定目的のものとして捉えられるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する他の変更形態は、当業者であれば、図面、明細書および特許請求の範囲を読むことにより、理解でき実施できるであろう。念のため明示しておくが、本願全体を通じて「1つの」との語の使用は複数であることを排除するものではなく、「含む」または「備える」との語の使用は他の工程または要素の存在を排除するものではない。特定の施策が単に互いに異なる従属請求項に記載されているという事実は、それらの施策の組合せを有利に利用することができない旨を示すものではない。特許請求の範囲中にある参照符号はいずれも、本発明の技術的範囲を限定するものと捉えられるべきではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ内で使用するための電極、およびかかる電極の製造方法に関するものである。本発明はさらに、ランプ、およびランプの製造方法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体放電ランプやハロゲンランプのようなランプでは、ランプの本体は、石英ガラスで作られ、充填物を有するチャンバーまたはバーナーを内包したものとされることが多い。高輝度放電(HID)ランプのようなランプの場合、充填ガスまたは充填物は、様々な金属塩に加えて、不活性ガスを含み得る。通常はランプの封止部内に埋設されている電極は、ランプのスイッチ投入時および動作中においてその電極を流れる高電流のため、非常に高温となり得る。そのような高温の電極は、石英ガラスをも加熱し得る。石英ガラスと電極の金属線との熱膨張係数の違いは、それら2つが、加熱/冷却中において異なる率で膨張/収縮することを意味する。これらの異なる膨張および収縮率により生じる既知の問題として、石英ガラスにクラック(ひび)が生じることが知られている。これは、石英ガラスは、金属よりも膨張および収縮の度合いが低いためである。ランプの寿命中において、それらのクラックは拡大し得る。たとえば、複数の小さなクラックが拡がりかつ結合して、封止部分に、クラックで取り囲まれた「ビーズ」状の領域を形成する可能性がある。また、1つまたは複数の小さなクラックが、半径方向外側に向けて広がる1つのクラックに発展するかもしれず、かかるクラックは「半径方向拡張クラック」またはREC(radially extending crack)として知られている。ビーズ状のクラックも、RECに発展する可能性がある。かかるクラックは、最終的にはランプの破損、あるいは最悪のケースではランプの爆発に繋がる怖れもある。
【0003】
長い寿命と性能の信頼性は非常に重要な要素であり、とりわけ車載用の目的で用いられる気体放電ランプの場合には重要であるので、封止部のクラックに起因するランプ破損の問題に対する解決策を探すため、多くの取組みがなされてきている。いくつかの取組みでは、封止部内に封止される領域内において、電極周りにコイルを巻き付けることが提案されている。かかる技術は、時間も費用もかかるものであるので、実用的でない。1つのアプローチとして、米国特許出願公開2007/0103081号には、クラックが制御された態様で拡大していくようになす処理が施された、電極が記載されている。この文献は、ランプの動作中におけるビーズ状のクラックの拡大をわざと許容するための電極の処理、たとえば電極内に深いピットを形成すること、または電極の本体周りに深い溝を形成することによる処理を教示している。しかしながら、観測結果から、かかる電極内の溝は、高い割合での電極の破損の発生と因果関係があることが分かっており、そのような電極の破損は製造工程中においてさえも起こり得る。そのため、このタイプの電極の処理は、望ましい生産効率の観点からも、ランプの長寿命化の観点からも、あまり有利ではない。
【0004】
他のアプローチとして、封止部内における電極本体と石英ガラスとの間の接触個所を最小限に抑えるという思想に基づいたアプローチがある。たとえば、国際公開2008/032247号には、電極周囲に走る溝の傍らに、ブラシ毛状の突起が螺旋状に設けられるよう処理された電極により、ランプの動作中において極端な温度に最も曝されやすい封止部内の重要個所において、石英ガラスと電極との分離がもたらされた構成が記載されている。しかしながら、このタイプの電極もまた、望ましくないレベルの高い破損率と因果関係を有し、より短い寿命、および望ましくないレベルの低い生産効率を結果としてもたらす。その理由は、必要とされる程度の不活性ガスの高圧をランプ内で実現するには、製造中において、冷却工程が必要なためである。冷却は、たとえば封止部(またはランプ全体)を液体窒素浴に浸すことにより、素早く行われる。このことは、封止部において、石英ガラスと電極との双方が収縮することを意味するが、電極の方がより収縮割合が大きい。石英ガラスと電極とは、重要領域の両側において封止部内で密着しているため、電極が収縮する間、電極には軸方向の力がかかる。要するに、溝が形成された領域は、両端が固く保持されると同時に、収縮を余儀なくされる。電極本体に設けられた比較的深い溝により、電極は、ノッチを有し伸長性のある物体であるかのような挙動を呈する。