説明

ラーメン高架橋における構造物音の低減構造

【課題】 ラーメン高架橋から発生する構造物音を低減する。
【解決手段】本発明に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造1は、RCラーメン高架橋6の上部工を構成するスラブ5のうち、中間スラブ7の下面に補剛材9を固着するとともに、同じくスラブ5を構成する張出スラブ8,8の下面に補剛材10,10をそれぞれ固着してある。補剛材9は、その各端を縦梁3,3の対向側面にそれぞれ固着してあるとともに、補剛材10は、その一端を縦梁3の外側側面に固着してある。補剛材9は、橋軸方向に沿った横梁4,4の中心位置、すなわち横梁4の材軸からL/2の位置に配置してあり、補剛材10,10も補剛材9と同様、横梁4の材軸からL/2の位置に配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鉄道用のラーメン高架橋に適用される構造物音の低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線等の鉄道車両が高架橋を通過する際、列車周辺の空気の乱れによる空力音、列車の駆動音、軌道の振動による転動音といった様々な音が発生するが、かかる音は、近隣に伝播して騒音被害を招く原因となる。
【0003】
これらのうち、高架橋を構成する構造部材に伝達した振動に起因する音は構造物音と呼ばれており、鋼製の鉄道高架橋については従来からさまざまな騒音対策がとられてきた。
【0004】
かかる状況下、昨今の新幹線の速度向上に伴い、鋼製の高架橋よりも構造物音が小さいとされてきた鉄筋コンクリート製(以下、RC)の高架橋についても、騒音被害の拡大が懸念されるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−032165号公報
【特許文献2】特開2000−160510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人の研究により、RCラーメン高架橋においては、中間スラブや張出スラブが構造物音の主たる発生源であり、かかる構造部材の板振動が騒音の原因となることがわかってきた。
【0007】
しかしながら、どのような対策を施せばよいのか、有効かつ合理的な対策が未だ提案されていないのが現状であり、周辺への騒音低減を含めた環境対策として、RC高架橋の構造物音対策が急務となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、RC高架橋から発生する構造物音を低減可能なラーメン高架橋における構造物音の低減構造を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造は請求項1に記載したように、橋軸方向に沿って2列状に配置された柱の頂部に架け渡された縦梁と、前記柱のうち、橋軸直交方向に沿って互いに対向する柱の頂部に架け渡された横梁と、前記縦梁及び前記横梁で支持されたスラブとを備えたRCラーメン高架橋の構造物音を低減する構造であって、
前記スラブの面外曲げ剛性を高めることが可能な補剛材を該スラブの下面又は上面に固着したものである。
【0010】
また、本発明に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造は、前記スラブが、前記縦梁及び前記横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置する中間スラブであって、該中間スラブの下面に前記補剛材を固着するとともに、該補剛材の各端を前記縦梁の対向側面にそれぞれ固着したものである。
【0011】
また、本発明に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造は、前記スラブが、前記縦梁及び前記横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置する中間スラブの側方に延設された張出スラブであって、該張出スラブの下面に前記補剛材を固着するとともに、該補剛材の一端を前記縦梁の外側側面に固着したものである。
【0012】
また、本発明に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造は、前記スラブが、前記縦梁及び前記横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置する中間スラブと該中間スラブの側方に延設された張出スラブであって、前記中間スラブの下面と前記張出スラブの下面に材軸が橋軸直交方向に沿って同軸となるように前記補剛材をそれぞれ固着し、前記中間スラブ下方の補剛材の各端を前記縦梁の対向側面にそれぞれ当接するとともに、前記張出スラブ下方の補剛材の一端を前記縦梁の外側側面に当接し、前記縦梁が挟み込まれる形で前記中間スラブ下方の補剛材と前記張出スラブ下方の補剛材とを貫通ボルトで相互に連結したものである。
【0013】
