説明

リアクタ

【課題】装置の低コスト化を図ることができ、且つ第1被反応液と第2被反応液との反応により析出した析出物が滞留することをほぼ完全に無くすことのできるリアクタを提供すること。
【解決手段】少なくとも2種類の第1被反応液(L1)と第2被反応液(L2)とを反応させその反応により生成した生成物(L3)を導出部(330)から導出するように構成されたリアクタ(10)であって、前記導出部(330)に向けて第1被反応液(L1)を流通させるための流路(33)と、前記流路(33)に第1被反応液(L1)を導入する第1被反応液供給手段(40)と、前記流路(33)を流通している第1被反応液(L1)に向けて第2被反応液(L2)を前記流路(33)の上方から噴霧状の液体ミスト(M)として噴射する液体ミスト噴射手段(60)とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリアクタに関する。より詳しくは、導入した少なくとも2種類以上の液体を反応させその反応により生成した生成物を導出するように構成されたリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この手の装置発明として、本発明者らは以前に特許文献1を特許出願した。図9は特許文献1に記載された従来のリアクタの断面斜視図である。図9に示すように従来のリアクタ90は、スリット状の縦長円環形状に形成された第1スリット状流路R1と、スリット状の扁平円環形状に形成された第2スリット状流路R2と、スリット状の略逆円錐台形状に形成された第3スリット状流路R3と、スリット状の略逆円錐形状に形成された第4スリット状流路R4とを備える。これら第1スリット状流路R1、第2スリット状流路R2、第3スリット状流路R3及び第4スリット状流路R4は共通の中心軸Jを有する。
【0003】
従来のリアクタ90では、第1スリット状流路R1に連通する第1導入ポートP1に第1被反応液L1を第1液入口Q1から所定の高圧で導入し、第2スリット状流路R2に連通する第2導入ポートP2に第2被反応液L2を第2液入口Q2から所定の高圧で導入し、第3スリット状流路R3に連通する第3導入ポートP3に第1被反応液L1と第2被反応液L2との反応に関与しない不関与液L30を第3液入口Q3から所定の高圧で導入する。
【0004】
第1スリット状流路R1から出た第1被反応液L1と第2スリット状流路R2から出た第2被反応液L2とは、互いに平行でない高速流れで合流して衝突し合う形となる。これにより、衝突が生じた部分では乱流が発生し、例えば両被反応液L1,L2が平行に合流する場合に生じ得る「層流現象」が極めて起こり難い。従って、瞬時に反応を生起することが可能となり、短い反応時間で反応を進行させることができる。また、第3スリット状流路R3から、不関与液L30を所定の高圧で第4スリット状流路R4に導入することにより、第1被反応液L1と第2被反応液L2との反応で生じた析出物が合流部Dに滞留することの防止を図っている。
【特許文献1】特願2006−154299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のリアクタ90では、第1スリット状流路R1〜第4スリット状流路R4はそれぞれ流路幅が数十から数百ミクロンオーダーのいわゆるマイクロ流路とされ、このような微少空間を形成するために、部品点数が多くなったり、各部品の加工精度を高めたりする必要があり、装置のコストアップを招いた。また、不関与液L30を第4スリット状流路R4に導入したにも拘わらず、実際には、第1被反応液(L1)と第2被反応液(L2)との反応により析出した析出物が合流部Dに滞留することがあった。
【0006】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、装置の低コスト化を図ることができ、且つ第1被反応液と第2被反応液との反応により析出した析出物が滞留することをほぼ完全に無くすことのできるリアクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明に係るリアクタ(10)は、少なくとも2種類の第1被反応液(L1)と第2被反応液(L2)とを反応させその反応により生成した生成物(L3)を導出部(330)から導出するように構成されたリアクタ(10)であって、前記導出部(330)に向けて第1被反応液(L1)を流通させるための流路(33)と、前記流路(33)に第1被反応液(L1)を導入する第1被反応液供給手段(40)と、前記流路(33)を流通している第1被反応液(L1)に向けて第2被反応液(L2)を前記流路(33)の上方から噴霧状の液体ミスト(M)として噴射する液体ミスト噴射手段(60)とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るリアクタ(10)によると、第1被反応液(L1)は、流路(33)において薄膜状の流れとされ、第2被反応液(L2)は、この薄膜状の流れの表面に向けて液体ミスト(M)として噴射される。