このことは、冷却中において、この溝が電極本体のクラックまたは破損個所に発展する結果を招くことが多く、ランプが使用に堪えないものとなってしまう。電極本体に設けられたあらゆる深いピットまたは溝は、冷却中における破損の可能性を高めるので、米国特許出願公開2007/0103081号についても同様のことがいえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の1つの目的は、上記に概要を述べた寿命および生産効率に関連する問題を軽減するような、改善された電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、請求項1記載の電極、かかる電極の請求項8記載の製造方法、請求項12記載のランプ、およびかかるランプの請求項14記載の製造方法によって達成される。
【0007】
本発明によれば、チャンバーを取り囲む石英ガラス製外包体を備えたランプで使用するための電極であって、チャンバー内に延設される先端部と、石英ガラス製外包体の封止部内に埋設される基部とを含む電極において、上記の基部が、実質的に滑らかな凹面状の複数のチャネルであって、当該電極の本体周囲に配されたチャネルを含み、1つのチャネルのチャネル深さが、当該電極の直径に対し、最大8%、好ましくは最大5%、最も好ましくは最大3%の深さであることが特徴とされる。
【0008】
ここで、「当該電極の本体周囲に配された」との表現は、電極の長尺方向に沿った配置ではなく、電極周囲に周回状または螺旋状にチャネルが配されていることを意味するものと理解されたい。さらに、1つのチャネルが、電極周囲を複数回「包み込む」ように電極本体周囲に配されている場合も、ランプの側方に沿った任意の点から見れば、電極が複数のチャンルを含んでいるように見えるので、そのような1つのチャネルも、本願の文脈では「複数のチャネル」と捉えられるものとする。本願の文脈で「滑らかな」との用語は、チャネルの床部が、いかなる「ピット」または「穴」も有さず、そのような窪みまたはより深い領域によるチャネル床部の断絶が実質的にないことを意味する。
【0009】
本発明に係る方法の1つの明白な利点は、電極本体に形成されたチャネルにより、製造時の冷却工程中において、電極が、ノッチを有する伸長性のある物体として作用せず、したがって破断応力の形態の重大な負荷に曝されないことが保障される点である。これは、浅い凹面上の形状であるチャネル形状が、冷却中において電極にかかる三軸方向の応力に対する、電極材料の耐性を増大させるためである。これは、幅が狭く急傾斜のピッチ状とされた溝が、その溝の最深部に集中させられる三軸方向の応力のため、より破損しやすい傾向を示す、従来技術に係る溝を有する電極とは対照的である。本発明に係る電極の別の利点は、チャネル深さが比較的浅いため、チャネルの直径の減り具合が最小限に抑えられ、電極の「コア」が、依然として、冷却中において加わる力に耐えるのに十分な大きさとされる点である。これは、深い溝、または追加のピットもしくは穴といったような深さの不均一性を有する溝を持つ、従来技術に係る電極とは対照的である。これらのタイプの電極では、電極の細いコアは、上記のような力に耐えるのに十分な大きさでないことが多いので、製造時の冷却工程中において電極が破損する可能性がある。
【0010】
本発明に係る、(石英ガラス製外包体内部にチャンバーを備えた)ランプで使用するための電極の製造方法は、電極の本体周囲に実質的に滑らかな凹面状の複数のチャネルを形成し、チャネルのチャネル深さが、電極の直径に対し最大8%、より好ましくは最大5%、最も好ましくは最大3%の深さとなるようになすべく、電極の本体から材料を除去する工程を含む。ここで、「材料を除去する」との表現は、チャネルから、チャネル側方に沿った領域へと、材料を物理的に移動させることを意味する場合もあるし、たとえば蒸発させられることにより、電極材料が実際に電極本体から除去されることを意味する場合もある。
【0011】
本発明に係るランプは、チャンバーを取り囲む石英ガラス製外包体と、同チャンバー内に延設されるように配された電極の対とを含み、各電極が、石英ガラス製外包体の封止部内に、部分的に埋設されたランプである。
【0012】
本発明に係るランプの製造方法は、溶融された石英ガラスの外包体を形成する工程と、第1の電極の一部を封止部内に埋設するように、第1の封止部を形成する工程と、溶融された石英ガラス内のチャンバーに、充填物を導入する工程と、上記の第1の封止部を冷却する工程と、第2の電極の一部を埋設してかつチャンバー内に充填物を封止するように、第2の封止部を形成する工程とを含む。
【0013】
HIDランプのようなランプの製造においては、1つ目の電極が封止部内において挟持され、その状態でチャンバー内に充填物が導入された上で、チャンバーが封止される。第1の封止された挟持部を冷却することで、チャンバー内の充填物の体積は減少させられる。その後に、第2の電極を埋設し、それと同時にチャンバーの体積を所望の寸法に合わせて減らすために、第2の挟持部を形成することができる。ランプが完成すると、充填物が融解し、それに準じて圧力が増大する。
【0014】