また、本発明に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造は、前記RCラーメン高架橋が鉄道用RCラーメン高架橋、前記スラブが前記縦梁及び前記横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置する中間スラブであって、該中間スラブの上面のうち、橋軸方向に沿って前記スラブ上に並設された一対の路盤コンクリートの間に前記補剛材を固着するとともに、該補剛材の各端を前記路盤コンクリートの対向側面にそれぞれ固着したものである。
【0014】
また、本発明に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造は、前記RCラーメン高架橋が鉄道用RCラーメン高架橋、前記スラブが前記縦梁及び前記横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置する中間スラブの側方に延設された張出スラブであって、該張出スラブの上面のうち、橋軸方向に沿って前記スラブ上に並設された一対の路盤コンクリートの外側に前記補剛材を固着するとともに、該補剛材の各端を前記路盤コンクリートの外側側面とダクトの側面にそれぞれ固着したものである。
【0015】
また、本発明に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造は、前記横梁の配置スパン長をLとしたとき、前記横梁の中心からL/2、L/4又はL/6の位置に前記補剛材を橋軸直交方向に沿って配置したものである。
【0016】
背景技術でも述べた通り、昨今は新幹線の速度向上に伴い、RCラーメン高架橋からの構造物音に起因する騒音の低減が急務となっていたが、構造物音について本出願人が調査研究を行ったところ、高架橋の上部工を構成するスラブが列車走行時に板振動し、その板振動が構造物音となって騒音を招くことが判明した。
【0017】
本発明に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造においては、スラブの面外曲げ剛性を高めることが可能な補剛材を該スラブの下面又は上面に固着する。
【0018】
このようにすると、車両通過時に起こるスラブの板振動が抑制され、該スラブからの構造物音を低減することができる。
【0019】
本発明でいうラーメン高架橋とは、柱によって上部工が地盤面よりも高い位置に設置される橋を意味するものとする。また、狭義には地上に架けられた橋のみを高架橋と呼ぶ場合もあるが、本発明においては、地上(陸上)のみならず、河川や湾を横断する橋も含むものとする。
【0020】
また、本発明の高架橋は、主として列車、特に新幹線等の高速列車が走行する高架橋を想定しており、鉄道用RCラーメン高架橋への適用が最適であるが、大型トラック等の自動車が走行する道路用のRCラーメン高架橋にも適用が可能である。
【0021】
スラブは、列車や自動車といった車両走行に伴って板振動を起こすものであれば、全て本発明の対象となるが、ラーメン高架橋の場合、上部工のスラブは、橋軸方向に沿って2列に架け渡された縦梁と該縦梁に直交する方向、すなわち橋軸直交方向に沿ってスパン長Lごとに架け渡される横梁とに支持されており、かかる縦梁と横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置するスラブを中間スラブと呼び、該中間スラブからその側方に延設され縦梁の外側に片持ち状に跳ね出されているスラブがある場合は、これを張出スラブと呼ぶこととする。
【0022】
補剛材は、スラブの面外曲げ剛性を高めることができるのであれば、その材質や形状は任意であって、例えばH形鋼、I形鋼、鋼板等を用いることが可能であり、スラブの下面に固着するのか上面に固着するのかも適宜選択することができる。
【0023】
ここで、中間スラブや張出スラブの下面に補剛材を固着するとともに、該補剛材の両端あるいは一端を縦梁の側面に固着するようにしたならば、上面での交通を何ら制限することなく、防音工事を行うことができるとともに、補剛材の端部を縦梁の側面に固定した状態で中間スラブの板振動を抑えることができるので、板振動に起因する構造物音をより効果的に低減することが可能となる。
【0024】
また、かかる場合において、補剛材を、材軸が橋軸直交方向に沿って同軸となるように、中間スラブの下面と張出スラブの下面にそれぞれ固着し、中間スラブ下方の補剛材の各端を縦梁の対向側面にそれぞれ当接するとともに、張出スラブ下方の補剛材の一端を縦梁の外側側面に当接し、縦梁が挟み込まれる形で中間スラブ下方の補剛材と張出スラブ下方の補剛材とを貫通ボルトで相互に連結するようにしたならば、中間スラブ下方の補剛材と張出スラブ下方の補剛材が縦梁と一体化することにより、中間スラブ及び張出スラブの板振動の抑制作用が格段に向上するとともに、補剛材の落下防止事故を未然に防止することも可能となる。
【0025】