第2被反応液(L2)の微粒子体である液体ミスト(M)を、薄膜状の流れとされた第1被反応液(L1)に衝突させて反応を進行させる。反応により生成した生成物(L3)は導出部(330)から導出される。つまり従来とは異なり、流路幅が数十から数百ミクロンオーダーのいわゆるマイクロ流路を用いるのではない。従って、部品点数が多くなったり、各部品の加工精度を高めたりする必要が無く、装置の低コスト化を図ることができる。また、第1被反応液(L1)と第2被反応液(L2)との反応により析出した析出物が滞留することをほぼ完全に無くすことができる。
【0009】
なお、特許請求の範囲及び課題を解決するための手段の欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリアクタによると、装置の低コスト化を図ることができ、且つ第1被反応液と第2被反応液との反応により析出した析出物が滞留することをほぼ完全に無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は本発明に係るリアクタの正面一部断面図、図2は本発明に係るリアクタの平面図、図3は図1のI−I線矢視図、図4(A),図4(B)はそれぞれ上カバーの正面一部断面図及び平面図、図5はスぺーサの正面一部断面図、図6(A),図6(B)はそれぞれ下カバーの正面一部断面図及び図6(A)のII−II線矢視図、図7(A),図7(B)はそれぞれミスト噴射ノズル固定部の正面一部断面図及び平面図である。
【0012】
図1,2に示すように、本発明に係るリアクタ10は、チャンバー20、第1被反応液供給部40及び第2被反応液供給部60からなる。
【0013】
チャンバー20は、上カバー1、スぺーサ2、下カバー3、Oリング4a、Oリング4b及び第1ボルト5aを備える。
【0014】
上カバー1は、図4に示すように、平面視が軸J1を中心とした円形を呈する略皿状体であり、第1ボルト挿通穴11、第2ボルト締結穴12、ミスト噴射ノズル固定穴13及び排気継手締結穴14を備える。上カバー1は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、チタンまたは真鍮等の金属から構成される。
【0015】
上カバー1における第1ボルト挿通穴11は、上記略皿状体の同一円周上における等間隔6箇所に軸J1方向に穿設された貫通穴である。第2ボルト締結穴12は、第1ボルト挿通穴11よりも半径方向内側において略皿状体における等間隔2箇所に軸J1方向に穿設された有底雌ねじ穴である。ミスト噴射ノズル固定穴13は、略皿状体の中央部に軸J1方向に段状に穿設された貫通穴である。排気継手締結穴14は、略皿状体の上部端面において軸J1方向に対して傾斜して穿設された貫通雌ねじ穴である。
【0016】
スぺーサ2は、図5に示すように、上カバー1の外径と同一の外径を有する略円筒形状体であり、第1ボルト挿通穴21及びOリング溝22を備える。第1ボルト挿通穴21は、上記略円筒形状体の同一円周上における等間隔6箇所に軸J1方向に穿設された貫通穴である。Oリング溝22は、第1ボルト挿通穴21よりも半径方向内側において略円筒形状体の上部端面に、略円筒形状体の外径と同心に形成された円環状溝である。スぺーサ2は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン若しくは真鍮等の金属またはアクリル樹脂若しくはプラスチック等の合成樹脂から構成される。
【0017】
下カバー3は、図6に示すように、上カバー1の外径と同一の外径を有する中空の略鍋蓋状体であり、上半部3Aと下半部3Bとに分けられる。上半部3Aの内周面は、上部から下部に向かって断面積が一定の円柱側面形状部32となっている。下半部3Bの内周面は、上部から下部に向かって断面積が減少する円錐側面形状部33となっている。即ち、円錐側面形状部33は、軸J1を中心とした回転体の側面で形成され且つ軸J1の下方に向かうに連れて軸J1に略直交する平面で切断したときの断面面積が漸次減少する形状とされている。円錐側面形状部33の広がり角θは90度〜160度であることが好ましい。円錐側面形状部33の表面は、プラズマ処理、コロナ放電処理またはスパッタ処理などにより親水化処理が施されている。下カバー3の上半部3Aには第1ボルト締結穴31、第1継手締結穴310、第2継手締結穴320、及びOリング溝34を備え、下カバー3の下半部3Bには導出口330を備える。下カバー3は上カバー1と同様な材料で構成される。
【0018】