ここで列挙した各工程は、ここに書かれた順序で行われる必要はなく、任意の適切な順序で行われ得る。本発明に係る方法の利点は、本発明に従って電極本体の周囲に配されたチャネルの幾何学形状が、充填物を封止するために封止部が高速または低速で冷却され得る冷却工程中において、異なる冷却率の結果として生じるチャネル内の三軸方向の応力に、電極がうまく耐えられるようになす点である。したがって、冷却中においてクラックが生じる電極の数を大幅に減らすことができるので、この方法は、有利なより高い生産効率およびより長い寿命に繋がる。
【0015】
従属請求項および以下の説明は、本発明のとりわけ有利な実施形態および特徴を説明している。
【0016】
電極の先端部は任意の適切な形状を有するものとされ得るが、以下の説明は、本発明を何ら限定するものではないが、電極本体は実質的にロッド状の形状であり、電極はタングステンのような適切な材料で作られていることを想定した説明となっている。
【0017】
冷却中において電極にかかる軸方向応力は、上記で述べたように、チャネルの傍らにおいて方向がそらされる。したがって、より平坦なチャネル断面は、これらの力のそらし方を改善することに繋がり得る。そのため、本発明に係る電極の1つの好ましい実施形態では、 チャネル幅とチャネル深さとの比が、最大8:1、より好ましくは最大5:1、最も好ましくは最大2:1とされる。
【0018】
チャネル床部は実質的に凹面状であるので、チャネル床部の幾何学形状は、半径または直径によって規定され得る。たとえば、かかるチャネル床部を含むチャネル部分は、円から切り出したセグメントの形状に従っていてもよい。比較的平坦な曲率を有するチャネル床部は、電極にかかる三軸方向の応力に、最もよく耐えることができ得る。したがって、本発明に係る電極のさらなる好ましい実施形態では、チャネル幅と、チャネルの床部の直径との比が、最大10:1、より好ましくは最大2.0:1、最も好ましくは最大1:1とされる。
【0019】
動作中において非常に熱くなる埋設された電極を有する石英ガラス製ランプの場合には、ランプの動作中において、電極の高い温度が石英ガラスを応力に曝し、封止部内のクラックを結果としてもたらすことが知られている。まず、たとえば箔またはコイル内に電極を包むことによって電極と石英ガラスとの間の接触面積を減らそうとすることにより、封止部内のクラックの拡がりを回避しようとする試みがなされた。しかしながら、本発明に係る電極およびランプへと繋がる実験では、石英ガラス中の極めて小さなクラックは実際には好ましいことが分かった。なぜならば、かかる極めて小さなクラックは、後段的に、電極が急激に膨張する際にガラスにかかる力のいくらかを吸収する作用をなし、したがってガラスからいくらかの応力を取り除き、大きなクラックが偶発的に拡大するのを実際には防止するためである。この理由のため、このタイプの微小クラックは、「緩和クラック」と呼ぶことができる。製造時の冷却工程中において緩和クラックをうまく「成長」させるためには、電極内におけるチャネル形成のされ方が重要な役割を果たすことが分かった。そのため、本発明に係る電極の1つの好ましい実施形態では、電極の表面と1つのチャネルとの間の移行部分において、電極材料が、複数のブラシ毛状の突起を形成するように堆積される。かかる突起または房状物は、所望の微小クラックの形成に有利に働き得る。
【0020】
本発明に係る電極の別の特に好ましい実施形態では、チャネルの側方に形成されるブラシ毛状の突起に代えて、電極の材料が、チャネルの側方に低いリッジを形成するように堆積される。実験では、この低いリッジは、製造時の冷却工程中における緩和クラックの制御された成長を可能とする、非常に良好な結果を与えることが示された。好ましくは、かかるリッジは、電極の表面と1つのチャネルとの間の移行部分において、最大20μm、より好ましくは最大10μm、最も好ましくは最大6μmの高さを有する。この材料は、チャネル形成の際に材料を移動させることにより堆積され得る。たとえば、チャネル形成工程の結果、電極材料が加熱され溶融状態に移行するのであれば、その溶融された材料が、チャネルの外縁に沿って堆積され、その後冷却および硬化されてもよい。好ましくは、電極の表面とチャネルとの間の移行部分が、わずかにラウンド状とされたリッジの形状を有するものとなるように、材料が滑らかに堆積される。
【0021】
チャネルは、様々な態様で、電極本体の周囲に配置され得る。たとえば、ロッド状の電極の場合には、各チャネルが電極本体の円形の周囲上に存在することとなるよう、互いに隣接する一連のチャネルが平行に配置されてもよい。その場合、明らかなことであるが、チャネルの中心に沿って取られた断面で計測される電極の厚みは、チャネル深さの2倍分だけ減少させられる。そのため、本発明の1つの好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのチャネルが、電極の本体周囲に螺旋状に配されるように、チャネルが形成される。かかる螺旋状のチャネルは、任意の適切な回数だけ、電極周囲を包み込むことができる。いずれの視点からみても、かかる螺旋状のチャネルは、たとえ1つのチャネルであっても、複数のチャネルであるかのように見える。明らかなことであるが、2つ以上の螺旋状のチャネルが、「ネスト状」に張り巡らされてもよい。電極表面にクロスハッチ状のパターンが与えられる場合の別のタイプの配置では、チャネル同士が交差またはクロスオーバーするように、互いに反対方向に走る複数のチャネルが包含された配置さえ採用され得る。