一方、交通への制限が許容され、あるいは防音工事を夜間に行うことで実質的に交通を制限する必要がないのであれば、中間スラブの上面のうち、橋軸方向に沿ってスラブ上に並設された一対の路盤コンクリートの間に補剛材を固着するとともに、該補剛材の各端を路盤コンクリートの対向側面にそれぞれ固着した構成としたり、張出スラブの上面のうち、一対の路盤コンクリートの外側に補剛材を固着するとともに、該補剛材の各端を路盤コンクリートの外側側面とダクト側面にそれぞれ固着した構成とすることが可能である。
【0026】
補剛材は、上述したように材質や形状のほか、配置形態も任意であって、例えば、橋軸方向に沿った方向あるいは橋軸直交方向に沿った方向に配置する構成が考えられるが、スラブは、中間スラブや張出スラブも含めて、橋軸方向が長手方向になる平面矩形状をなす場合が多い。
【0027】
そのため、補剛材をその材軸が橋軸直交方向になるように橋軸方向に沿って適宜間隔で配置する構成が効果的であるが、かかる場合、横梁の配置スパン長をLとしたとき、横梁の中心からL/2、L/4又はL/6の位置に補剛材を配置するようにすれば、スラブの板振動が取り得る振動モードのうち、比較的低次モードで腹となる箇所を重点的に抑えることができるので、より合理的な防音対策となる可能性が高い。
【0028】
なお、スラブの板振動は、低次モードでの振動が構造物音の原因になるとは限らず、実際には高次モードでの振動が原因になることが少なくないことが本出願人の研究で判明している。
【0029】
その場合には、補剛材を設置する位置、いわば対策位置を別途定めるようにしてもよいが、いずれにしろ、本発明において対策位置をどのように定めるかは任意事項である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造1を示した図であり、(a)は橋軸方向から見た断面図、(b)はA−A線方向から見た矢視図。
【図2】本実施形態に係る構造物音の低減構造1が適用されるラーメン高架橋を示した図であり、(a)は橋軸方向から見た断面図、(b)はB−B線方向から見た矢視図。
【図3】補剛材を示した図であり、(a)は補剛材9の全体斜視図、(b)は補剛材10の全体斜視図。
【図4】変形例に係る構造物音の低減構造を示した橋軸方向断面図。
【図5】本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造51を示した図であり、(a)は橋軸方向から見た断面図、(b)はC−C線方向から見た矢視図。
【図6】補剛材を示した図であり、(a)は補剛材59の全体斜視図、(b)は補剛材60の全体斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造を示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造1は、RCラーメン高架橋6の上部工を構成するスラブ5のうち、中間スラブ7の下面に補剛材9を固着するとともに、同じくスラブ5を構成する張出スラブ8,8の下面に補剛材10,10をそれぞれ固着してあり、補剛材9は中間スラブ7の面外曲げ剛性を、補剛材10は張出スラブ8の面外曲げ剛性をそれぞれ高めることができるようになっている。
【0033】
RCラーメン高架橋6は図2に示すように、橋軸方向に沿って2列状に配置された柱2の頂部に架け渡された縦梁3と、柱2のうち、橋軸直交方向に沿って互いに対向する柱2,2の頂部に架け渡された横梁4とを備えており、これら縦梁3及び横梁4はスラブ5を支持するとともに、該スラブとともにRCラーメン高架橋6の上部工を構成する。
【0034】
ここで、補剛材9は図1でわかるように、その各端を縦梁3,3の対向側面にそれぞれ固着してあるとともに、補剛材10は、その一端を縦梁3の外側側面に固着してある。
【0035】
横梁4は、その材軸が縦梁3に直交する方向(橋軸直交方向)になるように、橋軸方向に沿ってスパン長Lごとに架け渡してあり、中間スラブ7は、スラブ5のうち、縦梁3,3と横梁4,4に囲まれた平面矩形領域の上方に位置するスラブであり、張出スラブ8は、中間スラブ7からその側方に延設され、縦梁3の外側に片持ち状に跳ね出されたスラブである。
【0036】
補剛材9は、橋軸方向に沿った横梁4,4の中心位置、すなわち横梁4の材軸からL/2の位置に配置してあり、補剛材10,10も補剛材9と同様、横梁4の材軸からL/2の位置に配置してある。
【0037】
図3(a)は、補剛材9を示した全体斜視図である。同図でわかるように、補剛材9は、エンドプレート22,22をH形鋼21の各端部にそれぞれ溶着するとともに、該H形鋼の中間位置と端部位置の計3箇所でスチフナ23をウェブ両側に溶着してあり、エンドプレート22は、縦梁3と中間スラブ7との取合い箇所に形成されているハンチとその隣接部位にぴったりと当接されるよう、折曲げ形成してある。
【0038】
ここで、スチフナ23は、H形鋼21のウェブの板振動を抑えることで、補剛材9自体が構造物音の発生源となるのを防止する役目を果たす。
【0039】