下カバー3における第1ボルト締結穴31は、上記略鍋蓋状体の同一円周上における等間隔6箇所に軸J1方向に穿設された有底雌ねじ穴である。第1継手締結穴310は、略鍋蓋状体における上半部3Aの外周面から内周面に向けて穿設された貫通穴である。なお第1継手締結穴310は、上半部3Aの外周面側に雌ねじが形成され、内周面側は細孔状とされる。第2継手締結穴320は、第1継手締結穴310と同様な貫通穴である。第1継手締結穴310と第2継手締結穴320とは、下カバー3の軸J1を中心として対象位置に穿設される。導出口330は、円錐側面形状部33の中央部に軸J1方向に穿設された貫通穴である。なお導出口330は、円錐側面形状部33の上側が直径3mm〜5mm程度の細孔状とされ、下側には継手締結用の雌ねじが形成される。Oリング溝34は、第1ボルト締結穴31よりも半径方向内側において略鍋蓋状体の上端面に形成された円環状溝である。
【0019】
第1被反応液供給部40は、第1継手41及び第2継手42にそれぞれ挿設された第1ノズル41N及び第2ノズル42Nを備える。
【0020】
第1ノズル41Nはステンレス製のパイプからなり、その先端近傍が略L字形に折り曲げられている。第1ノズル41Nは、第1継手41を第1継手締結穴310に締結することで下カバー3に固設される。ステンレス製としたのは、多くの被反応液について耐腐食性に優れるためである。このとき、第1ノズル41Nの噴出口が下カバー3の半径方向に直交する方向となるように横向きに取り付けられる。第2ノズル42Nは、第1ノズル41Nと同様な構成とされ、第1ノズル41Nの場合と同様に、第2継手42を第2継手締結穴320に締結することで下カバー3に固設される。なお、第2ノズル42Nの噴出口は、第1ノズル41Nの噴出口と反対向きとなるように横向きに取り付けられる。つまり、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとは、第1被反応液L1の旋回流を生じさせるために、それぞれの噴出口を流路33の周方向(略鍋蓋状体の周方向)における同一方向に向けている。
【0021】
第2被反応液供給部60は、ミスト噴射ノズル固定部61、ミスト噴射ノズル70、Oリング4c及び第2ボルト5bを備える。
【0022】
ミスト噴射ノズル固定部61は、図7に示すように、平面視が円環状を呈し正面視がU字状の開口62を備えるキャップ状体である。その上面には、2つの第2ボルト挿通穴63を備える。ミスト噴射ノズル固定部61は上カバー1と同様な材料で構成される。
【0023】
ミスト噴射ノズル70は、図1に戻って、高圧の気体と高圧の液体とを混合して液体ミストMを形成する気液混合部71、気液混合部71に高圧の気体を導入する気体導入部72、及び気液混合部71に高圧の液体を導入する液体導入部73を備え、気液混合部71から噴出口74に至る流通路を内部に有する2流体ノズルである。そして、第2被反応液L2の噴霧状の液体ミストMを噴出口74から下カバー3の円錐側面形状部33に向けて噴出するように構成される。
【0024】
ミスト噴射ノズル70は、次のようにして上カバー1に固定される。まず、ミスト噴射ノズル固定穴13における段状部15にOリング4cを嵌め込む。次いで、この段状部15にミスト噴射ノズル70を着座させる。次いで、ミスト噴射ノズル固定部61をミスト噴射ノズル70の上から被せる。このとき、ミスト噴射ノズル固定部61における第2ボルト挿通穴63と上カバー1における第2ボルト締結穴12とを一致させる。最後に、第2ボルト5bを第2ボルト挿通穴63に挿通させ、第2ボルト締結穴12に締結することで固定する。
【0025】
ミスト噴射ノズル70を取り付けた上カバー1と、スぺーサ2と、第1ノズル41N及び第2ノズル42Nを取り付けた下カバー3とは、次のようにして一体ものに組み立てられる。まず、下カバー3のOリング溝34にOリング4aを嵌め込む。次いで、この下カバー3の上にスぺーサ2を重ね合わせる。このとき、下カバー3における第1ボルト締結穴31とスぺーサ2における第1ボルト挿通穴21とを一致させる。次いで、スぺーサ2のOリング溝22にOリング4bを嵌め込む。次いで、このスぺーサ2の上に上カバー1を重ね合わせる。このとき、スぺーサ2における第1ボルト挿通穴21と上カバー1における第1ボルト挿通穴11とを一致させる。最後に、第1ボルト5aを上カバー1における第1ボルト挿通穴11及びスぺーサ2における第1ボルト挿通穴21に挿通させ、下カバー3における第1ボルト締結穴31に締結して固定する。
【0026】
以上のようにして構成されたリアクタ10は、図8に示すように反応システム80に組み込んで使用される。図8は本発明に係るリアクタを用いた反応システムを示す図である。図8に示すように、反応システム80は、リアクタ10、第1液供給タンク81、第2液供給タンク82、圧縮気体供給タンク83、排気貯留タンク84及び生成物貯留タンク85を備える。
【0027】