【0022】
上記で既に述べた理由のため、封止部内の電極本体に沿った重要領域では、石英ガラスと電極との間の接触面積を減らすことが望ましいが、一方で、電極が石英ガラスによりしっかりと保持されることを保障することも望ましい。そのため、本発明の1つのさらに好ましい実施形態では、電極の基部が、複数のチャネルを備えるように処理されたチャネル領域を含むものとされ、そのチャネル領域の少なくとも一端の側方に、電極の表面が実質的に滑らかである処理されていない領域が存在させられる。この滑らかな領域では、石英ガラスは、電極表面に十分強固に密着することができる。滑らかな領域およびチャネル領域の長さは、使用されるガラスのタイプ、電極材料、および目的のランプのタイプにより左右され得る。これらすべての要素が、ランプの動作中において到達され得る温度に寄与し、したがってガラスが受ける応力に寄与する。
【0023】
チャネルは、様々な方法で形成され得る。たとえば、チャネルは適切な切削機器を用いて切削形成され得る。しかしながら、電極ロッドは非常に細く壊れやすいため、電極を不必要に機械的な力に曝さないことが好ましい。そのため、本発明の特に好ましい1つの実施形態では、電極の材料を除去するため、またはチャネルから材料を移動させてチャネルと電極の外表面との間の境目に沿ってリッジもしくはブラシ毛状の突起を形成するために、電極の表面に向けてレーザービームを発することにより、チャネルが形成される。レーザービームは、チャネルの所望の深さを上限としてのみ材料が除去されるように、発せられることが好ましい。好ましくは、電極の表面に所望の螺旋状のチャネルが形成されるように、レーザービームが電極に向けて発せられている間、電極が回転されつつ水平移動される。
【0024】
レーザーの動作パラメータは、電極の材料が溶融状態に移行するレートを左右する。たとえば、高いパワーおよび高いパルス周波数を使うと、チャネルから材料が飛び散るように出ていく結果を招き得る。これは、ブラシ毛状の突起を形成したい場合には、望ましいかもしれない。
【0025】
あるいは、レーザービームを発生させるためのレーザーの動作パラメータは、電極材料を除去することにより形成されるチャネルの床部が、実質的に滑らかになるよう選択されてもよい。当業者であれば、所望の効果を達成するためにどのようにレーザーをセットアップすべきか分かるであろう。レーザーの動作パラメータを適切に選択することにより、電極材料を溶融状態に移行させると同時に、溶融された材料が「穏やかに」側方に押し出され、電極表面とチャネルとの間の移行領域に沿って低いリッジ状に堆積することを保障するよう、レーザービームを発生させることができる。10nsから80nsの範囲内のパルス持続時間と、10kHzと70kHzとの間の周波数とを有するパルスレーザービームを生成するように、Qスイッチ半導体レーザーを動作させることにより、好ましい結果を得ることができる。
【0026】
このように形成されたチャネルは、動作中において極めて高い電極温度に達するようなランプに利用するのに、特に適している。なぜならば、製造段階の冷却中において形成された緩和クラックが、ランプの寿命中において生じるビーズ状クラックまたはRECクラックに起因する破損から、ランプを守るためである。そのため、本発明に係るランプの1つの好ましい実施形態は、気体放電ランプとされ、電極が、200μmから500μmの範囲の直径を有するタングステンのロッドを含み、当該ランプ内において、電極の先端部がチャンバーの両側から同チャンバー内に延設され、かつ、電極の本体周囲に配されたチャネルが封止部内に封止されるように、各電極の他端が当該ランプの封止部内に埋設されるよう、電極が配される。
【0027】
本発明に係るランプを製造するには、充填物が封止部内に封止され、電極が石英ガラス内に埋設されなくてはならない。HIDランプでは、電極は、チャンバーの両側から同チャンバー内に突出し、2つの封止部が形成される。一方、ハロゲンランプでは、両方の電極が同じ側からチャンバー内に入り、単一の封止部内に埋設される。バーナーまたはチャンバー内の充填ガスが高圧下にあるHIDランプでは、製造工程中において途中まで完成したランプを液体窒素に曝露することにより、チャンバー内の充填物が凍結されることが好ましい。この液体窒素への曝露は、冷却されるべき部分に向けて液体窒素を発することによって行われてもよいし、液体窒素の「浴」に冷却されるべき部分を短時間浸けるまたは浸す形式によって行われてもよい。封止された挟持部を液体窒素で冷却することにより、充填物の不活性ガスが凍結し、結果として体積がより小さくなる。第2の挟持部を形成した後、充填物の不活性ガスは気体状態に戻る。こうすることにより、バーナー内における必要な充填ガス圧(通常は10から20barの範囲内)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】石英ガラス製ランプの封止部内に配された従来技術の電極と、冷却中に生じるタイプの封止部の種々のクラックとを示した図
【図2】従来技術の電極における溝部分の拡大概略図
【図3】ノッチを有する伸長性のある物体の模式図
【図4】製造時の冷却工程中において破損が生じた後の、図2の電極の溝部分の拡大図