H形鋼21のフランジ上面には、防音工事の際に中間スラブ7の下面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー24を突設してあるとともに、中間スラブ7との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該フランジ上面に目荒らし処理を施してある。
【0040】
同様に、エンドプレート22の折曲げ状側面には、防音工事の際に縦梁3の対向側面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー24を突設してあるとともに、縦梁3との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該側面に目荒らし処理を施してある。
【0041】
図3(b)は、補剛材10を示した全体斜視図である。同図でわかるように、補剛材10は、直角三角形をなすウェブ28の周縁のうち、直角を挟む一辺に上フランジ25を、他辺にエンドプレート27を、斜辺に傾斜フランジ26をそれぞれ溶着するとともに、ウェブ28の両側にスチフナ30を溶着してある。
【0042】
ここで、スチフナ30は、ウェブ28の板振動を抑えることで、補剛材10自体が構造物音の発生源となるのを防止する役目を果たす。
【0043】
上フランジ25の上面には、防音工事の際に張出スラブ8の下面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー29を突設してあるとともに、張出スラブ8との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該上面に目荒らし処理を施してある。
【0044】
同様に、エンドプレート27の側面には、防音工事の際に縦梁3の外側側面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー27を突設してあるとともに、縦梁3との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該側面に目荒らし処理を施してある。
【0045】
なお、図3(b)に示した補剛材10は、図1で言えば右側に配置される状態で示したものであるが、左側に配置される状態については、図3(b)と左右対称に現れるため、図面及びその説明を省略する。
【0046】
図2に示した既設のRCラーメン高架橋6に対して本実施形態に係る構造物音の低減構造1を適用するには、補剛材9,10を工場等で適宜製作して施工現場に搬入する一方、補剛材9のアンカー24が挿入される穴を中間スラブ7の下面及び縦梁3,3の対向側面に穿孔するとともに、補剛材10のアンカー29が挿入される穴を張出スラブ8,8の下面及び縦梁3,3の外側側面に穿孔する。
【0047】
次に、補剛材9のアンカー24を中間スラブ7の下面及び縦梁3,3の対向側面に穿孔された穴に挿入し、かかる状態で補剛材9と中間スラブ7及び縦梁3,3との隙間に無収縮モルタル、極早強モルタル等の固化材を充填する。アンカー24のうち、側方に突出したものについては、着脱自在に構成しておくのがよい。
【0048】
同様に、補剛材10のアンカー29を張出スラブ8,8の下面及び縦梁3,3の外側側面に穿孔された穴に挿入し、かかる状態で補剛材10と張出スラブ8,8及び縦梁3,3との隙間に上述した固化材を充填する。アンカー29のうち、側方に突出したものについては、着脱自在に構成しておくのがよい。
【0049】
充填された固化材が強度を発現するまでは、必要に応じて適宜支保工を用いればよい。
【0050】
このように補剛材9,10を設置すると、補剛材9が中間スラブ7の面外曲げ剛性を高めるとともに、補剛材10が張出スラブ8の面外曲げ剛性を高めるため、列車通過時に起こる中間スラブ7や張出スラブ8,8の板振動が抑制される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造1によれば、補剛材9を中間スラブ7の下面に固着するとともに、補剛材10を張出スラブ8,8の下面に固着するようにしたので、中間スラブ7や張出スラブ8,8の面外曲げ剛性が高くなる。
【0052】
そのため、列車通過時に起こる中間スラブ7や張出スラブ8,8の板振動が抑制され、かくして中間スラブ7や張出スラブ8,8からの構造物音を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造1によれば、補剛材9の各端を縦梁3,3の対向側面に固着し、あるいは補剛材10の一端を縦梁3の外側側面に固着した状態でそれらの上面を中間スラブ7や張出スラブ8の下面に固着するようにしたので、補剛材9,10による曲げ剛性の増大作用が高くなり、中間スラブ7や張出スラブ8の板振動をより確実に抑えることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造1によれば、補剛材9,10を中間スラブ7や張出スラブ8の下面に固着するようにしたので、交通制限することなく、防音工事を行うことが可能となる。
【0055】