第1液供給タンク81は、第1被反応液L1を所定の圧力で貯留しており、配管及び流量制御バルブ81Vを介してリアクタ10における第1ノズル41N及び第2ノズル42Nに接続される。第2液供給タンク82は、第2被反応液L2を所定の圧力で貯留しており、配管、継ぎ手及び流量制御バルブ82Vを介してリアクタ10における液体導入部73に接続される。圧縮気体供給タンク83は、空気または窒素ガスを所定の圧力で貯留しており、配管、継ぎ手及び流量制御バルブ83Vを介してリアクタ10における気体導入部72に接続される。排気貯留タンク84は、配管、継ぎ手及び開閉バルブ84Vを介して排気継手締結穴14に接続される。開閉バルブ84Vはチャンバー20内が所定の圧力となったときに開放状態となるように構成される。生成物貯留タンク85は、配管及び継ぎ手を介して導出口330に接続される。
【0028】
次に、反応システム80の動作と共にリアクタ10の作用効果について説明する。第1液供給タンク81から、配管を介して第1被反応液L1が第1ノズル41N及び第2ノズル42Nに圧送される。これにより第1ノズル41N及び第2ノズル42Nから第1被反応液L1が噴出する。第1被反応液L1の噴出方向は、第1ノズル41N及び第2ノズル42Nともに下カバーの半径方向と直交する横方向である。第1ノズル41Nから噴出した第1被反応液L1は、噴出直後に下カバー3の上半部3Aにおける円柱側面形状部32に衝突する。その後、下半部3Bにおける円錐側面形状部33を円周方向に沿って螺旋状に流れる(図3の矢印W1参照)。
【0029】
第2ノズル42Nから噴出した第1被反応液L1は、第1ノズル41Nから噴出した第1被反応液L1と同様に、円錐側面形状部33を円周方向に沿って螺旋状に流れる(図3の矢印W2参照)。このように第1ノズル41N及び第2ノズル42Nから噴出した第1被反応液L1は旋回流となる。その旋回流は厚さが数十から数百ミクロンオーダーの薄膜状の流れとなっている。ここで、円錐側面形状部33の表面は親水化処理が施されているため、第1被反応液L1がその表面張力によって円錐側面形状部33の表面に疎らに分布することなく、円錐側面形状部33の全体に亘って一様な膜厚の薄膜状となる。
【0030】
一方、ミスト噴射ノズル70において、圧縮気体供給タンク83から高圧の空気または窒素ガスが配管を介して気体導入部72に圧送される。それと同時に、第2液供給タンク82から第2被反応液L2が配管を介して液体導入部73に圧送される。気液混合部71では、高圧の空気または窒素ガスと高圧の第2被反応液L2とを混合して液体ミストM、即ち第2被反応液L2の噴霧状体を形成する。そして、噴出口74からこの液体ミストMを噴出させ、円錐側面形状部33の表面を螺旋状に薄膜状態で流れている第1被反応液L1に衝突させる。液体ミストM一滴あたりの直径は、ザウター平均が9μm〜15μm程度であることが好ましい。空気または窒素ガスを導入するときの圧力は0.05〜0.8MPa、流量特性は15〜116L/minであることが好ましい。噴霧量は5〜100mL/minであることが好ましい。
【0031】
上記衝突により第1被反応液L1と第2被反応液L2との反応が進行する。円錐側面形状部33は導出口330に向けて下り勾配をなしているので、液体ミストMを浴びた第1被反応液L1は、反応を進行させながら螺旋を描いて導出口330に向けて流れていく。反応によってできた生成物(析出物を含む)L3は、導出口330から導出される。
【0032】
このように本発明に係るリアクタ10によると、第1被反応液L1は、下り勾配をなした円錐側面形状部33において薄膜状の流れとされ、第2被反応液L2は、この薄膜状の流れの表面に向けて液体ミストMとして噴射される。第2被反応液L2の微粒子体である液体ミストMを、薄膜状の流れとされた第1被反応液L1に衝突させて反応を進行させる。反応により生成した生成物L3は導出部330から導出される。つまり従来とは異なり、流路幅が数十から数百ミクロンオーダーのいわゆるマイクロ流路を用いるのではない。従って、部品点数が多くなったり、各部品の加工精度を高めたりする必要が無く、装置の低コスト化を図ることができる。また、第1被反応液L1と第2被反応液L2との反応により析出した析出物が滞留することをほぼ完全に無くすことができる。
【0033】
また、スぺーサ2は、上カバー1と下カバー3とから着脱自在に設けられているため、互いに高さの異なるものを複数個用意しておくことで、目的の反応に応じたものを選択可能となり、融通性に優れる。また、スぺーサ2を透明な合成樹脂とすることでチャンバー20内における第1被反応液L1及び第2被反応液L2の状態を視認できるようになる。また、チャンバー20内が所定の圧力以上になった場合は、開閉バルブ84Vが開状態となり排気されるので、安全性に優れる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上に開示した実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【0035】