【図5】本発明に係る電極の第1の実施形態の拡大概略図
【図6a】図5の電極の断面図
【図6b】本発明に係る電極の第2の実施形態の断面図
【図7】従来技術に係る溝を有する電極の、330倍の走査電子顕微鏡画像
【図8】従来技術に係る電極の溝の、1500倍の走査電子顕微鏡画像
【図9】本発明に係るチャネルを有する電極の、330倍の走査電子顕微鏡画像
【図10】本発明に係る電極のチャネルの、1500倍の走査電子顕微鏡画像
【図11】本発明に係る気体放電ランプを示した図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の他の目的および特徴は、添付の図面と共に考慮される以下の詳細な説明より明らかとなる。しかしながら、添付の図面は、純粋に説明目的で描かれたものであり、本発明の範囲を規定するものではない点を理解されたい。図面全体を通じて、類似の番号は類似のものを指す。図中の各要素は、必ずしも正しい縮尺で描かれてはいない。
【0030】
図1は、放電チャンバー41を有する、石英ガラス製の気体放電ランプ40を示している。2つの電極42が、放電チャンバー41内に突出しており、ランプ40の封止部43内に埋設されている。電極42の、封止部43内に埋設されている側の端部は、モリブデン箔47に接続されており、このモリブデン箔47はさらに引込線48に接続されている。動作中においては、電極42の先端同士の間に放電アークが確立され、電極42を電流が流れることができるように、引込線48間に電圧が印加される。電極42は、動作中において非常に熱くなり、これにより封止部43内の石英ガラスもまた熱くなる。電極を構成する金属と石英ガラスとの熱膨張挙動の違いの結果、冷却工程中だけでなく、ランプ40の寿命中においても、クラック44、45、46が封止部43内で生じ得る。最初は、小さなクラック44が生じ得る。ランプの使用経過年数が進むと共に、いくつかのより小さなビーズ状のクラック45が、半径方向に拡張するクラック46に発展し得る。とりわけ、45、46で示すようなより大きなタイプのクラックは、ランプ40の破損に繋がり得る。
【0031】
図2は、従来技術の電極50の拡大概略図である。この電極50は、封止部のモリブデン箔と放電チャンバーとの間の領域54において、いくつかの比較的深い溝51を周囲に有するよう、処理されている。この種の既知の従来技術に係る電極50では、かかる溝51の深さは、電極の直径の約10%とされる。この溝51の目的は、動作中において温度が上昇した際に、膨張する電極50により加わる機械的応力を軽減することである。溝が形成された領域54の水平方向両側にある領域55、56では、電極50の本体は滑らかな態様のままとされており、石英ガラスに密着している。しかしながら、上記の導入部で説明したように、かかる溝51は、製造中において望ましくない副作用をもたらす。実際には、深い溝51の存在のため、電極50は、冷却中においてノッチを有する伸長性のある物体としての挙動を示し、ノッチ51に結果として生じる三軸方向の応力に耐えることができない。製造時の冷却段階中において電極50に加わる力が、図3に模式的に示されている。この図において、ノッチ31を有し伸長性を有する物体30は、軸Aeに沿って加わる軸方向負荷FAに曝される。ノッチ31は、実際上物体30を弱くしてしまう。軸方向の力FAが十分強い場合には、ノッチ31は、ノッチ31の底点33を起点として、物体30の本体内のクラック32に発展してしまい、物体30が破損してしまう。この挙動は、当業者には知られており、グリフィスの基準で説明される。このグリフィスの基準は、堅いが脆い材料に関し、ノッチを有し伸長性のある物体のノッチの深さを、臨界的な張力(すなわち物体が破損するときの張力)と関連付ける。ほとんどの金属は、冷却時において堅いが脆い材料としての挙動を示すので、この基準は、上記のような電極50が冷却中に破損する傾向を説明するのにも、適用することができる。図4は、製造時の冷却工程中において破損が生じた後の、図2の電極50の拡大図を示している。軸方向の負荷FAは、電極50の軸Aeに沿って当該電極50に加えられた。この負荷FAは、溝を有する領域54の両側の領域55、56における石英ガラスと電極50の表面との間の密着力FQによるものであり、この密着力FQは、電極50が収縮する間、当該電極の領域55、56を、万力のようなグリップ態様で事実上保持していた力である。溝51が軸方向の力FAに耐えることができなかったため、溝51は、電極50の本体を走るクラック52へと発展してしまい、電極50(したがってその電極50を有するランプ)を使用に堪えないものとしてしまった。
【0032】