本実施形態では、補剛材9を中間スラブ7に、補剛材10を張出スラブ8,8にそれぞれ設置するようにしたが、必ずしも中間スラブ7及び張出スラブ8,8の両方に設置する必要はなく、板振動の状況によっては、それらのうち、いずれかのみに設置するようにしてもかまわない。
【0056】
また、本実施形態では、補剛材9や補剛材10の設置位置を横梁4からL/2の位置としたが、これに代えて、横梁4からL/4又はL/6の位置に設置するようにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、補剛材9と補剛材10の設置位置をL/2に揃えるようにしたが、両者異なる場所に設置するようにしてもよいし、そもそもスパン長Lを基本モジュールとした位置に設置場所が限定されるものではなく、要は騒音の原因となる板振動を効率的に抑えることができる場所に補剛材を設置すればよい。
【0058】
また、本実施形態では、補剛材9の各端を縦梁3,3の対向側面に固着し、補剛材10の一端を縦梁3の外側側面に固着するようにしたが、縦梁3に固着せずとも、中間スラブ7や張出スラブ8の板振動を抑えることができるのであれば、縦梁3への固着を省略してもかまわない。
【0059】
また、本実施形態では、補剛材9及び補剛材10をいずれも横梁4の材軸からL/2の位置に配置する、言い換えれば補剛材9及び補剛材10をそれらの材軸が同軸となるように配置したが、かかる構成に加えて図4に示すように、貫通ボルト42を、同図で言えば右側の補剛材10のエンドプレート27に形成されたボルト孔(図示せず)に挿通してから右側の縦梁3に通し、さらに補剛材9のエンドプレート22,22及びスチフナ23に形成されたボルト孔(図示せず)に挿通した後、左側の縦梁3及び補剛材10に同様に挿通し、しかる後、挿通前に予め螺合されたナット43を締め付けることで右側の縦梁3が挟み込まれる形で補剛材9及び補剛材10を貫通ボルト42を介して相互に連結するとともに、予め螺合されたナット43及び貫通ボルト挿通後に螺合されたナット43を締め付けることにより、左側の縦梁3が挟み込まれる形で補剛材9及び補剛材10を貫通ボルト42を介して相互に連結するようにしてもよい。
【0060】
かかる変形例によれば、補剛材9及び補剛材10,10が縦梁3,3と一体化するため、中間スラブ7と張出スラブ8,8の板振動の抑制作用が格段に向上するとともに、補剛材9及び補剛材10の落下防止事故を未然に防止することも可能となる。
【0061】
なお、貫通ボルト42を2本にし、補剛材9を右側と左側で別々に補剛材10,10に連結するようにしてもかまわない。
【0062】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図5は、第2実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造を示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造51は、RCラーメン高架橋6の上部工を構成するスラブ5のうち、中間スラブ7の上面に補剛材59を固着するとともに、同じくスラブ5を構成する張出スラブ8,8の上面に補剛材60,60をそれぞれ固着してあり、補剛材59は、中間スラブ7の面外曲げ剛性を、補剛材60は、張出スラブ8の面外曲げ剛性をそれぞれ高めることができるようになっている。
【0064】
スラブ5の上面には、一対の路盤コンクリート52,52が橋軸方向に沿って並設してあり、補剛材59は、それら路盤コンクリート52,52の間に、補剛材60は、路盤コンクリート52と高欄下のダクト53との間にそれぞれ配置してある。
【0065】
ここで、補剛材59は、その各端を路盤コンクリート52,52の対向側面にそれぞれ固着してあるとともに、補剛材60は、その各端を路盤コンクリート52の外側側面とダクト53にそれぞれ固着してある。
【0066】
補剛材59は、橋軸方向に沿った横梁4,4の中心位置、すなわち横梁4の材軸からL/2の位置に配置してあり、補剛材60,60も補剛材59と同様、横梁4の材軸からL/2の位置に配置してある。
【0067】
図6(a)は、補剛材59を示した全体斜視図である。同図でわかるように、補剛材59は、エンドプレート72,72をH形鋼71の各端部にそれぞれ溶着するとともに、該H形鋼の中間位置と端部位置の計3箇所でスチフナ73をウェブ両側に溶着してあり、H形鋼71は、曲げ剛性を大きくするために十分な高さを確保するとともに、エンドプレート72は、列車設計側から要求される建築限界に支障がないよう、折曲げ形成してある。
【0068】
ここで、スチフナ73は、H形鋼71のウェブの板振動を抑えることで、補剛材59自体が構造物音の発生源となるのを防止する役目を果たす。
【0069】
H形鋼71のフランジ下面には、防音工事の際に中間スラブ7の上面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー74を突設してあるとともに、中間スラブ7との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該フランジ下面に目荒らし処理を施してある。
【0070】