例えば、上述の実施形態では、第1ノズル41N及び第2ノズル42Nの取付角度は、それぞれ半径方向から90度であったが、この形態に限らず0度よりも大きく且つ90度未満の角度としてよい。また、上述の実施形態では、第1ノズル41N及び第2ノズル42Nは、円錐側面形状部33の周方向に等間隔に合計2つであったが、配置角度を120度として配置個数を3つとしたり、配置角度を90度として配置個数を4つとしたりしてもよい。
【0036】
また、上述の実施形態では、ミスト噴射ノズル70は、高圧の気体と高圧の液体とをノズル内部で混合して液体ミストMを形成する、いわゆる内部混合型の液加圧方式としたが、高圧の気体と高圧の液体とをノズル外部で混合して液体ミストMを形成する、いわゆる外部混合型の液加圧方式としてもよい。また、高圧の気体の力で第2被反応液L2を吸い上げる、いわゆるサクション方式としてもよい。また、2流体ノズルに限らず、1流体ノズルとしてもよい。特に1流体ノズルは2流体ノズルに比べて、噴射圧を低くすることができ、スペーサ2の厚みが小さくて済み(スペーサ2の厚みが小さすぎると、円錐側面形状部33を流通している第1被反応液L1が、高圧の液体ミストMにより跳ね飛ばされてしまうことがあるが、これを防ぐことができる)、装置をより一層コンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るリアクタの正面一部断面図である。
【図2】本発明に係るリアクタの平面図である。
【図3】図1のI−I線矢視図である。
【図4】上カバーの正面一部断面図及び平面図である。
【図5】スぺーサの正面一部断面図である。
【図6】下カバーの正面一部断面図及び図6(A)のII−II線矢視図である。
【図7】ミスト噴射ノズル固定部の正面一部断面図及び平面図である。
【図8】本発明に係るリアクタを用いた反応システムを示す図である。
【図9】従来のリアクタの断面斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10 リアクタ
20 チャンバー
33 円錐側面形状部(流路)
40 第1被反応液供給部(第1被反応液供給手段)
41N 第1ノズル
42N 第2ノズル
60 第2被反応液供給部(液体ミスト噴射手段)
84V 開閉バルブ
330 導出口(導出部)
J1 軸(鉛直軸)
L1 第1被反応液
L2 第2被反応液
L3 生成物
M 液体ミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の第1被反応液(L1)と第2被反応液(L2)とを反応させその反応により生成した生成物(L3)を導出部(330)から導出するように構成されたリアクタ(10)であって、前記導出部(330)に向けて第1被反応液(L1)を流通させるための流路(33)と、前記流路(33)に第1被反応液(L1)を導入する第1被反応液供給手段(40)と、前記流路(33)を流通している第1被反応液(L1)に向けて第2被反応液(L2)を前記流路(33)の上方から噴霧状の液体ミスト(M)として噴射する液体ミスト噴射手段(60)とを備えることを特徴とするリアクタ。
【請求項2】
前記流路(33)は、鉛直軸(J1)を中心とした回転体の側面で形成され且つ鉛直軸(J1)の下方に向かうに連れて鉛直軸(J1)に略直交する平面で切断したときの断面面積が漸次減少する形状とされ、前記導出部(330)は、当該流路(33)の最下部に設けられた請求項1に記載のリアクタ。
【請求項3】
第1被反応液供給手段(40)は、噴出口が前記流路(33)の半径方向から所定角度偏角した方向となるように設けられた第1ノズル(41N)と、噴出口が前記流路(33)の半径方向から所定角度偏角した方向となるように設けられた第2ノズル(42N)とを備え、これら第1ノズル(41N)と第2ノズル(42N)とが、前記流路(33)の周方向に等間隔に少なくとも2つ以上設けられた請求項2に記載のリアクタ。
【請求項4】
前記流路(33)の表面は親水化処理が施されている請求項1から請求項3のいずれかに記載のリアクタ。
【請求項5】
前記流路(33)と前記液体ミスト噴射手段(60)とを密封配置するチャンバー(20)を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載のリアクタ。
【請求項6】
前記チャンバー(20)内が所定の圧力となったときに開放状態となる開閉バルブ(84V)を備える請求項5に記載のリアクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−100189(P2008−100189A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286003(P2006−286003)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】