図5は、400μmの直径Deを有する、本発明に係る電極1の拡大概略図である。この図は、電極の表面上に螺旋状に刻まれた、U字型のチャネル2を明確に示している。図6aは、図5の電極1の断面を示しており、この図ではチャネル2の幾何学形状がより明確に示されている。ここで、チャネル2は、30μmのチャネル幅wchと、20μmのチャネル深さdchを有している。チャネルの壁は、チャネルの床部60に向かって徐々に傾いており、チャネルの床部60は、7.5μmの半径rchの曲面とされている。ここで、チャネル幅wchとチャネル深さdchとの比は、30:20すなわち1.5:1であり、チャネル幅wchとチャネル直径2rchとの比は、30:15すなわち2:1である。チャネル深さdchと電極直径Deとの比は20:400である。すなわち、チャネル深さは、電極直径の5%に過ぎない。ここで示した寸法は単なる例であり、当然ながら、他の寸法も可能である。たとえば、400μmの直径を有する電極に対し、チャネル深さが6μmであれば、チャネル深さdchと電極の直径Deとの比は、6:400、すなわち約1.5%となる。冷却中における破損に対する電極の耐性を高めるためには、各寸法が、上記で既に述べたような関係を満足していることのみが重要である。図6bは、本発明に係る電極1の別の実施形態を示している。この実施形態では、電極1の材料が、レーザー処理工程において変換または変形させられ、チャネル2と電極の外表面との間の移行部分に沿って、ブラシ毛状またはブラシ状の一連の突起63が設けられている。
【0033】
図7は、従来技術に係る溝を有する電極70の、330倍の走査電子顕微鏡画像を示している。溝71は、電極70の表面より、レーザービームによって「掘り開かれて」いる。電極70の材料は、溝71を形成するように移動させられ、図8(1つの溝71の1500倍の画像)に示すように、溝71の両側にはっきりと盛り上がった壁72を形成するよう堆積されている。さらに、溝71は、はっきりと見て取れる「ピット」73または深い穴73を有する。これらのピット73はいずれも、電極70が製造中に冷却される際に、電極70がノッチを有する伸長性のある物体としての挙動を示す事態を招き得る。そして、上記で述べたような電極70の破損に寄与し、電極70が製造工程を問題なく終えることを阻みかねない。
【0034】
これに対し、図9は、本発明に係るチャネル2を有する電極1の、やはり330倍の走査電子顕微鏡画像を示している。この画像は、図7および8に示した従来技術に係る溝を有する電極と異なり、チャネル2が滑らかに形成されており、チャネル2の底面すなわち床部にピットや特筆すべき凹凸が存在しないことを、明確に示している。このことは、本発明に係る電極1に存在する1つのチャネル2の1500倍の画像である、図10により詳細に示されている。この画像はまた、チャネル2の両側に存在する、望ましい構成である低いリッジ61を示している。チャネルの床部62は、滑らかすなわち均一であることが明らかに見て取れる。チャネルの床部には、ノッチとして作用し得る「ピット」、「穴」またはその他の類似の不均一さが実質的に存在しないので、チャネル2の存在により、この本発明の電極1は、製造時の冷却中において破損を被る可能性がずっと低くなる。したがって、生産効率を向上させることができる。
【0035】
図11は、石英ガラスの外包体30から作られており、放電チャンバー31内に先端が延設されている1対の電極1を有する、本発明に係る気体放電ランプ3を示している。各電極1の基部は、封止部33内で保持されている。上記で述べた任意の技術を用いて作られたチャネル2は、この図では単に傾斜した平行な複数の線として描かれているが、浅く、かつ実質的に凹面状のチャネル2である。製造時の冷却工程中において、石英ガラスと、電極を構成する金属とは、異なるレートで冷却され得る。したがって、異なる収縮率で収縮させられ得る。チャネル2の好適な幾何学形状は、この図では明確さのために拡大して示してある微小クラック34すなわち緩和クラック34を、制御された態様で形成することを可能にする。これらの緩和クラック34は、結果的にRECを招くような、偶発的な大きなビーズ状クラックの形成を、防止または抑制する。
【0036】
以上、図面および上記の説明において、本発明を詳細に図解および説明してきたが、かかる図解および説明は、説明目的または例示目的のものとして捉えられるべきであり、限定目的のものとして捉えられるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する他の変更形態は、当業者であれば、図面、明細書および特許請求の範囲を読むことにより、理解でき実施できるであろう。念のため明示しておくが、本願全体を通じて「1つの」との語の使用は複数であることを排除するものではなく、「含む」または「備える」との語の使用は他の工程または要素の存在を排除するものではない。特定の施策が単に互いに異なる従属請求項に記載されているという事実は、それらの施策の組合せを有利に利用することができない旨を示すものではない。特許請求の範囲中にある参照符号はいずれも、本発明の技術的範囲を限定するものと捉えられるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーを取り囲む石英ガラス製外包体を備えたランプで使用するための電極であって、
前記チャンバー内に延設される先端部と、
前記石英ガラス製外包体の封止部内に埋設される基部とを含み、
前記基部が、実質的に滑らかな凹面状の複数のチャネルであって、当該電極の本体周囲に配されたチャネルを含んでおり、1つのチャネルのチャネル深さが、当該電極の直径に対し、最大8%、好ましくは最大5%、最も好ましくは最大3%の深さであることを特徴とする電極。
【請求項2】
チャネル幅とチャネル深さとの比が、最大8:1、より好ましくは最大5:1、最も好ましくは最大2:1であることを特徴とする請求項1記載の電極。