同様に、エンドプレート72の折曲げ状側面には、防音工事の際に路盤コンクリート52の対向側面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー74を突設してあるとともに、路盤コンクリート52との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該折曲げ状側面に目荒らし処理を施してある。
【0071】
図6(b)は、補剛材60を示した全体斜視図である。同図でわかるように、補剛材60は、H形鋼75の各端部にエンドプレート77,77をそれぞれ溶着するとともに、該H形鋼の中間位置でスチフナ80をウェブ両側に溶着してある。
【0072】
ここで、スチフナ80は、H形鋼75のウェブの板振動を抑えることで、補剛材60自体が構造物音の発生源となるのを防止する役目を果たす。
【0073】
H形鋼75のフランジ下面には、防音工事の際に張出スラブ8の上面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー79を突設してあるとともに、張出スラブ8との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該フランジ下面に目荒らし処理を施してある。
【0074】
同様に、エンドプレート77の側面には、防音工事の際に路盤コンクリート52の外側側面やダクト53の側面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー79を突設してあるとともに、路盤コンクリート52やダクト53との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該側面に目荒らし処理を施してある。
【0075】
図2に示した既設のRCラーメン高架橋6に対して本実施形態に係る構造物音の低減構造51を適用するには、補剛材59,60を工場等で適宜製作して施工現場に搬入する一方、補剛材59のアンカー74が挿入される穴を中間スラブ7の上面及び路盤コンクリート52,52の対向側面に穿孔するとともに、補剛材60のアンカー79が挿入される穴を張出スラブ8,8の上面、路盤52,52の外側側面及びダクト53の側面に穿孔する。
【0076】
次に、補剛材59のアンカー74を中間スラブ7の上面及び路盤コンクリート52,52の対向側面に穿孔された穴に挿入し、かかる状態で補剛材59と中間スラブ7及び路盤コンクリート52,52との隙間に無収縮モルタル、極早強モルタル等の固化材を充填する。アンカー74のうち、側方に突出したものについては、着脱自在に構成しておくのがよい。
【0077】
同様に、補剛材60のアンカー79を張出スラブ8の上面、路盤コンクリート52の外側側面及びダクト53の側面に穿孔された穴に挿入し、かかる状態で補剛材60と張出スラブ8、路盤コンクリート52及びダクト53との隙間に上述した固化材を充填する。アンカー79のうち、側方に突出したものについては、着脱自在に構成しておくのがよい。
【0078】
このように補剛材59,60を設置すると、補剛材59が路盤コンクリート52と相俟って、中間スラブ7の面外曲げ剛性を高めるとともに、補剛材60が張出スラブ8の面外曲げ剛性を高めるため、列車通過時に起こる中間スラブ7や張出スラブ8,8の板振動が抑制される。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造51によれば、補剛材59を中間スラブ7の上面に固着するとともに、補剛材60を張出スラブ8,8の上面に固着するようにしたので、中間スラブ7や張出スラブ8,8の面外曲げ剛性が高くなる。
【0080】
そのため、列車通過時に起こる中間スラブ7や張出スラブ8,8の板振動が抑制され、かくして中間スラブ7や張出スラブ8,8からの構造物音を低減することができる。
【0081】
また、本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造51によれば、補剛材59の各端を路盤コンクリート52,52の対向側面に固着し、あるいは補剛材60の各端を路盤コンクリート52の外側側面とダクト53の側面に固着した状態でそれらの下面を中間スラブ7や張出スラブ8の上面に固着するようにしたので、補剛材59,60による曲げ剛性の増大作用が高くなり、中間スラブ7や張出スラブ8の板振動をより確実に抑えることが可能となる。
【0082】
また、本実施形態に係るラーメン高架橋における構造物音の低減構造51によれば、現場での作業が少ないため、必要に応じて夜間作業を行うことにより、実質的に交通制限することなく、防音工事を行うことが可能となる。
【0083】
本実施形態では、補剛材59を中間スラブ7に、補剛材60を張出スラブ8,8にそれぞれ設置するようにしたが、必ずしも中間スラブ7及び張出スラブ8,8の両方に設置する必要はなく、板振動の状況によっては、それらのうち、いずれかのみに設置するようにしてもかまわない。
【0084】
また、本実施形態では、補剛材59や補剛材60の設置位置を横梁4からL/2の位置としたが、これに代えて、横梁4からL/4又はL/6の位置に設置するようにしてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、補剛材59と補剛材60の設置位置をL/2に揃えるようにしたが、両者異なる場所に設置するようにしてもよいし、そもそもスパン長Lを基本モジュールとした位置に設置場所が限定されるものではなく、要は騒音の原因となる板振動を効率的に抑えることができる場所に補剛材を設置すればよい。
【0086】
また、本実施形態では、補剛材59の各端を路盤コンクリート52,52の対向側面に固着し、補剛材60の各端を路盤コンクリート52の外側側面とダクト53の側面に固着するようにしたが、路盤コンクリート52やダクト53に固着せずとも、中間スラブ7や張出スラブ8の板振動を抑えることができるのであれば、それらへの固着を省略してもかまわない。
【符号の説明】
【0087】
1,51 ラーメン高架橋における構造物音の低減構造
2 柱
3 縦梁
4 横梁
5 スラブ
6 RCラーメン高架橋
7 中間スラブ
8 張出スラブ
9 補剛材
10 補剛材
42 貫通ボルト
52 路盤コンクリート
53 ダクト
59 補剛材
60 補剛材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向に沿って2列状に配置された柱の頂部に架け渡された縦梁と、前記柱のうち、橋軸直交方向に沿って互いに対向する柱の頂部に架け渡された横梁と、前記縦梁及び前記横梁で支持されたスラブとを備えたRCラーメン高架橋の構造物音を低減する構造であって、
前記スラブの面外曲げ剛性を高めることが可能な補剛材を該スラブの下面又は上面に固着したことを特徴とするラーメン高架橋における構造物音の低減構造。
【請求項2】
前記スラブが、前記縦梁及び前記横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置する中間スラブであって、該中間スラブの下面に前記補剛材を固着するとともに、該補剛材の各端を前記縦梁の対向側面にそれぞれ固着した請求項1記載のラーメン高架橋における構造物音の低減構造。
【請求項3】
前記スラブが、前記縦梁及び前記横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置する中間スラブの側方に延設された張出スラブであって、該張出スラブの下面に前記補剛材を固着するとともに、該補剛材の一端を前記縦梁の外側側面に固着した請求項1記載のラーメン高架橋における構造物音の低減構造。
【請求項4】
前記スラブが、前記縦梁及び前記横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置する中間スラブと該中間スラブの側方に延設された張出スラブであって、前記中間スラブの下面と前記張出スラブの下面に材軸が橋軸直交方向に沿って同軸となるように前記補剛材をそれぞれ固着し、前記中間スラブ下方の補剛材の各端を前記縦梁の対向側面にそれぞれ当接するとともに、前記張出スラブ下方の補剛材の一端を前記縦梁の外側側面に当接し、前記縦梁が挟み込まれる形で前記中間スラブ下方の補剛材と前記張出スラブ下方の補剛材とを貫通ボルトで相互に連結した請求項1記載のラーメン高架橋における構造物音の低減構造。
【請求項5】
前記RCラーメン高架橋が鉄道用RCラーメン高架橋、前記スラブが前記縦梁及び前記横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置する中間スラブであって、該中間スラブの上面のうち、橋軸方向に沿って前記スラブ上に並設された一対の路盤コンクリートの間に前記補剛材を固着するとともに、該補剛材の各端を前記路盤コンクリートの対向側面にそれぞれ固着した請求項1記載のラーメン高架橋における構造物音の低減構造。
【請求項6】
前記RCラーメン高架橋が鉄道用RCラーメン高架橋、前記スラブが前記縦梁及び前記横梁に囲まれた平面矩形領域の上方に位置する中間スラブの側方に延設された張出スラブであって、該張出スラブの上面のうち、橋軸方向に沿って前記スラブ上に並設された一対の路盤コンクリートの外側に前記補剛材を固着するとともに、該補剛材の各端を前記路盤コンクリートの外側側面とダクトの側面にそれぞれ固着した請求項1記載のラーメン高架橋における構造物音の低減構造。
【請求項7】
前記横梁の配置スパン長をLとしたとき、前記横梁の中心からL/2、L/4又はL/6の位置に前記補剛材を橋軸直交方向に沿って配置した請求項1乃至請求項6のいずれか一記載のラーメン高架橋における構造物音の低減構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−106243(P2011−106243A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265757(P2009−265757)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】