【請求項3】
チャネル幅と、前記チャネルの床部の直径との比が、最大10:1、より好ましくは最大2.0:1、最も好ましくは最大1:1であることを特徴とする請求項1または2記載の電極。
【請求項4】
当該電極の表面と1つのチャネルとの間の移行部分において、当該電極の材料が、複数のブラシ毛状の突起を形成するように堆積されていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の電極。
【請求項5】
当該電極の表面と1つのチャネルとの間の移行部分において、当該電極の材料が、最大20μm、より好ましくは最大8μm、最も好ましくは最大6μmの高さで、低いリッジを形成するように堆積されていることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の電極。
【請求項6】
当該電極の前記本体周囲に螺旋状に配された、少なくとも1つのチャネルを含むことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の電極。
【請求項7】
前記基部が、複数のチャネルを備えるように処理されたチャネル領域を含み、前記チャネル領域の少なくとも一端の側方に、当該電極の表面が実質的に滑らかである処理されていない領域が存在することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の電極。
【請求項8】
石英ガラス製外包体内部にチャンバーを備えたランプで使用するための、電極の製造方法であって、
前記電極の本体周囲に複数のチャネルを形成し、1つのチャネルが、チャネル側壁と、実施的に凹面状のチャネル床部とを含み、かつ1つのチャネルのチャネル深さが、前記電極の直径に対し、好ましくは最大8%、より好ましくは最大5%、最も好ましくは最大3%の深さとなるようになすべく、前記電極の前記本体から材料を除去する工程を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
前記電極の材料を除去するため、前記電極の表面に向けてレーザービームを発することにより、前記チャネルが形成されることを特徴とする請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
10nsから80nsの範囲内のパルス持続時間と、10kHzから70kHzの範囲内の周波数とを有する前記レーザービームを生成するように、レーザーが動作させられることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
溶融された電極材料の少なくとも一部が、1つのチャネルと前記電極の外表面との間の移行領域に沿ったリッジに堆積させられるよう移動されるように、前記レーザービームの動作パラメータが選択されることを特徴とする請求項8または9記載の製造方法。
【請求項12】
チャンバーを取り囲む石英ガラス製外包体と、
前記チャンバーの両側から該チャンバー内に延設されるように配された請求項1から7いずれか1項記載の電極の対であって、各電極が、前記石英ガラス製外包体の封止部内に、部分的に埋設されている電極の対と
を含むことを特徴とするランプ。
【請求項13】
気体放電ランプであり、前記電極が、200μmから500μmの範囲の直径を有するタングステンのロッドを含み、当該ランプ内において、前記電極の前記先端部が放電チャンバーの両側から該放電チャンバー内に延設され、かつ、前記電極の前記本体周囲に配されたチャネルが前記封止部内に封止されるように、各電極の他端が当該ランプの前記封止部内に埋設されるよう、前記電極が配されていることを特徴とする請求項12記載のランプ。
【請求項14】
ランプの製造方法であって、
溶融された石英ガラスの外包体を形成する工程と、
請求項1から7いずれか1項記載の第1の電極の一部を、前記封止部内に埋設するように、第1の封止部を形成する工程と、
前記溶融された石英ガラス内のチャンバーに、充填物を導入する工程と、
前記第1の封止部を冷却する工程と、
第2の電極の一部を埋設し、かつ前記チャンバー内に前記充填物を封止するように、第2の封止部を形成する工程とを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
前記第1の封止部を冷却する前記工程が、該封止部の温度を200°C未満に急速に低下させる処理を含むことを特徴とする請求項14記載の製造方法。
【請求項1】
チャンバーを取り囲む石英ガラス製外包体を備えたランプで使用するための電極であって、
前記チャンバー内に延設される先端部と、
前記石英ガラス製外包体の封止部内に埋設される基部とを含み、
前記基部が、実質的に滑らかな凹面状の複数のチャネルであって、当該電極の本体周囲に配されたチャネルを含んでおり、1つのチャネルのチャネル深さが、当該電極の直径に対し、最大8%、好ましくは最大5%、最も好ましくは最大3%の深さであることを特徴とする電極。
【請求項2】
チャネル幅とチャネル深さとの比が、最大8:1、より好ましくは最大5:1、最も好ましくは最大2:1であることを特徴とする請求項1記載の電極。
【請求項3】
チャネル幅と、前記チャネルの床部の直径との比が、最大10:1、より好ましくは最大2.0:1、最も好ましくは最大1:1であることを特徴とする請求項1または2記載の電極。
【請求項4】
当該電極の表面と1つのチャネルとの間の移行部分において、当該電極の材料が、複数のブラシ毛状の突起を形成するように堆積されていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の電極。
【請求項5】
当該電極の表面と1つのチャネルとの間の移行部分において、当該電極の材料が、最大20μm、より好ましくは最大8μm、最も好ましくは最大6μmの高さで、低いリッジを形成するように堆積されていることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の電極。
【請求項6】
当該電極の前記本体周囲に螺旋状に配された、少なくとも1つのチャネルを含むことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の電極。
【請求項7】
前記基部が、複数のチャネルを備えるように処理されたチャネル領域を含み、前記チャネル領域の少なくとも一端の側方に、当該電極の表面が実質的に滑らかである処理されていない領域が存在することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の電極。
【請求項8】
石英ガラス製外包体内部にチャンバーを備えたランプで使用するための、電極の製造方法であって、
前記電極の本体周囲に複数のチャネルを形成し、1つのチャネルが、チャネル側壁と、実施的に凹面状のチャネル床部とを含み、かつ1つのチャネルのチャネル深さが、前記電極の直径に対し、好ましくは最大8%、より好ましくは最大5%、最も好ましくは最大3%の深さとなるようになすべく、前記電極の前記本体から材料を除去する工程を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
前記電極の材料を除去するため、前記電極の表面に向けてレーザービームを発することにより、前記チャネルが形成されることを特徴とする請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
10nsから80nsの範囲内のパルス持続時間と、10kHzから70kHzの範囲内の周波数とを有する前記レーザービームを生成するように、レーザーが動作させられることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
溶融された電極材料の少なくとも一部が、1つのチャネルと前記電極の外表面との間の移行領域に沿ったリッジに堆積させられるよう移動されるように、前記レーザービームの動作パラメータが選択されることを特徴とする請求項8または9記載の製造方法。
【請求項12】
チャンバーを取り囲む石英ガラス製外包体と、
前記チャンバーの両側から該チャンバー内に延設されるように配された請求項1から7いずれか1項記載の電極の対であって、各電極が、前記石英ガラス製外包体の封止部内に、部分的に埋設されている電極の対と
を含むことを特徴とするランプ。
【請求項13】
気体放電ランプであり、前記電極が、200μmから500μmの範囲の直径を有するタングステンのロッドを含み、当該ランプ内において、前記電極の前記先端部が放電チャンバーの両側から該放電チャンバー内に延設され、かつ、前記電極の前記本体周囲に配されたチャネルが前記封止部内に封止されるように、各電極の他端が当該ランプの前記封止部内に埋設されるよう、前記電極が配されていることを特徴とする請求項12記載のランプ。
【請求項14】
ランプの製造方法であって、
溶融された石英ガラスの外包体を形成する工程と、
請求項1から7いずれか1項記載の第1の電極の一部を、前記封止部内に埋設するように、第1の封止部を形成する工程と、
前記溶融された石英ガラス内のチャンバーに、充填物を導入する工程と、
前記第1の封止部を冷却する工程と、
第2の電極の一部を埋設し、かつ前記チャンバー内に前記充填物を封止するように、第2の封止部を形成する工程とを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
前記第1の封止部を冷却する前記工程が、該封止部の温度を200°C未満に急速に低下させる処理を含むことを特徴とする請求項14記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−514622(P2013−514622A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543951(P2012−543951)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055707
【国際公開番号】WO2011/073862
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055707
【国際公開番号】WO2011/073862
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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